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2016年4月22日金曜日

【お金は知っている】菅直人政権時の無為無策を繰り返してはいけない 増税は論外、公共投資を粛々と―【私の論評】熊本震災復興は復興税ではなく国債発行を!東日本震災復興の過ちを繰り返すな(゚д゚)!

【お金は知っている】菅直人政権時の無為無策を繰り返してはいけない 増税は論外、公共投資を粛々と

九州の熊本・阿蘇地方の地下奥深くから入った亀裂は四国、本州へと伸びる兆候を示している。この美しい国土は荒々しい地球の営みの賜物(たまもの)である現実を改めて知らされた。

であれば、なおさらのこと、わが国では人々の安全と利便を確保するインフラの修復と再整備が世界でも抜きんでて重要だ。その役割は主として政府が受け持つ。

グラフは1995年1月の阪神淡路大震災と2011年3月の東日本大震災以降の公共投資と国内総生産(GDP)の前年比実質増減率を比較しながら推移を追っている。これをみると、当時の政権がどのくらい迅速に震災後の復旧に当たったか、成果はどうか、その結果、景気はどうなったかの見当がつく。

阪神淡路大震災当時は自民、社会、新党さきがけの連立による村山富市(社会党出身)政権で、震災当初の対応は大きくもたついた。しかし、震災の3カ月以降はインフラ復興・復旧のための公共投資が着々と進められるようになった。公共投資による経済への波及効果で景気のほうは下支えされていく。

対照的なのが東日本大震災時である。民主党の菅直人政権は4月に有識者による「復興構想会議」という首相の諮問機関を立ち上げたが、主要議題は復興のための財源をどうするかだ。同会議は財務官僚に牛耳られ、増税が真っ先に話し合われた。
伊藤元重(左)と伊藤隆敏(右)
 これに合わせて、財務省の受けの良い東大の伊藤元重、伊藤隆敏両教授が復興財源のための消費税増税を提唱し、日経新聞の「経済教室」欄を通じて主だった大学教授から賛同の署名を集めた。民主党政権は復興財源を所得税・法人税増税、そして消費税増税構想を12年の3党合意へと結実させていく。

肝心の公共投資はどうか。遅々として進まず、わずかに伸びたのは翌年になってからだが、それも一時的だった。「福島原発事故処理に手間取った」とか、「急激な復旧工事のために人手不足になった」などの言い訳はあるだろうが、データが示すのは公共投資の驚くべき停滞ぶりである。戦後未曾有の大災厄に対し政権の無為無策はおろか、政権が大震災後の大災害を引き起こしたと批判されても仕方あるまい。


もともと「コンクリートから人へ」という触れ込みで政権を奪取した民主党は公共投資をネガティブにとらえ、その削減を財務官僚に丸投げしていた。財務官僚は渡りに船とばかり、菅政権、続いて野田佳彦政権を洗脳し、増税と緊縮路線に乗せた。経済が停滞するのは当たり前で、実質ゼロ成長が続いていく。

今回の熊本大震災では、以上の失敗の教訓を安倍晋三政権がどう生かすかである。危機対応はさすがに素早いし、自衛隊の出動、米軍の協力とぬかりない。

財務官僚はどうか。非常識にも、復興財源のためにも予定通り消費税増税せよという世論誘導を仕掛けるのだろうか。今回はさすがに御用学者や御用メディアは沈黙しているのだが。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】熊本震災復興は復興税ではなく国債発行を!東日本震災復興の過ちを繰り返すな(゚д゚)!

熊本震災の惨状
震災からの復興を復興税で賄うなど、本当に言語道断のとんでもないやり方です。このようなことをした国など古今東西を問わず、あのときの日本以外には存在しません。これは、はっきり言い切ります。

震災からの復興には通常は、建設国債などの国債で賄われるのが普通です。建設国債とは、財政法第4条において「公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」と規定されており、この規定に基づいて、建設国債が発行できるとしています。四条国債という別名は財政法第4条を根拠にしていることからです。

建設国債が財政法で発行が可能なのは、建設される公共施設は後世にも残って国民に利用できるためです。建設国債は、後世に残らない事務経費や人件費に充てることはできません。日本では建設国債は1966年から発行されています。2000年8月3日、森喜朗内閣下で、IT関連費等も建設国債で調達できるように財政法4条を見直す方針が決められました。

