2020年7月20日月曜日

コロナ「第二波到来」で、「Go To キャンペーン」は延期が正解— 【私の論評】政府は財務省なしの政府・日銀連合軍で第二波、第三波のコロナ禍を余裕で乗り切れるし、そうすべき!(◎_◎;)

経済回復がかえって遅れる可能性も


悪い予感が当たった

とうとう、恐れていたことが起こってしまった。

コロナ「第二波」がきたのだ。本コラムでは、6月下旬からその可能性を指摘してきたが、残念ながらそれはイヤな方に当たってしまったようだ。

まず世界の状況から見てみよう。世界も第二波で苦しんでいる。累積感染者数の多い国(アメリカ、ブラジル、インド、ロシア、南アフリカ、ペルー、メキシコ、チリ、イギリス)とスウェーデン、ノルウェー、ドイツ、イタリア、オーストラリア、インドネシア、韓国、日本を取り上げ、人口100万人あたりの新規感染者数を7日移動平均でみれば、以下の通りだ。

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縦軸は対数目盛なので、一つあがるごとに一桁違いになる。おおざっぱにいえば、100万人あたり10人以上か以下かでは天と地ほどの違いがある。日本でいえば、新規感染者数が1200人より高いか低いかだ。

7月19日のデータをみると、南アフリカ208.82、アメリカ200.16、ブラジル157.95、ペルー116.07、チリ100.43、ロシア49.92、メキシコ48.36、スウェーデン33.71、インド23.61が「高いグループ」、イギリス10.76、オーストラリア10.58が10人の「ボーダー」、インドネシア5.67、ドイツ4.72、日本3.97、イタリア3.28、ノルウェー1.32、韓国0.91が「低いグループ」であると言える。

これから述べるように、日本国内では「第二波」の到来を強く危険視されているが、世界と比較すれば、100万人あたりの新規感染者数が60人を超えたドイツや90人を超えたイタリアが落ち着いている水準で、決して悲観するような状況でなく、むしろ良好な部類だ。

PCR検査数は増えているが

新規感染者数の次は、人口100万人あたりの死者数を見てみると、以下の通りだ。
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日本は他国に比べて格段に低い状況だ。これは、日本が医療崩壊なく、上手く対処してきたといえる。

この理由はまだはっきりしていない。アジア・オセアニアが欧米に比べて感染者数が桁違いに低いことが一因だが、正確なことは当分わからない状況が続くだろう。

一時BCG接種の有無が差を分けたといわれていたが、ロシアはBCG接種国であるが感染者が多く、オーストラリアはBCG非接種国だが感染者数は少ないなど、それほど単純ではないようだ。

特に、マスコミが取り上げるものは、マスコミがもともと論文のサーベイをしたこともない素人なので、話題先行かつ学術的には意味があるのは少ないと筆者は見ている。いずれにしても、不確実な仮説を前提にして、対応策は決め打ちできない。

こうした世界の情勢の中で、日本が第二波を迎えている。筆者の読者には、恒例のグラフだ。2日に1日くらいのペースで公表しているものだ。


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これを見ると、日本が「第二波」が来ていることは間違いない。PCR検査数の増加がこのグラフに影響しているのは事実だが、第一波の過ぎ去った6月中旬と現在のPCR検査水準と今はそれほど増えていないにもかかわらず、劇的に陽性率が上昇しているので、市中感染が拡がっていると判断せざるを得ない。

「スウェーデンモデル」は危険

この第二波は、仮に4~5月のような自粛をただちに実施した場合、感染拡大のピークは今月中、第一波と同じようなインパクトになるだろう。もっとも、後述するが、自粛がうまく行かないと、大きさは第一波を超える可能性も残されている。

先ほど述べたように、第二波が拡がっているとしても、世界の水準から見ればたいしたことはないと、経済最優先で対策をまったく打たない方法も考えられる。

だが、これはやや危険なギャンブルだ。実際、スウェーデンやブラジルは経済を最優先したが、今の感染者数と死者数は悲惨な状況だ。日本でも100万人あたり10人程度の「ボーダー」にすぐになってしまう可能性もある。すると、1日当たりの新規感染者は1200人程度まで増加し、医療崩壊が起こり、死者数が急速に増えるかもしれない。

