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2020年5月19日火曜日

中国ファーウェイを潰す米国の緻密な計算…半導体の供給停止で5Gスマホ開発が不可能に―【私の論評】米国は逆サラミ戦術で、中国の体制を変換させるか、弱体化しつつあり(゚д゚)!

中国ファーウェイを潰す米国の緻密な計算…半導体の供給停止で5Gスマホ開発が不可能に

文=渡邉哲也/経済評論家



アメリカが、中国の通信機器大手である華為技術(ファーウェイ)への規制を強化した。米商務省は、すでにファーウェイを禁輸措置対象に指定しているが、今後はファーウェイや関連会社が設計に関与する半導体は外国製であっても、アメリカの製造装置を使用している場合は規制の対象となる。従来の抜け穴を完全にふさいだ形だ。

 また、現在の「アメリカ由来の技術やソフトウエアが25%以下」の部分も「10%以下」に変更される予定になっており、そうなれば、ファーウェイはほとんどの海外技術が使えない事態に陥る。さらに、ファーウェイが使用しているSoC(複合CPU)は半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)の製品であるが、TSMCはファーウェイからの新規受注を停止したことが報じられた。TSMCからの供給が絶たれることで、ファーウェイは5Gに対応する各種通信機器を生産することができなくなる。

 以前から、アメリカはTSMCに生産拠点を自国に移転することを求めており、TSMCはアメリカのアリゾナ州に最先端の半導体工場を建設することを発表していた。これは5nmの最新プロセスに対応したもので、総投資額は120億ドル(約1兆3000億円)になる見通しだという。また、日本もTSMCとの連携を含む半導体の国内生産回帰を後押しし始めており、今後は日米政府の支援下で、日米台が連携する形で先端技術開発が進むことになるのかもしれない。

 いずれにしろ、アメリカの規制強化とTSMCの新規受注停止により、ファーウェイは新規の半導体の設計すらできない状態に追い込まれることになるだろう。

半導体市場で“窒息”するファーウェイ

 現在、半導体生産はファブレスの設計会社とファウンドリ(受託生産会社)による分業が進んでいる。また、設計に関しても、アームなどのCPUの基本回路、半導体版CADに該当するシノプシス、ケイデンス・デザイン・システムズ、メンター・グラフィックスのアメリカ3社の協力なしでは、新規の開発はできない。

 また、設計だけでなく、TSMCなどからの販売を禁止することで製造の部分も押さえているため、ファーウェイは最先端プロセスでの半導体が手に入らなくなるわけだ。これに対応するために、中国は中芯国際集成電路製造(SMIC)にオランダのASMLの半導体製造装置の輸入を画策していたが、これもアメリカに止められている。そのため、現行の14nmプロセスが最新ということになるわけだが、これでは低消費電力と小型化が求められる5G対応の最新スマートフォンなどに使用することはできない。

 その上で、アメリカの規制を破った企業にはドル決済禁止や巨額の罰金などの厳しい制裁が課されることになっており、それは企業の倒産を招くことになる。中国は巨額の報酬で人を集めているが、これは製品販売だけでなく技術移転の禁止でもあるため、人も制裁対象になる。

 そして、制裁の対象になった人は、得た利益と個人資産を没収され、長期の懲役刑が待っている。外国であっても、犯罪人引き渡し条約があればアメリカに身柄が引き渡されることになり、同時にアメリカは世界中の銀行口座を監視しているため、外国資産であっても凍結や没収の対象になるのである。

 すでに、アメリカの大学内では“スパイ狩り”が始まっている。中国は「千人計画」の名のもとに世界中の研究者に資金援助を行い、技術移転を求めてきたが、これは本来、米当局への許可や報告が伴わなくてはならない。現状では、最先端分野の研究に関して許可が下りる可能性はないに等しく、多くは無許可無報告で行われていたわけだ。これに対して、順次調査が進んでおり、摘発が相次いでいる。

 また、アメリカは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、中国に滞在する約7万人の自国民に帰国命令を出しているが、そのほとんどがホワイトカラーであり、技術者や研究者である。

 通信業界では、NTTが主導する形で2025年に5.5G、30年に6Gの採用が始まる予定になっており、日本の通信および半導体メーカー復活に向けての希望となっている。そして、これはインテルやマイクロソフトなど米企業との協力と連携によるものであり、日米両政府が支援するプロジェクトだ。必然的に、この枠組みからファーウェイをはじめとする中国企業が外されることは必至である。

 アメリカの一連の対応は、まるで詰将棋を見ているかのようではないだろうか。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】米国は逆サラミ戦術で、中国の体制を変換させるか、弱体化しつつあり(゚д゚)!



TSMCはアリゾナ州と米国政府からの詳細不明の「支援」を受け、120億ドルを投じてアリゾナ州に次世代製造工場を建設する計画を5月15日(米国時間)に明らかにしました。この工場は、新しい5ナノメートルプロセス技術を使用したチップを生産可能で、最初の商用ロットは2024年に生産予定だといいます。

ナノメートルとは10億分の1メートルのことであり、ナノスケールでの製造には原子レヴェルの操作が必要になります。TSMCによると、アリゾナ州の工場は月20,000枚の半導体ウェハーを生産し、ハイテク分野における1,600人以上の雇用を創出するといいます。

TSMCは、アップルやNVIDIA、クアルコムを含む米国の大手企業にとってマイクロチップの重要な調達先です。TSMC製のチップは最新のiPhoneにも搭載されており、最近の人工知能(AI)の進歩を支えています。ところがTSMCは、ファーウェイの半導体子会社であるハイシリコン(海思半導体)が設計した重要なチップも製造しています。

