2020年5月24日日曜日

自給自足型経済で“V字回復”日本の黄金時代到来へ! 高い衛生観念でコロナ感染・死者数抑え込みにも成功―【私の論評】今後も続く人手不足が、日本を根底から変える。普通の人が普通に努力すれば応分に報いられる時代がやってくる(゚д゚)!


     日本は強制力のない自粛要請でも感染拡大を
     抑え込んだ=9日、東京・原宿の竹下通り

 日本の新型コロナウイルス対策は、都市封鎖など強制力のある措置を取らなかったが、欧米などに比べて感染者数や死者数を抑え込んでいる。その理由を日本の歴史や日本人の衛生観念にあるとみるのは、国際投資アナリストの大原浩氏だ。緊急寄稿で大原氏は、コロナ後に世界経済が大きく変貌するなかでも、日本はV字回復を果たし、黄金時代を迎える可能性があると予測する。


 何があっても安倍晋三首相のせいにする「アベノセイダーズ」は、「モリ・カケ(森友学園、加計学園)」「サクラ(桜を見る会)」に続いて、ウイルスまで政権転覆画策の道具にしている。

 偏向メディアも「政府の対応が悪い」の一点張りだが、日本のウイルス対策は結果を見る限り、誇るべきものだ。PCR検査数が少ないから感染者数や死者が少なく報告されるという論調があるが、至近距離で粘膜を採取することで感染を逆に広げる恐れがある検査をやたらに増やすことは危険だ。「抗体検査」も正確性などの点からそれほど意味があるとは思えない。

 「超過死亡」という指標は、簡略化すれば「平年に比べてどれほど死者が増えたか」という数字だ。東京で2月に一時的に増えたが、全国的には目立った増加が見られない。検査の数がどうであろうと、はっきり確認できるほど死者は増えていないということである。

 日本が成功した要因はいろいろ考えられるが、日本人の衛生観念の高さは重要なものの一つだ。神社で参拝する前に手水(ちょうず)で手を洗う習慣は、古代に感染症が広まったときに始まったとされるし、火葬が早い時期に普及したのも死体からの感染を防ぐためであったと考えられる。

 靴を脱いで入る日本の家屋は土足で歩き回る欧米の家よりもはるかに清潔で、握手やハグと違って約1・5メートルの距離を維持できるお辞儀も優れた社会習慣だ。

 中古品市場が普及する前の日本人の「新品志向」も理由があったといえる。逆に言えば、これから急速に復活する「新品志向」で、シェアビジネスや中古品市場は大きな打撃を受けると思われる。

 また、エネルギー効率の面から機密性が低い日本家屋は非難されてきたが、風通しが良いのは、夏の暑さ対策だけではなく、ウイルス対策の面もあったと思われる。

 日本には、少なくとも聖徳太子の時代から約1400年の歴史を持つ「世界最古の国」として「社会的ノウハウ」の蓄積がある。まだ油断すべきではないし、第2波の可能性も高いが、ここまでの「成功の要因」は一般の日本国民の水準にあるといえる。強制的措置を伴わなかったにも関わらずこれだけの成果を残すことができたのは驚異的だ。

 経済面でも日本に追い風が吹いている。約260年間鎖国をしていた江戸時代に高度な文化・社会が生まれ、開国後、世界を驚嘆させるスピードで欧米諸国に追いついたのも、江戸時代の豊かな蓄積があったからである。

 新型コロナウイルス蔓延(まんえん)で強まる自給自足型経済に日本は向いている。学校では「貿易立国」と教えられてきた日本だが、貿易依存度は、近隣諸国に比べてかなり低い。

 不思議なことに、日本は冷戦時代に繁栄した。戦後の大不況で崩壊しかけた日本経済を救った1950年の朝鮮戦争は、東西冷戦の始まりでもあった。冷戦体制は89年のベルリンの壁崩壊で綻(ほころ)び、91年のソ連崩壊で決定づけられた。日本のバブルは90年頃崩壊し、グローバリズム進展の中で経済が低迷してきた。

 偶然の一致かもしれないが、感染症対策として国境を越えた人間の移動がこれからかなりの間制限されることなどを考えると、「自給自足」に強い日本経済の黄金時代がやってくると考えるのは合理的だ。ただし、日本のアキレス腱(けん)である食糧とエネルギーについては真剣に考えるべきで、それらの大生産国である米国との緊密な関係は極めて重要である。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。


 ■日本の低死亡率「新仮説」に注目

 日本の新型コロナウイルス対策は「PCR検査が少ない」「自粛措置が甘い」などの批判もあったが、欧米などに比べて死者数や死亡率がケタ違いに少ない。この謎について、京都大学大学院医学研究科の上久保靖彦特定教授と、吉備国際大学(岡山県)の高橋淳教授らの研究グループは「日本ではすでに新型コロナウイルスに対する集団免疫が確立されている」という仮説を発表して注目。5月9日発行の夕刊フジ紙面に大きな反響があった。

 同研究では、感染力や毒性の異なる3つの型のウイルス(S型とK型、G型)の拡散時期が重症化に影響したといい、日本は入国制限が遅れたことが結果的に奏功したとしている。

【私の論評】今後も続く人手不足が、日本を根底から変える。普通の人が普通に努力すれば応分に報いられる時代がやってくる(゚д゚)!

日本では、令和時代に入ってから黄金時代を迎えるだろうという、意見の経済学者も存在していました。私自身は、経済学者ではないですが、そう思っていました。以下では、日本国内ではどうなるかに力点をおいて説明します。

平成時代は、幕開けこそバブルが頂点にさしかかった「日本経済の絶頂期」でしたが、バブルが崩壊してからは、まともな(日本の主流派ではない)エコノミストらが確実に、そうして正確に予想した通り、長期低迷が続き、マクロ経済面ではまことに暗い時代でした。

諸問題の根源は、失業でした。当初はバブルの崩壊や、それに伴う不良債権問題が失業の主因とされていましたが、それが一段落しても失業問題が続いたのは、本源的な理由が別にあったからです。

それは、このブログで何度か掲載したように、バブル絶頂期には、確かに土地や株などはあがっていましたが、一般物価などはあがっておらず、インフレではなかったにも関わらず、日銀が金融緩和をしてしまったことです。更に追い打ちをかけるように、財務省が緊縮財政政策を取り続けたことです。

これによって日本はデフレに陥ったのですが、それでも日銀や、財務省は姿勢を変えず、金融引締と緊縮財政を続けました。平成時代は一部の例外を覗いて全期間がそのような状態でした。


そのため、日本は極度のデフレと円高に見舞われることになったのです。為替相場というと、酷く難しく考える人もいますが、短期的には予測は確かに難しいですが、長期的には、当外国の金融政策により正確に予測できます。

要するに、他国が金融緩和をしているのに、当該国が緩和しなければ、当外国の通貨は希少となり高くなります。平成時代の日本はまさにこの状況でした。

日銀の引き締め傾向のため、人々が勤勉に働いて物(財およびサービス、以下同様)を大量に作り、人々が倹約して物を少ししか買わなかったために、物が大量に売れ残りました。そこで企業は生産量を減らし、雇用を減らしました。それによって、大量の失業者が生まれたのです。

人々がバブル時代と同じように働いて物を作り、バブル時代よりはるかに質素な暮らしをすれば、大量の失業が生まれるのも、仕方なかったといえます。

失業は、失業した人を不幸のどん底に落とし入れます。経済面での苦境のみならず、「自分は世の中で必要とされていないのではないか」といった気持ちにさせることもあるようです。しかし、それだけではありません。

失業者が大勢いると、企業は雇いたい時にいくらでも安い時給で非正規労働者が雇えます。そうなると、労働者を正社員として囲い込む必要がないので、正社員の採用を減らして非正規労働者を大勢雇うようにな。

そうなると、正社員になりたくてもなれず、非正規労働者として生計を立てざるを得ない人が出てきます。当然、時給は低いし雇用は不安定になります。ワーキングプアと呼ばれる人々です。彼らも、失業問題の派生的な被害者です。

増加傾向にあったワーキング・プア
失業者が大勢いる経済では、ブラック企業が繁栄します。厳しい労働条件で労働者を酷使しても、「失業するよりマシだから」という理由で社員が集まり、かつ辞めないからです。
失業者が大勢いる経済では、労働生産性が改善しません。例えば飲食店は、安い非正規労働者に皿を洗わせることができるため、労働生産性を向上させる自動食器洗い機を購入しなくなります。

また、労働生産性の低い企業が安い賃金で労働者を雇えるため、「安い賃金しか払えない労働生産性の低い企業から、高い賃金の払える労働生産性の高い企業に労働者が移動することで、国全体の労働生産性が改善する」ことも起こりにくくなります。

日本経済はコロナ以前から、労働力不足の時代を迎えたが、アベノミクスの成果である金融緩和によるものです。確かに物価目標は達成はしていないものの、雇用はかつてないほどに改善し、労働力不足になりました。ただし、安倍政権になってからも、2度にわたって増税をしたため、GDPは伸びず、今年になってからはむしろマイナスです。コロナ以前でも、過去の好況時とは比較にならないほど緩やかな景気回復でした。

それでも労働力不足なのは、日銀が、従来の異次元の包括的金融緩和政策から、イールドカーブコントロールに転じて、緩和姿勢を緩めたのですが、それにしても緩和を継続したためです。ただし、そのために未だに物価目標を達成できていません。

コロナ禍後には、この流れは続くでしょう。コロナ禍後は、日銀はさらなる緩和に踏み切ることはあっても、引き締めに踏み切ることはないでしょう。さらに仮に明日から出生率が劇的に上がっても、あと18年は労働市場への新規参入が増えることはありません。子どもが生まれてから、働けるようになるには現在では、少なくとも18年はかかるのです。

つまり、日本経済は当分の間、労働力不足が続く可能性が高いです。あと10年もすれば、「好況時は猛烈な労働力不足、不況時は小幅な労働力不足」といった時代になるでしょう。さらには、失業者が大勢いる経済では、財政赤字が膨らみやすいです。それは景気が悪いので税収が増えず、一方で失業対策の公共投資等も必要になるからですが、それだけではありません。仮に増税しようとすると「増税で景気が悪化して失業者がさらに増えたら困る」という反対論が巻き起こるからです。

そのため、さすがに国民生活は無視してでも、省益のため増税しようという動きは封殺されるどころか、コロナ禍の現状では、減税の声も大きくなっているからです。

今後、労働力不足の時代が来ると、失業に悩む人がいなくなります。これは素晴らしいことです。さらには、今まで仕事探しを諦めていたため失業者の統計に入っていなかった人々までも、仕事にありつけるようになります。つまり、1日4時間程度しか働けない高齢者や子育て中の主婦などでです。実際、現状でもそうなりつつあります。仕事の意欲と能力がある人が全員仕事にありつける経済は、実に素晴らしいです。

