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2012年11月29日木曜日

UPDATE1: 「無制限」緩和は額ではない、物価目標2%達成まで緩和継続を=安倍自民総裁―【私の論評】ただ反対すれば、良いというものではない!反リフレ派は、反対するだけではなく、日本経済が良くなるための対案を提供せよ!!

UPDATE1: 「無制限」緩和は額ではない、物価目標2%達成まで緩和継続を=安倍自民総裁(ロイター)


[東京 29日 ロイター] 自民党の安倍晋三総裁は29日、都内で講演し、物価目標2%を達成するまで無制限な金融緩和をすべきとの考えをあらためて強調した。「無制限」とは「額」ではなく、物価目標達成まで緩和継続を期待する考えだと説明。物価目標2%を超えていく段階では金融引き締めに入る技術が中央銀行に問われているとも語り、インフレに警戒的な日銀をけん制した。

安倍総裁は長引くデフレ状況に対して「このままでは『平成の大不況』に突入する危険性すらある」と懸念を示し、政権奪還後には、金融政策・財政政策、成長戦略を総動員させる考えを繰り返した。

この記事の続きはこちらから!!


【私の論評】ただ反対すれば、良いというものではない!反リフレ派は、反対するだけではなく、日本経済が良くなるための対案を提供せよ!!

詳細は、上の記事をご覧いただくものとして、要約して若干説明も付け加えると、安倍総裁の主張は以下の三点です。

1.インフレ・ターゲットの無制限緩和の趣旨
無制限とは、どこまでも無制限で金融緩和をするということでなく、物価上昇率2%目標を達成するまで無制限に緩和をしていくこと示しています。これは、アメリカのQE3も同じことで、無制限緩和を行なっていますが、これは、どこまでも無制限に行うということではなく、あくまで、雇用が改善するまで無制限に実施するということです。
2.日銀の独立性
日銀独立性とは、日銀の金融政策は、不可侵というものではなく、特に野党が全く批判をしてはいけないということはないということです。政府の一下部機関である、日銀は、会社でいえば、政府が上司であれば、日銀は部下の関係にあります。だから、政府が表にでるような形で、日銀を批判するのはおかしなことですが、外部の野党が批判することは、あり得ることだし、それまで否定すれば、そもそも、民主的ではありません。
3.建設国債日銀直接引き受けについて
日銀の建設国債直接引き受けに関しては、安倍総裁は一度も言及したことはありません。直接引き受けとは、政府が発行したものをどこも経由することなく、直接日銀が買い取ることを意味していますが、安倍総裁は、市中の銀行などから日銀が買い取ることを言ったのであり、直接引き受けのことではありません。これは、他のメディアなどからも歴然としています。これは、一部のメディアによる誤報です。
安倍総裁が、金融緩和政策を打ち出して以来様々な誤解が生じたので、それを払拭するために行ったものと思われます。

それにしても、安倍さんが行おうとしている金融緩和策は、リフレ政策としてアメリカをはじめ他国ではごく普通に行われているものですが、なぜか、日本では珍奇なこととか、あり得ないことと主張する人たちも多いです。

いわゆる日本の反リフレ派は、ありとあらゆる、理論や考えを総動員して、金融緩和策はうまくいかないことを力説します。その典型的なものが、ガジエット通信にも転載されていましたので、そのURLを以下に掲載しておきます。


安倍晋三氏のためのインフレ入門




もとはは、池田信夫氏のブログの記事てす。この内容を私も読んでみましたが、もともとこのサイトは、ガジエットに興味のある人たちで、金融に関する知見があまりない人だとなかなか理解できないと思いますし、それに読んでいてなにやら消化不良のような感じがします。

