2023年11月25日土曜日

米国が世界で失いつつある二つの力とは― 【私の論評】中東平和合意と国内価値観の変化がもたらした、米トランプ大統領の抑止力強化

 米国が世界で失いつつある二つの力とは

岡崎研究所

まとめ
  • ウォールストリート・ジャーナルの記事は、米国の抑止力喪失と戦略的後退に警鐘を鳴らす。
  • バイデン政権は中東の複雑な危機に直面し、イスラエルとハマスの緊張が高まっている。
  • 中国やロシアの挑発行動もあり、米国の抑止力の低下が懸念されている。
  • 問題は軍事力だけでなく、国内の価値観や公共意識の変化も影響している。
  • バイデン政権は軍事的な対応だけでなく、国内の価値観にも焦点を当てる必要があると指摘されている。

安倍晋三首相(当時)とミード氏(2016年)

 2023年10月19日付のウォールストリート・ジャーナル紙は、「米国が抑止力を失い、戦略的受動性に向かって次第に退却を始めると、世界はあるとき突然失速し、制御不能の錐もみ状態に陥る」という、ウォルター・ラッセル・ミードの警告記事を掲載している。

 この記事は、世界が抑止力を喪失し、戦略的な後退を経験する中で、国際情勢が混迷し、制御不能の状態に陥る危険性を警告している。この警告は、バイデン政権が中東で巨大で複雑な危機に直面していることを裏付けている。イスラエルとハマスの緊張が高まり、周辺のアラブとイスラム世界を巻き込んでいる。さらに、中国やロシアの挑発行動も顕在化しており、米国の抑止力が薄れつつあるとの指摘もある。


 この問題は、軍事力だけでなく、国内の価値観や意識の変化にも根差している。特に、前政権の大統領の行動やそれを支持する一部の米国民の態度、国内の社会的変化、そして抑止力における「ソフトウェア」とも言える価値観や公共意識の変化が問題視されている。

 このような状況が国際的な緊張を高め、地域的な軋轢をエスカレートさせる可能性がある。バイデン政権は、単に軍事的な対応だけでなく、国内の価値観や意識を巡る問題にも目を向ける必要がある。この議論は、今後の国際政治に大きな影響を与える可能性がある点で重要である。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】トランプ大統領のリーダーシップ:中東平和合意と国内価値観の変化がもたらした米国の抑止力強化

まとめ
  • トランプ前大統領の政策が中東の地政学を変革し、イスラエルと複数のアラブ諸国の間で歴史的な合意であるアブラハム合意を実現させた。
  • アブラハム合意により、イスラエルとアラブ諸国の関係が正常化し、イランの侵略に対抗する重要な同盟が形成された。
  • ハマスやその過激なイスラム原理主義のイデオロギーはアブラハム合意によって打撃を受け、中東での憎しみと戦争からの脱却が可能となった。
  • トランプ大統領は国内では保守的価値観を重視し、国旗や国歌、法の支配を尊重し、キリスト教的価値観を公共の場に取り戻すことを推進した。
  • 急進左派の政策は米国を弱体化させるものであり、トランプ大統領のリーダーシップが米国の立場を強化したといえる。
上の記事の一部を以下に引用します。これは、ウォルター・ラッセル・ミード氏による見解ではなく、岡崎研究所のものとみられます。
 この問題は、軍事力だけでなく、国内の価値観や意識の変化にも根差している。特に、前政権の大統領の行動やそれを支持する一部の米国民の態度、国内の社会的変化、そして抑止力における「ソフトウェア」とも言える価値観や公共意識の変化が問題視されている。
これに関しては、抑止力は軍事力だけではなく「ソフトウェア」とも言える価値観や公共の意識の変化も重要であるという点には同意します。

しかし、「前政権の大統領の行動やそれを支持する一部の米国民の態度」を問題視するという指摘にはとうてい同意できません。特に、一部の米国民の態度を問題視するという、発言はとうてい容認できません。犯罪者や、詐欺師を支持するようなことは、問題ですが、いかなる国においても、誰が誰を支持しようと、いかなる政策を支持しようと、それは自由であるはずです。

トランプ氏の支持者

前大統領とは、もちろんトランプ大統領を意味するのでしょうが、トランプ大統領はあらゆる面で米国を強化しました。彼は軍を再建し、退役軍人の処遇を改善し、中東に平和をもたらし、ここ国内でも愛国的な価値観を広めました。トランプ大統領の登場で抑止力が弱まったというのは、民主党のプロパガンダに過ぎません。ミード氏が心配しているのは、むしろバイデン大統領でしょう。

トランプ大統領は、平和は宥和ではなく力のパランスによってもたらされることを理解していました。彼はISISやイランのような敵に戦いを挑み、イスラエルとアラブ近隣諸国との間にこれまで想像もできなかったような協力をもたらしました。

トランプ大統領の指導の下、イスラエルはアブラハム合意として知られる一連の歴史的合意において、いくつかのアラブ諸国との関係を正常化することができました。何十年もの間、ほとんどのアラブ諸国はイスラエルの生存権を認めることさえ拒否していました。

彼らは不倶戴天の敵だったのです。しかし、トランプ大統領はイスラエルを強力に支持しつつイランに対する強硬路線とも相まって、中東の地政学的な同盟関係を再編成しました。UAE、バーレーン、スーダン、モロッコといった国々は、イランの侵略に対抗するなど、イスラエルと重要な利害を共有していることに気づきました。

そこで彼らは、外交関係と協力関係を正式に結ぶことに合意しました。数年前には考えられなかったことです。しかし、トランプ大統領のイスラエルとの揺るぎない友好関係と、過去の誤ったイデオロギーに屈しない中東へのビジョンが、これを可能にしたのです。

初めてイスラエルの民間機がサウジアラビア領空を通過できるようになりました。イスラエル人と首長国は公然とビジネスを共にすることができるようになりました。何世代にもわたって立ちはだかってきた憎しみの壁は崩れ始めました。

イスラエルと複数のアラブ諸国との間でこれらの国交正常化協定を締結したことで、トランプ大統領は、それまでのどの大統領もなし得なかったことを成し遂げました。彼は世界で最も戦争が絶えない地域のひとつに、恒久的な平和の見通しをもたらしたのです。

アブラハム合意は最高の成果であり、トランプ大統領の就任が世界における米国の地位を強化に貢献しました。

以下は、ドナルド・J・トランプ大統領、バーレーンのアブドゥラティフ・ビン・ラシド・アル・ザヤニ外務大臣、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、アラブ首長国連邦のアブドゥッラー・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤニ外務大臣が、2020年9月15日(火)、ホワイトハウスの南芝生でアブラハム合意に署名した直後の写真です。


テロリスト集団のハマスは、アブラハム協定とイスラエルとアラブ諸国の協力関係の拡大に激怒したのです。これらの合意は、ハマスと彼らの過激なイスラム主義イデオロギーにとって存亡の危機です。何十年もの間、ハマスはパレスチナ人や他のアラブ人の間でイスラエルへの憎悪を煽ることによって、彼らの大義を主張してきました。

彼らはイスラエルを全イスラム教徒の不倶戴天の敵として描いてきました。しかし、アブラハム合意はその物語を粉々に吹き飛ばしたのです。アラブの指導者たちは、イスラエルが脅威なのではなく、イランとハマスのようなテロリストたちが真の脅威なのだと認識したのです。

だからハマスは、ロケット攻撃やその他の暴力でイスラエルを攻撃したのです。彼らは和平プロセスを頓挫させ、イスラエルを再び孤立させ、自らの存在感を保とうと必死なのです。彼らの力は、協力や協調ではなく、対立から生まれるものです。

アブラハム合意は、中東が憎しみと戦争から脱却しつつあることを示すものでした。今回のテロ攻撃は、アブラハム合意によってもたらされた脅威に対する反動なのです。ハマスが恐れているのは、イスラエルによる反撃よりも平和的な協調とそれによる繁栄です。

彼らのロケット弾攻撃は、アラブ人の多くがもはや望まない、必要としない戦争に火をつけようとする絶望的な試みといえるでしょう。しかし、ハマスが暴力と憎悪によって地政学的にガザを支配する時代は終わろうとしています。

だからこそ、彼らはますます絶望的で破壊的な行動をとっているのです。アブラハム合意は、地域全体のテロリストにとって戦略的敗北でした。アラブ諸国が和平プロセスに参加すればするほど、ハマスとその一派は暴れ続けるでしょう。

しかし、彼らの大義は失われました。日本ではほとんど報道されませんが、多くのパレスチナ人は絶え間ない戦争ではなく、協力と協調で繁栄する未来を望んでいます。だからこそ、和平合意はイスラエルにとっても、中東全域の平和を愛するアラブ人にとっても勝利だったのです。ハマスの暴力は長期的には無益なものです。アブラハム合意は、取り消すことのできない協力の力を解き放ったのです。

