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2017年12月29日金曜日

【日本の解き方】安倍政権5年で何が変わったのか 雇用大幅改善、積極的外交で高まる発言権…課題は迫る半島危機―【私の論評】戦後レジームからの脱却は安倍首相にしかできない(゚д゚)!

【日本の解き方】安倍政権5年で何が変わったのか 雇用大幅改善、積極的外交で高まる発言権…課題は迫る半島危機


第2次安倍晋三政権誕生から5年が経過した。この間、経済や外交、安全保障面で何が変わったのか。まだやり残していることは何か。

経済面での成績について筆者は、雇用60点、所得40点の合計100点を満点として評価している。

雇用は失業率の下限となる「構造失業率」の水準である2%台半ばを満点の60点とするので、現状は55点だ。

所得では国内総生産(GDP)の動向を見る。2014年の消費増税の前までは良かったが、その後は消費が伸び悩んだので40点満点の15点だ。

合計70点なので、まあまあの合格点だ。何より雇用の確保に成功したことで最低ラインの経済政策は達成できたといえる。

安倍政権では雇用環境を劇的に改善できたので、影響をもろに受ける若者にとっては朗報になっている。就職難に苦しみ、ブラック企業を跋扈(ばっこ)させた民主党政権時代と今は全く違う状況となった。この結果、若者の安倍政権への支持率は高く、政権の躍進に大きく寄与している。

失業率が構造失業率の水準まで低下する(これは同時にインフレ率を目標の2%にすることにもなる)には、あと有効需要をGDPの2%程度、10兆円程度押し上げる必要がある。これを金融緩和と財政出動で行うことが今後の課題だ。それができれば、賃金は伸び、消費への好循環にもつながり、経済はほぼ満足できる結果になる。

外交面では、安倍首相の外遊回数が際立っている。戦後最多の外遊は、小泉純一郎元首相の51回だった。安倍首相は2006年からの第1次安倍政権で8回、第2次~第4次政権では、今年11月までに59回である。訪問国・地域は70、延べにすると129と、これも戦後最多である。国会日程で縛られる日本の首相としては、過去にない外交を展開しているといえるだろう。

こうした外交経験が、国際社会で安倍首相の存在感を高めている。先進7カ国(G7)サミットでは、ドイツのメルケル首相に次ぐ常連で、日本の発言権も大きくなった。この経験が、トランプ米大統領との信頼関係を増すのに大いに役立っている。トランプ大統領は安倍首相を信頼していると公言しており、訪米した日本の首相の中では、安倍首相はこれまでにない待遇を受けたほどだ。

安全保障面では、安保関連法を成立させたのがポイントだ。集団的自衛権について、憲法上認められるとはいうものの、実際にはその発動に法的な安定性がなかった。その根拠を作ったという意味で、やっと実効的なものとなった。集団的自衛権については、戦争に巻き込まれると一部の反対もあったが、過去の戦争のデータ分析では、戦争の確率を減少させることが実証されている。その意味では国際常識に日本も一歩近づいた。

今後の課題は、目の前に迫っている朝鮮半島危機である。北朝鮮の核・ミサイル開発や国連決議の進捗(しんちょく)をみると、春までに軍事オプション行使か北朝鮮の降伏があっても不思議ではない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】戦後レジームからの脱却は安倍首相にしかできない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事の内容、妥当なものだと思います。

以下に、歴代首相在職ランキングを掲載しておきます。


安倍首相は、連続では小泉氏に迫る勢いです。通算では、吉田茂氏に迫る勢いで、小泉氏を追い越しています。

独裁国家の大統領などが20年、30年在位するのはともかくとして、民主主義国でも米国の大統領は大体2期8年務めています。ドイツのアンゲラ・メルケル首相に至っては12年を過ぎ、16年も視野に入っています。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相
民主主義国ではないですが、一応選挙を実施しているロシアのウラジーミル・プーチン大統領は通算12年の任期を来年迎えますが、その後も対抗馬がいないと言われています。

中国も大体2期10年を踏襲してきたし、習近平政権は2期目どころか3期目の22年以降の続投も噂されています。

一方、日本の首相の在任期間は、昭和以降の48人の首相を見ると、平均2年弱です。そうした中で、安倍氏は在位約6年10か月で外国首脳と漸く互角の在位期間になりつつあります。

