2010年のホンダ部品工場のスト 写真はブログ管理人挿入。以下同じ。 |
日本の製造業の「脱中国」が一段と加速している。これまで、ミニバイクの9割を中国など海外生産していたホンダは新型ミニバイク「ジョルノ」の生産を、同社熊本製作所(熊本県大津町)で始めた。人件費高騰や円安で中国生産のメリットが薄れるなか、生産拠点を国内に戻すメーカーは増える一方だ。
ホンダは円高が進んだ2002年ごろから中国やベトナムでの海外生産に切り替えたが、アベノミクスによる円安を受けて輸送コストなどを検討した結果、国内生産の場合でも大差はなく、商品の保管でも効率が良いと判断した。
同社は「ジョルノは国内生産回帰の第1弾」としており、段階的に国内生産に移し、国内8割、海外2割の生産体制にする。
日本の大手メーカーでは、パナソニックが中国でほぼ全てを生産していた日本市場向け空気清浄機の半数を、国内生産に切り替えることを明らかにしているほか、ダイキン工業も家庭用エアコンの一部を中国から国内の工場に移管。キヤノンやTDKも国内回帰を進めている。
中国では2012年の反日暴動も記憶に新しいうえ、株や不動産バブルが崩壊し、実体経済も失速するなど、市場としての魅力も薄れつつある。中国リスクを回避する日本メーカーは今後も増えそうだ。
【私の論評】背景には中国の個人消費はもともと少ないし、これからさらに減速するという見込みも(゚д゚)!
まずは、中国人労働者の賃金が今やさほど安くもないということがあげられます。とはいっても、日本に比較すればはるかに安いのですが、それにしても、製造業のコストに占める割合は相当低くなっているので、これ自体はさぼと大きな要因ではありません。
一番大きいのは、やはり、中国の個人消費はもともと少ないし、この少ない消費が今後さらに低くなる可能性が高いということがあげられると思います。
これについては、以前のブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【お金は知っている】中国金融市場の自壊は変えようがない 外貨準備は「張り子の虎」―【私の論評】馬鹿の一つ覚えの経済政策が、今日の危機を招き後は崩壊するだけ(゚д゚)!詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では日本が酷い円高・デフレだった期間の、日本と中国のGDPに占める個人商品の割合を比較したグラフを掲載しました。そのグラフを以下に掲載します。
名目GDP-民間最終消費支出対GDP比 赤=日本 青=中国 |
この間GDPは伸びて、中国はGDPが世界第2の水準になったとして、世界第二の経済大国を自認するようになりました。
しかし、現実には、中国の経済成長によって、個人消費は全く伸びず、そのままだったので、GDPが伸びても、個人消費の割合が減ったということを意味しています。
では、なぜこのようなことになったかといえば、中国の経済発展は、個人消費以外のものが伸びたということです。そうして、その最大のものは、インフラ整備などの公共工事です。鉄道、空港、港湾などの整備です。
インフラ投資など、最初は実施すれば、それにともない人々の経済活動が活発になり、経済も伸びますが、それにも限界があります。その後、個人消費が伸びなければ、インフラ整備だけ実施しても、実体経済は伸びません。
中国の公共投資によって建築された建物 誰も使用せず鬼城化している |
今まさに、中国の実体経済はそのような状況にあります。詳細に関しては、この記事に掲載してありますので、是非ご覧担ってください。
さて、ニュースを見ていると、日本国内では国内総生産(GDP)の数字が発表されたときに、デパートや飲食店の映像が流され、「背広を新しく買う人が増えた」とか、「外食する人が増た」など、個人消費に関することが報道されることが多いです。
これは日本では個人消費がGDPに占める割合が大きいので、こうした報道がなされるのです。日本の場合、経済成長の原動力は、あくまで、個人消費なのです。テレビなどを見ていると、政府がとてつもない天文学的な資金を投じて、道路や空港、港を整備したりして、その投資の額が頭に残って、莫大であると感じてしまうのですが、日本では、そんなことよりも、個人消費のほうが、経済発展に占める割合が圧倒的に大きいのです。
上のグラフで示したように、デフレのまっただ中でさえ、GDPに占める個人消費の割合は、6割近くあり、最近では6割を超えています。
多くの人々は、日本は輸出立国という誤ったイメージを抱いていますが、輸出から輸入を差し引いた額が、日本のGDPに貢献している割合はかなりひくく、日本のGDPの個人消費以外の4割は何によって構成されているかといえば、約2割が政府最終消費支出、約2割が総固定資本形成となっています。
このため、個人消費が少し上向いたり、少し落ち込んだりするだけで、日本経済に与える影響は非常に大きくなります。だからこそ、8%増税は個人消費を落ち込ませ、今年の4月から6月期の経済成長がマイナスに落ち込んだのです。