ガザを行進するハマス戦闘員

国内では、トランプ大統領は、国旗、国歌、法の支配を尊重しました。トランプ減税で、景気を抑止、雇用を生み出しました。彼はキリスト教的価値観を公共の場に呼び戻しました。ホワイトハウスの現職とは異なり、米国の強さは、道徳に裏打ちされた勇気と価値観から始まることを確信していました。「国内の価値観や態度」の変化が国家の安全保障に大きく影響するというのは、まったくその通りです。

トランプ大統領は、米保守派の伝統的な価値観である「信仰、家族、自由」を大切にすることこそが、米国を真に偉大な国にするものと信じていました。こうした原則を攻撃し、分断の種をまくことで抑止力を弱めようとするのが急進左派です。

彼らの政策は、米国を弱くするものであって、強くするものでありません。トランプ大統領のリーダーシップは、世界の舞台における米国の立場を強化しました。米民主党こそ、移民政策をはじめとするその悲惨な政策、米国の伝統的価値観に対する軽蔑、独善的なポリティカル・コレクトネスと全体的な戦略的消極性によって、米国の抑止力を脅かしているといえると思います。

米国の最近の国内の価値観や公共意識の変化による抑止力の低下は、トランプ前大統領が招いたのではなく、アフガン撤退にも失敗し、ロシアへのウクライナ侵攻直前の対応等にも失敗したバイデン大統領が招いたと言って良いと思います。

バイデン氏が今後すべきは、上の記事にもあるとおり、軍事的な対応だけでなく、国内の価値観や意識を巡る問題にも目を向けるべきです。

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2023年11月24日金曜日

森永卓郎氏 岸田首相が小学生に説いた権力論をチクリ「見栄っ張り」「プライド捨てボケろ」―【私の論評】政治家はなぜ卑小みえるのか?民間企業にはみられるガバナンスの欠如がその真の原因

森永卓郎氏 岸田首相が小学生に説いた権力論をチクリ「見栄っ張り」「プライド捨てボケろ」

まとめ
  • 森永卓郎氏が岸田文雄首相に対し、内閣支持率低迷と減税策への不満を指摘し、「ボケろ」とアドバイスした。
  • 岸田首相の責任転嫁姿勢を批判し、責任を取らない点を指摘。「減俸しない理由」についても皮肉を交えて述べた。
  • 過去の発言にも言及し、「見栄っ張りでなく素直になるべき」と岸田首相にアドバイス。
  • 森永氏は自身の逸話を交えつつ、「正直に行こうよ」という意図を明かした。
  • 司会者のツッコミにも笑いながら対応し、「正直さを大切に」というメッセージを述べた。

森永卓郎氏

 経済評論家の森永卓郎氏が22日、ニッポン放送のラジオ番組「垣花正あなたとハッピー!」に出演し、岸田文雄首相に対して内閣支持率低迷に関連して、「ボケろ」というアドバイスを送った。岸田内閣では、9月の内閣改造後に政務三役が相次いで辞任し、岸田首相の打ち出した減税策にも批判が高まっていた。

 この日の国会では、野党から岸田首相の人事に関して不適切との指摘があり、岸田首相は「人事は適材適所だが、政治は結果責任。責任を感じている」と答弁したことが取り上げられた。これに対し、森永氏は岸田首相の責任を取らない姿勢を批判し、「重く受け止めると言ってるけど、どう責任を取るかは一切言わない。減俸さえしない」と述べた。そして、「減俸しない理由はわかる。例えば1人辞めて3割減俸にしたら、今は3人辞めてるんで9割カットになっちゃう。4人目出ると、逆にその分を払わなくてはいけなくなってしまう」と皮肉を交えて指摘した。

 また、森永氏は岸田首相の過去の発言にも言及し、「今年3月の福島視察時に小学生から首相を目指した理由を聞かれて『日本で一番権限が大きい人なので首相を目指した』と答えたが、見栄っ張りなのは良くない。プライドを捨てて素直になるべきだ」とアドバイスした。

 司会者の垣花アナが森永氏のアドバイスをツッコむと、森永氏は「実は僕のことを〝増税くそメガネ〟って言う人がいて、それが気になって気になって…。みなさん見てください、メガネに付いた〝うんちくん〟をどうしても外したかったんで、給付金じゃなくて減税にしたかったんですよ、と言ったら伝わるじゃないですか!」と珍アドバイスを披露。垣花アナは笑いながらツッコんだが、森永氏は「言いたいのは、もっと正直に行こうよってことです」と真意を語った。

【私の論評】政治家はなぜ卑小にみえるのか?民間企業にみられるガバナンスの欠如がその真の原因

まとめ
  • 安倍晋三氏は統治に重点を置き、政策展開やリーダーシップを大きな枠組みで行い、国家戦略やビジョンを重視した。
  • 安倍氏の経済政策「アベノミクス」は、日本経済の活性化や国際競争力強化を俯瞰した大局的な政策であった。
  • 安全保障政策や外交政策も、地域情勢や国家の安全を大きな視点から見据えた政策展開を行っていた。
  • 彼の統治スタイルは、政治を身近に感じさせるユーモアを交えた演説や会見を通じても表現されていた。
  • 安倍氏の統治姿勢は、細かな点よりも大局的な視野を重視し、国家全体を俯瞰して政策を推し進めることに焦点を当てていた。岸田首相はこの点を見習うべき。
私は、岸田首相に関しては、どうしても首相在任期間が歴代で最長となった安倍首相と比較されるということで、最初から負い目を背負っているところがあると思います。

安倍晋三元首相は、日本憲政史上最も長い8年8カ月にわたって首相を務めました。

安倍元首相の在任期間は次のとおりです。
第1次安倍内閣(2006年9月26日~2007年9月26日)
第2次安倍内閣(2012年12月26日~2014年9月3日)
安倍元首相は、2022年7月8日に奈良県奈良市で選挙演説中に暗殺され死亡しました。

悲劇的な最期を遂げた安倍氏です。一部の、リベラル・左翼勢力などの奇人、変人などは、別にして、多くの日本人は故人の悪し様に語るようなことはしません。良かったことを語ります。

安倍元首相

20歳〜30歳台の若い世代の人にとっては、物心ついてからつい最近まで、成人してからつい最近まで、総理大臣といえば、安倍晋三氏です。

人の世の常として、安倍総理にも毀誉褒貶はありましたが、安倍総理を正統に評価する人々の心の中では悲劇的最期を迎えてしまった安倍晋三氏に関して語るとき「毀」「貶」より「誉」「褒」のほうが強くなってしまいます。

私もそうです。実は第一次安倍政権のときは、私は安倍首相をあまり評価していませんでしたが、第二次安倍政権になってから高く評価するようになりました。そうして、現在安倍晋三氏のことを語るとすれば、第二次安倍政権における安倍首相のことを語ります。

このような、安倍晋三氏と岸田氏はどうしても比較されてしまうというか、多くの人は安倍晋三氏を総理大臣のスタンダード(基準)として、岸田総理大臣を見るわけです。

そうなると、なぜか岸田首相をはじめとして多くの政治家が、卑小な存在見えてしまうのです。

岸田首相

ただし、安倍晋三氏をスタンダートとすると、他の政治家が卑小に見えてしまうのには、それなりの理由があります。

ここで、安倍晋三氏がどのような人だったかを振り返っておきます。

どなたかは、忘れてしまったのですが、安倍晋三氏は細かいチマチマしたことが大嫌いで、大きく物事を考えることを好んだという人がいます。私は、これは本当だと思います。

安倍晋三氏は、政治家としてのキャリアを通じて、大きなビジョンや国家戦略を重視する姿勢を示してきました。彼がリーダーシップを取った際に焦点を当てたのは、経済政策の改革や安全保障政策の強化、外交戦略の構築など、国家全体を俯瞰した大きな枠組みでした。

例えば、安倍氏は「アベノミクス」として知られる経済政策を推進しました。これは、日本の経済を活性化するための包括的な政策であり、金融緩和、財政出動、構造改革などを含んでいました。彼の焦点は国家全体の経済の活性化であり、それによって国際競争力を高め、日本経済を持続可能なものにすることにありました。

また、安全保障政策においても、日本の国家安全保障の強化に力を注ぎました。中国や北朝鮮などの地域情勢を鑑みつつ、アメリカとの同盟関係強化や安全保障法制の整備など、大きな視点から国家の安全を図る政策を進めました。

さらに、外交政策においても、アジア太平洋地域や国際社会での日本の役割強化に重点を置きました。経済外交や国際貢献、他国との協力関係構築など、大局的な視点で日本の地位向上を目指す政策を展開していました。

