1~3月期の実質国内総生産(GDP)は前期比0・4%増、年率換算で1・7%増と2四半期ぶりのプラス成長となった。
その中身で注目されるのは消費と設備投資だ。民間最終家計消費は0・5%増、寄与度は0・3%となっている。民間企業設備は1・4%減、寄与度はマイナス0・2%である。
まず消費から見ていこう。GDP統計での消費は総務省の「家計調査」などから推計している。ただし、この統計は、うるう年の影響を基本的に考慮していない。このため、今期の数字はうるう年のためにかさ上げされている可能性がある。
それをある程度裏付けるのが、日銀が新たに公表した「消費活動指数」だ。それでみると、3月は前月比0・5%低下となっている。
日銀の消費活動指数は、総務省の家計調査だけでなく経済産業省の商業動態統計なども加味して作られた統計で、家計調査の種々の欠点を補っている。いずれにしても、各方面からいろいろな統計が出るのは統計分析家の筆者としては大歓迎である。
こうした事情もあるので、菅義偉官房長官は18日午前の記者会見で、個人消費の伸びが0・5%増だったことに関し、「全体として弱含みだ。消費税(2014年4月の5%から8%への引き上げ)の影響がまだ残っている」との見解を示した。
ちなみに、対前年同期比では、うるう年効果にもかかわらず消費はほとんど横ばいである。うるう年効果を除くとマイナスという見方もできる。
もともと消費増税の悪影響は2年程度あっても当然だ。財務省やエコノミストらは増税前に「消費増税の影響は軽微」「実際に悪影響が出てもせいぜい3、4カ月」と、トンデモない説明をしていたことになる。
次に設備投資をみてみよう。設備投資は、実質金利と将来の需要動向によって決まる。実質金利はマイナス金利の導入などによって下がったが、今までの消費動向がさえないので、将来不安が増大して、設備投資はマイナスの伸びと芳しくなかった。
日銀の追加金融緩和とともに、消費を立て直すために、給付金や減税などの追加財政措置が必要な事態だ。
菅官房長官は、今回の速報値が来年4月の消費税率10%への引き上げの判断材料になるかとの質問に対し、「ならない」と答えている。少なくとも、増税を実施する決め手になるとはみていないだろう。逆にこれで増税延期や凍結とみるのも早計で、増税の是非に関しては「『適時適切に判断する』という安倍晋三首相の答弁に尽きる」としている。
民進・共産・生活・社民の野党4党の党首は、今国会に内閣不信任案を提出するようだ。こうなると、熊本地震で一度は消えた7月10日の衆参ダブル選挙が行われる可能性が再び出てきたといえるのではないか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
【私の論評】政府は私が中学の時に味わった、鮮烈なアハ体験を国民に味合わせるべきだ(゚д゚)!
まずは、最近のGDPの推移を振り返っておきます。以下の表をご覧ください。1〜3月の水準は、昨年7〜9月とあまり変わりありません。うるうるう年効果を考慮に入れると、若干悪いと言っていいくらいです。
ブログ冒頭の記事にもでてきたような、うるう年効果について見てみます。下の表をご覧ください。
百貨店の今年2月度売上高は前年同月比で0.2%増。2カ月ぶりのプラスですが、実質は「0.2-3.6」でマイナス3.4%となります。スーパーは春物コートが好調で3.4%増だそうですが、実質は0.2%減でした。
経産省の商業動態統計調査で、小売業は0.5%増ですが、うるう年効果が剥げ落ちると3.1%減となります(上表参照)。
好景気の時は、それほど気にする必要もないでしょうが、現状のように本当はマイナスなのに、うるう年効果でプラスになってしまうのは問題です。ゲタを履かせた数値がメディアで躍ると、不景気にもかかわらず、景気は回復基調にあると勘違いしてしまいそうです。
複数の民間シンクタンクが、今年の3月に2月の家計調査結果を分析して、5月半ばに公表される1~3月期のGDP成長率は、うるう年効果を見込んで、0.3ポイント、年率換算で1.2ポイント押し下げて見ておいたほうが良いとしていました。
経産省の商業動態統計調査で、小売業は0.5%増ですが、うるう年効果が剥げ落ちると3.1%減となります(上表参照)。
好景気の時は、それほど気にする必要もないでしょうが、現状のように本当はマイナスなのに、うるう年効果でプラスになってしまうのは問題です。ゲタを履かせた数値がメディアで躍ると、不景気にもかかわらず、景気は回復基調にあると勘違いしてしまいそうです。