そうして、いわゆる反リフレ派の人々の記事を読んでいると、いつも消化不良をおこしたような感じがするのですが、それは、なぜなのだろうかと考えてみました。

それで、一つはっきりしたことがあります。それは、大方の反リフレ派の人々は、安倍総裁などによる金融緩和策などやっても無駄だということを様々な観点から主張しますが、一つだけ抜けていることがあります。それは、反対するのは結構ですが、ではどうすれば良いのかという対案をほとんど出していないということです。安倍総裁が政策を打ち出すと、あれは、こうだから駄目、これもああだから駄目と一見精緻に見えるような、反証をしますが、肝心要の、日本経済がデフレから抜け出す筋道を示すことはありません。
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小学生にだって、まともな親ならば、「反論するなら、ただ反論するだけではなく、対案を出せ」と教えると思います。ましてや、いい年をした大人が「対案」も出すこともなく、ただ反対して、あろうことか、上記の池田信夫氏のようなタイトル(安倍晋三氏のためのインフレ入門)のような記事を書くというのは、いかがなものかと思います。

小学生の会議。見ていると、やじもなく、反対するだけではなく、対論も述べ国会よりも民主的?
反リフレ派は、ただ反対するだけではなく、日本の経済が良くなるための対案を示すべきだと思います。多くの人々が求めているのは、反論ではなく、「デフレから脱却して、日本経済を良くすること」だと思います。そうすることによってはじめて、反論も建設的になると思います。そう思うのは私だけでしょうか?皆さんは、どう思われますか?



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2012年11月22日木曜日

日経平均113円高で9300円台回復―【私の論評】これは、安倍効果以外の何ものでもない!!

日経平均113円高で9300円台回復:


  22日の東京株式市場は続伸し、日経平均株価は前日比113.80円高の9336.32円で取引が始まった。9300円台回復は5月2日以来。

  前日の米国株式相場は上昇。NYダウ平均は48ドル高、ナスダックは9ポイント高となった。サンクスギビングデーを前にして商いこそ薄かったものの、週間新規失業保険申請数が前回より減少したことが好感された。

  東京市場では、外国為替市場で1ドル=82円台半ばまで続伸していることもあり、自動車など輸出関連株など幅広く買われている。東証1部の値上がり銘柄は76%となっている。

【私の論評】これは、安倍効果以外の何ものでもない!!

野田首相が、解散宣言をして以来、円安に振れていることは、以前にもこのブログに述べました。それに、加えて、最近では、株価も上がり気味です。昨日も上の通りです。これは、一体どうしたことでしょうか?最近、株式市場が大きく好転する、政府や、日銀の政策の変更があったでしょうか?

ないです。株価が下落するようなものは、あっても、その他は一切ありません。白川総裁にいたっては、結局インフレ目標1%も達成するつもりはなく、今月12日の時点で、インフレ目標に否定的であり、 「現実的でない」とまで、発言していました。これについては、このブログにも掲載しましたので、その記事のURLを以下にコピペしておきます。

日銀総裁、インフレ目標に否定的 「現実的でない」―【私の論評】インフレ目標を否定する、白川総裁本音炸裂!!マスコミはその協力者!!



詳細は、上の記事をご覧いただくものとして、白川総裁は、金融緩和措置に対しては、消極的であることには変わりなく、さらに、上のような発言をしていたわけです。であれば、株式市場が好感を持つ状況は一切ないわけです。にもかかわらず、株価が上がっているのは、安倍総裁が、インフレ目標3%や、日銀法改正などを明言したため、市場がそれに好感を持ったためであり、安倍政権が実現した場合、徹底した金融緩和措置を行うことであろうことは明らかなので、それを見越して、上がりそうな株を買いに走っているという事だと思います。それ以外に説明がつきません。

この状況を白川総裁、野田総理は、どのように考えているのでしょうか。私自身は、負け犬の遠吠えのようにしか聞こえません。

最近は、安倍総裁の金融緩和政策に対する批判が、多いです。白川総裁、野田総理だけではなく、マスコミや文化人によるものなど、大合唱という有様です。ツイッターにも、安倍総裁の金融緩和政策を支持するツイートも大ですが、安倍総裁の金融政策を批判するものも多いです。

その代表的なものが、先日もこのブログに掲載した、池田信夫氏の論評です。以下にその記事のURLを掲載させていだきます。

安倍晋三氏の無責任な経済政策 - 池田 信夫氏−【私の論評】安倍総裁を無能呼ばわりしたつもりでしょうが、矛盾点が露呈してますが?!


