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2018年1月22日月曜日

「財政問題」でまた財務省の言いなりになる、ポチマスコミの情けなさ―【私の論評】日本のマスコミは能力が低すぎてまともな国際・経済報道はできない(゚д゚)!

「財政問題」でまた財務省の言いなりになる、ポチマスコミの情けなさ

いつまで同じことを繰り返すのか…


髙橋 洋一 経済学者 嘉悦大学教授 プロフィール

ICANについてどうしても言っておきたいこと


先週の本コラムで、北朝鮮リスクと国内増税派リスクの内憂外患について書いた。前者に関連するが、ノーベル平和賞を受賞した「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長が来日し、安倍晋三首相と面会できなかったことが話題になった。

フィン氏は12日に来日、東京には16、17日と滞在していたという。一方、安倍首相の動静を見ると、12日午前中に羽田空港を出発し、17日まで東欧6カ国を歴訪している。

筆者は官邸勤務の経験があるが、首相の予定はいつもいっぱいであり、外遊日程を見る限り、単に日程の都合で面会できなかっただけだろう。それを「なぜ会わなかったのか」と批判するのは変な話だ。

そもそも首相が会うべき人物でもない。というのは、ICANの主張する核兵器廃絶については、長期的な目標としてはそのとおりであるが、実現させるための手順が問題であるからだ。

まず、今の核兵器保有国を広げないことが先決であるので「核兵器廃絶」の前に「核不拡散」がある。

現時点では「核不拡散」がより重要なので、「核兵器廃絶」だけを叫ぶのは、いまある危機を助長することにもなる。具体的には、北朝鮮が「核不拡散」を破ろうとしており、それを押さえることが優先課題になる。

ベアトリス・フィン氏
北朝鮮を抑制できないまま、ほかの核保有国が核廃絶を進めた場合、戦争確率が高まるというのが国際的な紛争論のセオリーである。この意味で、ICANの行動に日本が賛同すれば、当面の日本の安全保障上の立場を危うくする(まずは北朝鮮の非核化が先、という単純な話だ)。

こうした点については、ICAN事務局長も、訪問した日本の与野党議員との会合で聞かされたはずだ。

ICANは日本が「核兵器廃絶」に賛同しても、日米同盟は揺らがないというが、その確約を日本に来る前にアメリカ政府から取ってきてほしいものだ。欧州では、アメリカとの「核シェアリング」によって守られている国もあるが、そうした国は「核兵器廃絶」には賛同していない。

そうした事実を見ないICANの活動は、日本の一部野党の「お花畑議論」と本質的に同じである。そういえば、国会での与野党議員との会合でICANに賛同していたのは、共産党などの一部野党しかいなかったのは、国会議員の良識であろう。

いずれにしてもICANのいう核兵器廃絶は、現実的な核軍縮にはつながらない。

そもそも核兵器を持たない日本に来て説教するより、現実に核兵器を持っている北朝鮮や中国に行って、核兵器廃絶を訴えたほうがいいだろう。

さてICANの話はこれぐらいにして、今回はいま勢いを強めている「国内増税派」のリスクについて触れておきたい。増税にむけて、早くも攻防が始まったからだ。

財政黒字化についてのヘンな報道

昨年の総選挙において、2019年10月に消費増税を行う方針は固まったが、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度に黒字化する目標は先送りする、とされている。

この点については、今年6月に予定されている「経済財政運営と改革の基本方針2018」(いわゆる骨太の方針)がポイントになる。そこで、新たなプライマリーバランス黒字化達成時期が示されるだろう、というのが大方の予想である。

まず、1月5日の閣議後の記者会見で、茂木敏充経済財政・再生相が中長期の経済財政試算において「金利の動向などを、より現実的に修正する」と発言した。

これに早速噛みついたのが、マスコミである。たとえばテレビ朝日は「安倍政権が税収と歳出が見合う財政の黒字化を2027年度に2年先送りし、しかも、借金が膨らんで見えないような試算を行っていることがANNの取材で分かりました」(http://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000119017.html)と報じている。

