2011年4月10日日曜日

【ウォールストリート・ジャーナル】菅首相の官僚外しと原発危機対策―【私の論評】アメリカは菅政権をどう見ているのかがわかる?

菅首相の官僚外しと原発危機対策

原発視察後に記者会見する菅首相
今回は、上記タイトルで掲載された、ウォールストリート・ジャーナルの要約を以下に掲載します。

菅直人首相は、震災で停止した福島第1原子力発電所の危機対応のため、旧来の官僚主体の指揮系統を排除し、独自にアドバイザーを招請して特別対策チームを設置した。このことは、キャリア官僚の怒りを買うとともに危機管理を誤ったとの首相への非難が強まっている。

災害基本法に基づいて設置された災害対策本部があるにもかかわらず、菅首相は、同原発の事業者である東京電力(東電)への対応に新たな緊急対策機関を併設したのだ。

3月11日の地震と津波以降にとった一連の措置を通じ、菅首相は、過去数十年にわたってキャリア官僚が政策策定を主導してきた日本で、国を統治する新たな方法を事実上試運転しているといえよう。

だが首相が現地視察に向かったことが過熱した原子炉の爆発を食い止める初動の遅れを招いたと指摘されている点を含め、自ら陣頭指揮しようとする首相の決意が危機を一層悪化させたとの批判が起きている。

菅首相が、おおかた反故(ほご)にしてしまった原発緊急時計画の策定にかつて一官僚としてかかわった与党民主党の福島伸享衆議院議員は、「マニュアルがあるにもかかわらず、マニュアル通りに動かず、アドホック的に自分たちで命令系統を作り時間を浪費している。実際にマニュアル通りに対応して事態がもっと軽症で終わっていたかどうかは分からないけれど、少なくとも対応が遅れた」と語る。

福島氏は、「今や経済産業大臣も東電の本社に行っている。言ってみれば、消防庁長官が火事の現場にいっているようなもの」と語る。大将は本丸にいるべきで、現地に判断をさせる部分、大臣が判断する部分、総理大臣が判断する部分はマニュアルであらかじめ分けてあったのだが、「どこで誰が判断するかということが一番混乱している」と指揮系統の混乱を指摘した。

東電と政府は、震災と事故への初期対応について批判にさらされている。菅首相はそうしたつまずきを、自ら陣頭指揮に当たることを正当化する理由にしてきた。首相周辺によれば、断固たる措置をとる以外、首相に選択肢はなかったという。

菅首相の側近トップである枝野幸男内閣官房長官は取材に対し「今回の災害対策では、通常の行政システム、時間の掛け方では対応できなかった」とし、政治が従来の手順や段取りにこだわらず判断することで一定の効果があったと弁明している。

政治的な非難の応酬に距離を置く人々の中にも、菅首相の政治主導の原則を評価する一方で、その原則を実行に移す際にあまりにも多くのことを自分でやろうとしたことで、つまずいた、との見方がある。

日本大学の政治学者、岩井奉信氏は、「民主党は危機管理のノウハウが弱い」、「素人だったことがマイナスになっている」 と語る。

日本共産党が発表した会談筆記録によると、菅首相は先週、共産党の志位和夫委員長に対し、「『原子力村』というか、ある種、専門家のギルド的な雰囲気がある」と語っている。

地震後数日以内に、菅首相は独自の計画を練り上げていた。3月15日午前5時30分に東電本店に乗り込んだ首相は、東電本社内に統合対策本部を設置 することを経営陣に伝えた。この新しい対策本部には、菅首相の補佐官らを配置することとし、東電から直に情報を取って、その場で命令を出せるようにした。

こうした臨機応変の措置は、各国が「責任の明確な割当」を伴う「指揮統制体制」を事前に設けるよう定めている国際原子力機関(IAEA)のガイドラインに反しているとみられる。

首相サイドは東京都の消防隊の派遣を、新体制が機能している例として挙げているが、それ以前の、過熱する使用済み燃料プールの冷却を試みて失敗した機動隊高圧放水車の一件を批判する向きもある。

元警察官僚で自民党衆議院議員の平沢勝栄氏が首相官邸や一部民主党議員から聞いた話では、官邸はまず、機動隊放水車を派遣するよう命じたという。平沢氏は、そこは当然官邸に責任があるとし、放水を専門にしているのが消防であることは子どもでも分かると述べている。

四方敬之内閣副広報官は、まず消防を呼ぶべきだったと思った人もいるかもしれないが、内閣府はその時点時点で最善と思われる措置をとってきたと述べている。

放射線データ公表の遅れの責任が誰にあるのかについても、双方の言い分は食い違っている。政府の原子力安全委員会はようやく23日になって、福島第 1原発周辺20キロ圏内の避難地域の外でも放射線濃度が高いおそれがあると公表した。このデータ発表を受け、政府は原発から30キロ圏内の住民に避難 支援を提供することにした。

首相側近によると、首相は22日の会合に原子力安全委員長ともう一人の委員を呼び出し、官僚の縄張り争いについて不満を表明することで、データ公表に直接介入したという。

元官僚で衆議院議員の前出・福島氏は、皆が手順に従っていたなら、こうした情報は「即時公表」されていたはずという。一方、原子力安全委員会の広報官によると、データ公表の遅れは、重要データの不足と委員らの多忙な日程によるものだったと説明した。

震災翌日12日午前7時ごろの菅首相の福島第1原発視察をめぐっても議論がある。菅首相は、床の上に毛布にくるまって眠っている作業員の脇を通 り抜けて、小会議室で原発施設の幹部2人と20分間にわたって会談した。ある側近によると、首相は技術的質問をし、過熱する原子炉を冷却する方法について アドバイスしたという。

