浜田宏一エール大名誉教授 |
アベノミクスに対して、海外から批判が出ている。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事が「競争的な通貨切り下げには反対」、米自動車大手3社(ビッグ3)は「日本が円安を通じた近隣困窮政策を取ろうとしている」、ドイツのショイブレ財務相は「日本の新政権の政策は心配」、ロシア中央銀行幹部は「日本は円を下落させており、他国も追随しかねない」など、それぞれ通貨安競争を懸念する発言が相次いだ。
20日のNHK番組で、浜田宏一エール大名誉教授は、ラガルド氏の発言を引用して「変動相場制の論理を理解しない議論。(経済学者の)ジェフリー・サックス、アイケングリーンが(懸念する必要のないことを)証明している。どうしてIMFのトップが基本的な国際金融の原理を理解しないのか」と疑問を呈した。
どこかの国が通貨切り下げをすると、短期的に外国はマイナスの影響を受けるが、外国も金融緩和をする。両国ともにインフレ率が高くなるが、それぞれ許容できるインフレ率に限界があるので、金融緩和競争はいつまでも続かない。と浜田教授は言いたかったのだろう。
現在、先進国ではインフレ目標を設定しているので、この話はよりわかりやすい。2%程度のインフレ目標を持つ先進国では、4、5%のインフレにはならないような金融政策の運営が行われる。要するに、各国ともに、自国経済を一定のインフレ率と失業率に抑えようと経済運営すれば、おのずと為替切り下げ競争にはならないのだ。
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【私の論評】まともな国にとっては、まずは国民経済をきちんと運営することが、世界経済もうまく運営していく前提となる!!
周小川中国人民銀行総裁 |
しかし、そうではない、変動相場制にあるまともな国ならば、日本がいくら金融緩和に走ったとしても、インフレ率を無限大に高めて円安誘導をどこまでもやるということはあり得ないので、ある一定水準で、円安もとまるわけですから、さほど心配するにはあたらないわけです。しかも、日本は、2%ととしているわけですから、おそらく、この目標をせい一杯やったとしても、円安もある一定限度内に収まるのははっきりしています。
中国元 |
通過競争を主張する愚かなIMFラガルド専務理事 |
しかし、特にIMFのラガルド氏やドイツの ショイブレ財務相 が懸念を表明するのはわかります。なぜなら、ラガルド氏は、もとフランスの財務相の経験もあるし、ドイツのショイブレ財務相は無論のこととして、EUを念頭にして日本の金融緩和に異議を唱えているのだと思います。EUの場合は、EU域内に経済など本来全く別の国々が、無理に一つにまとまってEU域内の金融政策、財政政策をとっています。本来EUなど全くなく、それぞれの国が独立して、金融政策や財政政策をできるというのなら、先と同じ理由で、そんなに悪影響をこうむるはずもありません。
ドイツの ショイブレ財務相 |
このブログでは、もともと、EUなど成り立たないことを昔から主張してきました。たとえば、ドイツや、スペイン、ポルトガルましてやギリシャなどの経済はあまりにも違いすぎます。これらが、同じ経済圏で一つの通貨で財政政策や、金融政策を実行するなど、もともと無理な話です。
EUには最初から無理がある? |
EUなどのいわば、経済のグローバル化などは、そもそも問題がありすぎるのです。だから、EUの問題も、特殊事情ととらえるべきと思います。EUは、今後特に金融・財政政策に関しては、緩い統合として、各国がある程度自由に金融政策などとれるようにしていくべきと思います。そうして、100年、200年かけて、各国の経済を平準化して統一していくことが望ましいと思います。そうはいっても、100年、200年かけても、地域間格差は残って、真の経済統合は難しいかもしれません。
EUは例外として、日本、アメリカ、他国のいわゆる国民経済という立場をとっている国々で、変動相場制をとっているまともな国は、日本が多少金融緩和に走ったからといって、特に通貨戦争などという状況になるなどということはありません。
国民経済のお金の流れ。日本の国民経済は、無借金どころか貸付大幅超過!! |
それに、上の記事にも掲載されているように、1930年代の大恐慌は各国の通貨切り下げ競争で激化したという「神話」はなど全くの間違いです。大恐慌の原因は、1990年代の研究で明らかになったように、デフレが原因です。そうして、デフレが深化したのは、通貨切り下げ競争によるものでなく、本来デフレならデフレ対策を実施すればよいものを、さらなる財政緊縮策や、金融引き締めなどを行ったのが原因です。
日本での恐慌は、昭和恐慌といわれますが、この昭和恐慌に当時の高橋是清内閣は、すぐにリフレ政策をとって、世界で一番はやくデフレから脱却しました。その他の国はアメリカなども含めて、リフレ政策をとることはなく、結局戦争に突入し、戦争を遂行するために、積極財政や金融緩和をやらざるをえなくなって、実施したところデフレから脱却できたという経緯があります。
昭和恐慌時代の日本の典型的な家庭の食事風景 |
デフレのときは、まずは、変動相場制をとっているなら、他国のことなどあまり気にせずに、各々の国が自分の国のことを考えて、金融緩和、財政出動を行えば良いのです。そうして、なるべく早くデフレが脱却すれば良いのです。そうすれば、他国は、自国の通貨を調整しますが、それらにもおのずから限度があり、けっして通貨戦争になどなりません。
恐慌時代の各国のGDP、日本がいち早く回復している |
私たちは、そういう次元でものごとをみて、まずは日本国内のことを最優先すべきものと思います。だから、他国のいう通貨下げ競争などの意見に耳を貸す必要はありません。それに、日本は、過去20年間も実質上金融を引き締めっぱなしだったのですから、どうどうと金融緩和、円安を主張すべきです。
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