池田信夫氏

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、池田信夫氏は、同じ論考の中で、金融緩和をすれば、ハイパーインフレになると語り、そのすぐ後に、日本経済は、流動性の罠にはまっているので、インフレにならないなど、無茶苦茶なことを語っています。

さて、詳細は、上の記事をご覧いただくものとして、ここで、さっそく私自身が、金融緩和すべき論拠を書こうかとも思いましだか、これは、過去に何回も書いているので、本日は、たまには、他の人の論考を掲載してみます。本日サイト"ZAkZAK"を見たところ、経済評論家の山崎元氏が、『経済快説 安倍発言で市場注目のデフレ対策、反対論者の「脅し」に根拠なし』というわかりやすいコラムがあったので、以下にそのコラムから抜粋させていだきます。

山崎元氏
 金融緩和については、大別して、(A)「やるべきでない」(B)「やるべきだ」(C)「やっても効かない(副作用が大きい)」といったお互いに対立する意見がある。 
 デフレ脱却には賛成者が多いから、当面はっきりさせておきたいのは、(B)(C)のいずれが正しいかだ。(C)の論者は、日銀が市中銀行へのマネー供給を増やしても、ゼロ金利状態では貸し出しに回らず、日銀当座預金の必要以上の残高が積み上がるだけで、効果がないという(かつての筆者はこの意見だった)。 
 しかし、こうした場合でも、金融緩和を追加すると「将来のゼロ金利解除」が遠のくだろうという期待が働く「時間軸効果」のほかに、(1)日銀がリスクのある資産を買う(いわゆる「非伝統的金融政策」)(2)政府ないし日銀が外貨を買い実質的に為替介入を行う政策(3)政府が財政赤字を増やして貸し出し需要にもつながる有効需要を追加する(4)マネー供給を拡大すると際限なく通貨発行益が政府のものになるので通貨価値下落への期待が働く(5)高めのインフレ目標をはっきりさせると人々の予想に働きかける効果がある(2月には「1%」というケチな目標だったが、為替市場には少し効果があった)。 
 つまり、金融緩和の手段はまだある。(C)は間違いなのだ。 
 こういうと、金融緩和や財政赤字を拡大すると、「将来大変なことになる」と脅す人がいる。しかし、これらの典型的な弊害としていわれるのが長期金利上昇やインフレ、通貨安というものだが、現在、長期金利は低く、インフレではなくデフレに悩んでおり、円安ではなく円高で国内の産業や雇用が苦しい。先の脅しは、ぬるい風呂を「追い焚き」すると、いきなり沸騰するというような話なのだ。 
 付け加えると、民主党にも前原誠司国家戦略担当相のようにデフレ対策に積極的な意見があるし、「第3極」もデフレ対策には賛成だろう。 
 あとは、政治家が、官僚・日銀にごまかされないように、彼らをどうマネジメントするかだ。

上の記事で、太字にした部分「日銀が市中銀行へのマネー供給を増やしても、ゼロ金利状態では貸し出しに回らず、日銀当座預金の必要以上の残高が積み上がるだけで、効果がない」は、池田氏も語っていた、日本経済が、流動性の罠にはまっているということと同じことです。

日本経済は、デフレになってから、随分経過しています。私は、池田氏が語っていたように、日本経済が、かつて流動性の罠にはまっていて、確かに、その時点では、池田氏山崎元氏が語っていたように、どっぷりと流動性の罠にはまっていた時期があり、その時期には、確かに池田氏がいうように、日銀が市中銀行へのマネー供給を増やしても、ゼロ金利状態では貸し出しに回らず、日銀当座預金の必要以上の残高が積み上がるだけで、効果がなかったという時期は、間違いなく存在したと思います。