ワーキングプアの生活も、マシになっていくでしょう。非正規労働者の待遇は、労働力需給を素直に反映するからです。労働力不足になれば、時給を上げないと労働力が確保できないし、現在の労働者も引き抜かれてしまうので、雇い主は非正規労働者を確保するために時給を上げざるを得なくなるのです。

一方で、正社員の給料はそれほど上がらないかもしれません。若手の給料は、採用難から上がっていく可能性もありますが、中高年社員の給料が上がることはあまり期待できないかもしれません。

特に雇用自体が身分保障のような大企業では、正社員は、中高年になってから辞めると損なので、彼らは給料を上げなくても辞めません。したがって、雇い主としては彼らの給料を上げるインセンティブを持たないからです。

そうなると、やがて同一労働同一賃金に近づいていくことになります。最も恵まれない人々が仕事にありつき、ワーキングプアの待遇が改善し、中高年正社員の給料が上がらないと、格差は縮小してゆくことになります。

ただし、当然のこと本当能力のある人は、昇進の階段を素早く上り、給料もあがることになります。その機会は、従来よりもかなり増えることになります。本当に能力のある人とそうではない人との間に差がつくのは当然です。本当に能力のある人とは、人手あまりのときに重用された調整型ではなく、人手あまりのときにはあまり必要のなかった、本当にマネジメント能力や、イノベーション能力のある人です。それでも、飽き足らない人は新規開業するでしょう。そのようなチャンスも多くなります。

人手あまりのときに、起業が重視した要素はコミニケーション能力=調整能力

ブラック企業もホワイト化せざるを得なです。社員が「辞めても転職が容易だ」と思えば、次々と辞めていくから、ホワイト化しないと社員がいなくなってしまうからです。パワハラ上司やセクハラ上司もいなくなるでしょう。理不尽なことをすれば、社員はすぐに辞めて他の会社に移ることになるからです。

日本経済の効率化も進むはずです。労働力不足に悩む企業は、省力化投資に注力するため、省力化が劇的に進むでしょう。これまで省力化投資のインセンティブが乏しかった分だけ、日本企業は省力化投資で効率化する余地が大きいからです。コロナ禍はこれに更に拍車をかけることになるからです。

日本経済の労働生産性が上がる理由は他にもあります。失業対策としての公共投資は不要になるし、生産性が低くて高い賃金の払えない企業から労働者が抜け、生産性が高くて高い賃金の払える企業に労働者が移るからです。

さて、上の記事で、「コロナ禍後には、学校では「貿易立国」と教えられてきた日本だが、貿易依存度は、近隣諸国に比べてかなり低い」としていますが、実際どのくらいかといえば、日本は十数%です。中国や、韓国は数十パーセントです。ちなみに、米国は8%前後です。日米の貿易がGDP占める割合は、世界順位でいうと最下位に近いです。

日米などは、もともと内需の大きい国なのです。しかし、学校で習った「日本=貿易立国」が頭から抜けきらない高齢者などは、「いや確かに、自動車などを輸出している輸出企業は、日本全体からみれば、少数かもしれないが、それが他産業に及ぼす影響は計り知れないので、日本は貿易なしではやっていけない。それに、昔はもっと輸出の比率は高かったはずだ」等というかもしれません。

しかし、20以上以上前というと、日本では、輸出がGDPに占める割合は、現在の米国に近い8%くらいなものでした。

輸出産業は裾野が広いというのは、事実そうなのかもしれませんが、同じ手法をつかって統計をとって、日本は輸出がGDPに占める割合が低いのですから、米国と同じように内需で伸びてきた国ということができます。ただし、平成期間中はほとんどがデフレだったので、国内では物を作っても売れないので、輸出が増え8%台から10%台にまで増えたということです。

しかし、コロナ後は、またこの数値が8%くらいまで低くなるかもしれません。なぜなら、コロナ禍で、マスク等がなくなってしまったようなことがないように、多くの産業が国内回帰するか、日本が信頼できる国に生産拠点を移すことが考えられるからです。

そうなると、内需が増えて、人手不足はまだ続きそうです。そうなると、企業にとっては日本国内での競争の激しい時代になるのは明らかですが、それにしても、コロナ禍で不安定な世界情勢を考えれば、カントリーリスクや、為替リクスを回避するためには、日本国内で競争せざるをえず、人手不足はますます深刻になり、多くの国民にとっては黄金時代に迎えることになるのは、確かなようです。

ただ、日銀が金融引締に、財務省がコロナ禍終息後に増税するなどのことが考えられますが、すでに、平成年間の大失敗の理由は明らかになりつつあるととにも、日銀、財務省のような省庁や政治家の事務所においても、人手不足になるのは、目に見えており、これに合理的な対応をしつつ、他方で非合理な金融政策、財政政策をするなどのことは考えにくいです。



今までは、企業も官庁も、政治家も、人手が余っていたので、それこそ、経営者や高級官僚が、従業員や国民のことなど真摯にそうして、親身に考える必要もなく、替わりの人間などすぐに得ることができたので、小人閑居して不善を成すを地で行くような自堕落な働きかたをしてこれました。皆さんも、「なんであんな馬鹿な人間が、高級官僚や、大企業の経営者になれたのだろう」と不思議に思ったこともあったかもしれません。

人手あまりの時代には、マネジメント能力やイノベーション能力がなくても、調整型の極端なことをいえば、今話題の人のように、夜中まで麻雀ができる人間が、重宝されたのです。下手にまともに管理をしたり、イノベーションをする人は疎まれることも多かったのです。

馬鹿な人間は、国民が困っていようと、大きな危機が迫っていても、呑気でおられたのですが、今後そのような人間は、あらゆる方面で、淘汰されることになります。人手不足がそれを許さなくなるからです。

これから、官庁の仕事だって、大きな部分が民間に委託されて、官僚はそれを管理するだけということにもなるかもしれないのです。人手不足の時代は、今まで考えられなかったことが、起こるのです。しかし、このような変化は以前も述べたように、コロナ禍によって引き起こされるのではなく、起こるべくして起こるのであり、コロナはそれを顕にしたに過ぎません。

日本では、まずはコロナ後は世の中が根底から変わる未曾有のレジームチェンジが起こるというより、既存の知識で考えて不合理なこと、まともな世の中では不都合なことが急速に変革されていくことになるでしょう。

民間企業では、アウトソーシングがさらに進むことになるでしょう。ぼんやりしていると、入社時と同じ仕事をしているにもかかわらず、会社は別会社になってしまっているということが起こり得るのです。

本当に賢い人だけが、入社時より高い管理能力や革新能力を身につけ成長して、入社時と同じ会社の残ることができるかもしれません。それに飽き足りない人は、先にも述べたように起業することになるでしょう。そうして、終戦直後のように、日本で次世代を担うような革新的な起業が輩出することになるでしょう。

普通の人が困らず生活できて、努力すれば応分に認められ、リーダーを目指す人や、現状リーダーである人には、カリスマ性や、セールスマンシップや調整力ではなく、真の意味でのリーダーシップが求められるようになるのです。

常に人手不足にさらされるこれからの時代には、合理性を無視した極端な緊縮財政や極端な金融引締は回避されるのではないかと思います。であれば、日本は黄金時代を迎えるのは、間違いないと思います。

ただ、日銀や財務省は、国民による厳しい監視を続け、昨年の増税などの非合理な動きをしたときには、厳しく糾弾していく必要性は、ここしばらくはありそうです。

2020年5月23日土曜日

米、中国に激怒!コロナ禍に香港で“火事場泥棒” 国防予算も異常な高水準で軍事大国へ突き進み ―【私の論評】実績をつけたい習近平は、これからも火事場泥棒的なことも平気で繰り返す(゚д゚)!

米、中国に激怒!コロナ禍に香港で“火事場泥棒” 国防予算も異常な高水準で軍事大国へ突き進み 
第2の天安門に!?香港デモ

開幕した中国の全人代で、習国家主席は拍手で迎えられた

 中国の習近平政権が、「火事場泥棒」的体質をあらわにした。新型コロナウイルスの感染拡大で世界各国が混乱するなか、22日に北京で開幕した全国人民代表大会(全人代=国会)で、香港に直接「国家安全法」を導入する方針を示したのだ。香港立法会(議会)を無視した暴挙であり、「一国二制度」を事実上終了させる。香港市民だけでなく、ドナルド・トランプ米政権も激怒している。さらに、覇権拡大のため、国防予算も異常な高水準を維持した。

 「(中国の今後の出方次第で)強く問題視するだろう」

 トランプ大統領は21日、ホワイトハウスで記者団に、こう語った。マイク・ポンペオ国務長官も22日の声明で「(国家安全法の香港導入は)破滅的な提案」と非難し、中国に再考を求めた。英国とオーストラリア、カナダの外相も同日、共同声明を発表し「深い懸念」を表明した。

 中国が香港に導入するという「国家安全法」では、国家分裂や政権転覆行為、組織的なテロ活動、外国勢力による介入が禁止される見通しだ。制定されれば、1989年の天安門事件の犠牲者を追悼する集会なども恒久的に禁止される可能性がある。王晨副委員長が22日の全人代で提案。最終日(28日)に採決される見通しという。

 香港の民主派は「(言論や集会の自由が認められた)『一国二制度』は、正式に『一国一制度』になってしまう」と激しく反発し、インターネット上でも抗議デモが呼びかけられている。22日の香港株式市場は混乱の拡大を懸念し、前日終値比で大幅下落した。

 自国で発生した新型コロナウイルスの影響で、2カ月半延期されていた全人代。「2020年の国内総生産(GDP)の成長率目標」や「台湾問題」「感染第2波」などが注目されていたが、習政権は「香港問題」で強権を発動してきた。

 さらに、習政権は「軍事大国」に突き進んでいる。

 中国の2020年国防予算は1兆2680億500万元(約19兆1000億円)で、前年実績比6・6%増と高水準を維持した。日本の20年度当初予算の防衛費5兆3133億円の約3・6倍にあたる。中国の国防予算の実態は、公表額の2倍以上との見方もある。

 習政権は、南シナ海や台湾問題をめぐって、世界最強の米軍との対立が今後激化するとみている。民主主義国家が、新型コロナ禍で軍事・防衛費が抑制される流れになるなか、共産党独裁国家は異様な軍備増強路線を止める気はなさそうだ。

【私の論評】実績をつけたい習近平は、これからも火事場泥棒的なことも平気で繰り返す(゚д゚)!

