2017年12月4日月曜日

中国尖閣攻勢は米にとって「日本の国難」との深刻な懸念―【私の論評】遅かれ早かれ、北より危険な中国は尖閣を奪取しにくる(゚д゚)!

中国尖閣攻勢は米にとって「日本の国難」との深刻な懸念


尖閣国有化から5年。いまも頻発する中国海警の領海侵犯に日本は麻痺しているが、事態は深刻だ。産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏が警鐘を鳴らす。

* * *

 日本はいま国家安全保障上の重大な危機に直面するに至った。国家としての主権や独立や領土を根本から脅かされる目の前の明白な危機である。誇張ではない。と述べると、日本側の大方は北朝鮮の核兵器開発や弾道ミサイルの発射を思い浮かべることだろう。北朝鮮の脅威は確かに日本にとっての危機である。

 だがここで私が報告するのは中国が日本の主権や領土を侵食し、奪取しようとしている現在の危機なのだ。具体的には中国が日本固有の領土である尖閣諸島に軍事がらみの攻勢を強め、日本領海に自由自在に侵入している現実である。日中間の軍事衝突の危険はすぐ目の前にある。北朝鮮の脅威に比べ、中国の長期で大規模な対日攻勢はずっと危険度が高い。しかも尖閣での日中のせめぎあいは米中戦争の発端になりかねない潜在的な爆発性をも秘めているのだ。

 産経新聞10月6日付朝刊に小さな記事が載った。

 《尖閣領海、中国公船が一時侵入

 5日午前10時5分ごろから、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海に中国海警局の船4隻が相次いで侵入し、約2時間航行して領海外側の接続水域に出た。中国当局の船が尖閣周辺で領海侵入したのは9月25日以来で、今年25日目》

 社会面の片隅の雑報扱いの記事である。普通に読んでいたらまず目に入らない。「地球接近の小惑星撮影」とか「ゴルフ場被害で東電に賠償命令」というお知らせと並ぶ短報なのである。

 安全保障問題には敏感な産経新聞にしてこれだから他のメディアの扱いは推して知るべし、尖閣諸島の日本領海への中国艦艇の侵入はまったくの軽視なのだ。総選挙でも争点にならない。国会の審議でもツユほどの言及もない。

 ◆艦隊が定期的に日本領海へ

 だが私の取材拠点のワシントンではアジア安保や中国軍事動向の専門家たちの間で、中国の尖閣攻勢は日本にとって重大な危機であり、アメリカにとっても深刻な懸念の対象とされている。まさに日本の国難という位置づけなのだ。

 確かに中国の尖閣侵犯はここ数か月でもその規模と頻度を増してきた。昨年までは尖閣周辺の日本領海やそのすぐ外側で日本の主権の及ぶ接続水域に侵入してくる中国海警の武装艦艇はいつも2隻だった。だがいまでは必ず4隻の行動をともにする艦隊となった。倍増なのだ。しかも各艦は1000t級から5000t 以上の、巡視艇としては大型ばかりの組み合わせだ。この艦隊が毎月3回ほど、定期的に日本領海に侵入してくるのだ。

 日本側ではこれらの艦艇を中国公船と呼ぶ。公式には国家海洋局の傘下の中国海警局所属の船だが、海警局は事実上は人民解放軍の指揮下にあり、軍事色が強い。実際に尖閣領海に侵入してくる艦艇はみな大型機関砲などで武装している。目的は究極的には尖閣諸島の日本からの奪取である。

 アメリカ側では中国のこの動きに最大の警戒の目を向けている。国防総省の中国の軍事力に関する最新の2016 年度報告書でも、中国人民解放軍が「地域的な短期で鋭利な戦争」の能力を高め、尖閣もその主要戦略目標の一つとしていることを明記していた。

 民間の大手安全保障研究機関の「ランド研究所」も同年夏に公表した「中国との戦争」という長大な調査研究で米中戦争の可能性について、尖閣をめぐる日本対中国の衝突が米中戦争に発展する危険を第一のシナリオとしてあげていた。

 ちなみにアメリカでの中国の軍事動向研究は官民ともにきわめて重層かつ大規模だ。中国が長期にはアメリカの最大の脅威になるとの認識が反映されているのだろう。その研究では情報機関や軍を動員した豊富な軍事情報が基礎となる。民間での中国軍事研究はゼロに等しい日本とは対照的だ。

 【PROFILE】古森義久●慶應義塾大学経済学部卒業。毎日新聞を経て、産経新聞に入社。ロンドン支局長、ワシントン支局長、中国総局長などを経て、2013年からワシントン駐在客員特派員。2015年より麗澤大学特別教授を兼務。近著に『戦争がイヤなら憲法を変えなさい』(飛鳥新社)。

【私の論評】遅かれ早かれ、北より危険な中国は尖閣を奪取しにくる(゚д゚)!

