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2019年4月15日月曜日

大阪補選の結果次第で、消費増税が吹っ飛ぶ可能性にお気づきか―【私の論評】補選の結果いかんで、令和年間は大変化の時代に突入(゚д゚)!

大阪補選の結果次第で、消費増税が吹っ飛ぶ可能性にお気づきか

実は、とても重要な選挙だ








大阪補選に注目すべき理由

先週8日に実施された大阪ダブル選挙(府知事・市長)では、維新の吉村・松井両氏と、反維新の小西・柳本両氏の戦いだったが、吉村・松井の完勝に終わった。投票締め切りの20時直後に、NHKから当確が出たほどの維新の圧勝だった。

事前の世論調査では、大阪市長選挙では、「維新劣勢」あるいは「互角」と報じられていたが、蓋を開ければ改めて大阪の維新の強さが分かった。大阪府知事選の投票率は49.49%、大阪市長選は52.70%で、前回2015年の「ダブル選」と比べ、知事選は4.02ポイント、市長選は2.19ポイント投票率が上がったことにも注目すべきだ。

今回のダブル選は「大阪都構想の推進」が争点であった。維新は、これまでの府市行政での実績も十分あり、さらに2025年万博と夢洲IRという将来への布石も打ってきた。こうした実績と政策を丁寧に訴えたことが、維新の勝因だろう。実績と政策に勝るモノはない。維新は正攻法で選挙に臨み、それに賢明な大阪府市民が応えた、ということだ。

さて、これから大阪都構想を具体的に進めるためには、大阪府議会と大阪市議会の両方が住民投票を行い、過半を超える賛意をとる必要がある。この意味で、大阪都構想の実現にはまだハードルが残っている。

今回、大阪では府知事・市長のダブル選挙と同時に、大阪府議会議員選挙と大阪市議会議員選挙もあった。府議選の投票率は50.44%、市議選は52.18%、前回よりそれぞれ5.26ポイント、3.54ポイント上がり、府議会も市議会も維新は大きく議席を伸ばした。その結果、大阪府議会では定数88のところ、維新が51議席をとり過半数を超えた。

しかし、大阪市議会では定数83のところ維新は40議席。過半数には二人分足りなかった(もっとも、2議席ぐらいなら、維新以外の議員の切り崩しなどを行えばなんかなるという、射程距離の範囲だ)。

松井新市長は、選挙後に「大阪都構想に反対の人もいるのも事実なので、丁寧に説明していきたい」と話した。選挙前に公明党幹部が再三使っていた「丁寧に説明」という言葉を繰り返したあたり、4年間の任期をもらったことによる余裕の対応である。

維新は、この10年間で大阪経済を浮揚させてきた。景気も雇用も10年前と比べてよくなった(4月1日付け本コラム「平成は終わるが、大阪の成長を終わらせてはいけない 大阪選挙の論点を11の図表で確認」 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63847 参照)。2025年には万博も控えているし、カジノ施設などを建設する夢洲IR計画もこれまでの路線通りなので、これを起爆剤として、今後の大阪経済も発展するだろう。

さて、ダブル選後の大阪で、次の参院選の前哨戦ともいわれる衆院大阪12区補欠選挙(大阪府寝屋川市、大東市、四條畷市)が行われる。これは、自民党の北川知克・元環境副大臣が亡くなったことにより行われるもので、候補者は、無所属元職の宮本岳志氏(59)=共産、自由推薦、日本維新の会新人の藤田文武氏(38)、無所属元職の樽床伸二氏(59)、自民新人の北川晋平氏(32、亡くなった北川氏の甥)=公明推薦の4氏。


この補選は国政選挙であり、この結果は①消費増税はもちろんのこと、その先に控える②憲法改正にも大きく影響するだろう。それぞれ説明しよう。

消費増税が吹っ飛ぶ…?

まず、消費増税について。これまでの言動からみると、宮本氏は消費増税に反対、藤田氏も反対、樽床氏は賛成、北川氏も賛成だろう。常識的には自民党の弔い合戦なので北川氏が有利であるはずだが、ある世論調査をみると、そうはなっていない(https://www.47news.jp/news/3466883.html)。先のダブル選でも事前調査はあまり当たっていなかったので、過信するわけにはいかないが、参考にすべき材料ではある。

政権与党である自民・公明は、政府が今年10月からの消費増税実施を予定しているので、消費増税賛成にならざるを得ない。一方維新は、国政では今年度予算に反対している。これは、10月からの消費増税に反対だからだ。

この大阪12区衆院補選で維新が勝つと、自民は7月参院選を控えて「やっぱり消費増税では選挙が戦えない」という声が高まり、消費増税は腰砕けになるような感じがする。となると、この補選で自民党が負ければ、安倍政権は消費増税を引っ込める可能性が出てくるだろう

安倍政権は、これまで消費増税を2回スキップしている。一度目は2014年12月の衆院解散総選挙において、2015年10月から予定されていた消費増税をスキップ。二度目は2016年5月の伊勢志摩サミットにおいて、2017年4月から予定されていた消費増税をスキップした。

過去2回のケースはともに、予算成立の前であった。今回は、予算成立後であるが、消費増税延期の「大義名分」があり、そのうえで増税延期に関連する補正予算を出せば、消費増税を吹っ飛ばすことは可能だ。

ダブル選挙の日程を読む

なお、一部から消費増税をスキップするために「7月21日に衆参ダブル選挙がある」という予測が出ている。筆者も過去に衆参ダブル選挙の可能性を指摘しているが、その期日は7月21日より前の可能性があるだろうと思っている。なぜか。

マスコミが「7月21日説」を唱えるのは、今国会の会期末が6月26日だからだ。この場合、会期末まで国会をやれば、参議院選挙の投票日は閉会日から「24日以後30日以内」(公職選挙法第32条)なので、7月4日告示、21日投開票というスケジュールが出てくる。

しかし、このスケジュールで衆参ダブル選挙をやろうとすれば、会期末ぎりぎりで解散することになる。このスケジュールを完全に否定するワケではないが、これではさすがにあまりに芸がないだろう。

6年前に選ばれた参院議員の任期は7月28日まで。となると、参院選はその日の前から30日以内に行う(公職選挙法第32条)ので、投票日は6月30日、7月7日、14日、21日の日曜日がありえることが分かる。

衆議院の解散による衆議院議員の総選挙は、解散の日から40日以内に行う(公職選挙法第31条)ので、解散日によっては、7月21日以外の日に衆参ダブル選挙を設定できるのではないだろうか。ちなみに候補となるのは、6月30日(友引)、7月7日(仏滅)、7月14日(大安)、7月21日(赤口)である。

いずれにしても、5月20日の今年1-3月期のGDP速報はマイナスが見えており、場合によっては昨年度GDPもマイナスかもしれない。

さらに、IMF(国際通貨基金)は9日、世界経済の見通しを発表し、今年の世界全体の成長率を前年比3.3%と予測、1月の時点から0.2ポイント下方修正した。国別では、2019年のアメリカの成長率を2.3%とし、今年1月時点から0.2ポイント引き下げ。ユーロ圏は1.3%と0.3ポイント下落。日本は1.0%と0.1ポイント下げた。

IMFは、日本の10月の消費増税を歓迎するというが、これは、日本の財務省からIMFへ出向している職員が言うことなので、すなわち日本の財務省の意見と考えたほうがいい。先週紹介したウォール・ストリート・ジャーナルの社説のように「いまのタイミングで増税とはワケがわからない」というのが常識だろう。

補選が「国の形」に影響を与える可能性

さて、大阪補選に話を戻そう。この結果が②憲法改正に与える影響も大きい。現時点では、憲法改正に向けた国会の議論は停滞している。

衆院憲法審査会は、与野党幹事間の懇談会を開き、今後の段取りを話し合うはずだったが、今国会で3月28日、4月3日、4月10日と立憲民主党をはじめとする野党はこの審査会を3回連続で欠席した。この野党による国会サボタージュがあるならば、改憲勢力だけで議論を進めていく本気の覚悟がなければ、話は停滞したままになるだろう。

この場合、公明党の積極性がポイントとなる。公明党は改憲ではなく「加憲」という独特委の言葉を使っているが、改憲には実はあまり積極的でないことはご承知の通りだ。

そのような中で、大阪12区衆院補選で維新が勝てば、憲法改正に弾みがつくだろう。なぜなら、維新は憲法改正推進派だからだ。

実は、維新の憲法改正は、大阪都構想の次の段階として見据える「道州制」と大きく関係している。今のところ、維新は憲法改正について、①教育無償化、②統治機構改革、③憲法裁判所の設置という3点に絞っている。ここで、②の統治機構改革の一環として、本格的な道州制を導入することが提言として入っている。

大阪都構想は、大都市問題を解決するためのツールである。大阪市のような政令指定都市は基礎的な自治体の範囲を大きくしすぎて、広域的な行政を行う府県と業務がバッティングし、二重行政状態になっている。

これは、反対に言えば府県の広域行政が狭すぎるという問題でもあるので、広域行政を府県からさらに広く道州まで広げる、というのが道州制である。道州の広域行政は、現在は国の出先機関(各地方整備局など)がカバーしているが、地方分権を進めることでそれらは各府県とともに道州に移管され、広域行政を担うことになる。

このような道州制の本格的な実施を進めるなら、国の形をどうするのかという「国家百年の計」の観点から憲法改正まで視野に入れて、進めていかなければならない。

大阪ダブル選挙の結果を受けて、大阪が変わり始めることで、ようやく日本の形を変える長い道のりの第一歩を踏み出した。令和の時代に適した、新しい国作りが求められているなか、大阪補選の結果が国政に与える影響はとても大きいことを改めて指摘しておこう。

【私の論評】補選の結果いかんで令和年間は、大変化の時代に突入(゚д゚)!

