2023年11月8日水曜日

イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング―【私の論評】イスラエルの軍事行動、日本の平和主義に何を問う(゚д゚)!

イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング

ポール・ロジャーズ(英ブラッドフォード大学教授〔平和学〕)
  • イスラエルは過去40年にわたり、武装組織との戦闘で挫折を繰り返してきた。
  • レバノン侵攻に始まり、ヒズボラなどのイスラム過激派組織の活動が台頭した経緯がある。
  • ガザ地区ではハマスとの対立が続き、イスラエルは2008年から2021年にかけて4回にわたる攻撃を行ったが、民間人の犠牲が増加し、国際的な非難を浴びた。
  • ネタニヤフ政権は地上侵攻の意味を理解できず、支持が薄れており、ハマスに拘束された人々の家族は人質救出を優先する声が高まっている。
  • 国際社会でも懸念が高まり、国際的な支持が減少している。
イスラエル軍

過去40年間、イスラエルは武装組織との戦闘において多くの挫折を経験してきた。この苦い歴史は、1982年のレバノン侵攻に端を発し、イスラム過激派組織ヒズボラの台頭につながった。その後、イスラエル軍は何度も敗北を経験し、2000年にはレバノンから完全に撤退した。

2006年にヒズボラのロケット攻撃に対抗するため再びレバノンに進攻したが、結局は撤退し、空爆によりレバノンのインフラに大きな被害をもたらした。2007年からはパレスチナ自治区ガザを支配するイスラム過激派組織ハマスがイスラエルの主要な対象となり、2008年から2021年にかけてガザへの4度の攻撃を行った。

2014年の「境界防衛作戦」では、地上侵攻で苦戦し、多くの犠牲者が出た。このときもイスラエルは空爆を行い、犠牲者の中で最も多かったのは民間人だった。4回の戦闘でイスラエルは約300人の死者を出し、ガザの犠牲者は5300人を超えた。

現在、イスラエルとハマスの緊張が高まっており、国際社会の中で懸念の声が上がっている。イスラエルでは、軍部や政府内で今後の動向についての意見が分かれており、地上戦の拡大に対する懸念も表明されている。ガザのトンネル網は広大であり、ハマスは数カ月の戦闘に備えているとされてい。

イスラエルには10月7日のハマスの奇襲に対する支持が寄せられたが、その支持は既に減退しており、国際世論も厳しい非難を浴びている。ネタニヤフ政権は支持を受けているものの、戦闘よりも人質救出を優先すべきだとの声が高まり、国際社会でも懸念されている。国際的な支持も失われつつあり、ネタニヤフ政権は今後の課題に直面している。

過去のイスラエルによる軍事行動は、国際的な支持を失うと同時に終結を迎えた。奇襲の衝撃が冷めないうちに地上侵攻を開始しハマスを壊滅させていれば、ネタニヤフは勝利を宣言できたただろう。

だがそうはならず、今後そうなる見込みもない。それは起こっていないし、これからも起こらないだろう。それどころか、さらに何千人ものパレスチナ人が殺され、何万人もの若いパレスチナ人が将来戦う準備を整え、イスラエルとパレスチナの紛争の平和的解決は、少なくとももう一世代遅れることになる。

この記事は、元記事(日本語版)の要約です。詳細は、元記事(英語版)をご覧になってください。

【私の論評】イスラエルの軍事行動、日本の平和主義に何を問う(゚д゚)!

まとめ
  • イスラエルの行動に関して、米国のメディアの内容が日本語に翻訳される場合、重要な部分が欠落している場合があり、これは情報操作の一種ではないかと疑われる。
  • 英国の平和学者と、日本の平和主義者の視点は異なり、平和学者の視点は現実的であり、平和主義者のそれは理想主義的である。
  • 日本の平和主義者はあまりに、非現実的で、民主主義国家が直面する脅威から切り離されているように見えることさえある。
  • これらの、差異を認識するだけでも、日本で真剣に平和を考える上では、非常に参考になる。
上の記事は、日本語版の要約ですが、一番最後の段落は、英語版のものの最終結論をそのまま掲載したものです。この最後の部分は重要です。ニューズウィークなどの、日本語版なるものは、翻訳者の恣意により、重要な部分を翻訳の過程で省くこともあることを端的に示しています。

日本語版の記事では割愛される部分こそ、重要な場合もあります。皆さんも、日本語版で興味が引かれるような記事を見つけた場合、念のため、英語版をご覧になることをおすすめします。現在では、Google翻訳やDeeple等の優れた翻訳サイトがあります、英語が苦手な方も読めます。

上の記事で、英文の結論部分を掲載されず、「過去のイスラエルによる軍事行動は、国際的な支持を失うと同時に終結を迎えた。奇襲の衝撃が冷めないうちに地上侵攻を開始しハマスを壊滅させていれば、ネタニヤフは勝利を宣言できたただろう」で終わらせてしまえば、説得力がなくなり、ただの好戦論者の戯言のようになってしまいます。これは、情報操作の一種に見えます。

