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高橋洋一 日本の解き方英国が飲食、宿泊、娯楽業界の付加価値税の時限的引き下げを発表した。すでにドイツは引き下げを実施している。日本でも自民党の若手や国民民主党などが減税に積極的だが、現状で減税に反対する人はどんな人なのか。その理屈は妥当なのだろうか。
コロナ・ショックは消費需要の消失という形で現れるので、消費需要をアップさせる政策が望まれる。そのため可処分所得を増加させる減税や給付金が有力な政策手段だ。特に、消費に直接的に働きかける消費減税は、現状では交付に時間がかかる給付金と異なり、家計がその果実をすぐに受けることができるというメリットがある。
もちろん企業サイドへの補助金や給付金も政策としてはあり得るが、配布基準など公平性の確保が難しい。消費者サイドへの減税や給付金のほうが問題が出にくい。
しかし、消費減税には、財務省が猛烈に反対する。財務省のいいなりの経済界、財政学者、マスコミも反対だろう。経済界は法人税の減税、財政学者はポストの確保、マスコミは軽減税率の確保とそれぞれ目的は異なるが、財務省の肩を持つ。
消費税は1989年の創設以来、97年4月、2014年4月、19年10月の3回しか増税していない。ほぼ30年間で3回、つまり10年に1回なので、1回引き下げるとまた上げるのが大変だというのが財務省の本音ではなかろうか。
もちろん、建前は社会保障財源が少なくなり、高齢化社会に対応できないというものだ。しかし、そもそも消費税を社会保障目的税としている国はないので、両者をリンクして考えること自体がナンセンスだ。社会保障の充実であれば、社会保険料で対応するのが、国民にも分かりやすく納得できる方法で、消費税は無関係であるべきだ。
「1回下げると上げにくい」というのは、今回のようなコロナ対策では心配することではない。ドイツも英国も消費減税は一時的な措置であり、恒久的ではない。
例えば、2次補正の予備費は10兆円であり、うち5兆円はまだ使い道が決まっていない。ここに2000億円を追加すれば、消費税率を10%から8%への2%減税を1年間実施できる。これなら既に財源を用意できているので、社会保障の支出に関する心配も杞憂(きゆう)となり、財務省の建前の理屈も本音も木っ端みじんになる。
こういうとき、財務省は消費減税の声が大きくならないように、近い議員に働きかけることが多い。先日、安倍晋三首相のところに税収を上げるような政策を申し入れた議員らはその一例と筆者はにらんでいる。もちろん、「税収を上げるような」とは成長戦略の意味も含むので、増税ではないという言い訳もちゃんと用意されているが、「将来世代にツケを残さないように」と、今回の補正が通貨発行益で賄われていることを無視しているのは、意見の出所が推察できる。
いずれにしても、消費減税とは言わないことは、海外の消費減税の日本への影響力を弱める結果となっている。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
【私の論評】安倍総理は、次のちゃぶ台返しで、財務省の嫌がる”家賃補填、休業補償の拡充””消費税減税”を実行せよ!(◎_◎;)
米国も当然減税します。トランプ米政権はすでに6月の段階で、新型コロナウイルスの追加経済対策として、労使双方が負担する「給与税」の減免の検討に入りました。トランプ政権はコロナ以前から様々な減税策に取り組んでいる |
同税は年1.2兆ドル(約128兆円)の税収がある基幹税で、実現すれば2017年末以来の大型減税となります。米経済は失業率が10%を超えて戦後最悪の水準になると予想され、減税とともに雇用の受け皿となるインフラ投資も打ち出す方針です。
トランプ大統領は6月3日、米テレビ番組で「雇用を立て直すため、給与税減税が必要だ」と表明しました。米政権と議会は新型コロナ対策として、既に過去最大の3兆ドル弱もの財政出動を決めています。トランプ氏はさらに給与税の全面免除を議会に働きかける方針で、1兆ドル規模の追加の財政出動となる可能性があります。
