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2018年12月28日金曜日

ルトワック氏単独インタビュー詳報―【私の論評】今後日本は日米英の結束を強めつつ独自の戦略をたて、繁栄の道を歩むべき(゚д゚)!


米戦略家のエドワード・ルトワック氏。米東部メリーランド州の自宅にて

米歴史家のエドワード・ルトワック氏は産経新聞との単独インタビューに応じた。「米中冷戦」の下で日本は米国に最も近い「パートナー国」として米国を支えていくべきだと訴えた。詳報は以下の通り。(ワシントン 黒瀬悦成)

 ■トランプ米政権の対中政策

 オバマ前政権は外交政策に関し非常に消極的だった。一方、トランプ大統領は大統領選に立候補した当初から中国をあらゆる分野で押し戻すと唱えてきた。

 トランプ氏は本来、中国に集中するためにロシアのプーチン大統領と(関係改善に向けた)合意を結びたかった。結局、これは(ロシア疑惑などにより)実現はしなかったが、トランプ氏はその後、確実に中国に焦点を定めていった。

 現状の中国との衝突は、中国が以前の「平和的台頭」路線に回帰しない限り、現体制が崩壊するまで長期にわたり続くだろう。

 ただ、「中国封じ込め」の必要性を最初に公言し主導してきたのはオーストラリアで、米国ではない。豪州は2008年以降、このままでは中国の植民地になるという危機感から日本や米国、ベトナムなどに連携を働きかけてきた。当時のオバマ大統領は封じ込めに否定的だったが、トランプ氏は積極姿勢に転じた。

 そうした流れから、日本や米国、ベトナム、豪州、インドなどの国々の間で、多様な方式と水準の自然発生的かつ必然的な「同盟」が形成されるようになった。英仏も南シナ海での「航行の自由」確保のため艦艇を派遣している。インドや豪州、日本がベトナムを支援するのも中国を押し返すためだ。

 ■日本の役割

 こうした(対中)同盟は正式な条約を必要としないが、中国に対抗するために能力向上を図らなければならない国々もある。日本は軍備に穴がある比較的弱小な国々に向けた武器輸出国になるべきだ。米国が東西冷戦時代、欧州に多数の戦車を提供し、同盟諸国に安価で取り扱いが容易なF5「フリーダムファイター」戦闘機を提供したように、インドネシアやフィリピンに廉価版の飛行艇を輸出したり、モンゴルに戦闘装甲車を供与できたりするようにしなくてはならない。

F5「フリーダムファイター」 写真はブログ管理人挿入以下同じ

 この対中大連合の中心は米国で、日本はそのパートナー国、他の国々は同盟国だ。ちょうど東西冷戦で米国が中心国で英国がパートナー国だったのと同じ構図だ。パートナー国は中心国と同じことをするのではなく、中心国ができないことを補完するのが役目だ。例えば、日本は中国の周辺国であるラオスやバングラデシュ、ミャンマーなどで、経済的、歴史的つながりの深さから米国よりも容易に能力向上支援などの活動を展開できる。

 また、日本は外国の的確な現地情報を収集する情報組織を外務省の下につくるべきだ。日本の右翼勢力の中には外務省には「パンダ・ハガー(媚中派)が多すぎる」として外務省の傘下にすべきでないと主張する者もいるが、今の外務省ではもはや媚中派は一掃されている。中央情報局(CIA)のような肥大化した低水準の独立組織は必要ない。

 ■対中ハイテク冷戦

 中国との対決の本質とは「地政学(geopolitics)」「地経学(geo-economics)」「地テク学(geo-technology)」の分野での戦いだ。米中が核保有国である以上、軍事的解決はできない。南シナ海での角逐は単なる象徴にすぎない。

 経済と技術分野の競争では、対中連合に加わる国が続々と出ている。欧州諸国では数年前から許認可の厳格化で中国が先端技術企業を容易に買収できなくなった。ただ、中国による先端技術のスパイ行為に関しては、つい最近までは野放しだったのが実情だ。

 諜報という裏の世界で起きていることは必ずしも極めて重要というわけではないが、国同士の本当の関係を照らし出すものだ。

 現状では、米英など西洋対中国による開発研究競争と中国によるスパイ行為が展開されているわけだが、中国にも盗む価値のある技術があるにもかかわらず、私が知る限り、米国はそれらを盗もうとしない。これは重大な過ちだ。中国の先端技術企業をスパイすることで、連中が私たちから何を盗んだかを知ることができるからだ。

 また、中国のスパイ行為への対応が非常に鈍いのも問題だ。私たちは中国との冷戦の初期段階にある。東西冷戦に突入しつつあった1946年、(当時の)チャーチル前英首相が訪米し「鉄のカーテン演説」で旧ソ連を批判した際、誰もが「ソ連は同盟国だ。チャーチルは好戦主義者だ」と攻撃したのと同じ状況だ。