第1期安倍政権も含めた6代の首相がほぼ1年ごとに代わり、日本人的感覚からは2期目の安倍政権は長いように感じられます。しかし、国益を阻害してきた1年ごとの政権に対比した時、2期目の安倍政権は、日本の国柄と安全に資するために必要な法案を多く成立させてきました。

1期目で教育基本法の改正、憲法改正の是非を問う国民投票法の制定、防衛庁の省への昇格、そして限定的な集団的自衛権行使の研究など、長期的な将来を見据えた施策を残したが、キャッチフレーズであった「戦後レジームからの脱却」の表看板とも言うべき靖国参拝は果たせませんでした。

参議院議員選挙の惨敗、閣僚の不祥事に加え本人の体調悪化もありましたが、慰安婦問題や南京事件などの歴史認識に対する米中韓の非難などから国民の支持率も低下し、「東京裁判史観の見直し」もできずじまいでした。

安倍首相は、1期目の反省から2期目は世界を俯瞰する外交を展開し、世界のリーダーと誼を深め、臨機応変に会話できる人間関係の構築に尽力してきました。

世界を俯瞰した外交を国内外に印象づけた伊勢志摩サミット

そうした努力の結果、ドナルド・トランプ米国大統領とも、プーチン露大統領とも軽易に電話できるまでの関係を築き、G7サミットではトランプとメルケルの仲をとりもつ場面さえあったといわれています。

いまや、安倍首相はG7を牽引する存在であり、日本の歴代首相のなかでも希有な存在です。俯瞰外交で稼いだこの貴重な資源を活用して、当面する北朝鮮の核・ミサイル対処と拉致被害者の奪還、長期的には対中関係を改善して靖国参拝を果し、東京裁判史観から脱却する先鞭をつけてもらいたいものです。


米国の保守主義運動は、フランクリン・ルーズヴェルト民主党政権によって構築された『ニューディール連合』に対抗する目的で始まったと指摘したのは、保守系シンクタンクであるヘリテージ財団のリー・エドワース博士です。

ルーズヴェルトは大統領に就任すると直ちにソ連と国交を樹立し、反共を唱えるドイツや日本に対して敵対的な外交政策をとるようになりました。

「強い日本はアジアの脅威であるばかりでなく、アメリカの権益を損なう存在」とみて、「弱い日本」政策を推進する。博士によると、現代米国の保守主義者にとってルーズヴェルトこそ最大の敵であったといいます。

他方で、「大陸国家(ロシアや中国)の膨張政策の防波堤として日本を活用すべきだ」とする「強い日本」政策を進めようとしたのが保守派の人たちです。

ミスター共和党と呼ばれたロバート・タフト上院議員たちは「弱く、敗北した日本ではなく、強い日本を維持することがアメリカの利益となる」と主張しました。

また、「勝者による敗者の裁判は、どれほど司法的な体裁を整えてみても、決して公正なものではあり得ない」し、「日本に対してはドイツと異なり、復讐という名目が立ちにくい」と、東京裁判を批判してきました。

タフト上院議員が「ヤルタ協定」批判を行い広範囲の支持を得たきっかけは、元ソ連のスパイで「タイム・マガジン」誌編集者あったH・チェンバースが1948年に「ルーズヴェルト大統領の側近としてヤルタ会談に参加した国務省高官のアルジャー・ヒルはソ連のスパイだった」との告発でした。

1950年以降、ジョセフ・マッカーシー上院議員の赤狩りで自殺者が多く出るようになると、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなど代表的なリベラル派マスコミが「魔女狩りだ」と批判を強めていきました。

戦前戦後を通じて米国にはこうした「草の根保守」が存在してきました。その数は1200万人とも言われ、真珠湾攻撃をめぐる「ルーズヴェルトの陰謀説」を支持してきました。

米の草の根保守の重鎮故フィリス・シュラフリー女史
しかし、新聞・テレビはリベラル派に牛耳られて「草の根保守」の意見はほとんど報じられないため、両国の総合理解を妨げてきたと言われています。