習近平は、今回に限らず、米国等を苛立たせる火事場泥棒的な行動を何度もくりかえしてきました。そうして、特に最近そが目立つようになってきました。それはなぜなのでしょうか。中国は元々、対外関係などよりも、自国の都合で動く国であり、最近の一連の火事場泥棒的な行動も、そのほとんどが中国国内の都合によるものです。

コロナ禍で忘れ去られた感がありますが、本年2020年は、中国の二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もし、習近平が、過去の主席らに匹敵するような、大きなことをやってのければ、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業となるからです。

      2000年台「全面的な小康社会の実現」に向けて、実現程度は年々スピードアップ
      していると言われた。写真は2007年、将校社会のポスターの前を歩く女性

コロナ禍に関しては、これはマイナスになると考えるのが普通ですが、習近平はこれを無理やりに終息させ、それも他国に先駆けて終息させ、巧みに自分の手柄としました。しかし、これだけでは、全党や人民に納得させるだけの歴史的偉業とはなりません。

習近平としては、コロナ終息に加えて、何か一つでも良いので、両方で歴史的偉業になる、何かを付け加えたいのです。それが、台湾統一や、香港問題の解消なのかもしれません。とにかく、時宜を得た歴史的偉業を達成するための何かを追い求めるあまり、米国などからすれは、火事場泥棒のようなことを平気でやってしまうようです。

実際のところ、習近平は過去の主席と比較すれば、何も実績があったとはいえません。特に、権力闘争の相手方にみせつけられるようなものはありません。

習近平の唯一ともいえる有利な点は、中国の政治において最も重要なファクターは「客家人ネットワーク」だと言わており、習一族もこの客家に属しているということです。「アジアのユダヤ人」とも言われる彼等は、中国、シンガポール、台湾、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、米国などの中枢に強固な繋がりを持つ華僑ネットワークを形成しています。

客家は、孫文、鄧小平、宋美齢、江沢民、習近平、李登輝、蔡英文、李光耀など、アジアを中心として多くのキーパーソンを排出しています。

ところが、習近平は、2018年3月11日、全国人民代表大会において中国憲法の改正案が採択された結果、国家主席や副主席の任期が連続して2期を超えてはならないとしてきた従来の規定が削除され、終身主席の道を拓きました。

習近平が2012年11月15日に党総書記に就任(翌年3月14日に第7代国家主席に就任)した時点で、現在の空前の権力集中を予測した者はほとんどいませんでした。

習近平政権を特徴づけるのが、党幹部に対する強烈な反腐敗運動です。政権第1期の5年間で200万人以上の党幹部がなんらかの処分を受け、なかには前政権での政法部門のトップだった周永康、軍制服組のトップだった郭伯雄や徐才厚、次世代の総理候補と目されていた孫政才など、高官までもが失脚の憂き目に遭いました。

周永康のような党常務委員経験者については、従来は党内規律違反による摘発や刑事訴追がおこなわれない不文律が存在していたとされますが、そのタブーをあえて踏み越えた習近平政権の特殊性は際立ちます。

法定に姿を見せた周永康氏、わずかの期間で白髪頭となり、中国内で話題となった

中国では江沢民・胡錦濤時代に腐敗が進行し、庶民の怨嗟の的となっていました。反腐敗運動は国民的な支持を得やすい政策なので、党内の引き締めという意味の他に、一種のポピュリズムの側面も持つと見られます。

腐敗幹部たちが地位を失った後、習近平派の幹部がそのポストを襲う形で出世する例も多く、反腐敗運動は習近平による自派の官僚団へのポストのばら撒き政策としての側面もあります。

なお、習近平派の官僚たちの多くは習近平の過去の地方勤務時代の部下や、習近平及び父の習仲勲と過去に縁があった人物で占められています。こうした官僚は、習近平がかつて浙江省の書記を務めていた時代に地元紙に連載していたコラム「之江新語」から名前を取って「之江新軍(しこうしんぐん)」と呼ばれています。

他に個人崇拝の復活も特徴的です。中国では文化大革命時代の極端な毛沢東崇拝への反省から、1970年代末からは鄧小平のもとで個人崇拝の忌避や集団指導体制が打ち出されてきたのですが、習近平はそのタブーを破った形となっています。

プロパガンダポスターなどに、習近平(および妻の彭麗媛)の肖像や名前がしばしば大きく取り上げられ、また習近平個人を礼賛する楽曲も登場しています。はなはだしくは、習近平の顔が大きくプリントされた置物用の景徳鎮の皿なども、党員の研修先に指定されやすい革命聖地の売店などではよく売られています。

  前任者の江沢民・胡錦濤時代はあまり見られなかった、習近平個人を前面に出した
  プロパガンダが目立つようになった。地方都市や、一部の革命聖地では、しばしば
  「習近平グッズ」が売られるようになってもいる。

こうした現象は前任の胡錦濤時代まではほぼ見られなかったものです。習近平の書籍や語録が大量に出版されていることも興味深いです。

2018年の改憲では、ついに憲法の中に「習近平新時代中国特色社会主義思想」なる、習近平個人の名前を冠したイデオロギーが国家の指導思想として明記されるに至りました。

中国の憲法のなかで、過去に個人名を冠したイデオロギーが含められた例は毛沢東(毛沢東思想)と鄧小平(鄧小平理論)だけであり、習近平はこうした過去のストロングマンに並ぶ場所に押し上げられた形となりました。

しかし、習近平には毛沢東は建国の父として、鄧小平は改革・開放で経済を伸ばしたという実績がありますが、習近平にはそのような実績はありません。

その実績のない習近平が、コロナ禍に関しては、無理やり終息させたため、人民には根強い不信感が残っています。共産党内部でも、実績のない習近平は当然権力闘争の相手方からは、不興を買っています。

だからこそ、香港で弱みを見せられない習近平は、米国などから火事場泥棒のようにみられることを承知でも、香港に直接「国家安全法」を導入する方針を示したのです。

実績をつけたい習近平は、これからも、国外からみれば火事場泥棒的なことも平気で繰り返すことになるとみられます。

台湾や、日本の尖閣諸島などは、格好の標的です。日台はもとより、米国などもこのことをわきまえ、中国の今後の動きに対応していくべきです。まずは、習近平を失脚するようにもっていくべきです。

そのようのなか、習近平の国賓待遇での訪日など、あり得ないことです。習近平としては、日本の天皇謁見を自らの権威付けとして期待しているだけのことです。日本は、絶対にそのようなことをさせるべきではありません。

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2020年5月22日金曜日

スーザンライスの今や悪名高いメモは、オバマの証拠隠滅のための見え透いた企てだった―【私の論評】トランプ氏はディープ・ステート粉砕に邁進、日本のプチ・ディープ・ステート財務省は誰が?

スーザンライスの今や悪名高いメモは、オバマの証拠隠滅のための見え透いた企てだった

<引用元:ニューヨーク・ポスト 2020.5.20>社説

バラク・オバマ大統領(左)とスーザン・ライス国家安全保障担当補佐官

2017年1月5日の高官会議に関するスーザン・ライスのメモは、当時国家安全保障担当補佐官だった彼女の上司、バラク・オバマ大統領を擁護するためのものだった――だがそれは見事に裏目に出ている。

ライスは1月20日午後12時15分付のメモ(最近機密解除された)を、文字通り最後の瞬間に自分自身に送信した。つまり、その日の正午にトランプ大統領は就任宣誓を行い、彼女のいた政権は退場したのだった。

ああ、ライスの弁護士は、彼女がその草稿を書いたのは「ホワイトハウス法律顧問局の助言に基づいて」のことだとしていると、FOXニュースは報じている。

要点?表向きは、ロシアのハッキングについての状況説明後の、自身、オバマ、ジョー・バイデン副大統領、FBIのジェームズ・コミー局長、そしてサリー・イェーツ司法長官代行との会議の記録を行うためだ。

オバマは「この問題のあらゆる側面」を「規則通りに」扱うよう強調し、法執行機関が「規則通りに」進めるよう「繰り返し述べた」、とメモでは主張している。コミーは自身が「『規則通りに』進めている」ことを「確認」した。その通り。彼女はその言葉を3回使用したのだ。

これほどまでに「証拠隠滅しろ」と大声で叫んでいるメモがあるだろうか?法律顧問はなぜ、事後2週間の最後の瞬間に、ロシア捜査が全く真正なものだと示すような文書の作成を求めるというのだろうか?

それは間違いなく、人々がその逆だと考えることを恐れたためだ。捜査は真正なものではなかったのだから。

我々は今、事実として、捜査に関することが全て倫理的に適切に扱われていなかったことを知っている。

コミーはライスの後任のマイケル・フリンについて「懸念」を持っており、国家安全保障会議は「潜在的に」、チーム・トランプにロシアについての「機密情報」を伝えないようにすべきだと述べた、とライスは書いた。だがライスは、情報を共有すべきでないかどうか尋ねたのはオバマだったと認めている。

それでも彼らに、新政権チームに何も知らせないでおくための正当な理由は皆無だった。オバマの仲間は、FBIが共謀やフリンが国を裏切っているという証拠を、全く発見していないということをその時までに十分知っていた。なぜなら彼らはフリンと外国高官との電話を盗聴していたからだ。

辞任間近の大統領は誰であっても、正当に選挙で選ばれた後任者に情報を伝えないよう側近に強いるべきではない。彼らの義務は、全ての情報を共有し、最大限にそのスタッフに協力することだ。これはチーム・トランプを妨害するための徹底的な企てだった―そしてその全てが余りにもうまくいった。

だが少なくとも規則通りだった。

【私の論評】トランプ氏はディープ・ステート粉砕に邁進、日本のプチ・ディープ・ステート財務省は誰が?