 ■中国は海洋勢力になれない

 地政学上の「ランドパワー(陸上勢力)」である中国は「シーパワー(海洋勢力)」にもなろうと海軍力を増強しているが、それだけで海洋勢力になることはできない。

 海洋勢力になる要件とは周辺国に(艦船が)寄港でき、これらの国々との協力関係が確立できているかだ。海洋勢力は各地の島国や半島国家などと友好・同盟関係を結ぶ必要があるが、中国は友人どころか敵ばかり作っている。


 陸上勢力が海洋に進出すれば各国は警戒する。中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」も、結局はうまくいかないだろう。

【私の論評】今後日本は日米英の結束を強めつつ独自の戦略をたて、繁栄の道を歩むべき(゚д゚)!

産経新聞は本日以下のような記事も掲載しています。
「米中冷戦は中国が負ける」 米歴史学者ルトワック氏
冒頭の記事と重複するところもあますが、こちらの記事から以下に引用します。
 ルトワック氏は現在の中国との「冷戦」の本質は、本来は「ランドパワー(陸上勢力)」である中国が「シーパワー(海洋勢力)」としても影響力の拡大を図ったことで米国や周辺諸国と衝突する「地政学上の争い」に加え、経済・貿易などをめぐる「地経学」、そして先端技術をめぐる争いだと指摘した。 
 特に先端技術分野では、中国はこれまで米欧などの先端技術をスパイ行為によって「好き勝手に盗んできた」とした上で、トランプ政権が今年10月に米航空産業へのスパイ行為に関与した疑いのある中国情報部員をベルギー当局の協力で逮捕し米国内で起訴するなど、この分野で「米中全面戦争の火ぶたを切った」と強調した。 
 一方、中国が南シナ海の軍事拠点化を進めている問題に関しては、トランプ政権が積極的に推進する「航行の自由」作戦で「中国による主権の主張は全面否定された。中国は面目をつぶされた」と強調。中国の軍事拠点については「無防備な前哨基地にすぎず、軍事衝突になれば5分で吹き飛ばせる。象徴的価値しかない」と指摘した。

 ルトワック氏はまた、中国の覇権的台頭を受けて2008年以降、米国と日本、オーストラリア、ベトナム、インドなどの国々が「自然発生的かつ必然的な『同盟』を形成するに至った」と指摘。これらの国々を総合すれば人口、経済力、技術力で中国を上回っており、「中国の封じ込めは難しくない」とした。 
 ルトワック氏はさらに、これらの国々が中国に対抗するための能力向上を図る必要があると指摘。日本としては例えばインドネシアの群島防衛のために飛行艇を提供したり、モンゴルに装甲戦闘車を供与するなど、「同盟」諸国の防衛力強化のために武器を積極的に輸出すべきだと提言した。
現在の中国との「冷戦」の本質は、本来は「ランドパワー(陸上勢力)」である中国が「シーパワー(海洋勢力)」としても影響力の拡大を図ったことで米国や周辺諸国と衝突する「地政学上の争い」に加え、経済・貿易などをめぐる「地経学」、そして先端技術をめぐる争いだと指摘した。 

四面海に囲まれた「海洋国家」である日本のこれからの国家戦略は、あくまでも、「海洋国家の雄」である米国と、「海洋国家の大先輩」である英国との間で政治的にも軍事的にも、また経済・文化的にも「シーパワー連合」を強固に組み、日本の進路を誤らないようにしていく必要があります。

8月3日晴海埠頭に入稿した英海軍揚陸艦「アルビオン」

これに対して、「大陸国家」である「中国」と「半島国家」である「韓国」「北朝鮮」との間での結びつきは、できるだけ「緩やかな関係」にしておくべきです。

日本は「政経分離」の原則に立ち、「大陸国家」「半島国家」とは政治的・軍事的な結びつきや関与は、極力避けるべきです。「海洋国家」が、「大陸国家」や「半島国家」にかかわると、命取りになります。これは、大東亜戦争に敗北した日本が、痛烈に感じさせられた歴史的事実です。

今後ともに、ゆめゆめ「大陸や半島」への「政治的・軍事的野心」を抱くべきではありません。

日本は戦後、「戦略なき国家」と揶揄され「外交防衛政策」の対米追従姿勢が内外から厳しく批判を浴びてきました。しかし、日本に「戦略」がなかったというのは、大きな誤りです。

日本が、本当に「戦略なき国家」だったのであれば、米国が「双子の赤字」を抱えて苦しむほど「経済的疲弊」し、「ソ連東欧」が経済破綻により崩壊して米ソ共倒れのような格好で冷戦が終結したのに、日本が、「経済的繁栄」を実現できた理由を説明できなくなります。

