来春高卒者の全国求人倍率 半減の0.71倍 北海道内0.26倍 (この内容すでにご存知の方は、この項は読み飛ばしてください)
来春卒業予定の高校生に対する7月末現在の全国平均の求人倍率は、昨年同期の1・31倍からほぼ半減の0・71倍に大きく落ち込んだことが11日、厚生労働省の調査で分かった。悪化は2003年春卒業者に対する同期の調査以来。道内は昨年同期を0・14ポイント下回る0・26倍と、10人の希望者に対し3人しか職がない厳しい状況だ。
求人倍率は04年卒の同期以降、昨年同期まで微増だっただけに、厚労省は「昨秋以降の経済情勢悪化で、休業したり、経営改善が見通せず採用計画が立てられない企業が多いのでは」(若年者雇用対策室)とみる。
全国の求職者数は、前年同期比5・5%減の19万1千人。一方、求人数は13万5千人と、過去最大の48・8%減少したため、求人倍率も大きく下降した。
道内も状況は同じで求職者数が6・3%減の9558人だったのに対し、求人数は37・3%減の2530人のみとなっている。
産業構造の転換と新たな職業訓練の機会を!!
■北海道の「失われた10年」が大きな影響を及ぼしている
ここ最近の雇用情勢は、かなり悪く、最悪の状況だと思います。一昔前だと、高卒のほうが、大学卒よりも一部上場企業に入りやすかったことがあったなどのことは、まるで夢物語のようです。やはり、日本も知識社会に突入してしまったため、高卒だと、相当教育・訓練を受けなければできないような仕事が増えてきているのだと思います。現在だと、単純作業しかできない人は、いやおうなしに派遣社員の業務をするしか道がないような状況です。
私は、2007年に、このブログで、
「ひるがえって、北海道経済を見てみると、今年は、かつて北海道の唯一の都市銀行だった、北海道拓殖銀行の破綻から丁度10年になります。ごく最近まで、拓 銀破綻の影響は表面上は全くなかったように見えますが、実は違います。拓銀が破綻してから、10年間北海道(自治体という意味)は北海道債(北海道の借金)を用いて、拓銀破綻の影 響を防ぐ対策を行ってきました。北海道拓殖銀行の破綻は、北海道経済にも、北海道民にとってもかなり衝撃的で深刻な警鐘となるはずだったものが、この間、 残念ながら北海道の公共工事依存という体質は改善されてきませんでした。数年前の東大阪のどん底不況などから比較すると全く信じられません。結局この10 年間は、何ら改善が行われず、拓銀時代からの悪い体質を温存してきました。ですから、私はこの期間を「北海道の空白の10年間」と呼びます」
と書いています。
この「北海道の空白の10年間」今になって、北海道に大きな影響を及ぼしています。先の有効求人倍率の異常な低さがこれを物語っています。拓銀破綻以来北海道では何もせずにきてしまったため、今になってその高い代償払うことになってしまったというわけです。
■北海道は素晴らしいブランド力を持っている
しかし、北海道は全国的にブランドとしては、もっとも人気の高いところです。先日、ブランド総合研究所でだした、調査によれば、北海道はブランドとしては全国でダントツの一位です。都市別でも、函館、札幌、小樽など複数の都市が上位10位以内に入っています。
ブランド総合研究所では、「今年の調査から調査対象に加えた都道府県の結果について、 最も魅力度が高かったのは北海道で68.9点となった。北海 道は市区町村での同ランキングにおいても函館市が1位(58.8点)となっており、以下札幌市(2位、56.4点)など高い点数の市区町村が複数存在す る。また、函館市よりも北海道の魅力度点数が高いことから、北海道は複数の市区町村の魅力が評価されている(各市区町村の魅力が相乗効果を果たしている) といえる」としています。
このブランド力というのは、長い間かかって醸成されるものです。企業などでも、ブランド力をつけようとして、躍起になっていますが、そんなに簡単につけられるものではありません。いわゆる目に見えないだけで、その資産価値は図り知れません。私たちの先達が長い間血の滲むような努力を重ねて、今日の北海道のブランドを築きあげてきたのです。現在の私たちは、これらのブランド力にあまりにも長い間甘えて努力を怠ってきたのだと思います。これだけ高いブランド力のある北海道、何かやろうと思えばできないはずはありません。