さて、今月21日に投開票が行われる、衆議院大阪12区補欠選挙。報道ベンチャーのJX通信社では13日・14日の2日間、電話世論調査を行い、定性的な情報も加味して情勢を探りました。調査の概要や実施方法は、本稿末尾の記載の通りです。
維新・藤田氏がリード 北川・樽床氏追う 宮本氏は伸び悩む 
衆院大阪12区補欠選挙の中盤情勢は、日本維新の会公認の藤田文武氏がリードし、自民党公認・公明党推薦の新人北川晋平氏と無所属の前職樽床伸二氏が追う展開となっている。共産党前職で今回の補選に無所属で立候補した宮本岳志氏は伸び悩んでいる。ただ、有権者の3割弱が態度を決めておらず、情勢は流動的だ。 
藤田文武氏

藤田氏は日本維新の会支持層の6割台半ば、自民党支持層の約3割に加え、無党派層の約2割から支持を得ている。北川氏は、自民党支持層の4割弱と公明党支持層の約7割から支持を集めている。無党派層からの支持は1割弱に留まっている。樽床氏は日本維新の会支持層の約1割、公明党支持層の約2割、立憲民主党支持層の約4割のほか、無党派層から3割弱の支持がある。宮本氏は共産党支持層の7割、立憲民主党支持層の約3割から支持されている。 
今回の補欠選挙は、自民党の北川知克氏の死去に伴うもので、甥の北川晋平氏がその後継候補として出馬している。しかし、北川氏は自民党支持層を固めきれておらず、藤田氏と樽床氏に支持層を奪われている状態だ。 



大阪ダブル選の結果、強く影響か 
今月7日に行われた大阪府知事選の投票行動と照らし合わせると、知事選で維新・吉村氏に投票した有権者は半分弱が藤田氏を支持している。一方、小西氏に投票した有権者は半分弱が北川氏を支持しているほか、約2割が樽床氏を支持している。 
投票にあたって重視する政策を聞いたところ「経済や景気、雇用」とした有権者が28.6%で最も多く、「福祉や医療」が27.2%、「大阪都構想について」が13.6%と続いた。経済や景気、雇用、福祉や医療を重視するとした有権者からの支持は、藤田・北川・樽床3氏が分け合っているが、大阪都構想を重視するとした有権者は6割以上が藤田氏を支持しており、大阪ダブル選の影響が色濃く反映した情勢と言えそうだ。 
調査の概要:13日(土曜日)と14日(日曜日)の2日間、無作為に発生させた電話番号に架電するRDD方式で、大阪12区(寝屋川市・大東市・四條畷市)内の18歳以上の有権者を対象に調査した。有効回答は全体で632件だった。
現状では、維新の藤田氏が有利ということですから、 これはひょっとすると、藤田氏が圧勝すれば、高橋洋一氏が主張しているように、増税延期は無論のこと「国の形」に影響を与える可能性もでてきました。

2010年、当時の橋下府知事が府と市の二重行政による無駄を省き、効率的な行政を進めることができるとして提唱したこの構想は、大阪市を解体し、東京のような特別区に再編成するというものでした。

ところが、2015年、大阪市で行われた住民投票で僅差で否決、一度は廃案に追い込まれました。大阪市長だった橋下氏が政界を引退した後、松井、吉村両氏は再び住民投票を実施すべく奔走してきました。ところが、それまでタッグを組んでいた公明党との交渉は決裂。今回のダブルクロス選挙に突入することになりました。

日本維新の会の足立康史衆議院議員

日本維新の会の足立康史衆議院議員は、AmebaTVのニュースで以下のようにうったえていました。
大阪維新が勝手に言っているわけではないく、東京都と同じように政令市の代わりに特別区を置くという、大都市地域特別区設置法に基づいているもので、自民党や公明党等が作った法律だ。これからの大都市は経営を一元化していくために特別区を作った方が良いことには彼らも賛成していたはず。 
それなのに、今回は維新の会以外、自民から共産まで全部反対に回った。都構想実現の際には莫大な費用がかかるとも言われているが、今まで無駄なビルをたくさん建てたりしてきたことに比べれば一時的なもの。将来への投資ということで、我々は心配していない。 
大阪だけでなく、国全体として経済が成長すればパイは増える。東京だけに頼るんじゃなく、全国の都市が成長する中で高齢者の福祉、子供たちの教育といったものに初めて税金が回せるようになる。
高橋洋一氏が主張するように、都構想がどうなるかで、将来の日本の姿が決まることでしょう。日本では東京と福岡以外では全県が人口減少しています。都に変えるのに確かにお金はかかりますが、変えない方がここから100年間でもっとお金がかかることになります。

どこで変えるべきかが問われてきたのに、平成の31年間、結局野放しにされてきました。残念ながら、人口100万人以下の県は県としてこれからは、成立するのが困難になるでしょう。日本国のあり方を変えないといけないのですが、前回の4年前の選挙の時に、この都構想に反対したのは70代以上の高齢者でした。

他の各年代は賛成の方が多かったのです。4年経って構図が変わってきたようです。大阪では、変えたことによって良いことがあると実感できる出来事がいくつかありました。

例えば関空民営化後に来日する外国人の3、4割が関空を経由するようになりました。変化を嫌う人は外国人がたくさん入ってくると大変だと思うかもしれないですが、潤うという事実があります。変化することによって良いことがあるというのは、平成の間に日本が忘れていたことでもあります。

変化について、経営学の大家ドラッカー氏は以下のように語っています。
長い航海を続けてきた船は、船底に付着した貝を洗い落とす。さもなければ、スピードは落ち、機動力は失われる。(『乱気流時代の経営』)
 あらゆる製品、あらゆるサービス、あらゆるプロセスが、常時、見直されなければならないです。多少の改善ではなく、根本からの見直しが必要です。

なぜなら、あらゆるものが、出来上がった途端に陳腐化を始めているからです。そして、明日を切り開くべき有能な人材がそこに縛り付けられるからです。ドラッカーは、こうした陳腐化を防ぐためには、まず廃棄せよと言います。廃棄せずして、新しいことは始められないのです。

ところが、あまりにわずかの企業しか、昨日を切り捨てていません。そのため、あまりにわずかの企業しか、明日のために必要な人材を手にしていません。

自らが陳腐化させられることを防ぐには、自らのものはすべて自らが陳腐化するしかないのです。そのためには人材がいります。その人材はどこで手に入れるのでしょうか。外から探してくるのでは遅いのです。

成長の基盤は変化します。企業にとっては、自らの強みを発揮できる成長分野を探し出し、もはや成果を期待できない分野から人材を引き揚げ、機会のあるところに移すことが必要となります。
乱気流の時代においては、陳腐化が急速に進行する。したがって昨日を組織的に切り捨てるとともに、資源を体系的に集中することが、成長のための戦略の基本となる。(『乱気流時代の経営』)
ドラッカーは企業経営について、語っているのですが、これは無論政治の世界にも当てはまります。

平成年間の日本はほとんどの期間がデフレスパイラルの底に沈んでいました。そのような状況では、企業は無論のこと政府や地方行政も停滞するのが当然でした。この時期に、企業や日本政府や地方行政組織が変化することは容易なことではありませんでした。

そんなことをすれば、組織自体が崩壊したり毀損したりする可能性のほうが大きかったのです。だからこそ、変化を厭い、個人なら保身、組織なら現状維持ということで精一杯だったのです。

これから始まる新たな令和年間は、平成年間のような状況にはすべきではありません。この年間は、まともなマクロ経済政策を実行できる状況にし、その上で憲法改正は無論のこと、積極的に国益に沿って「国の形」を変えていく年間にすべきです。

今回の補選が良い結果に終わり、それが令和年間の変化の幕開けとなれば良いと思います。いや、そうしなければならないのです。

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2019年4月5日金曜日

安倍首相は「令和」機に消費税と決別を デフレ不況深刻化の元凶 ―【私の論評】令和年間を「消費税増税」という大間違いから初めてはいけない(゚д゚)!


元号を発表する菅官房長官

 5月から「令和」の時代に移ることになった。漢和辞典によれば、「令」の原義は神々しいお告げのことで、清らかで美しいという意味にもなるという。日本の伝統とも言える「和」の精神にふさわしい。

 だが、ごつごつとした競争を伴う経済社会では、清らかに和やかに、では済まされない。

 野心と挑戦意欲に満ちた若者たちがしのぎを削り合ってこそ、全体として経済が拡大する。経済成長は国家が担う社会保障の財源をつくり出し、競争社会の安全網を充実させ、和を生み出す。社会人になっていく若者たちの負担が軽くなるし、家庭をつくり子育てしていけるという安心感にもつながる。

 そこで、新元号決定直後の安倍晋三首相の会見をチェックしてみると、「次の世代、次代を担う若者たちが、それぞれの夢や希望に向かって頑張っていける社会」「新しい時代には、このような若い世代の皆さんが、それぞれの夢や希望に向かって思う存分活躍することができる、そういう時代であってほしいと思っています。この点が、今回の元号を決める大きなポイント」と「若者」に繰り返し言及し、若者が「令和」時代を担うと期待している。

 だが、超低成長のもとでは「令」も「和」も成り立ち難い。若者は経済成長という上昇気流があってこそ、高く飛べると楽観できる。ゼロ成長の環境下では、殺伐とした生活しか暮らせないケースが増える。

 グラフは、平成元年(1989年)以来の日本の実質経済成長率の推移である。日本と同じく成熟した資本主義の米欧の年平均の実質成長率が2~3%台だというのに、日本はゼロコンマ%台のまま30年が過ぎた。原因は人口構成の高齢化、アジア通貨危機、リーマン・ショックなどを挙げる向きが多いが、ホントにどうなのか。



 高齢化はドイツなど欧州でも進行している。アジア通貨危機では直撃を受けた韓国はV字型回復を遂げたし、リーマンでは震源地の米国が慢性不況を免れた。いずれも日本だけがデフレ不況を深刻化させた。経済失政抜きに日本の停滞は考えにくい。

 最たる失政は消費税にある。政府は平成元年に消費税を導入、9年(97年)、そして26年(2014年)に税率を引き上げた。結果はグラフの通り、実質成長率はよくても1%台に乗るのがやっとで、家計消費はマイナス続き、外需頼みである。

 消費税はデフレ圧力を生み、経済成長を抑圧するばかりではない。所得が少ない若者や、子育てで消費負担が大きい勤労世代に重圧をかける。今秋の消費税率10%への引き上げは、首相が力説した、若者が担うはずの「令和」時代に逆行すると懸念せざるをえない。

 首相はデフレ下の増税に決別し、経済成長最優先という当たり前の基本路線に回帰すべきだ。その宣言は秋の消費税増税中止では物足りない。思い切って消費税率の引き下げを打ち出す。平成が終わり、令和にシフトする今こそ、政策転換のチャンスではないか。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】令和年間を「消費税増税」という大間違いから初めてはいけない(゚д゚)!

