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2018年5月11日金曜日

北海道で安倍晋三首相、李克強首相をおもてなし 帰国見送る―【私の論評】李克強の来道には中国の壮大な目論見が関係している?

北海道で安倍晋三首相、李克強首相をおもてなし 帰国見送る

安倍首相(右から2人目)から説明を受ける李克強首相(中央)、
豊田社長(左から2人目)=11日、北海道苫小牧市

 安倍晋三首相は11日、訪問先の北海道で、来日中の中国の李克強首相の自動車工場視察に同行し、昼には食事会を開いて李首相をもてなした。安倍首相は同日午後、特別機で帰国する李首相を新千歳空港(千歳市)で見送った。

 両首脳は11日午前、苫小牧市内のトヨタ自動車北海道の工場を訪問し、トヨタ自動車の豊田章男社長から、次世代電気自動車(EV)や燃料電池自動車について説明を受けた。李首相はEVの走行距離やコストなどに関して熱心に質問し、自動運転技術に関する同社と中国側の共同研究の成果に期待を示した。

 その後、安倍首相は、恵庭市内の農業テーマパーク「えこりん村」で昼食会を主催し、懇親を深めた。

恵庭市内の農業テーマパーク「えこりん村」 写真はブログ管理人挿入

 これらに先立ち両首脳は同日午前、札幌市内で開かれた日中知事省長フォーラムに出席。安倍首相は「大切なことは両国の戦略的互恵関係を目に見える形で実行に移すことだ」などと述べた。

【私の論評】李克強の来道には中国の壮大な目論見が関係している?

なぜ今この時期に、李克強氏が北海道を訪問したのか、様々な憶測が飛び交っています。特に、北海道の土地が中国によって相当購入されていることと関連付けてサイト上では様々な憶測が流れています。産経新聞では、以下のように掲載しています。
李克強首相の北海道視察の狙いは? 日本の代表的な農業地視察で米牽制か
中国の李克強首相(右)と握手を交わす
北海道の高橋はるみ知事=10日夜、札幌市

 中国の李克強首相が就任後初の日本訪問で北海道を視察先に選んだ目的については、日本の代表的な農産地を訪れることで貿易摩擦が激化する米国を牽制する狙いがあると指摘される。

 巨額の貿易赤字削減を求めて制裁措置を連発する米国に対し、中国は牛肉や大豆などの米農産物に高関税を課して対抗。こうした措置には食糧安全保障上のリスクも存在するが、指導者が“代替地”を訪れることで「輸入先を失う危険性については懸念していないとの政治的シグナルを発することができる」(中国筋)というわけだ。

 中国の孔鉉佑外務次官は李氏訪日前の記者会見で視察の狙いを問われ、「北海道の農業は加工技術などに特色があり、中国農業の重要な参考になる」と発言。自動車メーカーの先端技術の見学も挙げた。

 中国の習近平国家主席は外交や経済分野でも自らへの権力集中を進めているが、今回の訪日は李氏が日本との“パイプ役”を担うチャンスだ。ただ日本への接近は国内の対日強硬派から足をすくわれるリスクにもなる。北海道は中国の人気映画のロケ地として観光客も多く、視察先として国内世論から受け入れられやすい無難な地でもあるといえそうだ。
 李克強といえば、中国の経済をみるときの指標として李克強指数が有名です。これについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを掲載します。
「ヤバい数字」を隠すため…?中国全人代の幹部人事のウラを読む―【私の論評】李克強の力を削いでも、中国の経済社会の矛盾がさらに蓄積されるだけ(゚д゚)!
中国副首相 左より 韓正、孫春蘭、胡春華、劉鶴 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、李克強指数に関する部分のみ以下に引用します。
これまで、経済政策は李克強首相が主導してきた。李氏は遼寧省の党委員会書記だったころ、「李克強指数」で有名になった。

これは、中国が発表するGDP統計は信頼できず、それよりも鉄道貨物の輸送量、銀行融資残高、電力消費の各統計から経済指数を導き出したほうが、信頼度が高いと発言したことに由来する。実際欧米のシンクタンクでは「李克強指数」を使って中国の経済の実力を測ろうとしてきた。

このエピソードが示すとおり、李氏は中国の経済の実態に通じていて、なかなか指摘しづらい政府のごまかしを率直に指摘してきた人物でもある。

さて、この記事では、李克強副首相について以下のようなことも掲載しています。
 筆頭副首相には共産党序列7位で政治局常務委員の韓正氏が就き、その他の副首相は習近平氏の側近で経済ブレーンの劉鶴氏らが担う。また、中国人民銀行の総裁は同行副総裁の易綱氏が昇格するなど、経済政策に強い人物を中央に固めた形となった。 
この人事は、習近平国家主席の「一強独裁」体制が色濃くなるなか、長期政権の運営には経済政策の強化が欠かせないと政府が考えてのことだろう。だがもうひとつの側面から見れば、習氏の独裁を維持するため、強力な「ナンバー2」の登場を阻止するためとも見てとれる。 

筆頭副首相には共産党序列7位で政治局常務委員の韓正氏が就き、その他の副首相は習近平氏の側近で経済ブレーンの劉鶴氏らが担う。また、中国人民銀行の総裁は同行副総裁の易綱氏が昇格するなど、経済政策に強い人物を中央に固めた形となった。 
この人事は、習近平国家主席の「一強独裁」体制が色濃くなるなか、長期政権の運営には経済政策の強化が欠かせないと政府が考えてのことだろう。だがもうひとつの側面から見れば、習氏の独裁を維持するため、強力な「ナンバー2」の登場を阻止するためとも見てとれる。 
しかし、劉氏の副首相起用で、李首相の影響力は一段と低下するだろう。筆頭副首相に共産党序列7位の韓正氏をあてたのも、政権運営で反抗分子となる存在を作らないためだと考えれば合点がいく。
なぜ、このような人事が行われ、李克強氏の力を削いでいようにみえるかといえば、李克強副首相は、胡錦濤派からでしょう。現在の習近平の独裁体制は、習近平と胡錦濤の接近によりもたらされたものですが、それにしても習近平は胡錦濤派の李克強のことを牽制しておきたいということだと思います。

この李克強がわざわざ北海道に来たわけです。そうして、北海道というと中国関連の企業などによりかなり土地が買い占められているということがわかっています。それについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
北海道が「中国の省の1つに?」 中国資本が北海道を狙う理由=中国報道―【私の論評】父祖が開拓した国土を徒や疎かに扱うべきではない(゚д゚)!

 経済発展が続く中国では、人びとの購買意欲は止まるところを知らない。日本国内でも中国人投資家がマンションを購入するなどの事例は多く聞かれるが、中国メディアの今日頭条はこのほど、中国資本が北海道の不動産を購入していることを伝えつつ、「北海道が中国の省の1つになってしまうほど」の勢いだと伝えている。 
 農林水産省が2017年4月に発表した「外国資本による森林買収に関する調査の結果」によれば、2016年に外国資本が買収した日本の森林面積は202ヘクタールに及び、前年の約3倍になった。買収された森林の多くが北海道にあり、外国資本のうち8割が中国企業や中国資本だった。中国資本による買収に対し、日本では危惧の声があがっているが、購入の際に日本人の名前や架空の会社の名前を用いる中国企業が存在するために対策は難しいようだ。 
李克強が北海道に来た事自体は、直接は中国資本の不動産の購入とは関係ないかもしれませんが、李克強はこの事実については当然知っていて訪問していると思います。産経新聞の調査では、北海道ではすでに7万ヘクタール以上の土地が中国資本によって購入されているといわれています。

李克強としては、中米の貿易戦争の果てには、北海道の土地を中国資本がさらに購入して、北海道を中国への牛肉や大豆などの農産物の供給基地にしてみせるという意思を表明するために来道したのかもしれません。

さらには、北海道に中国の集積回路の工場と研究施設を設置し日本の技術者を厚遇で雇入れ、米国の集積回路が輸入できなくなっても、自前で製造できるようにするという目論見があるのかもしれません。あるいは、さらにはもっと壮大な目論見があるのかもしれません。

国際政治学者で福井県立大学教授の島田洋一氏は、「氷上のシルクロード」が日本の安全保障の不安材料になると指摘しています。中国当局が南シナ海周辺諸国の主張を無視して島嶼を占拠し、軍事目的と考えられる人工島の建造を続けていることを例に挙げました。

この地図では北極航路は宗谷海峡を通ることになっているが、
中国は補給基地として苫小牧や釧路を狙っている


「長い間、中国が軍事目的で北極海を利用したがっていることは、公然の秘密だった」と島田氏は英字紙サウスチャイナ・モーニングポストに対してこう述べました。「中国側は経済的なチャンスについて多く話している。貿易とビジネスの機会が増えることは確かだが、しかし、北京の決定は人民軍の動きを念頭に置いたものだ」

