NECが東南アジアやオーストラリアで展開しているパソコン事業について、2009年7月をめどに生産・販売を中止します(NEC Computers Asia Pacificのプレスリリース)。
NECの国内外でのパソコン販売は年間300万台程度で、このうち海外市場が50万台程度とのこと。海外では低価格化の波に抗えず、2006年にはパッカードベルの株式をeMachinesへ売却しており、これに続く完全撤退の模様です。
かつてのNECは、今は亡きPC-98シリーズで国内市場を独占支配するなど、海外PCと比べて2倍近い高価格設定でも安定した高いシェアを保つ超優良企業でした。現在、海外メーカーの安価なネットブック攻勢に負けじと実売価格3万円台で「Lavie Light」を販売しているのを見ると「隔世の感」があります。
NECは、今年2月に欧州市場からの撤退の意向も明らかにしており、今後は国内PC市場に投資資源を集中させるとのこと。
パソコンはもう先進国の製造すべきものではないのか?
こういう話を聴くと、もうパソコンは先進国が製造すべきものではないのか、という気がします。昔は三種の神器などともてはやされたテレビや、冷蔵庫、洗濯機などは、本当にそんな感じです。
テレビなど、ヨーロッパなどでは、"SUMSUNG(サムソン)"のほうが、日本のものより幅を利かせています。それに負けじと、日本のメーカーは3Dのテレビを販売し始めています。しかし、これもいずれSUMSUNGの独壇場になるのかもしれません。もうパソコンも、テレビや、冷蔵庫、洗濯機なみの家電になったということかもしれません。
しかし、先進国でもまだ、挑戦の余地はあると思うのですが、NECは撤退ですか。今、NECが力を入れているのは、いわゆるサーバーのグリーン化ですね。要するに、サーバーの運用電力を減らすシステムに力を入れています。これは、テレビでもCMが流されているのでご存知の方も多いでしょう。
うちの会社のシステムは、三菱がつくったものです。基本は随分前で、10年以上前に導入しました。そのときでさえ、開発の人は、「もうパソコンでは全く儲けがなくなってしまいました」と語っていました。その頃は、今ほどではないですが、今はなき、COMPAQなどが日本に上陸してきていてパソコンは従来と比較するとかなり安くなっていました。
そのうち、IBMがパソコンハードの分野から完全に撤退し、パソコンハードは中国のLENOVOが引き継ぐというニュースが飛び込んできました。その頃は、ある程度驚きましたが、いまとなっては、当然のことだったと思います。
もはや、その頃から単なるパソコン・ハードだけではあまり利益を生まないことは明らかでした。いくら、いろいろな会社が工夫をしたとしても、CPUはインテルなどが主流になりましたし、OSもマイクロソフトの独壇場で、ほとんどすべてのパソコンにWindowsが搭載されるようになりました。Windowsももはや、その多くがインド人がつくっています。パソコン・ハードの製造は、こうした、ものを単に組み立てるものというふうになり、各メーカーの独自性などほとんど発揮できなくなりました。
最近では、さらにネットブックがでてきて、価格的にどうしても、さらに安くしなければ、パソコンハードも売れなくなりました。これでは、もはや、パソコンは先進国の製造するものではないということになってしまいます。
ただし、私は、まだまだ、先進国なりの行き方はあると思います。たとえば、製造自体は、インドやマレーシャなどに任せてしまうようなやり方です。ただ、これだけではあまり旨みのない商売です。しかし、最近では新たな動きが出てきています。
現在のパソコンは、インターネットがあることを前提として作られています。ある意味インターネットができて、有名サイトが提供するサービスが受けられれば、パソコンハード自体はどうでも良いという考え方が主流になりつつあります。そうなると、インターネットのサービスを受けやすくすれば、ハードやソフトなど使い勝手が良いとか特徴があれば、良いということになります。私自身も、最近どのような場面でパソコンを使うかというと、ほとんどがインターネットを介しているというのがほとんどです。いまや、誰でも、パソコンに搭載してあるソフトを使うというよりは、インターネットを介しているというのが実体だと思います。
実際にその動きが出てきています。たとえば、LENOVOが従来とはまったく異なる、CPUやOSを搭載したスマートブックを発売しようとしています。また、Googleは、来年には、新たなネットブック用のChromeOSを開発して、そのOSを搭載したネットブックが来年発売の予定です。
さて、このような動き、日本でも高まれば面白くなってくると思います。考えれば、ここ10年くらい、パソコンの世界も標準化、平準化ばかりが進んでつまらないものになっていました。ここで、インターネットをプラットフォームとして、これを最大限に活用できるかたちで、新たなパソコンハードやソフトが生まれてくることを期待します。それに、先進国にはそれなりにモデルがあります。Appleの行き方は、その典型例です。iPod nanoにビデオがつきました、これ、アップルだから売れるのであって、他メーカがやってもなかなか売れないと思います。なぜ、アップルだと売れるのかというと、アップルが独自の戦略を明快に打ち出しその中でハードの位置づけをはっきりさせて、戦略とともに顧客に強力にアピールしているからです。
そうなると、他社でも戦略が重要になってきますね。このブログには以前、もはや、ITメーカの売り物は、パソコンやソフト自体ではなく、戦略だということを掲載しました。まさに、その通りです。日本のメーカーも今後のIT産業などの将来を見通し、戦略を立案して、その中でハードも開発していくという具合にするとともに、戦略立案以外の部分は、なるべく人件費の安いインドなどに移していくということで、十分これからもパソコンハードの開発は可能ではないかと思います。そうして、そのほうが、消費者にとっても、インターネットを共通のプラット・フォームをとしながらも、いろいろと特徴のあるハードの選択の幅が広まり面白くなると思います。どこのメーカでもいいですから、何か今までとは全く異なるコンセプトで、既存の技術の組み合わせでも何でも良いですから、予想もつかないようなすごいモノをつくってくれればと思います。それって、昔はソニーがやっていたような気がしますが・・・・。
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