最たる失敗は確かに冒頭の記事にもあるように、諸費税増税です。他が駄目であっても、少なくとも消費税増税をしていなけれは、日本の経済はこれほど低迷することはありませんでした。

トリンプは、2018年11月29日、世相を映すブラジャーの新作として、東京スカイツリーを
モチーフにした「平成ブラ」(非売品)を発表しました。トリンプは1987年から世相を反
映した下着を定期的に発表し、今回が63作目でしたが、世相ブラは今回で終了するそうです。

「平成」には経済に関して本当に良い思い出は少ないです。先進国の中で、日本だけが経済成長しませんでした。世界各国の国内総生産(GDP)の推移をグラフで書くと、日本だけが横ばいで、この意味で「平に成った」と皮肉ることもできるかもしれません。

先進国で唯一ともいっていいくらいの「デフレ」で悩まされました。少なくとも「失われた25年」といえるでしょう。平成30年間のうちの25年ですから、ほとんどの期間が失われていたということになります。

そうして。もう一つ日本を駄目にしたのは、日銀による金融政策です。日本が最初にデフレになったのは、インフレ率が高くないにもかかわらず、日銀がバブル潰しとして金融引き締めを行ったからです。それは間違いだったのに、その後も日銀が間違いを続けたため、日本はデフレ状況から抜け出すことができませんでした。さらに、これに消費税増税が追い打ちをかけました。

新しい元号「令和」の決定を受け、記者会見で談話を発表する安倍首相

しかしそれは、平成最後の安倍晋三政権でただされました。2013年4月から、異次元の金融緩和を行い、日本経済が急速に改善しはじめました。ただし、その後2014年4月から、消費税を8%にあげ、さらには2016年9月で事実上の金融引き締めを行い、景気も17年12月あたりがピークとなってその後下降気味で、すでに腰折れしているようです。

今月1日に公表された日銀短観は、これらを確認するものでした。大企業・製造業の業況判断指数は、前回の昨年12月調査から7ポイント悪化し、悪化幅は12年12月調査以来、6年3カ月ぶりの大きさとなりました。

平成は、日銀の間違いから始まって、間違いで終わるのでしょうか。そうして、「令和」元年は、10%への消費税増税という間違いから始まるのでしょうか。

もし、そうなれば、「若い世代の皆さんが、それぞれの夢や希望に向かって思う存分活躍することができる、そういう時代」とは程遠い時代になります。

また、若者が真っ先に苦しむ時代になります。それだけは、避けたいです。令和年間を「消費税増税」という大間違いから初めてはいけないのです。

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2019年2月10日日曜日

「G20大阪サミット」財務官僚が絶対に失敗できない「内部事情」―【私の論評】二ヶ月後に消費税「再々延期」が決定されるこれだけの理由(゚д゚)!

「G20大阪サミット」財務官僚が絶対に失敗できない「内部事情」
悲願の消費税10%にまっしぐら


「財務トラック」にかける意地

2019年6月のG20サミットが大阪で開催されるため、日本は昨年末から初の議長国を務めている。

1月17日、議長国になって初の会合である財務相・中央銀行総裁代理会議が行われた。財務省と日銀が合同で開催したシンポジウムで、テーマは高齢化が経済成長に与える影響についてなど、さまざまな方面から経済について論じられた。

G20開催にあたり、「存在感を示したい」と一際張り切っているのが、麻生太郎財務相だ。昨年は自身の発言の追及や財務省高官のスキャンダルに苦しめられ、名誉挽回のチャンスを窺っている。

先日、少子高齢化問題に対して「子どもを産まなかった方が問題」
という発言が非難され、発言を撤回した麻生太郎副総理

G20は世界各国の大統領、首相が一堂に会する会議だが、これに合わせて関係閣僚の間でも日本各地で会議が開かれる。

列挙すると、財務大臣・中央銀行総裁会議は福岡県福岡市、労働雇用大臣会合は愛媛県松山市、観光大臣会合は北海道倶知安町、農業大臣会合は新潟県新潟市、貿易・デジタル経済大臣会合は茨城県つくば市、エネルギー・環境関係閣僚会合は長野県軽井沢町、保健大臣会合は岡山県岡山市、外務大臣会合は愛知県名古屋市といった具合だ。

安倍首相は1月23日のダボス会議で、大阪のG20サミットを「大阪トラック」と表現した。これになぞらえるように、財務省もG20財務大臣・中央銀行総裁会議を「財務トラック」と呼んでいる。

本来であれば「福岡トラック」なのだろうが、あえて「財務トラック」というところに意地を感じる。

失敗は許されない

この財務トラックでは、

(1)世界経済のリスクと課題
(2)成長力強化のための具体的取り組み
(3)技術革新・グローバル化がもたらす経済社会の構造変化への対応

が話し合われる予定だ。

今年の世界経済はかなり不透明で、経済の鈍化が見られる中国では大規模な減税に取り組むという。これが世界経済にどのような影響を与えるかは未知数だ。またイギリスのEU離脱も世界経済にとって大きな波乱要因となる。

こんなときに、今年10月から消費増税するという財務省は、世界経済の動きから見ればまったく逆行している。しかし、財務省は、そうした議論は避け、世界経済は悪くないという印象を国民に与えて、G20を乗り切る腹づもりなのだ。

当然、あくまで印象づけが目的の財務トラックなので、たいした提言は出ない。

(1)世界経済のリスクと課題といっても、よく「注視」しようというだけだ。

(2)成長力強化のための具体的取り組みでは、インフラ投資をやりましょうというが、肝心の増税政策をやめるとはいわない。

(3)技術革新・グローバル化については、国際租税に強い浅川雅嗣財務官の手前味噌感が強い。財務省の対外部門トップである浅川財務官は麻生氏が総理時代の'08年9月に秘書官に就任していて、麻生氏の信頼は厚い。

浅川氏は一時財務次官への就任も噂されていたが、まだ叶っていない。

財務官は4年目を迎え準備は万端、大舞台を切り盛りするのが花道になるだろう。と同時に、国内の問題で権威の失墜した財務省の復権にもなる。

財務省がいちばん避けたいのは、G20の運営が消費増税に影響すること。国際会議という大舞台、財務省は失敗できない。

【私の論評】二ヶ月後に消費税「再々延期」が決定されるこれだけの理由(゚д゚)!

年初から株式や為替相場が大荒れとなる中、市場関係者らの間で今年10月に予定される消費税率10%への引き上げが再び延期されるのでは、との観測が浮上しています。

過剰との指摘が絶えないさまざまな増税対策も、政権にとっては茶番に過ぎないのでしょうか。気になるのは、日本経済を取り巻く環境が、前回増税延期が決まった16年と似通ってきていることです。

増税再々延期される6つの理由

実際、日本経済を取り巻く環境は、安倍晋三首相が増税再延期を表明した16年の前半と大きく6つの点で似通ってきているようにみえます。

一つ目は、日本経済の停滞感が強まってきたことです。物価変動の影響を除いた実質GDP(国内総生産)は4半期ベースで見て18年に、1~3月期に続き、直近発表の7~9月期が二度目のマイナス成長(前期比、季節調整済み)を記録。景気拡大の長さが今月をもって08年2月までの戦後最長景気(いざなみ景気)を上回る局面にあるとはいいながら、回復ペースは非常に緩やかです。

人手不足でもなかなか賃上げ加速につながらないことを取っても、日本経済は決して盤石ではありません。さらに、為替市場ではこの1ヵ月で急速な円高・ドル安が進み、年明けには一時1ドル=104円台まで急騰。足元では108円ほどまで戻していますが、自動車はじめ主力の輸出企業への逆風となっており、増益を続けた企業収益に19年度は黄信号が灯っています。

一方で振り返れば前回の増税の先送り表明前の16年2月に発表された15年10~12月期のGDPもマイナス成長(同)となり、市場予想を上回る減速ぶりを示していました。しかも同期間の速報値発表時は18年と同様、15年の4半期ベースで見た成長率では、4~6月期に続く二度目のマイナスとなっていたのです。

2つ目は、16年の「チャイナショック(中国ショック)」の再来が現実化しつつあることです。同年初頭は中国国家統計局が発表した12月の製造業購買担当者景気指数(PMI)の悪化を引き金として投資家心理が悪化し、年明け直後から世界同時株安の様相を呈する事態を招き、リスクオフ(リスク資産の敬遠)の雰囲気が広がる中で外国為替市場でも急速な円高・ドル安が進みました。

