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2015年2月4日水曜日

実はモチベーションと生産性が低い日本人――理由はこれだ―【私の論評】過去の日本が、デフレ・スパイラルのどん底に沈んでいたことを無視して、日本企業の生産性や社員のモチベーションを語っても百害あって一利なしと心得よ(゚д゚)!


この記事の著者ロッシェル・カップ

日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』という私が最近出した本のタイトルを見て、日本のビジネスパーソンの多くが「本当にそうなの?」と思うことだろう。実際、この本を書いている最中にも同様のことを聞かれた。「日本人はバリバリ働いて、とても頑張っているのに」という意見が多かった。しかし私は、「勤労意欲が高い」「仕事の生産性が高い」という日本人が自分たちについて思うイメージに、本書の中で多くの疑問を呈している。

社員が自分の仕事についてどう思っているかを測定する手段として、最近アメリカで注目を集めているのが、社員のエンゲージメントというコンセプトである。また、社員のアウトプットを測定する直接的尺度となるのが、経済学者の言う生産性である。これらを通して、日本人の働き方と昨今の経済不振の間にどのような関係があるのかを探ってみよう。

社員のエンゲージメントとは、社員の企業に対する関与の度合いと、仕事に対する感情的なつながりを表現するものである。 これは「活力、献身、没頭などに特徴付けられる、仕事に関連するポジティブで充実した精神状態」と表現することができ、エンゲージメントの高い社員は「仕事にエネルギッシュで効果的なつながり」を持っている。つまり、仕事に対して社員が感じている包括的な情熱というレベルにまで焦点をあてているのが、エンゲージメントである。

社員のエンゲージメントが最近アメリカで注目を浴びている一番の理由は、高いエンゲージメントによって数多くの恩恵がもたらされるためだ。エンゲージメントの高い社員は企業に留まる傾向が高く、さらに企業とその製品・サービスの支持者として、より熱心な営業と優れた顧客サービスを提供する。ここで最も重要なのは、そのような社員は、仕事に対するやる気が非常に高いことである。このような社員が、顧客との関係を深め、企業が提供する製品やサービスを刷新し向上する原動力となる。

逆に、エンゲージメントの低い社員は、やる気がなく、仕事にも関心がなく、必要最低限のことしかしない。このような社員は欠勤が多く、安全に関する事故を起こしたり、品質問題を発生させたり、顧客を遠ざけたりする原因となる。また、ネガティブな態度で自分の周囲のモラルを低下させる原因にもなる。多くのアメリカ企業は、エンゲージメントの高い社員を増やし、低い社員を減らすことが、ダイナミックで成功した企業となる秘訣であることを認識し始めた。

社員にやる気を起こさせるためにエンゲージメントが重要であるとしたとき、日本企業の社員のエンゲージメントのレベルは一体どの程度であろうか? 例えば、エンゲージメントの国際比較研究の先駆者、タワーズワトソンの「2014年グローバル労働力調査」によると、日本でエンゲージメントレベルが高い社員は21%(持続可能なエンゲージメントの3要素すべてが高得点)、ある程度高い社員は11%(従来のエンゲージメントは高いがイネーブルメントとエネルギーが低い)、低い社員は23%(イネーブルメントとエネルギーは高いが従来のエンゲージメントが低い)、非常に低い社員は45%(持続可能なエンゲージメントの3要素すべてが低得点)であった。これに比較して、世界平均は同順に40%、19%、19%、24%、アメリカは39%、27%、14%、20%であった。 タワーズワトソンのコンサルティングディレクター、クリス・ピンツによると、少なくとも過去8年間、日本はこの調査の対象国中最低スコアを記録し続けているという。その他エンゲージメントの調査を行っている会社も、似たような結果を示している。