上のニュースは相当ショッキングなものなのですが、その背景を知らない方には、何のことやら理解できないというところだと思います。

それを理解するには米国でいわれている、いわゆる「オバマゲート」について理解していないと困難かもしれません。これについては、日本ではほとんど報道されていません。

トランプ大統領は最近オバマゲートに関するツイートを連罰した

共和党のトランプ大統領と民主党のオバマ氏の対立は米国内では有名で、トランプ大統領は、オバマ氏の実績とされるオバマケア(医療保険改革)を廃止したり、イランとの核合意やパリ協定から離脱したり、日本とも関わりの深いTPPからの離脱など、前大統領が苦心した政策を次々と無効にしてきました。
 
そうしたなか、5月9日、オバマ氏がトランプ大統領のコロナ対策を「大惨事」と批判したとの情報がメディアをかけめぐりました。さらに、米司法省が元大統領補佐官の「ロシア疑惑」に関する起訴を取り下げたことについて、「法のルールが危機にさらされている」と懸念を表明しました。

この流れを受けて、トランプ大統領が自身のツイッターに「OBAMAGATE!」とツイート。さらに「オバマゲートで逮捕」などとツイートしたことで、一気にトレンド入りしました。この話題に関する投稿は、一時期300万件を超えました。13日には、ホワイトハウス公式ツイッターも「OBAMAGATE」と書いています。

「オバマゲート」とはオバマ氏の名前とウォーターゲートを組み合わせた造語で、日本語にするなら「オバマ疑惑」です。

ウォーターゲート事件は、ニクソン大統領(共和党)時代、何者かが民主党本部のあるウォーターゲート・ビルに盗聴器を仕掛けようとして侵入し、後にホワイトハウスの関与が暴露されて、大統領が辞任に追い込まれた事件です。以降、米国では政界の疑惑があるたび、「~ゲート」と名づけられることが多いです。

実は、この前日までは「トランプゲート」という言葉がトレンドでしたた。トランプゲートという言葉は、少なくとも2016年から使われています。1つの事件に関してではなく、反トランプのコメントが多く寄せられるハッシュタグです。トランプ大統領は、このタグに対抗する意味で、オバマゲートという言葉を使ったのでしょう。

翌日の記者会見で、記者が「オバマゲート」について質問すると、トランプ大統領は「オバマゲートは自分が大統領になる前から始まっている。情報はこれから公開される。今はまだ始まったばかりだが、恐ろしいことが起こったんだ。この国でこんなことが許されてはいけない」と説明しました。

記者から具体的な罪は何かと質問されると明言は避け、よそのメディアを読むようコメントしました。

いったい、オバマゲートとは何なのでしょうか。

一言でいうと、トランプ大統領のいわゆるロシアゲート等そもそも存在せず、実はロシアゲート疑惑をでっちあげていた張本人がオバマだったということのようです。

ロシアゲートとは、2016年の米国大統領選挙の際、共和党候補のトランプの選挙活動にロシアが介入していたのではないかという疑惑です。対立候補の悪口や選挙妨害があったのではないか、ということなのですが、いくら調べてもロシアが介入していた証拠が見つからず、ロシアと連絡していたとされる人の起訴が5月7日に取り下げられて、ロシアゲート自体なかったことになってしまったのです。

なぜオバマがロシアゲートをでっちあげたのかといえば、自分の後継である民主党のヒラリーを当選させたかったからです。

その目的を果たすためにオバマ政権時代に国務長官だったヒラリーが機密情報を含むメールを個人のサーバー経由でやりとりしていたことをFBIを使って隠ぺいさせたというのが、最初の疑惑でした。

そしてなんとしてもヒラリーを当選させるためにロシアが介入したことにしようとオバマがFBIなどの音頭を取ったのではないかというのが、2つ目の疑惑です。

さらに、オバマがトランプを大統領にさせたくないのには、トランプ之政策に反対するという実態が明らかにされていないディープステイトと呼ばれるリベラル派の圧があったとされる3つ目の疑惑です。

さらに、オバマの異母兄弟が中国でビジネスとやってるとか、異母姉がケニアでエイズ撲滅活動をしているのを中国が支援している等のことから、オバマ自身が、チャイナマネーと繋がりがあるとか、現在の中国になったのもオバマ政権時の中国政策のせいでは、などの疑惑もあります。

細かなことをいうと、きりがないので、この辺で終わらせます。

いずれにせよ、このオバマゲートの一部は7月頃には明らかになるとされています。さらに、トランプ氏が再選された場合、全貌が明らかになる可能性が大です。

トランプ氏はオバマゲートどころか、JFケネディ大統領を除く歴代大統領が決してできなかったことである、ディープ・ステートの暴露に挑戦しているようです。ディープ・ステートとは、政治グループそれも大きくて、力があり、まるでそれ自体が政府のように振る舞う政治家や官僚の集まりとされています。

JFケネディー

一説によれば、ケネディやトランプ氏を除く歴代の大統領はすべてディープ・ステートの操り人形だったとされています。もちろん、オバマもそうだったとされています。

オバマゲートに関する新たな情報が公開されたことで米国を支配し続けようとするディープ・ステートが、白日の下さらされつつあります。

ディープ・ステートに関する本(From the Company of Shadows)の著者であり元CIA(内部告発者)でテロ対策の専門家、ケビン・シップ氏は、トランプ大統領がディープ・ステートの道具であるという考え方は本末転倒であり全く話にならないと述べました。

シップ氏によれば、トランプ大統領は、JFケネディを除く歴代大統領の中で最も激しく影の政府とディープ・ステートと戦ってきた大統領なのだそうです。

シップ氏によれば、JFケネディはディープ・ステートと戦った結果、暗殺されてしまったとしています。

JFケネディ大統領を例外として、トランプ大統領以外に影の政府とディープ・ステートを暴露する勇気のある大統領はいませんでした。

ディープ・ステートは何をやってきたのでしょうか。彼らはトランプに対する激しい仕返しを繰り返してきました。

トランプがディープ・ステートの一員であるなら、彼らからの破壊的攻撃を受けるはずがありません。

トランプはディープ・ステートから彼らについて暴露したならトランプと彼の家族を殺害すると脅されていたのです。

トランプはディープ・ステート側の大統領ではありません。無論トランプ氏とて完璧ではありません。

トランプ政権には、トランプ氏が中央銀行とつながりがあることを懸念している人も何人かいます。しかしそれでも彼らはトランプがディープ・ステート側でないことを知っています。

それどころかトランプはディープ・ステートを引き裂いているのです。DNI(アメリカ合衆国国家情報長官)のリック・グレネル氏がトランプに提出した資料を見ればわかります。

トランプはディープ・ステートのメンバーの個人情報を公開することを許可したのです。トランプ氏は、ディープ・ステートの存在を暴露する大統領になるかもしれません。

米左翼は、コロナパンデミックを政治的武器として利用しています。民主党は、このままでは大統領選でトランプに敗北してしまうことを知っているため、大統領選を有利に運ぶため、コロナパンデミックを大統領選まで長引かせその間米経済を破壊しトランプにその責任を擦り付けようとしています。

トランプはまだ彼らの正体を暴露していません。それはトランプが再選されたときに、行われるでしょう。ディープ・ステートはトランプの再選に非常に怯えているのです。そして彼らはあらゆる手段を講じてトランプの再選を阻止しようとするでしょう。 

トランプ大統領、まずはオバマゲートを明らかにし、大統領選挙を勝ち抜き、その後にディープ・ステートを白日のもとにさらすでしょう。

トランプ氏はディープ・ステートからの反撃に備えて慎重にことをすすめているところでしょう。

さて、日本にもディープ・ステートよりは、強力ではないですが、似たようなものがあります。それは、財務省を頂点とする政治家や他省庁官僚やマスコミ、識者らのグループです。

岡本財務次官

このグループは、米国のディーブ・ステートのように、総理大臣などを完璧に自分たちの操り人形にするようなことはしませんし、できませんが、それでも財務省の省益に沿って、財政を操ったり、予算の差配等で、他省庁や官僚等を操っているようです。

このようなプチ・ディープ・ステートともいえる財務省の存在は、日本の政治風土を捻じ曲げているのは事実です。日本でも、トランプ氏のようにプチ・ディープ・ステートを白日のもとに晒し、これを粉砕するような総理大臣がでてきてほしいものです。

安倍総理にこれができれば、良いと思うのですが、トランプ氏のやり方を見習い、これが実現できれば、また安倍政権への期待は登場当時のときのように増すことになると思います。

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2020年5月21日木曜日

コロナ後の世界、「スペインかぜ」後に酷似する予感―【私の論評】社会は緩慢に変わるが、今こそ真の意味でのリーダーシップが必要とされる時代に(゚д゚)!

コロナ後の世界、「スペインかぜ」後に酷似する予感
恐慌によるブロック経済、国内では二・二六事件、そして大戦

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

「われわれには多くの措置を講じることが可能だ。関係を完全に断ち切ることもできる」

 中国との関係について、米国のトランプ大統領がそう断言したのは、今月14日のことだった。米国メディアのインタビューに答えたものだ。

「中国には非常に失望した。中国は新型コロナウイルスの流行をなすがままに任せるべきではなかった」

トランプ大統領は中国のコロナ対応に失望

 感染者が150万人超、死者も9万人超の世界最大となった米国。経済活動の再開を急ぐトランプ大統領に、反発の声も大きい。このままではこの秋の大統領選挙にも影響する。思うようにいかない苛立ちは、発生源の中国に向かう。国内の批判も、共通の敵を意識させることで目先を変えようという意図も見え隠れする。

1世紀前の出来事と恐ろしいほど符合

 「習近平と非常に良い関係にあるが、今は話したいとは思わない」

 インタビューでそう語った翌日の15日、トランプ政権は、中国の通信機器最大手「華為技術」(ファーウェイ)に対する禁輸措置を強化すると発表した。携帯電話の中の半導体でもアメリカが関わったものは、外国製品であれ、輸出を禁止する、したければアメリカ政府の許可をとれ、というものだ。

 これを受けて、すぐさま半導体受託生産の世界最大手、世界シェアの5割を占める台湾積体電路製造(TSMC)が、ファーウェイからの新規受注を停止した。世界のサプライチェーン(供給網)の分断がはじまっている。

 一方の中国も、新型コロナウイルスの発生源でありながら、世界に先駆けて克服した国として、諸外国への支援を積極的に打ち出している。ところが、その一方で海洋進出を強化。4月中旬には、かねてから埋め立て、軍事拠点化を進めてきた南シナ海に新たな行政区「西沙区」と「南沙区」を設置すると発表。5月8日には、4隻の中国公船が尖閣諸島周辺の領海に侵入し、このうち2隻が日本の漁船を追いかけ回した“事件”も発生している。

 12日には、新型コロナウイルスの発生源について独自の調査が必要と表明した豪州に対して、食肉の輸入禁止措置をとった。さらに19日からは、豪州産の大麦に80%超の関税を上乗せしている。FTAを結ぶ中国は豪州にとって最大の輸出相手先である。

 もはや、ここへきての米中両国の強硬姿勢と囲い込みは、“ポスト・コロナ”を見据えた動きとも見てとれる。

 だとすると、もっと深刻に考えなければならないことは、およそ1世紀前に起きた出来事と、現在とが恐ろしいほどにリンクしていることだ。

自国優先でブロック経済化

 100年前にも「スペインかぜ」と呼ばれた新型インフルエンザのパンデミックが起きた。最初は米国からはじまり、第1次世界大戦に派兵された米軍のテントから世界中に拡散されていった。当時、中立国だったスペインだけが実態を公表したことから「スペインかぜ」という名が付けられた。この新型感染症が、第1次世界大戦を終わらせたとも言われる。1919年にはパリで講和条約が結ばれている。

 このパリ講和会議では、米国のウィルソン大統領が国際協調と、国際連盟の設立を説いた。ところが、いざ設立となったところで、言いだしたはずの米国が参加していない。もともと他国には干渉しないモンロー主義(孤立主義)を外交の柱としていた米国では、議会が参加を否決した。

 現在の米国でも、自国第一主義を唱えるトランプ大統領が、新型コロナウイルスの世界保健機関(WHO)の対応は中国寄りだとして、拠出金を停止してしまった。脱退すら示唆している。国際協調の足並みからはずれかけている。