「南シナ海の島嶼を奪うために同様の論理的根拠を用いていた。中国側が単純にビジネスの思惑で動いていると捉えるのは、全く甘い考えだ」。

北海道を中心に外国資本による土地や資源買収を調査する前北海道議会議員・小野寺まさる氏は今年2月8日、時事評論番組「虎ノ門ニュース」に出演し、氷上のシルクロードにおいて北海道の釧路や苫小牧は中国当局の注目する港になっていると述べました。

小野寺氏の作成した解説地図によると、日本海に接しない中国本土は、中国当局が借款する北朝鮮の羅津港、清津港を使い津軽海峡を通り、北海道の釧路港と苫小牧港へ繋ぐといいます。

釧路日中友好協会によると、中国政府は、北海道最北の稚内と露サハリンの間にある宗谷海峡ではなく、北海道と青森県の間の津軽海峡が「国際航路の主流になることを確認している」というのです。

新千歳空港にも近い苫小牧港には、中遠海運の幹部2人が視察。昨年6月には北極海ルートで巡った貨物船が初入港しました。また、日本政府により国際バルク戦略港湾に選定された釧路港では大規模開発が進んでおり、ここ3年で中国大使館公使、程永華大使、一等書記官が視察しました。


1等書記官は釧路日中友好協会2016年12月例会に出席し、「北極海航路の試験運用に本腰を入れている。アジアの玄関口として、釧路には『北のシンガポール』となるような成長性を期待している」と述べまし。

同会会長の中村圭佐氏は2018年1月26日『日中友好・新春の集い』北海道・札幌日中友好協会に出席し、あいさつのなかで「習近平政権のめだま政策である『一帯一路』『氷上のシルクロード』では、釧路が国際的にも大変注目を集めている。 釧路市の発展はそのまま北海道の活性化に直結する命題」と強調しました。

中国共産党政権主導の経済計画が北海道に浸透していることが垣間見えます。小野寺氏は「これは(私の)妄想などではなく、中国による世界戦略の一つとして北海道が含まれているということを確認していただきたい」と述べ、広く周知を呼び掛けました。

李克強としては、この壮大な試みに関わることによって、習近平に恭順の意を表するという目論見があるのかもしれません。

なお、李克強はわざわざ日本に来て東京に一泊、北海道に二泊しています。この時点で異常であることがわかるはずです。 しかし、マスコミはどこもこれを指摘しませんでした。
高橋はるみ知事をはじめとして、日本の政治家たちはこれを理解しているのでしょうか。沖縄は従来から中国が影響力を及ぼしていることが知られていますが、北海道についてはほとんど知られてきませんでした。

今後の北海道での中国の動き、これからもこのブログでレポートしていきます。

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2018年4月12日木曜日

バルト3国侵攻を視野に入れたロシア―【私の論評】北海道は既に中露両国の脅威にさらされている(゚д゚)!

バルト3国侵攻を視野に入れたロシア

対応急ぐNATO、危機はアジアにも、問われる日本の防衛態勢

欧州で高まるロシアの脅威:次はバルト3国か?

 欧州でロシアの脅威が高まっている。

 欧州は冷戦後、久しく平穏を保ってきたが、2014年3月のロシアによるクリミア半島併合とウクライナ東部への軍事介入によって情勢が一挙に緊迫化した。ウクライナ東部での戦闘は今でも続いている。

図表・写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 これらの戦いは、「ハイブリッド戦」と呼ばれ、「力による現状変更」と指摘される侵略行動である。

 ロシアの次のターゲットは、(北から)エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国の奪還ではないかと懸念されている。

 バルト3国は、1940年からソ連が崩壊する1991年までソ連領であった。これら3カ国は、1991年9月にソ連から独立した後、2004年に北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)にそれぞれ加盟した。

 1989年まで続いた冷戦時代には、NATO軍とワルシャワ条約機構(WPO)軍は東西ドイツ国境を挟んで対峙していた。

 ドイツの東隣に在るポーランドは、すでに1999年3月、NATOに加盟(EU加盟は2004年5月)しており、いわゆる「NATOの東方拡大」にともなって、現在では、バルト3国とポーランドが冷戦時のドイツに相当する「最前線」に位置している。

 これらのNATOの動きにも対抗するかのように、ロシアは、クリミア半島併合以降、軍事活動を劇的に活発化させている。

 ロシアは、2017年9月、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ウクライナなどでの国境付近で「ザパド(西方)2017」と呼ばれる、冷戦期以来、最大規模の軍事演習を行った。

 ロシア陸軍の演習はますます頻繁になっており、バルト3国に対する攻撃準備の一環ではないかとの観測が強まっている。


 また、ロシアは、バルト海での軍事活動を活発化させている。同海は、NATOとロシアの激しい神経戦の主要舞台となっており、ロシア軍機による「特異飛行(異常接近)」などによる飛行・航行妨害が、偶発的な衝突を引き起こす危険性を高めかねないとして懸念されている。

 それ以外にも、ロシア軍によるサイバー攻撃、情報操作、他国への脅迫などが頻発している。

 最近では、英国で、ロシアの元スパイの男性とその娘が神経剤で襲撃される事件が発生した。英国のテリーザ・メイ首相は、犯行に使われた毒物が旧ソ連で軍用として開発された神経剤「ノビチョク」(Novichok)」と特定されたと明言した。

3月4日に襲撃された元スパイのセルゲイ・スクリパリ氏と娘のユリア氏

 また、ボリス・ジョンソン外相は、「英国の街頭、欧州の街頭で、第2次世界大戦後初となる神経剤使用を指示したのは、彼(ウラジーミル・プーチン大統領)の決定である可能性が圧倒的に高いと、我々は考えている」と述べた。

 NATO欧州連合軍のフィリップ・ブリードラブ最高司令官(米空軍大将、2013.5~ 2016.5)は、在任間、ロシアは今後何をするか分からないと述べ、「過去数十年、欧州の安全保障の基盤となってきたルールや原則を、ロシアは根こそぎひっくり返そうとしている」と警鐘を鳴らしている。

ポストモダンの思想に支配された欧州の油断

 冷戦が終わって間もなく、米国ではフランシス・フクヤマの『歴史の終わり』(渡部昇一訳、三笠書房、1992年)が発表された。


 社会主義陣営が瓦解し自由・民主主義陣営が戦いの最終勝利者となったいま、もはや本質的に「対立や紛争を基調とする歴史」は終わったという主張であった。

 それと符合するように、欧州でも英国外交官であるロバート・クーパーの『国家の崩壊』(北沢格訳 、日本経済新聞社 、2008年)に代表される脱近代(ポストモダン)の思想が現れた。

 マーストリヒト条約の調印によるEUの進展とグローバル化の動きがそれを後押し、日本を含めた欧米先進国において持てはやされた。

 脱近代の思想とは、

(1)国家対立、民族紛争などを、またそもそも国民国家とか国家主権という概念を近代(モダン)世界のものとみなし

(2)グローバル化が進み、近代を乗り越えた今日の脱近代の時代においては、国家とか主権という観念そのものが過去のものとなり

(3)リアリストが唱えた国家や軍を中心とした伝統的な安全保障システムも過去のものになった。

 これからの国際関係は、道徳が重要で、国際問題は話し合いや国際法に従って解決でき、国際司法裁判所などの国際機関が画期的な意味をもつ、というものである。

 そのような風潮を背景に、冷戦後、欧州の多くの国では、国家による大規模な侵攻の脅威は消滅したと認識されてきた。

 顧みれば、これに類するリベラルな理想主義型の世界観や思想は、第1次大戦や第2次大戦後など、過去に幾度となく現われた。

 しかしNATOは、2014年2月以降のウクライナ情勢の緊迫化を受け、ロシアによる力を背景とした現状変更や、いわゆる「ハイブリッド戦」に対応すべく、既存の戦略の再検討や新たなコンセプト立案の必要に迫られている。

 冷戦後の一時的な平和の到来が、人類が繰り返してきた歴史の現実から目を遠ざけてしまったのであろうか。「油断大敵」である。

 欧州の国防費や兵力は、冷戦の終結以降、ロシアがクリミア半島を併合するまでの数十年にわたり減少傾向が続いたが、最近になって大きな変化が生じている。

 そのためNATOは、脆弱なバルト3国がNATOに加盟した年から行ってきたバルト上空監視ミッションの規模を拡大し、即応性行動計画(RAP)に基づき、東部の同盟国におけるプレゼンスを継続するため、バルト3国及びポーランドに4個大隊をローテーション展開している。

 また、既存の多国籍部隊であるNATO即応部隊(NRF)の即応力を強化し、2~3日以内に出動が可能な高度即応統合任務部隊(VJTF)を創設した。

 それでもなお、ジェームス・マティス米国防長官は、ロシアの脅威増大に伴う同盟国の戦闘態勢は不十分であるとして、NATOに対し

(1)意志決定を速め
(2)軍の移動能力を高めるとともに
(3)迅速な実戦配備を確実にするよう求めている。

 これに呼応して、EUは、共通外交・安全保障政策(CFSP)および共通安全保障・防衛政策(CSDP)のもと、安全保障分野における取組を強化しつつある。

 部隊や兵器の域内移動能力を高めることを主眼にした軍事版「シェンゲン」と呼ばれる行動計画を作成し、部隊・兵器輸送に関連する道路や橋、鉄道といったインフラ整備と規制・事務手続きの簡略化などについて必要な基準をまとめ、事業の優先順をきめて実施する手筈を整えている。

