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2018年6月29日金曜日

「中国を自由市場から排除する」米国の伝家の宝刀、タイムリミット7月6日を過ぎればもう後戻り不可能に―【私の論評】米国は中国の市場開放を迫るつもりが、中国を自由市場から放逐することに(゚д゚)!

「中国を自由市場から排除する」米国の伝家の宝刀、タイムリミット7月6日を過ぎればもう後戻り不可能に


大統領専用ヘリコプターに乗り込む直前のトランプ大統領

連日、米国トランプ政権及び米国議会は、中国への制裁強化を打ち出し、中国との対立姿勢を明確化させている。そして、米国の伝家の宝刀ともいえる2つの法律を中国に対して適用すると世界に向けて発信した。

 一つ目は「米国通商法301条」(貿易相手国の不公正な取引慣行に対して当該国と協議することを義務づけ、問題が解決しない場合の制裁について定めた条項)であり、これを根拠に中国からの輸入品500億ドル(約5兆5300億円)相当に、25%の関税をかけるとしたわけだ。

 当然、これに対して、中国は強く反発し、米国からの輸入品に同額の関税をかけるとしたのであった。対して、トランプ大統領は、中国が報復関税をかけるならば、さらに2000億ドルの産品にも関税をかけるとし、また中国が報復するならば、同額の2000億ドルを積み増すと発表した。これは中国から米国への輸入額とほぼ同額であり、要は全部に関税をかけると脅したのである。

 また米国と中国との間の最大の懸念事項である「中国通信大手ZTE問題」にも大きな進展があった。米国はZTEに対して、米国の制裁を破ったとして、7年間の米国内販売禁止と米国企業からの技術移転禁止を命じた。これにより、ZTEは操業停止に追い込まれ、次世代規格である5Gでの展開も危ぶまれることになったのであった。

 しかし、これは中国側の必死に説得により、10億ドルの罰金と4億ドルの供託金で回避される見込みとなった。だが、これに議会が反発、米国上院は、この合意を白紙化し、中国通信最大手であるファーウェイにも制裁を課す法案を絶対的多数で可決したのである。この法案は来年度の軍事予算などを含む国防権限法に盛り込まれているため、大統領権限でも簡単に解除できない仕組みになっているのである。これにより、ZTE及びファーウェイの株価は暴落、将来の展開が見込めない状況に追い込まれ始めている。

 二つ目は「IEEPA法」(国際緊急経済権限法)の採用である。安全保障・外交政策・経済に対する異例かつ重大な脅威に対し、非常事態宣言後、金融制裁にて、その脅威に対処するという法律であり、議会の承認なしで、脅威となる対象の米国内での経済活動や金融取引を制限又は禁止できるという法律である。そして、金融取引の対象には資産の凍結や没収まで含まれているのである。

 つまり、大統領が宣言し大統領令を出すだけで、相手を徹底的に潰すことができるのである。米国のISやイランなどへの金融制裁はこれを根拠に行っているわけだ。米国は中国からの先端企業への投資に対して、これを適用しようとしているわけだ。

これに先立ち米国下院は、外国投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を拡大する法律を絶対的多数で可決しており、これは上院も通過する予定になっているのである。

 通商法301条は、7月6日から発動される予定であり、これが予定通り実施されれば、米中の貿易戦争は後戻りのできない状況になるのだろう。そして、これは始まりに過ぎないといってよいのだろう。米国は「中国の自由市場からの排除」を始めたのである。

【私の論評】米国は中国の市場開放を迫るつもりが、中国を自由市場から放逐することに(゚д゚)!

上の記事では、米国は「中国の自由市場からの排除」を始めたとありますが、現実には米国は中国へ市場開放を迫っているとの見方が正しいでしょう。市場を開放しなければ、「中国を自由市場からの排除」も辞さないという決意を中国に側にみせつけているのです。だから、ブログ冒頭の記事が間違いというわけでもありません。

今年3月に米トランプ政権が一連の貿易制裁の方針を発表した後、中国は米国からの輸入品に対して制裁関税を課す報復措置を発表するなど、強硬に反発する姿勢をみせました。

ボアオ・アジアフォーラム開幕式で習主席は開放拡大進める一連の措置発表 したが・・・

の一方、翌4月に中国南部の海南島で開催されたボアオ・アジア・フォーラムにおいて、習近平国家主席は証券や保険をはじめとする金融業界のほか、自動車産業を対象に外資による出資制限の緩和を発表。さらに、自動車に対する関税引き下げを通じて輸入拡大を図る方針を発表しました。

習氏による発表直後、金融業界への外資の過半出資が可能となる時期については「年内」と説明されたものの、その後6月末へ半年ほど前倒しされるなど、市場開放のスピードは急速に早まる動きがみられます。

さらに、上海と香港の株式市場間で行われている相互取引(ストック・コネクト)も、5月から取引額が2倍に引き上げられるなど、予想外に早いタイミングで金融市場の開放が進められています。金融市場の開放は、米国が中国に強く要望してきた内容だけに、米トランプ政権による圧力が効いていると捉えられます。

また、先月に米中双方で開催された通商協議後には、具体的な数値目標は示されなかったものの、米国の対中貿易赤字の削減を図るべく、中国が米国製品やサービスの輸入を大幅に拡大することで合意されました。中国は、米国産の農産品やエネルギーの輸入拡大を図るほか、知的財産権の保護を強化することが盛り込まれ、米トランプ政権の中国に対する懸念に対応することで合意されました