1月30日と31日、ワシントンで米中閣僚級貿易協議

今年はどうかといえば、日本市場の大発会が大幅安となった主因は米アップルの売上高見通しの下方修正でしたが、その理由こそは中国経済の減速に他ならないです。

米中貿易戦争の影響も重荷となって中国経済は内外需とも勢いを欠いており、直近でも1月2日に財新・マークイットが発表した18年12月の中国PMIは、19ヵ月ぶりに景気判断の分かれ目となる50を下回りました。経済状況の厳しさを物語るように中国株は下落局面が続き、上海総合指数は16年のチャイナショック時の安値を下回る状況にあります。

3つ目、参議院議員選挙(参院選)を控えるタイミングであることです。16年は6月の増税延期表明を経て、7月の参院選では自民、公明の与党が改選定数の過半数を確保し大勝。安倍首相の悲願とする改憲に向けて、改憲派勢力は憲法改正発議に必要な3分の2の議席数を得ることになりました。
今年に目を向けると、7月に安倍首相の自民党総裁任期である21年9月までで最後の参院選を迎えます。現職中に憲法改正を発議したいなら、残された時間は多くないです。19年は4月に統一地方選も控える中、是が非でも改憲を実現したい安倍首相にとって、増税延期を追い風とした16年の“成功体験”はまだ記憶に新しいことでしょう。
4つ目は、日本が開催国として首脳会議(サミット)の議長国を務める点にあります。16年は5月下旬に伊勢志摩で開いたG7(主要7ヵ国)首脳会議(サミット)の場で、安倍首相が「世界経済はリーマンショック前と似ている」などと主張。幾つかのデータを示しながら消費増税の先送りの条件としていました。

「リーマンショック級」の危機をことさらに強調したほか、財政政策でのG7の協調を訴え、明らかに増税延期への地ならしを進めていました。

一方、今年は6月下旬に日本がG20(主要20ヵ国)では発足以来、初の議長国を務めるサミットが控えています。そこで気になるのは、関連会合として重要な存在である同月上旬のG20財務相・中央銀行総裁会議(福岡)に向けて、麻生太郎財務相が「経常収支の不均衡是正」を主要議題の一つに挙げていることですだ。
G20各国の経常収支の動向を見ると、トランプ大統領が行った減税策も影響する形で、米国の経常赤字額が圧倒的に大きくなっています。一方で、EU(欧州連合)や日本は17年に潤沢な経常黒字を確保しています。

経常収支の不均衡に焦点を絞った場合、内需拡大による貿易収支悪化が日本の経常収支の悪化、ひいてはG20の間の経常収支不均衡にも通じるのは事実です。

つまり伊勢志摩サミットで繰り出された論理展開も踏まえると、日本は経常収支の不均衡是正に向けてリーダーシップを取るために、財政政策の一環として内需の重荷となる消費増税「再々延期」を決めるのではないかとの観測につながります。

さらに、これは以前このブログにも掲載したことですが、トランプ大統領は、日本の消費税は輸出産業への補助金だと見なしています。米国が日本に対して貿易赤字を抱えているのは、日本が輸出産業に消費税という名の補助金を出し、消費税のない米国で有利にクルマなどを売るからであって、日本はダンピングしているとさえ言っています。

そうして、米国議会も、消費税は不公平な税制であるとみなしています。

5つ目は、今年も英国のEU離脱(ブレグジット)を巡る不透明感がくすぶっている。16年は6月23日にEU離脱の是非を問う英国民投票を実施。市場では残留派の勝利が見込まれていただけに金融市場には大きなショックをもたらし、為替市場では離脱決定後、対ポンドのみならず対ドルでも円相場は急騰しました。

国旗を掲げながらブレグジットを支持するデモ隊

結果的に増税延期の表明後にブレグジットが現実化した形ですが、伊勢志摩サミットでも英国民投票の行方は各国間で大きなリスク要因との認識が広がっていました。

今年は3月29日に英国がEUとの交渉期限を迎えますが、英国内で議会承認が進んでおらず、このままいくと英EU間の物流寸断など大混乱必至の「ハードブレグジット(合意なき離脱)」に至る可能性が未だに払拭されていません。

しかも、これら5つの類似点に加え、足元は昨年から本格的な“貿易戦争”に突入した米国と中国の経済摩擦、トランプ米大統領の不安定な政権運営、世界経済のけん引役となってきた米国の景気減速懸念、米利上げを巡る金融市場の緊張といった海外発のリスクが懸念される状況にあります。

直近では、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が市場の状況次第で利上げペースを鈍らせる可能性に言及し、株高を演出した形ですが、トランプ氏がパウエル議長の解任までちらつかせるような状況を踏まえると不安の緩和は一時的に過ぎないといえます。

6つ目は、さらに国内に目を向けると、消費増税と同時に導入する軽減税率制度への対応を巡って、中小事業者の間でシステム改修などの遅れが伝わっており、何が外食に当たるかの線引きの議論一つを取っても既に混乱の声が多数聞こえてきます。

中小店でキャッシュレス決済した場合のポイント還元制度についても世論の反応は芳しくないです。ある市場関係者は「うがった見方をすれば、それぞれの増税対策が問題を抱えること自体が増税延期の理由となってもおかしくない」と話しています。これと似たようなことは、前回の消費税延期や再延期のときもありました。

評判の悪い軽減税率
増税延期表明はいつか?

では、延期表明をするならいつなのでしょうか。これまでの経緯を振り返ると、消費税率10%への引き上げは当初15年10月に予定されていましたが、安倍首相は14年11月、17年4月へ1年半の先送りを表明。さらに16年6月1日、19年10月へ2年半延期する方針を発表しましました。

今年は次期通常国会が1月下旬に召集され、19年度予算が国会で成立するのは、例年通りなら3月下旬頃となります。さすがに国会審議中にその予算を否定するような方針は示しにくいです。

消費増税が予定される10月まであまり猶予はないものの、市場では「予算成立直後の4月初頭に延期を表明し、財源の不足分は補正予算を組むことで賄う」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)との見立てが出ています。このシナリオ想定の元、上野氏は6~7割の確率で今回も消費増税が先送りされると読んでいます。

実際、1月3日のラジオ番組では菅義偉官房長官が、19年の消費増税を取りやめる場合の判断時期について予算成立直後がめどになると発言。まだ増税先送りの判断があり得ることをにおわせています。

そうすれば、安倍政権としてはその後のG20会合で、日本が経常収支の不均衡是正に向けた旗振り役として、内需拡大に逆行する消費増税先送りや積極財政の方向に動いたとの訴えかけもできるでしょう。

前回の増税延期後の17年9月、安倍首相が消費税の使途変更の方針を表明したことは以前からの大きな変化として念頭に置かなければならないです。消費税の増収分を幼児教育無償化などに充てる方針を表明し、「使途変更の信を問う」として同年10月に衆議院を解散。総選挙に臨み、結果的に自民党が単独過半数を確保する圧勝に終わりました。

上野氏は今回、安倍首相が選挙のマイナスとなるような行動を避けるため、消費増税を延期した上で幼児教育無償化などの方針は変えず、バラマキ色を強めていくとみています。

一方で、国内株式市場の売買を主導する外国人投資家の意見は割れているようです。今回こそは消費増税に動かなければ財政健全化に向けた信認を失いかねないとの見方がある一方、完全にデフレ脱却を果たしていない現状で内需の逆風となる増税を課すのはナンセンスだとの姿勢も見受けられます。

確かにどれだけ対策を講じても今後、消費増税が少なからず個人消費の重荷となるのは避けがたいです。新聞各紙の世論調査でも「消費増税を予定通り実施すべき」と考える人は、3年前より増加傾向にある様が見て取れます。

現政権のキーマンの考え方を見ると、麻生氏が財務相という立場的にも消費増税を行うべきとの立場を貫く一方、菅義偉官房長官は慎重姿勢が根強いとみられています。

政権で不動の地位を築く両氏の姿勢も一枚岩でない中、あらゆる要素を加味した上で最終的に安倍首相が今回どのような決断を下すのか。この先の政権の命運をも大きく揺さぶりかねない大きな決断が、2ヵ月後には訪れることになります。

結論

「二度あることは三度ある」のでしょうか、「三度目の正直」となるのでしょうか。このブログに掲載してきたように、財政赤字は財務省が創作する妄想に過ぎず、もう日本の財政再建は終わったにも等しい状況にあります。

その意味では、財務省は別として、国民の側はもとより、政治家にとっても増税など全く意味がありません。私は、今回増税すれば、個人消費が落ち、またデフレに舞い戻るのは必定とみています。

そうなれば、安倍政権は政権末期でレイムダックになるのは必定です。安倍総理が念願している憲法改正もかなわる夢となりかねません。これを考えると、今回も、安倍首相が増税延期に動く可能性は、十分過ぎるほどあるように思えてならないです。

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2018年11月18日日曜日

来年1月4日の国会召集は妙手 消費増税の最終判断は4月に 7月衆参ダブル選の可能性も―【私の論評】増税すれば、安倍政権はレイムダック化し憲法改正もできず、何も良いことはない(゚д゚)!