さて、世界各国の個人消費がGDPに占める割合はどうかといえば、イギリス、ドイツ、フランス、ブラジル、インドなど、先進国の一部の国では、だいたい日本と同じ約6割を維持しています。
アメリカに至っては、個人消費がGDPに占める割合が7割を超えています。これらの国では、さまざまな事情はあるものの、概して、国民が将来に対して楽観的である、と言えると思います。日本で、過去の酷いデフレの期間に、これが60%を切っていたのは、やはり将来に対する不安を感じる人が増えたことによるものと考えられます。
一方で、ロシアの個人消費がGDPに占める割合は約5割、中国に至っては現在でも、35%しかありません。
これもいろいろな事情はあるものの、元々国民の稼ぎが少なく、さらにその少ない稼ぎを消費に回さず、貯蓄して貯め込んだり、不動産などの投資に回してしまっている、という事情があるものと推察されます。
これらの国では、「将来何が起こるか分からない」、「政府が何をするか分からない」、「老後は誰も面倒をみてくれない」などの大きな不安感、恐怖感が、国民を支配し、消費を控えさせ、個人消費がGDPに占める割合を、低いままにさせていると考えられます。
そういった意味では、個人消費がGDPに占める割合が低い国の政治は、国民を不安に陥れるものであり、まさに中国は共産党の一党独裁であり、国民を蔑ろにしているということです。
日本では、最近では8%増税によって、将来に対して不安感を抱いた人々が増え、個人消費が落ち込み、経済が減速したということです。それにしても、中国の人民の不安や、不満から比較すれば、さほどではないので、GDPに占める個人消費の割合は60%程度を維持しているということです。しかし、10%増税などしてしまえば、また国民の不安がまし、60%をまた下回る水準に戻ってしまうかもしれません。
さて、話をまた元に戻します。
結局、中国では個人消費がもともと少なく、その原因は中国政府の共産党一党独裁による、国民不在の政治による国民の将来不安によるものであり、これは構造的な問題であり、なかなか直せるものではなく、さらに最近の中国経済は落ちこんでいますから、もともと少なかった個人消費が消費が伸びる可能性はさらに低くなりました。それどころか、さらに、個人消費が落ち込むと思います。
中国に進出した、個人消費向けの製造業など、進出当初は製品の消費量が増えていったでしょうが、中国が経済発展を続けていたにもかかわらず、個人消費が頭打ちのため、製品の消費が一度頭打ちになると、そこからはほとんど伸びないという状況が続いていたと思います。
小松製作所などの土木関係の機材を販売する会社は、中国の経済発展は、主に公共工事による発展であったため、中国の経済発展により、売上を伸ばすことができたと思います。しかし、これも中国の経済の減速にともない、業績を落とすことになるのは、必定です。
実は、製造業が消費地の近くで製造をするということには、本来的には大きな意味があります。消費地の近くであると、顧客のウォンツやニーズをつかみやすく、さらに、それを製品に短時間で反映しやすいというメリットがあるのです。
ファスト・ファションなどまさにその典型です。これは、最新の流行を採り入れながら低価格に抑えた衣料品を、短いサイクルで世界的に大量生産・販売するファッションブランドやその業態をさします。
ファッションの先進地の渋谷などに、店舗や製造工場を構えて、ファッション・トレンドを素早くとらえて、それを製造にフイードバックして、素早く製品化して、店頭に並べることにより、大きな利益を得ることができます。
一般の製造業も、ファスト・フアッション業界ほどではありませんが、同じような側面があります。だから、本来中国で製品を販売するというのなら、中国に拠点を置いておく意味もあります。
しかし、そのようなことをするにしても、条件があります。個人消費がある程度大きいか、あるいはあまり大きくなくても、これからどんどん伸びいていくことが期待されるという条件です。
今の中国では、個人消費がもともと少ないし、これからも伸びることはあまり期待できず、それどころかさらに縮小することさえ考えられます。であれば、わざわざ中国に製造拠点を置いておく必要性はないわけです。
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
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CCCメディアハウス (2015-08-25)
これは日本では個人消費がGDPに占める割合が大きいので、こうした報道がなされるのです。日本の場合、経済成長の原動力は、あくまで、個人消費なのです。テレビなどを見ていると、政府がとてつもない天文学的な資金を投じて、道路や空港、港を整備したりして、その投資の額が頭に残って、莫大であると感じてしまうのですが、日本では、そんなことよりも、個人消費のほうが、経済発展に占める割合が圧倒的に大きいのです。