尖閣諸島の危機については、昨日もこのブログに掲載したばかりです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事で述べた尖閣の危機の部分のみを簡単にまとめると以下のようになります。
習近平が軍を掌握するにしても、様々な紆余曲折があった後にようやっと実質的にできるようになるものと考えられます。 
そうなると、習近平は、軍部を腐敗撲滅で追い詰めるでけではなく、軍部の歓心を買うために、軍部が強力に推進している作戦などをさらに強く進めることを許可するかもしれまんせん。 
そうなると、ドクラム地区(インド・中国の国境)、南シナ海、尖閣諸島での軍の作戦を強力に推進するかもしれません。先日も、このブログでも述べたように、人民解放軍は他国の国防軍とは違い、現状では、共産党の私兵であり、独自で様々な事業を推進する商社の存在であるということを考えれば、習近平は尖閣諸島の奪取も黙認するかもしれません。 
なぜなら、尖閣諸島を奪取すれば、ここは豊富な水産資源があるとともに、それにつらなる東シナ海は石油などの豊富な地下資源が眠っているところだからです。
人民解放軍としては、尖閣を奪取することにより、この利権を入手することも可能です。そうして、習近平がこの利権を人民解放軍が入手することも黙認すれば、習近平に従うようになり、習近平が軍を掌握することができるようになるかもしれません。
最近の習近平の動向をみていると、尖閣諸島奪取へのシナリオは一段と現実味を帯びつつあります。

尖閣の危機については、昨年もいくつもの米国民間研究機関が表明していました。ワシントンの民間の中国軍事研究機関「国際評価戦略研究センター」の主任研究員リチャード・フィッシャー氏の予測がより具体的で詳細でした。以下にリチャード・フィッシャー氏の主張を簡単にまとめて掲載します。

リチャード・フィッシャー氏
中国は日本の尖閣防衛の能力や意思が弱く、アメリカの支援も疑問だと判断すれば、必ず攻撃をかけてくる。その方法は民兵『漁船』を利用した上で、ヘリコプター、ホバークラフト、潜水艦のいずれかを使っての奇襲上陸の可能性が高い。
同氏は、まず中国の民兵が尖閣潜入上陸を試みるケースが考えられるが、その場合、ヘリやホバークラフトで投入される中国軍部隊との一体化の公算が大きいといいます。
中国軍は浙江省の南ジ列島にヘリ発着を主目的とする新軍事基地の建設を始めた。この基地は尖閣から約300kmで、中国軍新鋭ヘリのZ─8BやZ18─Aは約900kmも飛べるから尖閣急襲目的にかなう。
Z18-A
中国海軍はロシアとウクライナから高速の大型ホバークラフト4隻をすでに購入し、東シナ海にも配備している。艦底部に空気を吸い込み浮上して走るホバークラフトは水陸両用の揚陸艦艇として尖閣諸島への上陸にも機能を発揮しうる。 
人民解放軍のホバークラフトと、上陸用舟艇
フィッシャー氏は潜水艦からの兵員の奇襲上陸も可能だと述べました。こうした手段で尖閣に投入された戦闘要員を「漁船」民兵が支援することにもなるといいます。

このように、現在の尖閣事態はすでに日本にとって「いまそこにある危機」なのです。日本国土の一部を武力で奪われる瀬戸際というわけです。

では、なぜワシントンではアジア安保や中国軍事動向の専門家たちの間で、アメリカにとっても深刻な懸念の対象とみているのでしょうか。

それは、もし日本が尖閣諸島を中国に奪取されても、何の有効な手立てもとらなかった場合、尖閣諸島や東シナ海を南シナ海と同じように実行支配される可能性が大きいということです。

そうして、日本の同盟国である米国が、これを見てみぬふりをすれば、ますます中国はつけあがり、さらに南シナ海、東シナ海での行動をエスカレートさせ、我が物顔で振る舞うようになり、いずれ西太平洋にも進出することが懸念されるからです。さらには、中国は沖縄を奪取することも狙うかもしれません。

そうなると、米国としても中国と本格的に対峙し、場合によっては軍事力を行使しなければならなくなります、その場合地域紛争ですめば良いのですが、最悪中国との本格的な戦争に突入する危険もあるからです。

中国に尖閣を奪取された途端に、日本の世界における存在感は地に落ちることでしょう。そうなってしまえば、日本は独立国とはみなされなくなり、米国、中国いずれかの属国になる道を選ぶしかなくなります。今でも、日本は独立国ではなく米国の属国だなどという人もいますが、現状の水準どころではなく、いずれかの国の一地方という扱いになることでしょう。

中国には、このような狙いがあります。そのため、中国は遅かれ早かれ、本格的に尖閣諸島奪取にしにくるとみておくべきです。北朝鮮は、核ミサイルは発射できるかもしれませんが、尖閣諸島を奪取したりする能力はありません。中国も核ミサイルを保有していることを考えると日本にとって、中国は北よりもはるかに危険で厄介な国です。

こんなことを語ると、「そんな馬鹿なことがおこるはずない」などという呑気な人もいるかもしれませんが、こういう人に私は「日米戦争開戦の10年前までは、誰も日米が戦争になるなどとは考えていなかったし、それを望むものもいなかった」という事実をお伝えしたいです。

これに対して、日本はどうすれば良いのかということになりますが、無論のこと最悪軍事力を行使しても、尖閣諸島付近から中国軍を追い払うべきです。

そうして、軍事的にはその力は十分にあります。日本は米国に頼らなくても、単独で尖閣諸島を守り抜くことができます。それに関しては、以前このブログにも掲載しました。以下の【関連記事】のところに、その記事のリンクを掲載します。

日本は、軍事的には十分にそれが可能ですが、後は国民と政府がこのような事態に対して、たとえ場合によっては犠牲者が出たとしても軍事力を行使して、守り抜く覚悟があるかないかだけです。

【関連記事】

0 件のコメント:

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣―【私の論評】岩屋外務大臣の賄賂疑惑が日本に与える影響と重要性が増した企業の自立したリスク管理

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣 渡邉哲也(作家・経済評論家) まとめ 米国司法省は500ドットコムと元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い司法取引を結んだ。 日本側では5名が資金を受け取ったが、立件されたのは秋本司被告のみで、他...