 大戦終結から10年後の1929年には、世界恐慌が襲った。いまの世界の状況は、その10年の間の出来事がひと塊になってやって来ているようなものだ。

 当時の世界恐慌に主要国はブロック経済で立ち向かった。自国優先主義、保護主義に走って、植民地との貿易関係を強化。列強が独自の貿易圏を作り、それ以外の国や地域とは、高額の関税をかけて貿易を著しく阻害する。

 習近平国家主席が打ち出した広域経済圏構想「一帯一路」は、「債務のわな」にはまった支援先の国々を実質的に植民地にしているようなものだ。

 いまでは、経済ブロックが米中対立の二極化となりつつある。当時のブロック経済による世界の囲い込みと分断が、やがて第2次世界大戦を招いたことは言を俟たない。

寒村の窮状を憂う声が二・二六事件へと

 米国の株価の大暴落からはじまった世界恐慌は、日本にも影響した。それも農村部の困窮は著しく、農家の娘が女郎として売られていくという惨状もあった。

 そういえば、お笑いコンビ・ナインティナインの岡村隆史が、ラジオ番組でこう発言したことが、女性蔑視として厳しい批判に曝されている。

「コロナが終息したら絶対面白いことあるんですよ。美人さんがお嬢(風俗嬢)やります。短時間でお金を稼がないと苦しいですから」

 これも当時を彷彿とさせ、ポスト・コロナを予言するものとも言える。ある意味で経済を理解している。だが、それは当時からして、そうした窮状に追い込まれる悲劇であって、それを「面白いこと」と言ってしまうところに、大きな間違いがある。

 そんな悲惨な当時の農村から陸軍に入った部下の話を聞いた青年将校たちが「昭和維新」を掲げて決起する。それが二・二六事件だった。

【1936年】陸軍(昭和11年)▷反乱軍の拠点「山王ホテル」前(二・二六事件)

 いまの時代にクーデターということは考え難いが、日本政府はコロナ対策に「新しい生活様式」を打ち出している。他者との距離を保ち、食事も対面を避ける。感染拡大には第二波、第三波も予測される。そんな事態がいつまで続くのか。それで延期された東京オリンピックが迎えられるのか。二・二六事件の4年後に予定されていた1940年の東京オリンピックも幻に終わっていることを付け加えておく。

【私の論評】社会は緩慢に変わるが、今こそ真の意味でのリーダーシップが必要とされる時代に(゚д゚)!

1918年、ワシントンD.C.のウォルター・リード病院でインフルエンザ患者の脈を取る看護婦

上の記事では、スペイン風邪との対比で現在の世界がどう変わっていくかを推論しています。しかし、COVID-19とスペインかぜを比較してみると、そこには数々の相違点があります。

まず、この2つは全く異なる病気であり、その病気の原因となっているウイルスも異なります。COVID-19の原因はコロナウイルスであり、スペインかぜやこれまで登場した他のインフルエンザパンデミックを引き起こしたインフルエンザウイルスではありません。

致死率の年齢別の分布も全く違います。1918年のスペインかぜは特に新生児や若い世代の人々にとって脅威的でした。COVID-19の原因となっているコロナウイルスは、特に高齢者にとって致命的なものだと見られています。

また、スペインかぜの大流行に関してはたくさんの国がその情報を非公開にしようとしていたのに対し、現在はデータや研究、ニュースなどが完全ではないにしろシェアされていることから、過去とは状況がとても異なります。

同時に、現在ではかつてとは比較にならないないほど世界がつながっているのも事実です。1918年当時は線路や蒸気船が世界をつないでいる程度でしたが、飛行機が発達した現在では、人もウイルスもごく短時間で世界中を移動することが可能となっています。

保険医療のシステムやインフラも当時とは大きく異なっています。スペインかぜが世界を襲ったのは、抗生物質が発明される前だったことから、おそらくほとんどの死亡はインフルエンザウイルスそのものによるものではなく、細菌による二次感染だったことが考えられます。

2008年の発表で、Morensらは「スペイン風邪の死者のほとんどは上気道の細菌によって引き起こされた二次感染による細菌性肺炎が原因だった可能性がある」と述べています。

また、ヘルスシステムだけではなく、当時の世界は健康状態や生活環境が全く異なっていました。1918年に被害を受けた人たちの大部分はとても貧しい層の人たちであり、その多くの人は栄養失調状態にありました。

世界人口のほとんどが当時は劣悪な健康状態にあり、高い人口密度に加え、衛生状態も悪く、衛生基準自体が低いことが当たり前の時代でした。それに加え、世界のほとんどの地域は戦争で弱っていた時代です。公的な物資は少なく、多くの国々がその資源の多くを戦争に使い切った後だったわけです。

世界の大部分が今では豊かになり、健康状態も良好に保たれています。しかし、そんな今の世界において、やはり一番懸念されているのは、COVID-19の大流行によって一番打撃を受けるのは、貧しい層にいる人々だろうということです。

これらの相違点が示すことは、1世紀前の大流行から学びを得ようとする場合、我々は慎重にならなくてはならない、ということです。

しかし、人々の健康状態が良好に保たれている国でさえ、パンデミックが与える影響ははかり知れない、ということスペインかぜは我々に教えてくれます。新しい病原体は恐ろしい破壊をもたらし、それが何百万という命を奪うことになるかもしれません。

このように、スペインかぜという歴史上の大流行は、我々に警鐘を鳴らしてくれるだけではなく、大きなパンデミックの発生に対して十分備えておこうという動機を与えてくれるものであり、長年多くの研究者たちによって常に注目されてきた事例なのです。

スペイン風邪後の世界には、核兵器も存在しておらず、現在でいうと通常兵器といわれるもので軍備がなされていました。そのため、世界大戦が起こる可能性は十分にありましたし、実際二度にわたって起こってしまいました。

しかし、核兵器のある現在では、様相が違います。核兵器を使ってしまえば、自国だけではなく、世界が崩潰する可能性があります。そのため、先進国や大国で武器を用いた戦争は現実的ではなくなりました。

そのため、現在の戦争は、兵器ではなく情報戦や経済制裁を用いる戦争に変わっています。コロナ禍直前から、米中対立は激しくなっていましたが、コロナ禍移行も激化しつつあります。

米中対立はコロナ禍後ますます顕になってきた

コロナ禍で甚大な被害を被った米国以外の先進国なども、中国に対する反発が高まっており、中国対米国をはじめとする先進国の戦いの様相を呈しつつあります。

それに対して、中国はコロナ禍を奇貨として、EU等には従来からの微笑外交の延長線上のマスク外交を展開し、台湾、日本に対しては、東シナ海で攻勢にでており、南シナ海でも活動を活発化させています。

これを米国などの先進国は、許容することはないでしょう。米国等は、これからも中国に対して、中国自らが体制を変えるか、変えなければ、世界に影響を及ぼすことができない程度まで経済を弱体化させることになるでしょう。

これに関しては、第二次世界大戦後の米ソ冷戦が、ソ連崩潰で終了したように、時間がかかるでしょうが、いずれソ連が崩潰したように、現在の中国共産党の崩潰と、中国の体制変換という形でいずれ終焉することでしょう。ただし、やはり短くても10年、長ければ、20年以上かかるかもしれません。

その間に、世界は米国を中心とする多数の国々による貿易圏と、中国を中心とする、少数の国々による貿易圏に分かれるかもしれません。いずれにせよ、決着するまでには、時間がかかり、これによる変化は比較的緩慢なものになることが予想されます。

次に、日本をはじめとする先進国の国内の変化としては、どのようなことが考られるでしょうか。様々なところで、大変化が起こり、コロナ禍以前とは全く異なる社会になるとしている識者も大勢います。

コロナの後に世界は変わるのでしょうか。結論から言うと、劇的に社会が変わっていく、いわゆるパラダイムシフトは私は、起こらないと思います。

それどころか、人々が思ったいいる以上に元の社会に戻ろうとすると私は考えています。

それはなぜかというと、それが多くの人々のとって一番ラクだからです。社会は変化を求めているようですが、実際に、自分自身を変えていこうと思っている人がどれくらいいるでしょうか。

何か新しい取り組みを始めようと思っている人はそんなに多くはないのではないかと思います。変化を強要されているところは、致し方なく取り組んでいるのが現状だと思います。

コロナの終息後でも私自身も含めて多くの一般的な人たちの考え方は変わらないでしょう。

これを変えようと思う人はかなり意識が高いと思います。意識が高いという言い方は褒めているわけではなく、流行りにのっている部分もかなりあると思うのです。そういう意味です。これは、いわゆる意識高い系の方々には耳が痛いのではないかと思います。ただし、意識高い系とは、本当に意識が高い人という意味ではありません。そうではなく、意識が高いふりをしている人と言ってもよいかもしれません。

つまり、ほとんどの人にとってソーシャルディスタンスを継続させていったり、テレワークなどのデジタルな暮らし方にシフトしていくことは大変なことだと思います。何しろ、今でも家庭でのWIFI普及率は、思いの他低いことをある調査で知り、驚いたばかりです。あるいは、携帯電話は使用しているものの、パソコンの使用率も思いの他低いです。そのため、急激に社会が変化していくパラダイムシフトはおこらないと思います。

では、社会は元どおりになっていくのでしょうか。私自身は、変わらないところがあるように、変わるところがあるとも思っています。それはどこかと言うと、苦しんでも変えざると得ないという人たち。つまり主に経営者達の考え方です。私は、どちらかというとこちらに属しているのでよく分かります。

よく考えてみると、米中対立を基本とする現在の世界の変化も同じです。この動きはコロナ禍以前からはっきりしていました。変わるべきものが、コロナによってはっきり目に見えるようになってきたということです。従来では、中国批判をすると、反発する人も結構いましたが、最近はそういう人も少なくなって来たように思います。

コロナによってそれなりに自粛をしたり、仕事も変化をしなけばならない人もたくさんいたと思います。

ただ、今現在も一番苦しんでいるのは経営に携わっている人たちだと思います。あるいは、社会事業を営んでいる人たちです。なぜなら、先を読むこと。そしてチャレンジすることがとても難しい社会になってしまったからです。

例えば今皆さんが、これから新しいイベントをやってくださいと言われたらどうしますか?ほとんどの人がとりあえずは今はやめておきましょうと答えるはずです。そういった中で次の答えを出さなければいけないリーダー達はとても難しい選択を強いられています。

現在のリーダーといわれる人は、小さな組織レベルでも、企業レベルでも、地方自治体レベルでも国家レベルでも、いやがおうでも、リーダー的行動が求められているのです。

変わると思って挑戦する人もいれば、元に戻ると思って投資する人もいるかも知れません。ただ、どちらにしても難しい選択であることに変わりありません。だから、一番変わっていくのはリーダー達の行動だと思います。社会は変わらないように思えて、実はゆっくりと舵を切り始めています。

