2012年5月31日木曜日

急にクローズアップされた生活保護問題デフレ脱却と「負の所得税」が合理的な解決策 - 高橋洋一の俗論を撃つ!―【私の論評】日銀がお札を増刷すれば、生活保護問題はなくなる?!

急にクローズアップされた生活保護問題デフレ脱却と「負の所得税」が合理的な解決策 - 高橋洋一の俗論を撃つ!:

母親の生活保護に関して、釈明会見をする河本純一さん
 生活保護問題が急にクローズアップされた。生活保護の増加の背景に不正受給があると思われているからだ。だが、増加の主な要因は不正受給だけではない。金融政策によるデフレ脱却と「負の所得税」の導入、この両輪で生活保護問題は合理的に解決できるだろう。

生活保護問題に金融政策が関わっていることに違和感を持つ人もいるだろう。しかし、米国の金融政策は雇用の確保が法的に義務づけられている。バーナンキFRB議長に対する記者会見でも、話題はもっぱら失業率の話だ。

金融政策で失業率を低下させることができるので、生活保護問題の解決には有効だ。日本では、雇用・労働問題を構造問題としてとらえる経済学者、社会学者、法学者ばかりだ。雇用、労働問題をマクロの金融政策で対処しようとしないのは、筆者から見れば奇妙なことに思える。

マクロにおける金融政策によるデフレ脱却と、ミクロにおける縦割り行政の打破になる「負の所得税」(歳入庁と番号制を含む)の導入、この両輪で生活保護問題は合理的に解決できるだろう。


釈明会見をする梶原雄太さん


【私の論評】日銀がお札を増刷すれば、生活保護問題はなくなる?!

上の記事の結論は、「マクロにおける金融政策によるデフレ脱却と、ミクロにおける縦割り行政の打破になる「負の所得税」(歳入庁と番号制を含む)の導入、この両輪で生活保護問題は合理的に解決できるだろう」ということです。そうして、このマクロと、ミクロの政策、どちらが優先順位が高いかといえば、当然マクロ政策です。これ抜きにミクロ政策だけやっても根本解決にはなりません。今の政府、まともなマクロ政策はせずに、目先のミクロ政策だけやって、結局モグラ叩きに終始しています。

上の記事を見て、高橋洋一氏も指摘していたように、金融政策と、生活保護の問題との関連性を奇異に感じる人もいるかもしれません。しかし、これは、本当です。どこの国でも、その時点で2%程度のインフレになれば、その後どうなるかは別にして、それだけで、一夜にして大きな雇用が創出されます。

日本や、アメリカなどであれば、一夜にして、数百万の雇用が創出されます。また、その逆も真であり、デフレになれば、それだけで、一夜にして、数百万人の雇用が失われます。これを否定する人は、経済を語る資格がありません。

そうして、これは、マクロ経済学上の常識であり、これを否定することはできません。そうして、何もこれは、いわゆる教条主義ということではなくて、古今東西の事実が示す真理です。まずは、これを否定するまともな経済学者いないでしょう。そうして、米国では、金融政策が雇用の確保に法的に義務付けられているということです。

アメリカで大恐慌時にパンを求めて行列する人の像
そんなに簡単なら、雇用問題などすぐに解決できるではないか、という方もいらっしゃるかもしれません。確かにそうです。無論、雇用問題のすべてが、金融政策だけで解決できるとは限りません。たとえば、雇用のミスマッチの問題もあります。金融政策が雇用と密接に結びついていると認識されているアメリカでさえ、雇用問題はあります。しかし、アメリカでは、日本などと比較すると、比較的短期間に雇用問題を解決できています。今まで、アメリカでも深刻な雇用問題に直面しても、少なくとも日本よりは、早く解決できています。これは、金融政策を雇用問題解消の大きなツールであることを認識し、このツールを活用してきたからにほかなりません。雇用問題の根底には、金融政策が不可欠であるということです。