これまでの新型コロナ対策は、中小企業(従業員500人以下)の給与支払いを連邦政府が肩代わりする雇用維持策などが中心で、倒産や失業を防ぐ「止血」に焦点を当てていました。ただ、米経済は4~6月期の実質成長率が前期比12%減、年率に換算すれば40%ものマイナスになると予測されます。失業率も10%を大きく超えそうで、新たに雇用の受け皿の確保が必要になっています。
トランプ氏が減免対象に挙げた給与税は、全歳入の3分の1を占める基幹税です。社会保障費の財源として労使がそろって給与の6.2%分を納税する仕組みで、全面免除すれば企業と労働者の双方の負担減となります。
トランプ大統領は6月3日、米テレビ番組で「雇用を立て直すため、給与税減税が必要だ」と表明しました。米政権と議会は新型コロナ対策として、既に過去最大の3兆ドル弱もの財政出動を決めています。トランプ氏はさらに給与税の全面免除を議会に働きかける方針で、1兆ドル規模の追加の財政出動となる可能性があります。
これまでの新型コロナ対策は、中小企業(従業員500人以下)の給与支払いを連邦政府が肩代わりする雇用維持策などが中心で、倒産や失業を防ぐ「止血」に焦点を当てていました。ただ、米経済は4~6月期の実質成長率が前期比12%減、年率に換算すれば40%ものマイナスになると予測されます。失業率も10%を大きく超えそうで、新たに雇用の受け皿の確保が必要になっています。
トランプ氏が減免対象に挙げた給与税は、全歳入の3分の1を占める基幹税です。社会保障費の財源として労使がそろって給与の6.2%分を納税する仕組みで、全面免除すれば企業と労働者の双方の負担減となります。
法人税の引き下げなどを盛り込んだ17年末の「トランプ税制」は、年間の減税規模は1500億ドルでした。給与税を全額免除すれば年1兆ドル規模の巨額減税となります。
トランプ氏としては、大統領選挙の兼ね合いもあり、ここぞというときに、超大大型減税を打ち出すのは、確実です。
英国スナク財務相 |
上の記事にもあるとおり、英国も当然減税です。英国のスナク財務相は8日、飲食店など新型コロナウイルスの影響が大きい業種を対象に、付加価値税(VAT、日本の消費税に相当)を現行の20%から5%に引き下げると発表しました。同日発表した総額300億ポンド(約4兆円)の追加経済対策の一環とされています。
英国では飲食店や劇場などが4日に再開したのですが、客足の戻りが鈍いため、減税によって消費を促し、雇用維持につなげる狙いです。15日から来年1月まで半年間の期間限定。減税規模は41億ポンドを見込んでいます。
新型コロナを受け、ドイツも1日から年末までの期間限定で、VATを19%から16%に引き下げました。食料品などを対象にした軽減税率も7%から5%にしました。
さて、減税を実行する予定の英国ですが、15日イングランド銀行(英中銀)金融政策委員会のテンレイロ委員は、同国の景気回復が「不完全なV字型」になる可能性が高いとの見通しを示しました。消費者が新型コロナウイルスの流行を警戒するほか、社会的距離を確保する戦略で経済活動が制限され、失業が増える見通しというのです。
同委員はロンドン・スクール・オブ・エコノミクス主催のオンラインイベントで「行動反応を踏まえると、英経済の見通しは、引き続き国内外の新型コロナ感染症の流行状況に左右される」と指摘しました。
「感染拡大ペースが緩やかに低下すると想定した場合、国内総生産(GDP)が途中で遮られる形の不完全なV字型の軌道をたどるというのが、私の基本シナリオだ。四半期ベースで最初に回復するのは第3・四半期になるだろう」と述べました。
同委員は「強制的な休業だけが原因だった支出の落ち込みについては、すでに急激な回復の兆しが見られる」と指摘。
「ただ、リスク回避姿勢の継続や、一部セクターでの自主的な社会的距離戦略、また他のセクターに依然適用されている規制、失業全般の増加を背景に、回復は中断されるだろう」と述べました。
同委員は、物価の下押し圧力がしばらく続く公算が大きいと予想。需要には「かなりの下振れリスク」があると述べました。
「必要に応じて、経済を下支えするさらなる対策に賛成票を投じる用意が依然としてある」としています。
マイナス金利については、ユーロ圏などで、おおむね前向きな結果が出ているとの認識を示しました。
