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2012年9月12日水曜日

トウモロコシ「史上最高値」でも食糧危機が来ない理由―【私の論評】おおむね正しいが、一つ大きな間違いがある!!

トウモロコシ「史上最高値」でも食糧危機が来ない理由

青々と茂るとトウモロコシ畑

トウモロコシ価格が2012年7月に1トンあたり333ドルと史上最高値を更新した。

2008年(月平均)に価格が高騰したときには、「世界食糧危機が来た」などと言って大騒ぎしたものだが、今回はそれほど騒いでいない。もう、マスコミも国民も食糧危機には興味がなくなったのであろうか。ちなみに、トウモロコシの価格は2008年よりも16%も高くなっている。

なぜ大きな騒ぎになっていないのだろう。

それは円高だからだ。2008年は1ドルが110円前後であったが、現在は80円を切っており40%ほど円高になっている。だから価格が16%ほど高くなっても、円ベースだとまだまだ安い。
新興国の成長と資源価格の推移は関係があるのか?

図に1980年のドルベースの価格を1.0としたときのトウモロコシ、石油、鉛の価格の変化を示す(IMFデータ)。図を見ると、トウモロコシ、石油、鉛の価格の変動パターンが驚くほどよく似ていることに気がつく。2006年頃から2008年の夏にかけてそろって急騰し、2008年の秋にそろって急落し、その後に再び上昇している。


穀物価格の急騰は、干ばつによる不作などによってもたらされる。2012年も米国の穀倉地帯が干ばつに襲われたことがトウモロコシ価格急騰の直接の原因になっている。ただ、干ばつが来るかどうかまだ分からなかった4月から6月頃でも、価格は2008年の最高値付近で推移していた。

ただ、トウモロコシだけでなく石油や鉛の価格も一緒に見ると、そのような説を信じる気にはなれない。干ばつによって石油や鉛を含む鉱石が採れなくなることはないからだ。

それでは、新興国の需要が資源価格を押し上げているという説はどうだろう。中国をはじめとした新興国は資源を大量に消費し始めている。

ただ、この説もよく考えてみるとおかしい。まず、2000年の価格が1980年よりも安くなっている。2000年のトウモロコシの価格は1980年の価格の0.88倍、石油は0.74倍、鉛の価格はなんと0.42倍である。中国をはじめとした新興国は1980年頃より経済発展の速度を速めた。そんな状況で2000年の価格が1980年よりも安くなることがあるのであろうか。


また、新興国の需要によって価格が上昇したのであれば、なぜ2006年に急に高騰し、2008年に急落したのであろうか。需要増加が原因であるのなら、このような変化をすることはないだろう。
需給を反映していないトウモロコシの「史上最高値」

2006年以降の資源価格の乱高下は金融現象と捉えた方がよいと考える。

アラン・グリーンスパン氏は2006年まで米国連邦準備制度理事会の議長を務めていた。彼はマエストロ(巨匠)と呼ばれるほど米国の金融政策を巧みに操って、長期間にわたって米国を好景気に導くことに成功した。しかし、それは今になって考えれば、サブプライムローン問題など多くのバブルを作っていただけのことであった。

2008年の夏にピークを付けた資源価格の高騰は、住宅バブル崩壊に気付いた資金が資源に逃げ込んだためと考えられる。ただ、当時、多くの人はそのことに気付かなかった。だからトウモロコシの価格上昇を受けて、食糧危機の到来などと言って騒ぎたてたのだ。

サブプライムローン問題は2009年のリーマン・ショックへとつながったが、それによって世界景気は急速に冷え込んでしまった。その結果、資源価格も大きく下落した。

その金融危機は米国だけに留まらなかった。ギリシャの財政問題に飛び火して、ユーロ危機に発展している。それらの危機を回避するために世界は低金利時代に突入した。米国や西欧諸国はバブルの処理に失敗して低金利政策を続けている日本を嘲笑ったものだが、いまや彼らも日本と同じ状況にいる。

日本、米国、西ヨーロッパ諸国は全て超金融緩和状態を続けている。そんなときに、米国で干ばつが発生したという情報が入り、トウモロコシの価格はいとも簡単に史上最高値を更新した。

ただ、これは需給を反映したものではない。そのために、秋になって干ばつの被害はそれほどではなかったなどといった情報が入ると、今度は値を大きく下げることになろう。

この記事の詳細は、こちらから!!

【私の論評】おおむね正しいが、一つ大きな間違いがある!!
上の記事概ね正しいのですが、一箇所酷い間違いがあるので、訂正しておきます。それは、まずは、上の記事では、前のほうで、以下のように掲載しています。

トウモロコシは、値上がりしても、枯渇するということはなさそうだ
「2008年は1ドルが110円前後であったが、現在は80円を切っており40%ほど円高になっている。だから価格が16%ほど高くなっても、円ベースだとまだまだ安い」。

にもかかわらず、後ろのほうでは、以下のように掲載しています。

「日本、米国、西ヨーロッパ諸国は全て超金融緩和状態を続けている」。

これって、全くおかしいと思います。まず、他国はそうですが、日本だけは、「超金融緩和状態」を続けてなどいません。超金融引き締め状態を、かれこれ20年近くも続けているというのが事実です。

米国、EUは、現在景気対策として、確かに金融緩和策を実施しています。それに、リーマン・ショックのときだって、米国、EUも超金融緩和措置を行いました。何をしたかといえば、大幅な貨幣の増加などありとあらゆる緩和策をして、マネタリーベースを増やしました。



そんなときに、日本だけが増刷もせず、金融引締め状態を続けていました。その結果、どうなったかといえば、円高、デフレのさらなる進行です。下のグラフ、縦罫は金融緩和度合いを示すものです。

このグラフをみても、以下に日銀が金融緩和をせずに、金融引締めばかりしてきたかわかるというものです。リーマンショツクのとき、他国は、金融緩和を積極的に実施したため、リーマンショツクの震源地であったアメリカですら、日本よりも、はるかに立ち直りが早く、日本だけが、一人負けの状態になりました。

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このグラフの一番右は、2011年であり、大震災があった年です。さて、この年ですら、日銀は、金融緩和策を行いませんでした。そうして、どうなったかといえば、強烈な円高です。なぜ、こんなことになったかといえば、地震の復興のため、円需要が増すのは当然のことですが、そんなときでさえ、日銀は、増刷することもなく、金融引き締めをしたため、円の需要の高まり放置し、強烈な円高になってしまったのです。

トウモロコシが高騰しても、円安、インフレのほうが良い?!

何か、上の記事では、円高で、トウモロコシや、資源が安く購入できるので良いような印象を受けますが、そんなことは絶対にありません。やはり2008年あたりの、110円くらいが当たり前の水準です。それに、金融引き締めにより、デフレから脱却もままなりません。

トウモロコシが安く買えなくても、枯渇するというのでなければ、円高ではなく、デフレも収束したほうが国民にとって、はるかに良いことはいうまでもありません。

このようなミスリードはやめていただきたいです!!このようなことをして、日銀を擁護して何になるというのでしょうか?


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