無難な策は、第一波と同じように対応することだ。第一波では、緊急事態宣言を行い、各都道府県知事が休業要請を行い、一定の休業補償をした。学校を休校するかどうかはそれぞれの判断に任されたが、今回も状況がわからないうちでは同様に休校措置などを取っても仕方ないだろう。

だが、そのような状況にもかかわらず、最悪のタイミングで「Go To キャンペーン」が始まろうとしている。これから述べていくが、経済的なV字回復を目指す策としては有用だが、今やるタイミングでないのは明らかだ。

そのうえ、コロナの感染の再拡大をめぐり、菅義偉官房長官が「東京問題」と表現したことに対し、小池百合子都知事は「むしろ国の問題」と反論。今の新型インフルエンザ等対策特別措置法基づく感染症対策の国と都の役割分担には隙間風が吹いているようだ。

口を出すか、カネを出すか

菅官房長官は「新規感染者数の大半が東京だ」と言うが、小池都知事は、観光需要喚起策としてのGo To キャンペーンと感染対策の整合性をどうするかは「国の問題」としていた。

新型インフルエンザ等対策特別措置法では、国は緊急事態宣言発出、基本方針策定、都道府県の総合調整を行い、都道府県知事は団体・個人への協力要請、緊急事態時に外出自粛、休業の要請・指示を行うとされている。

こうしてみると、知事の権限はやや強化されている。ただし、休業要請では休業補償をともなうのが前提だ。東京都は財政状況が良いのでまだいいが、その他の道府県は財政余力がなく、再び補償を伴う休業要請を出すことは難しい。

そうなると、国は「口を出すか、カネを出すか」の塩梅をどう調整するかにかかっている。「口を出さず、カネも出さない」、つまり休業要請も補償もしないというのなら、是非はともかく首尾は一貫している。

東京都からすれば、「口は出すがカネは出さない」今の国の姿勢が鬱陶しいのだろう。東京はともかく、コロナのような緊急事態では、財政力のない地方に対して国は「口を出さないがカネを出す」くらいなのに、現状は真逆だ。

東京は、北海道のように独自に非常事態宣言し、休業要請を行い休業補償しても構わないというのが、菅官房長官の本音だろう。同氏は、総務大臣を経験していて、かなりの地方分権論者である。

一方、小池都知事は、都知事選は大方の予想通りに圧勝だった。ただし、政治家として、彼女の威光とモチベーションが来年の東京五輪まで待つのかというところもある。もし東京五輪が中止になれば、政治家としてのレガシーもなくなる。

それ以前に、今秋にも国政で解散総選挙という可能性もある。となれば、小池都知事には、秋の解散総選挙に乗じて、国政復帰という選択肢を取るかもしれない。
間の悪い「Go To キャンペーン」

明らかな感染拡大第二波の到来、国と都の補償の考え方のズレが色濃くなるなかで、「Go To キャンペーン」はあまりに間が悪い。これは「観光業のドン」と言われ、全国旅行業協会会長である二階俊博自民党幹事長の肝入りの政策であることは明確だ。

一次補正予算で1.7兆円の予算をもらった以上、官僚としては何としてもやらなければならないという使命感もあっただろう。夏の旅行シーズンを目前にして、いきなり止めることもできない、と言うのが彼らの本音だ。ちなみに、8月の1世帯当たり旅行費(家計調査)は他のつきに比べて5割増しになる傾向がある。

5月の総務省家計調査によれば、実質消費支出は前年同月比▲16.2%と、記録的な落ち込みだった。そのうちでも、「教養娯楽」の宿泊料▲97.6%、パック旅行費▲95.4%と、旅行関係は壊滅的だ。

また、ゴールデンウィーク期間における旅客数は国内線ANA▲96.5%、国内線JAL▲95.1%、国際線ANA▲97.3%、国際線JAL▲99.1%と、こちらもほぼ全滅だった。

このままでは、明らかに観光業は壊滅してしまう。もっとも航空大手であれば、倒産時に国が資本注入し、倒産しながらも経営を継続することができる。だが、観光業の大半を占める中小企業は、数ヵ月先にも倒産ラッシュになるのが見えている。