そうして、インフレターゲット論者である、ポール・クルーグマン氏も、過去に、日本が流動性の罠にはまっていることを語っていた時期もあります。だから、過去の自分の日本政府や日銀に対する批判はあてはまっていなかったと、認めていた時期もありました。しかし、それは、過去の話しです。

ポール・クルーグマン氏
すでに、日本がデフレ傾向になってから20年、統計上でも完璧にデフレ状態に入ってからも、14年の年月が流れています。この間、一部のほんの短期間を除いて、政府は緊縮財政、日銀は、金融引き締めばかりやってきました。しかし、現在安倍効果で、円安にふれたり、株価が上昇していることを考えると、日本経済は、「流動性の罠」にはまっているから、停滞しているとは言えないのではないかと思います。その主たる原因は、あまりに長い間、緊縮財政ならび、金融引き締め策を実施してきたためではないかと考えます。

そうして、クルーグマン氏は、流動性の罠から逃れるための、処方箋の一つとして、インフレターゲット理論を提唱しているのです。だから、安倍総裁の金融政策は、山崎氏が主張しているように、正しいし、反対論者の「脅し」には、明確な根拠はないです。



ここは、ひとつ、過去20年間、政府と日銀がやってきたことと、真逆の積極財政ならびに、金融緩和をやってみる価値は十分あると思います。それに、金融緩和に反対の人々には、金融緩和が駄目というのなら、ただ駄目と言っているだけではく、デフレから脱却するためにどのようなことをすれば、良いのかしっかりと、主張していただきたいです。ただし、これに対して、政府主導による、新規事業戦略などという愚かな答えでは納得できません。政府が新規事業を起こして成功するというのなら、社会主義、共産主義はうまくいったはずです。現実には、これらは、すべて失敗しました。

それから、山崎氏は、「あとは、政治家が、官僚・日銀にごまかされないように、彼らをどうマネジメントするかだ」と締めくくっていますが、選挙が迫っていることから、次の選挙では、有権者が、官僚・日銀にごまかされるだけではなく、マスコミや、文化人、マニフェストなどにごまかされないようにすべき時と思います。

さて、皆さんは、どう思われますか?



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安倍晋三氏の無責任な経済政策 - 池田 信夫氏−【私の論評】安倍総裁を無能呼ばわりしたつもりでしょうが、矛盾点が露呈してますが?!







2012年11月20日火曜日

安倍晋三氏の無責任な経済政策 - 池田 信夫氏−【私の論評】安倍総裁を無能呼ばわりしたつもりでしょうが、矛盾点が露呈してますが?!

安倍晋三氏の無責任な経済政策 - 池田 信夫

池田信夫氏
・・・・・・<前略>・・・・・・・
  中でも重要なのは、金融政策だ。安倍氏は『インフレ目標の達成のためには無制限に緩和をしてもらう』というが、こういう無責任な政策を公言するのは危険だ。日銀が無制限にマネタリーベースを増やせば、ハイパーインフレが起こることは自明である。それは通貨の信認が毀損されるからだ。安倍氏は『マネーを増やしていけばどこかでマイルドなインフレになる」と信じているのかもしれないが、残念ながらそういうことは起こらない。次の図は各国の中央銀行のバランスシートのGDP比だが、日銀はECBと並んで世界最大である。安倍氏の賞賛するFRBの2倍近い。

なぜそういうことが起こらないかも理論的に説明できる。金利がゼロに貼りついた流動性の罠では、マネタリーベースを増やしてもマネーストックが増えないからだ。これは大学1年生の試験問題なので、安倍氏が自分で考えることをおすすめしたい。

・・・・・<後略>・・・・・・・

この記事の詳細はこちらから!!

【私の論評】安部総裁を無能呼ばわりしたつもりでしょうが、矛盾点が露呈していますが?


