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2016年12月29日木曜日

【日本の解き方】1人当たりGDPが世界20位 ドル建てに一喜一憂不要だが、デフレによる経済停滞は深刻―【私の論評】来年も、馬鹿や政局利用のための経済珍説に騙されるな(゚д゚)!

【日本の解き方】1人当たりGDPが世界20位 ドル建てに一喜一憂不要だが、デフレによる経済停滞は深刻

日本の1人当たり名目GDP推移およびBRICs各国の水準(2015年)比較と円/米ドルの
為替レートの推移(期間 : 1960年~2015年)グラフはブログ管理人挿入以下同じ
 内閣府は22日、2015年の日本の1人当たり名目国内総生産(GDP)がドル換算で3万4522ドルだったと発表した。これは、経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国中20位にあたる。ちなみにGDPの総額では世界3位だ。

 基本的なことであるが、GDPについておさらいしておこう。GDPは一国の経済活動を付加価値ベースで明らかにする統計だ。名目値のままの名目GDPと、物価上昇を考慮し、それを除いた実質GDPがある。

 これらには「三面等価の原則」がある。生産面、分配面、支出面の3方向からみた値は同じで、分配面からみたGDPは、おおざっぱに言えば国民の所得の総額である。こうしてみると、1人当たりの名目GDPは、平均的な国民の名目所得といえる。


 こうした議論は自国通貨建てでは重要な意味がある。ドル表示でGDPが少なくなった、多くなったという議論は、所得をドル表示で見て、少なくなった、多くなったという議論と同じである。日本国内の法定通貨は円であるので、いくらドル表示で所得が少なくなっても、逆に増えても国民生活には直接的には関係がない。

 この意味で、そもそも自国経済を議論するときに、GDPや1人当たりGDPの他国通貨表示には意味はない。また、GDPがドル表示で少なくなっているという問題意識は、円高指向ともいえる。円高は円がドルに対して相対的に少なくなることで起こるが、モノに対しても相対的に過小になっていることが多く、デフレ指向にもなる。

 以上のことから、ドル建ての1人当たりGDPの数字をみて、一喜一憂するのはあまり意味がない。しかし、長い目で、その推移をみると、一定のインプリケーション(意味合い)がある。

 というのは、円高になると、形式的にドル建ての名目GDPは大きくなるが、その一方で円高・デフレで名目GDPを減少させている場合が少なくない。短期的には、前者のほうが大きいが、長い目でみれば両者はかなり相殺されるとみられる。ということは、長い目でみたドル建ての1人あたり名目GDPの推移、特に国際比較した日本の順番には一定の意味があるといってよい。

 1990年前後、日本の1人当たりGDPはOECD加盟国中トップクラスだった。ところが、失われた20年で、その地位は徐々に低下してきた。

 他の先進国で日本ほど順位を下げた国はなく、これは日本だけがデフレで経済成長が停滞した証しだろう。

 しばしば、この失われた20年間の要因として人口減少が挙げられるが、世界各国でみると人口と1人当たりGDPとの間には明確な相関がないことから、人口の要因ではなく、デフレというマクロ経済運営の失敗であった公算が大きい。何度も本コラムで指摘しているように、デフレ克服が日本経済再生のカギとなる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】来年も、馬鹿や政局利用のための経済珍説に騙されるな(゚д゚)!