 欧州では、NATOとEUが連携し、政治・外交、経済、軍事、警察・刑事司法などが一体となってロシアの脅威に備える対処能力を高めようと動き出した。

改めて問われる日本の防衛態勢

 NATOの貧弱とされる軍備態勢の問題は、日本にも当てはまる問題であり、等閑視することは許されない。

 昨年12月に公表された米国の「国家安全保障戦略」(NSS2017)では、中国とロシアを力による「現状変更勢力」、すなわち「米国の価値や利益とは正反対の世界への転換を図る勢力」として名指しで非難し、米国に挑戦し、安全や繁栄を脅かそうとしている「ライバル強国」であると明示した。

 そしてNSS2017を受けて2018年1月に公表された「国防戦略」(NDS2018)において、中国は 「軍事力の増強・近代化を追求し、近いうちにインド太平洋地域で覇権を築くことを目指している」とし、「将来的には地球規模での優位を確立し、米国に取って代わろうとしている」と指摘した。

 他方、ロシアは「周辺国の国境を侵犯したり、経済や外交などの政策決定に影響を及ぼしたりしている」と批判し、核戦力の拡大や近代化に対する警戒感を顕にした。

 前述のとおり、NATOはロシアの力を背景とした現状変更や、いわゆる「ハイブリッド戦」による挑戦に直面している。

 それと対称的に、アジア太平洋地域で中国が仕かけている「サラミスライス戦術」や「キャベツ戦術」に「三戦」を交えた「グレーゾーンの戦い」に対して、我が国は課題とされる領域警備の問題を解決できたのであろうか?

 中国の弾道ミサイルの飽和攻撃によって自衛隊・在日米軍基地は作戦当初に破壊され機能マヒに陥る恐れがあるが、その代替として全国の民間飛行場などを基地として直ちに使えるような仕組みが作られているのか?

 同時に、民間人の避難のための輸送手段や施設、水・食料、医薬品などは準備できているのか?

 有事に錯綜する自衛隊と民間の陸海空輸送について、一元的に統制する組織があるのか?

 自衛隊の部隊を南西諸島へ緊急輸送する船舶や航空機は確保できるのか?

 はたまた、全国の橋や道路などのインフラは戦車を搭載した特大型運搬車(戦車運搬車)など重装備の規格に適し、輸送に耐えることができるのか?

 防衛産業には戦闘で急速に損耗する自衛隊の装備を急速生産できる体制が維持されているのか?

 装備だけでなく、自衛隊が一定期間を戦うために必要な弾薬・ミサイルなどは十分に備蓄されているのか?

 以上例示したのは、日本の防衛に必要なほんの一部であるが、いずれもしっかりした態勢が整っていなければならない重要な事柄である。

 今、欧州で高まるロシアの脅威に対して、NATOそしてEUは、立ち遅れを認めながらも、必死でその脅威を抑止し阻止しようと、実際に戦うことを前提とした態勢作りに着手している。

 では、インド太平洋地域において、中国の脅威に曝されている日本はどうしなければならないか?

 言うまでもなく、NATO・EUと同じように、中国の覇権的拡大に対応できる防衛態勢を整備することが急務であるが、前述のとおり、そのための課題は広範多岐にわたり、また時間のかかる難しい問題が残されていると指摘しなければならない。

 国を挙げ一体的に戦える態勢を作り上げない限り、紛争を抑止し阻止することは難しいのである。

【私の論評】北海道は既に中露両国の脅威にさらされている(゚д゚)!

ブログ冒頭のような記事にある脱近代(ポスト・モダン)の思想は一時もてはやされたのは事実ですが、それはほんの一時のことでした。

世界は依然として、国民国家に「神に変わらぬ忠誠」を誓っています。インターネット時代だの、グローバリゼーションだの言われる昨今においても、世界、その中でもとりわけヨーロッパを見るとEUとは言いながらも各国の「國體」はしぶとく生き残り、ソ連の崩壊以降、昔の國體が次々に復活しています。

ピーター・ドラッカーは「この200年を見るかぎり、政治的な情熱と国民国家の政治が、経済的な合理性と衝突したときには、必ず政治的な情熱と国民国家のほうが勝利してきている」(『ネクスト・ソサエティ』、ダイヤモンド社、上田惇生訳 2002年5月発行)と書いています。

以下に、『ネクスト・ソサエティ』からそのまま引用します。
最初にこれ(注:国民国家の崩壊)を言ったのがカントだった。南北戦争勃発の直前、1860年の穏健派も、サムター砦で最初の銃声が轟くまでそう考えていた。オーストリアハンガリー帝国の自由主義者たちも、最後の瞬間まで、分裂するには経済的な結びつきが強すぎると考えていた。明らかに、ミハイル・ゴルバチョフも同じように考えていた。 
しかし、この200年をみるかぎり、政治的な情熱と国民国家の政治が、経済的な合理性と衝突したときには、必ず政治的な情熱と国民国家のほうが勝利してきている。
そして英語圏の場合、90年前どころか、500年前に書かれた文章であっても国民国家を説く偉人らの書籍は、現在も誰もがほぼそのまま読んで理解することができ、歴史上の偉人が現在でもすぐそばにいるのです。

国民国家を崩壊し、自らの版図におさめようという中国やロシアの試みは、こうした国民国家の信奉者からは大反撃を受けることになるでしょう。ただし、NATOが油断していたのは事実です。

中国・ロシアによる自由主義の世界秩序に対する挑戦に関しては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
支那とロシアが崩壊させる自由主義の世界秩序―【私の論評】世界は戦後レジームの崩壊に向かって動いている(゚д゚)!
ロバート・ケーガン氏
この記事は、昨年の2017年2月のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より一部引用します。
 世界に国際秩序の崩壊と地域戦争の勃発という2つの重大な危機が迫っている。 
 米国は、第2次大戦後の70余年で最大と言えるこれらの危機を招いた責任と指導力を問われている。米国民がドナルド・トランプ氏という異端の人物を大統領に選んだ背景には、こうした世界の危機への認識があった──。 
 このような危機感に満ちた国際情勢の分析を米国の戦略専門家が発表し、ワシントンの政策担当者や研究者の間で論議の波紋を広げている。

 この警告を発したのは、ワシントンの民主党系の大手研究機関「ブルッキングス研究所」上級研究員のロバート・ケーガン氏である。
ケーガン氏のこの論文の要約を以下に掲載します。
・世界は第2次世界大戦の終結から現在まで、基本的には「自由主義的世界秩序」に支えられてきた。この秩序は民主主義、自由、人権、法の統治、自由経済などを基盤とし、米国の主導で構築され運営されてきた。 
・しかしこの世界秩序は、ソ連崩壊から25年経った今、支那とロシアという二大強国の挑戦により崩壊の危機を迎えるにいたった。 
・支那は南シナ海、東シナ海へと膨張し、東アジア全体に覇権を確立して、同地域の他の諸国を隷属化しようしている。ロシアはクリミア併合に象徴されるように旧ソ連時代の版図の復活に向かっている。両国はその目的のために軍事力の行使を選択肢に入れている。 
・支那とロシアの軍事的な脅威や攻撃を防いできたのは、米国と同盟諸国が一体化した強大な軍事力による抑止だった 
・だが、近年は米国の抑止力が弱くなってきた。とくにオバマ政権は対外的な力を行使しないと宣言し、国防費の大幅削減で米軍の規模や能力はすっかり縮小してしまった。 
・その結果、いまの世界は支那やロシアが軍事力を行使する危険性がかつてなく高まってきた。武力行使による膨張や現状破壊を止めるには、軍事的対応で抑止することを事前に宣言するしかない。
トランプ政権は米軍の再増強や「力による平和」策を宣言しながらも、世界における超大国としての指導的立場や、安全保障面での中心的役割を復活させることには難色をみせています。

しかしケーガン氏は、世界の危機への対策としては、米国が世界におけるリーダーシップを再び発揮することだといいます。

ケーガン氏は、今回の大統領選で米国民がトランプ氏を選んだのは、オバマ政権の消極的政策のために世界の危機が高まったという認識を抱き、オバマ路線とは異なる政治家を求めたからだとみています。トランプ大統領は、まさに非常事態だからこそ生まれた大統領だということでしょう。

そうして、日本人として認識すべきことは、自由主義の世界秩序に対する挑戦する国である、中国とロシアが、両方とも日本の隣国であるということです。

中国に対する脅威に関しては、不十分とはいいながら、尖閣諸島での問題から大多数の国民から認識されて、はっきりと認識されるようになりました。

しかし、ロシアの脅威はあまり認識されていないようです。中国の脅威というと、沖縄の脅威であるように、ロシアの脅威というと具体的には日本ではロシアに一番近い北海道の脅威ということになります。