次に生産性を比較してみよう。生産性は一定のインプットでどれだけのアウトプットを作り出すことが可能かの測定である。 OECDが提供する2013年の数値によると、実労1時間あたりの国民総生産GDP(米ドル、時価、現在の購買力平価)は、日本が41.1、OECD平均が47.4、G7平均が56.8、アメリカが66.6となっている。つまり、2013年の日本の生産性はアメリカの61.7%、G7の72.3%、OECD全体の86.7%しかないことを意味する。この数値は、 日本企業の社員は他国企業の社員と比較して、時間を生産的または効果的に使うことをしていないことを示唆している 。

他国と比較して日本企業のエンゲージメントと生産性が低い原因は何だろうか? 幾つもの要素が複雑に絡んでいるため 、どこから始めてよいかわからないくらいだが、大きく分けて、雇用の構造、人事管理の慣行、 人材育成の方法、企業文化の4つのエリアに問題があると私は考える。(これらの問題点については、本書で詳しく解説している)

雇用の構造
  • 「仕事とは何か」に対する柔軟性に欠けるアプローチ
  • 柔軟性に欠ける労働力の区分
  • 「非標準的」労働者の女性、外国人、高齢者などの活用に消極的
  • 社員が自分の仕事内容を選べないシステム
人事管理の慣行
  • 報酬と業績評価の関連性の低さ
  • リスクに立ち向かうことへのサポートの欠如
  • 仕事内容の明確な定義の欠如
  • 社員を解雇する効率的プロセスの欠如
  • 社員のやる気育成への取り組みの欠如
人材育成の方法
  • ソフトスキルに価値が置かれない
  • マネジメントスキルの不足
  • 人事異動の計画性の欠如
企業文化
  • 過度の緊急性の風潮を作り出すヒエラルキー構造
  • お役所仕事的な柔軟性に欠けるプロセス
  • 長時間労働によるワークライフバランスの難しさ
  • 権限付与と自主性の欠如
これらの問題は、今日の日本企業のあり方に内在しているため、取り組むためには著しい構造的変化が必要とされるだろう。しかし今のままでは、日本はこれから他の先進国にどんどん取り残されていってしまう。日本のビジネスは今、将来を左右する重要な分岐点に立たされているといっても過言ではないだろう。

注)上記記事で、太文字はブログ管理者が施しました

【私の論評】過去の日本が、デフレ・スパイラルのどん底に沈んでいたことを無視して、日本企業の生産性や社員のモチベーションを語っても百害あって一利なしと心得よ(゚д゚)!

日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?
上の記事の元となっている書籍


上の記事、一見新しい『日本ダメ論』なのかもしれないと思い、全文掲載しました。私は、この書籍を読んでいないので、論評して良いかどうか迷いましたが、上の記事の内容だけでも、十分に論評できると判断したので、以下に論評させていただきます。

最初に結論を言いますが、過去の日本がデフレスパイラルのどん底に沈んていたことを無視して、日本企業の社員のモチベーションの低さを論評しても無意味ということです。

日本がデフレに突入した直後の1998年より、それまで自殺者が2万人台だったものが、一挙に3万人台にはねあがりました。これについては、以前のこのブログにも掲載したことがあります。その記事のURLを以下に掲載します。
【田中秀臣氏TW】財務省は「人殺し」の機関の別称だといって差し支えない―【私の論評】政治主導を実現するため、財務省殺人マシーンは分割して破壊せよ!日銀殺人マシーンの亡霊を蘇らせないために、日銀法を改正せよ(゚д゚)!
 

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、 この記事では、デフレと年間自殺者数との間には、相関関係があるということを前提として、経済学者の田中秀臣氏のツイートなどを掲載しました。

過去の日本においては、15年以上もデフレが続いたという異常事態に見舞われていました。それが、社会に悪影響を及ぼしてきたことも事実です。経済対策は場合によっては人を殺す場合もあると田中秀臣氏もそう思っているようですが、私もそのよう思います。自殺まではいかなくても、モチベーションが下がる人々が多くなることも十分あり得ると思います。

