2022年12月4日日曜日

スイス、ロシアの金融資産1兆円超を凍結―【私の論評】ロシア凍結資産のウクライナ復興への活用は、新たな国際的枠組みの中で考えるべき(゚д゚)!

スイス、ロシアの金融資産1兆円超を凍結

スイスの経済省経済事務局(SECO)

スイスの経済省経済事務局(SECO)は1日、先月25日時点でロシアの金融資産78億9000万ドル(約1兆700億円)を凍結したと発表した。

SECOは1日付の報道発表によると、金融資産のほか、制裁対象のロシア人がスイスに所有する不動産15物件が差し押さえられた。

ロシア人が所有する総額485億ドルがSECOの調査対象になっているという。

スイスではロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、連邦会議(内閣に相当)が中立の伝統を破り、欧州連合(EU)の対ロシア制裁を採択した。

また、「防衛力」強化のため、スイスは北大西洋条約機構(NATO)やEUとのより緊密な関係を模索する方針を明らかにしている。

【私の論評】ロシア凍結資産のウクライナ復興への活用は、新たな国際的枠組みの中で考えるべき(゚д゚)!

スイスのカシス大統領兼外相

スイスのカシス大統領兼外相は記者会見で、7月同国ルガノで開かれた「ウクライナ復興会議」でウクライナのシュミハリ首相が各国に、凍結しているロシア新興財閥らの資産の没収とウクライナ復興への利用を求めたことについて、問題への対処にはバランスが必要だとの冷ややかな反応を示していました。

復興会議はロシアの侵攻で甚大な社会・経済的被害を受けたウクライナを支援するため各国が参集。シュミハリ氏は会議終了後の記者会見で、米国や欧州連合(EU)や英国が凍結した総額3000億─5000億ドルの資産はウクライナの破壊された学校や病院や住宅の再建資金に充てることができるはずだと主張しました。

これに対してカシス氏は「大部分の民主主義国家のルールに従えば、われわれは資産の出どころを明らかにするための資産凍結はできる」と発言。ただ、資産とウクライナ情勢との関係が不透明な場合や、取るべき措置のバランスの問題などをスイスとしては解決しないといけないと距離を置く姿勢をにじませました。ちなみに、スイスはEU非加盟国です。

また、"「所有権、財産権は基本的権利、人権」であり、適切な法的基礎が作られた場合(例えば、第一次大戦で敗北したドイツに膨大な金額の賠償を貸す条約をドイツが受け入れたケースや1951年の対日平和条約)にのみ侵害が許されるというのは、国際的に確立した原則です。条約法条約も「条約は、第三国の義務又は権利を当該第三国の同意なしに創設することはない」(第34条)と定めています"とも発言しています。

永世中立国のスイスは、EUの対ロシア制裁に同調。5月には国内に凍結したロシア資産が63億フラン(65億ドル)あることを報告しています。ただ、この自動的な接収には抵抗。スイスはロシアのエリート層に以前から人気の土地で、ロシア富裕層の資産の置き場所にもなってきました。

このスイスが、金融資産78億9000万ドル(約1兆700億円)を凍結したのです。これは、累計なのでしょうが、かなりの額になります。5月から、さら13億ドル多く凍結したことになります。

ブリンケン米国務長官は4月末に、バイデン政権がアメリカ国内で凍結しているロシア政府資産をウクライナ再建に向けるという選択肢を検討していると発言しました。

また欧州連合外務・安全保障政策上級代表ボレル氏はフィナンシャル・タイムズとのインタビューの中で、タリバンがアフガニスタンを支配した後、アメリカがアフガニスタン中央銀行資産について行ったことをEUも(ロシア凍結資産について)行うことは論理的なことだと主張し、ロシアがウクライナ侵略に対する「戦争賠償」として、ロシア凍結資産を充てることを肯定しました(5月9日)。

欧州連合外務・安全保障政策上級代表ボレル氏

カナダでは5月下旬、ロシアの凍結資産の「没収」を可能にする法案を成立させており、フリーランド副首相兼財務相は、「我々の法的権限を拡大することは非常に重要だ。なぜならウクライナを再建する資金を見つけることが大事だからだ。ロシアの資産の没収こそが考えられる最も適切な財源だ」と述べています。

この問題はG7首脳会議でも議論され、カナダで法案が成立したのを受けて他の国でも法整備の動きが広がるかが焦点でしたが、共同声明では「国内法に合致してロシアの凍結資産をどう活用するかを含め、復興支援の選択肢を模索する」という慎重な言い回しとなりました。

これはG7の間で考え方に違いがあることが、その背景にあると見られていますが、辞任した英国のトラス首相が外相時代に「英国政府はこの恐ろしい戦争に関わった人たちの資産を没収するための法整備を検討している。ウクライナ再建のために極めて重要だ」と発言し、カナダに続いて法整備に前向きな考えを示しました。ただ、その後英国ではこの法整備はされていません。

カナダ トルドー首相

欧州連合(EU)欧州委員会は11月30日、ウクライナ侵攻に伴う制裁で凍結したロシアの資産を没収する計画を提案したと表明しました。

フォンデアライエン委員長は「われわれはロシア中央銀行の準備金3000億ユーロを阻止し、ロシアの新興財閥の資金190億ユーロを凍結した」との声明を発表。短期的にはEUとパートナーが凍結資金を管理し、投資することが可能であり、収益金はウクライナに供与し、国内の損害賠償に充てると説明しました。

委員長は「これを可能にするため、パートナーとの国際合意に向けた作業を進める。実現に向けて法的な手段をともに模索する」と述べました。

凍結した資産を「没収」して「売却」し、その資金を復興資金にあてる案には多くの賛成意見がある一方で、強権的に所有者が変更されるため、国際法上認められない恐れもあるという否定的な意見も根強いです。

ロシア政府の報復措置も予想される中、G7や欧米が足並みを揃えた行動に出られるのかが課題となっています。日本も無論、ロシアの資産を凍結していますが、ただ、それをウクライナ復興に転用すべきなどの発言はしていません。

この問題に関しては、国際的な枠組みを作った上で、慎重に議論していくべきでしょう。確かにロシアのウクライナ侵攻自体は、いかなる理由があれ、許されるものではありませんが、それにしても、凍結資産をウクライナ復興に転用してしまえば、第一次大戦で敗北したドイツに膨大な金額の賠償が、ドイツに暗い影を落とし、それが第二次世界大戦の誘因の一つにもなったことを考えると、慎重にならざるを得ないです。

ただ、これはロシアに与するものではありません。ラブロフが語った、凍結資産を西側諸国がウクライナ復興にあてることを「盗人」と語っていましたが、ではロシアによるクリミア併合こそ、「盗人猛々しい」と言わざるを得ません。さらに、ウクライナに侵攻したのですから、ロシアの現政権がこのようなことを語る資格などないです。

ただ、いずれロシアやウクライナの代表を含めた、国際的枠組を構築して、この問題を検討すべきと思います。

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