コロナで変わるのではなく、変えなければならないタイミングが今ということです。それをコロナが顕にさせたということです。社会はいつもゆっくりと変化をしていきます。緩慢に変化していくので、よほどの目利きでないと気づきません。

人間の生活もやっぱり変えなければいけないことがでてきます。格差の激しい社会だったり、地球にとって良くないような発展だったりは、いずれにせよ変化しなければならないと思います。また、発展途上国の防疫体制、衛生管理なとも変化させなくてはならないです。

急激なパラダイムシフトは起こらないものの、コロナがあろうがなかろうが、変わらなければいけないものは変わっていくのです。コロナはそれを顕にしただけなのです。

今はそれを一部のリーダー達がかなりの負担を強いられながら、変化していくように求められているのです。


そうして、今こそ経営学の大家ドラッカー氏の語るチェンジ・リーダーの条件を見つめ治す時が来たようです。

ドラッカーしは、チェンジ・リーダーについて次のように述べています。
昨日を捨てることなくして、明日をつくることはできない。しかも昨日を守ることは、難しく、手間がかかる。組織の中でも貴重な資源、特に優れた人材を縛りつけられる。(『明日を支配するもの』)
ドラッカーは、1980年代半ば以降、少なくとも企業の世界では、変化への抵抗という問題はなくなったといいます。内部に変化への抵抗があったのでは、組織そのものが立ち枯れとなります。こうしてて、変化できなければつぶれるしかないことは、ようやく納得されたのです。
しかし、変化が不可避といっても、それだけでは死や税のように避けることができないというにすぎません。できるだけ延ばすべきものであり、なければないに越したことはないというにとどまります。
変化が不可避であるのならば、自ら変化しなければならないのです。変化の先頭に立たなければならないのです。変化をコントロールできるのは、自らがその変化の先頭に立ったときだけなのです。特に、急激な変化の時代に生き残れるのは、変化の担い手、すなわちチェンジ・リーダーとなる者だけなのです。
当然、チェンジ・リーダーたるための条件が廃棄である。成果が上がらなくなったものや貢献できなくなったものに投下している資源を引き揚げなければならないのです。
チェンジ・リーダーであるためには、あらゆる製品、サービス、プロセス、市場、流通チャネル、顧客、最終用途を点検する必要があります。しかも、常時点検し、次々に廃棄していかなければならないのです。
第一に、製品、サービス、プロセス、市場、流通チャネル、顧客、最終用途の寿命が、「まだ数年はある」といわれるようになった状況では、廃棄が正しい行動なのです。
第二に、製品、サービス、プロセス、市場が、「償却ずみ」を理由として維持される状況に至ったならば、廃棄が正しい行動なのです。
第三に、製品、サービス、プロセス、市場が、これからの製品、サービス、プロセス、市場を「邪魔する」ようになったならば、廃棄が正しい行動なのです。
ドラッカーは、次のようにも語っています。
イノベーションはもちろん、新しいものはすべて、予期せぬ困難にぶつかる。そのとき、能力ある人材のリーダーシップを必要とする。すぐれた人材を昨日に縛りつけていたのでは、彼らに活躍させることはできない。(『明日を支配するもの』)
リーダーシップについてドラッカーは次のように述べています。
リーダーシップとは人を引きつけることではない。そのようなものは煽動的資質にすぎない。仲間をつくり、人に影響を与えることでもない。そのようなものはセールスマンシップにすぎない。(『現代の経営』)
リーダーシップとは仕事であるとドラッカーは断言します。リーダーシップの素地として、責任の原則、成果の基準、人と仕事への敬意に優るものはありません。(このあたりは、是非ドラッカー著の『マネジメント』を参照していただきたいです)

リーダーシップとは、資質でもカリスマ性でもありません。意味あるリーダーシップとは、組織の使命を考え抜き、それを目に見えるかたちで確立することです。リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者なのです。

リーダーは、妥協を受け入れる前に、何が正しく望ましいかを考え抜きます。リーダーの仕事は明快な音を出すトランペットになることだとドラッカーは言います。

リーダーと似非リーダーとの違いは目標にあります。リーダーといえども、妥協が必要になることがあります。しかし、政治、経済、財政、人事など、現実の制約によって妥協せざるをえなくなったとき、その妥協が使命と目標に沿っているか離れているかによって、リーダーであるか否かが決まるのです。

ドラッカーは多くの一流のリーダーたちを目にしてきました。外交的な人も内省的な人もいました。多弁な人も寡黙な人もいました。

そうして、ドラッカーは次のように断言しています。
リーダーたることの第一の要件は、リーダーシップを仕事と見ることである。(『プロフェッショナルの条件』)
上でも指摘したように、コロナ後の社会は緩慢に変わっていくので、見極めが難しいです。 油断していると茹でガエルになりかねません。しかし、あらゆる組織において、今こそ真のリーダーシップが求められているのは確かなようです。

コロナによる変化自体はあらゆる組織にとって公平なものであり、マイナスであったりプラスであったりするのは、変化に対する私たちの反応によるものなのです。

コロナ後の世界において、あらゆる組織が、個人をも受益者としてくれるであろうものは、変化に直面したときの柔軟性なのです。

私自身、最終的には世界経済は素早く回復し、これまでの他の大きな変化を吸収してきたように、この大規模な変化を取り込む可能性が大だと思います。

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コロナの裏で進められる中国の香港支配―【私の論評】米国や台湾のように日本と香港の関係を強化すべき(゚д゚)!


2020年5月20日水曜日

コロナの裏で進められる中国の香港支配―【私の論評】米国や台湾のように日本と香港の関係を強化すべき(゚д゚)!


 国際社会は目下、新型コロナウイルス(COVID-19)への対応で精一杯であるが、この機会に乗じたような形で、中国政府は香港への締め付け強化に乗り出した。香港警察は、4月18日、民主派主要メンバー15人を一斉摘発した。この中には、現職の立法会議員である梁耀忠氏や「民主の父」と呼ばれる李柱銘(マーティン・リー)元議員、民主化運動支持のメディア、蘋果日報(アップル・デーリー)の創設者である黎智英(ジミー・ライ)氏も含まれる。


 また、香港政府は、4月19日、「香港基本法」(ミニ憲法と呼ばれるもの)の解釈を変更し、中国による香港への事実上の介入を合法化した。

 4月18日付の台湾の英字紙タイペイ・タイムズ紙は、社説で、中国政府がCOVID-19 に関するプロパガンダを世界に拡散させている陰で、香港の司法の独立を破壊する企てを進めていることを警告している。このような香港での動きの背後にある中国の介入意図に対して、警戒を怠るべきではないと呼び掛けている。もっともな内容である。

 香港では、昨年6月に、民主派諸勢力による反政府デモが本格化して以降、今回の摘発は最大の規模に当たる。民主派諸勢力は新型コロナウイルスへの対策もあり、デモの際には、5人以上が1か所に集まることがないように、香港政府や中国共産党に対するデモを自粛してきた。その間隙に乗じるような形で、今回の民主派主要メンバー15人の摘発行為が行われた。

 さらに、中国及び香港政府側は、この摘発行為の直後に唐突な形で、「香港基本法」の解釈を変更した。「香港基本法」第22条には、「中国政府所属の各部門は香港特別行政区が管理する事務に干渉できない」と規定されている。ところが4月17日、突如として、中央政府駐香港連絡弁公室等は、従来の解釈を変更し、「自分たちは中国政府所属の各部門ではない」と主張しはじめた。

 そして、4月19日には、香港政府もこの主張を追認し、事実上、中国政府が合法的に香港の問題に介入することができる道が開かれた。そして、香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、香港の民主化運動を「国家安全保障への脅威」と位置付けた。

香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官

 中国共産党は、昨年11月の香港区議会議員選挙における民主派勢力の圧倒的勝利に危機意識を募らせていたが、本年9月に予定されている立法院(議会)選挙を控え、香港基本法の解釈を変えてでも、民主化運動を阻止することを決めたのであろう。

 このようにして、事実上、香港における「一国二制度」の法的運用は挫折し、中国共産党の言う「法の支配」は空念仏に終わることとなった。

 昨年までの香港の大規模デモなどの動きを考えれば、香港での民主化運動がこれで直ちに終止符を打つとは考え難い。香港民主派諸勢力は、本年7月には大規模デモを行うことを準備しているとも伝えられるが、中国・香港をめぐる緊張関係は今後一層強まるものと見るべきだろう。

 4月18日の香港の民主派逮捕等に関しては、ポンペオ国務長官が声明を出し、中国共産党政府は、香港返還後も高度な自治を保障し、法の支配と透明性を確保するとの中英共同宣言のコミットメントに反する行為であると非難した。マッコネル上院院内総務も、中国共産党が新型コロナウィルスを利用して平和裡に抗議する民主派を逮捕することは許されない、我々は香港と共にある(We stand with Hong Kong)とツイートした。

 香港問題は、今後も、香港内の対立を生むばかりでなく、米中対立の1つの火種にもなるだろう。

【私の論評】米国や台湾のように日本と香港の関係を強化すべき(゚д゚)!

台湾のコロナ対策については、このブログでも何度か掲載しました。昨年夏に中国政府が発表した台湾への個人旅行禁止令。台湾の香港デモ支持や蔡英文(ツァイ・インウェン)総統の訪米などに対する仕返しと考えられ、台湾経済に大きな打撃を与えていたが、結局はそれで台湾人の命が救われました。「人間万事塞翁馬」という言葉そのものでした。

ただし、台湾政府の反応も素早いものでした。今年1月23日に武漢が封鎖されると、台湾は2月6日に中国人の入境を全面禁止しました。台湾は中国の隠蔽体質をよく知っていて、公表されたデータを決して信じないので、迷わず決断しました。ちなみにもう1つ、どこよりも早く中国人の入国を禁止した国がある。中国の最も親しい兄弟と称する北朝鮮です。

香港の対応も素早いものでした。中国国内で武漢における感染発生がまだ隠され、警鐘を鳴らした医者が警察に処分されていた1月1日前後、一国二制度のおかげで報道の自由がある香港メディアは問題を大きく報道し、市民に注意を呼び掛けました。中国官僚のごまかしをよく知っている香港人が、2003 年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の教訓をしっかりと心に刻み、徹底的な対策をしたことも効果的でした。

そうして、その背後には日本人の活躍もあります。それは、香港大学公共衛生学院の福田敬二院長です。福田氏は、東京生まれです。幼少期の頃に医師だった父の仕事の関係でアメリカで育ちました。

香港大学公共衛生学院の福田敬二院長
バーモント大学で医師の資格を取得し、カリフォルニア大学バークレー校で公衆衛生の修士号を取得。その後、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)で疫学の専門家としてインフルエンザ局疫学部長を務めたほか、世界保健機関(WHO)の事務局長補などの要職を歴任し、2016年12月から現職です。