そもそも、デフレでは企業が物がサービスを売りだそうとしても、なかなか売れません。そのような中で企業は、新しく製品やサービスを創造するよりは、既存の製品やサービスを品質を落とさずにいかに低価格で提供するかに知恵を絞るしかありませんでした。さらに、デフレに起因する、超円高で輸出産業にとっても、まるで手枷・足枷をされながら、グローバル市場での戦いを余儀なくされました。

こういう環境下では、企業も当然のことながら、採用を控えます。ただし、ある一定年齢層を全く雇用しないとか、極端に少なくしか採用しないということにでもなれば、将来特定の期間に管理職不足に悩まされることにもなりかねません。だから、消極的ではあるものの採用は続けてきました。

しかし、デフレ下においては、創造性・能力・才能があっても、それを十分に活用することもできませんでした。だから、企業としては、結果として「コミュニケーショ能力のある人」などして、あたりさわりのない採用を行ってきたというのが実情です。

無論、コミュニケーション能力が必要ないなどというつもりはありません。しかし、「コミュニケーション能力」など当たり前であり、これが欠如する人はそもそも、社会生活を営むことができません。企業側としては、この先もデフレが継続するものと想定して、あたりさわりのない採用をして、将来の特定年代の管理職の候補として、調整型の「コミュニケーション能力」をもっとも重視してきたのだと思います。

上の記事の筆者は、このようなデフレの影響は、無視して、日本人の働き方と昨今の経済不振の間にどのような関係があるかを探ろうしています。そもそも、経済不信は日本人の働き方に問題があると考えているようです。また、生産性の低さもそれが原因であると考えているようです。

しかし、これは、原因と結果をはき違えています。私は、長期デフレによる経済不信が日本人の働き方に問題をもたらしたのです。さらに、生産性の低さもそもそも、デフレ下においては、低価格にせざるをえず、低価格にすれば、必然的に生産性が低くなるのも当然の帰結です。

さらに、この筆者は、他国と比較して日本企業のエンゲージメントと生産性が低い原因は大きく分けて、雇用の構造、人事管理の慣行、 人材育成の方法、企業文化の4つのエリアに問題と考えているとしています。

本当に日本人だけがモチベーションが低いといえるか・・・

しかし、デフレであたりさわりのない採用をしている企業が、これらの改革に熱心に取り組むでしょうか。そんなことよりも、ありとあらゆる方面で、コストを下げて、企業の存続をはかることが精一杯だったと思います。

かといって、私は企業などを責めるつもりはありません。企業がデフレ下で、企業を存続させるために、防衛的な行動をすることは、やむを得ないことです。それは、個々人の努力や、企業努力も超えたものであり、その責任は日本銀行の金融政策の失敗によるものです。それを助長した日銀官僚や、政治家、マスコミによるものです。

このような最中に、過去のデフレを無視して、日本人のモチベーションが低いとか、その理由は、今日の日本企業のあり方に内在しているなどとするのは間違いです。

無論、個々人や、日本企業に問題がないなどとはいいません。しかし、欧米でも、欧米企業でも、問題がない企業はありません。

しかし、現状ではどうなるかわかりませんが、日本が長期のデフレ・スパイラルのどん底に沈んでいるときは、欧米は景気が悪いことはあっても、少なくともデフレではありませんてでした。

長期デフレであった日本の過去を無視して、日本人の生産性やモチベーションが低いなどと論ずるのは、百害あって一利なしであると思います。

この記事は日本人の現状のエンゲージメントや、生産性の低さを一方的に日本人のモチベーションの低さに結びつけているという点で、既存の「日本ダメ論」の域を全く超えておらず、全く無意味な論評だと思います。

デフレから完璧に脱出したとき真の日本がみえてくる・・・・・・・

最近の日本は、もはやデフレではありませんが、過去15年以上にもわたって、続いたデフレの悪影響はまだまだ続いています。デフレではないとはいっても、物価目標2%にはまだまだほど遠い上記ょうです。しかし、物価目標が達成され、デフレが完璧に過去のものとなり、緩やかなインフレが続く時代となれば、そのときこそ、日本人の真の姿や、日本企業の真の姿が見られるようになると思います。それだけ、過去のデフレは酷かったということです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2014年7月20日日曜日

天下の財務省夏の人事は「増税人事」―【私の論評】やすやすと、10%増税がなされ、日本が再度デフレスパイラルのどん底に沈み、安倍総理が辞任を余儀なくされることが、朝日新聞の描く日本の望ましい近未来だ(゚д゚)!

