2023年11月15日水曜日

「日本空母が大西洋でテスト!」米海軍研究所が発表 どの護衛艦いつ派米?―【私の論評】空母の政治的メッセージと現代海戦:軍事力と国家間関係の舞台裏(゚д゚)!

「日本空母が大西洋でテスト!」米海軍研究所が発表 どの護衛艦いつ派米?

まとめ
  • 「かが」は、すでに飛行甲板の改修が完了しており、試験航海などを実施中。 
  • 日本側の視察団は、イギリスの空母「プリンス・オブ・ウェールズ」のF-35B運用試験を視察済み。 
  • 「かが」の試験海域は、「プリンス・オブ・ウェールズ」と同じ海域になる見込み。 
  • 日本政府は、いずも型護衛艦2隻の空母化とF-35Bの導入を計画。 
  • F-35Bは、航空自衛隊の新田原基地に配備される予定。 
  • イギリス海軍の「プリンス・オブ・ウェールズ」は、無人航空機やアメリカ海兵隊との合同訓練も実施している。

改装中の「かが」 すでに飛行甲板全部が真四角になっている

 2024年に、日本最大級の軍艦であるいずも型護衛艦の2番艦「かが」が、アメリカ東海岸に来航し、F-35B戦闘機の運用試験を行うことが発表されました。

 「かが」は、2023年11月現在、飛行甲板の形状を一新し、所要の改修が施された状態で、試験航海などを実施中です。

 すでに海上自衛官と航空自衛官からなる日本側の視察団は、2023年10月末にアメリカ東海岸、大西洋沖を遊弋するイギリスの空母「プリンス・オブ・ウェールズ」において、F-35B戦闘機の運用試験を視察しています。

 「プリンス・オブ・ウェールズ」が試験を実施しているのと同じ海域で、「かが」もF-35Bの運用に関する各種試験を行うとみられます。

 日本政府は、いずも型護衛艦2隻について空母化を進め、同時に垂直離着陸が可能なF-35B戦闘機の導入も計画しています。

 F-35Bは、現在、42機程度の導入を予定しており、それらを運用するための飛行隊を航空自衛隊に新編し、宮崎県新富町にある新田原基地に配置することも公表しています。

 イギリス海軍の空母「プリンス・オブ・ウェールズ」は、前述の米東海岸での各種テストの中で無人航空機による試験や、アメリカ海兵隊との合同訓練も行っているため、もしかしたら同様のテストを海上自衛隊のいずも型護衛艦でも実施するかもしれません。

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】空母の政治的メッセージと現代海戦:軍事力と国家間関係の舞台裏(゚д゚)!

まとめ
  • 現代海戦では、潜水艦の優位性が高まっており、対潜戦(ASW)能力が重要だが、空母も航空攻撃能力や政治的なメッセージとして重要。
  • 米国は空母を使い、政治的な意思を示すために東地中海に2隻の空母を派遣。これはイスラエルを支援し、地域の安定を維持するという政治的メッセージを伝えている。
  • 中国の空母は技術的には米国に劣るが、政治的メッセージを発するためには有効。日本のASW能力が中国より優れていることが多くの国民に知られていない日本にとっても政治的な脅威だ
  • 潜水艦や他の軍事技術に関する情報開示は重要であり、情報を適切に開示することで国家の脅威に対する理解を促進し、国民の信頼を得ることができ。
  • 空母は、軍事的な側面だけでなく、政治的な意図を伝えるためにも重要であり、その能力を最大限に活用すべきであり、情報の適切な開示と共有は、国家の脅威への本質的理解を深める。
このブログでは、以前空母に関しては、今日では軍事的にはあまり大きな意味はないですが、政治的には大きな意味があることを掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
いずも型護衛艦「空母化」必要なの? 軍事的な合理性はあるか それ以上に大切な「日本の見られ方」―【私の論評】空母の利点と使い方:軍事戦力から災害支援まで(゚д゚)!