今回の工場誘致は、トランプ政権とアリゾナ州にとっては大きな勝利です。なぜなら、TSMCは、まさに半導体技術の最先端を走っているからです。

トランプ大統領は大統領選において、17年にフォックスコン(鴻海科技集団)が発表したウィスコンシン州の工場の場合と同様に、アリゾナ州の工場を自分の交渉力と雇用創出能力の高さを示す証拠だと言い張るかもしれなです。ところが、ウィスコンシン州のプロジェクトはその後、大幅に縮小されています。

TSMCの新工場は比較的小規模であり、24年までには最も先進的な工場とは言えなくなっているでしょう。TSMCは自社の最高技術の米国への移転を警戒しているかもしれないです。TSMCはまだ3ナノメートル技術を開発している段階ですし、それに産業スパイが暗躍している舞台は中国だけではありません。

上の記事にもあるように、米商務省産業安全保障局は、ファーウェイが米国の技術で製造された半導体を使用することを制限する目的で、外国で製造された直接製品に関する規則を改定すると15日に明らかにしています。これはTSMCに合わせた協調的な動きの一環である可能性があります。

実際にTSMCを含むほとんどの半導体メーカーが、米国の技術を製造に利用しています。ということは、この規則の改定は、TMSCを含む国際的企業が製造する先進的な半導体から、ファーウェイを実質的に締め出すことになります。それは世界第2位のスマートフォンメーカーにとって大きな痛手となり、米中関係を破壊する“爆弾”となる可能性もあるのです。

最高クラスのチップへのファーウェイのアクセスを遮断することは、逆の見方をすると、中国がグーグルとアップルを同時に“殺そうとしている”ようなものです。おそらく、中国は中国で製造している米国企業または中国に販売している米国企業を標的に、中国が報復措置に出てくるでしょう。

中国政府は以前、ファーウェイへのさらなる規制が実施されれば、アップル、シスコ、クアルコムなどの米国企業を「信頼できない事業体リスト」に追加し、規制を課すことになると主張していました。中国政府はこの措置の実行を進めると同時にボーイングの航空機の購入も見合わせると、中国の政府筋は中国政府系メディア『環球時報』に伝えています。

知的財産権の窃盗や中国政府とのつながりが疑われることから、トランプ政権は先進テクノロジーへのファーウェイのアクセスを制限することに意欲的です。米国の諜報機関関係者のなかには、先進的な5G技術の世界各国への提供におけるファーウェイの主導的地位を特に懸念する向きがあります。

ファーウェイの5G技術が、中国の諜報機関に多くのグローバル通信への“侵入口”を実質的に与える可能性があると考えているからです。

ウィルバー・ロス商務長官は声明のなかで、新たな制限措置は「米国の技術が米国の国家安全保障や外交政策の利益に反する悪意ある活動を可能にすることを防ぐだろう」と述べています。商務省は米国の技術を中国で利用する動きに対して、幅広い規制を設けることを提案しています。

ウィルバー・ロス商務長官

これらのふたつの出来事は、半導体製造の進歩が大国間の競争と防衛戦略にとっていかに重要であるかを浮き彫りにしています。これらの出来事は、新型コロナウイルスの影響を受けて深刻化した米中関係の急速な悪化も反映しています。

米国政府は、中国への依存度が低いサプライチェーンの構築を目指しながら、米国企業への最先端部品の供給を保証することにも意欲的です。TSMCは中国の上海と南京で2つの工場を運営しています。

TSMCは、7ナノメートル規模の高度な生産技術によって半導体を製造できる数少ない企業のひとつです。生産プロセスが微細化するほど、チップの性能を高めることができます。

そうして製造された半導体は、スマートフォンなどの一般消費者向け機器や、オンラインサーヴィスを支えるクラウドコンピューティングプラットフォームの基盤に使われることになります。インテルも同様の高度なプロセスを利用して米国でマイクロプロセッサーを製造していますが、他社向けのチップは扱っていません。

中国が競争力のある半導体製造産業を構築しようと数十年にわたって躍起になってきた事実は、この種の技術の習得に莫大な投資と時間が必要であることを浮き彫りにしています。中国最大の半導体ファウンドリーである中芯国際集成電路製造(SMIC)は、最近14ナノメートルプロセス技術を使用してファーウェイ向けチップの製造を開始しました。

一部の業界関係者は以前から、ファーウェイを含む中国のテック企業に対する規制の強化が裏目に出て、中国が米国の技術に代わる代替技術の開発を加速させる結果に終わる可能性を示唆していました。そうは言っても、必要とされる半導体製造能力を中国が開発するには、まだ何年もかかるでしょう。

旧ソ連による人類初の人工衛星の打ち上げ成功が西側諸国に衝撃を与えたスプートニク・ショックのときのように、今回の動きは中国のハイテク部門を新たな軌道に乗せてしまう可能性があるかもしれません。ただし、それには相当時間がかかるものと考えられます。


また、それには、旧ソ連の経済を停滞させた、軍事開発や、宇宙開発のように膨大な資金を要することは間違いありません。

中国がこれに耐えられるだけの経済力を維持するのは、かなり困難が伴います。さらには、米国にはまだまだ、中国に対する報復手段があります。

他にも様々な手段がありますが、最終的に米国などにある中国共産党幹部らの資産を凍結することもできます。さらには、中国が保有する米国債無効化の措置もあります。

これに対して、中国が米国に報復するのは困難です。そもそも、米国の富裕層は中国の銀行に金を預けるような習慣はありません。

中国が米国債を米国債を売却すれば米国債価格の暴落などのシナリオもありますが、「中国による米国債売却」は「切れないカード」と評価すべきでしょう。

1977年に施行された国際緊急経済権限法では、大統領が非常事態宣言を行えば、当該対象の米国との貿易が禁止、米企業が当該地域で活動できなくなる他、金融取引なども禁止されることが定められています。