問題は、この視察のせいで1号機のベント開始が遅れたかどうかだ。原子力安全・保安院が発表した時系列記録によると、11日午後10時の時点には、 保安院当局者は、翌日早朝には1号機原子炉内部で炉心が溶け始めると予想し、圧力を下げるための緊急ベント開始を要求していた。だがベントが始まったの は、菅首相が現場をあとにした数時間後だった。

菅首相は、視察のせいでベント開始が遅れたことを否定した。政府当局者は、遅れの原因が、電源喪失後に手動で弁を開くことの難しさと連絡上の問題にあったとしている。

官僚の不満が募るなか、菅氏の長年のアドバイザーだった北海道大学の政治学者、山口二郎氏は先週、首相官邸に緊急面会を申し入れ、官邸で40分間会談した。山口氏と同僚の北大教授は菅首相に、官僚の活用を強く促したという。

山口氏は首相に、「責任追及をしている時ではないといった」という。同氏によると、菅首相は、一部始終を伝えてくれないから官僚は信用できないと改めて不満を漏らし、会談は不本意な結果に終わったという。

しかし、首相側近はこの助言を受け入れる兆しをみせており、民主党が政権に就いて以後廃止した事務方トップの会合を復活させた。この会合は目下、震災救援・復興に関する政策の調整に当たっている。

http://jp.wsj.com/Japan/Politics/node_219448

【私の論評】アメリカは菅政権をどう見ているのかがわかる?


左は、ウォールストリート・ジャーナルに掲載された、菅首相の支持率のアンケート調査結果と、今回の原発事故においてリーダーシップを発揮したかどうかのアンケート調査結果。このような結果を掲載した記事は、ウォールストリート・ジャーナルでは珍しいことです。

日本の大部分の新聞はそうではないのですが、アメリカの代表的な新聞の立ち位置はしっかりしており、無論、アメリカの国益を第一義として、記事を掲載します。

そのため、この記事の内容やはり、アメリカの国益を代表する見方をしているものと解釈すべきです。

アメリカの立場としては、菅総理に関しては、もうどうして良いのかわからないというのが実情なのだと思います。

そうして、それは、菅総理だけではなく、民主党に対しても同じような感覚を持っているのだと思います。アメリカの国益からすると、戦中は、アメリカを相手に4年近くも、戦い続け、アメリカにも甚大な被害をもたらした、日本については、戦後ずっと、日本の弱体化を良しとしてきたのですが、それにしても、民主党はあまりに酷すぎて、このままだと、日本が弱体化されすぎてしまって、アメリカの国益すらも損ないかねないとの判断をしているのだと思います。

これに関しては、やはり先日もこのブログで紹介したウォルストーリート・ジャーナルの記事『不屈の日本』という記事ににもありありと現れていました。

この記事では、「11日の地震の壊滅的な影響にもかかわらず、近代国家としての日本の業績がもたらす自国を守るという恩恵は指摘せずにはいられない」と結んでいました。とにかく、日本はすぐに復興するだろうとの期待感を表明していました。日本を弱体化させたいというのなら、もっと指摘事項があり、表面づらは別として、もっと社会不安を煽る論調になったものと思います。しかし、それをやってしまっては、さらに弱体化して、それこそ、北朝鮮、中国、ロシアなどの隣国につけいる隙を与えてしまい、アメリカの国益を損ねるという判断があったものと思います。

この流れは、しばらく続いていおり、そのうちもっとも鮮明なものは、以前このブログでも掲載した、米国の議会調査局が2010年10月に作成した日米関係についての報告「日米関係=米国議会にとっての諸課題」の記述に見ることができます。この報告書の内容をみるまでもなく、すでにアメリカでは、「日本は憲法改正せよ」が米国議会で多数派になっているということです。

いうまでもなく、今の日本国憲法は、日本がまだアメリカの占領下にあった、特殊な時期にアメリカの意図によって作成されたものです。この憲法制定によって、当時のアメリカの日本弱体化政策は、成就され、戦後60年以上にわたり、日本はアメリカの意図どおりに弱体化されてきたわけです。

しかし、戦後60年以上経て、この憲法がもたらしたのが、以前の自民党政権による腐敗と、現在の民主党政権による政権交代です。この憲法のもとでは、いずれ、民主党政権のような政権ができあがってしまうのは、自然な成り行きだったのだと思います。

しかし、日本がこれほど弱体してしまえば、それこそ、日本の主権がおびやかされ、中国や、ロシアや、北朝鮮のような隣国のやりたい放題となってしまます。中国など、日本を傘下におさめてしまうことも考えられます。このブログでも、以前中国長期国家戦略では、日本は、中国の

そうなれば、アメリカの国益は完全におかされてしまうわけです。だから、こそ、最近では、日本を弱体化一辺倒というよりは、日本をもう少し強くして、頼りになるパートナーとすることが、アメリカの国益に沿うものだあるという考えが、アメリカの議会でも多数派になってきているのだと思います。

日本の国民の益にもならない、アメリカの国益も損なう、民主党政権に明日はないと思います。まだ、選挙速報などみていませんが、今回の統一地方選挙も民主党が一方的にぼろ負けしていると思います。

アメリカの有力紙など、アメリカの国益を代表しているという姿勢は、一環していますから、非常に理解しやすいです。それに、記者などの技量が高いです。だから、日本のことを知ろうとした場合、かえって、解りやすいです。皆さんも、日本の新聞だけ読んでいると、判断がにぶるし、それに経済などとくに勉強不足が目立ちます。だから、ウォールストリート・ジャーナルのような、新聞も読んでみる価値があると思います。ただし、それらは、すべてアメリカの国益を優先していることを前提として読むと良いと思います。

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