天下の財務省夏の人事は「増税人事」

財務省「花の54年組」4人衆 加藤勝信(左上) 木下康司(右上)
香川俊介(下右) 田中一穂(右下)

財務省の夏の人事が固まった。木下康司事務次官が退任し後任に香川俊介氏、主計局長に田中一穂氏といった布陣になった。彼らはいずれも「54年組」である。

霞が関で入省年次が意味を持つのは、中央省庁のトップである次官になるのは通常は同期で1人だけ、その1人が次官になるまでに他の同期は退職するからである。

ところが、今回の財務省の人事ではこの慣行が破られた。過去にも財務省(大蔵省を含む)で同期から2人の事務次官を輩出したことはあるが、わずかに「28年組」、「49年組」くらいだろう。もっとも、他省庁まで含めれば、財務省同期から複数の事務次官が出ることは珍しくなく、「28年組」からはなんと6人の事務次官が輩出されている。

いずれにしても、「54年組」は財務省内では盤石となった。主計局長は次の次官の指定席になっているので、今回の財務省人事で「54年組」の木下、香川、田中が続けて事務次官に就任することが確実。これはおそらく財務省の歴史でも初めてのことだろう。

ポイントは二つある。

一つは田中氏が次期次官の指定席である主計局長に就任したことである。主税局長から主計局長への就任は戦後初。

安倍首相も田中氏を次官にするとしばしば漏らしているが、田中氏の力量を買っての意見ではなく、安倍首相自らの政治力を示したい意図が透けて見えている。「これが安倍首相の人事力なのだ」と見せつけられ、財務省も安倍政権が長期政権になることを見越した上で、異例の人事を受け入れている形である。

二つ目のポイントは、今年5月に創設された内閣人事局の初代局長に加藤勝信内閣官房副長官が就任したこと。初代局長には官僚OBが就くといわれていたが、菅義偉官房長官の政治主導人事で加藤副長官に逆転、深謀遠慮もあった。

実は加藤副長官は、財務省OBで「54年組」なのだ。財務省同期は仲がいい。かつて接待スキャンダルで話題になったが、「54年組」は金融機関持ちで、かなりいかがわしいところで「同期会」を開いたこともあるようだ。そんな若いときのすねに傷をもつ仲間。要は安倍政権が、加藤副長官による財務省の間接統治を行っていると見るのが正しい。この「仕組み」によって、厳しすぎず緩すぎない微妙な距離感で、財務省のやりたいことが通るようになる。

今回の人事で見えることは、これで消費税の10%への増税は決まりだということ。バーターとなる法人税減税も決まったし、人事も行った。いみじくも、麻生太郎財務相が7月4日の閣議後会見で人事の狙いを正直に言ってしまった。「消費税10%への増税を考えた万全の体制」だと。

以上は要約記事です。詳細は、こちらから!!

【私の論評】やすやすと、10%増税がなされ、日本が再度デフレスパイラルのどん底に沈み、安倍総理が辞任を余儀なくされることが、朝日新聞の描く日本の望ましい近未来だ(゚д゚)!

同じ4人組でも、資生堂TUBAKIの4人組はよろしいようで? 