これらの事実は、安倍氏が大きな枠組みや国家全体の視点で政策を展開し、細かい点よりも大局的な視野を重視していたことを裏付けるものです。

一方で、安倍晋三氏は政治家として公の場で饒舌であり、時折ジョークを交えて話すことがありました。彼の演説や会見では、政策や重要なテーマに関しては真剣に語る一方で、軽い雰囲気を作るためにジョークを交えたり、会場の雰囲気を和ませることもありました。

一例として、彼は自身の政策を説明する際に比喩やイメージを使うことがあり、その中にはジョークの要素も含まれていることがありました。一般の人々に政治を身近に感じてもらうために、ユーモアを交えたアプローチをとることがあったようです。

実際、私はそのような場面にたちあったことがあります。私は、安倍首相の講演会や選挙演説に何度か立ち会ったことがあるのですが、確かに、気さくな人柄で、饒舌で、多くの人々が度々笑っていました。

それに加えて、安倍氏の人柄や人間味あふれる一面が多くの支持を集めた一因とも言われています。高橋洋一氏は、安倍氏は饒舌であり、ジョークを交えて人々を楽しませることがあったと述懐しています。

しかし安倍晋三氏と、他の政治家との違いを際立てさせたのは、何といっても大きな枠組みで物事を考えるという姿勢です。

これこそが「政治家に欠かせない」姿勢です。なぜなら、政府の役割は、統治すること(ガバナンス)だからです。これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。
ただ事ではない財務省の惨状 同期ナンバーワン・ツー辞任 ちやほやされてねじ曲がり…―【私の論評】統治と実行は両立しない!政府は統治機能を財務省から奪取せよ(゚д゚)!

以下にこの記事から、統治に関わる部分を引用します。

"経営学の大家ドラッカー氏は政府の役割について以下のように語っています。
政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。社会のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。(ドラッカー名著集(7)『断絶の時代』)
この政府の役割をドラッカーは統治と名づけ、実行とは両立しないとしました。
統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い。 といいます。 

ガバナンスや統治という言葉は、多くの人に曖昧な意味合いで使われていることが多いです。一昔前の、大企業は世界中でガバナンスなどあまり意識しないで、運営していましたが、多くの企業が機能不全にいたるようになりました。そのような中、一部の企業がガバナンスという考え方を導入し、組織を編成しなおすと、また急激に成長するようになりました。

世界で初めて、ガバナンスという概念を取り入れた企業は、オランダの東インド会社(Vereenigde Oost-Indische Compagnie、通称VOC)だといわれています。ご存知のように、西洋列強による植民地政策は、ほとんどが失敗し宗主国に利益をもたらすことはありませんでしたが、唯一オランダ東インド会社による植民地政策だけが例外で、宗主国オランダに利益をもたらしました。

VOCは、ガバナンスの概念をどこから導入したのかは、はっきりしていません。しかし、当時のオランダでは、共和国制が採用されており、政府の統治は、議会、行政、司法の三権分立によって行われていました。この三権分立の考え方は、VOC憲章にも取り入れられ、VOCの統治体制の根幹となりました。さらに、当時の行政府は現在と比較するとかなり規模が小さく、特に政府の規模は小さく、統治に専念していました。統治と実行は厳密に区分されていました。

また、VOCは、東インド貿易を通じて、アジア諸国の政治や経済を学ぶ機会にも恵まれました。これらの経験から、VOCは、ガバナンスの重要性を認識し、それを自社の統治体制に導入したと考えられます。

VOC憲章は、ガバナンスの概念を初めて企業に導入したものとして、世界史上重要な役割を果たしました。VOC憲章は、その後のヨーロッパの企業経営に大きな影響を与え、現代のコーポレートガバナンスの基礎を築いたのです。

イギリスのインド統治も、統治と実行の分離は劇的に功を奏しました。統治者は、インド総督とその補佐官たち(20人程度の若者たち)でした。彼らは、インドの行政、軍事、外交などの全体的な統治を担っていました。しかし、実行の細かい部分は、現地の官僚や軍人、警察官に委ねられていました。

統治と実行を分離したことで、インド総督とその補佐官たちは、インドという巨大な植民地を、わずかな人数で統治することが可能になったのです。

このことを学んだ大企業は今日世界中で、統治と実行を分離しています。多くの形式や様式がありながらも、本社(本部)と子会社(事業会社)に分離し、本部が統治をし、事業会社が実行をするのです。これを曖昧にしたまま、企業規模を大きくすると、統治も実行もその能力が麻痺してしまうのです。

一方、行政府のほうは世界中で年を追うごとに肥大化し、統治と実行の区分が曖昧になり、今日機能不全に至っています。これを是正すべきとして、「小さな政府」を望む声も上がったのですが、未だそれは実現されていません。

さて、話を元にもどさせていただきます。多くの小規模事業や、中小企業がある時点から成長しなくなるのは、統治と実行を分離しないままというのが大きな要因です。急速に成長するベンチャー企業等が、途中から駄目になってしまうのもこれを曖昧にしたままというのがほとんどです。

中小企業においても優れた経営者は、ある時期から実行部分からは手を引き、部下や親族にそれを任せて自らは統治に専念するようにします。実行部分にはほぼ口を出しませんが、ただし、統治の観点からずれた場合にだけ、それを是正させるためにだけ口を出すようにします。

そうして、名ばかりの取締役ではなく、本当の意味での統治ができる取締役を育てることができた企業だけが、さらなる成長ができるのです。

ただ、世界中の巨大化してしまった政府が、未だに統治と実行が明確に分離されていません。その中でも、日本は特に分離されていません。政府の統治部分と官公庁の実行部分が分離されておらず、両方とも統治と実行を同時に中途半端に行い、能力が麻痺しているのです。そのような観点からみると、現状の日本の政治が信じられないほど非生産的で非効率であることが良く理解できます。

その中にあって、安倍晋三氏は首相として、大きな枠組みでものごとを考え、他の政治家よりは、統治に注力できたのでしょう。

安倍首相のセキュリティダイヤモンド構想で言及された四カ国

岸田首相や現状の多くの政治家に欠けるのはこの部分なのかもしれません。私は、上の記事「見栄っ張り」「プライド捨てボケろ」というアドバイスには概ね賛成なのですが、ただ、「大きな枠組み」でものを考えると言う姿勢なしに、このアドバイスに従えば、ただの「ボケ」にしかならないと思います。

現在の政治の仕組みは、残念ながら政府が統治に専念できる仕組みにも、官公庁が実行に専念できる仕組みになっていません。そのため、双方とも能力が麻痺しています。マスコミや評論家は、この麻痺状態を報道したり、仔細に分析するのみです。

ありていにいえば、政治家も、官僚も本来できもしないことを、できるという幻想に浸って、日々摩耗しているといえるのではないでしょうか。マスコミ等も出来もしないことを、できるはずだといって、本質には触れず、人の資質などに原因を求め、見当違いの批判を続けているというのが実情です。だから、それを見ている視聴者も閉塞感に苛まされることになるのです。

そこに、大きな枠組みで物事を考える、既存の政治家からみると稀有な存在である、安倍晋三氏が登場して、様々な改革を行ったのてす。

ただ、国民とすれば、稀有な存在である安倍晋三氏のような人物がでてくるのをいつまでも待つわけにはいきません。

やはり、現在大企業が行っているように、政治組織の統治と実行は分離すべきなのです。そうして、双方の麻痺を取り払い、まともに機能するようにすべきなのです。これは、旧来の枠組みから一歩もはみ出ることのできない、既存の政治家などにはできないことです。自民党内の若い世代の政治家、日本保守党などのような新たな勢力がこうしたことを推進していただきたいです。

それになし、個別で経済、安保、外交などを推進したとしても、物事はうまくは進まず、その挙げ句の果てに、政権が変わったり、状況が変わってしまえば、なし崩しになってしまいかねません。

私は、最終的には政府の下部組織である、官公庁は、何らかの形で、政府の外に出すべきと思っています。そうして、政府は統治、政府の外の官公庁は実行に専念する形を取るべきと思います。官僚組織は、そのようになってはじめて有効に機能するようになります。

しかし、ここで完璧主義の罠に嵌ることは避けるべきとは思います。完璧でなくても、少しでも改善すれば、結構な成果をあげられます。改善するたび、齟齬がないかを検証しながら実行すべきでしょう。急激な改革は、大きな歪をもたし政治的混乱をもたらす可能性もあります。

しかし、この方式の正しさは、すでに大きな枠組みで物事を考える安倍首相の登場で、それまで停滞していた、経済、安保、外交が進んだことでも証明されたと思います。大きな枠組みで考える習慣こそが、安倍晋三首相をして、他の政治家と比較すれば、統治に注力させることになったのです。