なぜ、復興のための財源には、復興税などの税金ではなくて、建設国債などの国債が用いられるかといえば、それは世代間の負担の格差を平準化するためです。復興税などの税で震災などの復興を賄うとすれば、震災など受けた当の世代にばかり負担がしわ寄せされるからです。

こんなことは、経済学を学んだ人なら、すぐ間違いとわかる政策です。上で説明したように、課税の平準化理論というものがあり、例えば百年の一度の災害であれば、100年債を発行して、毎年100分の一ずつ負担するのが正しい政策です。

復興税で復興を賄うとすれば、後の世代のために、震災などで大きな被害を受けた現在の世代だけが、復興のための税を負担するということになり、その負担はあまりに多すぎます。だからこそ、震災などの自然災害などの大規模な災害のときには、建設国債などの国債で賄うのが常識です。

こんなことは、別にマクロ経済学など学んでいなくても、常識で理解できる範囲です。にもかかわらず、結局上の記事のように、復興財源は、復興税と消費税で賄うなどというとんでもないことが、企図され、実行に移されたのです。

復興税の概要はどのようなものだったか、以下にチャートを掲載します。


デフレの真っ最中で、しかも大規模な震災と津波による被害に見舞われているときに、こんな愚かなことが実行され、その後8%増税も実行されたわけですから、いつまでたっても、デフレからなかなか脱却できないのは、当たり前のことです。

田村秀男氏によるブログ冒頭の記事の内容のような記事は、以前にもこのブログに掲載しました。その時は、まだ熊本地震が発生していないときでした。その記事のリンクを以下に掲載します。
増税勢力はこうして東日本大震災を「利用」した~あの非情なやり方を忘れてはいけない―【私の論評】財務省、政治家、メディアの総力を結集した悪辣ショック・ドクトリンに幻惑されるな(゚д゚)!
東日本震災の被災地にかがみこむ若い女性
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では、復興税制を推進したり、賛同したりした愚かな経済学者どものリスも掲載しました。この経済学者どもは、日本では主流といわれる、東京大学を頂点とした、日本の経済学主流派のグループです。

本当に情けないです。財務省主導の増税キンペーンにすっかりのせられて、復興税なる奇妙奇天烈、摩訶不思議な税を導入し、それだけにあきたらず、8%増税、10%増税まで提唱したというのですから、もう、世も末です。

財務省の頼みとあらば、まともな経済学説を曲げてでも、ありえないような経済政策を導入する片棒をかつぐというのですから、まともではないです。

この記事でも、掲載してありましたが、東日本大震災の復興が満足に進んでいません。その上、今度は熊本地震です。


多くの民間人や、芸能人や、一般の人からも、熊本復興のために様々な考えが表明されています。しかし、こういう善意によるせっかくの試みも、政府の復興への対応が、まずければ全体として停滞してしまうことになります。

財務省や、上記の頭のいかれた経済学者どは、熊本地震の復興にも、復興税の導入とか、10%増税などといいかねません。このような稚拙な言論に騙されるべきではありません。

それは、全くの間違いです。8%増税でも甚大な被害があったにもかかわらず、さらなる熊本のための復興税導入とか、10%増税どしてしまえば、その結果は破滅的なことになります。

熊本の復興は、そんなことをさせるわけにはいきません。阪神淡路大震災以上の復興政策を実行するべきです。そのためには、復興には建設国債などの国債を用いて対処すべきです。償還期間は最低でも数十年にすべきです。