この記事を要約すると以下のようになります。


世界最大の空母「ジェラルド・R・フォード」(手前)


"
現代海戦では、潜水艦の脅威がますます高まっている。そのため、潜水艦を探知・撃沈する対潜戦(ASW)能力が、海軍力の要となる。しかし、空母も依然として重要な役割を果たす。

空母は、広範囲にわたる航空攻撃能力を有しており、海上制海権の確保や、遠距離からの攻撃が可能である。また、空母は政治的なメッセージとしても重要な意味を持つ。空母の存在は、その国の軍事力や政治的プレゼンスを示すとともに、同盟国や友好国に対する抑止力にもなる。

したがって、現代海戦においては、ASW能力の強化とともに、空母の有用性も認識しておくことが重要である。

具体的には、以下の点が挙げられる。
  • 空母は、広範囲にわたる航空攻撃能力を有しており、海上制海権の確保や、遠距離からの攻撃が可能である。
  • 空母は、政治的なメッセージとしても重要な意味を持つ。空母の存在は、その国の軍事力や政治的プレゼンスを示すとともに、同盟国や友好国に対する抑止力にもなる。
空母は、ASW能力の強化とともに、このような政治的な意味合いも考慮して、今後も重要な役割を果たしていくと考えられる。
"
空母は、政治的メッセージを発するには非常に有用なものです。たとえば、米国がハマスとの戦いでイスラエルを支持すると公表しただけでは、それが本気なのかどうか、なんともいえないところがありますが、米国が東地中海に空母を派遣すれば、本気度を示すことができます。

米国は現在、東地中海に2隻の空母を派遣しています。1隻は、2023年10月8日に派遣された原子力空母「ジェラルド・フォード」であり、もう1隻は、2023年10月14日に派遣された原子力空母「ドワイト・アイゼンハワー」です。

特に、ジェラルド・フォードは世界最大の空母です。全長は337メートル、全幅は78メートル、排水量は10万トンを超えます。これは、これまでに建造された空母の中で最大のサイズです。

これらの空母は、イスラエルとハマスとの戦闘が拡大するのを防ぐために派遣されたものです。また、イランやレバノンに拠点を置くイスラム教シーア派組織ヒズボラの動きを抑止することも目的とされています。

米国は、東地中海に空母を派遣することで、同盟国であるイスラエルを支援し、地域の安定を維持することを狙っています。空母派遣はこうした国家の意思をはっきり政治的メッセージとして示すことができます。

中国の空母も、このような「政治的メッセージ」を発するためのものという性格が強いようです。そもそも、中国の空母は下のような理由からあまり実用的ではありません。

中国の空母

・設計が旧式
中国の空母は、ソ連から購入した航空母艦「ヴァリャーグ」を改造した「遼寧」と、その設計をベースに建造された「山東」の2隻のみであり、設計が旧式です。そもそ、米国のように原子力空母ではないので、航行速度も遅く、長い期間にわたって航行することはできません。

特に「遼寧」は、1980年代に建造された「ヴァリャーグ」を改造したものであり、艦体の大きさや航空機運用能力などにおいて、現代の空母に比べて劣ります。航空機運用能力が限られています。
中国の空母は、艦載機として、艦上攻撃機の「殲-15」や、戦闘機の「殲-15D」などを運用しています。しかし、これらの航空機は、いずれも中国が独自開発したものであり、実戦経験が不足しています。 
また、中国の空母は、カタパルトがないことや滑走路が短いため、艦上攻撃機などの大型機の運用に制限があります。また、航空機に搭載できる燃料や弾薬の量を減らす必要があります。フル装備、フル燃料で発艦させられないという致命的な血管があります。
・防御力が脆弱
中国の空母は、対空ミサイルやCIWSなどの防御システムを装備していますが、その能力は、アメリカなどの先進国に比べて劣るとされています。

特に、中国の空母は、潜水艦や対艦ミサイルなどの脅威に対して、脆弱であると指摘されています。
このように、中国の空母は、設計が旧式で、航空機運用能力が限られている、防御力が脆弱であるなど、実用性に欠ける点が指摘されています。

しかし、中国はさらに新たな空母を建造中です。中国製の空母には、このように様々な欠点があるのにそれでもなお建造するにはそれなりの理由があります。

それはやはり「政治的メッセージ」を強力に発することができるからです。日米とその同盟国にとっては、中国の空母はさほど脅威ではないのですが、それ以外の国々とっては未だに大きな脅威です。