上の記事を読んでいると、なにやら、また昨年と全く同じように、財務省の大キャンペーンより、政治家はもとより、マスコミや識者も増税は当然のこととして、押し切られ、結局安部総理も増税に踏み切らざるを得なくなるような気配が濃厚です。

しかし、そんなことになってしまえば、安倍政権自体がとんでもないことになってしまいそうです。それは、最近の滋賀県知事選挙をもう一度考えてみると良く理解できます。

最近の選挙では、滋賀県知事選挙に限らず、無党派層がキャスティング・ボードを握っています。一昨年の衆議院選挙も、昨年の参議院議員選挙でも、安倍政権による経済政策が注目をあび、選挙前から、株価などが上がり始めました。とにかく、いままではなかった政策に多くの無党派層が目を奪われたものと思います。無党派層が、安倍政権を支持したからそ、あのような大勝が可能になったものと思います。

このように、無党派層の最大関心事はやはり直近の経済だと思います。それはそうです。何年もデフレが続いていて、経済的にかなりの落ち込みがある中での選挙です。もし、経済が良かったり、良くなりそうであれば、イデオロギーの強い集団的自衛権や原発問題は避け、彼らは、与党を支持することになると思います。しかし、直近の経済が悪いとか、これから悪くなりそうだとこれらの問題は逆に作用し、与党不支持に回る可能性が大です。

それは、直近の滋賀県知事の与党の敗北を分析すると良く理解できます。

これについては、このブログでもとりあげましたので、その記事のURLを掲載させていただきます。
本当に「集団的自衛権」が敗因? 滋賀知事選の与党候補敗北、国内外メディアの見解分かれる―【私の論評】朝日新聞による執拗で命がけの、印象操作も加勢し、かつてないほどの大ネガティブ・キャンペーンを繰り広げても与党系候補が1万票まで猛追したのは、寧ろ安倍政権の底力とみるべき(゚д゚)!
この記事を書いた時には、まだ私の分析もまだ甘かったかもしれません。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論は、「朝日新聞による執拗で命がけの、印象操作も加勢し、かつてないほどの大ネガティブ・キャンペーンを繰り広げても与党系候補が1万票まで猛追したのは、寧ろ安倍政権の底力とみるべきである」とのものでした。

しかし、この論評をするときに、私の中で昨年の増税のときの財務省と、朝日新聞を筆頭とする大手マスコミの、執拗で命がけなどという次元ではなく、恥も外聞も、道理や理論なども完璧に無視した、本当に死に物狂いの一大増税キャンペーンがあったことを忘れていました。

滋賀県知事の選挙で、朝日新聞はあれだけの印象操作をしました。朝日新聞としては、滋賀県はもともと保守の地盤ではないため、最近は負け続けていますから、ここで負ければ先も負けるとばかりに徹底的な大攻勢に出たのだと思います。

特に、朝日新聞の動きは、素早く、他マスコミは、朝日の繰り返しのような有り様でした。

今後の朝日新聞による、増税キャンペーンは、もっとスケールを拡大して、白を黒、黒を白と言いくるめてまでの、死に物狂いでしかも、用意周到な長期戦略と戦術を駆使して、攻勢に出てくることが予想されます。すでに、戦略は出来上がり、現段階では、この戦略にそって、戦術を展開している最中であると考えられます。その戦術の成功が先の滋賀県知事選挙の結果なのです。

本寺は、このことも計算に入れた上での論評をさせていただきます。

このブログでも、過去に何度指摘したように、マスコミはあまり大きくは扱わないものの、4月からの消費税増税以降、良い経済指標はまったくなく、今後かなり景気が落ち込みそうな気配がします。滋賀県知事選挙の有権者は、そのあたりを感覚的につかんでいて、経済面で安倍政権に失望したのかもしれません。こうした背景があり、さらにもともと民主王国といわれていた土地柄もあり、三日月氏が当選したとも考えられます。

ひょっとすると、滋賀県選挙から自民党に対する有権者の潮目が変わってしまったかもしれません。この後の福島県知事選や沖縄県知事選により、潮目の変化がより一層はっきりするかもしれません。

福島県知事選では原発関連、沖縄県知事選では米軍基地など安全保障関係が争点になると考えられます。しかし、これらの選挙でも無党派層がキャスチングボートを握るのは間違いないです。