まずは休業補償を

これまで述べてきたことを整理するとこうだ。日本では、コロナによる感染者数、死亡数より経済損失のほうが社会に対する悪影響が大きいと予想される。かといって、何も対策しなければ、海外諸国のような感染爆発が広がり、死者も急激に増えるかもしれない。

であえば、それを未然に防止するためにも、そこに、休業補償などの形で財政支出をするのが適切な政策になる。そのひとつが「Go Toキャンペーン」であるが、結局のところ東京都抜きで実施しても大きな需要喚起にはつながらないだろう。

筆者は、まずコロナの感染拡大を防ぐのが第一であり、それが解決したら経済活動を復活させるべきと考えている。といっても、過度に自粛を続けると、先に日本が「経済的な死」を迎えてしまうかもしれない。

つまり、コロナ防止と経済活動を両立させるためには、当面は休業補償で凌いで、再びコロナを抑え込んだタイミングで「Go Toキャンペーン」をやればいいのだ。

そこで、6月22日付け本コラム(小池都知事に勝てるのか? 山本太郎氏「15兆円コロナ対策」の現実味)でも書いたが、東京都は財政に余裕があるので、東京の旅行業者の休業補償をすればいい。

と同時に、国でも東京以外の旅行業者の経済支援をしたらいい。筆者がこのように考えるのは、本コラムで既に書いているように、国もバランスシートをみれば財政はまったく悪くない、と言い切れるからだ。

政府と日銀の「連合軍」を活用せよ

特に国は、今回の補正が政府と日銀の「連合軍」で実施され国の財政負担は実質的にない。これについては 6月8日付け本コラム(160兆コロナ補正予算をバラマキと批判する人の「話にならない」現状認識)を参考にしてほしい。

いまだに、多くのマスコミでは、今回の補正により将来世代に負担が増えたと説明しているが、それは間違いだ。なお、財務省も、7月2日財政審会長談話として、財政悪化を述べているが、それも正しくない。

この「連合軍」を活用しない手はない。まずGo To キャンペーンを延期し休業補償で凌いで、いいタイミングで再開がベストシナリオだ。休業補償なしでGo Toキャンペーン強行はかえって経済を悪くするかもしれない。

観光業は20兆円程度の市場規模だ。そこで3ヵ月程度の補償を行うと考えれば、財政支出は5兆円程度になる。国の財政は、1,2次補正予算のほか、あと100兆円程度は「悪質なインフレ」を起こさずに対応できるだろう。併せて、医療従事者など医療業界にも追加支出をすればいい。2次補正で予備費は10兆円があるが、必要なら「3次補正」も視野に入れるべきだ。

【私の論評】政府は財務省なしの政府・日銀連合軍で第二波、第三波のコロナ禍を余裕で乗り切れるし、そうすべき!(◎_◎;)

新型コロナウイルスと共存するには、感染防止対策と経済活動を両立させることが必要になりますが、そのバランスを上手くとることが、いかに難しいことであるかがよくわかりました。

政府は、観光支援事業「Go To トラベル」の補助対象から、感染拡大が急増する東京都を除外して、7月22日から強引に見切り発車するようですが、メディアの世論調査では、このタイミングでの開始に大多数の人が「反対」と回答、スタート直前でエンスト状態のようです。

GoTo Travelのポスター
きょうの朝日によると、18、19日に実施した全国世論調査では、22日から始めることに、74%が「反対」、「賛成」はわずか19%でした。開始時期や対象地域を決めるまでの安倍政権の一連の対応も「評価しない」が74%を占めたといいます。

日経の世論調査でも22日の開始については「早すぎる」と答えた人は80%もいたといいます。

さらに、きょうの東京が1面トップで『「GoTo全面延期」62%、緊急事態再発令を66%」と、大見出しで取り上げていましたが、こちらは共同通信の世論調査の結果です。それによると、「Go To トラベル」を巡り、東京発着の旅行を除外した政府対応を尋ねたところ「全面延期すべきだった」との回答が62.7%に上ったといいます。「他に感染が拡大する地域も除外」17.0%、「適切」14.0%、「予定通り実施」はわずか4.6%でした。