現状においては、岸田首相には、こうした安倍首相の統治に力点を置く、姿勢を見習ってほしいです。無論、大きな枠組みで考えるとはいっても、安倍晋三氏のようにはできないかもしれません。しかし、自らの得意分野だけでも、そうすれば、それだけでも、随分と変わると思います。そうして、統治と実行を分離することを目指しつつ、現状でできうる範囲内で組織改革をすべきです。そうすれば、さらに政治の世界もす少しずつでも変わっていくでしょう。

多くの政治家が政治改革にこれまでも取り組んできました。しかし、あまり成功したためしはありません。それは、おそらく、政府は統治に専念すべきという原則を忘れていたからだと思います。それなしに、政府や各官公庁がたとえどんなに素晴らしい戦略・戦術案や企画を立案し、能力が高く素晴らしい政治家が、理想に燃えて、政策提言を行ったとしても、統治も実行も麻痺している現状では、何事もうまくいきません。当然の帰結なのです。

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「心は女」事件 稲田朋美氏見解に有本香氏が反論「逮捕されたからいい、では済まされない」―【私の論評】トランプ氏の影響力が日本政治にも?日本保守党の注目の動向


2023年11月23日木曜日

「心は女」事件 稲田朋美氏見解に有本香氏が反論「逮捕されたからいい、では済まされない」―【私の論評】トランプ氏の影響力が日本政治にも?日本保守党の注目の動向

「心は女」事件 稲田朋美氏見解に有本香氏が反論「逮捕されたからいい、では済まされない」

稲田朋美議員

 三重県桑名市の温泉施設で男性が女性風呂に入った事件が、LGBT理解増進法に関連する議論を巻き起こしている。この出来事を受け、自民党の稲田朋美議員は事件と法律の関連性を否定しているが、これに対しジャーナリストの有本香氏は疑問を投げかけている。有本氏は、このような問題が法制定時から予測されていたことを指摘し、稲田氏に対する説明責任を求めている。一方、厚生労働省は公衆浴場での男女の判断基準を身体的特徴に基づいていることを改めて確認し、LGBT理解増進法の実施に合わせて通知を発出した。

 稲田氏は、理解増進法法制定前後で変わらず、この行為が犯罪であることを主張しているが、有本氏は法律よりも上位に位置する法制度に注目すべきだと主張している。彼女は、公衆浴場側が利用を拒否した場合に差別として訴えられる可能性や、犯罪者に免罪符を与えることになる問題を指摘している。さらに、同様の事件が起きた際、稲田氏がどのように対応するか、そしてLGBTに対する偏見を助長しないための法改正の必要性について言及。

 一部からは、稲田氏に対して責任を求める声も上がっている。有森氏は、日本社会は性転換や女装を含め包括的な姿勢を取ってきたため、LGBTに関する法律は必要ないとしつつも、少なくとも法改正は不可欠だと主張している。同様の問題が続けば、LGBTに対する偏見が増幅され、理解増進とは逆の方向に進む可能性があると懸念されている。稲田氏には、誤りを認め、是正する姿勢が求められています。

 稲田朋美衆院議員の回答全文は次の通り。


「事案の詳細を承知しませんが、理解増進法とは関係ないようです。公衆浴場や温泉施設の利用に関して厚労省が管理要領を定めており、男女の判断基準は身体的特徴によるものとすることになっています。これは理解増進法が制定される前後で全く変更はありませんし、法制定前も後も犯罪であるということをX上などで繰り返し申し上げてきました。いずれにせよ犯罪行為に対して、引き続き厳正に対応していくことは当然です」

以上は、稲田議員の回答を除き、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】トランプ氏の影響力が日本政治にも?日本保守党の注目の動向

私には、有本氏の主張はもっともであり、稲田氏の回答は、無責任であり政治家としてあるまじきものだと思います。

そうして、従来はこのような政治家がいたとしても、犯罪でも犯さない限り辞めさせることはできず、多くの有権者はこれをどうすることもできず、我慢するしかなかったというのが実情でした。

無論選挙で票を投じないということで、有権者は意思表示はできるのですが、稲田氏のような世襲の有力政治家には、資産があり選挙運動資金は潤沢であり、地元で強力な支援団体が存在しており、政治家としては相応しいとか相応しくない、あるいは能力などに関係なく、比較的若いうちに政治家になり、当選回数を重ねると、自民党内で重要な役割を担ったり、閣僚になっていくというのが今までのスタイルでした。

多くの有権者は、数十年に一回に現れるか現れないかの、安倍晋三氏のような政治家が現れることを待つしかありませんでした。その安倍氏も暗殺されてしまいました。今後すぐに安倍氏のような政治家が現れることはないでしょう。

安倍晋三首相

そのため、多くの有権者は「どうせ」などと諦め、政治に無関心になっていくという傾向がさらに強くみられるようになりました。

しかし、この古い政治スタイルが破られる可能性がでてきました。何と「日本保守党」の事務総長を務める有本香氏が、22日放送のネットニュース番組「ニュース生放送 あさ8時!」において、福井県に近々訪れることを明らかにしました。

この県は稲田朋美元防衛相の地元であり、LGBT法を推進したことで保守派の一部から離反を招いていました。有本氏は、「年末の予定が変動していましたが、ようやく福井1区にお邪魔する機会が見えてきた」と述べ、この目的については、全国からの支持や立候補についての意向を探るためだと説明しています。

また、有本氏は直接の候補者指名には否定的で、「立候補するか否かは未定であり、情勢を踏まえた上で判断するが、現時点でははっきりとは決めていない」と述べています。国際政治学者の島田洋一名誉教授も番組に出演し、「保守派の支持を集める魅力的な候補が立てば、福井1区では充分に勝算がある」と励ましました。

一方で、日本保守党が直面する課題について有本氏は、「政党要件を満たさないため、比例代表への重複立候補ができない。候補者に対して『小選挙区1本での戦い』を促すしかないため、候補者を見つけることが難しい状況にある」と述べています。

おそらく、私は、日本保守党は当初はこのようなことを実施するだろとみていましたが、やはりそうかと、思いを新たにしました。

現在日本保守党は、小さな存在ですが、一流作家の代表百田氏が率い、共同代表の河村たかし氏は、選挙戦術と戦略に長けた人物としてい知られていますし、事務総長の有本香氏有本氏はジャーナリストとして活動し、その明確な根拠に基づく保守派としての舌鋒鋭い発言は、保守党の発信力を強化することでしょう。

私は日本保守党は、当面結党の精神を忘れリベラル化してしまった自民党にかつをいれることになるのではと期待しています。

そうして、日本保守党は、来年の大統領選挙で最も有力とみられる、トランプ氏の選挙戦術・戦略を参考にすると良いと思います。

日本保守党が見習うべきトランプ勝利の鍵はいくつかあります。 

まずは、国民を第一に考えるポピュリズム的政策に焦点を当てることです。ポビュリズムとは、政治変革を目指す勢力が、既成の権力構造やエリート層を批判し、国民に訴えて、その主張の実現を目指す運動のことです。日本では、ネガティブに受け取られがちですが、米国ではポジティブに受け取られることが多いです。ここでいうポビュリズムとは、無論良い意味のそれです。

トランプ大統領にとってこれは、貿易や移民などに関する「アメリカ・ファースト」の政策を意味するものです。日本保守党にとっては、文化的価値、経済、外交をめぐる、よりナショナリスト的な政策を意味するかもしれないです。そうして、日本保守党はすでにこれに関する、スローガンをあげています。それは、「日本を豊に、強く」です。

トランプ氏の「アメリカ・ファースト」はマスコミなどに曲解されましたが、これは米国の孤立主義を意味するものではなく「米国を豊に、強く」というのが元々の意味です。実際、トランプ氏は大統領のときに、米国孤立主義など実行しませんでした。



トランプ氏は「沼地(The Swamp)」と戦うアウトサイダーとして立候補しました。「沼地(The Swamp)」とは、ドナルド・トランプが大統領選挙キャンペーン中に腐敗している、あるいは利己的であると描いた、ポリティカル・コレクトネスに凝り固まった政治組織やエリートのことです。

トランプ氏は「沼の水を抜く」と公約することで、一般市民よりも政治家やロビイストに利益をもたらすように仕組まれた政府機関に対する多くの有権者の不安を取り除くことを約束したたのです。

より具体的に言えば、「沼」とは次のような意味です。 長年の政治家や政府関係者は、公共の利益のためというよりも、現状維持や自分たちの権力を守ることに関心がある。 政治におけるカネとロビイストの影響力により、有権者よりもむしろ自分たちの利益のために、強力な特別利益団体が政策や法案を形成することができる。 実力よりもコネや便宜、特権に基づいて動く政治的王朝や階層のことです。「沼の水を抜く」とは、こうした状況を一掃するという意味です。

