2022年11月16日水曜日

中国航空器材集団、エアバスから140機一括購入―【私の論評】米国は、昨日の技術を今日使えるようにした中国初の大型旅客機「C919」を中国の主力旅客機にすることすら許さないかも(゚д゚)!

中国航空器材集団、エアバスから140機一括購入
独首相の訪中に合わせ、集中購買で有利に交渉

中国企業がエアバスと大型購入契約を結んだのは、7月に続いて今年2回目だ

 航空関連器材の集中購買を手がける中国航空器材集団(CASC)は11月4日、ヨーロッパの航空機製造大手エアバスと航空機140機の大型購入契約を結んだと発表した。ドイツのオラフ・ショルツ首相の中国訪問期間に合わせた動きで、契約の内訳は短距離路線用の「A320シリーズ」が132機、長距離路線用の「A350」が8機。カタログ価格ベースの総額は約170億ドル(約2兆5148億円)に上る。

 「中国の航空運輸市場の緩やかな回復とともに、今後は比較的速いペースの市場拡大が見込まれる。それに伴う航空会社の輸送力増強の需要に対応するため、エアバス機の大量導入を決めた」。今回の契約の背景について、CASCはそうコメントした。

 同社は中国政府の国有資産監督管理委員会直属の国策企業で、中国国内の航空会社に代わって航空機の買い付け交渉にあたる。集中購買方式を通じて航空機メーカーから(各航空会社が個別に交渉するよりも)大きな優遇を引き出しており、航空業界関係者によれば、今回の商談でも実際の契約総額は170億ドルをはるかに下回るという。

ボーイングは大型受注5年なし

 2020年に新型コロナウイルスの流行が始まって以降、中国企業がエアバス機を大量購入するのはこれが2回目だ。前回は2022年7月、国有航空大手の中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空の3社がそれぞれエアバスと商談し、合計292機を契約。カタログ価格ベースの総額は約372億5700万ドル(約5兆5115億円)に上った。

 一方、エアバスのライバル企業であるアメリカのボーイングは、中国との大型契約が途絶えて久しい。前回は5年前の2017年11月、当時のドナルド・トランプ大統領の中国訪問に合わせてCASCが300機を購入。カタログ価格ベースの総額は370億ドル(約5兆4734億円)を超えた。

 だが、その後は米中両国政府の関係悪化が続いたうえ、ボーイングは主力機種「B737MAXシリーズ」の2度にわたる墜落事故の影響により航空機市場での評判を落としてしまった。中国では、航空安全当局によるB737MAXの運航再開許可が今も下りておらず、新規受注が得られない状況が続いている。

【私の論評】米国は、昨日の技術を今日使えるようにした中国初の大型旅客機「C919」を中国の主力旅客機にすることすら許さないかも(゚д゚)!

中国で旅客機というと、中国初の国産大型旅客機「C919」の開発プロジェクトはどうなったのでしょうか。

中国初の旅客機「C919」

中国は2006年の5カ年計画で、国産の大型旅客機の開発プロジェクトを立ち上げて以来、16年の歳月と数百億ドルの資金を費やして、「C919」と呼ばれる商用機を製造し、規制当局の認可を受ける態勢を整えています。6機の試験機のうち1機は、年内に中国東方航空が運航を開始する予定です。

ただし、中国に技術を盗まれることを警戒した海外のサプライヤーが、最新技術を搭載した部品の納入を躊躇した結果、この機体の性能は、最先端とは言い難いものになっています。C919は昨日の技術を今日使えるようにしたものといえます。

中国政府は、C919の開発を行う国有メーカーの中国商用飛機(COMAC)に、目を見張るような大金を注ぎ込みました。ワシントンの戦略国際問題研究所で中国経済を専門とするスコット・ケネディは、2008年の設立から2020年までにCOMACが受け取った資金は490億ドルから720億ドル(約10兆円)にのぼると推定しています。

COMACは、この機体の製造で海外のサプライヤーに大きく依存せざるを得ませんでした。Airframer.comに掲載されているC919の約80の主要サプライヤーのうち、中国企業はわずか7社で、別の7社は外国企業と中国企業のジョイントベンチャーだとケネディは指摘しました。

欧米企業がどのグレードの技術を提供しているかは不明ですが、競合の成長を手助けしたくないという気持ちと、知的財産の盗難への恐怖が、それを抑制したと考えられています。

おそらく最も重要な部品であるエンジンは、ゼネラル・エレクトリックとフランスのサフラン社の合弁会社であるCFM社のもので、同社はC919のエンジンが同社の最高グレードのエンジンであるLEAPエンジンの改良型だと述べています。しかし、コンサルティング企業AeroDynamic AdvisoryのRichard Aboulafiaは、このエンジンが実際には旧型のCFM56のアップグレード版ではないかと疑っています。

