2023年11月28日火曜日

米軍、タンカー拿捕犯拘束 イエメン沖、海自が支援―【私の論評】日本の海洋安全保障へのコミットメント:日米協力でイエメン沖の海賊対処に成功

米軍、タンカー拿捕犯拘束 イエメン沖、海自が支援

まとめ
  • 米軍がイエメン沖でイスラエル関連の石油タンカーを拿捕した武装集団を捕らえ、タンカーは無事解放された。
  • 防衛省によれば、海上自衛隊の護衛艦とP-3C哨戒機が情報収集に当たり、米軍を支援した。
  • イエメン暫定政権はイスラエル敵視派が攻撃したと主張するも、フーシ派は否定。紅海での緊張は続く可能性がある。
イスラエル船籍のセントラルパーク号

 AP通信は27日までに、イエメン南部アデン沖でイスラエルが関係する石油タンカーを26日に拿捕した武装集団を、米軍が拘束したと伝えた。タンカーは無事に解放された。米軍によると、その前後にイエメン内陸部から弾道ミサイルが発射され、現場海域に展開していた米軍艦から約18・5キロ地点に着弾したという。

 防衛省によると、アデン湾の海賊対処行動に派遣している海上自衛隊の護衛艦「あけぼの」とP3C哨戒機が現場で情報収集に当たり、米軍を支援した。

 イエメン暫定政権は、イスラエルを敵視するイエメンの親イラン武装組織フーシ派が襲撃したと主張したが、フーシ派は認めていない。

 イスラエル関連の船舶を巡っては、イエメン近くの紅海で19日、フーシ派が日本郵船運航の貨物船を拿捕しており、緊張が続きそうだ。

 APによると、米海軍駆逐艦「メイソン」などがタンカー拿捕を受けて現場海域に展開し、武装集団にタンカーを解放するよう要求。集団がタンカーから下船し、小型ボートで逃走しようとしたところを取り押さえた。

【私の論評】日本の海洋安全保障へのコミットメント:日米協力でイエメン沖の海賊対処に成功

まとめ
  • 自衛隊が海賊に対処したのは2017年以来の事案で、日本の支援のもと米軍がイエメン沖で武装グループに乗っ取られたタンカーを救出し、拿捕犯を投降させた。
  • 日本と米国は緊密な同盟関係に基づき、日本はアデン湾での海賊対策を含む作戦で米軍を支援し、海洋安全保障の共通の利益を示した。
  • 防衛省によると、海上自衛隊の艦船と哨戒機が情報収集に当たり、米軍の海賊対処に協力し、攻撃(威嚇)成功に導いたとみられる。
  • タンカーは日本の所有ではなかったが、日本向けの石油を運んでおり、日本の作戦参加は船と積荷の安全を確保し、国民と企業の利益を守ることにつながった。
  • 日本の作戦参加はフーシ派を含む地域の海洋安全保障に対する脅威を抑止し、日米の共同行動はイランを牽制し、イスラエルを支援するWin-Winの関係を築いた。
上のニュース一言でまとめる、米海軍と日本の海上自衛隊の連携で乗っ取られたタンカーを拿捕、犯行グループも確保したということです。

防衛省によりますと、自衛隊が海賊に対処した事案としては2017年4月以来、およそ6年ぶりとなります。

米国防総省のライダー報道官

米国防総省のライダー報道官は記者会見で、中東のイエメン沖で26日、武装グループに乗っ取られたタンカーを、アメリカ海軍の駆逐艦が救難し、5人を投降させたと明らかにしました。

ライダー氏は投降した武装グループの5人はソマリア人で、「海賊行為に関連した事件であることは明らかだ」としています。

また、この海賊への対処は「同盟国の艦船とともに活動していた」として、海上自衛隊による支援があったことも認めています。

一方、海賊への対処中にイエメンの親イラン反政府武装組織「フーシ派」の支配地域から弾道ミサイル2発が発射され、駆逐艦などからおよそ18キロ離れた海域に着弾したが、被害はなかったとしています。

ライダー氏はミサイル発射が「何を標的にしたのかは不明」と述べ、調査を続けるとしています。

今回の拿捕犯拘束は、日米協同の快挙といえます。

日本が、イスラエル関連の石油タンカーを拿捕した武装集団を拘束する作戦で米軍を支援するという決定を下したのには、いくつかの要因があるようです。

まず、日本は、紅海とアデン湾の安定と安全の維持に強い関心を持っています。これらの重要なシーレーンは、日本のエネルギー輸入と貿易にとって極めて重要だからです。タンカーの拿捕とそれに続くミサイル攻撃は、海洋安全保障と法の支配に対する脅威です。

日本と米国は緊密な安全保障同盟を結んでおり、日本はアデン湾での海賊対策を含むさまざまな作戦で米軍と定期的に協力しています。この作戦で米国を支援することで、日本は同盟に対するコミットメントと、海洋安全保障の確保における米国との共通の利益を示したといえます。

また、米軍は、中東地域における他の軍事活動に優先的に兵力や装備を投入していたため、紅海・アデン湾地域での兵力や装備が不足していたことと、紅海・アデン湾地域での作戦経験が少なく、日本からの支援を必要としていたということも考えられるでしょう。

日本が護衛艦「あけぼの」とP3C哨戒機を派遣したことで、状況に関する貴重な情報を収集することができ、今後の海賊対処や海上安全保障活動における米軍との協力関係を強化することができたといえます。

海上自衛隊護衛艦「あけぼの」

具体的には、日本の哨戒機が、武装集団の船舶の捜索や追尾を支援し、米軍の攻撃(もしくは威嚇)を成功に導いたという可能性は十分にあります。また、日本の哨戒機が、武装集団の船舶の周囲を警戒し、米軍の人員や装備を支援したという可能性もあります。

タンカーは日本の所有船ではありませんでしたが、日本向けの石油を運んでいました。日本がこの作戦に関与することで、タンカーとその積荷の安全な航行を確保し、自国民と企業の利益を守ることができました。

この作戦に参加することで、日本はフーシ派を含む地域の海賊等に対し、海洋安全保障に対する脅威を容認せず、米国の同盟国と協力してそのような行動を抑止するという明確なメッセージを発信したといえます。

また、ガザでの戦闘のさなかに、イスラエル船籍のタンカーを日米が協同で守ったということは、象徴的な意味合いもあると思われます。

これはイスラエルの自衛権を支持するという重要なメッセージを送ることにもなったものと考えられます。フーシ派とハマスとは、隣国を支配しようとするシーア派とスンニ派の過激派であり、イランの支援を受けています。


フーシ派を阻止することで、イランを牽制、イスラエルを支援することで、ハマスの牽制につながります。これは日米にとってWin-Winの関係であり、日米の共同行動は軍事的にも外交的にも妙手だったといえます。このような抜け目のない行動をとった日米両政府に敬意を表したいです。

日本がこの作戦で米軍を支援した背景には、国際法と海洋安全保障へのコミットメント、米国との同盟関係、日本の国益の保護、地域のアクターへのメッセージの必要性、情報収集と協力強化の機会など、さまざまな要因が複合していたと考えられます。

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