イスラエル ネタ二アフ首相

結論部分をみると、この分析はルトワック氏の分析を彷彿とさせます。

確かに、10月7日の攻撃直後に迅速かつ決定的な地上侵攻を開始すれば、イスラエルは国際的な反発が高まる前にハマスに打撃を与えることができたかもしれないです。

卑劣な攻撃に対する衝撃と怒りを利用し、イスラエルの強硬な対応は正当化されていたでしょう。イスラエルが待てば待つほど、批判は高まり、支持は低下します。

地上でハマス過激派を素早く倒せば、彼らの力を著しく弱め、ロケット弾発射や暴力を続ける能力を制限することができたでしょう。そうなれば、ハマスは壊滅し、パレスチナ自治政府と早い時期に停戦が成立していたかもしれません。強さと決意を示すことで、パレスチナ・イスラム聖戦のような他のテロリスト集団がイスラエルを攻撃するのを抑止できたかもしれないです。ためらいや優柔不断さを見せれば、そのようなグループを増長させることになりかねないです。

テロ用のトンネルやインフラを迅速に破壊することで、ハマスの能力を何年も後退させることができたかもしれないです。長期的には脅威を減らすことができたかもしれないです。

しかし、考慮すべきリスクやマイナス面もあります。 ガザでの市街戦は、特に急ごしらえで行われた場合、双方の人命損失につながります。ガザでの市街戦は、特に急ごしらえで行われた場合、双方の命を奪うことになります。

ハ マスは民間人を人間の盾として利用し、防衛手段を準備してから、イスラエル攻撃を開始した可能性があります。そうだとすれば、イスラエル軍がハマスを早期に奇襲したとしても、戦闘は困難で長期化したかもしれないです。奇襲したとしても、イスラエルはガザで泥沼にはまる可能性もありました。

イスラエル国内の世論は二分されています。大規模な地上攻撃を支持する人ばかりではないし、その失敗や高コストが、ネタニヤフ首相を政治的に脅かす可能性もあります。

 それに、ハマスの壊滅は長期的な和平を保証するものではありません。他のグループが台頭する可能性もあるし、ハマスが時間をかけて再建される可能性もあります。政治的解決策はまだ必要だ。

10月7日のような攻撃直後に断固とした行動をとることには一定の利点がありますが、状況は依然として非常に複雑です。早期の地上侵攻によってイスラエルはハマスに大きな打撃を与えることができたかもしれないですが、リスクも伴い、それだけではより広範な紛争を解決することはできない可能性も高いです。

どちらの側にも理があり、結局のところ、この種の戦略的決断は、外部のオブザーバーが入手できない正確な状況や情報に大きく左右されます。ネタニヤフ首相の選択が正しかったか間違っていたかを、関連する詳細がすべて明らかにならない限り、断定的に言うことは難しいです。イスラエルが直面している課題には、単純な解決策も普遍的に合意された解決策もない。

ルトワック氏は、ハマスの攻撃を指弾し、はっきりと否定しています。しかし、その後の展開については、私の調べたところでは、今のところ特に発言はしていないようです。誰か、現時点での発言があったことを知っている人は、是非教えてください。

ルトワック氏

ただ、上の記事から私達が学べるのは、まずは、上で示したように、米国の発の情報であっても、上記で述べたように情報操作されている可能性があることです。そうして、これは情報発信元がどこであれ、様々な思惑から操作されている可能性は否定できません。

係争中は特にそうです。そのため、ネタニヤフの行動が正しかったかどうかの判断は、現在ではなく、紛争が終了して多くの情報が開示されたときに行うべきでしょう。ただ、ハマスの最初の蛮行はとうてい許されるものではありません。現在確実に言えるのはそれだけです。

それは、ウクライナ戦争も同じと思います。ロシアのウクライ侵攻はとうてい許されるべきものではありません。

ただ、平和学者のポール・ロジャーズの意見を無視しろと言っているわけでもありません。参考にする程度なら良いと思います。

平和学者 ボール・ロジャース

特にボール・ロジャース氏のような平和学者が考えていることは、日本の平和主義者の考えているようなこととは、異質であることが、上の記事からも理解できると思います。

ポール・ロジャースのような平和学者と日本平和主義者は、そもそ視点が異なっています。 ポール・ロジャーズ氏は、外交を提唱し、不均衡な武力行使に反対する一方で、イスラエルの自衛権を認めています。イスラエルの行動の一部を批判しつつも、イスラエルが直面している課題を認識しています。イスラエルの安全保障上の脅威を考慮した、現実的な視点す。

ポール・ロジャーズは、イスラエルの困難な立場を考慮し、双方の主張を比較検討し、自衛のための武力行使を容認するという、よりバランスの取れた見方をしています。平和と外交を提唱する一方で、イスラエルが軍事行動を必要とする理由を理解しています。一方、日本の平和主義者は、暴力に全面的に反対し、正当な安全保障上の懸念を認めることなくイスラエルを非難しているようです。

ロジャーズ氏は平和を追求する上での現実的な課題を認めています。ロジャース氏の平和とは、絶対主義的なものではなく、現実主義的なものです。ロジャース氏のような平和学者は、たとえ結論に同意できない部分があったとしても、よりバランスの取れた思慮深い分析や処方につなげることができるでしょう。

一方日本の平和主義者は非現実的で、民主主義国家が直面する脅威から切り離されているように見えることがあります。これらの、差異を認識するだけでも、日本で真剣に平和を考える上では、非常に参考になると思います。

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