中国による北海道の脅威は、まだあまり多くの人々に認識されていませんが、それでもロシアの脅威よりは明らかになっていることがあります。

たとえば、中国の北海道に対する間接侵略があります。すでに、中国は数千ヘクタールを超えた土地の買収を北海道で実施しています。さらに、中国は北海道の海岸線の土地を買い占めようとしていることも明るみに出ています。

北海道の市町村では、中国友好都市協定を結ぶところも多いです。しかし、中国が北海道の海岸線の土地を買い占めようとするにはその背景があります。

ヨーロッパからロシアの北極海沿岸を通って東アジアに至る「北極海航路」。最近までその一部がロシアの国内航路として利用されるだけでしたが、近年の地球温暖化により北極海の氷が減少し、航海の難しさが軽減されたため、ヨーロッパ・東アジア間の海上輸送におけるスエズ運河航路の代替ルートとして注目されるようになりました。

中国がこの北極海航路を効率良く利用するためには、津軽海峡を超え、釧路と苫小牧等を北極航路の補給基地として利用することができればかなりやりやすくなります。中国としては、日本に土地買収企業を送り込み、北海道の市町村と友好協定を結び、いずれ北極海航路への基地化をすすめるという目論見があると思われます。

さらに、北海道には、アイヌ問題があります。アイヌ利権というものがあります。アイヌ人であるなしは関係なく、自分がアイヌ人であると主張して認定を受ければ、その利権を享受することができるそうです。

そのため、利権に群がる左翼系の人々も多いと聞き及んでいます。これら利権に群がる左翼系の人々は、アイヌ自治共和国など設立した場合どうなるでしょうか。

無論、この自治共和国では外務大臣、総理大臣を定め、中国との友好条約を結ぶということも考えられます。そうなると、北海道在留の中国人を守るという名目で、人民解放軍を送り込むということも考えられます。

このようなことは、空想に過ぎないと考える方もいらっしゃるかもしれません。これは、現実起こっていることです。チベット、ウイグル、トルキスタンこれらは、元々独立国でしたが、それこそ現在の北海道や沖縄のように間接侵略を受けた後に、人民解放軍が進駐してきて、中国の自治区になってしまました。

このように、人民解放軍が、北海道に進駐する可能性もなきにしもあらずです。無論、いきなりではなく、土地買収に続き、正規軍ではない民兵を送り込み、準備をすすめ、いずれ人民解放軍を送り込むというハイブリッド戦を仕掛けてくる可能性が高いです。

現在の日本は、それを阻止できるのでしょうか。沖縄だけではなく、北海道も危ない状況にあります。北海道知事や、市町村長はそのことを理解しているのでしょうか。

そうして、これは中国の脅威です。ロシアによる北海道への間接侵略については、まだ明らかにはなっていませんが、それでもすでに明らかになっていることはあります。

2014年8月、ロシア海軍はそれまでにない大規模な訓練を実施し、日本周辺の極東太平洋地域で敵前上陸作戦を含む軍事訓練を展開しました。その後もロシアは大規模な演習を繰り返しています。

ロシアのミサイル駆逐艦ワリャーグ

ロシアがアジア極東の海軍力を増強し、日本とアメリカにとって新たな脅威になっています。プーチン大統領はアジア極東戦略を強化する重要な要素として日本との対決を明確にしているだけでなく、北方領土を日本に奪われないために海軍力を強化しています。

アメリカ海軍専門家によると、プーチン大統領は今後、最新の原子力空母や潜水艦、戦車上陸用舟艇などを増強しウラジオストクに集結させます。またフランスから最新鋭のミストラル型強襲上陸用空母を4隻購入する計画をたていました、そのうちの二隻をウラジオストクに配備することをすでに決めました。

プーチン大統領はウラジオストクだけでなく、かつて日本領であった南樺太のユジノサハリンスクの海軍と空軍基地を増強しています。さらに北方の千島列島先端にも太平洋艦隊のための海軍基地と空軍基地を作っているだけでなく、後方支援基地としてロシア本土沿岸地域に、数カ所の海軍基地と空軍基地を建造していることをアメリカ軍が確認しています。

ウラジオストクから樺太、千島列島さらには、ベーリング海峡、ロシアの沿岸のロシア太平洋艦隊の基地が強化されたり、新たに作られたりすれば、日本にとって大きな脅威になります。とりわけ注目されるのはウラジオストクに配備される、ミストラル型揚陸艦を中心とする上陸用集団の強化です。

ミストラリ型揚陸艦

ロシアがウラジオストクを中心としてロシア太平洋艦隊を強化しているのは、軍事的に見るとアメリカの力の後退によって生じる力の真空をうめようとしているからです。この動きの背後には中国の軍事力拡大に対する警戒がりますが、基本的には日本を敵視し、北方領土を返さないという決意の表明です。

現在の日本の人々が留意すべきは、こうした状況のもとで西太平洋から後退しつつあったアメリカが、トランプ大統領の登場により、ようやく再びアジアに関心を持ち本当の意味での抑止力を行使することを目指すようになりましたが、中露に本当に対抗できるようになるには、10年くらいはかかるかもしれないということです。

そのアメリカの後を襲うべく、経済力をつけた中国が軍事力を拡大しているのですが、資源を中心に伸ばしつつあるロシア経済と軍事力の拡大は、中国のそれを上回る勢いです。しかもロシアはもともと軍事的に強い国だということを忘れるべきではありません。

中国は旧ソビエトが建造した古い空母を買い入れ、アメリカの技術を盗んでステルス戦闘機を作ったりレーダーを開発したりしていますが一部、衛星技術で成功しているだけで、アメリカの専門家は中国の軍事力を高くは評価していません。

しかし、日本の国際戦略、外務省の外交、国民の憲法論争などを見ていると、その殆どが、いわば「張り子の虎」である中国の軍事的脅威に関心を奪われているようです。中国の脅威は軍事的に脅威というよりハイブリット戦の脅威といえます。それに対して、ロシアの軍事的に脅威は「張り子の虎」ではなく、現実の脅威です。

集団的自衛権にしても、中国の脅威とそれに対応する東南アジアの動きに呼応するものに過ぎないようです。真に日本の安全を図ろうとするならば、もう一つの強力な敵、プーチン大統領のロシアがもたらす危機に対処する戦略を、ただちに構築しなければならないです。

ロシアは日本に対してはハイブリット戦略をとりにくいです。なぜなら、ロシア人と日本人とは人種的に異なり、容易に見分けがつくからです。さらに、言語的にもロシア語は、日本国内ではほとんど通じません。

さらに北海道には、現在のロシアの領土からの引揚者も多く、終戦直前のロシアの卑劣な参戦やその後の多数の将兵をシベリア送りにした非道についても知られているので、ロシアに親和的な人は少ないからです。特に高齢者はそうです。

このようなことから、日本に対して、中国のようないわば人民解放軍投入の前の準備としてのハイブリット戦略はとるのは難しいです。当然のことながら、日本に対しては軍事力で対抗するものと考えられます。さらに、北海道に接するオホーツク海は未だにロシア戦略原潜の聖域であることを忘れるべきではありません。

中国があれだけ南シナ海にこだわるのは、聖域にしうる水深の深い海域が中国の近くにない中国が、水深の深い南シナ海を中国原潜の聖域にしたいからです。ロシアはすでにオホーツク海を聖域としているわけですから、ここを容易に手放すはずもなく、今後はさらにこの地域の拠点を拡大していくことでしょう。

いずれにせよ、日本としては、北海道は既に中露の脅威にさらされていることを認識したうえで、安全保証を考えなければならないということです。



2017年8月25日金曜日

北海道が「中国の省の1つに?」 中国資本が北海道を狙う理由=中国報道―【私の論評】父祖が開拓した国土を徒や疎かに扱うべきではない(゚д゚)!