来年1月4日の国会召集は妙手 消費増税の最終判断は4月に 7月衆参ダブル選の可能性も


高橋洋一 日本の解き方



国会 衆議院会場

来年の通常国会を1月4日召集とする説が浮上している。消費増税をめぐる判断や憲法改正のスケジュール、参院選と衆院選との同日選の可能性など、来年想定される政治日程を考えてみよう。

 政治の世界は一寸先は闇といわれる。そのとおりなのだが、その中でも予測をするためには、スケジュールがどうなるかを検討するのはイロハのイだ。そこでまず押さえておくのは事前に確定している政治・外交日程と経済指標の発表日である。

 確定している政治日程として、来年1月中に通常国会召集、3月中に来年度予算案成立(見込み)、4月上旬から中旬に統一地方選、5月1日改元、6月中に通常国会会期末、7月中に参院選、7月28日参院の任期満了となっている。

 外交日程は、今年11月末にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議、来年6月末の大阪でのG20首脳会議がある。

 経済指標発表では、来年2月中旬に2018年10~12月期国内総生産(GDP)速報値、来年5月中旬に1~3月期GDP速報値が予定されている。

 来年の最大の政治イベントは7月の参院選だ。この結果いかんでは憲法改正のスケジュールなどは全く無意味になってしまう。そこで、参院選の争点となりうる経済、消費増税の是非に関心がいく。消費増税については、法律上、来年10月から実施が予定されているが、まだ安倍晋三首相が最終決断したわけでない。本コラムでも書いてきたが、今のところ可能性は高くないものの、来年4月に君子豹変(ひょうへん)する可能性なしとはいえない。

 焦点は参院選の投開票日だ。確定しているのは7月28日の任期満了である。公職選挙法では、「議員の任期が終わる日の前30日以内」(32条1項)と、この30日間が国会閉会から23日以内にかかる場合は閉会から「24日以後30日以内」(同2項)だ。

 結論を言おう。国会は150日間開催なので、できるだけ早く通常国会を召集したほうが、延長をしなければ会期末が早くなり、結果として参院選の開催オプションが広がるのだ。国会召集は法律上、1月中なら可能なので、一番早い1月4日にすると参院選は6月28日から7月27日の間、日曜なら6月30日、7月7日、14日、21日で可能になる。

 いずれにしても、国会召集日がいつになるかによって参院選の日程が絞られる。

 国会開催中に首相が衆議院を解散すれば、40日以内で総選挙になるので、衆参ダブル選挙も可能になる。来年の通常国会で予算案以外の法案を出さずに1月に早期召集すれば、参院選日程のオプションが広がる。その場合、7月のどこかで衆参ダブル選もありえる。

 ダブル選挙は、野党の共闘が困難になるので、与党有利といわれている。年内は政府・与党内で来年度予算が作られるが、来年早々から与野党間で国会スケジュールをめぐるつばぜり合いがあるだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】増税すれば、安倍政権はレイムダック化し憲法改正もできず、何も良いことはない(゚д゚)!

増税は、まともに考えれば、安倍政権にとっては命取りになることははっきりしています。なぜなら、10%増税を予定通りに来年の10月に実行してしまえば、その後安倍政権の支持率は確実に落ちます。そうなると、国会では改憲派が過半数以上という状況を維持するのは困難になります。

安倍総理

そうなると、残りの任期中には、憲法改正どころか、レームダックになってしまうことになります。安倍総理は念願の憲法改正には、手も足もでなくなってしまいます。

私は、安倍総理がこのような道を選ぶとは思えないのです。安倍総理は、国会て改憲派が半数以上という状況を維持しつつ、何とか憲法改正に道筋をつけたいと考えているはずです。であれば、増税を回避あるいは、延期するのが、もっとも安全策であると考えるはずです。

それに、安倍総理自身は、10%への消費税増税は全く無意味であることをご存知であると考えます。

消費税を増税しても無意味であることは、このブログでも過去に何度も掲載してきました。これについては、過去のブログの記事を参照していただきたいと思います。それはそれとして、経済的な知識などなくても、常識で考えれば増税しても無意味なことは小学生でも簡単に理解できることです。本日はそのことを以下に掲載します。

まずは、以下に1989年と2016年の税収内訳を掲載します。1989年というと、3%の消費税が導入された年です。


2016年は、消費税が8%です。1989年と、2016年を比較すると、消費税の税収はあがっていますが、所得税と法人税は下がり、総税収は54.9兆円と55.5兆円でほぼ同水準です。

消費税の無かった1988年の税収も54兆9000億ですから 消費税を何%上げても総税収は変わらないといえるのではないかと思います。結局総税収上げるなら経済成長するしか無いようです。

以下に、過去の"消費税の「導入」と「増税」の歴史"をチャートにまとめたものをあげておきます。


以下には、消費税を導入してから直近までの税収の推移のグラフを掲載します。


消費税をはじめて導入した1989年には、税収は確かに伸びていますが、消費税を上げる直前の2013に至るまで、1988年の税収を一度も上回っていません。それでも、消費税を8%にした後の、17年、18年には、1988年の税収を若干上回っているようですが、それもごく僅かです。

さらに、先にあげたように、2016年の1989年と総税収はほぼ同等なのですが、所得税、法人税は減って、消費税が増えています。

これは、常識的に考えると、消費税をあげると景気が落ち込み、所得税と、法人税が減少し、税収はあまりかわっていないことを示しています。

これをみただけでも、消費税増税はほとんど意味がないことがわかります。

景気の回復指標としては、値動きが激しい生鮮品とエネルギー価格を抜いた、コアコアCPIの前年同月比が参考になりますが、直近の数字は+0.4%の微弱な上昇を示しています。日銀のインフレターゲットは2%ですので、全く達成できていません。

このようなときに増税すれば、微弱や0.4%の物価上昇など、消費が低迷して、すぐにマイナスになることでしょう。せっかくデフレの重力から抜けかかっている日本経済が、再びデフレ状態に舞い戻ることになります。

せっかく日銀が、マイナス金利政策を導入し、市場から国債を買って金融緩和をしているにもかかわず、これでは景気の回復を政府(財務省)が邪魔をすることになります。

しかも、何らかの規制をするにしても、外国人労働者を受け入れ、さらに増税をするということになれば、日本人はもとより外国人も失業というダブルパンチを見舞うようなものです。

この試みは、結局日本人は無論のこと、まさか一端受け入れた外国人を生活できないなら母国に帰れなどとはいえないでしょうから、外国人の生活保障という形で跳ね返ってくることになります。財務省は、財政と社会保障の一体改革などという看板をあげているにもかかわらず、消費税をあげて生活保障のコストをあげるという全く相矛盾したことになります。

財務省は、消費が下がらない前提で、消費税1%の増税で、税収2.4兆円の増収などというとんでもない計算をしていますが、本当に増税して個人消費がさがならないなどと言い切れるのでしょうか。14年に増税したときは、個人消費が落ち込み、その悪影響はかなり長期わたって続きました。

税収を上げる方法は、税収の式を見ればすぐに理解できます。

税収=名目GDP✕税収弾性値✕税率
税収弾性値=税収の伸び率÷名目成長率

1995年から2013年までの財務省公式税収弾性地平均は4.4です。この式からも、税収をあげるには、税率を1%あげるよりも、名目GDPを1%あげるほうが、4.4%税収が増えることがわかり、はるかに増えることが理解できます。

税収を増やすには、マイルドなインフレによる経済成長にともなう税収アップ以外にはありえません。

どうしても、消費税を10%にあげたいというのなら、会計上は10%ということにして予算を組み、消費税減税法を作れば良いです。そもそも、消費税をあげて皮算用の税収を稼げない場合は、国債を発行することになるわけですから、減税して国債発行するのも同じことです。

インフレターゲット2%を達成するには、現在の8%では達成できないのは、もうわかっているのですから、現在消費税5%、できれば0%にまで減税すべきです。

インフレ率が2%超えてきたら、減税分を減らして8%にして、それでも歯止めが止まらなければ10%にするなどの調整が必要です。

それでも、まだインフレが亢進するというなり、マイナス金利をやめれば良いのです。

それでも、まだ亢進するというなら、今度は日銀が溜め込んだ国債を今度は市中銀行に売り出し、日銀が現金を吸い上げればよいだけの話です。国債の金利もかなり下がっているにもかかわらず、現状はかなり国債は品薄ですし、日銀が国債を売り出せば、入れ食い状態になるのはわかりきっています。

ようするに、ハイパーインフレの心配など全くないということです。

安倍総理には、無意味な消費税増税は、先送りもしくは廃止していただき、そのためには、「消費税先送り」を公約として、来年は衆参同時選挙を行い、大勝利して、経済を立て直し、国民の支持率をさらにあげて、改憲勢力をさら多くして、改憲に成功していただきたいものです。

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2017年6月16日金曜日

骨太方針から消えた「消費税」 財政再建は事実上終わっている、英政権は「緊縮病」で失敗―【私の論評】度々財政を間違える英国だが、日本はいつも間違えてばかりだった(゚д゚)!

骨太方針から消えた「消費税」 財政再建は事実上終わっている、英政権は「緊縮病」で失敗

「骨太の方針」の表紙

 政府が閣議決定した「骨太方針」から消費税の引き上げに関する言及が消えたと報じられている。

 昨年の「骨太2016」では、「『成長と分配の好循環』の実現に向け、引き続き、『経済再生なくして財政健全化なし』を基本とし、消費税率の10%への引き上げを2019年(平成31年)10月まで2年半延期するとともに、2020年度(平成32年度)の基礎的財政収支黒字化という財政健全化目標を堅持する」との記述があった。

 今回の「骨太2017」では、「『経済再生なくして財政健全化なし』との基本方針の下、引き続き、600兆円経済の実現と2020年度(平成32年度)の財政健全化目標の達成の双方の実現を目指す」とされ、消費税増税については書かれていない。

 もっとも、消費増税については、法律で予定されているものなので、政府としてその方針には変更はない。つまり、骨太方針に書かれていないといっても、新たな法律を制定しない限り、19年10月の10%への消費増税が実行されることになる。

 ただし、財政再建至上主義者にとっては、先日の本コラムで書いたように、財政目標でプライマリーバランス(基礎的財政収支)の重要性が当面なくなったことで、財政健全化の動きが大幅に後退すると心配しているかもしれない。

 ちなみに、「財政健全化」という言葉は、「骨太2016」では12回使われていたが、「骨太2017」では6回に減っている。これも彼らの懸念に拍車をかけていることだろう。

 実際のところは、債務残高対GDP(国内総生産)比とプライマリーバランスの間には密接な関係があり、債務残高比対GDP比を発散させないような経済運営が本来であるので、財政再建至上主義者の懸念は的外れである。

 これまで何度も書いてきたように、財政状況は、連結ベースの統合政府バランスシート(貸借対照表)でみるべきである。であれば、理論的には財政再建目標は、債務から資産を差し引いた「ネット債務残高対GDP」を低位に保つことが重要となる。

 現状において、ネット債務残高対GDPはほぼゼロであるので、そもそも財政を気にする必要がないというのが、理論的な帰結である。

 このような状況を安倍晋三首相はよく把握しているのだろう。ノーベル経済賞学者のジョセフ・スティグリッツ氏やクリストファー・シムズ氏を呼んで講演してもらっているのも、そうした意見を補強するという意味でうなずける。

 安倍首相はさらに、憲法改正で教育無償化を打ち出した。これに必要な財源はざっと見ても4兆~5兆円である。教育投資国債を抜きにして賄うことはまずできない。

 ネット債務残高対GDPはほぼゼロという事実からみれば、消費増税は必要なく、また投資のための国債を発行しても、財政状況を悪化させる要因にならない。

 財政再建至上主義者はこれらに反対だろうが、理論的根拠は乏しく、「緊縮病」を患っているようにみえる。英総選挙で、緊縮財政を指向したメイ政権は過半数を取れなかった。緊縮財政は政治的にも経済的にも失敗することを示した。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】度々財政を間違える英国だが、日本はいつも間違えてばかりだった(゚д゚)!