複数の民間シンクタンクが、今年の3月に2月の家計調査結果を分析して、5月半ばに公表される1~3月期のGDP成長率は、うるう年効果を見込んで、0.3ポイント、年率換算で1.2ポイント押し下げて見ておいたほうが良いとしていました。
私は、このシンクタンクの見方は正しいと思います。そこで、修正をいれたGDPを見ることにします。1月 〜3月期の修正値は、0.1、年率換算では0.5ということになります。
これでは、かろうじてマイナスにならなかったというだけです。景気が低迷していたことを考えると良い数字ではありません。マクロ経済学では2期続いてマイナスが続くと、リセッション入(景気後退局面入)とみなしますが、かろうじてリセッション入を免れたということがいえます。
この状況では、増税なんて全く考えられません。それに日銀が追加金融緩和をしなかったことも解せません。
なぜ、このような状況のときに、増税すべきなどと言い出す人がいるのか全く理解に苦しみます。
私が中学生だった頃、社会の教科書には、景気が悪いときには、政府は積極財政をして、日銀は金融緩和をする、景気が良い時には、政府は緊縮財政をして、日銀は金融引き締めをすると掲載されていたのを記憶しています。
そうして、実際に積極財政の方法としては、公共工事を増やす、減税する、給付金を増やすなどの方法があると学びました。金融緩和の方法としては、公開市場操作で、買いオペがあると学びました。今考えると、当たり前のことなのですが、その頃はこれを本当に理解するのは結構難しかったです。しかし、最後にはとうとう理解することができました。
以下に公開市場操作(オープン・マーケット・オペレへーション)の仕組みの図を掲載します。この仕組みが本当にわかったときの喜びは、今でも忘れていません。
このようなカラクリを知った当時中二病だった私は、有頂天になって、自分は日本の経済は何とでもできる、自分が日銀総裁になったり、政治家になったら日本経済は永遠に成長し続けることができるなどと思ってしまい全能感に包まれました。今から考えると、本当に愚かだったと思います。
しかし、金融政策や財政政策の基本中の基本を初めて知ったときのなんというか、アハ体験はそれほど鮮烈なものでした。
さすがに、中二病からは立ち直り、なぜか高校では、中学で味わったほどのアハ体験をすることもなく、大学はたまたま数学や物理が好きだったので理系に進学し、しかしこのアハ体験を引きづったまま社会人になったのですが、そのアハ体験もいつの間にか忘れてしまい、気づくと日本はこれまたいつの間にか万年デフレのどん底に沈んでいました。
そうして、これは何かおかしいと感じて、よく調べてみると、あの中学の時のアハ体験で体感した景気が悪いときには、日銀は金融緩和策を政府積極財政をすべきということがなされず、長い間逆のことをやっていることがわかりました。
そうして、サイトなどを調べてみると、私のように不況のときには、金融緩和や積極財政をすべきと主張する人々は、リフレ派と呼ばれ、少数派であることを知りました。
そこで、あのアハ体験をした私は、不審に思ってマクロ経済学の本を買ってきて読んでみました。すると、私のあのアハ体験で体験したことは、間違いでもなんでもなく、マクロ経済学では当然とされていることを知りました。
この時の私の驚き、憤りは大変なものでした。しかし、それからしばらくして、いわゆるリフレ派の考え方も普及して、安倍自民党内閣が誕生して、さっそく金融緩和策がとられるようになり、景気はどんどよくなっていきました。特に、雇用はものすごい勢いで回復していきました。ただし、なぜか積極財政のほうはおざなりになっていました。
そうしたところに、いつの間にか8%増税です。あのアハ体験で体感したこととは、真逆の緊縮財政をするわけですから、私としても、このブログて大反対しました。
しかし、8%増税が実行されて、その結果は予想どおりのものでした。
最近では、10%増税を実施すべきという人もいて、中には10%増税をして、大型景気対策をすべきだと主張する人も現れています。
しかし、今一度あのアハ体験で体感した、原点にもどってみても、現在の公民の教科書ですら、景気の悪いときには増税して大型景気対策をすべきなどととは一言も掲載されていません。