二流のテクノロジーを搭載したC919は、性能の重要な指標である航続距離で大きく劣ることになりました。COMACによると、この旅客機の航続距離は約2500海里で、エアバスA320neoやボーイング737 MAXに大きく遅れをとっています。このため、すでにA320や737 MAXが就航している世界中の数百の路線でC919を使うことはできず、ボイドは、この機体の海外での販売は困困難です。

C919の定価は6億5300万元(約130億円)と高くはないかもしれないですが、航空会社がパイロットや整備士を訓練して新しい機種に乗り換えるには、費用も時間もかかります。A320や737と比較して、運用コストの削減や性能の優位性がなければ、C919を導入する意味はないでしょう。

一方で、中国経済は減速し、新型コロナウイルス関連の規制が旅行需要を抑制する中でも、長期的には中国の航空会社はより多くの欧米の飛行機を必要とすると、業界ウォッチャーは予想しています。ボーイングは、今後20年間に中国が8485機の旅客機を導入し、世界市場の約20%を占めると予測しています。

しかし、その中でボーイングが獲得するかもしれないシェアは、トランプ政権時代に始まった米国の対中貿易戦争などの影響で脅かされています。さらに、その貿易戦争が、C919の今後に疑問を投げかけています。米国政府は2020年後半から、米国の企業が中国軍と関係のある企業に部品を輸出する場合、特別なライセンスの申請を義務付けています。

米国が不満を募らせた結果、中国への部品の輸出を完全に停止する可能性もあります。その場合、C919をすべて中国製の部品で作り直すためには、10年から15年が必要になるでしょう。

ただ、それもできないかもしれません。なぜなら、米商務省は7日、半導体や製造装置の新たな対中輸出規制強化策を発表したからです。最先端半導体を扱う中国企業の工場への製造装置販売を原則禁止し、スーパーコンピューターなどに使われる関連製品の輸出も制限しました。

半導体の小ささや精密性は、「プロセス(製造工程)」という指標で優秀性が示されます。米国はこれまで、「10ナノメートル」レベルのプロセスで半導体を製造する中国企業への装置輸出を原則禁じていました。新規制では、現行の主力世代である「14ナノメートル」未満のプロセスを用いる先端半導体を製造する中国企業まで装置輸出が原則禁じられます。

一連の措置が正式適用されれば、中国の半導体製造業がストップするだけでなく、米国の半導体技術を使って中国で生産をしてきた世界各国の企業の事業継続が不可能となる。影響は幅広い商品に及びそうです。その中には、無論航空機も含まれます。

新規制の対象は、最先端技術だけでなく、現行技術も含まれており、生活に密着した製品の製造・流通が途絶し得るのだ。半導体枯渇で、電子製品が前世代に「先祖返り」すれば、高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムの利用や、クラウド構築も不可能となる。

さらに、米当局は、自国技術や製品を最終的に手にする組織・個人の目的、用途がはっきり確認できないケースを「未検証エンドユーザーリスト(EL)」として集約しており、ここにもメスを入れる構えです。

リスト対象に製品を送る場合、対象を調査して米国政府の許可を得る必要があます。新規制では、対象が「米国の国家安全保障または外交政策に反する重大なリスクがある者」に拡大されました。調査に協力しないと、ELに追加されることになります。米国の経済制裁のスキームを示す、チャートを以下に掲載します。

クリックすると拡大します

この状況ですから、エアバスにも米国制の半導体が使われている可能性は高いですから、エアバスを輸出するにしても、米国の許可が必要かもしれません。

輸出ができたにしても、その後半導体を供給できないかもしれません。

C919は昨日の技術を今日使えるようにしたものであり航続距離も短いですが、今後中国ではこれを用いるしかなくなるかもしれません。いずれ、この航空機が、中国の主力旅客機という時代が来るかもしれません。

以下にC919がどのような部品を用いているのか示すチャートを掲載します。部品名の横に国旗がありますが、これはその部品がいずれの国のものかを示すものです。


なんとは、中国製はほとんどなくて、多くの部品は米国のものです。これで、本当に中国国産といえるのでしょうか。

米国がこれらの、部品を中国に輸出できなくすれば、中国で航空機の製造はできなくなります。実際に、そのように主張する人もいます。

上の記事では、こうしたことが触れられていませんが、米国の中国制裁は凄まじい段階に達していることは、認識すべきと思います。これでも、日本の親中派の方々は、未だ中国の輝かしい未来を信じているのでしょうか。

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