トランプ大統領はメキシコ産品への関税賦課や米企業の中国撤退などの可能性に言及してきましたが、これらは同法を念頭に置いたものです。同法の前提は「異例かつ重大な脅威」ですが、非常事態宣言一つで柔軟な運用も可能です。

中国側は米国債を売却しようとするかもしれないですが、無効化され、ペナルティを課されるかもしれない中国との取引というリスクは簡単にはとれないでしょう。中国による米国債売却を封じ込めるためには、実現にはリスクをともなう「保有の無効化」まで踏み込まずとも、「取引無効化の可能性」で十分です。

米国側は、最終的にはこのことも視野にいれて、これから着実に中国を追い詰めていくことでしょう。

中国はかつてサラミ戦術という手法で、自己に有利なるように振る舞ってきました。サラミ戦術とは、敵対する勢力を殲滅または懐柔によって少しずつ滅ぼしていく分割統治の手法です。 別名サラミ・スライス戦略、サラミ・スライシング戦略ともいわれます。

最近の米国の中国に対する戦略は、中国のお株を奪うような逆サラミ戦術とでもいえるような様相を呈しています。

いきなり、中国要人の個人資産を凍結したり、中国保有の米国債を無効化するなどということをやってしまえば、中国は無論のこと様々な国々から批判されるのは目に見えています。

しかし、これは、最終段階として、今回のようなフェーウェイへの措置や、TSMCの工場之誘致や、最近の台湾に対する支援や、WTOにむけての措置など、とにかく中国を追い詰めるために、徐々に規制や制裁を強めていくことにより、それでも中国が態度を改めない、体制を変えないという現実を顕にしつつ、締め上げていけば、いずれ最終手段をとることも可能です。

ブログ冒頭の記事で、渡辺哲也氏の「米国の一連の対応は、まるで詰将棋を見ているかのようではないだろうか」という指摘は正しいです。

米国は逆サラミ戦術により、中国が体制を変えるか、変えないというのなら、経済的に疲弊して、ロシアのように経済が疲弊して、世界に大きな影響を及ぼすことができいくらい、弱体化していくことでしょう。

中国は無論手を拱いていることはなく、米国に対する制裁を実施するでしょう。それにしても、中国による制裁は確かに米国にとっては痛手かもしれませんが、米国による中国に対する制裁から比べれば、はるかに小さなものでしょう。

いずれにせよ、米国は中国の最大得意先であったにもかかわらず、得意先を怒らせてしまったのですから、仕方ないです。得意先を怒らせるということは、商売上ではあり得ないことであり、そのあり得ないことをした中国の末路は身から出た錆ということで決着がつくことになるでしょう。

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2020年2月16日日曜日

いまは“政治休戦”して「新型肺炎対策」に集中! 感染拡大も政府の対応チグハグ…早急に体制立て直しを ―【私の論評】今は挙党一致で、武漢肺炎の撲滅と、革新的な危機管理計画を実行できる体制築くべき(゚д゚)!


     新型コロナウイルス対策本部の会合で発言する安倍首相。
     左は加藤勝信厚労相=1日、首相官邸

中国・武漢発の新型肺炎の感染が拡大するなか、安倍晋三政権の対応がチグハグだ。戦いはむしろ、これからが本番である。早急に体制を立て直すべきだ。

 例えば、武漢からチャーター機で救出した邦人の帰国費用、1人約8万円は政府が負担する方針という。当初は本人負担のはずだったのに、与党の一部が異を唱え、途中で方針転換した。

 政府が強制的に帰国させたならともかく、帰国は本人の意思を尊重した結果である。救援機が飛ばなかったら、すぐ帰れなかったのも明白だ。それなら、政府に感謝して、本人が負担するのは当然ではないか。

 公明党など与党の一部は「これは災難」「緊急事態に余儀なくされた結果だ」などと理由を挙げた。そんなことを言ったら、地震でも台風でも政府が全部、カネを出す話になりかねない。人気取りで言ったのだとしたら、とんでもない勘違いである。

 第1陣で帰国した中では、帰国後の検査を2人が拒否した。「強制帰国」ではなかった証拠である。政府の詰めが甘かったから、後になって右往左往している。

 外国人の入国制限についても、安倍政権は「湖北省滞在者の外国人」に限って制限する方針を決めた。これも甘い。武漢市長は都市を閉鎖する前に「500万人が街を出た」と認めている。中には、感染者もいたはずだ。

 それなら、感染者は上海や北京など他都市や外国にも散らばっている。入国制限の対象を湖北省に限っていたら、他からの感染を食い止められないのは自明である。

 安倍政権の入国制限は、世界保健機関(WHO)が「世界的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言したのを受けて、発動された。そんなWHO頼みの判断自体が間違っている。WHOの事務局長が中国に甘いエチオピアの元外相で、中国に及び腰なのは、周知の事実ではないか。

 米国やオーストラリア、シンガポールなどは、いち早く「過去2週間以内に中国に滞在した外国人」の入国を制限した。日本も手遅れにならないうちに、制限対象を中国全土に広げるべきだ。

 細かい話で言えば、帰国者の宿泊を民間のホテルに任せたのも問題だった。ホテル側の善意は評価したいが、本来、これは政府の責任で「隔離と検査」を実施すべき話である。後になって、警察施設などが用意されたが、対応が後手に回ったのは否めない。

