2023年11月22日水曜日

膠着状態のウクライナ戦争 カギはテクノロジーの革新―【私の論評】ウクライナ戦争、反転攻勢は膠着状態? 2~3年で占領地奪還の可能性も!

 膠着状態のウクライナ戦争 カギはテクノロジーの革新

岡崎研究所

まとめ
  • ウクライナのザルジニー総司令官は、戦争は膠着状態に陥っていると主張。
  • その原因は、双方のテクノロジーの水準が同じ水準に達したこと。
  • ウクライナが勝利するためには、ドローンや電子戦などの分野でテクノロジーの革新が必要。
  • 西側諸国はウクライナへの支援を継続する必要がある。
  • 米国の支援が減少すれば、ウクライナの勝利が遠のく。
ウクライナの攻撃型ドローン「バックファイア」

ウクライナ戦争は、2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻したことで始まった。当初は、ウクライナ軍がロシア軍を撃退し、首都キーウの奪還に成功するなど、ウクライナが優勢に進んでいた。しかし、その後、ロシア軍は反撃に転じ、東部・南部で攻勢を開始した。

ウクライナ戦争は、現在も膠着状態が続いている。両軍とも大きな損害を被っており、戦況は大きく動いていない。

ウクライナ戦争の膠着状態の主な原因は、双方のテクノロジーの水準が同じ水準に達したことにあると分析されている。

具体的には、ドローンや電子戦などの分野で、両軍の技術は急速に進歩した。そのため、両軍とも有効な打撃を与えることができず、泥沼の戦いが続いている。

ウクライナが勝利するためには、ドローン、電子戦、砲撃制圧、地雷除去の4つの分野でテクノロジーの革新が必要だと、ウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官は主張している。

ドローン

ウクライナ軍は、ドローンを使ってロシア軍の戦車や部隊を攻撃している。しかし、ロシア軍もドローン対策を強化しており、ウクライナ軍のドローンも撃墜されるケースが増えている。

電子戦

電子戦とは、敵の通信やレーダーを妨害する技術です。ウクライナ軍は、電子戦を使ってロシア軍の砲撃を妨害している。しかし、ロシア軍も電子戦能力を強化しており、ウクライナ軍の電子戦も効果が薄れつつある。

砲撃制圧

砲撃制圧とは、敵の陣地や戦力を砲撃によって無力化することである。ウクライナ軍は、砲撃制圧を使ってロシア軍の進撃を阻止しようとしている。しかし、ロシア軍は地雷や防御陣地を強化しており、ウクライナ軍の砲撃も効果が薄れつつある。

地雷除去

ウクライナには、ロシア軍が敷設した地雷が数十万個あると推定されている。これらの地雷は、民間人やウクライナ軍兵士の生命を脅かしている。

ウクライナが地雷を除去するためには、最新の技術や機材が必要となる。

西側諸国の支援

西側諸国は、ウクライナへの支援を継続している。しかし、ウクライナが要求する最新のテクノロジーや兵器を供給することには慎重だ。

特に、米国は、ウクライナが敗北しないよう、しかし米国がロシアとの対決に引きずり込まれないよう確保することに目的を定めている。そのため、ウクライナへの支援を慎重に検討している。

【私の論評】ウクライナ戦争、反転攻勢は膠着状態? 2~3年で占領地奪還の可能性も(゚д゚)!

まとめ
  • ウクライナの反転攻勢は、当初から2~3年かかると予想されていた。
  • ウクライナ軍は、ロシア軍の占領地を分断し、弱い方を攻める戦略をとっているようだ。
  • 反転攻勢に成功すれば、2~3年以内に占領された土地を奪還できる可能性があると考えられた。
  • 反転攻勢に失敗した場合は、5年以上、下手をすると10年膠着状態が続く可能性がある。
  • ウクライナは、2024年前半までに占領地を分断し、戦況を有利に導こうとしている。
現在のウクライの反転攻勢を膠着しているとみるのは、まだ時期尚早です。私は、もともとウクライナの反転攻勢は時間がかかるとみていました。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ウクライナ、反攻で「破滅的」損失 プーチン氏―【私の論評】今回の反転攻勢が成功すると、2~3年以内に占領された土地を奪還できるかも!戦争はまだ続く(゚д゚)!

ダム決壊で発生した水害

 ウクライナでダムが決壊したのは、テレビ報道などで皆さんご存知でしょう。決壊したのは2023年6月6日です。ウクライナ南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所のダムが、ロシア軍の攻撃によって決壊されたとされています。このダムは、ドニプロ川に建設されており、貯水池の水量は日本の琵琶湖の約3分の2に相当します。ダムの決壊により、洪水が発生し、少なくとも21人が死亡しました。また、広範囲にわたる農地や住宅が浸水し、深刻な被害をもたらしました。

この直前から、それまで散発的だったウクライナ反攻が、組織的に体系的に行われるようになったとされています。それが本当かどうかは、軍事機密なので、未だに明らかにされていません。真相は戦後に公表されるでしょう。ただ、大方の軍事筋はこの前後で、ウクライナの本格的反攻が始まったのは間違いないものとしています。

この事実をもとに、当時の私の分析では、この時点から2022年2月24日にロシアのウクライナ侵攻によって奪われた土地を奪い返すのに、2〜3年はかかるだろうとこの記事に掲載しました。現在は、この時からまだ5ヶ月が経過したばかりです。

