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人民元も米国の標的になりそうだ |
改正案は、自国通貨を割安にすることを輸出国側による補助金と見なし、関税で対抗するという仕組み。割安かどうかは米財務省が判定するとしている。貿易赤字を減らしたいトランプ政権は、中国製品への関税引き上げを行っているが、通貨安で関税引き上げ効果を打ち消すという中国側の逃げ道をふさぐ狙いがうかがえる。
米財務省は半年ごとに主要な貿易相手の通貨政策を分析した外国為替報告書を発表している。自国通貨を安値に誘導している「為替操作国」に相殺関税を課す仕組みはすでにあるが、基準が厳しく、最近は認定された国はない。
2018年10月発表の報告書では、日本、中国、ドイツ、韓国、インド、スイスを監視対象国と指定していることから、日本も狙ったとの報道もあるが、日本は旧民主党政権時代を最後に為替介入を行っておらず、日銀の金融緩和で円高が修正されたというのが実態だ。最近の為替動向も、米中貿易戦争を受けて、やや円高方向で推移している。
一方、人民元は対ドルで約4カ月ぶり安値をつけているが、市場の見方は「中国当局は通貨下落を積極的に止めようとはしていない」(為替ストラテジスト)。韓国のウォンに至っては、約2年4カ月ぶりの安値水準が続いている。
前出の米財務省の報告書で、不透明な為替介入をヤリ玉に挙げられる常連の中韓両国だが、どうするのか。
【私の論評】為替報復関税はまともな国同士では有り得ないが、米中冷戦で使われる可能性は否定できない(゚д゚)!
米国はカナダ、メキシコと昨秋に改定・署名した北米自由貿易協定(NAFTA)の新協定に盛り込みました。ムニューシン米財務長官は「どんな貿易協定にも為替に関する条項を導入したい」と、繰り返し発言しています。無論日米の貿易協定にも盛り込みたいようです。
ムニューシン米財務長官 |
日米間の貿易協議が始まっています。まず4月中旬に茂木敏充経済再生担当相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が初会合を開き、農産物と自動車を含む物品貿易から議論を開始し、適切な時期にサービス分野も話し合うことで合意しました。
その後、麻生太郎財務相とムニューシン米財務長官が25日に会談。米国が導入を求めている為替条項については、財務相同士で協議することになりました。
以下、今後のドル円相場に与える影響について、考えてみたいです。
まず米国が導入を望んでいる為替条項については、交渉相手がそれを求めてきている以上、議論すること自体を拒むのは難しいです。日米両国が為替条項導入の是非について話し合っている間、相手の了解が無い為替介入は互いにできなくなりそうです。
為替条項への懸念は杞憂
ただ、冒頭の記事にもあるように、日本は為替介入の実績を毎月公表しており、2011年11月に実施したドル買い/円売りを最後に7年半も介入を封印しています。
現在、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に参加している主要国間では、「為替介入を実施する前には相手国に通知の上、可能な限り合意を得る」との紳士協定が存在しており、今後の日米交渉で為替条項が導入されたとしても、介入に際して守るべき国際的な規範は今とあまり変わらないです。
現在ドル円が取引されている110円前後の水準は、かつて日米両国が協調して最後のドル売り介入を行った140円台半ばや、ドル買い介入を行った70円台後半とかけ離れています。為替介入の是非が喫緊のテーマではない現下の局面で為替条項が導入されても、自然体の需給で決まるドル円の自由な上下動が束縛されることはないでしょう。
実際、日本より先に米国との協議に臨み、為替条項に相当する合意文や条文の導入を強いられた韓国、メキシコ、カナダの先例をみると、交渉期間中も、合意成立後も、当該国通貨の対ドルレートは市場メカニズムに委ねられて柔軟に動く日々が続いており、通貨安方向への動きが制限されたような痕跡は認められないです。
なぜなら、米国がこれまで上記3カ国と合意した為替条項は、人為的な介入による通貨安誘導の自粛を求めているだけで、「市場が決める為替レート」を双方が受け入れることをむしろ推奨しており、相場が動く方向や水準をコントロールすることを目的にしていないからです。
事実、米国がメキシコ、カナダと合意した新貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に盛り込まれた為替条項の条文をみると、米国だけが都合よく相手の通貨安誘導を一方的に封じることが出来るような仕組みにはなっていません。双方に同等の情報開示や介入の自粛が義務付けられており、当然の話ですが、為替条項を導入すると米国も人為的なドル安誘導はできなくなります。
2018年11月30日 USMCA |
同条項では、当事国間で通貨安誘導の疑惑が生じた場合の紛争解決の制度も定めているが、対象になるのはあくまでも為替需給の人為的な操作です。