 政府の対応が甘いままだと、世界から日本に対する信頼を失いかねない。そうなったら、東京五輪・パラリンピックの開催も危うくなる。国際オリンピック委員会(IOC)が何を言おうと、選手たちが「日本に行きたくない」と言い出したら、おしまいだ。

 いま、日本は世界で一番厳しい防疫体制を敷いて当然の立場にある。必要があるなら、新規立法も検討すべきだ。

 与党内は「ポスト安倍」をめぐる思惑も交錯しているが、そんな駆け引きをしている場合ではない。いまは政治休戦して、新型肺炎対策に集中して取り組んでほしい。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『明日の日本を予測する技術』(講談社+α新書)がある。

【私の論評】今は挙党一致で、武漢肺炎の撲滅と、革新的な危機管理計画を実行できる体制築くべき(゚д゚)!
確かに、武漢肺炎の感染が拡大しているにもかかわらず、安倍政権の対応チグハグでした。そのためでしょうか、内閣支持率が下がっています。

共同通信社が15、16両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は41・0%で、1月の前回調査から8・3ポイント下落しました。「桜を見る会」の疑惑に関し、安倍晋三首相が「十分に説明していると思わない」は84・5%と依然高く、首相の国会対応への批判が背景にあるとみられます。新型コロナウイルス感染拡大による日本経済への影響について「懸念」「ある程度懸念している」との回答が計82・5%に上りました。

支持率に関しては、森友学園問題を巡る決裁文書改ざん発表後の18年3月の調査で9・4ポイント急落して以来の大幅下落でした。回答は固定電話513人、携帯電話516人でした。

ただし、1月前回調査では、「桜を見る会」の疑惑も追求されいましたし、この頃はまだ新型肺炎に関しては、まだ報道されておらず、やはり新型ウィルス感染拡大への対処がチグハグなことが、大きく影響しているものと考えられます。

さて、危機的状況の時に過去の政権はどのように対応してきたのか、振り返って見たいと思います。疫病に関しては、今回のような規模では、現自民党以外の政権は経験したことはなく、地震による震災は自民党以外の政権でも経験していることから、比較のため震災の時の対応を見てみようと思います。

関東大震災のとき、総理大臣は交代中、内閣は不在でした。2011年3月11日には、日本を襲った100年で3度目の大震災ともいわれる大地震が発生しました。

2カ月前の3月11日、民主党菅直人首相は絶体絶命のピンチでした。

「献金については、事務所に確認したところ、いただいている」

午前中、参議院決算委員会で、背広姿の菅は苦しい表情で答弁しました。

2011年度予算は自然成立が決まったものの、予算関連法案は成立のメドが立っていませんでした。内閣支持率も20%まで下落した(2月21日発表の朝日新聞の調査)。

2月下旬から専業主婦の年金救済問題で迷走が始まりました。苦境が続いていたときに、首相自身の在日外国人からの違法献金疑惑が飛び出したのです。不人気のまま4月の統一地方選を迎えれば、惨敗必至で、4月下旬に進退極まる可能性がありました。

ところが、3月11日の午後2時46分、マグニチュード9.0の大地震が襲ったのです。防災服に着替えた菅は6時過ぎ、与野党党首会談に臨む。自民党の谷垣禎一総裁、公明党の山口那津男代表とも「全面協力」を表明し、一転して「政治休戦」となりました。未曽有の大災害で、「救国」「挙国一致」「総力結集」が世論になりました。一瞬にして事実上の大連立体制が出来上がったのです。菅は九死に一生で息を吹き返しました。

明治時代に建設された浅草にあった凌雲。震災当時日本で一番高い12階建ての建物だった

大震災は1923(大正12)年9月1日の関東大震災(マグニチュード7.9)、95(平成7)年1月17日の阪神大震災(同7.3)に次いで、この100年で3度目でした。関東大震災は死者・行方不明が10万5000人余、被害総額は約46億円(当時のGDPの約28%)、阪神大震災は6400人余、被害は約10兆円(GDPの約2%)、東日本大震災は約2万6000人で、被害総額は20兆円(GDPの4%超)を超えました。

関東大震災のときは、実は政権交代の真っただ中でした。8日前の8月24日、加藤友三郎首相が病没しまし。28日に後継の山本権兵衛元首相(海軍大将)に組閣の大命が下ったのです。政党側は第一党の政友会が内部分裂を起こしていて、山本の強力な指導力が求められ、9年ぶりに首相に返り咲きました。

   後藤新平。1857年生まれ。関東大震災後に内務大臣兼帝都復興院総裁。当初の復興案は、
   規模縮小を余儀なくされたが、今日の東京の骨格が造られた。

山本は9月1日の朝、東京市長の後藤新平を参謀役にして組閣を始めました。閣僚の人選を進めていたとき、午前11時58分32秒に大震災が襲いました。

内務大臣に決まった後藤は大蔵大臣に日本銀行総裁の井上準之助を推しました。翌2日に自ら日銀本店に向かいました。路上で井上の車と出合ったので、自分の車に乗せ、自邸に連れていって説得しました。

「未曽有の大震災が発生した。この惨状を目の前にして躊躇している場合ではない。復興には財政、金融における君の手腕がどうしても必要だ。大蔵大臣を引き受けてもらいたい」

井上は応諾しました。

後藤新平は、関東大震災後に与党立憲政友会の内務大臣兼帝都復興院総裁でした、当初の復興案は規模縮小を余儀なくされたが、今日の東京の骨格が造らました。もし、後藤新平の計画通りに、東京の復興がすすめられていたとしたら、大東亜戦争で米軍に爆撃されたとしても、東京は焼け野ヶ原にならずにすんだだろうといわています。