1997年に鳥インフルエンザA(N5N1)が広がった際、CDCのメンバーとして来港したほか、重症急性呼吸器症候群(SARS)の時にも香港を訪れてアドバイスしています。エボラ出血熱などでも手腕を発揮するなど疫学の世界的権威の1人です。

香港では、福田敬二氏の指導により、欧米のようにロックダウンをせず、外出も認めています。一方、レストランは総座席数の50%しか利用させないなどの制限付きの営業活動を認め、経済にも配慮しつつ感染爆発を防ぎました。市民一人ひとりにソーシャルディスタンスを呼び掛けるだけではなく、意図的に作り出したのです。

その香港では、大学入試で出された歴史の問題をめぐり、中国側が「日本の侵略を美化するものだ」と取り消しを要求、民主派や教師が中国の介入に反発を強めています。

批判されているのは、14日に行われた統一試験の歴史の設問。(1)1905年に清国側の要望で日本の法政大に1年の速成課程が設置されることが記された文書(2)12年に中華民国臨時政府が日本側に支援を求めた書簡-を資料として挙げた上で、「1900~45年の間に日本は弊害よりも多くの利益を中国にもたらした」とする説について、どう考えるかを問うものでした。

大学入試問題に日中の歴史が出題されたことを伝える香港の新聞

試験後、中国系香港紙や中国外務省の香港出先機関が「日本の弊害を示す資料が提示されていない」「中国国民の感情を著しく害する設問だ」などと非難。香港政府の楊潤雄教育局長は「(日本の侵略が)有害無益だったことは議論の余地がない」として、入試を担当する独立機関に対し、設問を無効とするよう求める異例の事態に発展しました。

中国国営の新華社通信も15日、「設問を取り消さなければ、中国人の憤怒は収まらない」と強く反発し、「香港の教育は学生に毒をばらまいている。根治させよ」と香港政府に要求する論評を配信した。

これに対し、教育界選出の香港立法会(議会)議員(民主派)である葉建源氏は、「設問は学生に同意を求めているのではなく、分析能力を問うものだ」として、香港・中国当局の過剰な反応を批判しています。

香港は41年から45年まで日本の支配を受けた歴史があり、香港政府や中国の見解を支持する声もあります。一方で当局の激しい批判をめぐり、「青少年の自由な思考を抑圧するものだ。文化大革命を想起させる」(高校教師)との懸念も出ています。

民主派寄りの香港紙、蘋果日報は、毛沢東が生前、日本軍が中国の大半を占領しなければ中国共産党は強大になれなかったとして、「日本軍閥に感謝しなければならない」と述べていたことを紹介、設問を問題視する当局を揶揄(やゆ)しています。

さて、香港は日本人にとって人気の渡航先の1つで、2018年に香港を訪問した日本人の数は128万7800人に上りました。距離も近く、美食も豊富で、アジアと欧米の文化の交差点ともいえる香港は独特の魅力であふれています。

日本が好きな香港人も少なくなく、英語が通じる利点もあります。中国メディアの百度家は15日、香港は日本人旅行者を歓迎するのに、中国人はさほど歓迎されていないと不満を示す記事を掲載しました。

どんなところに、日本人と中国からの旅行者に対する対応の違いを感じるのでしょうか。記事は、「滞在できる期間が全然違う」と伝えています。中国からの旅行者は、「わずか7日」しか滞在できないのに、日本人は90日も滞在できることを強調しました。

記事は、この理由について「中国から人が流入しすぎた」ことにあると分析。香港は世界でもまれにみる超過密地域で、極めて小さなエリアに700万人以上がひしめき合って暮らしています。そのため、住宅と交通に深刻なひずみが出ているが、記事はそうなってしまったのはひとえに香港の進んだ経済・生活・教育に引き寄せられて移住してきた中国からの流入者のためだとしています。

記事では指摘していないですが、中国から越境して香港で出産しようとする女性もいるため、妊婦の入境にも厳しいです。香港政府はこれ以上の流入を抑えようとしているようです。

それに引き換え、日本からの旅行客は移住が目的ではなく短期旅行者です。そのため、香港にとっては「経済を回してくれる」貴重な存在で、むしろ「長期滞在して欲しい」くらいだ、と差別的に感じる香港政府の対応には理由があると伝えています。

香港は訪日旅行者の多い地域でもあります。2018年には人口が700万の香港から220万人もの香港人が日本を訪問しており、その多くがリピート客だったと言われています。今は日本も香港も、双方が旅行客を受け入れられない状態が続いていますが、早く以前のように旅行者が行き来できるようになってほしいものです。


日本人が、香港のコロナ禍の封じ込めに寄与したこと、コロナ以前には、互いの交流が盛んだったことを考えると、日本と香港は良好な関係にあると言って良いでしょう。

ただ、残念なのは、米国のように香港を支援する動きが日本ではあまりないことです。米国では法的措置をとってまで、香港を支持する姿勢を明確にしています。

世界が香港情勢を注視するなかにあって、香港人の苦悩にとりわけ心を寄せ、支援を行ってきたのが、台湾の人びとです。蔡英文総統は国際社会に対して香港の自由と法治のための行動を呼びかけました。

桃園市のような地方レベルでも香港からの移民支援に関する議論が始まっています。大学でも、香港からの学生の短期受け入れが積極的に行われています。

市民レベルでの支援も活発です。昨年6月以来、台湾各地では、香港に連帯する集会やデモが頻繁に行われていました。大学の構内には、学生たちが香港への連帯の言葉を綴った紙をびっしり貼り付けた「レノンウォール」が出現し、教会は、カンパを集めて防毒マスクやヘルメットをデモ隊に送り届ける地下チャネルの窓口となりました。

最近では、逮捕のリスクにさらされる香港の若者たちを台湾へ逃亡させる地下ネットワークが立ち上がり、牧師、漁民、富裕な資金援助者といった支援者たちが協力して、200人以上の香港の若者を台湾に逃したことが報じられています。

昨年の、香港の抗議活動の特徴は、破壊行動も辞さない過激派と、平和な集会やデモを行う穏健派のあいだの連帯が一貫して保たれていることにありました。両者の団結が、デモ発生前の香港社会の状況と抗議活動の展開のなかから創り出された「連帯の倫理(ethic of solidarity)」――仲間割れを避け、団結を維持しようとする精神――に支えられているこようです。

台湾の香港に対する精神的支援も、この「連帯の倫理」に貫かれています。台湾の学生や知識人たちの多くは、香港の穏健派がそうであるように、過激派の破壊活動を非難するのではなく、彼らをそのような行動に追い詰める香港の政府・警察の対応、そして中国政府の姿勢を強く問題視しています。

台湾の人びとは、2019年の香港人の苦難に、自らの歴史を重ねて深い同情を寄せています。台湾は、1947年の「二二八事件」とそれに続く白色テロの時代に、多くの有為の若者を失いました。これによって国民党政権と台湾の本省人社会の間に生まれた不信感と社会の亀裂は、何十年にもわたって続き、今なお完全に癒えてはいません。

香港の一部の若者たちの破壊行動に対して、年配者を含む台湾の人びとが「連帯の倫理」を発揮するのは、若者たちが払いつつある犠牲の大きさと社会の傷の深さを、台湾の人びとが我がこととして深く理解しているからであるように思われます。

日本でも、市民ベースで、「連帯の倫理」で台湾・香港の人々との絆を深めるとともに、日本政府としても、香港支援の具体的な動きをしてほしいものです。

コロナ禍に乗じて世界への覇権を強め、あわよくば、世界秩序を中国にとって都合の良いものに作り変えようとする、中国の野心はあからさまになりました。

これに対して、米国をはじめとして、世界中の国々が中国に対抗しようとしている現状で日本だけがこの動きに乗り遅れているようです。

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2020年5月19日火曜日

中国ファーウェイを潰す米国の緻密な計算…半導体の供給停止で5Gスマホ開発が不可能に―【私の論評】米国は逆サラミ戦術で、中国の体制を変換させるか、弱体化しつつあり(゚д゚)!

中国ファーウェイを潰す米国の緻密な計算…半導体の供給停止で5Gスマホ開発が不可能に

文=渡邉哲也/経済評論家



アメリカが、中国の通信機器大手である華為技術(ファーウェイ)への規制を強化した。米商務省は、すでにファーウェイを禁輸措置対象に指定しているが、今後はファーウェイや関連会社が設計に関与する半導体は外国製であっても、アメリカの製造装置を使用している場合は規制の対象となる。従来の抜け穴を完全にふさいだ形だ。

 また、現在の「アメリカ由来の技術やソフトウエアが25%以下」の部分も「10%以下」に変更される予定になっており、そうなれば、ファーウェイはほとんどの海外技術が使えない事態に陥る。さらに、ファーウェイが使用しているSoC(複合CPU)は半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)の製品であるが、TSMCはファーウェイからの新規受注を停止したことが報じられた。TSMCからの供給が絶たれることで、ファーウェイは5Gに対応する各種通信機器を生産することができなくなる。

 以前から、アメリカはTSMCに生産拠点を自国に移転することを求めており、TSMCはアメリカのアリゾナ州に最先端の半導体工場を建設することを発表していた。これは5nmの最新プロセスに対応したもので、総投資額は120億ドル(約1兆3000億円)になる見通しだという。また、日本もTSMCとの連携を含む半導体の国内生産回帰を後押しし始めており、今後は日米政府の支援下で、日米台が連携する形で先端技術開発が進むことになるのかもしれない。

 いずれにしろ、アメリカの規制強化とTSMCの新規受注停止により、ファーウェイは新規の半導体の設計すらできない状態に追い込まれることになるだろう。

半導体市場で“窒息”するファーウェイ

 現在、半導体生産はファブレスの設計会社とファウンドリ(受託生産会社)による分業が進んでいる。また、設計に関しても、アームなどのCPUの基本回路、半導体版CADに該当するシノプシス、ケイデンス・デザイン・システムズ、メンター・グラフィックスのアメリカ3社の協力なしでは、新規の開発はできない。

 また、設計だけでなく、TSMCなどからの販売を禁止することで製造の部分も押さえているため、ファーウェイは最先端プロセスでの半導体が手に入らなくなるわけだ。これに対応するために、中国は中芯国際集成電路製造(SMIC)にオランダのASMLの半導体製造装置の輸入を画策していたが、これもアメリカに止められている。そのため、現行の14nmプロセスが最新ということになるわけだが、これでは低消費電力と小型化が求められる5G対応の最新スマートフォンなどに使用することはできない。

 その上で、アメリカの規制を破った企業にはドル決済禁止や巨額の罰金などの厳しい制裁が課されることになっており、それは企業の倒産を招くことになる。中国は巨額の報酬で人を集めているが、これは製品販売だけでなく技術移転の禁止でもあるため、人も制裁対象になる。

 そして、制裁の対象になった人は、得た利益と個人資産を没収され、長期の懲役刑が待っている。外国であっても、犯罪人引き渡し条約があればアメリカに身柄が引き渡されることになり、同時にアメリカは世界中の銀行口座を監視しているため、外国資産であっても凍結や没収の対象になるのである。

 すでに、アメリカの大学内では“スパイ狩り”が始まっている。中国は「千人計画」の名のもとに世界中の研究者に資金援助を行い、技術移転を求めてきたが、これは本来、米当局への許可や報告が伴わなくてはならない。現状では、最先端分野の研究に関して許可が下りる可能性はないに等しく、多くは無許可無報告で行われていたわけだ。これに対して、順次調査が進んでおり、摘発が相次いでいる。

 また、アメリカは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、中国に滞在する約7万人の自国民に帰国命令を出しているが、そのほとんどがホワイトカラーであり、技術者や研究者である。

 通信業界では、NTTが主導する形で2025年に5.5G、30年に6Gの採用が始まる予定になっており、日本の通信および半導体メーカー復活に向けての希望となっている。そして、これはインテルやマイクロソフトなど米企業との協力と連携によるものであり、日米両政府が支援するプロジェクトだ。必然的に、この枠組みからファーウェイをはじめとする中国企業が外されることは必至である。

 アメリカの一連の対応は、まるで詰将棋を見ているかのようではないだろうか。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】米国は逆サラミ戦術で、中国の体制を変換させるか、弱体化しつつあり(゚д゚)!