1995年以降、米政府が第2次世界大戦中のソ連諜報機関の交信を米陸軍秘密情報部が傍受・解読した機密のヴェノナ文書を公開し始めました。これにより、チェンバースの告発が正しかったことが論証され、保守派の勢いが盛り返してきたとされます。



ブッシュ大統領(当時)が2005年5月7日、バルト3国の一国、ラトビアの首都リガで行った演説はその延長線上にありました。

ブッシュ元大統領は「安定のため小国の自由を犠牲にした試みは、反対に欧州を分断し不安定化をもたらす結果を招いた」と述べ、「史上最大の過ちの1つだ」とヤルタ会談を強く非難しました。

第2次世界大戦の連合国であったルーズヴェルト米大統領、ウィンストン・チャーチル英首相、ヨシフ・スターリンソ連首相は1945年2月クリミヤ半島のヤルタで会談しました。

この際、国際連合構想にソ連が同意する見返りとして、ポーランドやバルト3国などをソ連の勢力圏と認め、対日参戦と引き換えに満州の権益や南樺太・北方領土をソ連に与える「秘密協定」を当事国である東欧諸国や日本の同意を得ずに結びました。

中国国共内戦の激化と共産党政権の樹立、朝鮮半島の分割、満州と北方領土の占領などは、その協定がもたらした結果です。

ヤルタ会談が行われた時点では米国に原爆が完成しておらず、日本本土上陸作戦では50万人の兵士が犠牲になると予測され、大統領はソ連の参戦が必要とみていたとされます。また、大統領は病気で覇気を失っており、スターリンがルーズヴェルトの弱みにつけ込んだとの見方もあります。

米国の保守派がヤルタ協定を批判するのは、ロシアの参戦は必要なかったとみているからであり、参戦が共産主義帝国構築への道を開き、朝鮮戦争をもたらし、また今日の北朝鮮における金一族の独裁体制へつながったという認識をもっているからです。

ヤルタ会談

なお、「産経新聞」(平成29年1月8日、2月23日付)によると、アイゼンハワー米大統領(当時)は1953年2月、「共産主義による民衆の奴隷化を招く秘密協定はすべて破棄する方針」を打ち出しました。

これを受けて、チャーチル首相は「ヤルタで起きたことは詳らかにすべきだ」との書簡をイーデン英国外相に送り、また領土拡大を禁止した大西洋憲章等に違反するとの議論が連合国内で起きることを危惧してか、秘密協定の蚊帳の外に置かれていたことを白状しています。

ヤルタ協定非難の根拠を明確にしたのは先述のヴェノナ文書です。文書からは米政府に200人超の共産党スパイがいて、ルーズヴェルト政権を唆し、日本と開戦するように仕向け、戦後は東京裁判を行って日本罪悪史観を植えつけるようにしたことが読み取れます。

今日に至る共産党の暴威をもたらすヤルタ密約であったことが分かりますが、これに鉄槌を下したのがブッシュのリガ演説であったのです。

米国では保守派の一部から「ジョージ・ブッシュ大統領 ありがとう。フランクリン・ルーズヴェルト大統領の悲劇的な間違いの1つを指摘し、よくぞ謝罪の意を表明してくれた」との声も上がったとされます。


この1年余後の2006年9月、第1次安倍内閣が発足しました。リガ演説が安倍氏を勇気づけ、「東京裁判史観の見直し」と「日米同盟の堅持」に向かわせたことは言うまでもないでしょう。

東京裁判史観を日本に押しつけてきた米国で保守派が声を大にしてルーズヴェルト大統領の政策を「間違いであった」と難詰し始めたわけで、千載一遇のチャンスと見た首相が「戦後レジームからの脱却」を掲げたことは当然すぎるほど当然でした。

安倍氏は「日本のために命をささげた人を祀る靖国を参拝するのは当然で、どこの国でも行っている慰霊の行為だ」と自民党幹事長代理時代にも語っています。

中国と韓国を除く世界のほとんどが靖国神社こそがわが国の戦没者追悼の中心的施設と見做して参拝してきた経緯もあります。

時期は前後しますが、元首クラスの靖国参拝者はエリツイン・ロシア大統領、アルゼンチンの大統領、トンガ国王、チベットのダライ・ラマ14世、リトアニアの首相夫妻、タイのプミポン国王の代理などである。