後藤新平の帝都復興計画は、それほど革新的なものだったのです。立憲政友会(りっけんせいゆうかい、旧字体:立憲政友會)は、戦前の帝国議会において日本最初の本格的政党内閣を組織した政党で、明治後期から昭和前期の代表的な政党です。略称は政友会(せいゆうかい)です。

関東大震災は正午前でしたが、阪神大震災は午前5時46分に発生しました。時の首相は自民、社会、新党さきがけの三党連立による村山富市で、史上2人目の社会党委員長でした。

村山は回顧録『そうじゃのう…』(辻元清美・インタビュー)で、地震発生は首相公邸で朝6時のNHKのテレビニュースを見て知ったと述べています。

「警察庁から来ている秘書官がおってだな。……7時半ごろ電話がかかってきて……被害の状況はわからんけれども、相当大きくなりそうですよというような意味の連絡があった。それで、僕は8時ごろ官邸に出た」

政府の災害の所管は当時、国土庁防災局でしたが、宿直を常備する体制ではなかったため、国土庁も担当する警察庁出身の首相秘書官の金重凱之が兵庫県の警察の情報に基づき、首席秘書官だった園田原三(元社会新報編集長)を通じて村山に連絡を入れました。園田が当日の村山の行動を振りかえっています。

「火曜日で、10時から閣議があった。総理は8時45分に官邸で報道陣にコメントした。その段階では被害状況を把握していない。午前中は甚大になる危険性ありというだけ。正午過ぎに死者203人と聞かされて、エッと驚いた。それからです」

被害状況の把握に手間取り、首相官邸の動きは鈍いものでした。被災者救出など政府の震災対策が本格化するのは、地震発生から6時間以上が経過してからで、初動の遅れに批判が集中しました。(文中敬称略)

阪神大震災

民主党の菅政権のときにも、様々な問題に対する対応が遅れがちで批判をうけました。結局菅政権は、崩壊し、民主党野田政権のときに、選挙で負けて、民主党は下野し、自民党の安倍政権が成立し今日に至っています。

東日本大震災の直後には、自民党の谷垣禎一総裁、公明党の山口那津男代表とも「全面協力」を表明し、一転して「政治休戦」となりました。ネットをみていると、東日本震災があっても、自民党は民主党をせめていたなどの記載などが散見されますが、それは単なる印象操作であり、震災直後からしばらくは、「政治休戦」体制が続いており、自民党が政権与党を徹底的に批判しだしたのは、復興の目処がたってからのことです。

今日の野党は、武漢肺炎が深刻になりつつあったときも「桜問題」で、安倍政権を追求し続けていました。

最近、この武漢肺炎がより深刻になってからも、「桜問題」を追求し、武漢肺炎でも、政権を批判しようとしています。

民主党政権時代の最大野党自民党とは、あまりにも違いすぎます。野党が一時的にでも「政治休戦」をせずに、与党を批判し続ければ、今度は野党に批判が集まり、野党の支持率は地に落ち、政権与党の支持率があがることでしょう。

そのような不毛なことはやめ「武漢肺炎」が、終息の兆しがみえるまでは、「政治休戦」をして、超党派で武漢肺炎の撲滅にあたるべきです。撲滅の兆しがみえたときに、「政治休戦」を採りやめれば良いのです。

そのようなこともせずに、今時のような危急存亡のときに、倒閣運動ばかりに力を入れていれば、やがて国民の怨嗟の声が、野党に向けられることになります。

自民党内も、「武漢肺炎」撲滅のため一致して事にあたるべきです。特に、親中派は、一時的にでも良いですから中国への忖度などはやめて、日本国の命を最優先して、とくにかく「武漢肺炎」を撲滅のため安倍総理に協力すべきです。

親中派も、この危急存亡のときに、中国に忖度を続ければ、日本も中国なみに、武漢肺炎の罹患者や死亡者が増えて、日本を危険に晒した首謀者として、国民から怨嗟の声があがることになるでしょう。

とにかく、今は挙党一致で、武漢肺炎の撲滅と、そうして後藤新平が革新的な帝都復興計画立案したように、革新的な危機管理計画を立案し、それが実行できる体制築くために邁進すべきです。

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2019年6月7日金曜日

ついに「在韓米軍」撤収の号砲が鳴る 米国が北朝鮮を先行攻撃できる体制は整った―【私の論評】日本はこれからは、米韓同盟が存在しないことを前提にしなければならない(゚д゚)!


鄭景斗・韓国国防部長官とシャナハン・米国防長官代行(韓国国防部公式より)

「在韓米軍撤収」の号砲が鳴った。米軍人その家族が半島から引き上げれば、米国は心おきなく北朝鮮を先制攻撃できる。(鈴置高史/韓国観察者)

司令部も家族も「ソウル脱出」

 米国のシャナハン国防長官代行は6月3日、韓国で鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防部長官と、米韓連合司令部をソウルから南方の京畿道・平沢(ピョンテク)の米軍基地キャンプ・ハンフリーに移転することで合意した。

 これにより、米軍の司令部や第1線部隊はソウル市内を流れる漢江の北からほぼ姿を消す。移転先のキャンプ・ハンフリーには国連軍司令部や在韓米軍司令部、歩兵2個旅団などが集結済みだ。

米韓連合司令部はソウル、ヨンサン区からピョンテク市に移動

 ソウルの北の京畿道・東豆川(キョンギド・トンドゥチョン)には米砲兵旅団が駐屯するものの、いずれ兵器を韓国軍に引き渡して兵員は米本土に撤収する計画と報じられている。