また、 緊急事態宣言については「再発令すべきだ」との回答は66.4%。「必要ない」が27.7%だったといいます。

ゴールデンウイークも外国人観光客のインバウンド需要も空振りだった観光業界が、夏休みに入るこの4連休に合わせて開始する「Go To トラベル」のキャンペーンに大きな期待を抱いていることは痛いほどよくわかります。もてなす側の防止対策が万全だとしても、コロナ感染の恐怖が道連れの旅では足が止まると思います。

これは、多くの国民の正直な考えだと思います。私もそう思います。そもそも、政府は3月あたりからGO TO キャンペーンの内容を公表しており、その時は7月でも本当に国内旅行ができるようになるのか、かなりの疑念を持ちました。その疑念は現実のものとなりました。

政府が進め、7月22日にはスタートするGoToトラベルキャンペーンですが、キャンペーンからの東京除外をめぐり、政府が補償しないとしていたキャンセル料を政府は一転して、肩代わりで補償する方針を固めました。

やはり、現在「GO TO トラベル」をするには、かなり無理がありそうです。現象は、様子を見て、現状は、高橋洋一が言うように、Go To キャンペーンを延期し休業補償で凌いで、いいタイミングで再開がベストシナリオのようです。それに、休業補償なしでGo Toキャンペーン強行はかえって経済を悪くする可能性の方が大きそうです。

そんなことよりも、政府は旅行業界のみならず、飲食店などの他の業種の休業補償や、家賃補填なども視野にいれるとともに、第二次補正の10兆円など早々に使用目的を定め、2回目の現金給付や、減税、医療機関に対する補助も視野に入れた、第三次補正予算に取り組むべきです。

そうして、このようなことは緊縮大好きの、財務省に対応させては、できるものもできなくなります。

やはり、政府と日銀との連合軍が担うべきでしょう。政府が大量の国債発行によって財源調達を行うが、その一方で、日銀がその国債の買い入れを行います。これによって政府が巨額の有効需要を創出でき、不況の下支えをする。まさに大恐慌スタイルの経済政策です。

麻生太郎財務相と日銀の黒田東彦総裁は5月22日午後、新型コロナウイルスへの対応を巡り面談しその後「事態収束のためにあらゆる手段を講じ、収束後に日本経済を再び確かな成長軌道に回復させるため、一体となって取り組んでいく」との共同談話を出しました。両者が共同談話を出したのは、英国の欧州連合(EU)離脱を巡って市場が混乱した2016年6月以来3年11カ月ぶりです。政府日銀連合軍が出来上がったのはこの時のようです。下の写真は、この共同談話発表の時のものです。



このやり方をとっていますので、第二次補正予算は、税金を用いていません。マスコミや似非識者の中には、何かと言えば「血税」とか「バラマキ」などという人もいますが、これは大嘘です。緊縮病で頭が狂った財務省が言うのならわかりますが、バカもいい加減にしろと言いたいです。

この政策のリスクは、インフレ率が高まることです。しかし、日本はもともとコロナショック以前から、物価目標する達成しておらず、さらにコロナ・ショックは基本的に需要蒸発した需要ショックなので、当面はインフレというよりデフレを心配すべきときです。

政府日銀連合軍が潤沢な資金を政府に、提供すれば、「GOTOトラベル」など全面的に廃止し、キャンセル料を補填するどころか、旅館、飲食店等に対して、休業要請や家賃補填などできます。その他の補償もできます。日本政府は、この位のことをしても財政破綻する心配など全くありません。

そうして、このような政府と日銀の連合軍の動きを今後も活発化させ、いざというときは、政府が国債を発行し、それを日銀が買い取るという方式を定着させていただきたいものです。

コロナによってこのような連合軍が成立したのですから、これはコロナ禍でもたらされた、唯一の良いことかもしれません。

コロナが終息した後にも、地震や台風などの大震災が発生した時や、リーマンショック並みの経済の悪化が生じたときに、速やかに政府日銀連合軍で政府が大量の資金を調達できるようにし、緊急時に素早く積極財政と、無制限緩和を実行できるようにしていただきたいものです。

そうして、この政策は、欧米では定番の政策です。日本もこの定番ができるようにすべきです。

そうて、財務省は、国債発行係と、徴税係だけをするようになれば良いと思います。どうせ緊縮病で頭が使えないのですから、その係だけをやったもらったほうが良いです。

ひょっとすると、これは、コロナ終息後に、コロナ禍の唯一の良い置土産になるかもしれません。

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