また、首相・閣僚クラスでは中華民国(台湾)、ミャンマー、トンガ王国、アゼルバイジャン、トルコ、イタリア、チリ、ベトナム、インドネシア、パラオなどが参拝しています。

わが国に訪れる外国要人の数から考えれば決して多いとは言えないですが、これは要人の日程を作成する外務省が、靖国神社参拝に対して消極的反対の立場をとっているからであす。実際、アイゼンハワー大統領が参拝して日本の戦没者に敬意を表したいと要望したときも外務省の難色で潰れたということがありました。

また、中国共産党は、首相の靖国神社参拝に怒っているかというと、必ずしもそうではないと私は思います。中国はこれに怒った素振りを見せれば、他の分野で対日譲歩を獲得できると考えているのでしょう。

1989年の天安門事件がきっかけで、経済発展に必要な資金が入って来なくなり、また海外に亡命した学生たちが欧米のメディアと連携して中国共産党批判の活動を開始しました。

中国共産党政府は対策を迫られ、ソ連の脅威がなくなった後の日本の位置づけを再検討し、「アジアにおける中国の覇権を確立するためには、日本の政治大国化を阻む必要があり、そのためには過去の謝罪問題を取り上げるべきだ」という結論になったといわれています。

首相の靖国参拝批判はこうした共産党指導部の政策から出てきたものであり、一般の中国人の中にある認識ではありません。この問題では、7000〜8000万人の共産党員を見るのではなく、13億余の中国人の方を見るべきです。

外務省には、外国の草の根意識をしっかり把握し、歴史問題などの真髄に迫る努力が欠落していました。外務省には、大使たちの個人的栄華を優先し、国益を毀損する体質が根づいてきたために「害務省」と揶揄され続けることになりました。


拉致問題に関しても、外務省の努力が足りなかったことはしばしば聞かれたことです。「地球よりも重い」とする人命を守り、また取り返せない現実には、省庁間の連携や国会の機能低下にも問題があります。

「拉致問題の解決なくして私の任務は終わらない」との文言は、安倍首相の極まり文句です。安倍氏は最初から関わってきたばかりでなく、日本人を思う政治家としての責任感の表明でもあるのでしょう。

相手は日本の領土に不法侵入して拉致していったもので、しかも個人の犯罪ではなく、国家絡みで計画的に行った犯罪です。

これほど明確かつ悪辣な犯罪を、米国であれば決して許さないでしょう。そして話し合いが決裂すれば、間違いなく武力や武器の使用も含めたあらゆる手段を駆使して奪還することでしょう。

日本人の誰もが自分の子供が拉致されたと想定した場合、しかも交渉に交渉を重ねても解決しない場合、政府には武力を含むありとあらゆる方法で取り返してほしいと思うに違いないです。1人の例外もなく各家族がそう思うならば、その集積は国民的総意ではないでしょうか。

そうした総意を受けた政府と国会は、あらゆる手段をテーブルに乗せ、解決の方策を探求するのが普通です。解決しないで過ぎた数十年は悔やんでも悔やみきれないですが、いまこそ日本国民一丸となって解決しなければならないです。それが出来るのは安倍首相をおいてほかにないのでしょうか。

日本は国際的な枠組みや制裁などを善意に解釈し、辛抱強く交渉を重ねてきました。また合意はきちんと守ってきました。しかし、何ら解決していません。これほど理不尽なことはないです。

政府が世界に向けて拉致の不条理を訴え、奪還の「構え」をとっても非難される筋合いはないでしょう。それこそが外務省がいま注力すべき最大事です。

他方で、外交交渉に必要とされる防衛力が日本には決定的に不足しています。現在の法体制を熟知していると思われる相手国は、日本が武力行使をできない現実を知り尽くしているともいわれています。

従って、拉致問題の解決とは第一に交渉であるが、同時に憲法改正の問題でもあります。憲法を改正して、関連する法整備を行い、圧力と対話の圧力を加えることです。

世界の軍事費の趨勢からは対GDP(国内総生産)比2%までを限度として、国民に防衛費増大の必要性を問いかける必要があります。

少子高齢化で教育の質的向上を図り、社会保障に予算が必要であることは分かります。そのために、防衛費の2%枠は3年、長くても5年限定のように背水の陣を引くことが必要でしょう。