いまから行う議論を明確にするためにも、報道の続きを引用しておこう。

<内閣府はこれまで財政が黒字化する前提として、将来の経済成長率を名目で3.9%、金利を4.3%に設定して試算してきました。

しかし、来週に公表される予定の新たな試算では成長率を0.4ポイント下げた一方で、金利は1.1ポイントも引き下げていて、借金が膨らんで見えないよう数字を設定していることが分かりました>

テレビ朝日をはじめとするマスコミは、内閣府が「財政の黒字化を二年間先送りにしたこと」、さらに「その試算をするうえで、金利だけを大きく下げて試算したこと」を批判している。

もっとも、マスコミはこの種の数字の議論には弱いので、その裏には財務省かその影響勢力がいるとみたほうがいい。実際、このテレ朝のニュースは「財務省関係者は『通常、成長率と金利は連動するが、金利だけ大きく下げすぎている』と懸念を示しています。」とご丁寧に財務省関係者の解説を添えて報道している。

しかし、金利を下げて試算することが問題かどうか、彼ら(マスコミ)は本当にわかっているのか。ただ財務省に「これは悪いことだ」と吹き込まれて、それを反射的に報道しているだけのようにしか見えないのだが。

この報道を見て、筆者は12年ほど前のことを思い出した。竹中平蔵総務大臣の補佐官をしていたときのことである。

2006年3月16日に行われた経済財政諮問会議において、竹中総務大臣と吉川洋・東大教授との間で繰り広げられた「金利・成長率」論争がそれである(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/minutes/2006/0316/minutes_s.pdf)。

名目GDP成長率と名目長期国債金利のどちらが高くなるか、を問う論争で、これだけ聞くと、単なる学者の「遊び」のように思われるかもしれないが、中長期の経済財政試算において、金利と成長率をどう置くかによって、財政健全化のために必要なプライマリーバランスの水準が変わってくるのだ。

金利が高く出る「欠陥」

この話は、高校程度の数学知識で簡単に証明できるが、これを、首相が議長を務める経済諮問会議において、短い時間で説明するのは至難の業だ。そこで、最低限の資料を筆者が作った(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/minutes/2006/0316/item3.pdf)。


その資料にも書かれているが、財務省は、必要なプライマリーバランスの黒字幅を大きくするために、とにかく「金利が成長率を必ず上回る」と主張し、それを吉川氏が代弁した。

筆者は、金利が成長率を上回るのは、日本に独特の話であり、日本ではデフレによって名目成長率が低かったり、マイナスになっていたことを知っていた。しかも、日本以外の先進国では、金利と成長率はどちらが大きくなるかは決めがたかった。これを示唆するものとして、名目成長率が名目民間金利より低いという理論はあっても、名目成長率と名目国債金利(これは名目民間金利より低い)の間の大小関係を規定する理論はない。

そこで、竹中大臣には「金利が成長率より大きい、という財務省の決め打ちだけは避けて欲しい」と言った。

結局、経済財政諮問会議では、小泉首相は、金利と成長率の大小関係は決め打ちするなという竹中大臣の方針に軍配を上げた。

実際のデータでも、金利と成長率の関係はにわかには決めがたい。もっとも、最近のデータでは、財務省の当時の主張とは異なり、若干金利は成長率よりわずかに低い可能性がある。「金利が成長率を必ず上回る」と言っていた財務省はやはり経済音痴であり、その見通しは大外れだった。


さて、こんな昔話が、茂木大臣の話とどのように関係するのか。財務省の言い分は、報道にあるとおり、「安倍政権が金利を大きく下げて2027年の試算をしている」ということだろう。その前提として、これまでの中長期の経済財政試算における金利の決め方が正しかったのだろうか、ということを考えなければならない。

若干テクニカルであるが、中長期の経済財政試算は、いろいろな式の塊であり、経済モデルで計算されている。そのモデルの詳細は、内閣府のホームページで公開されている(http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome.html)。

12年前の経済財政諮問会議は大臣間のガチンコ議論だったが、さすがにその前に事務折衝を筆者と内閣府担当者の間で行った。筆者がその当時指摘したのは、金利の決定式において、債務残高対GDP比が説明要素として含まれ、金利が高止まりする仕組みになっているが、その根拠とされる統計量からみて、統計的に説明要素とするのは不適切だ、ということだった。