北海道が「中国の省の1つに?」 中国資本が北海道を狙う理由=中国報道

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中国人にとって憧れの地でもある北海道
経済発展が続く中国では、人びとの購買意欲は止まるところを知らない。日本国内でも中国人投資家がマンションを購入するなどの事例は多く聞かれるが、中国メディアの今日頭条はこのほど、中国資本が北海道の不動産を購入していることを伝えつつ、「北海道が中国の省の1つになってしまうほど」の勢いだと伝えている。

 記事は、中国資本が北海道の自然の価値に目を付けていることについて、日本国内では「北海道はいずれ中国の北海省になってしまうのでは」と危惧する声があるとした。中国では「北海道」は映画のロケ地として使用されたことなどから、ブランドとして高い認知度を誇りる。また、年間を通じて観光資源が豊かという現実的な魅力もある。

 日本人だけでなく中国人にとっても北海道は「いつかは訪れたい観光地」であり、中国では北海道という言葉を商品に記載すれば売れるほど、「自然が豊かで、食べ物は安全で美味しい」というイメージが根付いている。

 記事は、中国資本が北海道の不動産や山林を購入していることに、日本では危機感を示す声があるとしながらも、「日本の不動産会社も買い手のいない土地を持て余すより、中国企業によって運用してもらうことを望んでいる」と主張。実際に中国企業が購入した温泉宿泊施設が日本の文化を体験したい富裕層の間で流行している例もあると主張し、中国資本が北海道の価値に目を付けたのは、中国における北海道人気に便乗し、利益を得るためだと論じた。

 農林水産省が2017年4月に発表した「外国資本による森林買収に関する調査の結果」によれば、2016年に外国資本が買収した日本の森林面積は202ヘクタールに及び、前年の約3倍になった。買収された森林の多くが北海道にあり、外国資本のうち8割が中国企業や中国資本だった。中国資本による買収に対し、日本では危惧の声があがっているが、購入の際に日本人の名前や架空の会社の名前を用いる中国企業が存在するために対策は難しいようだ。

【私の論評】父祖が開拓した国土を徒や疎かに扱うべきではない(゚д゚)!

北海道の土地の買い占めについては、このブログでも過去に掲載したことがあります。最近は、またその動きが顕著になっているので、本日はその話題について掲載します。

これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
防衛施設周辺で外国資本の土地取得規制に向け調査可能に 自民が通常国会に法案提出へ―【私の論評】オホーツク海を支那原潜の聖域にさせるな(゚д゚)!
以下に長いですが、支那資本による買い占めの実体を引用します。
こちらは、北海道の札幌市です。北海道というと、近年起きている最も由々しき事態は、外国資本、とくに支那系資本による不動産の買収です。支那の領土をめぐる問題といえば、尖閣諸島沖の活動がマスコミで取り上げられるので、国民はそちらにぱかり目を奪われていますが、その間、北海道では支那人たちが着々と土地を取得し、実質的な侵食が確実に進んでいます。
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海外資本による水源地の買収状況
森林や水源地の買収については、やっと外国資本の買収を監視・制限する条例を北海道が制定しましたが、今も支那系資本の動きは止んでいません。支那と関係のある日本企業が買収しているケースや、支那企業が日本企業を買収し、そのまま所有権を引き継ぐケースもあり、実態把握が困難なのが実情んのです。

支那の土地買収問題はさらに厄介な方向に進んでいます。今、道内ではおもにバブル期にニーズも考えずに建設されたリゾート施設やゴルフ場が、次々と支那系資本に買収されているのです。 
具体的な例を上げると、2003年、594億円の負債を抱えて民事再生法の適用を受けたゴルフ場が、2011年に香港を本拠とする投資会社BOAOに買収されました。このコースは、元々、東京のマンション業者が開発したゴルフ場でしたが、そこが2003年に民事再生法を申請したため、オープンには至らず、休眠状態となっていました。その後、香港、支那の投資家が出資してこのコースとその周辺の計210ヘクタールを約30億円を投じて取得、クラブハウスの建て替えとコース改修など開発を進め、「一達国際プライベートゴルフクラブ」と改名し、2014年にオープンしました。
「一達国際プライベートゴルフクラブ」のコース
買収した投資会社の役員は、「ここに将来、支那の五輪強化選手用の施設を作る構想がある」と語ったといいます。五輪級の選手が、最適な環境を求めて自国外で調整を行うケースは少なくありません。日本の選手らも外国で強化合宿を行っています。しかし、だからといってこの発言を「問題なし」として看過するのは間違いです。 
なぜなら、相手があの全体主義国家の支那だからです。投資会社役員の発言は、この施設買収が単なる一民間企業の投資行動ではなく、支那共産党との強いパイプがあることを物語っています。 
BOAOの元理事には蒋暁松という人物がいます。支那・海南島のリゾートを運営する支那人実業家です。過去に彼は、和歌山県の那智勝浦・太地町にあり2003年に事実上破綻した大規模年金施設「グリーンピア南紀」の跡地開発の疑惑に絡み、名前が挙がったことがあります。グリーンピア南紀の跡地開発が、通常の手続きを経ず、不明朗なままBOAOが請け負うと決められたからです。
蒋暁松(左)
この決定には、和歌山選出の自民党国会議員で親支那派と言われる二階俊博氏の強い後押しがあったとも報じられました。北海道内で、支那系資本による明らかに不自然な不動産買収の実態が多々あるにもかかわらず、地元の政官界からほとんど懸念の声が上がらない背景には、こうした日本の中央で力をもつ政治家らが暗躍しているという事情もあるのです。
自民党幹事長 二階俊博氏
支那マネーが道内ゴルフ場の買収に意欲を見せているのは、増大している支那人観光客を対象にした、ゴルフをセットにした旅行プランの需要が高まると見ているようです。中には、金に糸目をつけずにマイ・ゴルフ場としてコースを探している富裕層もいるといいます。 
さらにもう一つ、支那が道内の森林を買っているのは水資源が目的ですが、勝手に川や沢から水を採取することはできないため、牧場やゴルフ場を取得して地下水をくみ上げようという狙いもあるようです。実際、地下水のくみ上げに関しては規制がなく、水脈を探し当てれば自由に水を確保することができるのです。 
また、世界的な食糧不足が確実にやってくるとして、道内で農業ができる土地を確保しておこうという思惑もあるようです。ゴルフ場を農業用地に転用する目的で取得しようというのです。我々はゴルフ場といったらゴルフ場の価値しかないと思っていますが、彼らは木や池があって整地されていて開墾の必要もない農業用地として適していると見ています。水と農業は、支那系資本が道内の土地を買収する大きな動機になっているのです。

さて、北海道ではこれ以外にも大きな問題があります。それは、自衛隊駐屯地の近隣の支那人による土地購入です。その事例をあげておきます。

千歳市では、2010年、約17棟の別荘が建設されましたが、購入したのはすべて支那人。住宅には不釣り合いなパラボナアンテナがいくつも設置されています。ここは、航空自衛隊の千歳基地、陸自の千歳・恵庭演習場から2、3キロメートルしか離れていないません。
パラボラアンテナが設置された別荘
上の写真は、2014年8月撮影したものです。場所は新千歳空港や陸上自衛隊・航空自衛隊の近くの北海道千歳市文京1丁目です。 
家のベランダではなく共用部に受信のためだと思われる大きなアンテナが設置されているのが4つ程確認できました。車庫は見当たりませんでした。 
またどのような用途かはわかりませんが、窓に外からは電気が点いているか確認しづらく見えるフィルムが標準装備されていました。 
登記情報を調べたところ17棟中16は支那人の所有でした。残りの1つはニトリ家具の取締役の名前で所有されていました。ただそこの表札の名前は、姓はニトリの取締役でしたが名は支那人の様な名でした。 
岩内町(いわないちょう)では、泊原発の原子炉3基が目視できる高台に支那人が別荘を購入しているといいます。ここへは、札幌から車で3時間近くかかります。こんなところに、わざわざ別荘を買う理由は、一体何なのでしょう。 
倶知安町(くっちゃんちょう)自衛隊駐屯地から3キロメートル以内に外資が所有する土地が3件、トータル109ヘクタールあります。そのうちのひとつは香港資本のものですが、買収から8年近くたってもそのままです。 
北海道・俱知安町で売りに出されれている山林
こうした支那人による、日本国内の土地の所有に関しては、常に大きな危険が伴っています。

多くのみなさまがすでにご存知の通り、2010年7月に支那共産党政府が成立させ、施行した国家総動員法(国防総動員法)は、同国の国防に関わる有事にいたった場合に、国内外の支那(China)国籍者の財産の接収(没収)、同国籍者の徴兵(国内・在外を問わない同国籍者の徴兵(兵員化)と、および、同国内での外国資本の没収まで含まれています。

何故、このような法律を性急なまでに施行したのでしょうか。その目的は、支那共産党政府がごく近い将来に有事(および戦争)の発生を想定してのことで、たとえば、対日政策の上では、侵攻による沖縄県尖閣諸島、さらには沖縄本島の収奪・領土化とそのための有事を視野に入れてのことであろうことは疑いの余地も有りません。もとより、沖縄の領土化は日本本土を次の視野に入れてのことで、日本の属国化、ひいては「日本自治区化」を想定していることでしょう。 
注目すべきは、在日支那国籍者もこの法律の動員対象となっていることです。登録されている同国籍者だけでも「687,156人(2010年12月末時点の統計)に上り、その他“観光”などで一時的に渡航して来ている者や15万人を超えたとされる同国の留学生も、「有事」発生時点での動員対象になります。さらに、後者の一時的渡航者、留学生の中から絶えない「法律上は日本に存在していない」はずの不法残留(オーバーステイ)者や、さらには、数値ではその掌握が測りかねる不法滞在者(密航者)もその例外ではありません。

さらに、民間偽装での入国の末に偽装帰化した“元支那国籍者”(その正体は人民解放軍の民間偽装の兵員であったり、対日工作員であったりとの指摘も絶えない)要員で、実質的に支那共産党に忠誠を誓っている者も、いざ同法が適用となる際は上記に準ずることになるでしょう。