そうなると、直近の経済の悪化を感じ取る無党派層の存在が与党にとって不利に動くことは目に見えて明らかなので、今後安倍政権はかなり苦戦する可能性が大です。

これに対して、安部総理もしくは、総理のブレーンに何か隠し球はあるのでしょうか。それがあるなら、何とかなるかもしれませんが、もしなければ、そうして10%増税もやすやすと導入されることにでもなれば、経済がさらに落ち込むのは目に見えています。

少なくとも、前二回の増税は、日本がデフレになる前に行なわれています。5%増税後にはじめて、日本経済は、デフレに突入しています。しかし、今回の4月増税は、異次元の包括的金融緩和はなされてはいるものの、未だデフレから脱却していない時期での増税です。5月の経済指標を見ている限りでは、前二回の増税後の落ち込みよりもかなり落ち込んでいます。

もともと金融緩和政策は、効果がでるまでに時間がかかるので、増税していなくても、来年4月あたりだとまだ完璧にデフレから脱却できていない可能性が高かったのに、今年の増税で来年4月時点でのデフレ脱却は完璧に不可能になりました。

その時期に10%増税をすると、日本の経済は坂道を転がり落ちるように、またデフレスパイラルの深みに落ち込んでいくことは明らかです。

そうなれば、安倍政権は今後の選挙戦ではかなり苦戦を強いられることになりそうです。

そうならないためには、やはり直近の経済を良くするしかありません。

そのためには、今後も異次元の包括的金融緩和を継続し、それでも何か経済にとって良くないことがおこれば、大々的な追加金融緩和を行うようにすべぎてす。

そうして、来年の増税は延期ということをはやめに公表して、市場関係者を安心させ、経済対策として、公共工事の提供制約のある現状では、公共工事はなかなか経済対策の決定打とならないので、即効性の高い、再配分的な、所得税減税や、給付金政策を実施することです。

これにより、経済の先行きは明るくなり、今年の増税の悪影響をかなり減衰することができます。

それにしても、これらを成就させるためには、二つのことが重要になります。

まず第一に、昨年のように10月に増税の判断をするというのなら、それまでは経済対策などあまりせず、落ち込ませて、落ち込んでいることを理由に来年の増税は取りやめることにするなどのことが考えられます。しかし、このようなことは、もうすでに安部総理と、そのブレーンたちはとうに考えているいることでしょう。

第二に、上記事のように増税既定路線とする人事が成立しているわけですから、今年も財務省と大手マスコミは、死に物狂いで増税キャンペーンを繰り広げるのは明らかです。しかし、それに抗って、自民党内を増税見送りで調整するための、強力な党内政局ともいうべき、調整です。残念ながら、ここでは野党は蚊帳の外です。

この第二の、党内調整が肝心要の安部総理とそのブレーンたちの本当の仕事です。ここに、何か隠し球があれば良いのですが、なかったら大変なことです。


なかった場合は、やすやすと増税がなされてしまい。経済は落ち込み、安倍政権にとっては大打撃となります。最悪の場合は、第一次安倍内閣のときのように、安倍おろしの憂き目にあい、安部総理は退陣を迫られることになるかもしれません。あのときの、追い打ちをかけるような、日銀の裏切りによる金融引締めを忘れるべきではありません。

今度は、日銀ではなく、財務省が伏兵となるのです。

こんな悪夢を再現させるべきではありません。ただし、マスコミはあまり報道しませんが、外交で華々しい成果を上げた安倍総理です、難局を乗り切るための何らかの、隠し球はあるに違いありません。

私たちとしては、それがあるものと信じつつ、安倍政権のおかれている状況などをブログや、SNSで掲載して、間接的にできるだけ応援していくということが大きな支援となると信じます。

やすやすと、10%増税がなされ、日本が再度デフレスパイラルのどん底に落ち込み、無党派層が完璧に与党から離れ、またぞろ安倍おろしがはじまり、安倍総理が辞任を余儀なくされることだけは、絶対に避けなければなりません。

これが、マスコミが狙っている近未来の日本です。安倍政権と、経済この両者が密接に結びついていることを知る人は、未だ少ないです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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