かなりテクニカルであるが、その証拠も見せよう。以下が金利決定式である(これは上の内閣府サイトを探せば出てくる)が、債務残高対GDP比の項目のt値が、通常では2以上とされているのにあまりに低い(2005年モデルでは1.2711)というものだ。

クリックすると拡大します

これに対する明快な解はなかった。小泉首相の判断後に、この要素を削除したわけでもない。その後も、部分修正は行ったが、金利式の基本的な性格は変更していない。内閣府は、金利が高く出る欠陥を放置したのだ。もちろん、この背後には財務省がいたに違いない。

こんなデタラメやっていると…

今回の茂木大臣の話は、こうした10年来の不始末をこの際きれいにしようとするものだろう。経済分析の専門家として、内閣府は、金利を高止まりさせる(財務省の息のかかった)モデルをそのまま使うのは良心の呵責があるはずだ。

もっとも、財務省はそんなことはどうでも良く、ひたすら増税のために、プライマリーバランスのハードルを高くしたいだけだ。

金利を計算上さげるという茂木大臣の発言に噛みつくマスコミは、財務省のポチであろう。モデル計算も何も知らないで、財務省の走狗になっているようだ。金利が少し下がるのは、本来戻ると言うことであることを、マスコミは理解しなければいけない。

最後に、経済財政諮問会議は、もっとまじめに経済分析をすべきだ、ということを提言しよう。そもそも、財政の状態をどう見るか、これは、本コラムで再三繰り返してきたように、日銀を含めた「統合政府」でのバランスシートとしてみればいいのだ。

現状をみれば、ほぼ資産と負債がバランスしている。これを毎年のフローで見ると、国債の利払費は、資産サイドの金利収入などでほぼ賄えるということだ。

しかし、実際には、資産サイドからの金利収入は、各主体において「準備金化」され、フローの資産収入を少なく見せている。こうした「隠れた準備金」を発掘するのが国民からの期待である。かつて、筆者が発掘した「埋蔵金」と同じである。

昨年6月の「経済財政運営と改革の基本方針2017」において、「債務残高対GDP比の安定的な引下げ」という項目が入ったのは一歩前進であるが、さらに「統合政府ベースのネット債務残高対GDP比の安定的な引下げ」とすべきである。

実は、統合政府ベースのネット債務残高対GDP比は、プライマリーバランス対GDP比、成長率、金利の関係によって、その動きが決まってくる。この証明も、高校数学程度の知識で可能である。

筆者も、きちんとした財政状況を把握して、そのために、プライマリーバランス対GDP比を管理しようとするのは、まっとうな経済運営であるとおもう。しかし、今のように、バランスシートを見ずに、フローのプライマリーバランスだけで、財政状況を見ようとするのは信頼性に欠けてしまう。

こんなデタラメの財政運営をしていると、いっそのこと「いくら財政赤字でもかまわない」と言い出すような過激分子もでてきてしまうだろう。財政の状態を国民に正確に知らせるためにも、経済財政会議は財務省の提灯持ちではなくもっと専門的な議論をすべきなのである。

【私の論評】日本のマスコミは能力が低すぎてまともな国際・経済報道はできない(゚д゚)!

ベアトリス・フィン氏の発言と、それをそのまま垂れ流す日本のマスコミには私も呆れ果ててしまいした。


ベアトリス・フィン氏はNHKのニュースで、
「核兵器は破壊の均衡によって平和を保つというもので非常に危険で永続性はない。」
と語っていますが、軍事力の均衡が国家間の武力衝突を防ぐことは常識です。抑止力という概念を知らないのでしょうか。核兵器だけを特別視する理由としては、彼女の主張には全く説得力がありません。

また原爆を落とされた被害国である我が国に、何と「道義的責任がある」と彼女は語っています。どこをどう繋げればそういう結論になるのでしょうか。何らかの責任を云々するなら原爆を落としたアメリカに言うべきです。

念のため指摘しておきますが、西洋の価値観に従えば、我が国は米国に対して最低8発の原爆を使用する権利を有します(倍返しが常識であることと、人口は2倍以上、面積はさらに大きいことを考慮)。その権利を行使するかしないかを決めるのは我が国です。日本の価値観に従えばそういうことはしないでしょうが、とにかく決めるのは我が国であるはずです。