日本にとってはさほど脅威ではないのですが、それでも中国の空母が沖縄付近を航行したりすれば、日本の国民も脅威に感じるはずです。

現実にはASW(対潜戦)の能力に優れた日本にとっては、あまり脅威ではないのですが、これは多くの国民あまり知られていませんし、特に潜水艦の行動は昔から度の国でも隠密にするのが常です。尖閣列島に関しては、水上艦艇に関しては報道されますが、潜水艦については報道されません。

尖閣諸島で中国様々な行動をとりつつも、結局尖閣奪取などの最終段階の軍事行動をとらないのは、結局中国が日本の潜水艦隊の存在を脅威に感じているからでしょう。もし、中国がこれに脅威を感じていなかったなら、もうすでに尖閣諸島は中国に実効支配されていたでしょう。

しかし、これは一般国民の知るところとはなりません。そのため、日本国民の中には閉塞感を感じる人も多いかもしれません。

しかし、今後は日本の「空母」が尖閣付近や沖縄付近、さらには南シナ海を航行するようになり、中国だけではなく、日本国民に対して「政治的メッセージ」を発信するようになるかもしれません。

そうして、「政治的メッセージ」を発信できる背景には、日本のASWが中国よりも格段に優れていることがあります。尖閣付近に「空母」を航行させるには、まずは中国のミサイルや航空機の脅威を排除できるだけの防空能力をもち、さらに、中国の艦艇や潜水艦の脅威を排除できるだけのASWの能力が必要だからです。そうして、日本はその能力をすでに有しています。

後は、実行するのみです。空母はそのように活用すべきです。これにより、日本国民も日本の国防力を信頼するようになるでしょう。空母は、潜水艦と異なり、その行動は表に出すべきものです。

ただ、潜水艦に関しても、用心深くする必要はあるでしょうが、意図的に出すときにはだすべきです。どんな兵器もある程度情報を開示しなければ、無意味です。

たとえば、敵に知られたくないという理由で、兵器や軍事力を一切表に出さなければ、抑止力とならない可能性もあります。たとえば、米国が米国の核兵器情報を徹底的に隠し、いかなる情報も特に最新情報など一切表に出さなければ、敵対国は勘違いして、核兵器を用いるかもしれません。

そのようなことは、民間企業の新製品開発でもいえます。全く情報を隠せば、弊害が出ます。そもそも徹底的に隠すということになれば、開発部隊の情報収拾に支障がでます。必要な情報を集めれば、何のための情報集めかということが対抗馬に察知されるため、表立って情報が収拾できなくなります。仮に、それを許せば、対抗馬の企業がそれを察知、似たような製品を先に市場に投入するかもしれません。

さらに、製品化の直前まで、販売部隊が何も知らされないということになれば、事前にマーケティングができないばかりか、販売されても、その販売部隊自体が、当の新商品を十分に知らないということになります。

それくらいなら、早い段階から、制御しつつ徐々に知らせていくというのが最善の方法です。開発段階で、知られて良い情報、そうではない情報を峻別した上で、知らせて良いものは開示すべきです。たとえば、アップルの革新的な「Vison Pro」に関してはもうすでに発売の1年前くらいからその概要を発表しています。

現在Vison Proの概要は多くの人に知られている

日米でも潜水艦の情報は隠す傾向が強かったのです、しかし米国では昨年あたりから、公表された軍事シミレーションで潜水艦を用いたものを出し始めました。それによると、台湾有事には日米は甚大な被害をうけるものの、結局中国は台湾に侵攻できないという結論を出していました。それ以前のシミレーションでは潜水艦なしで、米国が負けるというものがほとんどでした。

日本においては、未だ潜水艦を用いた台湾有事のシミレーションは公表していません。これは、いわゆる軍事アナリストも同様であり、ほとんどのシミレーションでなぜか台湾有事のシミレーションで潜水艦は登場しません。まるで、日本には潜水艦は存在しないかのような論評が多いです。ただ、インターネットの番組で、潜水艦を前提に台湾有事を語る元自衛隊幹部もいましたが、これは本当に例外的と言っても良いです。

日本では、憲法9条や周辺国の反発、経済的負担などから、「空母建造」などとんでもないという世論がありましたが、最近では世界情勢も変化して、「空母建造」を真っ向から否定する論調は以前よりはかなり弱まっています。

日本でも、空母の就役を皮切りに、潜水艦に関しても、制御された形で、ある程度情報が開示され、それに基づいて議論されるようになって欲しいものです。

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