「沼の水を抜く」をイメージ化したイラスト

日本保守党が、これらから「アウトサイダー」として売り込むことができる候補者は、ポピュリストにアピールできるでしょう。

 連邦政府の官僚主義が拡大し、規制の行き過ぎがお役所仕事とコンプライアンスに起因するコスト高でビジネスを阻害し、経済に損害を与えているとトランプは主張しました。

「沼」とは、有権者が政府や政治体制について腐敗している、利己的である、非効率的であると認識しているすべてのものの比喩なのです。このことが日本では、ほとんど報道されていません。こうした「沼の水を抜く」ことを誓うトランプのような候補者が大きな支持を得るのは当然のことだと思われます。

日本保守党は、ますます「リベラル化」していく自民党に対抗して、真の保守主義を代表する立場をはっきりとさせています。有権者は、いままでの枠内でものごとをすすめようとするのではなく、枠を破り現状を打破しようとする候補者に熱狂するでしょぅ。このようなことは、安倍首相の登場を除けば、久しくなかったことから、支持するなどの次元ではなく熱狂することになるでしょう。

トランプ氏のように、日本保守党のリーダーたちも、保守層の有権者の心に響くような直接的な表現ができます。有本氏の「明確な証拠」に基づく「舌鋒鋭い発言」は、より信憑性を求める多くの有権者の心をつかむことでしょう。

日本保守党は、より重要な問題に焦点を当てるべきです。トランプ氏にとっては、移民問題やNAFTA(北米貿易協定)のような貿易取引などがそれに当たります。日本保守党にとっては、LGBT問題、教育政策などがそれに当たるでしょう。特に自民党が保守の核となる価値観を「忘れてしまった」分野で強い姿勢を示せば、自民党の支持者を引き離すことができるでしょう。

トランプ氏、百田氏、河村氏、有本氏のような指導者のカリスマ的人格は、草の根の熱烈な支持を集めます。支援者の熱狂を活用し、ポピュリスト的な魅力とメディアに精通した候補者を中心とした「ムーブメント」を構築することが鍵となります。

街頭演説をする、左から河村氏、百田氏、有本氏

現状維持の体制に対する有権者の不満を利用したこの種の反乱キャンペーンは、本質的に反体制的です。保守党はまだ小規模ですが、コミュニケーション、価値観、パーソナリティをめぐるこうした戦略に注力することで、その知名度を大幅に高め、成長を加速させることができるでしょう。

今後日本では、米国でトランプ旋風が起こったような、日本保守党旋風が巻き起こる可能性もでてきました。ただ、それまでの道のりは長いです。しかし、保守派からすれば、どうしても容認できないような議員に対して、一矢を報いることができるようになる可能性は高まってきました。これが具体化すれば、有権者の関心は嫌が負うでも高まると考えられます。

自分では、日本保守党はトランプ氏を参考にすべきという記事を書いたつもりなのですが、百田氏としてはトランプ氏の戦術・戦略を最初から参考にしているように思えてきました。百田氏はトランプ氏に注目してきたのは明らかであり、そもそも日本保守党は日本でもトランプ旋風のようなことを起こせないかということが、結党の動機となっている部分があるのかもしれません。

世襲政治家の典型でありながら、稀有の安倍晋三氏の戦術・戦略は、百田氏には参考にしたくてもできません。しかし、トランプは違います。日米では政治風土は無論、国民性や文化などは異なるものの、トランプ氏のやり方は、百田氏に多いに参考になっているものと思います。

無論、日本ではトランプというとネガティブに捉えられがちですが、日米メディアともトランプ氏をあれだけネガティブに報道しながらも、現在トランプ氏が来年の大統領選の最有力候補になっていることを考えれば、多くの米国人はそうは思ってはいないようです。私もそう思います。

この動きが、有権者の政治への関心を高め、さらに日本の政治を変える原動力になれば、幸いです。

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2023年11月22日水曜日

膠着状態のウクライナ戦争 カギはテクノロジーの革新―【私の論評】ウクライナ戦争、反転攻勢は膠着状態? 2~3年で占領地奪還の可能性も!

 膠着状態のウクライナ戦争 カギはテクノロジーの革新

岡崎研究所

まとめ
  • ウクライナのザルジニー総司令官は、戦争は膠着状態に陥っていると主張。
  • その原因は、双方のテクノロジーの水準が同じ水準に達したこと。
  • ウクライナが勝利するためには、ドローンや電子戦などの分野でテクノロジーの革新が必要。
  • 西側諸国はウクライナへの支援を継続する必要がある。
  • 米国の支援が減少すれば、ウクライナの勝利が遠のく。
ウクライナの攻撃型ドローン「バックファイア」

ウクライナ戦争は、2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻したことで始まった。当初は、ウクライナ軍がロシア軍を撃退し、首都キーウの奪還に成功するなど、ウクライナが優勢に進んでいた。しかし、その後、ロシア軍は反撃に転じ、東部・南部で攻勢を開始した。

ウクライナ戦争は、現在も膠着状態が続いている。両軍とも大きな損害を被っており、戦況は大きく動いていない。

ウクライナ戦争の膠着状態の主な原因は、双方のテクノロジーの水準が同じ水準に達したことにあると分析されている。

具体的には、ドローンや電子戦などの分野で、両軍の技術は急速に進歩した。そのため、両軍とも有効な打撃を与えることができず、泥沼の戦いが続いている。

ウクライナが勝利するためには、ドローン、電子戦、砲撃制圧、地雷除去の4つの分野でテクノロジーの革新が必要だと、ウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官は主張している。

ドローン

ウクライナ軍は、ドローンを使ってロシア軍の戦車や部隊を攻撃している。しかし、ロシア軍もドローン対策を強化しており、ウクライナ軍のドローンも撃墜されるケースが増えている。

電子戦

電子戦とは、敵の通信やレーダーを妨害する技術です。ウクライナ軍は、電子戦を使ってロシア軍の砲撃を妨害している。しかし、ロシア軍も電子戦能力を強化しており、ウクライナ軍の電子戦も効果が薄れつつある。

砲撃制圧

砲撃制圧とは、敵の陣地や戦力を砲撃によって無力化することである。ウクライナ軍は、砲撃制圧を使ってロシア軍の進撃を阻止しようとしている。しかし、ロシア軍は地雷や防御陣地を強化しており、ウクライナ軍の砲撃も効果が薄れつつある。

地雷除去

ウクライナには、ロシア軍が敷設した地雷が数十万個あると推定されている。これらの地雷は、民間人やウクライナ軍兵士の生命を脅かしている。

ウクライナが地雷を除去するためには、最新の技術や機材が必要となる。

西側諸国の支援

西側諸国は、ウクライナへの支援を継続している。しかし、ウクライナが要求する最新のテクノロジーや兵器を供給することには慎重だ。

特に、米国は、ウクライナが敗北しないよう、しかし米国がロシアとの対決に引きずり込まれないよう確保することに目的を定めている。そのため、ウクライナへの支援を慎重に検討している。

【私の論評】ウクライナ戦争、反転攻勢は膠着状態? 2~3年で占領地奪還の可能性も(゚д゚)!

まとめ
  • ウクライナの反転攻勢は、当初から2~3年かかると予想されていた。
  • ウクライナ軍は、ロシア軍の占領地を分断し、弱い方を攻める戦略をとっているようだ。
  • 反転攻勢に成功すれば、2~3年以内に占領された土地を奪還できる可能性があると考えられた。
  • 反転攻勢に失敗した場合は、5年以上、下手をすると10年膠着状態が続く可能性がある。
  • ウクライナは、2024年前半までに占領地を分断し、戦況を有利に導こうとしている。
現在のウクライの反転攻勢を膠着しているとみるのは、まだ時期尚早です。私は、もともとウクライナの反転攻勢は時間がかかるとみていました。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ウクライナ、反攻で「破滅的」損失 プーチン氏―【私の論評】今回の反転攻勢が成功すると、2~3年以内に占領された土地を奪還できるかも!戦争はまだ続く(゚д゚)!