これは、無論米国に原爆を落とせと言っているのではありません。権利というよりは、日本が米国に対してそのくらいの貸しがあるというほうが良いかもしれません。

これについては、私は実際複数の米国人に対して話たことがありますが、保守派の人に話せばこれにあからさまに反論する人はいませんでした。「逆の立場に立てば、そうだろう」というのが彼らの判断のようでした。

さらに彼女は、「核兵器の脅威にさらされていない国はなく日本政府も条約に同意しなければならない」と語っています。

しかし、至近距離の隣国の国家元首から、
「核爆弾をぶち込んで日本列島まるごと沈めてやる」
と脅されている現実を知っているとは思えない発言です。


我が国以外のどこの国がこのような脅威にさらされているのか、是非教えていただきたいものです。

そもそも、主権国家である日本に向かって「しなければならない」などの発言は、無礼千万としか言いようがありません。

「決めるのは国民であり国民が『署名してほしい』といえば政府は署名するはずだ」
との発言は、議会制民主主義の何たるかを全く理解していない無知をさらけ出しています。

我が国は選挙によって選ばれた多数派が政権を担い政策を決めて実行します。日本政府が署名しないのは、国民の多数が署名を望んでいないからです。

ベアトリス氏が話を聴いたいわゆる「市民」とは日本国民の中では少数派に過ぎません。彼女は、我が日本国はまともな選挙制度も無い遅れた独裁国家とでも思っているのでしょうか。一部の人達の「アベの独裁を許さないぞ~」を真に受けているのかもしれません。

東京新聞の記事では核の傘に進んで入ることは受け入れられない。長崎、広島の価値観と大きな隔たりがある」と苦言を呈したとありますが、別に彼女に我が国の安全保障政策を受け入れて貰う必要性など全くありません。
貴女が言うところの「長崎、広島の価値観」は観念論・理想論に過ぎず日本国民の多は、きれい事ではない現実を見据えた価値観を共有しているのです。

そうして、彼女の無知が際立ったのは次の発言です。「(長崎への原爆投下以降に)核兵器が使われなかったのは、幸運だったからにすぎない」。

現実には、1945年以後も核実験によって多くの人々が被爆しました。とりわけ中国は、ウィグル人が多く住む新疆ウィグル自治区で核実験を繰り返し多くのウィグル人を被爆させました。

中国政府はいまも核汚染は存在しないと公言しています。中国の被曝実態が世界に知られるようになったのは、1998年8月にイギリスで放映されたドキュメンタリー番組「Death on the silk road」によるものです。同番組で、ウイグル人医師のアニワル・トフティが核実験場周辺で調査した発癌率のデータが以下のグラフです。

この調査から、核実験をした場所の近くの町や村では、1990年には30%以上も発がん率が高くなっていることがうかがえます。

中国の四六回にも及ぶ原爆や水爆の実験で、一説にはウイグル人の被爆者数は一九万人以上、死者は一九万人以上とも言われています。日本で「シルクロード」がブームになった時代にも、この地域での核実験は続いていたので、多くの日本人観光客が何も知らずに被爆したのではないかと言う人もいます。このように、長崎以後も核兵器は使われ続けているのです。


国と国の戦争では使われていないと主張するのなら、それはむしろ核兵器の本当の恐ろしさを理解していないことになります。いまや主権国家ではなく、テロ組織、犯罪組織が核兵器を入手して使うという脅威が現実のものとなりつつあります。

核兵器廃絶国際キャンペーンにはその視点が欠けているのではないでしょうか。それぞれの国には歴史や伝統とそれに根ざした価値観があり刻々と変化する国際情勢の中でそれぞれの事情があります。そうした諸問題への配慮が彼女の発言からは全く感じられません。

無知であるにもかかわらず、彼女の「意識高い系的上から目線発言」に対しては日本人を舐めるなと、怒鳴りつけてやりたい気分になった方々は多かったことでしょう。

彼女の無知と、彼女の発言を何の取捨選択もせず、エビデンスに基づいた解説を加えることもなく垂れ流すマスコミには本当に呆れ果てるばかりです。

そうして、この態度は、経済報道についても同じです。マスコミは財務省の発言を、何の取捨選択も、エビデンスに基づいた解説を加えることなく垂れ流すだけです。これなら、マスコミが報道する意味がありません。財務省のサイトを見れば良いだけです。全く存在価値がありません。