食料関係でも、北海道ブランドを活用して高品質で安心なものをつくって販売する、観光でも、おおがかりなエコツアーを実施するとか、バイオ関連の企業を育てたり、誘致したり、さらには、宇宙産業の企業を育てたり、誘致したり、漁業に関しても、大規模な海洋牧場を設立するとか、いろいろやろうと思えばかなりのことができると思います。北海道は、自治体も企業人も、北海道の良いブランドの上に胡坐をかいて、何もしてこなかったというのが実体なのではないかと思います。結構前にあった、小樽の鮨屋の胡桃沢事件の問題もこれと関係があるような気がします。
■生産性の高いテクノロジストの養成と維持が鍵
北海道は、まずは10年~20年かけて、産業構造の転換を図るべきだと思います。それから、産業構造の転換を図るにしても、それを支えるための人材がいなければ不可能です。だからこそ、そうした産業に適した人材を育てることも重要になって来ると思います。とにかく、北海道という高付加価値のブランドを最大限に生かすように産業構造転換を図るべきです。
特に人材育成に関しては、高卒の人たちを最大限に生かせるように、テクノロジストを多数養成できる体制を整えるべきであると思います。日本は、完全に知識社会に突入してから、すでに10年くらい担っていると思います。知識社会においては、肉体労働はどんどん少なくなり、知識労働が増えていきます。高卒で就職する人は、すべからくテクノロジストになれるような教育体制を樹立すべきです。
本当は、高校教育でそのような場を提供すべきであるとは思いますが、高校では基本的なことを教えるの精一杯で、どうしても、職業訓練までは手が回らないと思います。また、専門学校では、技術教育に偏り勝ちです。
新たな学校では、職業そのものの訓練ではなく、社会人としての心構えや、仕事上のコミュニケーション(基礎的なコミュニケーションのほかに高度なネットワークによるコミュニケーションを含む)やチームワーク(リーダー、フォロワーの両方の役割を果たせチームに貢献できる)ができるように一人前の社会人としての訓練を実施すべきと思います。
なによりも、個々人の弱みに立脚するのではなく、あくまでも強みに立脚した教育を実施すべきです。そうして、そのような学校では社団法人などのNPOにより、設立し、寄付金なども募り、授業料は無料か低廉にするのが望ましいです。さらに、提携している会社に優先的に人材を派遣できる体制を整えるべきです。
また、こうした学校では、新規の高卒だけではなく、大卒でも大学院卒でも、また、一般社会人も受け付けるべきです。知識社会においては、学校で習った知識など5年もたてば、陳腐化します。だから、希望すれば、誰もが受講できるようにします。
まずは、どんなことがあっても、高校を卒業したら必ず進むべき道があるようにしてあげることが肝要だと思います。学校を卒業したとたん、自分は世の中から必要とされていないと思わせるようなことだけは、避けるべきです。ただし、彼らにもいまは、知識社会に突入してしまったため、強烈な競争社会に突入してしまっていることは、周知徹底すべきと思います。
知識社会においては、知識は容易に移転できます。だから、新たな知識などすぐに陳腐化します。皮肉なことに、知識社会において、知識そのものは競争要因にはなりません。なぜなら、知識は容易に移転可能だからです。真の競争要因は、知識労働者の生産性であり、知識労働者の中でも特に大勢を占めるテクノロジストの生産性です。高度なテクノロジストを数多く輩出させ、さらに、それらの生産性を維持するようなインフラをつくりだすことができれば、何でもできます。北海道はそれを目指すべきです。
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