さて、上の記事、随分そっけないです。それに、矛盾点が露呈しています。特に上の文章は、経済や金融のことを理解していなくても、十分看破できます。ただし、言葉の意味を正確に理解していなと、理解できないかもしれません。言葉の定義をしつつ、矛盾点を掲載していきます。

結論からいうと、池田氏は、安倍総裁が、「インフレ目標の達成のためには無制限に緩和をしてもらう」という金融政策を行えば、「ハイパーインフレが起こることは自明である」と述べているにもかかわらず、その直後に、「金利がゼロに貼りついた流動性の罠では、マネタリーベースを増やしてもマネーストックが増えない」、要するにいくら金融緩和しても、インフレにならないと語っているわけです。これは、完璧に矛盾しています。

もっと簡単にいえば、「安倍総裁の言っているような金融緩和をすれば、ハイパーインフレになる。現在日本経済は、流動性の罠にはまっているので、いくら金融緩和をしても、インフレにはならない」ということを言っているということです。酷い矛盾です。

さらに、最後で、憎々しげに、「なぜそういうことが起こらないかも理論的に説明できる。金利がゼロに貼りついた流動性の罠では、マネタリーベースを増やしてもマネーストックが増えないからだ。これは大学1年生の試験問題なので、安倍氏が自分で考えることをおすすめしたい」と述べています。これは、意見というよりは、個人攻撃に近いです。

東京大学1年生!!
本当に大学1年生になったつもりで、この試験問題を考えてみます。マネーストックとは、世の中に流通している預金通貨を含むお金の総量と考えていいのです。池田氏は、日本経済は、流動性の罠にはまっているので、どれだけ日銀がマネタリーベース、つまり、日銀券を発行しようとも、市中に出回るお金の総量が増えることはないと言っているのです。

では、「流動性の罠」とは何かといえば、wikipediaによれば、「金融緩和により利子率が一定水準以下に低下した場合、投機的動機に基づく貨幣需要が無限大となり、通常の金融政策が効力を失うこと」となっていますが、これだけ読むと何やら良くわからなくなります。確か、古典派経済学者のりカードが最初に言い出したものだと思います。過去の日本の経済状況に対して、あのポール・クルーグマンが著書で指摘していたと思います。


池田氏の記事にそって、説明すると、流動性の罠にはまった状態では、 名目金利がゼロの状況であり、一般企業が、金利がゼロであっても銀行からお金を借りようとはしない状況です。だから、そのような状況では、日銀がいくら金融緩和を行なってお金を市場に提供したとても、市中に出回るお金の量は増えないということです。

なぜなら、一国の経済が流動性の罠にはまっている状態では、、本来あるべき名目の金利水準はマイナスであってしかるべきで、そしてマイナスの金利であれば、一般企業の資金需要も起こり、世の中に流通するお金の量が増えることになりますが、現実の世の中では名目金利をゼロ以下に引き下げることができず、従って、一般企業の資金需要を引き起こすことができないので、世の中に出回るお金の量は増えないということです。

名目金利をゼロ以下に引き下げるとは、現実世界においては、銀行からお金を借りると、利子を払うのではなく、逆に銀行から利子分のお金をさらに上乗せしてもらえるということです。そんなことは、銀行だって、商売でやっているので絶対にできません。だから、銀行はお金をかせなくなるということです。であれば、いくら、中央銀行がいくら市中銀行にお金を提供しても、銀行は企業にお金を貸すことはなく、よって、市中に出回るお金も増えないということです。


そうして、現実に今の日本では、銀行がお金を貸すことができず、大量のお金が滞留しているのも事実てす。あの維新の党の石原元東京知事は、知事時代に都営銀行を設立しましたが、そのときの設立趣旨は、「中小企業は、銀行からお金を借りようにも借りられないから、困っている。だから、都営銀行を設立して、中小企業お金を借りやすくする」というものでした。しかし、この銀行ご存知のとおり、大失敗です。現実には、不良債権だらけになっています。