経済に関しては、本来は高校の数学くらいは駆使して、財務省の提供する資料を分析したりすべきでしょうが、そこまでしなくても、分析することは可能です。それは過去の数値や、他の国々の数値を調べることです。

私は、日本の構造的失業率など高橋洋一氏のように様々な数値から、 NAIRU(インフレを加速させない失業率)を計算することはできませんが、それでも日本のNAIRUは2%半ばくらいだろうとみなしています。

そうして、これは高橋洋一氏も同じような結論を出しています。高橋洋一氏のような計算をせずになぜそのようなことがいえるかといえば、それは過去の日本の失業率の数値の推移をみているからです。

残念ながら、日本は長期間デフレだったので、この期間は失業率は3%を超えは普通で、4%を超えているときもありました。これでは参考になりません。ですから、日本がデフレに突入するまえの失業率を見れば、一番さがっていたのは2%台半ばでした。だから、日本のNAIRUは2%半ばであることが直感的に読み取ることができました。

そもそも、経済記事を書くような記者は、最低限このくらいのことはすべきでしょう。ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事では、「金利と成長率」が問題になっています。これも、実際に自分で計算できなければ、過去の事例や海外の事例などを調べてみれば、ある程度のことは理解できます。

マクロ経済学の最適成長論の考え方では確かに長期金利が名目成長率を上回るとされています。ただ、ここで言う長期金利とは、民間企業の発行する長期社債の利回りや株式の資本収益率も含まれており、財政再建に関わる長期国債の利回りは、リスクプレミアム分だけ民間の長期社債の利回りよりも低いことになります。

従って、経済理論によって民間の金利が成長率より高いからといって、国債金利のほうが成長率より高くなるとはいえません。長期的な歴史的事実関係を見ても、多くの主要国について名目成長率が国債金利を上回っています。これをみれば、少なくとも、国債金利のほうが成長率よりも高いという財務省の主張は間違っていることが理解できます。

経済記事を書く記者なら、これくらいのことはして欲しいです。最低限、種々の計算を高橋洋一氏などの複数の専門家にしてもらい、その専門家らから解説を聞き、自分で判断してから、記事にすべきでしょう。

それに、できれば高校数学くらいの計算はしてみて、確認するなどのこともすべきでしょう。なにしろ、仕事で経済記事を書くのですから、読者のためにそのくらいの労は惜しむべきではないと思うのですが、日本にマスコミはそうではありません。

以上のことからも、以前のこのブログで私が主張した、日本のテレビは国際・経済報道はできないという主張は正しいといえると思います。そうして、新聞ですらこの有様ですから、日本のマスコミはまともな国際・経済報道はできないと結論付けても良いと思います。

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2017年11月22日水曜日

「イヴァンカ基金」報道でわかるマスコミの呆れた経済リテラシー―【私の論評】テレビに国際・経済報道を期待でないわけ?

「イヴァンカ基金」報道でわかるマスコミの呆れた経済リテラシー

イヴァンカ・トランプ氏

そもそも「イヴァンカ基金」ではない

トランプ大統領の長女で大統領補佐官を務めるイヴァンカ・トランプ氏が来日し、連日動向がメディアで取り上げられた。そのなかで物議を醸したのが、氏が主導した「イヴァンカ基金」に日本政府が5000万ドル(約57億円)を出資するとしたニュースだ。

国のトップクラスの名前を冠したファンドは珍しいようにも思えるが、そもそもこの基金の目的は何なのか。政府はどのような意味合いで57億円もの巨額を拠出することになったのか。

これについて、各メディアは「安倍首相 イヴァンカ氏基金に57億円」との見出しで報道した。これに否定的な反応を示した人々も少なくない。たとえば社民党の福島瑞穂参議院議員は、ツイッターで「安倍総理がトランプ大統領にプレゼントをしたように見えかねない。なぜこのタイミングなのか?しかも個人的なプレゼントではない。みんなの血税だ」と投稿。