骨太の方針については、以下のリンクからご覧いただけます。


骨太の方針は、本来は「背骨(バックボーン)の方針」とするべきでしょう。背骨から生える各あばら骨という「政策」は、全てバックボーンの影響を受けます。

バックボーンの方針で「プライマリーバランス黒字化」が決定された場合、予算措置を伴う全ての政策が、「新たな支出をするならば、他の予算を削るか、もしくは増税する」という、狂った方針に従わざるをえないことになりかねません。

問題の「財政健全化目標」については、以下の通りとなっています。

『経済財政運営と改革の基本方針2017(略)基礎的財政収支(PB)を2020 年度(平成32 年度)までに黒字化し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。このため、「経済再生なくして財政健全化なし」との方針の下、デフレ脱却・経済再生、歳出改革、歳入改革という「3つの改革」を確実に進めていく必要がある。(後略)』

結局、2020年までのPB黒字化という狂った目標は、骨太の方針に残ってしまいました。何とか「債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す」を盛り込むことはできましたが、「基礎的財政収支(PB)を2020 年度(平成32 年度)までに黒字化」を削除することはできませんでした。大変、残念です。

PB目標が残ったことで、2017年の日本の再デフレ化の懸念を考えざるを得ない状況になってしまいました。

すでにして、GDPデフレータが対前期比▲0.5%と、デフレ化の方向に突き進んでいるにも関わらず、デフレギャップを埋める財政拡大は難しいでしょう。何しろ、PB目標がある限り、

「財政を追加的に拡大するならば、他の予算を削るか、増税」
 
という話になってしまいます。

ちなみに、経済がデフレ化すると、名目GDPが伸びにくくなります。実際、2017年1-3月期の名目GDPは、対前期比▲0.3%でした。

名目GDPの停滞は、既に2016年から始まっています。GDPデフレータも、2016年からマイナスが始まりました。

つまりは、日本経済は2016年から「再デフレ化」した可能性が濃厚なのです。まだ、推移をみてから判断する必要はありますが、それにしても、厳密にはデフレではなかったとしても、デフレすれすれという現実は変えようがありません。

経済がデフレ化し、名目GDPが伸びなくなると、税収が減ります。理由は、我々は所得から税金を支払っており、所得の合計がGDPになるためです。

そんなことは、あるはずがない! などと思う方々に、残念なお知らせがあります。
国の税収、プラス成長でも7年ぶり減 16年度   
国の2016年度の税収が7年ぶりに減収に転じ、政府の見積もりも2年連続で割り込む見通しだ。所得税収は7年ぶりの前年割れで、法人税収も伸び悩んだ。税収は今年1月時点で55.8兆円と見込んだが、さらに数千億円減るもよう。プラス成長でも税収が減った形で、安倍政権が経済運営の基本に掲げる「成長による税収増」の土台が揺らいでいる。(後略)
これは、現在の「プラス成長(=実質GDPの成長)」は、名目GDPが伸び悩む中、GDPデフレータというインフレ率がマイナスに落ち込んでいる結果を計算しているに過ぎないわけですから、こうなるのが当然のことです。

このような税収の減少は、財政再建至上主義者らの「このままでは財政破綻する! 早期のPB黒字化を!」という声を大きくします。

結果、我が国はデフレ脱却に必要な財政出動ができず、デフレが深刻化し、名目GDPが伸び悩み、税収が減るという悪循環に突っ込む可能性も高くなります。これは、結局のところ昨日のこのブログにも掲載したように、やはり8%増税の悪影響です。以下のグラフを見てもわかるように、消費性向が16年から急激に落ち込んでいます。


一方『骨太の方針』からは、消費税増税という文字は完璧に消えました。これは、安倍総理の増税はしないとの決意の表れともとれます。

これは、ブログ冒頭の記事にある高橋洋一氏が主張する統合政府ベースではすでに、政府の借金はないということからも、明らかです。借金をする必要のない政府が、増税をする必要性など全くありません。

上の記事でも、「英総選挙で、緊縮財政を指向したメイ政権は過半数を取れなかった。緊縮財政は政治的にも経済的にも失敗することを示した」とありますが、全くそのとおりです。

緊縮財政で足をすくわれた英国メイ首相
イギリスは良く財政政策を間違います。このブログでもかなり前に、増税の失敗を掲載したことがあります。これは、日本の8%増税の前に実施されたものですが、これは惨憺た大失敗でした。特に、若者雇用がかなり酷く悪化しました。その失敗を補うために、イングランド銀行(イギリスの中央銀行、日本の日銀にあたる)は大規模な金融緩和に踏み切りました。それでも回復までには、かなりの年月を要しました。それについてはこの記事の最後のほうの【関連記事】のところに掲載しますので、是非ご覧になって下さい。

さて、メイ首相は、前のキャメロン政権で治安対策の責任者である内相を務めました。当時の保守党は緊縮財政を進めるため、警察官を2万人削減。このことで、メイ首相を批判する声が出ています。労働党のコービン党首らは、メイ首相に辞任を求めています。

これに対し、メイ首相は6日の演説の中で、「選挙の数日前には、新たな政策を数多く発表するつもりはないが」と前置きした上で、「テロ行為で有罪判決を受けた人々の刑期を長くするべきだ」「当局が外国人のテロ容疑者を、自国に送り返すことをより容易にすべきだ」と述べ、移民の権利を手厚く保護する「人権法」を改正することで、さらなる対テロ対策を実施する方針を示しました。

 英タイムズ紙は13日、関係筋の話として、有権者による緊縮財政への忍耐が限界に達していることをメイ首相が認めたと報じました。

記事によるとジョンソン外相、デービス欧州連合(EU)離脱担当相や他の与党保守党議員らは、首相に対し、緊縮財政に対する国民のムードを首相は読み違えたと述べたといいます。

首相は前週の総選挙で単独過半数を取れず、北アイルランドのプロテスタント系民主統一党(DUP)との連立協議を開始しました。

このように、緊縮をすれば、経済が落ち込み国民の反発は必至です。緊縮、それも日本経済がデフレに再突入したか、しないかの現在の状況で緊縮をすれば、とんでもないことになるのはわかりきっています。GDPは伸びは更に落ち込み、マイナス成長になりデフレに逆戻りです。

緊縮は本当に高くつくということを日本の政治家は忘れてしまったようです。緊縮財政を続けてきた過去の日本の政権は、全部短期で終わっています。例外はありません。財政再建至上主義の政治家はまたこれを繰り返したいのでしょうか。

どうやらそのようです。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に否定的な自民党有志による「財政・金融・社会保障制度に関する勉強会」(野田毅会長)が15日、2回目の会合を国会内担当で開き、石破茂前地方創生相ら議員約30人が出席しました。講師の早川英男元日銀理事は「デフレ脱却による高成長は幻想だ」とアベノミクスを批判し、石破氏は記者団に「原油安と円安に頼る経済政策であってはならない」と述べました。

石破茂前地方創生相
どうやら、彼らは財政件至上主義で増税などすれば、国民をデフレスパイラルのどん底に落とし、塗炭の苦しみを与えるこになり、そうなれば、国民の反発を招きそもそも政権を維持することすら困難になりかねないということに気づいていないようです。まあ、私達国民としては、どのような政権になったにしても、まずは経済がまともであれば良いということなのですが、では野党はどうなのかといえば、経済に関してはほとんどが落第生です。それ以前に、森友・加計問題で、騒ぎ回る馬鹿集団です。問題外です。

そうなると、やはり経済を考えれば、今は安倍政権を支持するという選択肢しかありません。本当に困ったものです。


上には、英国の例を出しましたが、考えてみれば、日本は英国よりも財政政策を間違えてばかりです。こんなことですから、現在に至っても未だ、GDPの伸びは英国はおろか、韓国すら上回っていない状況です。馬鹿な政治家どもに言いたいです、いい加減に気づけよと・・・・!

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2017年6月15日木曜日

なぜ日本の「実質GDP成長率」は韓国以下のままなのか?―【私の論評】緊縮会計をやめて消費税も5%に戻せ(゚д゚)!

なぜ日本の「実質GDP成長率」は韓国以下のままなのか?