ただし、この際の米中両国の合意では詳細については詰まっておらず、「高いレベルでの協議を継続して、経済および貿易面での懸念解消を図る」とする内容が示されたことは、そのことを物語っています。

中国政府はその後も、自動車および自動車部品に対する関税引き下げを7月1日から開始することを発表。さらに同日から加工食品やスポーツ衣料、洗濯機、冷蔵庫など幅広い日用品を対象に輸入関税を引き下げるなど、一段の市場開放に動く方針も示しました。加えて複雑かつ煩雑とされてきた外資系企業による現地法人設立に関する手続きも、6月末からインターネットの利用により簡素化する方針を表明するなど閉鎖的とされた市場を外資に開放する姿勢が示されています。

このように予想外に早いタイミングで中国政府が市場開放に動いている背景には、米トランプ政権が投げる「高い球」と、その後の強硬姿勢が影響したのは間違いないです。

一方、米国による圧力が中国にとってのリスクの増幅につながる動きも出ています。米国は中国の対米黒字の縮小に向けて、中国に対して内需拡大を求める姿勢を強めています。

2013年の数値をベースにすると、各国のGDPに占める個人消費の割合は、米国が約70%、日本が約60%、中国が37~38%となっています。直近の中国における消費の伸びを勘案すると、現在は40%程度の割合は個人消費が占めていると考えられます。中国で個人消費のウェイトが低いのは、公共投資など総資本形成の割合が非常に高いためです。

仮に、中国の個人消費のGDP構成ウェイトが日本並みであった場合(他のGDP構成要素の割合が日本並みに低く抑えられた場合)、2015年の中国GDPは実際の59兆2100億元に対して、40兆元を僅かに下回る水準(約39兆5000億元)となります。これは実際の中国の2010年の水準も下回るものであり、2015年の日本のGDPの1.16倍程度の水準にとどまることになります。仮に、個人消費のウェイトを米国並みにした場合、2015年の中国GDPは526兆円となり、2015年の日本と同水準になります。

この試算は、中国当局による直接的なGDP偽装とはいいきることはできないものの、過剰投資の結果、実態以上にGDPを押し上げる状況となっているのは明らかであることを示すものであり、本質的なGDP水準を試算したものとなります。


結局のところ、中国のGDPの多くは、過剰投資の結果であり、実体をともないわないものであるといえます。実体をともなったものにするのであれば、やはり個人消費の拡大は必須といえます。少なくとも、日本をはじめとする先進国と同レベルのGDP 占める割合を60%くらいにはもっていく必要があります。

しかし、これを実行するためには、今までのように富裕層による社会経済活動だけでは、そこまでの水準には伸ばすことはできません。やはり、多くの中間層が活発な社会経済活動ができるように保証しなければなりません。

そのためには、ある程度の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を進めなければなります。しかし、これを進めれば、中国の共産党の体制、現在では習近平体制を崩さなければならないです。これは習近平にとっては不可能でしょう。

さらに、中国をめぐってはここ数年、過剰債務の解消が課題になっており、金融機関のデレバレッジ(レバレッジ取引の解消)を進める姿勢をみせてきました。中国当局は昨年末に金融機関によるシャドーバンキング規制案を発表しましたが、最終的には業界の反発を受けて実施時期が大きく後ろ倒しされ、規制強化に伴う激変緩和措置が盛り込まれるなど、事実上規制が緩められています。


直近の統計では、理財商品を含む信託商品残高の伸びは加速しているほか、インターネット(P2P)金融の残高も拡大の勢いは収まらないです。こうしたなかでの事実上の規制緩和は、問題処理を一段と難しくさせるリスクがあります。短期的には景気下支えにつながり、政府が掲げる今年の経済成長率目標(6.5%前後)の実現を容易にさせる半面、過剰債務の動向にこれまで以上に目配せをする必要に迫られことになるでしょう。

「一帯一路」構想については、私は当初から失敗するであろうと考え、このブログにも掲載してきましたが、現在案の定窮地に立たされています。

この巨大ブロジェクトは、昨年1年間で、パキスタンやネパール、ミャンマーで中国関与のインフラ建設案件が相次いで中止や延期に追い込まれました。先月にはマレーシアが、中国が「一帯一路」の主要事業として受注攻勢をかけていたマレー半島高速鉄道計画の廃止を表明しました。

当初は「一帯一路」への協力に積極的だった西側諸国も、この“壮大なる構想”の危うさに気がついたようです。

やはり先月には、欧州連合(EU)加盟国28カ国のうち27カ国の駐中国大使が、「中国に利するように設計されている」とし、「一帯一路」を厳しく批判する報告書をまとめています。

「一対一路」は、このブログでも掲載したように、過去の中国の国内のインフラ整備による経済発展の延長線上にあるものです。国内ではインフラ整備が一巡してしまったため、インフラ整備を中国主体で外国で行おうとするものです。

それによって、中国が利益をあげて、過去のようにさらなる経済発展をすることを目指すものです。しかし、中国のインフラ整備の能力は高くはありません。国内では、政府による政府の都合によるインフラ整備で良いのですが、外国が絡んでくれば、そういうわけにもいきません。

中国国境に近いラオスの経済特区の中国語の看板。「一帯一路」の文字が見える=今年1月

中国の未来へ向けたブロジェクトは、結局のところこの「一帯一路」しかありません。それがうまくいきそうもないのです。

このような状況で、過剰債務の問題が解決されないまま、個人消費をあげることもままらないという状況で、米国による市場開放のための圧力がさらに大きくなれば、米国は「中国を自由市場から排除する」ことになってしまう可能性が大きくなってきました。

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