http://journal.mycom.co.jp/news/2011/02/01/110/index.html
【私の論評】もう、クラウド・デバイスをめぐる熾烈な戦いが先進国で始まっていることの査証か?
アップルに関しては、最近では、iPhoneや、iPadの大成功で、華やかな側面ばかりが報道させています。しかし、このように撤退する製品もあるということです。私としては、この製品アップルでは最初から提供すべきではなかったのではないかと思います。
この製品は、従来からあるクライアント・サーバーシステムの延長線上の製品であり、提供しはじめた2002年頃には、すでに世の中の流れが、かわりはじめていました。そうです、この製品がでる少し前から、現在クラウドといわれている「所有から利用へのIT」の方向性はすでに定まっていました。
ちなみに、2001年には、ジョン・ヘーゲル三世 ジョン・シーリー・ブラウンの共著による『「所有から利用へ」のITマネジメント』という論文がハーバード・ビジネス・レビューに掲載されていました。
この論文の趣旨は、「情報システムのすべてを自前で構築する時代は終わりつつある。必要に応じて、ウェブでシステムやサービスを購入する、ウェブ・サービス・アーキテクチャーの仕組みと利点を紹介する」というものであり、企業が専有の情報システムを確立する時代は終わりつつある。今後は必要に応じて、ウェブでシステムを購入すべきだ。そうすればデータ互換の問題に悩まされることなく、常に最新のITを活用できるようになる」というものです。当時はクラウドなる言葉なかったものの、今日のクラウドの概念に関して、いちはやく掲載していました。
ただし、この論文では、主に企業の利用のことに力点がおかれていて、今日のような個人によるクラウド利用に関しては、ほとんど触れられてはいませんでした。Googleのような企業がでてきて、クラウドによって、無料のサービスを行ない個人ユーザーのアクセスを拡大し、トラフィックを増して、そこから、広告で収益をあげるといようなビジネスモデルに関しては、掲載されていませんでした。
しかし、今日の企業によるクラウド利用に関する概念に関しては、もうすでにここで確立されていたといえます。私は、今日セールス・ドット・コムのCEOが口にする「ITの民主化」という言葉について、この記事を読んだときに直感していたので、感銘を受けたものです。
この記事を読んで、感銘を受けていた私は、2002年の新聞にアップルが大々的にこの製品の広告を出していることに非常に違和感を感じたものです。今日、その違和感は、現実のものとやりました。
ちなみに、ジョン・ヘーゲル三世は、先の論文に先立つことの2000年には、同じハーバード・ビジネス・レビューに『アンバンドリング:大企業が解体されるとき ―インタラクション・コストが低下すると事業の専門分化が促される―』という論文を、マーク・シンガーと共著で掲載しています。この論文の趣旨は、「インターネットは、巨大組織を小単位に解体してしまう。この力学に逆らう組織は、ゴーイング・コンサーンを実現できないばかりか、専門集団やネット・ベンチャーの軍門に下るかもしれない。eエコノミーが加速すればするほど、この力学は強く作用していく。この時流に乗れるか否かが、大企業の存続を左右する」というもので、分かりやすくいえば、インターネットが発展して、コミュニケーションコストが低下した現在では、大企業が何もかも自前で持つよりも、コアでないものは、他所に任せたほうが、はるかに効率的あることを説いています。
ジョン・ヘーゲルはこのような概念をアンバンドリング(解体)という言葉で分かりやすく解説していました。本日は、このアンバンドリングに関しては、本題ではないので、詳細は記しません。機会があれば、また別の機会に記そうと思います。しかし、まさに、根底にこのような流れがあるからこそ、今日のクラウドの隆盛がみられるのです。何の理由もなく、ただ最新技術ということで、クラウドがもてはやされているというわけではないということです。
2000年には、あのジョブスもすでにアップルに復帰して、CEOになっていました。それから、2年後にこの製品を提供しはじめたということです。ジョブスを含む当時のアップルの幹部などが、この論文を読んてその意味を良く熟慮していたら、この製品は世の中にでなかったかもしれません。
しかし、クライアント・サーバーシステムが隆盛を極めていた当時としては、仕方のなかった事だと思います。それに、これは、失敗と呼べるほどのことではないと思います。当時としては、当然のこととして、取り組み、アップルとしてのあり方を世に示したという事だと思います。経営者としては、様々な可能性を吟味し、ありとあらゆる手を打っておくということで、その一環として実施したものでしょう。無論、先の論文の内容も、すでに知っていたか、仮に実際に読まなかったとしても、事実として理解はしていたと思います。
そんなことよりも、私たちが、ここで参照すべきは、ITの世界がここ数年で、激変するということです。今日のアップルのXserverからの撤退は、それを意味するべき象徴的出来事と理解すべきです。上の記事にも「iPadとiPhoneの法人向け営業が強化されているというニュースもたびたび伝わってきており、同社は次のフロンティアとしてMacを使った企業システムの売り込みではなく、より大きな台数の需要が見込めるモバイルデバイスを考えているようだ」としています。いよいよ「所有から利用」への流れが加速されるということです。
この撤退の意味するところは、次の時代には、いわゆるクラウド・デバイスの時代がやってくるということです。iPhoneや、iPadはデバイスの一形式にすぎず、クラウドを背景にして、ありとあらゆるデバイスが開発されて、運用されていく時代への突入を意味しているということです。
この流れを理解しない企業はいずれ、競争力を失い、陳腐な企業群の中に埋没していくことでしょう。こうした、クラウド・デバイスをめぐる、戦いは先進国で火蓋をきっておとされました。これは、IT関連の企業だけの話ではなくすべての産業をひっくるめて、これから、10年間にわたって大攻防戦が繰り返されるわけです。こんなときに、グローバル企業などといって、新興国の遅れた社会にあわせた製品開発をやっているだけの企業は遅れをとることでしょう。これから、テレビは無論のこと、車、時計、電気・水道・ガス、炊飯器、オーブン、体重計、医療機器、ゲーム機器、インターフォン、メガネ、湯沸かし器、冷蔵庫などありとあらゆるもの、がスマート化され、クラウド・デバイス化されるのです。もう、パソコンや、iPhone、iPadの世界だけのことではなくなるのです!!
21世紀の企業の攻防戦の舞台は先進国の先端的社会(ちみなみに、経済ではないですよ!!)であることにかわりはありません。Googleが、アンドロイドに力をいれて、Google Chrome OSに関しての活動が現在低調なのが、それを裏付けています。これも、本日は本題からずれてしまうので掲載しません。いずれ、また、機会があれば掲載します。ただ一ついえることは、こうしたクラウドを活用して、どのように社会(ここでも、しつこくいっておきますが、経済ではないですよ!!)に貢献できるかを真摯に考え、考えるだけでなく行動する企業だけが、21世紀の先端的な社会に、生き残るということです。
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