結果、総動員法のもとで兵員化し得る人員数では、トータルで百万人を超える可能性も否定できません。高齢層や幼年層、亡命者の数を差し引いたとしても、相当の「兵力」になるはずで、支那本国が擁する二百万人を超える人民解放軍に実質合流することになります。 
これは、支那共産党政府のスイッチ「ON」一つで、それまでの“文化交流”や“経済交流”“観光”などの名目下で、巧みなまでに日本に埋め込まれて来た時限装置が一気に同時多発的に爆発することを認識すべきです。その時には、自ずと支那人の所有する日本国内の土地建物は、日本攻略の前進基地になることはいうまでもありません。

北海道は、自衛隊を削減する動きもあります。尖閣、沖縄を含む南西諸島付近には支那艦船が出没したり、支那航空機が出没したりするので、それに対する対抗措置として、この方面での自衛隊を強化するという意味があるのでしょうが、北海道の現状をみれば、これはあまりに無防備です。
このような実体を把握するため、産経新聞の連載「異聞 北の大地」(産経ニュースでは「北海道が危ない」で掲載)の筆者、宮本雅史編集委員が案内役として同行し、外国資本に買収された北海道の森林や水源地などをめぐる特別ツアー(産経新聞社主催)が7月23、24の両日開催されました。

8市町村を中型バスで走破し、2日間の総移動距離は約900キロに達した。住宅地、ゴルフ場跡地、大学、山林など10カ所以上を訪ね歩き、外資による「国土侵食」が加速している事実を確認しました。

ツアーは記事と連動した新しい試み。募集期間は実質20日間と短かったのですが、最終的に計20人が応募。定員を満たし、出席率は100%でしたた。

年齢層は30~70代と幅広く、職業も、自営業、公務員、地方紙社長、住職、タクシー運転手、主婦などさまざまでした。国会議員も「個人」で申し込み、山谷えり子元拉致問題・領土問題担当相、山田宏参院議員が駆けつけました。男女の内訳は男性13人、女性7人でした。

この詳細については、産経新聞に掲載されています。その記事のリンクを以下に掲載します。詳細については、この記事をご覧になって下さい。
【北海道が危ない・特別編】外資の「国土侵食」が加速 “中国人自治区”誕生の可能性も「武器を持たない戦争を仕掛けられている」
以下に、このツアーの日程などを示した、地図を掲載します。


以下に実際にこのツアーに参加した、山田宏参議院議員の参加体験談の動画を掲載させていただきます。



このような危機的状況にあるのですが、では政府や北海道はこれに対して何かをしていたのかを調べていましだか、他にとんでもなことがわかりました。

北海道議会議員の小野寺まさる氏が本日以下のようなツイートをしていました。
このようなことを実施しようとして、計画をしていた国交省や北海道開発局は一体何を考えているのでしょうか。全く危機感がありません。

さて、このような中国資本の北海道の土地の買い占めに対して、日本は何もできないのでしょうか。

実は、日本にもこれに対応するための法律は、上の山田宏参議院議員の動画にもでてくる法律があります。以下にこの法律の概要を掲載します。

日本には、この「外国人土地法」があります。ただし、GHQによりこの法律の細則が削除されてしまったので、事実上、施行できない法律になっています。 この法律、かなり強力です復活させるべきです。

しかし、これで問題のすべてが、解決するわけではありません。根底には、さらに深い闇があるのです。

こうした森・水・土地をめぐる動きの根底にある問題は何なのでしょうか。「外資の森林買収」という事象を契機に我々が考えるべき根本課題は何なのでしょうか。

2011年11月の北海道北部。林道さえ入っていない奥地の天然林200ヘクタールを求め、不動産関係者が現地を訪れました。

「この辺鄙な地を選んだのは、水源地の売買規制が始まった道央・道南を避けるためだ。不在村地主の山を中心に購入したい」

仲介したこの業者は、道央の山を中国資本に売却した実績を持っていました。

狙われた山はかつて70数戸の集落があったのですが、1962(昭和37)年の台風災害で全戸離村し、以来、無人になっている奥山でした。林業が成り立つ場所ではありません。同行した関係者が、目的不明の買収話を不審に思って役場に連絡したことにより、その地は地元篤志家が私財を投じて購入することで決着しました。

仮に、現地視察に同行した関係者が役場に情報を伝えなければ、どうなっていたでしょうか。恐らくこの無人の土地は、役場も地元住民も知らない間に、仲介者 を通じて売却され、将来的に役場は所有者情報を追いきれなくなっていた可能性が高いです。無人の奥山が知らぬ間に国際商品になりかけていた事実に衝撃を受けて、役場はこの4月から不在地主所有の森林についての実態把握に乗り出しましたた。

なぜ役場が土地所有の実態を正確に把握できないのでしょうか。そこには、この国の特異性があります。

日本の土地制度は、
(1)地籍調査(一筆ごとの面積、境界、所有者などの確定)が未だ50%しか完了していない 
(2)不動産登記簿の仕組みが旧態依然で、土地売買届出などの捕捉率も不明 
(3)農地以外の売買規制はなく、利用規制も緩く、国境離島、防衛施設周辺など、安全保障上重要なエリアの土地売買・利用にかかる法整備も不十分である一方、 
(4)土地は占有者のもので「時効取得」(民法第162条)もある*2。 
(5)土地所有権(私権)が現象的には行政に対抗し得るほど強い*3。
という点に特徴があります。

「土地は公のもの」という理解が社会の基底にある先進諸外国では類を見ないものです。中でも(2)における行政基盤、行政精度の問題は大きいです。

現在、我が国の土地情報は不動産登記簿(法務省)のほか、土地売買届出(国土交通省)、固定資産課税台帳(総務省)、外為法に基づく取引報告(財務省)、さらに森林調査簿(林野庁)や農地基本台帳(農林水産省)など、目的別に作成・管理されています。しかし、その内容や精度はばらばらで、国土の所有・利用についての情報を国が一元的に把握できるシステムは整っていません。

通常、土地を相続すれば登記簿の名義変更を行うが、変更手続きのコストの方が高くつくケース*4では、差し迫った必要性がなければ元の名義のまま放置されることも少なくないです。そもそも不動産登記(権利登記)は義務ではなく、登記後に転居した場合の住所変更も通知義務はありません。

国土利用計画法による届出情報も万全ではありません。売買契約締結後、2週間以内に届出することを義務づけているのですが、実際の取引現場での認識は低いです。国はその全国情報を毎年集計し公表しているものの、届出の捕捉率は把握できていません。この届出業務が自治体の仕事(自治事務)だからです。

国土利用計画法の体系
海外からの投資という面で見ると、外資による投機的な土地買収は全国で約3700ヘクタール(2007年度~2010年度)です*5。ただ、外為 法で規定されたこの報告ルールも、その捕捉率は不明です。しかも外為法の体系では、非居住者(外国に住む人)が他の非居住者から不動産を取得した場合は、報 告義務の対象外です(外国為替の取引等に関する省令第5条第2項10)。

国交省・農水省は外資による森林買収情報を集めており、2010年までに全国で約800ヘクタールが買収されたと公表しました。定義がそれぞれ異なるため、数値は一致しないのですが、北海道は独自調査を進めており、道内で57件、1039ヘクタールが外資に買収されたと公表していました。今後、こうした物件がさらに外資へ転売 された場合、所有者情報は追えなくなるでしょう。

日本では国土の所有実態を行政が把握しきれないのです。「外資の森林買収」で露呈した根本問題はここにあります。

固定資産税の不納欠損処理全国で過疎化が進みゆく中、今後は土地所有者が村外、県外、さらに国外在住というケースも増えていくでしょう。鳥根県の旧匹見町(人口約1400人)では、固定資産税の納税義務者の所在が全国26都府県にわたっています*6。このうち、林地の約7%(面積比率)、農地の約3%(同)は納税義務者の居所が不明と見られます。かつては当たり前だった「土地所有者=在村住民=管理者」や「納税義務者=在村住民」という図式が成り立たなくなってきています。

固定資産課税台帳は登記簿情報を元に更新されていくのですが、前述のとおり、その登記簿が十分ではありません。所有権者の転居や金融商品としてグローバル化していくことを想定した設計にもなっていません。制度にひずみが出はじめています。

不思議なのは、こうした時代の変化と制度上の問題があるにもかかわらず、固定資産税の徴税が表立って大きな問題にならないことです。総務省によると固定資 産税を含む市町村税の徴税率は93.3%(2010年度)。固定資産税は市町村税収の43.7%(同)を占めるるのですが、土地所有者の不在化、不明化によって、 課税・徴税に支障が出ていないのでしょうか。