これ以上国債発行などというと、将来の世代の負担に押し付けることになるという、これまた、財務省の洗脳された人々が、財政破綻するなどとのたまったり、信じこんだりするでしょうが、それは全くの間違いであることも、このブログで掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
いまだはびこる国債暴落説と財務省の説明を妄信する人たち ―【私の論評】財政破綻などしないのは常識で理解できるのに、それができない馬鹿真面目共が多すぎ(゚д゚)!
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に国債が暴落する可能性はかなり低いことを示した部分のみ掲載します。
   日本の現状をいえば、グロス (総合計)の債務残高(大部分が国債)は1100兆円程度であるが、ネット(正味)でみれば500兆円で、GDP比で100%程度。さらに、日銀も含めた連結ベース(経済学でいえば統合政府ベース)の債務は200兆円、GDP比では40%程度である。この程度であれば、先進各国と比較しても、それほど悪い数字ではない。 
 ちなみに米国ではネットでみてGDP比80%程度、統合政府ベースでみれば65%程度。英国ではネットで見てGDP比80%程度、統合政府ベースで見て60%程度である。 
 こうした基礎データが頭に入っていないとしたら、高度な議論をしているようにみえても上滑りになってしまう。
 財政破綻の文献をみれば、国債の投資家が国内か海外かは、破綻するかどうかと基本的には無関係である。日本国債の外国人保有比率が上昇したことで、金利の振れ幅が大きいとの指摘も破綻問題とは関係がない。国債残高をネットや統合政府でみれば、たいした数字ではないので、暴落の可能性はさほど高くないだろう。
日本の借金は、このようにさほどでもありません。日本の国債は、暴落するどころか、金利はゼロに限りなく近く、場合によってはマイナス金利になることもあります。このような状況では、国債が暴落するなどのことは考えられず、復興に国債をあてたとしても、財政破たんするとか、将来の世代に過大なつけを回すなどの考えは、当てはまりません。

以上のようなことから、今回の熊本震災による復興は復興税ではなく国債によるべきであり、東日本震災復興の過ちを繰り返すべきではありません。

今後の政治課題は、10%増税は見送りは当然のこととして、熊本震災復興そうして、未だ停滞している東日本大震災復興にも、国債を用いて十分な財源を確保して、一日も早く復興を成し遂げることです。

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2016年3月14日月曜日

増税勢力はこうして東日本大震災を「利用」した~あの非情なやり方を忘れてはいけない―【私の論評】財務省、政治家、メディアの総力を結集した悪辣ショック・ドクトリンに幻惑されるな(゚д゚)!

増税勢力はこうして東日本大震災を「利用」した~あの非情なやり方を忘れてはいけない
増税勢力は、震災後すぐ稼働した

東日本大震災から5年がたった。3月11日のテレビではこれまでの5年を振り返った放送が多かった。

大震災の状況は大いに気になったが、その過程で、当時の菅政権が野党の自民党・谷垣禎一総裁と組んで「復興増税を企んでいる」という情報が入ってきた。

これは経済学を学んだ人なら、すぐ間違いとわかる政策だ。課税の平準化理論というものがあり、例えば百年の一度の災害であれば、100年債を発行して、毎年100分の一ずつ負担するのが正しい政策である。その当時、大震災という重大事に何を考えているのかと大いに憤った記憶がある。

そこで大震災直後、2011年3月14日付けの本コラムで「「震災増税」ではなく、「寄付金税額控除」、「復興国債の日銀直接引受」で本当の被災地復興支援を 菅・谷垣『臨時増税』検討に異議あり」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2254)を書いた。

このときの増税勢力は勢いがよかった。大震災で、多くの人が被災者を助けたいという「善意」を悪用して、復興増税は結果として行われた。

経済学者も情けなかった。そのとき、経済セオリーを主張する者はほとんどおらず、逆にセオリー無視の復興増税を推進した人たちのリスト http://www3.grips.ac.jp/~t-ito/j_fukkou2011_list.htm)は以下の通りだ。

「震災復興にむけて」
共同提言者・賛同者(2011年6月15日10:00現在)(敬称略)

伊藤 隆敏 (東京大学)
伊藤 元重 (東京大学)
浦田 秀次郎 (早稲田大学)
大竹 文雄 (大阪大学) 
齊藤 誠 (一橋大学)
塩路 悦朗 (一橋大学) コメント土居 丈朗 (慶応義塾大学)
樋口 美雄 (慶応義塾大学)
深尾 光洋 (慶応義塾大学)
八代 尚宏 (国際基督教大学)
吉川 洋 (東京大学)