 米韓同盟に自動介入条項はない。北朝鮮軍が侵攻してきた場合、米地上部隊と兵火を交えない限り米国は本格的な軍事介入をためらう、と韓国人は恐れてきた。

 ことにイラク戦争以降、被害の大きい地上部隊の投入を米国は極度に嫌うようになった。防衛線となる漢江以北から米軍人とその家族が姿を消せば、北朝鮮の「奇襲攻撃でソウルの北半分を占領したうえ、韓国と停戦する」との作戦が現実味を帯びる。

 保守系紙、朝鮮日報は「韓米連合司令部が平沢に、米軍の仕掛け線は南下」(6月4日、韓国語版)で、朴元坤(パク・ウォンゴン)韓東大教授の談話を紹介した。以下である。

《平沢基地に行くというのは結局、米国は(軍事介入の引き金となる)仕掛け線たる陸軍を引き抜き、有事の際も空・海軍依存の「適当な」支援をする、ということだ》

 同じ6月3日、ソウルの米軍基地内にあった米国人学校が閉校し60年の歴史を終えた。在校生は今後、キャンプ・ハンフリー内の米国人学校などで学ぶことになる。

韓国人が在韓米軍を指揮

 では、米陸軍は漢江の南には残るのだろうか。専門家はそれにも首を傾げる。6月3日のシャナハン国防長官代行と鄭景斗国防部長官の会談で、米韓連合司令部のトップを韓国側が務めることでも合意したからだ。

 韓国軍の戦時の作戦統制権は米国が握っている。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は韓国に引き渡すよう要求、米国も応じていた。それに伴い、連合司令官も韓国側から出すことを今回、正式に決めたのだ。

 韓国人の連合司令官の誕生は、在韓米陸軍の撤収に直結する。米国は一定以上の規模の部隊の指揮を外国人に任せない。米軍人が副司令官を務めるといっても、在韓米軍の3万人弱の米兵士が韓国人の指揮を受けるのは米国の基本原則に反する。在韓米陸軍の人員が大きく削減されると見るのが自然である。

 そうなれば、あるいは米陸軍が韓国から撤収すれば、連合司令部は有名無実の存在となる。米国は韓国に海軍と海兵隊の実戦部隊を配備していない。在韓米空軍はハワイの太平洋空軍司令部の指揮下にある。

 連合司令部が指揮する米国軍が、ほとんど存在しなくなるのだ。米国にすれば、有名無実の連合司令部のトップなら韓国人に任せても実害はない、ということだろう。

 6月2日、シャナハン国防長官代行がソウルに向かう飛行機の中で、記者団に「米韓合同軍事演習を再開する必要はない」と語ったことも、在韓米陸軍の撤収を予感させた。もし陸軍兵力を残すのなら、韓国軍との合同演習が不可欠だからだ。

寝耳に水の南方移転

 米韓連合司令部の平沢移転は、韓国政府・軍にとって寝耳に水だった。在韓米軍司令部などが平沢に移っても、米韓連合司令部だけはソウルに残ると米国は約束してきた。

 首都ソウルに米国の高級軍人と家族が残る、という事実こそが、韓国人に大きな安心感を与えるからだ。だが5月16日、中央日報が特ダネとして「米軍が最近、連合司令部の移転を要請してきた」と報じて1か月もしないうちに、それが実現した。米国はよほどの決意を固めたのだろう。

 2017年にスタートした米韓の両政権ともに、同盟を重荷に感じていた。トランプ大統領はカネがかかる在韓米軍の存在に疑問を抱き「今すぐではないが朝鮮半島の米軍兵士を故郷に戻す」と約束した(拙著「米韓同盟消滅」(新潮新書)第1章第1節「米韓同盟を壊した米朝首脳会談」参照)。

 一方、文在寅政権の中枢は「民族内部の対立を煽る米帝国主義こそが真の敵」と固く信じる親北反米派が固めている(拙著「米韓同盟消滅」(新潮新書)第1章第1節「米韓同盟を壊した米朝首脳会談」参照)。

中国の脅しに屈した韓国

 米韓の間の溝は深まるばかりだ。米国や日本は経済制裁により北朝鮮に核を手放させようとしている。というのに、韓国は露骨にそれを邪魔する。

 世界の朝鮮半島専門家の多くが、文在寅大統領は金正恩(キム・ジョンウン)委員長の使い走りと見なすようになった。

 6月5日にも、文在寅政権は北朝鮮への支援用として800万ドルを国連に拠出することを決めた。人道援助の名目だが、国際社会はそのカネで購った食糧が軍に回るのではないかと懸念する(デイリー新潮「文在寅は金正恩の使い走り、北朝鮮のミサイル発射で韓国が食糧支援という猿芝居」参照)

 北朝鮮との緊張が高まった2017年3月、米国は慶尚北道・星州(キョンサンプクト・ソンジュ)にTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)を持ち込んだ。韓国と在韓米軍を北朝鮮のミサイル攻撃から守るためだ。

 だが、韓国政府は2年以上たった今も、配備を正式に許可していない。表向き環境影響評価に時間がかかると説明しているが、中国が怖いからだとは誰もが知っている。配備の場所が韓国南東部で中国から離れているのも、中国への忖度からとされる。

 中国は、韓国配備のTHAADの高性能レーダーが米国に向けて発射した自身のICBM(大陸間弾道弾)の検知に利用されると懸念する。

 2017年10月には「これ以上のTHAAD配備には応じない」との一札を韓国から取り上げた(拙著「米韓同盟消滅」(新潮新書)第2章第2節「どうせ属国だったのだ……」参照)。