性善説に立つ日本はすっかりなめられてきました。以心伝心で相通ずる国民同士では性善説が相応しいですが、国益第一の国際社会相手では性悪説に立つ対処も必要になります。

ましてや自国の犯罪を認めながら拉致被害者を帰す意志さえ見せない外国相手では、対話はゼスチャ—だけで、本心は時間稼ぎや金銭目当てなどではないかと疑わざるを得ません。そこに必要なものは更なる圧力であり、そのために必要は法体制の整備です。


安倍首相
冷戦期を乗り切ったロナルド・レーガン米大統領は8年間、マーガレット・サッチャー首相は12年間在位したし、フランスのジャック・シラク大統領も12年間の在位でした。

現在の世界の首脳たちも同様な在位であり、安倍首相の在位が長すぎるということはないです。安倍首相には、世界の首脳たちと胸襟を開いて話せるよしみを生かして、日本着せられた犯罪国家という汚名の払拭と地位の向上に尽力してもらいたいです。

7年8か月在位した佐藤栄作氏は沖縄返還を成し遂げたましたし、在位7年2か月の吉田茂氏はサンフランシスコ平和条約を締結し、また日米同盟の基礎を固めました。国家の健全化は短期間ではなし得ません。

「戦後レジームからの脱却」という用語はタブー視されているようですが、戦後の総決算をして中韓が仕かける歴史戦に勝利しなければ日本の未来はありません。

その意識と能力を持ち続けているのは現在の日本では、安倍氏をおいてほかにありません。

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2016年9月25日日曜日

【コラム】ナチスを震え上がらせたスイスの「精神防衛」に学べ―【私の論評】『頭の中のお花畑』から『精神防衛』への転換が重要な課題(゚д゚)!

【コラム】ナチスを震え上がらせたスイスの「精神防衛」に学べ


先月、訓練中のスイス空軍の戦闘機がアルプスで消息を絶った。「アルプス山脈のどこかに墜落したものとみられる」というニュースを読んだが、戦闘機が飛び回る「アルプスの国」を思い浮かべるのはおかしな気分だった。スイスは平和な永世中立国ではないか。しかし、それはイメージだけだ。安全保障の観点から見ると、意外に堅固な国だということが分かる。

スイスは、ドイツ・イタリア・フランス・オーストリアなど大国に囲まれた、巡り合わせの悪い国だ。第2次世界大戦時、ナチス・ドイツはスイス侵攻説を流し続けて政治的・経済的・軍事的に脅しをかけることで、スイスを心理的に圧迫した。しかし、スイスを攻撃することはついにできなかった。スイスの断固たる対応が、ドイツの侵攻の意思をくじいたからだ。

帝国議会でナチス式敬礼を受けるヒトラー(白い演壇の一つ下、黒い演壇で敬礼に
応えている)、ベルリン、1941年。写真はブログ管理人挿入以下同じ。
 豊かな国になった現在も、それは変わらない。スイスの情報機関「連邦情報部」(NDB)は、今年の年次報告書で「スイス国内でますます大きくなる中国の経済的、イデオロギー的影響力に警戒すべき」と警告した。そして、ジュネーブやバーゼルにある中国の「孔子学院」を要注意リストに載せた。NDBのマルクス・ザイラー長官は「中国への経済的依存度が高まる状況はスイスにとって脅威になっており、孔子学院は影響力拡大を狙った中国の戦略の一つ」と分析し「世界2大国へと浮上する中国の外交的・安全保障的影響力は南シナ海を超え、いずれ全地球的なレベルで影響を及ぼすだろう」という見方を示した。

ザイラー長官の警告は、ちょうどスイスにチャイナ・マネーが流れ込みつつある時点でなされた。このところ、スイスは中国との自由貿易協定(FTA)締結で貿易額が激増し、観光客も流れ込んでいる。中国からほぼ8000キロ離れたスイスの対応は、安全保障とは銃剣だけでやるものではない、ということを教えている。中国とは地球の反対側にある国ですらその脅威を警戒する姿は、韓国人に真剣な問いを投げ掛ける。韓国はこれまで中国の急成長がもたらす利益に酔い、政府・企業・国民問わず、国を挙げて自ら弱点をつくり上げてきたのではないかと。