(★印のついた方は「第3提言の賛成は留保」)
青木 浩介 (東京大学)
青木 玲子 (一橋大学)★ コメント赤林 英夫 (慶應義塾大学)
安藤 光代 (慶應義塾大学)
井伊 雅子 (一橋大学)
飯塚 敏晃 (東京大学)
池尾 和人 (慶應義塾大学)
生藤 昌子 (大阪大学) コメント石川 城太 (一橋大学)
市村 英彦 (東京大学)★ コメント伊藤 恵子 (専修大学)
岩井 克人 (国際基督教大学)
祝迫 得夫 (一橋大学)
岩壷 健太郎 (神戸大学)
宇南山 卓 (神戸大学)
大来 洋一 (政策研究大学院大学) コメント大野 泉 (政策研究大学院大学) コメント大橋 和彦 (一橋大学) コメント大橋 弘 (東京大学) コメント岡崎 哲二 (東京大学) コメント小川 英治 (一橋大学)
小川 一夫 (大阪大学)
小川 直宏 (日本大学)
翁 邦雄 (京都大学)★ コメント翁 百合 (日本総合研究所)
奥平 寛子 (岡山大学)
奥野 正寛 (流通経済大学)
小塩 隆士 (一橋大学)
小幡 績 (慶應義塾大学)
嘉治 佐保子 (慶應義塾大学) コメント勝 悦子 (明治大学) コメント金本 良嗣 (政策研究大学院大学)
川口 大司 (一橋大学) コメント川﨑 健太郎 (東洋大学) コメント川西 諭 (上智大学) コメント北村 行伸 (一橋大学)
木村 福成 (慶應義塾大学)
清田 耕造 (横浜国立大学)
清滝 信宏 (プリンストン大学)
國枝 繁樹 (一橋大学)
久原 正治 (九州大学)
グレーヴァ 香子 (慶應義塾大学) コメント黒崎 卓 (一橋大学)
黒田 祥子 (早稲田大学)
玄田 有史 (東京大学)
鯉渕 賢 (中央大学)
小林 慶一郎 (一橋大学) コメント小峰 隆夫 (法政大学)
近藤 春生 (西南学院大学)
西條 辰義 (大阪大学) コメント櫻川 幸恵 (跡見学園女子大学)
櫻川 昌哉 (慶應義塾大学) コメント佐々木 百合 (明治学院大学) コメント佐藤 清隆 (横浜国立大学)
佐藤 泰裕 (大阪大学)
澤田 康幸 (東京大学)
清水 順子 (専修大学) コメント新海 尚子 (名古屋大学) コメント鈴村 興太郎 (早稲田大学 / ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ) コメント清家 篤 (慶應義塾大学)
瀬古 美喜 (慶應義塾大学)
高木 信二 (大阪大学)
高山 憲之 (一橋大学)
武田 史子 (東京大学)
田近 栄治 (一橋大学) コメント田渕 隆俊 (東京大学)
田村 晶子 (法政大学)
田谷 禎三 (立教大学)
中条 潮 (慶應義塾大学) コメント筒井 義郎 (大阪大学)
常木 淳 (大阪大学)
釣 雅雄 (岡山大学)
中田 大悟 (経済産業研究所)
中村 洋 (慶應義塾大学) コメント長倉 大輔 (慶應義塾大学)
畠田 敬 神戸大学
林 文夫 (一橋大学)
原田 喜美枝 (中央大学)
深川 由起子 (早稲田大学) コメント福田 慎一 (東京大学)★
藤井 眞理子 (東京大学)
藤田 昌久 (経済産業研究所)
星 岳雄 (UCSD)
細田 衛士 (慶應義塾大学)
細野 薫 (学習院大学) コメント堀 宣昭 (九州大学)
本多 佑三 (関西大学) コメント本間 正義 (東京大学)
前原 康宏 (一橋大学)
松井 彰彦 (東京大学)★
三浦 功 (九州大学)
三重野 文晴 (神戸大学)
三野 和雄 (京都大学)
森棟 公夫 (椙山女学園)★ コメント柳川 範之 (東京大学)
藪 友良 (慶應義塾大学)
山上 秀文 (近畿大学) コメント家森 信善 (名古屋大学)
吉野 直行 (慶應義塾大学)
若杉 隆平 (京都大学)
和田 賢治 (慶應義塾大学)
渡辺 智之 (一橋大学)

以 上
増税派の責任は重い

大震災直後の増税勢力は、1ヶ月後の4月14日、復興会議の五百旗頭真(いおきべまこと)議長の挨拶のなかに「増税」を盛り込ませている(2011年4月18日付け本コラム「あらためていう。「震災増税」で日本は二度死ぬ 本当の国民負担は増税ではない」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2463)。