上のグラフで示したように、デフレのまっただ中でさえ、GDPに占める個人消費の割合は、6割近くあり、最近では6割を超えています。
多くの人々は、日本は輸出立国という誤ったイメージを抱いていますが、輸出から輸入を差し引いた額が、日本のGDPに貢献している割合はかなりひくく、日本のGDPの個人消費以外の4割は何によって構成されているかといえば、約2割が政府最終消費支出、約2割が総固定資本形成となっています。
輸出に関しては、もともとパイが少なし外国の状況に左右される。もともと、 大きい個人消費の落ち込みは、完璧な国内問題であり、その影響は甚大である。 |
このため、個人消費が少し上向いたり、少し落ち込んだりするだけで、日本経済に与える影響は非常に大きくなります。だからこそ、8%増税は個人消費を落ち込ませ、今年の4月から6月期の経済成長がマイナスに落ち込んだのです。
さて、世界各国の個人消費がGDPに占める割合はどうかといえば、イギリス、ドイツ、フランス、ブラジル、インドなど、先進国の一部の国では、だいたい日本と同じ約6割を維持しています。
アメリカに至っては、個人消費がGDPに占める割合が7割を超えています。これらの国では、さまざまな事情はあるものの、概して、国民が将来に対して楽観的である、と言えると思います。日本で、過去の酷いデフレの期間に、これが60%を切っていたのは、やはり将来に対する不安を感じる人が増えたことによるものと考えられます。
一方で、ロシアの個人消費がGDPに占める割合は約5割、中国に至っては現在でも、35%しかありません。
これもいろいろな事情はあるものの、元々国民の稼ぎが少なく、さらにその少ない稼ぎを消費に回さず、貯蓄して貯め込んだり、不動産などの投資に回してしまっている、という事情があるものと推察されます。
これらの国では、「将来何が起こるか分からない」、「政府が何をするか分からない」、「老後は誰も面倒をみてくれない」などの大きな不安感、恐怖感が、国民を支配し、消費を控えさせ、個人消費がGDPに占める割合を、低いままにさせていると考えられます。
そういった意味では、個人消費がGDPに占める割合が低い国の政治は、国民を不安に陥れるものであり、まさに中国は共産党の一党独裁であり、国民を蔑ろにしているということです。
日本では、最近では8%増税によって、将来に対して不安感を抱いた人々が増え、個人消費が落ち込み、経済が減速したということです。それにしても、中国の人民の不安や、不満から比較すれば、さほどではないので、GDPに占める個人消費の割合は60%程度を維持しているということです。しかし、10%増税などしてしまえば、また国民の不安がまし、60%をまた下回る水準に戻ってしまうかもしれません。
さて、話をまた元に戻します。
結局、中国では個人消費がもともと少なく、その原因は中国政府の共産党一党独裁による、国民不在の政治による国民の将来不安によるものであり、これは構造的な問題であり、なかなか直せるものではなく、さらに最近の中国経済は落ちこんでいますから、もともと少なかった個人消費が消費が伸びる可能性はさらに低くなりました。それどころか、さらに、個人消費が落ち込むと思います。
中国に進出した、個人消費向けの製造業など、進出当初は製品の消費量が増えていったでしょうが、中国が経済発展を続けていたにもかかわらず、個人消費が頭打ちのため、製品の消費が一度頭打ちになると、そこからはほとんど伸びないという状況が続いていたと思います。
小松製作所などの土木関係の機材を販売する会社は、中国の経済発展は、主に公共工事による発展であったため、中国の経済発展により、売上を伸ばすことができたと思います。しかし、これも中国の経済の減速にともない、業績を落とすことになるのは、必定です。
実は、製造業が消費地の近くで製造をするということには、本来的には大きな意味があります。消費地の近くであると、顧客のウォンツやニーズをつかみやすく、さらに、それを製品に短時間で反映しやすいというメリットがあるのです。
ファスト・ファションなどまさにその典型です。これは、最新の流行を採り入れながら低価格に抑えた衣料品を、短いサイクルで世界的に大量生産・販売するファッションブランドやその業態をさします。
ファッションの先進地の渋谷などに、店舗や製造工場を構えて、ファッション・トレンドを素早くとらえて、それを製造にフイードバックして、素早く製品化して、店頭に並べることにより、大きな利益を得ることができます。
渋谷のファスト・ファッションの店舗 |
しかし、そのようなことをするにしても、条件があります。個人消費がある程度大きいか、あるいはあまり大きくなくても、これからどんどん伸びいていくことが期待されるという条件です。
今の中国では、個人消費がもともと少ないし、これからも伸びることはあまり期待できず、それどころかさらに縮小することさえ考えられます。であれば、わざわざ中国に製造拠点を置いておく必要性はないわけです。
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