2023年11月11日土曜日

中国のブイ巡る高市早苗氏発言 国際法基準なら撤去は可能だ 高橋洋一―【私の論評】中国の尖閣周辺ブイ、自国潜水艦のステルス性の低さを補うのが狙いか(゚д゚)!

 日本の解き方

中国のブイ巡る高市早苗氏発言 国際法基準なら撤去は可能だ 高橋洋一

中国が設置したとみられる気象観測用ブイ 直径10メートル

まとめ
  • 高市早苗経済安保相は、尖閣諸島周辺の中国の排他的経済水域(EEZ)に設置されたブイについて、「日本が撤去しても違法ではない」との見解を述べた。
  • 11月1日の参院予算委員会で、東徹氏と上川陽子外相の間で、中国のブイに関する議論が発生。撤去には国際法の規定の解釈が焦点。
  • 一部意見では、高市氏の発言と閣内の意見が一致していないとの指摘があり、特に上川外相の国際法への慎重姿勢に疑問の声が上がっている。
  • フィリピンは、自国EEZ内で中国の設置物を撤去し、国際的な評価を受けている。この事例が日本にも示唆を与えている。
  • 中国のブイが潜水艦探知に使用されている可能性が考慮され、撤去要求の前に海上保安庁が調査すべきだとの提案がされている。

 高市早苗経済安保相は、中国が尖閣諸島周辺の排他的経済水域(EEZ)に設置したブイについて、「日本が撤去しても違法ではない」との見解を表明した。この発言は、11月1日の参院予算委員会で、中国のブイに関する議論が東徹氏と上川陽子外相の間で発生したことに端を発している。具体的には、尖閣諸島の北西約80キロに位置するブイについての取り決めが問題となり、東氏は中国が応じない場合は実力行使も辞さないべきだと主張したが、上川外相は国際法に基づいて慎重な態度を示した。

 この議論に対し、高市氏の発言が閣内の立場と一致していないとの意見も浮上している。特に、上川外相は国際法に規定がないから撤去できないとの立場をとり、これに対して違和感を抱く声がある。一部の専門家は、国際法が基本的に「ネガティブリスト」であり、許可されていない行為が規定されているため、規定がないからといって行為が許容されるわけではないと指摘している。

 一方で、フィリピンが中国のEEZ内で設置されたものを撤去した例が引き合いに出され、この対応が国際的にも評価されている。この事例から、日本も同様にブイの撤去を検討すべきだとの声が上がっている。さらに、中国のブイが海上基地と見なされるほど大きいことから、同様の行動が逆転の立場でとられた場合、日本にとっての影響が懸念されている。

 最後に、筆者は撤去を要求するだけでなく、ブイが精密な潜水艦探知に使用されている可能性があることを考慮し、海上保安庁が調査を行うべきだと提案している。この調査を通じて、中国の設置意図が明らかになり、安全保障の観点から重要な情報を得ることができるとの立場を示している。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】中国の尖閣周辺ブイ、自国潜水艦のステルス性の低さを補うのが狙いか(゚д゚)!

まとめ
  • 高橋洋一氏は、尖閣諸島周辺のブイには精密な潜水艦探知に使用される可能性が高く、中国の海軍が日本の潜水艦の動向を監視している可能性があると指摘
  • 中国の対潜水艦哨戒能力はまだ日米やその同盟国に比べて遅れており、ブイの設置がパワーバランスに大きな変化をもたらす可能性は低い
  • 中国がブイを設置する背景には、将来の潜水艦や対潜水艦の作戦に役立てる意図があり、特に水中音響や地形、潮流に関するデータ収集が目的とみられる
  • ブイが収集した潮流や地形のデータは、潜水艦の作戦において戦術的な優位性をもたらす可能性があり、中国がこの情報を利用して潜水艦のステルス性を向上させる可能性がある
  • 海上保安庁がブイを調査すべきであり、これによって中国の意図や能力の分析が可能になり、日本の安全保障上のリスクを把握できる