政府・日銀の物価見通しは楽観的過ぎる

安達 誠司 


   消費税率引き上げの後遺症

 2017年1-3月期の実質GDP成長率は季調済前期比+0.3%(同年率換算+1.0%)となった。実質GDP成長率は、5四半期連続でプラス成長となったが、この5四半期の平均の実質成長率は+1.5%(年率換算)であり、全く盛り上がりを見せない。他の先進国と比較しても見劣りがする水準である。

 最近では、韓国経済の惨状を指摘する議論を耳にするが、韓国の実質成長率の平均は2%程度であるので、実質成長率という観点では、韓国に見劣りするのが現状だ。

この低迷の理由は明らかである。内需部門の不振が続いているためである。特に、2014年4月の消費税率引き上げ以降の個人消費が一向に回復の兆しをみせないことが大きい。さらにいえば、2015年以降の低迷が鮮明である。

例えば、これは、第3次産業活動指数の動きをみると明らかである(図表1)。


また、第3次産業活動指数の中でも対個人向けサービス業(小売や外食、遊興など)の低迷が著しい。対個人向けサービス業の活動指数の水準は、2015年以降、横ばいから若干低下気味に推移している。

  なかでも、2014年4月以降の「嗜好的個人サービス」の低迷が著しい(図表2)。


「嗜好的個人サービス」は、外食や、娯楽などの余暇的なサービス業を含むが、これは、比較的、生活に余裕が出てこないと増えてこないと推測される。この「嗜好的個人サービス」の低迷は、消費税率引き上げ以降、一般国民の生活に余裕がなくなっていることを示唆している、ととれなくもない。

さらには、「非選択的個人サービス」の活動指数もここ数ヵ月は低下気味である。

この「非選択的個人サービス」には、医療や介護、教育などが分類されると考えられるが、これらのサービスは、国民にとっては、「義務的支出」の一種なので、「消費」というよりも、「経費(コスト)」に近いものだろう。

「非選択的個人サービス」の活動水準の低下は、ここに来て、国民生活の余裕度がさらに低下してきていることを示唆している。そして、この状況は、「景気ウォッチャー調査」における景気の現状判断DI(特に、飲食関連、サービス関連)の動きとも整合的である。

   個人消費低迷の理由は何か

「景気ウォッチャー調査」では、景気判断の理由についてのコメントがあり、それなりに有用だが、個人消費低迷の理由については、このコメントでは必ずしも定かではない。コメントをまとめれば、単に「消費センチメントがなぜか盛り上がってこない」と言っているに過ぎないためだ。

一般的に言って、個人消費が低迷する一番の理由は、所得(可処分所得)の減少である。ところが、可処分所得の伸び率は、過去と比較するとまだましな部類である。また、最近の雇用環境の改善から、「雇用者数×一人当たり賃金」に近い統計である「雇用者報酬」の伸びは高まっている。

2016年度の雇用者報酬の伸び率は、名目では前年度比2%、実質では同2.2%で、これは、デフレ前の1995年度の伸び率とほぼ同じである。

それでは、消費低迷の理由は何か、ということだが、可能性として最も高いのは、「貯蓄性向(可処分所得にうち、どの程度の割合を貯蓄に回すか)」の高まりである。これは、裏を返せば、「消費性向の低下」ということに他ならない。

ちなみに、消費の低迷は、「消費水準が低い高齢者の割合が上昇したことによる」という説があるが、これは誤りである。高齢者の消費水準が仮に低いとしても、所得水準も年金収入が主だとすると低いはずなので、この場合には消費性向は低下せずにむしろ、上昇するはずである。

そこで、「家計調査」における勤労者世帯(2人以上)の消費性向の動きをみると(図表3)、2015年初めをピークに、その後、急低下していることがわかる。すなわち、2015年以降の家計は、雇用環境の改善により、そこそこ、所得は増えながらも、「節約志向」を高め、所得をより貯蓄に振り向けているということになる。

日本国民は、長期化するデフレの中で、ながらく消費支出を抑えてきたが、2012年終盤以降、現在の安倍政権発足と「アベノミクス」によるデフレ脱却の機運の高まりの中で、消費性向は急上昇した。

2014年4月の消費税率引き上げ直後も、その余勢(もしくは、長年のデフレによる「倹約疲れ」も影響してか)からか、消費性向はすぐには低下しなかったが、2014年の夏場以降、急速に低下し始めた。

この間、景気回復のモメンタムは失われたが、雇用環境の改善は続いたため、全体としての賃金(統計的には雇用者報酬)の増加は続いた。だが、賃金の回復局面にもかかわらず、消費性向の低下(及び、貯蓄率の上昇)はむしろ、加速度的に進行した。

そして、消費性向の低下の推移をみると、特に加速度的に低下が進行したのは2016年半ば以降であった。

思い起こすと、ちょうど2016年6月に、安倍首相は、2017年4月に予定していた消費税率再引き上げの先送りを発表した。この決定自体は、当時の経済状況を考えると「英断」であったことは間違いない。ただ、問題は、次の消費税率再引き上げを2019年10月に単に「先送り」しただけであったという点だと考える。

   政府・日銀は「脱デフレ」にコミットせよ

以前(5月25日)の当コラムで筆者が言及したように、2014年4月の消費税率引き上げは、2013年から始まったデフレ解消の動きを頓挫させた。すなわち、せっかく高まっていた「脱デフレ」の気運を完全に殺ぐことになった(「デフレ・レジーム」の復活)。

その直後から低迷している個人消費を再び拡大トレンドに乗せるためには、「デフレ・レジーム」を払拭するような措置をとる必要があったが、2016年6月の「消費税率引き上げ先送り」は、「デフレ・レジーム」の払拭には力不足であったと言わざるを得ない。

そのため、多くの国民は、「2017年からの消費税率引き上げはなくなったが、いずれかの時点(この場合、2019年10月)で消費税率の引き上げは実現し、場合によっては、それだけでは終わらず、将来的にはさらなる増税も実施されるに違いない」ことを想定して、「節約志向」を変えなかったと推測される。そして、この流れは現在も継続中ということなのだろう。

ここまでの個人消費の動きをみる限り、消費者の「デフレ予想」は払拭されていないため、インフレ率が上昇してこないのもある意味当然であろう。従って、夏場頃からインフレ率は徐々に上がりはじめるという政府・日銀の物価見通しは楽観的過ぎると考える。

その意味で、出口論に終始し始めた感のある金融政策の議論も時期尚早で、的外れといわざるを得ない。どちらかといえば、むしろ、消費を刺激するような財政的措置を講じるべきでないかと考える。

さらにいえば、将来の増税措置については、「脱デフレ」に明確にコミットする必要があるだろう。

これは、先日のシムズ教授が言及していたような、「2%のインフレ率が安定的に実現するまでは増税措置は行わない」とか、「(政府目標である)名目GDP600兆円を実現するまでは増税措置は行わない」というコミットメントを意味する。

「財政再建待ったなし」と考える識者にとっては、我慢できないことかもしれないが、国民生活を犠牲にしての財政再建は、財政再建すら危うくするということも明白になりつつあるのではなかろうか。どうしても財政再建が必要だということだとしても、「急がば回れ」だと思うのだが…。

【私の論評】緊縮会計をやめて消費税も5%に戻せ(゚д゚)!

現状では、8%増税に両手をあげて大賛成だった、人々は反省の弁を発表するなどのことはおろか、増税の失敗に関しては誰も何も言いません。言うのは、増税に反対していた人ばかりです。ほとんどマスコミは何もいわず、政治家も、識者も増税に反対していたほうが、少数派なので、多数派はほとんど何も言いません。

そのためでしょうか、国民の多くは実際は節約をしつつも、8%増税が大失敗であったという認識はあまりないのではないでしょうか。

そうして、増税に両手で賛成だった人々の一部は、増税による悪影響に関しては何も言わずに、アベノミックスは失敗だったという珍妙な主張をしはじめています。そもそも、8%増税の悪影響を予測できなかった人がこのようなことを主張するのが、全く理解できません。

特に、この人たちが増税が大失敗だったということをはきりとは認めないことが全く理解不能です。アベノミクスを安倍政権が実施する政策のことを指すというのなら、雇用は劇的に改善したため、金融緩和は成功、財政は増税で大失敗と素直に認めるべきです。

アベノミクス失敗論者のほとんどは、8%増税大失敗を認めない・・・・
いずれにせよ、8%増税は大失敗であったことは、動かしがたい事実です。これを認めない人は、経済を語る資格はありません。そうして、韓国の経済を批判して、韓国では金融緩和をするとキャピタルフライトがおこるなどという無理筋の屁理屈を言う人もいるのですが、そういう人は「実質GDP成長率」は韓国以下のままということを忘れているのではないでしょうか。

さて、ブログ冒頭の記事で、安達誠司氏は、以下のように述べています。
2016年6月の「消費税率引き上げ先送り」は、「デフレ・レジーム」の払拭には力不足であったと言わざるを得ない。 
そのため、多くの国民は、「2017年からの消費税率引き上げはなくなったが、いずれかの時点(この場合、2019年10月)で消費税率の引き上げは実現し、場合によっては、それだけでは終わらず、将来的にはさらなる増税も実施されるに違いない」ことを想定して、「節約志向」を変えなかったと推測される。そして、この流れは現在も継続中ということなのだろう。
確かに、「増税先送り」というのでは、「デフレ・レジーム」の払拭には力不足なのでしょう。では、これを払拭し「脱デフレ」に明確にコミットするにはどうしたら良いのでしょうか。

安達氏は、「2%のインフレ率が安定的に実現するまでは増税措置は行わない」とか、「(政府目標である)名目GDP600兆円を実現するまでは増税措置は行わない」というコミットメントを推奨していますが、私はこれでも手ぬるいと思います。

言葉でのコミットは、誰にでもできます。しかし、それはなかなか信用されないものです。過去に結局何度もデフレの最中に増税をしてきた政府が、いまさら、しばらく増税しないとコミットしたにしても、多くの国民はなかなか信用しないでしょう。