 今年6月1日にシンガポールで開いた中韓国防相会談でも、中国はTHAADの話題を持ち出し、韓国を圧迫した模様だ。韓国政府は隠していたが記者の追及で明らかとなった。

「市民」がTHAAD基地を包囲

 親北反米派の「市民」はTHAAD基地の周辺道路を封鎖しているが、韓国政府は放置している。米軍はやむなく、食糧や燃料、交代要員を基地まで空輸している。

 米軍の度重なる要請を受け、2019年3月になって韓国政府は一般環境評価に重い腰を上げた。だが、今後も政府の時間稼ぎは続くと見られ「正式配備を認めるかどうか、結論を下すのに1年はかかるだろう」と韓国メディアは報じている。

 米議会調査局は5月20日に発表した「South Korea: Background and U.S. Relations」で「米韓の協力関係は、ことに北朝鮮に関しては、亀裂が深まる一方で先行きは予測しがたい」と断じた。

 中立的な議会調査局までが「米韓同盟はいつまで持つか分からない」と言い出したのだ。そんな空気が広がるワシントンにとって、米陸軍の韓国からの撤収は、当然、通るべき一里塚である。

 米下院軍事委員会は2020年度の国防授権法の草案から「在韓米軍の兵力の下限」を定めた条項を削除した。2019年度の同法は2万2000人と定めていた。

 なお、上院の軍事委員会は2020年度も2万8500人を下限とする草案を固めた。この条項は上下両院で調整することになるとVOAは「米下院、国防授権法草案公開…『韓国と情報共有強化』」(6月5日、韓国版)で報じた。

「先制攻撃は北に通報」

 急に現実味を帯びた在韓米軍の削減――。北朝鮮は喜んでいるのだろうか。確かに北朝鮮にとって、安全保障上の脅威である米軍の兵力削減は願ってもないことだ。米韓同盟の解体にもつながる話だから、普通なら大喜びするところだ。

 ただ良く考えれば、北朝鮮が攻め込まない限り、在韓米陸軍は脅威ではない。それどころか、北朝鮮のミサイルやロケット攻撃の人質にとれる。

 そして今は、先制攻撃も念頭に米国が核放棄を迫って来る最中なのだ。陸軍やその家族が引き揚げた後、米軍は思う存分、北朝鮮を空から叩けることになる。

 もちろん、在韓米空軍は特性を生かして、日本に瞬時に後退できる。そもそも韓国の空軍基地は使いにくい。そこから先制攻撃に動けば、文在寅政権が金正恩政権に直ちに知らせるのは間違いないからだ。

 文在寅氏は大統領選挙の最中の2017年4月13日、「米国が北朝鮮を攻撃しようとしたらどうするか」と聞かれ、「米国を止める。北朝鮮にも、先制攻撃の口実となる挑発をやめるよう要請する」と答えている(拙著「米韓同盟消滅」(新潮新書)第1章第1節「米韓同盟を壊した米朝首脳会談」参照)。

加賀とワスプ

 米国は北朝鮮の核施設への先制攻撃を、日本、グアム、海上から実施する。韓国の基地が使いにくい以上、北朝鮮に最も近い日本の基地が極めて重要になる。

 北朝鮮は「第2次朝鮮戦争に巻き込まれるな」との声が起きるよう、日本の左派陣営を煽ってきた。その意味で金正恩委員長は、トランプ大統領の5月25日からの3泊4日の訪日に、大きなショックを受けたに違いない。

 トランプ大統領とその夫人は、皇居で天皇陛下やご家族と親しく交わった。横須賀では、安倍晋三首相夫妻と海上自衛隊の空母型護衛艦「かが」に乗艦。その後、大統領夫妻は米海軍の強襲揚陸艦「ワスプ(Wasp)」にヘリコプターで移動した。

天皇陛下とトランプ大統領

 太平洋戦争で空母「加賀」は真珠湾攻撃に参加し、ミッドウェー海戦で米海軍の急降下爆撃機によって沈められた。先々代の米正規空母「ワスプ」は第2次ソロモン海戦で伊19潜水艦の雷撃を受けて大火災を起こし、総員退艦後に自沈した。

 太平洋の覇権をかけ死に物狂いで戦った2つの海洋国家が、固く結束し共通の敵に立ち向かう意思を表明したのだ。もちろん「共通の敵」の第1候補は北朝鮮である。

 在韓米軍撤収の号砲が、日米の運命的な結束誇示の直後に始まったことも、金正恩委員長の目には、さぞ不気味に映っていることだろう。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集


【私の論評】日本はこれからは、米韓同盟が存在しないことを前提にしなければならない(゚д゚)!

上の鈴置氏の記事の中で、トランプ大統領の日本訪問の意義の大きさを指摘していますが、私もそう思います。それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
安倍総理が米国でゴルフをしたときは、トランプ大統領がカートを運転したので、今回は安倍首相が
運転するのが当たり前だが、多くマスコミはトランプの運転手安倍総理ということで揶揄していた
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、今回の日米会談の意義に関する部分をこの記事から引用します。


様々な背景を知った上で、トランプ大統領のこれら一連の行動は何を意味するのかは、明らかです。それは、戦後はじめて、米国の大統領が大東亜戦争(米では太平洋戦争)の清算を日本で行ったということです。


そうして、これは大東亜戦争のわだかまりを捨てた日米関係のさらなる強化を意味します。そうして、これは中国・北・韓国にとって、大きな脅威です。
中国は貿易問題で米国と激しく対立しています。トランプ政権の制裁強化に対し、中国はすぐさま報復に出ましたが、どう見ても中国に勝ち目はないです。そもそも、中国の米国からの輸入量が米国の輸入量に比べて4分の1程度しかないのに加えて、米国からみれば、多くの中国製品は他国製品で代替可能だからです。 
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は先月、年内に「3回目の米朝首脳会談に応じる用意がある」との声明を出しました。ところが、一方で5月に入ると、短距離の弾道ミサイルを2度、発射しました。