5年たった現在、そのことがどう評価されているのか。今年3月12日に放映されたNHKスペシャル『“26兆円” 復興はどこまで進んだか』は興味深かった(http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20160312)。インタビューに応じた五百旗頭氏が、開口一番「復興増税がよかった」といったのだ。これにはかなり驚いた。

政府としては復興予算を確保すればいいので、その財源を一時的な税にするか国債発行で長期的な税にするかは、財務省が気にする話でしかない。一時的な税で賄おうとすれば、当面の復興予算が少なくなる可能性がある。復興会議は人々の不安をぬぐうような復興予算を確保するのが仕事なのに、財務省の走狗のような増税に荷担した責任は重い。

こうした「常識」は、数少ない識者の間では共有されていた。特に、筆者の近くにいた故・加藤寛先生は明確に意識していた。加藤先生は実は岩手県出身である。その関係で、大震災後、復興構想会議のメンバーになってほしい、という打診があったという。しかし会議の目的が「増税のため」と知った加藤先生は、「復興のための増税など絶対に賛成できない」と断った、と筆者に語ってくれた。

この復興増税は、震災復興をホップとして、次の消費増税をステップ、さらなる消費増税をジャンプとして、大増税を画策していた。これについては、2011年6月20日付け本コラム「「復興」「社会保障」「財政再建」の三段階増税を許すな 新聞が報じない増税反対に集まった 超党派議員211人」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/9228)を参照してもらいたい。

このとき、この増税に反対した211人の中で、自民党で「増税によらない復興財源を求める会」会長をしていたのが、今の安倍首相である。先の8%から10%への消費増税を見送った背景には、こうした野党時代の活動もあるわけだ。

増税勢力は、今のところホップは成し遂げたが、ステップの途中段階で止まっている。もし民主党政権が続いていたら、今頃ステップ段階に突入し、日本経済は大変なことになっただろう。

復興が進まない理由

先のNHKスペシャル『“26兆円” 復興はどこまで進んだか』を見て、興味深かったのは、いろいろな地域でそれぞれ工夫をして復興を進めているが、そのやり方の差が大きいことだった。例えば、高台移転を進めるにしても、大規模増税で大型予算を組んで進めるよりも、土地利用をうまくやって、安く早くできた地域もあった。

これを見て思ったのが、国が主導するのは資金集めだけで十分であり、その執行は地方任せにした方がいいということだ。

筆者は、2011年3月28日付け本コラムで「財務省主導の「復旧」ではダメ!「復興」は新設する「東北州」に任せ、 福島に国会と霞ヶ関を移転せよ 円高に苦しんだ阪神大震災の過ちを繰り返すな」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2330)を書いた。

被災した3県(岩手県、宮城県、福島県)が集まれば、「道州制」ができるという道州特区法(道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律)を活用して、復興を進めるというアイディアだ。

残念ながら、民主党政権は地方分権の考え方がなく、代わりに中央集権の象徴といえる復興庁が作られた。中央主導の復興が予定通り進んでいないのは、NHKスペシャルを見てもわかる。

また、復興庁のホームページでも確認できる。復興施策の工程表(2015年7月作成)があり、公共インフラのところをみると、①海岸対策、②河川対策、③水道施設、④下水道対策、⑤交通網(道路、鉄道、空港、港湾)、⑥農地・農業用施設、⑦海岸防災林の再生、⑧漁港・漁場・養殖施設・定置網、⑨復興住宅(災害公営住宅等)、⑩復興まちづくり、⑪土砂災害対策、⑫地盤沈下・液状化対策、⑬災害廃棄物の処理、⑭都市公園の各項目について、現状と今後の予定が書かれている。

その中で、「完了」とされているものは少ない。⑤交通網のうち高速道路、仙台空港、八戸港、久慈港、茨城港、鹿島港、木更津港、千葉港、⑩復興まちづくりのうち、医療施設、公立社会教育施設にみられるだけだ。

ほとんどの項目は、2018年度以降に完了とされている。ほぼすべての項目の完了年度が同じであることはかえって不自然であり、あくまで「目標」であることを示唆している。

『報ステ』にはまたガッカリ

最後に、3月11日の『報道ステーション』はまたやらかした。学者のいう「福島の甲状腺がんの発生は、原発事故前の日本全体に比べて事故後は20~50倍」と報じて、「甲状腺がんと原発事故 専門家で割れる関連性」という見出しを付けながらも、甲状腺がんが原発事故で多発したというイメージを植え付けている。

