2023年11月10日金曜日

年内衆院解散見送りへ 支持率低迷、岸田首相「経済専心」―【私の論評】岸田首相、権力基盤維持のため従来の慣習破りを続けられるか(゚д゚)!

年内衆院解散見送りへ 支持率低迷、岸田首相「経済専心」

まとめ
  • 岸田首相は、年内の衆院解散・総選挙を見送る意向を固めた。
  • 内閣支持率の低迷を踏まえ、衆院選を戦う環境は整っていないと判断した。
  • 当面は信頼回復に向けて物価高対策などに全力を挙げ、年明け以降、解散のタイミングを改めて探る。
  • 首相は、9月に内閣改造・党役員人事を行い、10月には世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を請求し、所得税などの減税も打ち出したが、政権浮揚にはつながらず、10月の衆参2補欠選挙は1勝1敗に終わった。
  • 与党内では、次の解散のタイミングは24年度予算案成立後の来年4~6月との見方が出ている。
岸田首相


 岸田文雄首相は、年内の衆院解散・総選挙を見送る意向を固めた。

 内閣支持率の低迷を踏まえ、衆院選を戦う環境は整っていないと判断した。当面は信頼回復に向けて物価高対策などに全力を挙げ、年明け以降、解散のタイミングを改めて探る。

 首相は、年内の衆院解散の可能性を問われ、「まずは経済対策、先送りできない課題に一つ一つ、一意専心取り組んでいく。それ以外のことは考えていない」と表明した。

 首相は、9月に内閣改造・党役員人事を行い、10月には世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を請求し、所得税などの減税も打ち出した。

 しかし、政権浮揚にはつながらず、10月の衆参2補欠選挙は1勝1敗に終わった。内閣支持率が危険水域とされる2割台に落ち込む世論調査も相次いでいる。不祥事に伴う法務副大臣など政務三役の辞任が続き、与党内では早期解散は困難との見方が広がっていた。

 2023年度補正予算案の国会審議は11月末ごろまでかかる見込みで、その後は24年度予算案の編成作業が本格化する。首相は11月末からアラブ首長国連邦(UAE)で開かれる国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)への出席を検討。12月16~18日には東京で東南アジア諸国連合(ASEAN)との特別首脳会議を予定しており、政治日程の窮屈さも考慮したとみられる。

 与党内では、次の解散のタイミングは24年度予算案成立後の来年4~6月との見方が出ている。首相は来秋の党総裁選前に衆院選で勝利し、総裁選を無風で乗り切る戦略を含め、解散の機会を慎重に探る考えだ。

【私の論評】岸田首相、権力基盤維持のため従来の慣習破りを続けられるか(゚д゚)!

まとめ
  • 岸田首相は、自らの権力基盤を維持するために、従来の慣習をしばしば破っている。
  • その一例として、2022年8月に、幹事長を務めていた二階俊博氏を解任したことが挙げられる。
  • また、同月の閣僚人事では、非自民党議員を閣僚に任命するなど、異例の人事を行い、党内から反発を招いた。
  • さらに、自民党の過半数議席を背景に、野党の意見を無視して法案を成立させるなど、民主主義の根幹を揺るがすような行動も見られる。LGBT法案成立の過程では通常の自民党内での手続きを破った。
  • 岸田氏のこうした強権的な姿勢は、今後良い方向に出る可能性は現時点では否定しきれない。

日本政府には、為替特会など財源になるうる財源が豊富存在しています。特会などに積立などを活用すれば、50兆円くらいの財源を確保できます。様々な財源を有効活用するようにすれば、財源に煩わされることなく、所得税の減税や最終消費者への給付金など、景気刺激策を実施することができます。

日本政府の豊富な財源

減税と補助金の経済効果は実はマクロ的にみれば、ほとんど同じです。減税は可処分所得を増加させ、消費を促進します。補助金は企業の設備投資や雇用を促進します。どちらも景気刺激策としては有効です。

ただ、補助金の執行率が悪いです。なぜなら補助金は、事業者や団体に交付されることが多いからです。しかし、事業者や団体は、補助金を使って必ずしも新たな投資や雇用を増やすとは限らないです。また、補助金は、予算の一部が執行されないまま積み残されることもありがちです。

一方、減税は、可処分所得を直接増加させるため、執行率は100%になります。また、減税は、国民の消費意欲を高めるため、景気刺激策として効果的です。

それと、賃金に関して政労使会議で議論されていますが、この会議は、政府、労働組合、経営者団体の代表者が集まり、賃上げや雇用対策などを話し合うものです。しかし、これは政労使会議はセレモニーにすぎないです。実効性のある経済対策などはできません。