それだけでは、国内強行派をなだめることがでなかったのか、2月の米朝首脳会談が物別れに終わった責任を問い、金革哲(キム・ヒョクチョル)対米特別代表、および事務レベルの交渉を行った複数の外務省担当者を処刑したとの報道もされています。

金革哲(キム・ヒョクチョル)氏

しかしこれでは、米国は痛くもかゆくもないです。国内の強硬派をなだめるために、何かせざるを得ないが、「これくらいなら大統領を怒らせないだろう」という中途半端な中途半端な短距離弾道ミサイルの発射です。逆に言えば「私も困っている。どうか、私ともう一度会ってください」というラブコールにほかならならなかったようです。

それでも、国内強行派はおさまらず、金革哲氏らを処刑せざるを得なかったのでしょう。米国との交渉の顔だった金革哲氏のような人々を処刑あるいは完全に排除することは、協議したことの全面否定を示唆することにもなり、米国に非常に悪いシグナルを送ることになりかねません。それでも、処刑せざるを得ないかったのは、金正恩がかなり追い詰められているということです。

一言で言えば、中国も北朝鮮も「八方塞がり」に陥っているのです。トランプ政権は相手が制裁に音を上げて動くのを待っていればいいだけです。北朝鮮による日本人拉致問題では、安倍首相も相手の出方待ちでしょう。無条件で正恩氏との会談に応じる姿勢を示しているのは、呼び水です
日米首脳会談により双方が基本認識を確認したので、中国と北朝鮮に対して、「ボールはそちら側にある」と対応を迫るかたちなりました。

本当は、中国の干渉を嫌う北朝鮮に籠絡された上、中国に従属しようとする韓国も、中国や北よりもさらに、「八方塞がり」に陥っています。文在寅は、米国と中国のバランスをとっているつもりのようですが、結果として、米国からも中国からも見放されています。

マスコミは、以上のような状況に全く対処できないのでしょう。これが、習近平や文在寅、金正恩などが来日して、首脳会談をして大歓迎ということであれば、大絶賛したのでしょう。なにやら、見出しが踊るのが目に見えるようです。残念ながら、そのような機会は永遠に来ないでしょう。ご愁傷様といいたいです。
 金革哲(キム・ヒョクチョル)対米特別代表の処刑に関しては、トランプ大統領自身は否定しています。これが事実かどうかは、まだはっきりしないところがありますが、このような噂が乱れ飛ぶくらいですから、金正恩が相当追い詰められていることには変わりはないです。

米軍は、今春になり韓国との大規模合同軍事演習をすべて打ち切りました。停止ではなく廃止です。ただし、大隊レベルの小規模合同演習は当面継続しています。トランプ大統領は盛んに「経費節減」を打ち上げ、米国防総省は「外交を後押しするための打ち切り」という側面を強調していますが、理由はそれだけではないでしょう。

より大きな戦略的判断が背後にあることを見落としてはならないてしょう。

第一に、もはや米国は、韓国を守るため、すなわち北の対南侵攻部隊を撃退するために自国兵士の血を流す気はないです。文在寅政権が対北宥和に汲々とし、自ら武装解除を進める以上、当然です。

また北への反攻に当たっても米側は基本的に地上軍を投入するつもりはないです。海空軍力による北の指令系統中枢や軍の拠点への攻撃は行っても、地上戦はもっぱら韓国軍の責任という仕切りになるでしょう。

従って、韓国領土の防衛および韓国領からの北進を想定した従来型の大規模合同演習は存在の意味を失ったのです。

一般的な現代同盟のあり方を考えても、これは自然な流れです。例えば日本領土に外国軍が侵攻した場合、地上で撃退に当たるのは日本の陸上自衛隊であり、米軍はそもそも地上戦闘部隊を日本に駐留させていないです。米軍は専ら「槍」の役割、すなわち海空軍力を用いた敵の拠点攻撃の役割を担うことになるでしょう。

一方、在韓米軍2万8500名の内訳は、目下、陸軍1万8500名、空軍8000名、海軍・海兵隊併せて2000名と「陸」偏重が明らかです。

従来のように北が異常に危険な存在という認識に立てば、「異常な」戦力配置も正当化されますが、韓国政府自らが北は「主敵」ではなく「気の合うパートナー」との認識に転換した以上、米軍が特異な配置を続ける理由はなくなりました。

米韓同盟が続くとしても、米軍は海空軍力による「槍」の役割に特化する方向に動くでしょう。その場合、敵の短中距離ミサイルの射程内にある韓国に基地を置く必然性はないどころか置かない方がより安全に攻撃態勢を取れます。

米韓合同軍事演習が廃止に至ったもう一つ見逃せない理由は、このブログでも以前掲載したように、情報漏れの阻止です。

米軍が現状の韓国と合同演習を行うと、機微な軍事情報が北朝鮮に筒抜けになると見ておかねばならないです。情報が伝わる先は北に留まらないです。北は南から得た情報を、中国、ロシア、イラン、キューバ等に適宜与え、代わりに別の秘密情報や禁輸物資を得ようとするでしょう。韓国と実戦に近い演習をすればするほど、米軍はより重要な作戦情報を世界中の反米勢力に知られかねないのです。

日本としては、38度線はすでに対馬にまで降りてきたと考え、これに対する準備をすべきでしょう。韓国からの軍事攻撃は滅多なことではないとは思いますが、いざというときには韓国から大量の難民が押し寄せることもありえます。さらには、北のテロリストが難民に紛れて入ってくる可能性は否定できません。

この状況に、日本は米韓同盟が存在しないことを前提で対処しなければならないのです。

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