この問題は、かなりはっきりしている。ごくわずか(おそらく1名)の学者が「原発事故で甲状腺がんの発生が多くなった」といっているだけで、その学者の論文には不適切な統計処理があることも指摘されている。

きちんとした取材をしたマスコミであれば、甲状腺がんが福島で多くなっていることについて、原発事故が影響しているという「被曝影響説」をとっている人はほぼ一人で、残りの学者は過剰診断説である、と分かるはずだ。

過剰診断説とは、他の地域では「何か症状が出ている人」が診察を受けて、その結果ガンの割合がでてくるが、福島県の場合すべての人を対象に診察するため、ガンの割合が高めにでる、ということだ。他の地域で、福島県と同様な方法で調査したら、福島県よりも数値が高かったというデータもある。

マスコミは、二つの意見があるときに公平に扱うべきということを逆手にとって、甲状腺ガンについて「被曝影響説」にバイアスをかけている報道している。何が原因かはっきりしないときであれば、こうした両論を平等に扱うのはかまわないが、5年間のデータが蓄積していると、こうした形式的平等主義は妥当とはいえない。

そういえば、増税については、それが経済を痛めつけることになるのはデータから明らかであるが、この点もマスコミには「増税が必要」とのバイアスが残っているためか、増税礼賛記事が多い。勝手な思い込みでの報道は社会に有害である。


【追記】おかげさまで2月に発売された私の本の重版が決まった。この場を借りて御礼申し上げたい。 高橋洋一

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【私の論評】財務省、政治家、メディアの総力を結集した悪辣ショック・ドクトリンに幻惑されるな(゚д゚)!

大震災の復興を増税で賄うなど、まともな国家では絶対にやらない、禁忌ともいうべき政策です。近代以降、震災や自然災害の復興のため、増税した国など、東日本大震災の復興における日本だけです。復興税制はそれほど異常なことです。通常は建設国債などで賄うものです。

これは、いわゆるショック・ドクトリンとも呼ぶべき、とんでもない蛮行としか言いようがありません。

ショック・ドクトリンとは、カナダのジャーナリスト、ナオミ・クラインが2007年に著した書籍です。マイケル・ウィンターボトムによって2009年にドキュメンタリー映画化されました。

ナオミ・クライン
クラインは、2007年9月に The Shock Doctrine: the Rise of Disaster Capitalism ; Metropolitan Books, 2007, ISBN 0805079831 を出版。同書は三十数か国語に翻訳され、日本語版は2011年9月に刊行されました。

彼女は、ケインズ主義に反対して「真の変革は、危機状況によってのみ可能となる」と述べるなど徹底した市場原理主義を主張したシカゴ学派 (経済学) のミルトン・フリードマンを批判、こうした主張を「ショック・ドクトリン」と呼び、現代の最も危険な思想とみなしている。そして、近年の悪名高い人権侵害は、反民主主義的な体制による残虐行為と見るばかりでなく、民衆を震え上がらせて抵抗力を奪うために綿密に計画され、急進的な市場主義改革を強行するために利用されてきた側面に注目すべきと説く。

「ショック・ドクトリン」の最初の応用例は、1973年の軍事クーデターによるアウグスト・ピノチェト政権下のチリであるとしています。シカゴ学派は投資家の利益を代弁、「大きな政府」や「福祉国家」をさかんに攻撃し、国家の役割は警察と契約強制のみであるべきで、他はすべて民営化し市場の決定に委ねよと説いていましたが、そのような政策は有権者の大多数から拒絶され自国で推進することができず、独裁体制下のチリで実行に移されたと述べています。


チリでは無実の一般市民の逮捕・拷問・処刑が相次ぐばかりでなく、「惨事便乗型資本主義」がはびこって、「小さな政府」主義が金科玉条となり、公共部門の民営化、福祉・医療・教育などの社会的支出の削減が断行され、多くの国民が窮地に追い込まれました。