探っていくと、徴税率の高さの背景には、実は「不納欠損処理」という数字のマジックがあることがわかります。地方税法では、所有者の居所不明などで徴税ができなくなった場合、徴税が無理だとわかった時点での即時欠損処理(第15条の7第5項)や5年の時効(第18条)などによって消滅させる仕組みがあります。本来なら滞納繰越額は毎年雪だるま式に膨らみ続けるはずですが、この不納欠損処理によって滞納事案が「消滅」していくのです。つまり、徴税率計算の際の分母(課税対象)から滞納事案の大部分を消すことで、計算上の高い徴税率を保っているのです。

市町村税総額の中の「不納欠損処理」は、全国で1103億円(2010年度)。全体の0.5%程度で、一見少ないようにも見えます。だが、徴税すべき対象から外した「1年間」の額がそれです。固定資産税は累積していきます。税がとれずに債権放棄した額は、いわば再生産されていく負債です。

加速していく土地所有者の不明化は納税義務者の不明化でもあるのです。不納欠損処理によって、徴税不可能な事案を「消滅」させることで、その問題もまた表面上見えなくしているのです。一見高い徴税率の陰で、土地所有者の不明化により、地方財源の重要な柱である固定資産税の税収が漸減していく恐れがあります。

行政基盤や行政精度の劣化を示す事象として「消えた年金」「消えた高齢者」が従来から大きな問題になっていましたが、「消えた土地所有者」は、それらに続く可能性があります。

日本では団塊の世代が相続する時代を迎えています。資産価値が低く管理が難しい土地は、子供たちから敬遠されます。子供に負担をかけまいと、「相続の前に土地を手放したい」「買ってくれるなら誰でもいい」と苦渋の思いで仲介ブローカーに売却し、その後どう転売されたか、地元では誰も知らないという事例が、今後じわじわと増えていくでしょう。国境の離島や奥山の水源地など、安全保障や国土資源保全上、重要でありながら、人の目や手入れの行き届かない地域が増加していく恐れもあります*7。

グローバル化時代の開かれた経済活動の中、国レベル、自治体レベルそれぞれにおいて、土地情報の風通しをよくしていくルールを早急に整える必要があります。

国レベルでは、まず安全保障の観点から国が「重要国土」(防衛施設周辺、国境離島、空港・港湾、水源地など)の指定を行い、対象地域の所有実態の調査や、売買・利用にかかる法整備を行うことです。長崎県五島市は、福江港沖の無人島が不動産会社のホームページで売りに出された問題をきっかけに、市内全52の無人島について所有状況の確認作業を行い、2011年12月、結果を公表しました。

国は「重要国土」について、こうした基礎調査を進め、一定の売買・利用規制を講ずるべきです。国益上、とくに金融商品とすべきでない土地については、国有化や公有化のための財政措置も検討すべきです*8。

また、民間のインターネット入札などを利用した国公有地の売却が進められていますが、日本の土地法制の特異性を再認識する必要があります。収入確保のための拙速な国有地売却など、顔の見えないインターネット入札を無差別に進めていくことには、慎重であるべきです。

自治体レベルでは、上記の「重要国土」に準じた保全対象地域(環境、水源、生態系、景観、文化財など)を指定し、所有実態調査と条例による売買・利用ルールの整備を図っていくことが必要です。

昨今、「当県(当市)では外資による買収事例は確認されておらず、今のところ特段の措置をとる予定はない」という自治体が少なくありません。しかし、行政が知らないだけではないでしょうか。土地売買・所有の実態を行政が十分に把握できていないことこそが問題なのです。

土地所有者の不在化、不明化の問題は、固定資産税の徴税のみならず、防災・治安、地域づくりのための合意形成、公共事業のための用地取得など、日常の 様々な活動に問題が波及していきます。北海道のある自治体は、外資が所有する水源地2カ所を公有化するため、長期にわたって交渉を行っていましたが、未だ決着していません。地域の「守るべきところ」「守るべきこと」を明確化し、問題を未然に防ぐことが何より重要です。

諸外国を見ると、欧米では厳格な利用規制などによって個人の土地所有権に一定の制約を課しています。ドイツのB-planが最もわかりやすいです。英国も土地 所有者は保有権(hold)は持つものの、それは土地利用権に近く最終処分権までは持ちません。フランスでは公的機関による強い先買権が存在します。

海外からの投資という観点では、米国では農業外国投資開示法(1978年制定)や外国投資国家安全保障法(2007年制定)など、国の重要なインフラや 基幹産業に対する投資について、政府がいつでも情報把握や公的介入ができる制度を整えています。オーストラリア、ニュージーランドを含めた近隣アジア太平洋14カ国において、土地売買における外資規制が皆無なのは日本だけです。

日本でも、たとえば不動産登記を義務付け、登記の際にはマイナンバーも登録するように仕組みを変えるべきです。一方で、戸籍とマイナンバーを連動させる是非について法務省の「戸籍制度に関する研究会」で検討が進んでいます。マイナンバーによって戸籍と不動産登記が連結されれば持ち主や相続人の特定が容易になります。マイナンバーというツールを上手に活用していくように政治はリーダシップを発揮し、不動産登記の改革につなげてほしいです。

マイナンバーにより戸籍と不動産登記を連結すへき

土地とは、暮らしの土台であり、生産基盤であり、国の主権を行使すべき国土そのものです。経済のグローバル化と地域の高齢化・人口減少が同時進行する時代だからこそ、開かれた経済活動の前提として国内法制度をしっかりと整え、「守るべきところは守る」ことが不可欠です。

土地所有者の不明化対策に乗り出し、制度の見直しと底上げを図ることが急務です。そうして、忘れてならないのは、現在の土地の集合である国土は私達の父祖が長い間かけて開拓してきたものであり、徒や疎かに扱うべきものではないということを私達自身が再度認識すべきです。
*2 民法第162条は、20年間、所有の意思をもって平穏かつ公然に他人の物を占有することによって(占有を始めた時に善意・無過失であった場合は10年で)、所有権を時効により取得したと主張できると定めている。 
*3 首都圏の外環道(東京外かく環状道路)は、計画樹立以来40年以上経過しているが、未だ一部の地権者の合意が得られず完成していない。成田空港も、地権者の合意が得られず、滑走路が1本のままである。 
*4 山林価格は実勢で1ヘクタール20万円以下になるケースも少なくない。評価額が免税点30万円に届かなければ固定資産税も請求されないため、山林所有者の所有意識は弱まる一方だ。 
*5 外為法に基づく非居住者による本邦不動産の取得に関する報告実績(財務省資料、2011年2月)。 
*6 島根県中山間地域研究センター「中山間地域の現状・課題と今後の展開戦略(抄)」(2006年)。国土交通省は、森林所有者数約324万人のうち、所在の把握が難しい所有者を約16万人(約5%)と推計している(国土交通省「農地・森林の不在村所有者に対するインターネットアンケート調査結果概要」2012年)。 
*7 国土交通省は、日本の国土のうち、人が居住する地域は全体の約48%、1800万ヘクタール(2010年)だが、2050年には国土の約4割、約1400万ヘクタールまで減少すると予想している(国土交通省国土計画局「国土の長期展望に向けた方 向性について(2010年12月)」)。 
*8 東京財団「国土資源保全プロジェクト」提言書
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2015年11月21日土曜日

恵山風力発電 廃止へ 維持修繕費の負担重く―【私の論評】風力発電等は本当に代替エネルギーになり得るのか、原発は即時廃炉にすべきなのか?


恵山地区の風力発電事業の風車。ドイツ製で羽根の直径70m、
羽根を含めると高さ95m。風速毎秒3mになると羽根がまわり始める。
函館市は恵山地区で行っている風力発電事業を本年度末で廃止する方針を固めた。故障のため稼働を停止している2基の風車の修繕に4000万円が必要となり、来年度以降も修繕費が発生すると試算。廃止の場合は、建設時に受けた補助金の返還義務が生じるが、費用負担が最も少ないと判断した。

 風車は旧恵山町の第三セクターが2002年4月に事業を開始したが、計画した売電収入が得られず、04年3月に自己破産した。同年12月の市町村合併で、市が事業を継承したが、その後も故障が相次いだ。

 05〜14年度の10年間で、単年度収支が実質黒字となったのは10、12年度のみで、一般会計からの繰入金などで歳出超過を補っていた。風車の耐用年数(17年)以内で事業を廃止した場合、独立行政法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)からの補助金(約3億6000万円)に返還義務が生じるため、市は18年度までの事業継続を表明していた。

 風車の1号機は昨年11月に羽根の角度制御機能が故障するなどし、2号機は電力制御基盤の不具合により、今年3月27日から稼働を停止した。修繕費は2基で4000万円、2号機のみの場合は1100万円と試算。16年度以降も継続して修繕費用が生じる。2基とも廃止した場合のNEDOへの補助金返還額は概算で6200万円、2号機のみを存続した場合でも2400万円と算定した。

 過去の稼働実績を踏まえて18年度までの歳入や歳出を試算し、市の負担額を検討した結果、㈰2基を修繕した場合は7292万円㈪2号機のみを存続した場合は7442万円㈫補助金を返還し、本年度で2基とも廃止した場合は6527万円−となり、廃止の場合の費用負担が最少となった。

 市は特別会計に関わる条例改正や返還額の予算計上などを来年2月の定例市議会に提出する考え。風車は倒壊など危険な状態ではないが、撤去費用も必要になるため、当面、現状のまま維持する方針。市経済部工業振興課は「耐用年数も近づき、経年劣化が進んでいるため、維持した場合でも売電収入に見合わず、維持費も掛かると判断した」としている。 (今井正一)

【私の論評】風力発電等は本当に代替エネルギーになり得るのか、原発は即時廃炉にすべきなのか?