たとえ「日本国憲法」が米国による「押しつけ」であれ、また、「米国の核の傘」の下で「保護」されてきた国であろうとも、こうした「受け身」の状態とそのなかに含まれていた諸条件を上手に利用して、ひたすら「通商国家」の道を歩み、「経済大国」を実現してきたのは、立派な「国家戦略」が存在したからであり、偶然に「経済大国」になったわけではありません。米ソが駆使したような「地政学」を活用しなかっただけにすぎません。

「地政学」を活用した米ソが、疲弊ないし崩壊したというのは、何とも皮肉だと思います。現在「地政学」を駆使するととに、古代の叡智を過信する中国もルトワック氏が予言するように崩壊します。

米国は、海洋国家として「シーパワー」による世界制覇を、ソ連は大陸国家として「ランドパワー」による世界制覇をそれぞれ目指しました。いわゆる「地政学」をフルに活用して世界戦略を展開してきたのです。

日本も戦前、戦中は帝国海軍がアルフレッド・マハンの「海上権力論(シーパワー)」を、帝国陸軍がマッキンダーの「ハートランド論」をよく研究していました。

秋山真之

日本海会戦を勝利に導いた秋山真之が立てた「来攻する敵艦隊を迎え撃つ」という戦略戦術構想とその中心思想は、大東亜戦争に至るまで堅持されました。佐藤鉄太郎中将は、古今東西の戦史を深く研究して兵学各部門に貢献し、陸海軍備の関係については当時台頭した「大陸進出国防論」をいましめました。

「帝国国防方針」は1909年に策定されましたが、以来、仮想敵国(米・露・支)の関係から、「陸主海従」か「海主陸従」かの根本問題も解決をみず、「二重性格」の国防方針のまま大東亜(太平洋)戦争に突入し、大陸に深く入り込みすぎ、また戦線も拡大しすぎて、「空母中心」の新しい海戦の意義を理解した米国に敗北してしてしまいました。日本がいかに「海洋国家」であったかを思い知らされ、痛烈に反省も迫られたのでした。

戦後は、連合国軍最高司令部(GHQ)の意向で、これら「地政学」の研究がはばかれ、「地政学」に立脚した「国家戦略」を立てられなくなりました。

しかし、戦後の日本が、「国家戦略」を持たなかったかと言えば、そうではありません。日本の大戦略は、「日本国憲法」の持つ「機能」のなかに仕込まれていました。このことは、日本に憲法を押しつけた米国でさえ気づきませんでした。気づいていたのは、ただ一人、「吉田茂元首相」でした。米軍を「番犬」とし、軍備に巨費を投ずることなく、経済大国を築くという「戦略」でした。

吉田茂元首相

これは、「米ソ対決(東西冷戦)」と「南北朝鮮の分裂」という地政学的な状況と条件を日本の生き残りに活用するという巧妙なる戦略でした。

東西冷戦とその後のソ連崩壊、中国の台頭により、これらの「状況と条件」は、大きく様がわりしてしましたが、日本は再び、「東アジア情勢」を活用する「国家戦略の策定」が求められています。それには、

 ①日本は、武力による「覇道」ではなく、あくまで通商・経済により「王道」を歩む。
 ①米国、英国などとの「シーパワー連合」を強化する
 ②中国大陸に深入りせず、米中を覇権争いさせるとともに、朝鮮半島にはコミットしない。(危機が刻々と迫っているかに見える北朝鮮や米中の熱戦の火の粉をかぶらないようにする)

との原理原則を貫き、従来通り「通商国家」「超経済大国」を目指し続けるのです。「シーパワー連合」に最も関係の深い「シーレーン」の防衛に協力するのは、当然です。また、ルトワック氏が主張するように、日本は軍備に穴がある比較的弱小な国々に向けた武器輸出国になることも実行すべきです。

しかし、自民党憲法改正案にもあるような、「憲法第9条1項」はそのままに、「2項」を改正するとしても、「国連」への関与は最小限に止めるべきです。

日本は、「安保理常任理事国」となり、先々、「国連旗」を隠れ蓑に地球のどこにでも出兵させられるような立場には絶対に立たされてはならないです。「分担金」をいまの「19.468%」からさらに上乗せさせたり、米軍に成り代わって、「大陸」であろうと「海洋」であろうと、世界中の紛争地帯に出撃し、「日本の青年の血」が多く流されたりして、ロクなことはないです。日本の若者を「犬死に」させていならないのです。

それよりも日本の防衛に全力を上げた方が良いです。この限りの意味で、日本は戦前とはまったく違う新たな「富国強兵」の道を「国家戦略」とすべきです。そうして、自国の領土はまずは自国で守るのです。これについては、米国議会もトランプ政権以前からそれを望んでいます。

今後日本は、シーパワー、ランドパワーなる地政学的な考え方も援用しつつ、日米英の結束を強めつつ独自の戦略をたて、繁栄の道を歩むべきです。

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