以後、天安門事件(1989年)、ソ連崩壊(1991年)、アメリカ同時多発テロ事件(2001年)、イラク戦争(2003年)、スマトラ島沖地震 (2004年)による津波被害、ハリケーン・カトリーナ(2005年)といった、政変・戦争・災害などの危機的状態を挙げ、「惨事便乗型資本主義」(「惨事活用資本主義」、「災害資本主義」、「火事場泥棒資本主義」)はこれにつけこんで、人々がショック状態や茫然自失状態から自分を取り戻し社会・生活を復興させる前に、過激なまでの市場原理主義を導入し、経済改革や利益追求に猛進してきた、といいます。

ミルトン・フリードマン
この書籍は、当時一世を風靡して、一時日本でも多くの人々がミルトン・フリードマン氏を悪者のように思っていました。この書籍を読んだり、他の書籍などを読んだ結果、私もなんとなくそのような感想を持っていました。

しかしながら、フリードマン氏の考えを、その後きちんと学ぶ機会にめぐまたことがあり、ナオミ・クライン氏のフリードマン氏に対する見方は、極端にすぎることが理解できました。

フリードマン氏に関する、正当な評価を知りたい方は、是非とも以下の動画を御覧ください。ちなみにこの動画のシリーズ、マクロ経済に関して、てつとり早く知りたいと思っている方々にはうってつけです。平易にわかりやすく説明しています。



しかしながら、政変・戦争・災害などの危機的状態を挙げ、「惨事便乗型資本主義」(「惨事活用資本主義」、「災害資本主義」、「火事場泥棒資本主義」)はこれにつけこんで、人々がショック状態や茫然自失状態から自分を取り戻し社会・生活を復興させる前に、過激なまでの市場原理主義を導入し、経済改革や利益追求に猛進してきたという下りは、まさに、東日本大震災につけこんで、復興税制というとんでもない制度を導入してしまったこととダブります。

いかに、日本の増税派の力が強よかったにしても、復興税制などのとんでもない、制度を導入するには、それこそショック・ドクトリンのように、このような災厄がなければ、とてもできなかったことでしょう。本当にとんでもない連中です。

財務省と、その走狗に成り果てた、ブログ冒頭の記事のリストに掲載されている経済学者の連中が、普段ではとても通用しない理論で、政治家、マスコミをたぶらかして、まるで火事場泥棒のように無理やり復興増税制を導入してしまったのです。以下に当時の復興税の内容をまとめたチャートを掲載しておきます。


上の動画をご覧いただければ、よくご理解いただけると思いますが、フリードマン氏は決して悪人ではないですが、この復興税制を導入を推進した、財務省やその走狗の経済学者どもは、はっきりと悪人と言って良いです。これらに、騙された与野党政治家もまともではないですし、マスコミもはっきりいって愚鈍です。

この時に「増税反対に集まった 超党派議員211人」はまともです。そうして、このとき、この増税に反対した211人の中で、自民党で「増税によらない復興財源を求める会」会長をしていたのが、今の安倍首相ということで、やはり、安倍総理は当時からまともだったということです。

財務省やそれらの走狗となった経済学者どもは、増税の理由を社会保障と税の一体改革とか、財政赤字の解消などとしていますが、それは表向きであり、その本当の理由は財務省の省益のためです。まずは、財務省の税金の配賦の権限を強くするためですが、さらになんのためにそれをするかといえば、財務高級官僚のハッピー・リタイヤメント等のためです。

ハッピー・リタイアメント (幻冬舎文庫)


こんなもののために、復興税制など導入されてはたまったものではありません。こんなことですから、財務省主導による復興などうまく行くはずがありません。国は金の工面をして、復興は地元に任せるのが一番です。無論、資金の遣い方など、監査するのは国が実施すべきかとは思いますが、政府が直接復興を手掛けるとなると、うまくできるはずもありません。

それに、このようなからくりにも気付かず、古今東西に見ない、摩訶不思議、奇妙奇天烈な復興税制を批判することもしないマスコミも、本当に程度が低いというか、愚鈍極まりないです。

こんな復興税制を無理やり導入した、増税勢力はその後も、勢いを増し、どう考えてもデフレから完全に脱却していなかった、平成14年の4月から、8%増税を導入してしまいました。これには、財務省やブログ冒頭のリストに掲載されている経済学者、新聞なども加担して、日本経済に与える影響は軽微であること、増税しなければとてつもない事態に追い込まれるなどの理由を並べ立て、強力な増税キャンペーンを展開しました。