たしかに報道の字面を見ると、安倍首相がトランプ氏一家のご機嫌取りに血税を使ったように取られてもおかしくない。

だが、実際のところ単なる「プレゼント」とは大きく違ったものだ。まず、メディアでは「イヴァンカ基金」と通称で呼んでいるが、正式名称は「女性起業家資金イニシアティブ」といい、イヴァンカ氏個人のファンドではない。途上国の女性起業家が直面する制約を解消することを目指し、ワシントンにある世界銀行に設置されている。

ちなみにこの拠出は'17年7月にすでに発表されていて、日本以外にもすでに12ヵ国が拠出を表明している。つまり、わざわざ今回の訪日に合わせて準備した資金ではないということだ。

ダブルで「おいしい」投資先

そして今回の出資について「血税をつぎこんでいる」というのも、再考の余地がある指摘だ。なぜならこの57億円は、税金主体の一般会計からも拠出できるが、普通であれば政府が保有する「外貨準備」から拠出するのが通例だ。

外貨準備とは、相場の急変動への対応や対外債務の返済に用いられる準備資産であり、そのほとんどが政府の外国為替資金特別会計という名目で保有されている。

外国為替資金特別会計は短期債券を発行し、その資金で外債を購入して運用している。こうして生まれた外貨準備の残高は1・2兆ドル(約137兆円)ほどで、税金そのものを拠出したわけではないといえる。

また、外貨準備は債券が原資であるから、一定の収益がある。現時点でその利回りは1・7%程度といわれるので、単純計算で年間204億ドル(約2・3兆円)の収益がある。

つまり、外貨準備の中から57億円を拠出するというのは、年間収益のわずか0・3%程度を出すだけにすぎない。しかもこの資金はあくまで「拠出」で、タダで寄付しているわけではない。「イヴァンカ基金」が成功すれば日本の国際的評価も上がるはずだ。

いわば、国が財テクで儲けたそのわずか一部を別の分野で再投資しているだけにすぎない。メディアの報道があまりに不十分なことには驚くが、それを鵜呑みにして過剰反応する国会議員にも呆れてしまう。

しっかりと国のおカネの仕組みについて学んでいれば、このようなことも発言しないのだろうが。

【私の論評】テレビに国際・経済報道を期待でないわけ?

昨年の大統領戦記では、ほぼすべての日本のマスコミがトランプ大統領の登場を予測することができませんでした。これには、それなりの背景があります。それは、今でも変わっていません。だからこそ、今回のいわゆる「イヴァンカ基金」についてもまともな報道ができないのです。そもそも、正しい報道をして欲しいと願うこと自体が間違いなのです。

民放では日々国際ニュースが流されているがその信憑性は?
今回は、主にテレビ報道について述べます。

そもそも、日本の特に大手メディアのワシントン支局に何人くらいテレビ局員いるのでしょうか。

これは、テレビ局によって多少の違いはありますが、基本的には2人です。支局長と平の人と、あとは現地採用の人です。あわせ、4人から5人というところです。NHKは、これよりは少しは多いくらいのものです。

この状況で、東京から送り込まれてニュースを日本全国に届けるわけですが、これでは、取材力がないわけです。では、どのようにして、選挙情勢分析してるいるのかといえば、それぞれ系列局と報道協定結んで報道をしているのです。

たとえば、米国ABCと日本のNHK、日本テレビとNBC、CBSとTBSが、報道協定を結んでいます。日本のテレビ局が、報道協定を結んだ先の米国のテレビ局が出した情報をそのまま日本で報道してしまいます。

米国のテレビ局は基本的にリベラルに占められていて偏っています。テレ朝などは、完全に米CNNの情報絶対に正しいという前提で、報道しています。

さらに、日本のテレビ局の、多くが駐在するワシントンにいるとさらに、それが全然わからなくなってしまいます。昨年の大統領選挙戦で、得票数見れば、ワシントンでは93%もクリントンに入れています。

ワシントンにいるとクリントンが勝って当然だという感覚になるのです。昨年の大統領戦では、トランプが勝利宣言をすることになったわけですが、これに対する日本のテレビ局の準備がほとんど出来ていませんでした。

クリントンが勝つから、クリントン側から勝利宣言を夕方中継するということで、キャスターはスタンバイ始めるわけですが、パスを取らないとそこには入れません。そうして、そのパスをクリントン側からしか取っていないと、急にトランプ勝ちそうだぞとなってももうトランプ側の勝利宣言の場には、行くことができないのです。