上の記事で高橋洋一氏は、「ブイが精密な潜水艦探知に使用されている可能性」を指摘しています。確かに、このブイには、日本の海軍の活動を監視するためのハイテク監視装置が満載されている可能性が高いです。中国は潜水艦艦隊を急速に拡大しているため、日本の潜水艦を探知・追跡する装置を設置することは、この地域における中国の軍事的野心と完全に一致します。

ただ、中国の対潜水艦哨戒能力は、日米やその同盟国に比べてまだはるかに遅れているため、ブイを設置したところでパワーバランスが劇的に変わることはないでしょう。

それにこのようなことをすれば、日本などから非難され、国際的なイメージも落ちるはずです。

中国の対潜哨戒機

それてもなお、ブイを設置するにはどのような意味があるのでしょうか。おそらく、中国が将来の潜水艦や対潜水艦の作戦に役立てる意図があると考えられます。この地域の水中音響や地形に関する貴重なデータを得たいのでしょう。

そして、何よりも知りたいのは、この海域の潮流でしょう。この地域の海流と潮の流れを理解することは、潜水艦の作戦に大きな戦術的優位性をもたらすことになります。

潮流の速度、方向、塩分濃度、音響に関する正確なデータがあれば、中国の潜水艦は潮流に乗って静かに漂うことで、その動きを効果的に隠すことができます。

中国の潜水艦はステルス性に劣りかなり騒音が出るので、対潜哨戒能力に優れた日米は、これを比較的簡単に探知することができます。

しかし中国の潜水艦が、駆動装置を止めて、潮流に乗って移動している限りにおいては、日米の対潜水艦部隊がこれを探知・追跡することはかなり難しくなります。ただし、中国の潜水艦が魚雷やミサイルを発射したり、移動するために駆動装置を用いれば、東シナ海は水深も比較的浅いため、比較的発見しやすいです。

海中環境をよりよく把握することは、中国の海軍能力、特に猛烈なペースで拡張している潜水艦隊を前進させるために極めて重要です。

これらのブイが海流、塩分濃度、音響に関するデータを収集しているとすれば、尖閣諸島付近で活動する中国潜水艦のステルス性と有効性を大幅に高めることができます。これは、領海を守る日本の安全保障上の利益に対する深刻な脅威となるでしょぅ。

中国がこれらのブイを配備する動機が、単純な海洋モニタリングや環境調査だけではなく、潜水艦の探知や、潜水艦のステルス性を高めるための潮流の発見などを企図している可能性が高いです。

中国の潜水艦

ブイは、中国が繰り返し自国領だと主張している島の近くに戦略的に設置されています。私は、このブイが収集したデータが、対潜水艦戦で日米が現在保持している戦術的優位性を侵食するために使用されるかもしれないという重大な懸念を抱いています。

中国は、公然の対立を引き起こすことなく、日米の戦略的優位性を少しずつ削ぎ落とそうとしているようです。我々は、あらゆる機会を通じて、中国の戦略的姿勢に対抗しなければならないです。

ただし、日米はこの海域おける潮流等のデータをかなり綿密に大量に集めていることから、中国の潜水艦が潮流を利用する場合、どの潮流を利用するかなどは知り抜いており、予め予防線を張ることは可能です。

潮流に乗る潜水艦

そのため、中国がブイを設置し潜水艦が利用できる潮流に関するデータを収集したからといって、すぐにパワーバランスが劇的に変わることはないでしょう。

ただ、中国は潜水艦建造を急速にすすめいるものの、これらの潜水艦はステルス性に劣るため、中国の海軍力の増強には繋がらないともみられていました。しかし、潮流により、ステルス性を克服し、しかも数が多くなれば、これは無視できません。そうして、まさにこれを中国海軍は狙っているとみられます。

やはり、髙橋洋一氏が主張しているように、潜水艦探知や潮流の情報を把握するためのものなのか、海上保安庁が調査を行うべきと思います。そうすれば、中国の意図、潜水艦探知能力、潮流等の分析能力を知ることができます。

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