特に2013年の新聞報道には、ひどいものがありました。2013年の9月には、大手新聞がこぞって、安倍首相は増税を決断したと報じました。報道に間違いがなければ、安倍首相は11日から20日にかけて、少なくとも4度(11日、12日、18日、20日)にわたり「決断」を繰り返したことになります。

しかし、総理は、10月1日の発表の前までは、自らの肉声で「決断」の意思を表示したわけではありません。仮に会見等の場で表明していれば「~を表明した」と報じられるし、一部の関係者に伝達していれば「決断したことを~に伝えた」と報じられるのが普通です。しかし、昨年はどのメディアも「表明」「伝達」いずれの事実も報じておらず、「意向を固めた」「決断した」といった表現で報じていました。

 安倍総理は2013年10月1日に8%増税の決断を公表したが、新聞報道が正しいとすれば、安倍総理は
9月11日から20日かけて少なくとも4度にわたり「増税の決断」を繰り返したことになる


それと、テレビも、ブログ冒頭の記事で高橋洋一氏が、「報ステ」を批判しているようにとんでもない報道を繰り返していました。このような報道ぶり、とんでもないことです。このブログでは、以前福島の高校生たちが、独自の調査をして、福島県内の被ばく量は、「国内外と差はない」と結論づけていました。そうして、このレポートが、英学術誌に論文として掲載される運びになったことを掲載しました。

メディアは報道するならこの高校生たちのように感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行えと言いたいです。

マスコミが、まともな報道をせずに、とんでもない報道を繰り返せば、多くの人々が幻惑され、間違った観念を持ったり、間違った道を選択してしまいます。

これらも、今から考えると、これらは、ことごとくショツクドクトリンのようなものと思います。ジャーナリストのナオミ・クラインは、この状況を「ショック・ドクトリン再び」というような書籍にでもまとめると良いと思います。


これは、ジャーナリストとしては、格好の素晴らしい材料だと思います。今度は、ミルトン・フリードマンを悪者にしたてるというようなことはやめ、日本のような国でも、まともな経済理論のまるで反対の復興税制など導入し、その後も8%増税などという愚かな政策が導入されたことを書籍にまとめるべきです。

日本では、TPPをショック・ドクトリンとみなす人もいますが、そんなことはないと思います。私自身は、ショック・ドクトリンのようなことは実際にこの世の中に存在するとは思いますが、ミルトン・フリードマンらを悪者に仕立てるのは間違いだと思います。フリードマン氏の理論は悪者たちに、悪用されたということです。

誰が、悪者かといえば、それは無論、日本の増税勢力のような連中です。震災などを機に、とんでもない経済政策を導入するような連中こそ悪人です。自分たちの考えを通すために、無理やりに様々な経済理論を逆手に利用するような連中こそ大悪人です。


そうして、その書籍には、最近の中国の南シナ海での、暴虐ぶりにより、現状変更を試みる中国に関しても、ショック・ドクトリンとして取り上げるべきと思います。そのほかにも、災厄や戦争などを背景に現状変更を実行したりしようとする、日本の財務省、経済学者、メディアの仲間は世界中に多く存在すると思います。

このような財務省をはじめとする多くの官僚や、政治家、マスコミによる苛烈なショック・ドクトリンに8%増税では負けてしまった安倍総理も、15年秋の10%増税ではさすがに、その手には乗らず、衆院を解散して、10%増税見送りも公約として総選挙に打って出ました。そうして、選挙に大勝利して、増税は見送られました。

そうして、来年4月からの、10%増税に関しては、安倍総理は周到な準備をして、見送りをするようです。それに関しては、このブログにも以前掲載したことがあります。以下の【関連記事】の項目に加えておきますので、まだご存知のない方はぜひご覧になってください。

今後安倍総理は無論のこと、私達も、悪辣ショック・ドクトリンになど幻惑されないように、物事を正しく理解していくべきものと思います。特に、重要なことに関しては、識者、マスコミ、政治家、官僚の語っていることを鵜呑みにせずに、自分の頭で考えて、結論を出すべきものと思います。特に、不安を煽る連中のほとんどは、裏に魂胆があり、それこそ、ショック・ドクトリンのように、恐怖を与えて、自分の思う方向に操作しようとしているかもしれないと疑うべきです。

【関連記事】

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