次回の金融政策委員会の決定は8月6日に発表されます。
金融政策委員会は先月、債券買い取り枠を1000億ポンド拡大することを決定。政策委員9人のうち8人が買い取り枠の拡大に賛成する一方、チーフエコノミストを務めるハルデーン委員は、景気の回復が「これまでのところ非常にV字型」だとして反対票を投じました。
米国における刺激策の第一段はGDPの6%相当で、経済を幅広く支援する内容となっています。しかし、外出禁止などロックダウンによる生産損失が出ている事から、この刺激策を使ってリセッション入りを回避する事は不可能です。
とはいえ、失業率の行き過ぎた伸びを防ぐ観点から刺激策は必要不可欠であり、最終的な経済回復局面で力を発揮するでしょう。そうして、先にも述べたように、トランプ政権は第二段の対策として、大規模減税を計画しているのです。
そうして、欧米では何らかの原因があって、景気がかなり落ち込んだ場合には、大規模な財政出動・無制限の金融緩和というのが〝定番政策”になっています。
だから、コロナ禍による経済による落ち込みにも、この定番政策が実行されるため、財政出動としての減税策は当然の如く実行されるのです。間違っても、増税とか、減税しないという選択肢はないのです。日本も、早くこのようになって欲しいです。
一方日本違います。何かと、財務省が邪魔をします。4月17日、安倍首相のちゃぶ台返しがありました。「所得制限つき、1世帯あたり30万円の現金給付」が覆り、「所得制限なし、1人一律10万円の現金給付」となりました。このブログではこの政策変更は正しいと評価しました。
30万円の所得制限をつけた給付だと、確認などに時間がかかり、ひょっとすると今でも給付が十分進んでおらず、そのことで、安倍政権は自民党内外から責められ、国民からも不興を買ったに違いありません。これは、倒閣に結びついた可能性が十分あります。無論財務省主導によるものでしょう。
安倍総理は、当初から10万円、所得制限なしの給付を考えていたようですが、岸田氏任せたところ、いつの間にか30万円の所得制限の給付に切り替わっていたというのが、真相のようです。そのため、安倍総理の岸田氏への信頼は崩れたようです。
これで、安倍総理による岸田氏への総理の席の禅譲という話は、消えたようです。
安倍首相には2度目の〝ちゃぶ台返し〟で、家賃補填、休業補償の拡充と消費減税を是非実現してもらいたいです。
最近東京では、感染者数が増え、コロナ感染の第二波が始まるのではと危惧されています。現史上では東京都も政府も有効な手立てを打ちあぐねています、これは、潤沢な資金で、大規模な家賃補填、休業補償の拡充ができれば、それを前提として様々な手段を講じることができるはずです。
ただし、安倍総理のまわりは緊縮イデオロギーに染まった人たちが囲っています。それだけではなく、30万円給付のような、もっともらしい政策等で第二、第三の倒閣運動が企てらている可能性もあります。
与野党問わず政治家は相変わらずですし、軽減税率という〝毒まんじゅう〟を喰らった新聞も、社会保険料の据え置きや法人減税というニンジンをぶら下げられた経済界も財務省の味方です。
それでも第1弾の緊急経済対策はギリギリながらも合格でした。安倍総理の政策は、大規模な財政出動・無制限の金融緩和という先進国の〝定番政策〟に近づいています。そうして国民のマクロ経済政策への理解は、東日本大震災のときよりはるかに高まっています。これが日本経済復活への一縷の望みです。
ただ若い世代には、ずいぶんとマクロ経済への理解は、広まったようですが、高齢世代は、経済情報の情報源は、テレビのワイドショーなので、財務省やその走狗どもの言いなりです。しかも、高齢者の方が人口が多いのです。まだまだ、油断できません。
とにかく、安倍総理のもとで、景気が落ち込んだ時、落ち込みそうな時には、大規模な財政出動・無制限の金融緩和という先進国の〝定番政策〟が実現できるように道筋をつけていただきたいものです。総理大臣がちゃぶ台返しをしないと、まともな経済対策ができない今の日本は異常です。
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