上の記事を簡単にまとめると、国民1人あたりのGDPは短期で、ドル建てで他国と比較することは意味がないのですが、長期みると意味があるということです。その例として、日本は他の先進国と比較する順位を下げていますが、その原因は日本だけが長期デフレで経済成長が停滞したということです。

そうして、人口と1人あたりGDPとの間には相関関係はないということです。それは、以下のグラフをみても良くわかります。


上のグラフは、人口の増加率と1人当たりのGDP伸び率を示したものですが、両者の相関係数は0.09であり、全く相関関係はありません。人口減が、デフレの原因などとする見解はまったくあてはまりません。

さて、ドル建ての1人あたりのGDPの数字をみて、一喜一憂するのはあまり意味がないという格好の事例があります。その事例を以下に示します。

以下は、韓国の中央日報の記事です。
日本の1人当たりGDP、OECD加盟国で20位に下落…韓国が追い越す可能性
2016年12月23日09時31分  [ 中央日報日本語版]
日本の1人当たり名目国内総生産(GDP)が3年連続で減少したことが分かった。

22日、内閣府は2015年ドルで換算した日本の1人当たりGDPが3万4522ドルと集計されたと明らかにした。

これは、昨年より9.6%も下落したもので、2013年以来続いている減少傾向から抜け出すことができなかった。

日本の1人当たりGDPを経済協力開発機構(OECD)加盟国の他国に比べると、35カ国の中で20位だ。OECD加盟国のうち2位だった2000年に比べれば、15年間で18段階も下落した。

このように、日本の1人当たりGDPが次第に落ちているのは、物価の下落やデフレーションが長引いているためだとみられる。しかも、円安が進んでドルで換算した1人当たりGDPがより低下した。

これを受け、韓国が1人当たりGDPで日本を追い越す可能性があるという見通しも出ている。国際通貨基金(IMF)は、韓国の1人当たりGDPが2020年に日本と同様の水準である3万6000ドル台に増加するものと見込んでいる。特に、購買力平価(PPP)基準に1人当たりGDPは2018年に4万1966ドルと、日本の4万1428ドルを追い越すとの予想を明らかにした。

一方、昨年韓国の1人当たりGDPは2万7200万ドルと、OECD加盟国のうち22位となった。
ドル換算による日本、韓国、米国の一人あたりGDPの推移
韓国は、昨年OECD加盟国のうちで22位になっていたことをもって、日本を追い抜くかもしれないとしています。ひよっとするとそうなるかもしれません。しかし、ここで冷静に分析すれば、最近はウォン高、円安の傾向が著しいので、このようなことが起こっているだけであって、別に韓国経済が著しく成長しているとか、日本経済が著しく停滞しているということもありません。

もし、来年韓国の一人あたりのGDPが、日本のGDPを追い越すことがあれば、それは韓国経済が致命的な打撃を受けたという証左になるだけであり、韓国経済の好転を意味することにはならないでしょう。

韓国経済は昨年から断末魔の状況にありましたし、今年に入ってからもその状況は変わらず、とんでもない状況です。やはりドル建ての1人当たりの短期のGDPの推移をみて、一喜一憂するのは全くの間違いであることがわかります。

さらに、もう一つ事例があります。

それは、民主党政権時代と安倍晋三政権を比べて、ドル建ての1人当たりGDPで民主党時代の方が良かったという愚かな言説もありましたが、これはまったく意味がありません。なにしろ、日本人は円で生活しており、1人当たりの円建て名目GDPは安倍政権の方が高いです。安倍政権の方が民主党時代より経済パフォーマンスが良いのは、失業率などの雇用指標をみても明白です。

それは、以下のグラフを見ても容易に理解できることです。

f:id:kibashiri:20141118161710p:image

ドル建てによる、GDPの短期(数年)での国際比較は、あまり意味を持たないということです。これだけをもってして、経済に関する主張をすることは、全くの無意味であるということです。そんなことよりも、過去20年近くにもわたって、日本がデフレだったことのほうが、余程大問題です。

今年も、あとわずかになりました。来年も、また新たな手口で、政局利用や馬鹿による経済珍説が続々と出てくるでしょう。何しろ、今の日本では政治家も官僚も、メディアも、経済で大嘘をついても、全く責任も取らないし、取らされもしません。だから、無責任で出鱈目を放言し放題です。そうして、それを頑なに信じこむ人々も大勢います。私たちは、騙されないように、お互いに気をつけましょう。

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