国内向けに実施される財政・金融政策は対象になっておらず、仮に需給操作の疑いが浮上しても30日以内に協議して60日以内に解決しない場合は、国際通貨基金(IMF)に調査を頼む手順になっています。嫌疑だけで制裁が発動できる訳ではありません。
米国が日本に対して求める為替条項に金融政策が含まれる可能性を懸念する声もありますが、杞憂に終わることでしょう。もし互いの金融政策に対する干渉が可能と解釈されるような条文を挿入した場合には、将来どこかで米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに踏み切った際、日本が「ドル安誘導」と非難して自粛を求めることも可能になります。
政治の口先介入効果は限定的
日米双方とも、自国の金融政策の自由度を縛るような条文は望まないと思われます。実際、ムニューシン財務長官は日本に求める為替条項も、USMCAとほぼ同じだと言っています。もし日本が条項を受け入れたとしても、すぐに強烈な円高ショックが走ったり、政府・日銀の国内政策が制約されたりする可能性は低いです。
為替条項の導入を求める米国政府やトランプ大統領はドル安を強く望んでおり、市場が米国の意向を忖度(そんたく)した場合には、円高/ドル安が進行するとの見方もあります。ただ、そのような発送は、昭和の時代から平成中頃までのものだと思います。
国境をまたぐ自由な資本移動に為替変動を委ねる制度を45年以上も維持した上、市場参加者の多様性と取引規模が増大し続けている近年のドル円市場においては、政府要人が自らの希望を口頭や文書で伝えるだけでは、為替レートに一時的なノイズを混入させることしかできないです。為替相場の基調的な方向感や水準を自在に操ることは、いかなる権力者でも不可能です。
過去の日本では、いくら為替介入を大々的に行ったとしても、恒常的に金融引き締め政策をやっていたのですから、円高・デフレになるのが当たり前で為替介入は一時的な効果しかなかったのです。実際私達は過去には、恒常的に円安になったのを見た試しがありません。
そうして、これは先進国同士では特にあてはまるものです。かろうじて韓国もあてはまるでしょう。さすがに、文在寅氏でもそれを自在に操ることは不可能でしょう。それは、習近平も同じでしょう。
そもそも、このブログにも掲載したように、通貨戦争などという考えは幻想です。中国が何が何でも、人民元安を実現するために、市場からドルを買い続けたり、あるいはどこまでも、金融緩和をし続けた場合どうなるでしょうか、行き着く先はハイパーインフレです。
そうなってしまえば、国内の経済が混乱するので、どの国でも不当に自国通貨を安くし続けることなどできません。
ただし、中国という国は、常識のあてはまる国ではありません。普通の国なら、ハイパーインフレになっても為替操作をするなどということはなく、適当なところで収束するはずですが、中国の場合だと国民が騒ぎだしたとしても、それを人民解放軍で弾圧して、為替操作を実行できます。
ただし、中国でさえ、そのようなやり方をしても、いずれは限界がくるはずです。そのため、為替操作は比較的短期間しかできないのです。これは、まともな国なら、急激な為替の変動を避けて、ソフトランディングさせるために用いるものです。一つの国が、長期にわたって為替操作をして自国を有利に導き続けるなどということはできません。
そんなことはわかりきっています。だからこそ、為替条項とか、為替操作の話はあまり人気がないのかもしれません。
そんなことはわかりきっています。だからこそ、為替条項とか、為替操作の話はあまり人気がないのかもしれません。
ただひとついえるのは、今回の米中経済冷戦では、為替報復関税もあり得るかもしれいないということです。
皆さんもご存知のように、健常の日米対立は、関税による貿易戦争などの次元を超えて、米中の覇権争いの経済冷戦となっています。もはや、貿易赤字がどうのこうのという次元ではありません。
現状の報復関税だけでは、あまり効き目がなければ、米国は為替報復関税を発動する可能性は十分あると思います。
たとえ、短期間であっても中国が明らかに為替操作をしていることが、明白になった場合は、米国は為替報復関税を発動するでしょう。
それに対応して、中国も報復関税を米国にかけて対抗するということも十分あるでしょう。ただ、いずれにしても、中国は米国からの輸入が、米国が中国から輸入する物品よりはるかに小さいですし、さらには米国が中国から輸入する物品は中国からでないと輸入できないものはなく、すべて他国からの輸入で代替できるので、これは、いずれに転んでも、中国には不利です。
米国としては、現状の関税では中国を弱らせるには不十分と考えれば、次の段階では為替報復関税も実施し、さらには金融制裁も実行するでしょう。この冷戦は、中国が体制を変えるか、中国が経済的に疲弊して他国に対して影響力を行使できなくなるまで続きます。
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