このような準備が全く不足していて、日本のテレビ局のほとんどが、トランプの勝利宣言をほとんど報道できなかったのです。これは、当時池上氏の選挙特番でもそうでした。

池上氏の選挙特番では、安藤ゆうこキャスターは現地に行ってから、日本で言われているように、ヒラー優勢ではなく、トランプ優勢であることを初めて気付き、突然レポートの内容が変えました。
一方で池上彰氏は直前に1回アメリカに行っにもかかわらず、ヒラリーが絶対に優勢という前提で、全部原稿準備していたので、特番の中では、ヒラリーに関することしか言えないような状況になっていました。

池上彰氏の米大統領選挙特番
日本のメディア、テレビ局は、このような手薄な状況で、アメリカの内情分析をしているのが実体なのです。

これは、本当に手薄で、その場で必要がなければ翻訳の人が常時いるわけではないですから、今日はニュースは無いというときには支局員は支局に詰めることもなく帰宅していまうのです。

そのため、アメリカで何か大きな事件が急に起こった場合には、支局長が支局員に電話して報道局来てもらわないと支局は機能しません。だから、急に大きな事件が発生すると、報道にタイムラグがおきてしまったりします。国内のように、泊まり番というのはいないのです。

ただし、NHKは泊まり番も存在しますが、その中には、中国人のスパイ等がなにくわぬ顔で潜り込んでいて、それが大きな事件が起こったときに偶然泊まり番をしていて、直後の報道がかなり偏っていたりすることもあるのです。

そもそも、日本のテレビ局は、情報分析能力自体が、かなり手薄なのです。あまりにも手薄なので、ある民法は、アメリカ大統領選挙はどうなるのかという番組では、自分の局の米国駐在員の話を報道するのではなく、日本人の商社関連の識者を呼んでき報道するというようなことをしていました。

本来商社の人に話を聴いても、正しい情報が得られるとは限らないのですが、それでもなぜそのようなことになかといえば、そのような商社員に毎月勉強会という形でアメリカ事情を語ってもらう勉強会をやっているからなのです。

この局の報道関連の人達は、きっと彼は情報を持っていて正しい判断をするに違いないと信じているようで、だからこそ勉強会をやっその情報を結構アテにするのです。

結構そういう有名商社の誰々という権威に結構頼ってしまったりするのです。これは、何も国際報道に限った話ではありません。例えば捜査系の報道、特捜部系の報道では、元特捜OBのコメンテーターの人が番組に登場することが多いです。

そういう人が勉強会をやっていて、後輩捜査員に対して「おぅどういうネタがあるんだ?」などと聴いて集めて報道ネタにするということが良くあります。昔若狭さんがそれやっていました。

経済ネタでは、例えば竹中平蔵氏がテレビ局の報道関係者を受講者に含む勉強会を主催していました。報道関係者は自分の足でネタを得るこもなく、そこから放送ネタを得てきて、報道するというようなことが行われていましたし、今でもそのようなことが行われています。放送局の報道は、このようにしてなされているわけで、これでは情報内容は偏ってしまいます。

そもそも、偏るというよりは、まともなリサーチャーもアナリストもいないということです。日本では、良くテレビなどはリベラル左翼側に偏向していると批判されることも多いですが、本当はそれ以前にこのような根本的な欠陥があるのです。

根本的には、思想が右か左などというレベルではなく、そもそもレベルが上か下という問題です。NHKがかなり偏向しているということで批判される人々も多いですが、さすがにNHKは少なくともレベル的には上です。それには、報道局に十分な予算が割かれているということが大きいです。

ある民放局では、どうせニュースなんかスポンサーまともに付かないし、儲からない部署ということで、赤字部門扱いされてしまい、その局の有名会長が報道局部門のリストラを実行してしまいました。それに他局も右ならえをしてしまい、全民放が過去にかなりリストラをやってしまいました。そのため、現在ではどの民放もそもそも報道局は、予算もあまりつかないですし、報道局などに在籍しても出世のためには良いことではないのです。