この記事より、予測の元となった根拠の部分をあげます。
今後の見通しとしては 、 今回の反転攻勢によりロシアの占領地の分断に成功すれば かなり有利になります 。

ただ 、分断すると 、今度は突破した部分が挟み撃ちに遭うので 、逆にウクライナ側は挟み撃ちから守りきる陣地をつくらなければなりません 。

これを秋冬の地面がぬかるむ時期にまでに できれば 、 分断されたロシア軍の弱い方を来年 ( 2024年 ) 攻めることになるでしょう 。 つまり 、 ドンバス地方かクリミアのどちらか弱い方を攻めて 、 再来年にもう片方残った方を攻める形になるでしょう 。

今回の反転攻勢が成功すると 、 2 ~ 3年以内には占領された土地を奪還できるかも知れないです 。 無論奪還しても戦争が終わるとは限りませんが 、 少なくとも見通しは立ちます 。

一方で反転攻勢に失敗し 、 投入された12旅団が磨り潰されるようなことになると、組織的な反転攻勢は今後 、 難しくなります 。 そうなると5年以上 、 下手をすると10年ぐらい膠着状態が続くかもしれません。いずれにせよ、現在の反転攻勢が成功したとしても、すぐに戦争が終わるとはみるべきではないです。

結論を言うと、反転攻勢がうまくいったとして、2〜3年でロシアに今回ロシアに占領された地域を取り返すことができる、失敗した場合は、5年以上、下手をすると10年かかる可能性があるということです。そうして、クリミア奪還などはその後ということになります。

ウクライナ軍女性兵士 実写写真

このように時間がかかることは、多くの現代人がなかなか理解しにくいところがあると思います。現代人は、何をするにしてもスイツチ一つですぐにできます。部屋を温めたり、風呂に入るにしても、一昔前はそれなりに時間と労力がかかりましたが現在ではすぐにできます。

ただ、これは第二次世界大戦を振り返ると、理解できるかもしれません。

連合軍がノルマンディー上陸をしたのは1944年6月6日です。ヨーロッパでの戦争が完全集結したのは1945年5月8日です。したがって、ノルマンディー上陸からヨーロッパでの戦争が完全集結するまで、1年11ヶ月かかりました。

具体的には、ノルマンディー上陸から1年後の1945年6月6日には、連合軍がベルリンに進攻し、ドイツ軍の抵抗が激化しました。その後、ソ連軍が東から、連合軍が西からドイツに迫り、1945年5月8日にドイツは降伏しました。

物量では圧倒的に有利で、制空権、制海権を完全掌握していた連合軍がノルマンディーに上陸したという時点で、すでに戦争の帰趨は決まり、ドイツの敗北は決定的だったといえます。しかし、実際に 連合軍が勝利を手にするには、それから2年近くの歳月を要したのです。

これを考えれば、兵器弾薬は西側諸国がウクライナに供与しているものの、戦っているのはほぼウクライナ軍のみであり、しかも地上戦が主戦場ですから、最終的な勝利を得るためには、戦況の不利、有利にかかわらず、ある程度時間がかかるとみるべきものと思います。

地上戦であれば、兵員輸送車などはありますが、それでも移動手段の多くは、歩兵の歩行ということになります。しかも、歩兵は敵と戦闘しながら歩きますし、さらに弾薬や食料などの重装備を背負っての移動ということになります。

そうなると、一日では最大で10km、現実的には数キロと考えて良いでしょう。このようなことを考えれば、通常の移動からみれば、はるかに時間がかかることは、理解できると思います。

ノルマンディー上陸作戦

現時点で、膠着状態かどうかは、はっきりとはわかりません。そのため、現状の膠着状態は、当初から予想されたものなのかどうか、見極める必要があります。ただ、これはウクライナ、ロシア双方とも、情報戦を展開していることから、現時点では正しく判断するのは難しいです。正しく判断できるようになるのは、これも戦後でしょう。

ただ、ワレリー・ザルジニー総司令官が「膠着状態」であると強調することには、それなりの理由があると考えられます。

ウクライナは、2024年アメリカの大統領選を前に、西側諸国からの支援を維持するために、冬季にも攻勢を続けることを決めたようです。

その理由の一つは、2024年以降は、米国に共和党の大統領が登場した場合、米国の支援が減少する可能性があるため、なるべく目に見える戦果を挙げて米国の支持を取り付けたいのでしょう。

もう一つは、前回の反攻作戦で、ロシア軍に地雷原を敷設される時間を与えてしまった反省から、冬季でも攻勢を継続して、地雷を敷設する時間を奪いたいからとみられます。

もちろん、冬季攻勢にはリスクもあります。しかし、ウクライナは、ドローンなどによる上空からの支援を計算したうえで、決断したようです。

ウクライナは、2024年前半までに、初期に想定された戦果である、南部から東部に広がるロシアの占領地の分断をしなければならないという悲壮な決意を持って戦いを継続しているとみられます。無論、分断に成功したとしても、それだけでは決着はつかず、戦争は継続します。しかし、2024年の前半までに、分断しなければ、戦況はかなり不利になる可能性もあります。

ただ、戦闘は不確実なものであり、当初の目論見どおりになる可能性は低いとみておくべきです。

ウクライナ側は、こうした状況を、支障のない限りにおいて、西側諸国に伝え、西側諸国は、短気を起こさず、気長にウクライナに対して支援を継続すべきでしょう。

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