池田氏は、こうした回答を求めているのだと思います。これで、満点かどうかはわかりませんが、流動性の罠だけではなく、ケーススタディーも出しているので、少なくとも及第点はいただけるものと思います。

では、日本経済は、この流動性の罠からは、永遠に逃れることはできないのでしょうか。そんなことは、ないと思います。確か、リカードが流動性の罠を発表して以来、かなりの間、そのような事例がなくなり、日本が流動性の罠にはまったのは、百年数十年ぶりのことだったはずです。全く久しぶりに、そのようなことが起こったので、最初は何が起こっているのかクルーグマン博士どころか、誰も気付かなかったというのが実情です。リカードの時代に流動性の罠にはまった国があったのは確かです。だからこそ、このような事例が残ったのだと思います。しかし、どこの国かは知りませんが、流動性の罠から抜けだしたことだけは間違いありません。だから、日本がこの罠にはまったのは、久しぶりだったのです。一度流動性の罠にはまったからといって、永遠に抜け出せないということはないはずです。

そういわれてみれば、この流動性の罠から抜け出すための、処方箋を上にも出てきた、クルーグマン博士が出していたはずです。それが、インフレターゲット理論です。

ポール・クルーグマン氏
これは、流動性の罠にはまった、国の中央銀行(日本では日銀)が、長期的なインフレ目標を設定して、それに向かって断固たる姿勢を取り続けるというメッセージを出すことで、さしもの流動性の罠も解消の方向に動くのではないか、それを期待しようというものです。

クルーグマン博士がこの政策提言をしたときには、侃侃諤諤の議論が沸き起こりました。そもそも中央銀行の最大の使命は、貨幣の流通をコントロールして、物価を安定させることだ。それなのに自らインフレを引きおこそうとは、どういう了見だ、という批判が巻き起こりました。

しかし、現在では、アメリカのバーナンキもインフレターゲットを設定していますし、他の先進国でも、当たり前に実施する金融政策の手法のうちの一つになりました。こうして、インフレターゲットを設定するやり方を今ではリフレ政策と呼びます。

これについては、インフレ期待そのものについての、経済学的あるいは倫理的な批判が依然としてあるほかに、果して緩やかな、インフレが実現できるのか、危ぶむ声も未だにあります。日本では、池田氏が、その代表格です。

しかし、古くは、日本では、昭和恐慌(世界恐慌の日本版)での、高橋是清による、リフレ政策を実行したことにより、いち早く恐慌から脱出できたことがわかっています。高橋 是清 自身は、インフレターゲット理論とか、リフレ政策など知らなかったと思いますが、いわゆる世間一般の常識に従い、結果としてリフレ政策を実施したのだと思います。リフレ政策を実行しなかった他国が不況から脱出できたのは、戦争が始まってしばらくしてからでした。要するに、戦争を遂行するためには、膨大な戦費が必要であり、これを可能にするため、インフレなど無視して、大幅増刷などの思い切った金融緩和政策、積極財政政策をとらざるをえなかったためです。要するに、しぶしぶリフレ政策をとらざるをえなくなってから、恐慌から脱出できたということです。

高橋是清
それに、1990年代の研究により、世界恐慌の根本原因がデフレであることがはっきりしました。今では、デフレから脱出するには、リフレ政策がかなり有効な手法の一つであることが実証されています。それに、最近では、不況時に大規模な金融緩和をすると、ハイパーインフレになるとする池田氏等の主張は、イギリスの事例が裏付けているように見られていましたが、これも、そうではないことが明らかになりました。