だから、言葉でコミットするのではなく、経済政策でコミットするべきなのです。その最も良いやり方は、単純なものです。「8%増税で失敗したから、減税して5%に戻す」と発表して、その通りに実行すれば良いのです。

それと、ここで忘れてならないのは、日本はまた緊縮財政を実施しているという事実も忘れるべきではありません。

上のグラフは一般会計の前年比の推移です。緊縮度は予算総額の前年比増減額から税収増減額を差し引いて算出したものです。税収が増えても、財政支出を通じて民間に還元しないと、民間の所得が奪われます。

安倍政権はアベノミクスを本格的に作動させた2013年度、緊縮度はゼロに近かったのですが、14年度には消費税増税と歳出削減の超大型緊縮財政に踏み切りました。15年度も緊縮を続け、16年度も当初予算でさらに緊縮を継続。すると消費は不振に陥ったままで、物価は下落し、デフレ局面に舞い戻りました。税収も減り始めました。そこで2、3次の補正予算を組んだ結果、拡張型に転じました。

ところが、17年度当初予算はトランプ効果による円安・株高の陰に隠れて目立たなかったのですが、補正後の16年度予算に比べてかなりの緊縮になっています。円高、株安に反転しようものなら、またもやあわてて補正という図式がみえみえです。これほどの経済大国でありながら、事なかれ主義の官僚の采配に国家予算が委ねられる先進国はほかにあるでしょうか。

そうして、今年度の消費の低迷は、この緊縮どの高い会計をも一役買っているのではないでしょうか。

現在の日本は、以前このブログでも掲載したように、デフレーターからみてもいつデフレに舞い戻ってもおかしくない状況です。

そのような経済状況では、実施すべき政策はさらなる量的緩和と、積極財政です。中でも、積極財政は減税だけではなく、会計上でも緊縮は行わず、積極財政に転じることです。

野党は、加計問題などはもうやめにして、8%増税の大失敗を追求すれば良いと思うのですが、そうはならないのが不思議です。もし、これを追求すれば、安倍総理も財務省と戦いやすくなります。

マスコミも、労働組合も、野党もこれを森友問題や加計問題を追求したときと同じくらいの情熱で、大追求すれば、安倍総理も動きやすくなって、5%減税を本気で実行するように動くことになるかもしれません。

そうして、それが実現すれば、これを言い出したマスコミや、野党に対しても国民が感謝して、新聞などの購読も増え、野党は支持率を増やせるかもしれません。

しかし、そのような空気は微塵もありません。やはり、新聞や野党も結局のところ、財務省には手を出すことができないということなのだと思います。

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2015年3月5日木曜日

日本の国民負担率は低いのか 消費税に依存する欧州を持ちだす財務省の魂胆 ―【私の論評】正味国民負担率は、スウェーデンよりも高い日本の現実を直視せよ! この事実を糊塗して、詭弁を弄する騙し屋財務省に諜略されるな(゚д゚)!

日本の国民負担率は低いのか 消費税に依存する欧州を持ちだす財務省の魂胆 
2015.03.05

昨年暮の衆院選は、安倍総理と財務省との全面対決だった
写真図表はブログ管理人挿入 以下同じ
国民所得に占める税金や社会保険料などの割合を示す「国民負担率」が、2015年度は43・4%となり、4年連続で過去最高を更新すると財務省が見通している、という報道があった。

それによれば、日本の国民負担率はOECD(経済協力開発機構)33カ国中7番目の低さである。財務省は、国際的にみても国民負担率が低いのだから、もっと高めてもいいという魂胆なのだろう。

ただ、日本より負担率が高い26カ国中23カ国は欧州の国々で、日本より低い6カ国中には欧州の国は1つしかない。非欧州の先進国9カ国中では4番目に国民負担率が高い国であり、日本の国民負担率は決して低いとはいいがたい。

その上、国民負担率の定義では、分母を国民所得にするが、海外では国内総生産(GDP)にすることが多い。というのは、GDPと国民所得の関係をいうと、GDPに海外からの純所得を加えて国民総生産を産出し、それから国定資本減耗を控除し、さらに純間接税を控除したものが国民所得になる。

つまり、分母を国民所得にすると、税収に占める間接税(消費税など)の割合が高い国の国民負担率は見かけ上高くなるというバイアスが出てしまうので、OECDのような国際機関では、分母は国民所得ではなくGDPにするのである。なお、分母をGDPにすると、国民負担率の低さはOECD33カ国中9番目となる。日本より低い数字の8カ国中、欧州の国は3カ国に増える。

財務省のように、分母を国民所得にして国民負担率を計算し、それが世界より低いから、増税すべきだというロジックに安易に乗ると、消費増税がベストな手段となってしまう。というのは、所得税増税も消費増税もともに、分子が大きくなるのは同じだが、消費増税のほうが分母を小さくするので、より国民負担率を引き上げることになるからだ。

いずれにしても、消費増税のために、財務省は都合の良い数字を出してくる。しかし、欧州が消費税に依存せざるを得ないのは、それぞれが地続きの小さな国で、しかも人の移動の自由が確保されているという事情がある。このため住所を定めて徴収する所得税、資産税などの直接税にあまり依存できない。

『21世紀の資本』の大ベストセラーで有名になったフランス人のトマ・ピケティ氏が格差問題解消のために、国際的に資産課税を主張するのは、今の消費税中心の欧州の実情を嘆いているという側面もあるのだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

この記事は要約です。詳細は、こちらから(゚д゚)!

【私の論評】正味国民負担率は、スウェーデンよりも高い日本の現実を直視せよ! この事実を糊塗して、詭弁を弄する騙し屋財務省に諜略されるな(゚д゚)!

上の記事では、国民負担率の分母の数字国民所得にするとバイアスが出ることを指摘していました。上の記事でも十分消費税増税などすべきではなかったし、これからも増税すべきでないことははっきりしています。

しかし、消費税をあげようがあげまいが、日本国民の税負担の重さは、もともと半端ではありません。それについてはしばらく掲載していませんでしたので、本日再度掲載することにしました。

これについては、随分前にこのブログに掲載してそのままになっています、まずはその記事のURLを以下に掲載します。

【参院選序盤情勢】民主失速 民主目標「54」下回る可能性―スウェーデンよりも国民負担の重い日本でもボストン・ティー・パーティーを開こう!!

この記事は、 2010年6月のもので、民主党政権時代のものです。民主党政権になってから、初の参院選の直前の記事です。この記事では、その当事の国民負担率を掲載するとともに、スウェーデンと日本を比較して、国民負担率などではなく現実の国民負担はどの程度なのかを明らかにしました。以下にその部分のみ掲載します。
スウェーデンよりも国民負担の重い日本 
世間一般では、日本では何か税金がスウェーデンよりも低く、将来の社会保障などのことを考えれば、増税もやむなしという意見も多くなってきています。しかし、この議論、何かを忘れています。さて、財務省から出されている税金と社会保障費を含めた、国民負担率は以下のような数字で表されます。

          租税負担+社会保障負担

国民負担率 = -----------------------
国民所得




財務省による

各国の国民負担率


アメリカ    34.5%


日本      40.1%


ドイツ     51.7%


フランス    62.2%



スウェーデン  70.7%

スウェーデンは高福祉だが高負担だ、といいたいのでしょうか。確かに、スウェーデンの国民負担は70%くらいと見えますが、実際には政府は「あずかる」だけで、政府は素通りして、そのまま右から左へ50%を国民に配るのです。それがばらまきかどうかは別として、金額としては国民から集めてそのまま国民に配るので国民は負担していません。  
100万円もらったお給料のうち70万円天引きされたましたが、同時に50万円振り込まれました、その場合国民負担70.7%といえるのでしょうか。(但し、高所得者は多くとられて低所得者は大きく戻ってくるので、これは国民全体を一まとめとした場合と考えてください)。 
 国民負担率を諸外国との比較を表にすると上のようになるそうです。これは、2008年度の数字ですが、2007年にはじめて40%を超えたそうです。2007年、2008年というと、「実感なき成長」といわれ、経済が伸びていたはずなのに、どうして国民負担率があがったか理解できないところです。それは抜きとして、問題は一体この数字で何が言いたいのかというところです。 
スウェーデンの本当の国民負担率は、20%程度です。日本は40%ほど集めて15%ほど配るので、本当の国民負担率は25%ほどです。これはスウェーデンより国民負担は重いといわざるをえません。 

正味国民負担率


日本       25%

スウェーデン  20%

ですから、スウェーデンの国民負担率が高いなどというのは錯誤にすぎません。実際日本の財務省だけが、こういう世界に類を見ない「国民負担率」なる数字を発表し続けています。もちろん官僚の出す数字というのは数字そのものは虚偽ということはありません。しかし、毎年「国民負担率」なる数字を発表し、スウェーデンの数字を付記することを忘れない。こんな錯誤を誘発するようなことがいつまでも通用するはすがありません。  
この記事によれば、この当事のスウェーデンの本当の国民負担率である正味国民負担率は、20%程度ですが、日本は当事から25%であり、かなりの負担だったということです。

そうして、昨年の4月から増税をしたため、国民負担率は当時の、40.1%からさらに43.4%になったということです。本当の負担率が上昇し、25%を超えたということです。25%超えはとんでもないことです。

スウエーデンと日本とは単純比較はできない!

このように、世界でも高水準のの正味国民負担率の高さにもかかわらず、消費税増税をしてしまったのですから、増税後に消費が落ち込んで、マイナス成長になったのは当然のことです。

それにしても、財務省は性懲りもなく、増税のするためこのようなだましを続けています。こんなだましに、加勢して、多くの似非識者どもや、新聞などのマスコミも増税キャンペーンを続けてきました。もう、私達は詭弁を弄する騙し屋財務省に諜略されるべきではありません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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