ダム決壊で発生した水害

 ウクライナでダムが決壊したのは、テレビ報道などで皆さんご存知でしょう。決壊したのは2023年6月6日です。ウクライナ南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所のダムが、ロシア軍の攻撃によって決壊されたとされています。このダムは、ドニプロ川に建設されており、貯水池の水量は日本の琵琶湖の約3分の2に相当します。ダムの決壊により、洪水が発生し、少なくとも21人が死亡しました。また、広範囲にわたる農地や住宅が浸水し、深刻な被害をもたらしました。

この直前から、それまで散発的だったウクライナ反攻が、組織的に体系的に行われるようになったとされています。それが本当かどうかは、軍事機密なので、未だに明らかにされていません。真相は戦後に公表されるでしょう。ただ、大方の軍事筋はこの前後で、ウクライナの本格的反攻が始まったのは間違いないものとしています。

この事実をもとに、当時の私の分析では、この時点から2022年2月24日にロシアのウクライナ侵攻によって奪われた土地を奪い返すのに、2〜3年はかかるだろうとこの記事に掲載しました。現在は、この時からまだ5ヶ月が経過したばかりです。

この記事より、予測の元となった根拠の部分をあげます。
今後の見通しとしては 、 今回の反転攻勢によりロシアの占領地の分断に成功すれば かなり有利になります 。

ただ 、分断すると 、今度は突破した部分が挟み撃ちに遭うので 、逆にウクライナ側は挟み撃ちから守りきる陣地をつくらなければなりません 。

これを秋冬の地面がぬかるむ時期にまでに できれば 、 分断されたロシア軍の弱い方を来年 ( 2024年 ) 攻めることになるでしょう 。 つまり 、 ドンバス地方かクリミアのどちらか弱い方を攻めて 、 再来年にもう片方残った方を攻める形になるでしょう 。

今回の反転攻勢が成功すると 、 2 ~ 3年以内には占領された土地を奪還できるかも知れないです 。 無論奪還しても戦争が終わるとは限りませんが 、 少なくとも見通しは立ちます 。

一方で反転攻勢に失敗し 、 投入された12旅団が磨り潰されるようなことになると、組織的な反転攻勢は今後 、 難しくなります 。 そうなると5年以上 、 下手をすると10年ぐらい膠着状態が続くかもしれません。いずれにせよ、現在の反転攻勢が成功したとしても、すぐに戦争が終わるとはみるべきではないです。

結論を言うと、反転攻勢がうまくいったとして、2〜3年でロシアに今回ロシアに占領された地域を取り返すことができる、失敗した場合は、5年以上、下手をすると10年かかる可能性があるということです。そうして、クリミア奪還などはその後ということになります。

ウクライナ軍女性兵士 実写写真

このように時間がかかることは、多くの現代人がなかなか理解しにくいところがあると思います。現代人は、何をするにしてもスイツチ一つですぐにできます。部屋を温めたり、風呂に入るにしても、一昔前はそれなりに時間と労力がかかりましたが現在ではすぐにできます。

ただ、これは第二次世界大戦を振り返ると、理解できるかもしれません。

連合軍がノルマンディー上陸をしたのは1944年6月6日です。ヨーロッパでの戦争が完全集結したのは1945年5月8日です。したがって、ノルマンディー上陸からヨーロッパでの戦争が完全集結するまで、1年11ヶ月かかりました。

具体的には、ノルマンディー上陸から1年後の1945年6月6日には、連合軍がベルリンに進攻し、ドイツ軍の抵抗が激化しました。その後、ソ連軍が東から、連合軍が西からドイツに迫り、1945年5月8日にドイツは降伏しました。

物量では圧倒的に有利で、制空権、制海権を完全掌握していた連合軍がノルマンディーに上陸したという時点で、すでに戦争の帰趨は決まり、ドイツの敗北は決定的だったといえます。しかし、実際に 連合軍が勝利を手にするには、それから2年近くの歳月を要したのです。

これを考えれば、兵器弾薬は西側諸国がウクライナに供与しているものの、戦っているのはほぼウクライナ軍のみであり、しかも地上戦が主戦場ですから、最終的な勝利を得るためには、戦況の不利、有利にかかわらず、ある程度時間がかかるとみるべきものと思います。

地上戦であれば、兵員輸送車などはありますが、それでも移動手段の多くは、歩兵の歩行ということになります。しかも、歩兵は敵と戦闘しながら歩きますし、さらに弾薬や食料などの重装備を背負っての移動ということになります。

そうなると、一日では最大で10km、現実的には数キロと考えて良いでしょう。このようなことを考えれば、通常の移動からみれば、はるかに時間がかかることは、理解できると思います。

ノルマンディー上陸作戦

現時点で、膠着状態かどうかは、はっきりとはわかりません。そのため、現状の膠着状態は、当初から予想されたものなのかどうか、見極める必要があります。ただ、これはウクライナ、ロシア双方とも、情報戦を展開していることから、現時点では正しく判断するのは難しいです。正しく判断できるようになるのは、これも戦後でしょう。

ただ、ワレリー・ザルジニー総司令官が「膠着状態」であると強調することには、それなりの理由があると考えられます。

ウクライナは、2024年アメリカの大統領選を前に、西側諸国からの支援を維持するために、冬季にも攻勢を続けることを決めたようです。

その理由の一つは、2024年以降は、米国に共和党の大統領が登場した場合、米国の支援が減少する可能性があるため、なるべく目に見える戦果を挙げて米国の支持を取り付けたいのでしょう。

もう一つは、前回の反攻作戦で、ロシア軍に地雷原を敷設される時間を与えてしまった反省から、冬季でも攻勢を継続して、地雷を敷設する時間を奪いたいからとみられます。

もちろん、冬季攻勢にはリスクもあります。しかし、ウクライナは、ドローンなどによる上空からの支援を計算したうえで、決断したようです。

ウクライナは、2024年前半までに、初期に想定された戦果である、南部から東部に広がるロシアの占領地の分断をしなければならないという悲壮な決意を持って戦いを継続しているとみられます。無論、分断に成功したとしても、それだけでは決着はつかず、戦争は継続します。しかし、2024年の前半までに、分断しなければ、戦況はかなり不利になる可能性もあります。

ただ、戦闘は不確実なものであり、当初の目論見どおりになる可能性は低いとみておくべきです。

ウクライナ側は、こうした状況を、支障のない限りにおいて、西側諸国に伝え、西側諸国は、短気を起こさず、気長にウクライナに対して支援を継続すべきでしょう。

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2023年11月21日火曜日

支持率低下は「不思議」 岸田政権の政策を評価―十倉経団連会長―【私の論評】岸田政権の支持率低下を打開し、長期政権を維持するために必要な施策とは?

支持率低下は「不思議」 岸田政権の政策を評価―十倉経団連会長

経団連 戸倉会長

 経団連の十倉雅和会長は20日の記者会見で、岸田政権の支持率低下に歯止めがかからないことについて、「一つ一つの政策は正しい方向で、それぞれ評価している。なぜこれで支持率が上向かないのか私も不思議だ」と述べ、現政権が掲げる政策について前向きに評価した。

【私の論評】岸田政権の支持率低下を打開し、長期政権を維持するために必要な施策保守回帰?

まとめ
  • 岸田政権が崩壊した場合、次の政権は岸田政権とあまり変わらないか、よりリベラル寄りでかつ財務省よりになるかのいずれかになる可能性が高い。
  • 岸田政権が崩壊した場合、安倍政権からの懸案である憲法改正などの議論が遅れたり、首相交代で日本の国際的地位の低下などが考えられなどの混乱は必至であり、であれば現状では政権は維持したほうが良い。
  • 岸田政権の支持率は低下しており、政権運営能力の向上が求められている。
  • 具体的な施策としては、内閣と党内からリベラルでいわゆる進歩的な人物を一掃し、消費税減税を実施、中国と北朝鮮に対して強硬路線をとる、LGBT理解増進法などリベラルな社会政策を縮小すべき。
  • 安倍政権から懸案になっている憲法改正を強力に推進する、権力を強化し、改革を積極的に推進すべき

岸田首相

私は、以前このブログで、岸田政権が現在崩壊することは、国益の損失につながる可能性があることを指摘しました。

自己の希望や観測などを廃して冷静に分析すると、岸田政権が崩壊すれば、次の政権は現在の岸田政権とあまり変わりないか、よりリベラル寄りでかつ財務省よりになるかのいずれかになる可能性が高いです。

岸田政権が崩壊した場合、安倍政権からの懸案である憲法改正などの議論が遅れたり、首相交代ということで日本の国際的地位の低下などが考えられ政治的大混乱は必至なので、であれば現状では政権は維持したほうが良いとい結論になるというものです。

安倍首相


自民内党保守派もこのことを理解しているので、いまのところ大きな派手な動きはしないのでしょう。そうして、最近の池田大作氏の大往生も、この傾向に拍車をかけるでしょう。

そうして、来年の総裁選までの間に岸田政権には、政権運営能力をつけるべきであり、そうでなければ、来年の総裁選で敗北か、そもそも菅氏のように総裁選に出馬しないということもやむ無しだと思います。ただ、政権運営能力がつけば、当面は継続したほうが良いと思います。