バーナンキFRB議長
とにかく、雇用と金融政策が密接な関係にあるということが、日本では、ほとんど認識されていません。これが、一般の人であれば、そこまで考える必要はないのかもしれませんが、それにしても、ある程度社会的に高い地位にある人は、どのような分野で働いていたとしても、常識として知っておくべき重要な事柄だと思います。


そうして、生活保護は、雇用と密接に関係しています。雇用が増えれば、生活保護受給者数は減ります。雇用が減少すれば、生活保護は増えます。これも当然のことです。

だから、上記の記事のように、生活保護の問題を考える際には、金融政策が不可欠であり、これを変えずに、この問題を考えていても、根本的な解決にはなりません。そうして、個人のモラルなどのことばかり考えていても、何の解決にもならないわけです。金融政策を抜きにこの問題を考え、対策を打ったとしても、結局は何の解決にもなりりません。モグラ叩きになるだけです。


無論個人のモラルの問題もあると思います。しかし、それは、金融政策などで、十分雇用が確保されるような状態になっているときに、論じられるべきであって、そうではないときに、論じても仕方のないことです。まずは、デフレを解消しなければどうにもなりません。

それに雇用の問題は、生活保護だけの問題ではありません。これは、学生の就職にも密接に連なる問題です。最近、就活の問題もクローズアップされていますが、この場合も、多くの人が、デフレのことは問題にせずに、ミクロ的な問題である企業サイドの問題、学生サイドの問題にばかり集中しています。これでは、なんら根本的解決にはなりません。デフレで雇用が減少している最中に、企業や学生のことだけ考えていても、これもモグラ叩きになるだけです。


ところで、総務省が25日発表した4月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100、生鮮食品を除く)は、前年同月比0・2%増となり、3カ月連続でプラスになった。ただし、食料(酒類を除く)とエネルギーを除く総合指数は前年同月比は0・3%の下落となりました。

この数字は変動の大きい食料とエネルギーを除く米国型コア指数で、基本的な物価動向を示すものとされているが、09年1月から3年4カ月マイナスのままです。

このようにデフレは若干緩和しつつあるものの、依然として継続中です。5月23日には日銀が追加緩和を見送ったことで、円高と株安が進みましたが、現状の金融政策のスタンスでは、リーマン・ショック時のような日本の独り負け状態になってしまうのでのではないでしょうか?とにかく、日銀は、自ら提示した、1%インフレ目処も実行するつもりはないようです。

スペイン中央銀行
中央銀行の独立性は、政府の金融政策の指示に従って、その金融政策を実施する際の手法を専門家の立場から選ぶ自由があるというのが本来の姿であり、これが、世界の常識です。ところが、日銀法が平成10年に改正されて、日銀がやってきたことは、金融政策まで独自で決定して、実行するというスタンスをとってきました。そうして、ことあるごとに、結局は、デフレを促進する金融政策である金融引き締めばかりを実行してきました。

日銀白川総裁

このデフレのままでは、雇用問題も解消せず、生活保護問題も解消しないということです。さて、本日は、生活保護、雇用の側面を中心に掲載してきましたが、このような問題に対しても、生活保護の受給者のモラルの問題など、生活保護の制度自体とか、いわゆる、ミクロの見方だけでは、この問題の根本的解決にはならないということてず。金融政策などの、マクロな見方ができなければ、解決になりません。


そうして、ミクロ的な見方による解決方法は、私たち個人や、企業でも、直接介入して解消することもできます。しかし、マクロ的な事柄に関しては、直接はできません。しかし、間接的にでも、できる方法があります。

そうです。それは、国をマクロ的な見方で、見てそれに対策を打つべき主体であるべき、政治家を選挙で選ぶという行為です。そうして、失われた20年を30年にしないためには、日銀法を改正して、本来の中央銀行の役割にもどすことを主張する政治家を選ぶべきです。


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