TSMCはアリゾナ州と米国政府からの詳細不明の「支援」を受け、120億ドルを投じてアリゾナ州に次世代製造工場を建設する計画を5月15日(米国時間)に明らかにしました。この工場は、新しい5ナノメートルプロセス技術を使用したチップを生産可能で、最初の商用ロットは2024年に生産予定だといいます。

ナノメートルとは10億分の1メートルのことであり、ナノスケールでの製造には原子レヴェルの操作が必要になります。TSMCによると、アリゾナ州の工場は月20,000枚の半導体ウェハーを生産し、ハイテク分野における1,600人以上の雇用を創出するといいます。

TSMCは、アップルやNVIDIA、クアルコムを含む米国の大手企業にとってマイクロチップの重要な調達先です。TSMC製のチップは最新のiPhoneにも搭載されており、最近の人工知能(AI)の進歩を支えています。ところがTSMCは、ファーウェイの半導体子会社であるハイシリコン(海思半導体)が設計した重要なチップも製造しています。

今回の工場誘致は、トランプ政権とアリゾナ州にとっては大きな勝利です。なぜなら、TSMCは、まさに半導体技術の最先端を走っているからです。

トランプ大統領は大統領選において、17年にフォックスコン(鴻海科技集団)が発表したウィスコンシン州の工場の場合と同様に、アリゾナ州の工場を自分の交渉力と雇用創出能力の高さを示す証拠だと言い張るかもしれなです。ところが、ウィスコンシン州のプロジェクトはその後、大幅に縮小されています。

TSMCの新工場は比較的小規模であり、24年までには最も先進的な工場とは言えなくなっているでしょう。TSMCは自社の最高技術の米国への移転を警戒しているかもしれないです。TSMCはまだ3ナノメートル技術を開発している段階ですし、それに産業スパイが暗躍している舞台は中国だけではありません。

上の記事にもあるように、米商務省産業安全保障局は、ファーウェイが米国の技術で製造された半導体を使用することを制限する目的で、外国で製造された直接製品に関する規則を改定すると15日に明らかにしています。これはTSMCに合わせた協調的な動きの一環である可能性があります。

実際にTSMCを含むほとんどの半導体メーカーが、米国の技術を製造に利用しています。ということは、この規則の改定は、TMSCを含む国際的企業が製造する先進的な半導体から、ファーウェイを実質的に締め出すことになります。それは世界第2位のスマートフォンメーカーにとって大きな痛手となり、米中関係を破壊する“爆弾”となる可能性もあるのです。

最高クラスのチップへのファーウェイのアクセスを遮断することは、逆の見方をすると、中国がグーグルとアップルを同時に“殺そうとしている”ようなものです。おそらく、中国は中国で製造している米国企業または中国に販売している米国企業を標的に、中国が報復措置に出てくるでしょう。

中国政府は以前、ファーウェイへのさらなる規制が実施されれば、アップル、シスコ、クアルコムなどの米国企業を「信頼できない事業体リスト」に追加し、規制を課すことになると主張していました。中国政府はこの措置の実行を進めると同時にボーイングの航空機の購入も見合わせると、中国の政府筋は中国政府系メディア『環球時報』に伝えています。

知的財産権の窃盗や中国政府とのつながりが疑われることから、トランプ政権は先進テクノロジーへのファーウェイのアクセスを制限することに意欲的です。米国の諜報機関関係者のなかには、先進的な5G技術の世界各国への提供におけるファーウェイの主導的地位を特に懸念する向きがあります。

ファーウェイの5G技術が、中国の諜報機関に多くのグローバル通信への“侵入口”を実質的に与える可能性があると考えているからです。

ウィルバー・ロス商務長官は声明のなかで、新たな制限措置は「米国の技術が米国の国家安全保障や外交政策の利益に反する悪意ある活動を可能にすることを防ぐだろう」と述べています。商務省は米国の技術を中国で利用する動きに対して、幅広い規制を設けることを提案しています。

ウィルバー・ロス商務長官

これらのふたつの出来事は、半導体製造の進歩が大国間の競争と防衛戦略にとっていかに重要であるかを浮き彫りにしています。これらの出来事は、新型コロナウイルスの影響を受けて深刻化した米中関係の急速な悪化も反映しています。

米国政府は、中国への依存度が低いサプライチェーンの構築を目指しながら、米国企業への最先端部品の供給を保証することにも意欲的です。TSMCは中国の上海と南京で2つの工場を運営しています。

TSMCは、7ナノメートル規模の高度な生産技術によって半導体を製造できる数少ない企業のひとつです。生産プロセスが微細化するほど、チップの性能を高めることができます。

そうして製造された半導体は、スマートフォンなどの一般消費者向け機器や、オンラインサーヴィスを支えるクラウドコンピューティングプラットフォームの基盤に使われることになります。インテルも同様の高度なプロセスを利用して米国でマイクロプロセッサーを製造していますが、他社向けのチップは扱っていません。

中国が競争力のある半導体製造産業を構築しようと数十年にわたって躍起になってきた事実は、この種の技術の習得に莫大な投資と時間が必要であることを浮き彫りにしています。中国最大の半導体ファウンドリーである中芯国際集成電路製造(SMIC)は、最近14ナノメートルプロセス技術を使用してファーウェイ向けチップの製造を開始しました。

一部の業界関係者は以前から、ファーウェイを含む中国のテック企業に対する規制の強化が裏目に出て、中国が米国の技術に代わる代替技術の開発を加速させる結果に終わる可能性を示唆していました。そうは言っても、必要とされる半導体製造能力を中国が開発するには、まだ何年もかかるでしょう。

旧ソ連による人類初の人工衛星の打ち上げ成功が西側諸国に衝撃を与えたスプートニク・ショックのときのように、今回の動きは中国のハイテク部門を新たな軌道に乗せてしまう可能性があるかもしれません。ただし、それには相当時間がかかるものと考えられます。


また、それには、旧ソ連の経済を停滞させた、軍事開発や、宇宙開発のように膨大な資金を要することは間違いありません。

中国がこれに耐えられるだけの経済力を維持するのは、かなり困難が伴います。さらには、米国にはまだまだ、中国に対する報復手段があります。

他にも様々な手段がありますが、最終的に米国などにある中国共産党幹部らの資産を凍結することもできます。さらには、中国が保有する米国債無効化の措置もあります。

これに対して、中国が米国に報復するのは困難です。そもそも、米国の富裕層は中国の銀行に金を預けるような習慣はありません。

中国が米国債を米国債を売却すれば米国債価格の暴落などのシナリオもありますが、「中国による米国債売却」は「切れないカード」と評価すべきでしょう。

1977年に施行された国際緊急経済権限法では、大統領が非常事態宣言を行えば、当該対象の米国との貿易が禁止、米企業が当該地域で活動できなくなる他、金融取引なども禁止されることが定められています。

トランプ大統領はメキシコ産品への関税賦課や米企業の中国撤退などの可能性に言及してきましたが、これらは同法を念頭に置いたものです。同法の前提は「異例かつ重大な脅威」ですが、非常事態宣言一つで柔軟な運用も可能です。

中国側は米国債を売却しようとするかもしれないですが、無効化され、ペナルティを課されるかもしれない中国との取引というリスクは簡単にはとれないでしょう。中国による米国債売却を封じ込めるためには、実現にはリスクをともなう「保有の無効化」まで踏み込まずとも、「取引無効化の可能性」で十分です。

米国側は、最終的にはこのことも視野にいれて、これから着実に中国を追い詰めていくことでしょう。

中国はかつてサラミ戦術という手法で、自己に有利なるように振る舞ってきました。サラミ戦術とは、敵対する勢力を殲滅または懐柔によって少しずつ滅ぼしていく分割統治の手法です。 別名サラミ・スライス戦略、サラミ・スライシング戦略ともいわれます。

最近の米国の中国に対する戦略は、中国のお株を奪うような逆サラミ戦術とでもいえるような様相を呈しています。

いきなり、中国要人の個人資産を凍結したり、中国保有の米国債を無効化するなどということをやってしまえば、中国は無論のこと様々な国々から批判されるのは目に見えています。

しかし、これは、最終段階として、今回のようなフェーウェイへの措置や、TSMCの工場之誘致や、最近の台湾に対する支援や、WTOにむけての措置など、とにかく中国を追い詰めるために、徐々に規制や制裁を強めていくことにより、それでも中国が態度を改めない、体制を変えないという現実を顕にしつつ、締め上げていけば、いずれ最終手段をとることも可能です。

ブログ冒頭の記事で、渡辺哲也氏の「米国の一連の対応は、まるで詰将棋を見ているかのようではないだろうか」という指摘は正しいです。

米国は逆サラミ戦術により、中国が体制を変えるか、変えないというのなら、経済的に疲弊して、ロシアのように経済が疲弊して、世界に大きな影響を及ぼすことができいくらい、弱体化していくことでしょう。

中国は無論手を拱いていることはなく、米国に対する制裁を実施するでしょう。それにしても、中国による制裁は確かに米国にとっては痛手かもしれませんが、米国による中国に対する制裁から比べれば、はるかに小さなものでしょう。

いずれにせよ、米国は中国の最大得意先であったにもかかわらず、得意先を怒らせてしまったのですから、仕方ないです。得意先を怒らせるということは、商売上ではあり得ないことであり、そのあり得ないことをした中国の末路は身から出た錆ということで決着がつくことになるでしょう。

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