支持率の低下をみれば、とても戸倉氏のように手放しで、称賛する気にはなれません。岸田政権が崩壊した場合、公明党との連立が破棄されるとか、高市氏が次期総裁になるということが確約されているというのであれば、岸田政権はすぐにも崩壊したほうが良いと思います。ただ、現実はそのようなものではないです。だから、気軽に岸田政権崩壊などという事などできないのです。

私は、財務省が倒閣運動に走っているとか、自民党内で岸田おろしが始まっているなどの声もありますが、崩壊後の自民党内の大混乱を考えると、岸田政権崩壊はすぐにおこることはないと考えています。各派閥とも、現在は状況を見極めている段階で、すぐに何かをするという状況にはないと思います。無論何か状況が変わるということもあり得ますが、支持率が落ちても岸田政権はしばらくは存続すると思います。

財務省

岸田首相はこのような状況をただ、甘受することなく、政権運営能力に向上につとめていただきたいです。

政権運営能力とは、政府の政権運営能力とは、政府が国政を円滑に運営する能力のことです。具体的には、以下の要素が挙げられます。

政策形成能力

政策形成能力とは、国民の要望を踏まえて、効果的な政策を立案・実行する能力です。具体的には、以下の能力が求められます。

  • 国民のニーズを的確に把握する能力
  • 政策の目的や効果を明確に定める能力
  • 政策の実現可能性を検討する能力
  • 政策を実行するための計画を立てる能力

政治調整能力

政治調整能力とは、与党内、また与野党間において政策や人事を調整する能力です。具体的には、以下の能力が求められます。

  • 相手の立場や意見を理解する能力
  • 妥協点を探る能力
  • 合意形成のためのリーダーシップを発揮する能力

危機管理能力

危機管理能力とは、自然災害や経済危機などの危機に迅速かつ適切に対応する能力です。具体的には、以下の能力が求められます。

  • 危機の兆候をいち早く察知する能力
  • 危機の状況を正確に把握する能力
  • 危機に対処するための計画を迅速に策定する能力
  • 危機対応を統括する能力

国民とのコミュニケーション能力

国民とのコミュニケーション能力とは、国民の理解と支持を得るために、政策や施策をわかりやすく説明する能力です。具体的には、以下の能力が求められます。

  • 国民の視点に立って、政策や施策を説明する能力
  • わかりやすい言葉で、簡潔に説明する能力
  • 国民との信頼関係を構築する能力

政府の政権運営能力は、国政の成否を左右する重要な要素です。政府は、これらの要素を向上させ、国民の期待に応える政権運営を行うことが求められます。

岸田首相が政権運営能力を改善するためは、 内閣と党内からリベラルでいわゆる進歩的な人物を一掃すべきです。一掃が無理なら、要所要所に保守派を配置し、牽制すべきです。自由市場経済、伝統的価値観、強力な軍事力を支持する堅実な保守派と入れ替えるべきです。岸田首相には、弱腰の穏健派ではなく、忠実な保守派が必要だと思われます。これを実施することにより、自民党の岩盤支持層が戻ってくるでしょう。

自民党本部

消費税減税を実施すべきです。現在の国民の不満は、物価上昇に賃金の上昇が追いついていないことです。これを解消するには現時点で最も有効なのは、消費税減税です。これによって、多くの国民の支持を回復することとができます。

海外からのエネルギー、資源価格は、来年は下がるとみられ、物価の急激な上昇は来年は収まるものとみられます。小麦の値下げなど、その兆候はすでに現れつつあります。

物価が落ち着けば、消費税減税は、今年あたりは、物価上昇分を補うという性格が強かったものが、消費者の購買意欲を加速し、経済に良い影響を与えることでしょう。これは、ビジネスリーダーや市場関係者からも歓迎されるでしょう。そうすることで経済成長を刺激し、多くの国民からの支持が回復するでしょう。

特に減税措置は、補助金よりも実施が簡単で、迅速に実行できます。これでいわゆるお役所仕事はかなり削減できます。そうして、有効需要の考え方からすれば、減税も同じ効果があります。しかも、はやく実現できるので、国民の納得感は他の施策をはるかに上回ります。

そうして、こうした政策の根底には、時給ギャップ16兆円を埋めることが第一義であることを忘れるべきではありません。マクロ経済を知らない愚かな政治家や官僚、マスコミが「バラマキ」と批判しますが、需給ギャップを埋めるだけの対策を行わなければ意味がありません。経済対策はまずは何よりも「量」であることを認識すべきです。

中国と北朝鮮に対して強硬路線をとるべきです。防衛増税は廃止し、国債で資金を調達し防衛費増をすることを高らかに宣言すべきです。米国との同盟を強化し、中国の領土的野心に立ち向かい、国家安全保障の強さを示し、「タフリーダー」としての信任を高めるべきです。

岸田首相は保守主義に回帰し、真の保守主義者を目指すべき AI生成画像

LGBT理解増進法などリベラルな社会政策を縮小し、警察や国境警備の予算を増やし、伝統的価値観を教える教育改革を進めるべきです。さらに、安倍政権から懸案になっている憲法改正を強力に推進すべきです。これにより保守層を取り込むことができます。

権力を強化し、改革を積極的に推進すべきです。党内や官僚機構からの抵抗に打ち勝つため、臆することなく政治的権限を行使すべきです。大胆な改革は、たとえ物議を醸すとしても、多くの国民は岸田首相を変革的リーダーとみなすことになるでしょう。

自民党の結党の精神は「保守主義」です。岸田首相は真の保守主義者としての役割を果たし、お役所仕事を削減し、経済を浮揚させ、ビジネスを支援し、軍備を増強し、伝統的な価値観を推進し、大きな政治的反対勢力が形成される前に迅速に動くことで、機先を制するべきです。

以上は、私の願望なのですが、岸田首相がこの願望をいくつかでも果たしていただいて、岸田政権が長期政権になり、真の国民目線の保守政権ができるまでの揺りかごとしての役割を果たしていいただきたいものです。無論、上で述べたことをすべて実現していただけるなら、安倍政権を超える長期政権を目指すべきです。

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2023年11月20日月曜日

プーチン大統領「アイヌはロシアの先住民族」差別理由に北海道侵攻!? 幕府の「蝦夷地」防衛の歴史を国民共有の知識に―【私の論評】北海道の歴史誤解とアイヌ文化、縄文時代からの起源と差別的言葉の歴史(゚д゚)!

江戸幕府の北方防衛
プーチン大統領「アイヌはロシアの先住民族」差別理由に北海道侵攻!? 幕府の「蝦夷地」防衛の歴史を国民共有の知識に

まとめ
  • 江戸幕府は、蝦夷地、樺太、千島をわが領土として防衛した。
  • ロシアは、アイヌを「ロシアの先住民族」に認定する考えを示し、北海道侵攻の可能性も指摘されている。
  • 北海道の歴史年表や教科書、副読本では、江戸時代の蝦夷地が「アイヌ時代」となっており、アイヌの文化や言葉を奪い差別してきたという趣旨が広まっている。
  • 北海道知事、道庁、道議会が開拓の歴史を抹殺しようとする動きがある。

プーチンが狙う北海道の大地

 江戸幕府は、ロシアの脅威に応じて、蝦夷地、樺太、千島をわが領土として防衛した。そのために、松前藩統治や幕府直轄統治を実施し、地図を作製するなど、領土確定に努めた。

 しかし、すでに樺太と千島はロシアに奪われており、残る蝦夷地も「アイヌのもの」を理由に奪われる恐れがある。

 ロシアのプーチン大統領は、アイヌを「ロシアの先住民族」に認定する考えを示しており、これは日本のアイヌ先住民族決議を逆手に取った動きと見られる。

 また、ロシアは昨年ウクライナに侵攻し、「ロシア系住民の保護」などを口実に、北海道侵攻の可能性も指摘されている。

 さらに、北海道の歴史年表や教科書、副読本では、江戸時代の蝦夷地が「アイヌ時代」となっており、アイヌの文化や言葉を奪い差別してきたという趣旨が広まっている。

 北海道開拓記念館は、アイヌ民族文化研究センターと統合してアイヌ史観の北海道博物館に変更され、北海道百年記念塔も解体された。

 これらは、北海道知事、道庁、道議会が開拓の歴史を抹殺しようとする動きと言える。

 このように、ロシアは北海道を奪取しようとする意図を隠しておらず、北海道の歴史を歪曲する勢力も存在している。

 このままでは、ロシアが「差別されているロシアの先住民族アイヌを救う」と北海道を侵略してきても、反論すらできない恐ろしい事態となる。

 そこで、江戸幕府の北方防衛の事実を国民共有の知識とし、北海道の歴史年表や教科書、副読本の間違いを修正し、北海道を奪取しようとする勢力の撃退の実現が急がれるのである。

この記事は元記事の要約です。詳細をご覧になりたいかたは、元記事を御覧ください。

■中村恵子(なかむら・けいこ) 札幌市生まれ。北海道大学大学院法学研究科修了。医療法人を経営する傍ら、長年にわたり一般社団法人、廃棄物資源循環学会(現在フェロー、元理事)に所属し、ライフワークである循環型社会構築のための執筆や講演、研究活動を行ってきた。1995年度リサイクル推進功労者等表彰通産大臣賞。一方、北海道の開拓と歴史を調査し、先人たちの名誉を守り、自虐史観から脱却した「北海道の開拓、歴史の事実」を伝える活動を続けている。著書に、第5回アパ日本再興大賞優秀賞を受賞した『江戸幕府の北方防衛』(ハート出版)、編著に『これでいいのかごみ行政』(横山出版)、『災害廃棄物分別・処理実務マニュアル』分担執筆(ぎょうせい)など。論文も「ごみ処理有料化の実態及び市民意識」(92年、廃棄物学会誌)など多数。

【私の論評】北海道の歴史誤解とアイヌ文化、縄文時代からの起源と差別的言葉の歴史(゚д゚)!