杭州の主要20カ国・地域(G20)サミットで習近平国家主席は、韓国と米国に向けて、高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に反対する意向を明らかにした。中国のTHAAD攻勢は、どのような形にせよ、再開されるだろう。あちこちの集会で司会者として登場するある芸能人は、THAAD反対の集会で「なぜ安全保障問題の代案を国民に要求するのか。それをやらせるために、大統領と国会議員を選んだのではないか?」と主張した。国民の決意に満ちた態勢こそ安全保障の核心と考えるスイス人がこの言葉を聞いたら、何と言うだろう。

人口も軍事力も貧弱なスイスが見せつけたのは、「精神防衛」という価値の下、がっちり一団になった国民の気勢だった。「国民全てが軍人であり、自分が立っている場所が要塞(ようさい)」「侵攻するならしてみるがいい。スイスは、勝つことはできないだろうが、お前たちも壊滅に近い損害を被るだろう」というメッセージを投げ掛けた。ドイツは、その覚悟が口先だけの脅迫と考えることはできなかった。貧しい祖国を食べさせていくため、他国の雇い兵として馳(は)せるときにスイス人が見せる勇猛さを、よく知っていたからだ。はっきり目に見える「戦略的損失」を前に、ドイツは野望を引っ込めることしかできなかった。「ハリネズミ戦略」とも呼ばれるスイスの防衛態勢は、「自分たちのほかは誰も信用できない」という安全保障面での覚醒があったから可能だった。

李吉星(イ・ギルソン)北京特派員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

【私の論評】『頭の中のお花畑』から『精神防衛』への転換が重要な課題(゚д゚)!

日本では、スイスは永世中立国で、専守防衛の国だとして、リベラルの方々が褒めそやすくにですが、実像は上の記事をみてもわかるように全く違います。


スイスは、日本のように「軍事力の放棄」することなく、「軍事力を保つ」ことによってその独立と平和を守っています。しかもそれだけではありません。常に独立と平和を守れるように、「民間防衛」というマニュアルを、スイス政府自らが編集し、全スイス国民に配布しています。

この本の範囲は、戦時中の避難方法から、占領された後のレジスタンス活動方法まで非常に多岐に渡ります。その中でも、「戦争のもう一つの様相(P225~P272)」は、現在の日本に非常に参考になります。

なぜなら、最近の日本と周辺国(中国、韓国、北朝鮮)の状況が、この本に記述されている「敵に武力以外による攻撃を受け、破滅へと導かれる状態」と非常に良く似ているためです。以下に『民間防衛』というスイス政府が編纂した書籍の日本語訳の書籍の表紙の写真を掲載します。

民間防衛―あらゆる危険から身をまもる

日本が、集団的自衛権をやめて、専守防衛をするというのなら、スイスのようにならなければ、とても日本を守り切ることなどできません。

『民間防衛』に関しては、その内容を簡潔にまとめているサイトが存在しました。そのサイトから以下にリンクを掲載します。

■メインコンテンツ
「民間防衛」からの引用とその解説です。時間がなければ「重要」の部分だけでも目をとおしてください。 
・はじめに・敵は同調者を求めている1 / 眼を開いて真実を見よう・敵は同調者を求めている2 / 社会進歩党は国を裏切るだろうか・外国の宣伝の力 / 不意を打たれぬようにしよう重要敵はわれわれの抵抗意志を挫こうとする / 警戒しよう・敵は意外なやり方で攻めてくる / 自由と責任・敵はわれわれを眠らそうとする / われわれは眠ってはいない・スポーツも宣伝の道具 / 真のスポーツ精神を守ろう・われわれは威嚇される / 小鳥を捕らえる罠・経済的戦争 / 経済も武器である重要革命闘争の組織図・中まとめ・敵はわれわれの弱点をつく / スイスは、威嚇されるままにはならない・混乱のメモ / 健全な労働者階級はだまされない重要危機に瀕しているスイスに、人を惑わす女神の甘い誘いの声が届く/ 心理戦に対する抵抗重要政府の権威を失墜させようとする策謀1 / 政府と国民は一致団結している重要政府の権威を失墜させようとする策謀2 / それにもかかわらず、国民と政府は一致団結している重要政府の権威を失墜させるための策謀 / 国民と政府は動揺しない・内部分裂への道 / 自らを守る決意をもっていれば重要滅亡への道……… / 法と秩序が保たれれば・スイスが分裂していたら / スイスが団結していたら
・首に縄をつけられるか / われわれは他国に追随しない・終局 / スイスにはまだ自由がある・おわりに
さて、このようなマニュアルを配布し、国民皆兵制のスイスでは日本では決してお目に書かれない、非日常的な風景が普通にみられます。その写真を以下に掲載します。