再び昨年の、米国の大統領選挙にもどすと、トランプを一生懸命支えたネットニュースのブライドバードニュースがあります。ここの報道など当時の日本のテレビは全く触れませんでした。しかし、あのニュースを視聴していれば、トランプ陣営がどう動いてるのだとか、どういうことをやろうとしているのか、すぐにわかりました。

このサイトは、米国内でも有名でしたし、日本国内でも米国事情通の間では有名でしたが、日本の民放関係者は、このサイトの存在も知らなかったのです。

テレビ局のブレーンになるようなコメンテーターのおじさんおばさんは、このようなサイトをチエックすることもなく、恣意的にコメントするだけです。まともな識者がブレーンになっていれば、勉強会をまともなり、上で述べたようなことにはならないはずです。ブレーン選びがそもそも間違っているわけです。

例えば毎月勉強会をしなくても、こういうことが起きたから、こういう本を出した先生を一回呼んで勉強会やりましょうということで勉強会をすれば良いのでしょうが、そのような形式では行われていません。レギュラー番組のキャスター等を呼んで勉強会をするというようなことが行われています。

日本の日米関係は重要であるとするマスコミの大統領の報道でさえこのような状況の中で行われていたということです。

米国大統領選の報道ですら、この体たらくですから、普段のニュースはもっと酷いのです。それこそ、日本の民放の報道は、ADさんが貧乏物語に支えられるといっても良いくらいです。

たとえば、昨年の大統領戦記でレディー・ガガの掲げた「love trumps hate」を誤訳してしまった人は、年収200万くらいで、極端んことをいうと段ボールで寝てて、ロケ弁をタレントさんが置いてったものを2つ3つ持って帰って家で食べる飢えをしのいでいるような人かもしれません。


テレビ局の正社員は20歳代でも、平均で900万1000万程の給料を守らているのが普通です。ところがその下で実務の仕事をしている人たちは、年収200万くらいで、ブラック的な環境に甘んじているわけです。これでは、取材もまともにできないです。

そもそも、現在ではコスト削減でもうカメラ出すこともできない程なのです昔は1日で3か所取材などのことがあって、ADの人たちも、仕事させすぎだろ殺す気かって怒ってたほどなのです。今は1日1回出動するかしないかです。

だから経済産業省とか省庁の取材系は、昔はカメラマンもいて、カメラマンが映像をとって取材は取材に集中できました。しかし、今は記者が自分で回すのです。
メモをとれないのでボイスレコーダーで録音しながら、自分でカメラで撮影するのです。

このような酷い状況の中で、こういうテレビ番組を見て政治家などがアメリカ情勢をもし判断しているとすると、これブラックジョークの世界です。政治家や、政府関係者はそもそも(民放ニュースを)信用すべきではないです。

外務省も金が無くて情報収集分析が全然出来ない状況で、人と会うためのお金ももらえないから困っているようなところがありますが、テレビ局もお金が無いから情報収集できない状況です。特に、現場の記者は全部自腹といっても良い状況です。
2000年より前は、逆に使い過ぎてたくらいでした。たとえば、ロシア、モスクワで一番羽振りがいいのはテレビ局の記者なんじゃないかってくらい遊んでいた時代がありました。

それが、ある日突然あるテレビ局の某経営者がいきなりリストラクチャリングを始め報道局の人を減らし、取材コストを下げるってことが始まったのです。この方は、もう亡くなられた経営者で渡辺恒雄さんの友人ですが、その人がそれで結構コストを下げて経営がうまくいったので、どの局もみなリストラに走り現在のような状況になってしまいました。

先にも述べたように、結局今の日本のメディアって右左という問題ではなく、能力が下になってさらに、下に下がり、調査も分析も全然出来ない状況の中で、結果的にアメリカの提携テレビ局の言っている情報を鵜呑みして、それを横文字を縦文字にするのも間違えるくらいの状況に置かれているということです。

上で述べたように、大統領選挙ですら、民放は、正しく報道できなかったわけですから、「イヴァンカ基金」に関して報道できないのは当然といえば、当然です。

新聞報道は、テレビ局とは状況が異なりますが、こちらもまともな報道ができない状況にあります。こちらは、すでにこのブログでも何度か述べていますが、いずれまた別の機会に現状を掲載していこうと思います。

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