まとめ

  • 北海道の歴史年表や教科書に誤った「アイヌ時代」の記載あり、アイヌ文化の奪取や差別が誤解されている。
  • 縄文人が北海道に住み、後に現れたアイヌは縄文人の変種とされる。
  • 歴史的にアイヌの征服はなく、彼らの先住民族としての位置づけが議論されるべき。
  • 「旧土人保護法」はあくまで、アイヌ保護の法律であり差別的意図はない。保護には制限がともなうこともあり、それが後年差別と認識されるようになった。
  • 「旧土人保護法」は必要性がなくなったために、廃止されたが、2019年に「アイヌ民族支援法」が成立したのは不可解であり、危機を招く可能性もある。

蝦夷の歴史地図


上の記事では、以下のように述べられています。
北海道の歴史年表や教科書、副読本では、江戸時代の蝦夷地が「アイヌ時代」となっており、アイヌの文化や言葉を奪い差別してきたという趣旨が広まっている。

 これは、明らかな間違いといえます。

北海道大学の教員である境信哉教授が、ツイッターで「アイヌは先住民族でないことは確かです」と発言し、これが活動家による抗議で削除された。2019年に制定されたアイヌ施策推進法は、アイヌを「北海道の先住民族」と規定したが、学問的には誤りであるとしています。これは、純粋に学問的に事実を探求していったら、そうだったということであり、これを否定するのは間違いです。

縄文時代に北海道には縄文人が住んでおり、その後にアイヌが現れました。DNA解析によれば、縄文人は日本列島に4万年前から存在し、遺伝的には琉球人に近いです。アイヌは縄文人の変種であり、一部の縄文人が農耕を拒否して北海道で狩猟・漁撈・採集の生活を続けたとされています。

日本人は縄文人と弥生人の混血であり、アイヌも縄文人の変種ですが、北方系の形跡も持っています。多くの縄文人は弥生人と混ざり、平和的に日本人になったのですが、一部の縄文人は北上あるいは南下し、アイヌや琉球人になったとされています。

日本がアイヌを征服したという史実はなく、彼らはほとんど抗戦せず、征夷大将軍の存在も中世には意味が薄れました。遺伝的にも歴史的にも、アイヌを先住民族と呼ぶことは誤りであり、北海道大学は「処分を検討中」とのことですが、歴史的事実を学問的に議論すべきです。

“旧土人保護法”はアイヌを土人扱いした差別法で、同法撤廃はアイヌ民族の悲願だった」と吹聴する方々がいますが、これは大嘘です。各地のアイヌ総代等の請願がある中で同法は制定され、廃止に反対し続けたも「北海道アイヌ協会」でした。"北海道旧土人保護法"制定はアイヌの度重なる帝国議会への請願で制定されたのであり、アイヌ団体ご一行直接北海道議会にまで行って請願したという記事は多々ああります。自虐的な嘘の歴史を捏造する方々は、日本人には百害あって一利無しといえます。

そもそも"旧土人保護法"の「土人」という言葉が明らかに差別であるとする方もいますが、これも大きな間違いです。

「土人」という言葉は、歴史的には特定の文化や民族を指すために使用されてきました。元々は差別用語ではなかったのです。

その名残はつい最近までありました。20〜30年前に、商社出身で、引退後タイに住まわれている人が、「土人」という言葉を頻繁に使っいました。当時「土人」とは差別用語だと信じて疑わなかった私は、この方が「土人」という言葉を頻繁に使うのて、ドギマギしたことを覚えています。

気になったので、本人に聴いてみると、このかたは「土人」という言葉を「現地人」くらいの意味で使っており、この方が現役の商社マンだったときには、「差別用語」などとは意識していなかったそうです。

たとえば、次のような使い方がされていました。「彼は日本人タイ土人だ」。この意味するところは、「彼はタイに在住する日本人だ」位の意味であり、差別ではなかったのです。

「土人」という言葉が差別的な意味を持つようになった時期は、歴史的には曖昧ですが、おおよそ20世紀前半から中ごろにかけてその差別的なニュアンスが強まっていったと考えられています。

「第三国人」という言葉も差別用語として、この頃認識されるようになりました。「第一国人」「第二国人」「第三国人」という言葉は、米軍が使用した用語で、戦争や占領下の状況において、地域住民や外国籍の人々を区別するために用いられました。

「第一国人」は、占領国の国民を指し、「第二国人」は占領国に住んでいるが、国籍は占領国ではない人々を指し、「第三国人」はそれ以外の第三の国籍を持つ人々を指していました。この区別は、戦後の占領下や米軍基地の管理などで使用されていました。

日本などの占領下にあった国では、米軍がこのような区分をしており、その際に「第三国人」という言葉が使用されたとされています。しかし、この用語はその後、日本を含む他の地域でも一般的な言葉として使われるようになり、外国籍の人々を区別する際に用いられるようになったと考えられます。

第三国人の本当の意味を示す新聞記事

この頃「ちびくろサンボ」という童話も、差別的として流通しなくなりました。「ちびくろサンボ」は、インドの童話「リトル・ブラック・サムボー」を原作とする絵本で、日本でもかつて親しまれていた絵本の一つです。物語は、黒い肌の少年がタイガーたちと対話しつつ、様々な魔法を使って自分を守る、という内容です。

しかし、この絵本は登場人物が肌の色を黒く描かれており、その表現が差別的だとして議論を呼びました。黒人をステレオタイプ化し、差別的な表現が含まれているとの批判があり、そのため現在では社会的な問題視されており、出版されることは少なくなっています。

絵本自体は昔日本で広く愛され、読まれていましたが、多くの人々からの批判を受け、黒人のステレオタイプ化や差別的な表現を含むため、現在では見直され、出版や流通が制限されています。

ちびくろサンボの絵本は1980年代に日本の書店から姿を消した

「旧土人保護法」とは、かつて日本で存在した法律の一つで、先住民族であるアイヌ民族を対象とした法律です。明治時代の1899年に制定され、1946年に廃止されるまで存在しました。

この法律は、アイヌ民族の文化や生活を保護し、その福祉を向上させることを目的としていました。保護するためには、一定の制限も必要な場合もあり、それが差別と認識されたようです。

1946年あたりには、いわゆるアイヌ人と言われる人でも、アイヌ人の文化を色濃く継承し生活している人も少なくなり、一般の日本人と区別がつかないほど、日本人と同じ生活をする人がほとんどになったため、保護をする必要もなくなったと判断して廃止されたものです。

私自身も、北海道に長年住んでいますが、具体的にアイヌ人が差別されているところに出くわしたことはありません。無論、教室の中にアイヌ人を血を受け継いだ人がいたということがあったように記憶していますが、だからといってその人を差別したり、日本人ではないという意識で接したことはありません。最近では、それすら気に留めたこともありません。

それに、アイヌ人とされる、日本人とは明らかに異なる文化や言語を持った人々が、北海道に住んでいたことは間違いのない事実であり、これ自体を否定するものではありません。しかし、和人がアイヌ人を迫害して、文化を破壊したなどということには、とうてい賛同できるものではありません。

「旧土人保護法」が必要とされなくなってから年月がたった2019年に「アイヌ民族支援法」(アイヌ新法)が成立した事自体が不可思議と言わざるを得ません。

日本国内で「不可思議」などと言っているうちは良いですが、日本を分断しようという勢力にこれを活用されたり、プーチンに日本侵攻の口実に使われたりしまえば、たまったものではありません。

日本が、いわゆるアイヌ人と非アイヌ人とで分断されたり、プーチン等に侵略の理由を与えるようなことになってしまっては、本末転倒というものです。

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