それに標準的なマクロ経済学の本を読み返してみても、そのようなことは一言も書かれていません。書かれているのは、日銀は金融緩和を、政府は積極財政をすべきということだけです。
そうして、積極財政とは、増税の真逆の減税をすること、公共工事を増やすこと、給付金政策を拡充することなどです。
ただしこれは、後で知ったことですが、公共工事は現状では公共工事の供給制約があって、なかなか難しいです。最近は、この制約も緩んできてはいるようですが、それにしても、建築業者のほうは将来どうなるのか心配しているようで、設備投資もあまり進んでいません。しかし、減税は財源がなくてもできる最も簡単な方策です。であれば、本来なら増税ではなく真っ先に減税をすべきでした。
公共工事の供給制約を示すグラフ |
それにしても、こんな時期に増税すべきなどという人は、一体どうなってしまったのでしょう。
そのようなことを言い出す人たちは、それこそ、私が中学生の頃罹患していた、中二病なのではないでしょうか。
中二病の症状としては以下のようなものがあります。
- 急に親に冷たい振りをする(母親をおふくろやおかん呼び・プライバシーを尊重してくれなど)
- 愛想が無くなり孤独を好むようになる(いわゆる“孤高”)
- 突然ブラックコーヒーを飲みだす
- 急にロックや洋楽を聴き始める
- ロングコートやマントに憧れ銃やナイフを携帯したくなる
- 学校が武装集団に占領されて自分1人で戦う事を妄想する
- やれば何でもできるかのような万能感を感じるが、実際に行動に移すことは少ない
- メディアやインターネットで仕入れた知識を自分の考えであるかのように語る(『アメリカって汚いよな』など)
- 上記に付随し、見た・聞いた知識を経験として語る。売上で優劣を付け人気作品を人気が出る前から知っていたなど
- 様々なものを批判しはじめる一方、ある種カルト的なものを崇拝する
この中で、特に7.や8.が当てはまるように思います。
7.に関しては、やれば何でもてきるような万能感とは、マクロ経済の理論に背いても、増税しても、日本経済への影響は軽微と勝手に考えこみ、増税を支持する。そうして、中学生の中二病よりたちが悪いのは、実際に自分の立場など利用して、増税賛成の世論を盛り上げるなどのことを行ってしまうのです。
8.に関しては、メディアや財務省などから仕入れた知識を自分の考えであるかのように語り、増税の正当性、ありもしない財政破たんの危機を煽るのです。
10.も当てはまるかもしれません。リフレ派を徹底的に批判し、まるでカルトのような、景気が悪いときでも増税しても経済に悪影響はあまりでないという妄想を信じ込みます。
そうして、大人の中二病は、中学生の中二病より始末が悪いです。中学生の中二病は、まだ親の保護観察下にあるので、他に及ぼす影響は少ないですし、それに一時の、大人になるための通過儀礼のようなものであり、いずれ治ります。だから、中二病はあまり深刻なものではありません。
しかし、大人の中二病は始末に悪いです。特に社会的地位の高い大人の中二病は、国民全体に影響を与えます。実際、これらの人たちの中二病は8%増税で、多くの国民の消費意欲を減退させ、今日の事態を招いてしまいました。そうして、こういう大人は満足にアハ体験もしていないのではないでしょうか。だから、簡単に大人の中二病に罹患してしまうのかもしれません。
アハ体験ができる動画。大きな画面で見たほうが発見しやすいです。
国民のうち、40歳未満くらいの人だと社会人になってから、ただの一度も景気が良かったことがないというとんでもない状況を招いてしまいました。
その他の人たちだって、長い間デフレが続き、もう景気の良かった時代などはるか昔のことで、もう永遠に景気は良くならないと思い込んでいるようです。
こんなことは、なしにしましょう。政府は、私が中学生のときに味わったようなアハ体験を国民全員に味わってもらえるように努力すべきです。
そのためには、私がアハ体験で理解した、追加金融緩和と積極財政の両方を実行して、早期にデフレから脱却して、国民にデフレでない世の中を体感してもらうべきです。デフレでない、緩やかなインフレの時代を創りだすべきです。それ自体が、アハ体験になりますし、インフレの時代はデフレの時代に比較して、ずっと多くのアハ体験ができると思います。そうして、その結果として、消費が拡大し、景気は良くなります。
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