イギリスの事例とは、不況に喘いでいた、イギリスが、財政赤字を解消するため、2010年に付加価値税の大幅増税を行いしまた。その後まもなく、イングランド銀行(イギリスの中央銀行)が、大増刷を含む、大規模な金融緩和をしました。その後、イギリスのインフレ率は、4%を上回り、それたみたことかと、池田氏をはじめとする世界の反リフレ派が、「不況時に大規模な金融緩和をすれば、ハイパーインフレになる」ことの実例だとしていました。しかし、これは、今年に入って、2%台の穏やかなインフレとなり、そうではなかったことが実証されました。これについては、以前のブログにも掲載しましたので、その記事のURLを以下にコピペしておきます。詳細は、こちらを御覧ください。

【五輪閉会式】景気後退、将来への懸念は消えず 政争の予感も―【私の論評】イギリスの今日の姿は、明日の日本の姿である!!


収束したイギリスのインフレ
それに、クルーグマン博士は、デフレ解消への処方箋としてのほかに、雇用を作り出すためにも、一定のインフレは許容すべきだとかねがね考えていました。そうして、今では、世界中の中央銀行が、雇用情勢の調整を自らの、主要な任務とするに至っています。いずれにしても、どうも、池田氏の論考は、問題ありです。イギリスのインフレにしても、4%台を超えなかったわけですから、もともとは、ハイパーインフレなどとはいえません。ハイパーインフレというには、4%内外では小さすぎます。

安倍総裁が最近打ち出しているのは、まさにリフレ政策であり、クルーグマンが昔提唱し、今では、多くの国で実施されている、金融政策、財政政策をしようとているだけです。何も、安倍氏独自の突飛で、珍奇方法ではんく、他国でうまくいった方法を日本にも適用しようとしているだけです。

それに、最近では、日銀白川総裁も、野田総理も、安倍総裁の提唱する金融政策、特に日銀の建設国債引受に反対しているようですが、復興の財源などもともとの、復興税にするのでなく、建設国債にすべきでした。財務省は、復興税でうまく行った例を古今東西にないかをかなり調べたようですが、結局そのような事例などあるはずもなく、結局増税のための理論的根拠にすることはできませんでした。それに関しては、以前のブログにも掲載したことなので、以下にその記事のURLを下にコピペしておきます。詳細は、こちらを御覧ください。

まだ生々しい震災の記憶

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それに、経済が安定しているときや、インフレ気味のときではなく、こんな"デフレ"とも呼べるような経済状況の最中に、日銀が引き受けたとしても何の問題もないと思います。

それにしても、こんな安倍批判をするくらいなら、日銀総裁も、野田総理(この方、もう半分総理大臣ではないので、かわり財務省)も、なぜ現状のようなデフレ状態がかくも長い間放置されてきたのか、その合理的な説明をすべきです。そうして、それに対する対策を速やかに行うべぎです。

もう日本は、デフレ傾向になってから20年、誰もが認めざるをえない統計上でもしっかりとデフレになってからも、14年目に突入しています。この間、小渕氏と、麻生氏だけが、積極財政を行いました。そうして、それなりに成果をあげていました。小泉政権だけが、金融緩和措置を行いました。これも、それなりに成果をあげていました。この時期には、あの懐かしい、ライブドア事件や、村上ファンド事件などがおこりました。今では、酷いデフレなので、こんな事件が起こりえる余地すらない状況です。

それに、過去20年間にわたって、日本では、金融緩和と、積極財政を同時に実施したことは一度もありません。もうそろそろ、いろいろ、反論があったにしても、これを同時実施する時期に来ていると思います。それに、池田氏は、大々的に金融緩和を実施しても、大学1年生の問題を通してインフレにならないと、確約してくれています。実際にリフレをやってみても、インフレにはならないそうなので、ましてや、ハイパーインフレなどにはならないということで、安心して実行できるではありませんか!!リフレ政策を実施すると、うまくいくか、何も変わらないかのいずれかということです。何も変わらないということは、悪いこともないということです。そうして、安部総裁は、それを実行しようと主張しているわけです。では、過去20年間政府・日銀やってきたことの真逆をやってみる価値は十分にあると思います。

そう思うのは、私だけでしょうか?





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