自宅に対空機関砲を備える人。いざとなったら、これで
迎え撃つ。機関砲を構えてご満悦。替え銃身も揃えていそう。
それと以下にネットで拾った、スイスのスーパーマーケットの写真を掲載します。

スイスでは、日常風景のこの写真。写真の方は、予備役の軍人だそうですが、銃を持った軍人がスーパーで普通に買い物している国がスイスです。

一方韓国への高高度防衛ミサイル(THAAD)配備は、韓国にとって北朝鮮からの攻撃に対する韓国防衛の要になるはずです。むろん、これは中国に対する牽制にもなるのは明らかです。

韓国は、もともと輸出がGDPの40%程度を占めるとか、その中で対中国輸出が一番大きいということで、中国依存の国です。

しかし、経済と安全保障は切り分けて考えるべきですし、それに将来のことを考えれば、はやめに内需を拡大して、輸出にたよる経済運営はやめるべきです。日本は、輸出がGDPに占める割合は、十数%に過ぎず、アメリカに至っては数%に過ぎません。

輸出がGDPに占める割合が高いことは、少し前までは、国際競争力があるなどとして良いことのように受け止められていましが、今やその認識は改めるべきです。ここ数年では、国際貿易そのものの伸びがかなり鈍化しています。さらには、輸出が大きいということは、反対のほうからみれば、外国の情勢に左右されやすいということです。

日米は元々内需が大きいことから、韓国のように経済が外国の情勢に左右される割合は少ないです。日本をはじめとする先進国は、個人消費がGDPに占める割合は60%以上です。米国に至っては、70%です。韓国は、安保的な観点からも、早急に個人消費を高める政策をとるべきです。それに関しては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事をご覧いただくものとして、ここでは解説しません。

しかし、経済の面では、安全保障の観点からみれば、韓国よりははるかに良い状態の日本なのですが、他方「精神防衛」という観点からみれば、韓国と同等かそれ以下です。

頭の中のお花畑
そもそも、スイスでは自宅に機関砲を備えたり、スーパーに自動小銃を携えて買い物に行く予備役がいるというのは、さすがに世界的にもあまり見ない風景ですが、軍服を着た軍人が町を歩いていたり、移動していたりするのは、普通の風景です。

しかし、日本ではそのような風景ですら滅多に見ません。集団的自衛権を行使することを標榜する日本では、さすがに集団的自衛権を行使せず、専守防衛の方針を貫き、民間防衛で国を守ろうとするスイスのようにする必要はないです。

しかし、昨年の集団的自衛権の行使をめぐる安保法制の審議過程における、あの騒動を考えると、では安保法制反対の方々は、専守防衛をするということは、スイスのようになることであることを理解しているのかと問いたくなります。


集団的自衛権を行使するにしても、専守防衛にしてもやはり「精神防衛」がなっていない、ようするに「頭の中がお花畑」ではまともな安全保障論議はできません。

安全保障論議をするなら、少なくとも頭の中の「お花畑」を葬り去らなければなりません。過去の日本は集団的自衛権の行使によって、米軍に基地を提供する一方で、アメリカの核の傘の下に入り、防衛に関してあまり考える必要はありません。しかし、世界の警察官をやめた米国は今後も日本の防衛を今までどおり守ってくれるかどうかなど定かではありません。

今こそ『頭の中のお花畑』から『精神防衛』に転換すべき時です。

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