このブログ、最近はグローバルな記事が多いので、本日はローカルなものをとりあげてみました。風力発電の失敗については、このブログでも以前とりあげたことがあります。

その記事のリンクを以下に掲載します。
“回らぬ”風車 原因究明へ実験 府、赤字続き 伊根の太鼓山発電所-本物の代替エネルギーとは・・・・・
伊根の太鼓山発電所
この記事は、2009年9月9日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、当時京都府が丹後半島に設置している「太鼓山風力発電所」(伊根町)で風車が効率よく回らず赤字経営が続いている問題で、京都府は8日までに、利用率向上を目指した実証実験をスタートさせたことを掲載しました。実際の風力発電施設を使った実験は当時では、全国的にも例がありませんでした。

太鼓山風力発電所(たいこやまふうりょくはつでんしょ)が、結局どうなったかといえば、その後も複雑な日本海の風力や落雷による故障などが相次ぎ計画した発電量が得られず、赤字の状態が続いていました。

そのため京都府は赤字幅の削減を目的として2011年に一部の風車を撤去する方針を示しましたが、2012年9月から固定価格買い取り制度の対象となったことにより、今後の売電収入増が期待できるとして6基の存続を決定しました。

ところが、その後の故障や事故の影響により、2013年3月15日現在から、6基とも稼働を中止しています。

函館や、京都以外にも結局中止になったという事例もあります。ネットで調べた限りでは、白浜町椿の風力発電所も中止になっています。

やはり、風力発電はまだまだ、事業化するのは難しい面があるということだと思います。

火災した風力発電の羽根
まずは、風力発電は、発電量を人間がコントロールできない発電システムだということを認識すべきと思います。

地熱発電や流水型小水力発電のように、一定の発電量を常時維持できるシステムなら、たとえ発電量が少なくても役に立ちます。その上に別の発電方式の電気を積み上げ、必要な量の電気を得ることができます。

また、火力や貯水式水力のように、発電する時間帯や発電量をコントロールすることができる発電方式であれば、需要に応じて小まめに出力を調整できます。

ところが、風力発電はそのどちらでもありません。30分先の発電量予測さえできません。30分後に定格出力(Max)の電気が得られるのか、風がやんで発電量ゼロなのか分からないのです。
電気が余っている夜間であっても、固定価格買い取り制度により、風が吹いて発電したときは強制的に全量買い取りさせて、風がやんで発電できくなれば、他でまかなうしかない代物が、風力発電の現実です。これでは発電施設として役に立ちません。

さらに、電気が最も不足する「サマーピーク」と呼ばれる真夏の午後1時から4時の時間帯には、ほとんどの風力発電所がまともに発電できていません。猛暑時には風が吹いていないからです。

この根本的な欠陥を補うため、最近ではNAS電池という大型蓄電池を併設し、ウィンドタービンが発電した電気を一旦蓄電し、必要なときに取り出すという方法が採用されるようになりましたが、これもエネルギーロスが大きく、かえって資源の無駄遣いになるというのが現実です。

そもそも、NAS電池は高温にした液体ナトリウムを使うため、もともと電池自体がエネルギー(電気)を必要とします。エネルギー収支の悪さを無視して補助金を注ぎ込むか、果てしなく電気料金を値上げしていくかしない限り、使い続けることはできません。これは太陽光発電も同じです。
 
電力事業はいかに小さなエネルギー消費で大きなエネルギーを取り出すかという計算問題です。取り出せるエネルギーが電力事業はいかに小さなエネルギー消費で大きなエネルギーを取り出すかという計算問題です。取り出せるエネルギーが注ぎ込むエネルギーより小さければ意味がありません。風力発電で1の電気を得るために直接燃やせば2の電気を得られる地下資源を使うのであれば、地下資源を直接使って2の電気を発電したほうがいいに決まっています。

さて、デメリットが目立つようになった風力発電ですが、風力発電のような代替エネルギーが今後どうなっていくか、見極める方策についても、上記のブログ記事で述べました。

その部分を以下にコピペします。
エネルギーの転換に関しては、ある程度年齢以上の方(40歳以上)であれば、かなり多くの人がその転換を身をもって体験されているのではないでしょうか。そうです、家庭用の暖房用燃料の転換です。いわゆる石炭、炭、薪などから、石油への転換です。この転換のスピードはかなり速かったと思います。わずか、数年であっという間に転換しました。この転換の早さは、やはり、化石燃料の中でも燃焼効率が高いとか、石炭などよう灰が出ない、運搬が容易であるためコストが低減されたからです。 
これに比して、太陽光発電、風力発電はなかなか普及しません。その理由は、エネルギー転換効率が著しく低いからです。ドイツでは、補助金を出して無理やり太陽光発電などを増やしていますが、これを続けていけばどういうことになるか、誰もがはっきりわかることだと思います。 
私は、太陽光発電に関しては、よほどのブレークスルーでもない限り、永遠に代替エネルギーなることはありえないと思います。風力発電に関しては、ある程度見込みはありますが、これも大々的にやれば、上記のような問題もおきてきます。そうなれば、将来負の遺産を残すことになります。 
だからこそ、風力発電などは、実験程度にとどめて、ある程度技術的に確立してから本格的に発電所などの施設をつくるべきだと思います。今の段階で、巨大な発電所をつくることには反対です。太陽校発電などはやめたほうが良いと思います。太陽光発電装置には、大量の化学物質を使います。現状では、あまり問題にはなりませんが、大規模な発電所がたくさんつくられた時には、これらの廃棄に関してかなり問題となります。 
今後代替エネルギーの開発も行われ行きます。どれが、本物かを見分けるのは非常に簡単なことです。石炭から、石油に変わったように、黙っていても、あっという間に普及します。目に見えて実際にどんどん置き換わっていくものが本物であり、そうではなく、人々の話題に上っているだけ、あるいは、補助金などで無理に置き換えていくようなものは本物ではありません。 
そういった意味では、太陽光発電、風力発電なども現段階では本物の代替エネルギーではありません。将来原油が継続的に高騰して元にはもどらなくなったり、枯渇しかければ、さまざまな代替エネルギーが一挙に噴出してくると思います。その中から、本物のエネルギーがあっという間に置き換わっていくと思います。風力発電、太陽光発電に限らず、本物ではない代替エネルギーに大きく力を入れれば、将来に禍根を残すことになります。
今回函館(恵山地区)の風力発電が廃止されたので、やはりこの時の私の読みはあたっていたものと思います。この傾向は、最近の原油安によって、ますます助長されることになると思います。

代替エネルギーといえば、原発もその一つです。原発には反対の方も大勢いらっしゃるようですが、私自身は上でも述べたような有望な代替エネルギーが見つかれば、そちらに移行すべきと思いますが、今の段階では、すでに稼働していた原発に限っては、稼働させても良いと思っています。

なぜなら、廃炉をするにしても、核廃棄物が残るわけで、この廃棄物を保存したり、処理したりするにもしても、かなりコストがかかるわけです。廃炉に向けて作業を開始しても、核燃料が残っている限り安全ではないわけです。

そうして、廃炉するにしても、かなりの経費がかかります。であれば、既存の原発で安全対策を行った原発に関しては、稼働させたほうが良いという考えです。安全対策とは、いっても具体的にどの程度かというば、女川原発くらいの安全性ということになると思います。

ちなみに、女川原発は、東日本大震災のときにも無傷で、被災者をしばらくの間受け入れていました。福島原発についても、酷い被害にあったのは、古い原発で、マーク 1というアメリカ製のものです。新しい、日本製のものは、地震直後にすべて稼働を停止して、事故は発生しませんでした。

こんなことを言うと、原発なんて恐ろしいから即座に全部廃炉にすべきという人からすれば、「とんでもない」ということなるかもしれませんが、先に述べたように、即座にすべて廃炉にするにしても、核燃料が残っていて危険であることにはかわりはありません。であれば、同じく危険であっても、稼働させてエネルギーを供給するようにすべきというのが私の立場です。

いずれにしても、エネルギー問題は、単純なものではなく、様々な人の様々な思惑が絡んで、複雑な様相を呈しています。しかし、私達の身近な問題であることには変わりありません。

函館の恵山地区の風力発電の廃止のニュースでまた、エネルギー問題について考えさせられました。

いずれにしても、現在代替エネルギーとされている風力発電や、太陽光発電は、真の意味での代替エネルギーになりきれていないということは言えそうです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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