そんなことよりも、需給ギャップが埋まれば、企業は賃上げを自発的に行うというか、行わざるを得ない状況になります。需給ギャップ(15兆円から20兆円)を埋めるための景気刺激策が実施されれば、賃上げは自然に推進されることになります。

政労使会議で賃金は決められるものではありません。これは、厚生労働省が雇用の主務官庁でないことと同じようなものです。厚生労働省は失業率などの統計をまとめる官庁であって、日銀こそが雇用の主務官庁です。日銀が物価を数%あげる政策をすれば、日本では数百万人の雇用が発生します。ただ、労働投⼊ギャップを埋めるのは、厚生労働省が主務官庁といえるでしょう。

労働投⼊量の潜在労働投⼊量から の乖離で定義され、①就業率ギャップ、②労働⼒率ギャッ プ(労働⼒率のトレンドからの乖離)、③労働時間ギャッ プ(労働時間のトレンドからの乖離)を合計することによ って算出します。しかし、このギャップを埋めるのは雇用が存在しているから埋められるのであって、雇用そのものは中央銀行の金融政策によるものです。そうして、失業率が下がれば人手不足となり、賃金もそれにつれてあがるのです。

欧米では常識なのですが、このあたりが、日本ではなぜか認知されていません。だからこそ、政労使会議という実効性のないセレモニー的な会議が行われるのでしょう。

以上のように、日本政府は50兆円の財源を活用して、減税または最終消費者への給付金を実施すべきであり、これにより、可処分所得を増加させ、需給ギャップを埋め、賃上げを促進することができます。

何が言いたかったかといえば、岸田首相は本気で経済対策に専念しようすれば、間違いなく経済を良くできる状況にあるということです。ただ、それには、財務省の抵抗に抗う必要があります。

安倍元首相は、回顧録で、財務省について「国が滅びても、財政規律が保たれてさえいれば、満足なんです」「省益のためなら政権を倒すことも辞さない」などと批判していました。実際、財務省の抵抗は凄まじいものであり、歴代の総理大臣はこれに抗えなかったようです。

安倍総理が、消費税増税を二度延期したときには、一部のマスコミは「財務省の意向に逆らった初の首相」と報道したくらいです。

以上のような状況から岸田おろしが始まったという見解もあります。ただ、私自身は現状では安易岸田おろしはすべきではないと思います。なぜなら、自民党内で次の総理になりえる人物がおらず、今後、首相が変わるたびに、ますます自民党はリベラル色を強めていくことが予感されるからです。

たとえば、次の総裁として有望といわれる河野太郎氏関して、「河野太郎が総理大臣になると日本終了」という人たちもいます。彼らは、主に以下のような理由でそう考えていると考えられます。

・エネルギー政策
河野氏は脱原発派として知られており、原発ゼロを実現するためには、再生可能エネルギーの導入を急速に進める必要があると主張しています。しかし、再生可能エネルギーの導入にはコストや技術的な課題があり、また、安定した電力供給を維持するためには原発の役割も不可欠であるという意見もあります。そのため、河野氏が総理大臣になった場合、電力不足や電気料金の高騰などの問題が発生し、日本経済や国民生活に大きな影響を与えると懸念されています。

 ・外交政策

河野氏は外交においては、米国との同盟関係を重視し、中国の台頭に対抗する姿勢を強めるとしながら、中国との経済交流を重視する姿勢を繰り返し示してきました。2022年7月には、中国の習近平国家主席と会談し、経済協力や人文交流の拡大について話し合いました。また、2023年3月には、中国の王毅外相と会談し、日中関係の改善に向けた議論を行いました。

また、河野氏日中友好議員連盟に所属しています。日中友好議員連盟は、日中関係の友好と発展を目的とした議員連盟であり、親中的な議員が多く所属しています。また、河野家は中国でのファミリービジネスを問題視するむきもあります。現在、河野氏の母親である河野洋子氏が社長を務めています。河野洋子氏は、河野氏の政治活動を支えるとともに、中国での事業を継続的に拡大させています。
・政治姿勢
河野氏は政治家として、強烈な個性と発言で知られています。そのため、河野氏が総理大臣になった場合、国民の意見を十分に反映しない独善的な政治を進め、社会の分断をさらに深めるのではないかという懸念もあります。
もちろん、これらの懸念はあくまでも可能性であり、河野氏が総理大臣になったとしても、必ずしも日本が終了するわけではありません。しかし、河野氏の政治姿勢や政策に対する国民の理解や支持が得られなければ、日本が大きな混乱に陥る可能性は否定できません。

河野太郎氏

私は、今後日本の総理大臣が変わるたびに、自民党がさらにリベラル的な方向に流れていくのではないかと懸念しています。菅政権は、安倍政権を継承しましたが、それは安倍元総理が存命しており、菅氏は自分の持ち味を出すではなく継承することに重点を置いたからだと思います。それに文字通りの短期政権だったので、安倍路線を変えようもなかったからであると考えられます。

岸田政権も当初は、安倍路線を引き継ぐようにもみえましたが、二年目にして、随分とリベラル寄りになり、あろうことか、LGBT理解増進法を通常の自民党内の手続きを省き拙速に成立させてしまいました。そうして、財務省の意向を強く反映するようになりました。

リベラル派に傾いたことにより、自民党の保守岩盤支持層が離れていき、財務省の意向を反映するようになったことで、他の支持層も離れたのでしよう。このようなことが岸田政権の支持率が下がっていることの原因であると思われます。

これを巻き返すには、岸田首相はリベラル派から保守派への回帰を実現し、財務省の意向をはねのけ、まともな経済対策をすべきなのです。

これは、望み薄と見るむきもありますが、全くチャンスがないということはないと思います。

岸田首相は、自らの権力基盤を揺るがすものには、常識を破るような行動にでてきた過去があります。

たとえば、二階俊博氏を幹事長から追い出しました。岸田首相は、二階氏が党内の権力基盤を握っていることを懸念し、首相就任直後に幹事長を退任させることで、政権運営の主導権を握りました。これは、岸田首相が、自らの政治生命をかけて二階氏の退任を実現させたものです。これは、自民党内の権力闘争において、首相が自らの意志を貫くという、従来の常識を覆すものでした。

二階氏


岸田首相は、就任直後から、中国の海洋進出や人権問題に強く懸念を示してきました。また、中国への対抗を重視する米国との関係を強化し、日米同盟を強化する姿勢を打ち出しています。これは、従来の日本外交の常識である「中国との友好」を重視する出身派閥の宏池会等の姿勢から大きく転換したものです。特に、これに関してはほとんど評価されませんが、それは自民党内では特異といえる安倍元首相を比較の対象にしているのだと思います。自民党の大勢は、「中国との友好」を重視しています。

 岸田首相は、野党の合意を求めることなく法案を可決するために、国会での党の超大勢を何度も利用してきました。それどころかLGBT理解増進法案成立過程においては、自民党内の通常の手続きを省いてまで成立させました。これは、日本の民主主義を弱体化させているとの非難を浴びています。

岸田外相は、2027年までに日本の防衛予算をGDPの2%に引き上げると公約しました。これは、戦後日本の平和主義政策からの大きな転換となります。

これらは、岸田外相が自らの権力基盤を維持するために、良い悪いの価値判断は別にして、これまで考えられなかった規範を破ったほんの一例に過ぎないです。岸田首相が長期的にこのアプローチを維持できるかどうかはまだわからないです。

従来の常識を翻す人々 AI生成画像


一部のアナリストは、これらは、岸田外相が伝統を破ろうとするのは強さの表れであり、日本が直面する課題に対処するために必要なことだと考えているようです。また、岸田氏の行動が日本の民主主義や制度を弱体化させていると懸念する向きもあります。岸田首相のアプローチが長期的にどのような意味を持つのか、それを語るのは時期尚早かもしれません。

そうして、もうひとつ忘れてならないのが、来年の米大統領選挙です。現状ではトランプ氏が優勢です。選挙は水もので、どうなるかはわかりませんが、共和党が優勢であるのは間違いなく、トランプ氏もしくは他の共和党の候補が大統領になるのは確実だとみられます。そうなると、岸田政権は政策を転換せざるを得なくなります。そうなると、自民が保守派への揺り戻しされる可能性は高まると思います。

無論、総裁選は米大統領選の前に行われますが、その影響は選挙戦前から現れ始めるでしょうし、次期総裁が誰になろうとも、リベラル派に傾き続けるようなことはできないでしょう。

岸田首相は、自らの権力基盤を維持強化するために、リベラルに傾いた政権を保守派寄りに立て直したり、財務省に逆らってまともな経済対策を実行させる可能性は、いまのところはまだ完全に捨て去ることができない状況にあると思います。

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