2024年8月23日金曜日

ハリス候補への安保面での疑問―【私の論評】日米保守層の連携強化:ハリス氏の曖昧な外交・安保政策と日本のリーダーシップの変化に備えよ

ハリス候補への安保面での疑問

【まとめ】

  • カマラ・ハリス候補の外交・防衛政策が不明確で懸念されている。
  • 重要な国際問題についての見解が不明で問題視されている。
  • ハリス氏は、選挙期間中に具体的な政策を明らかにすることが求められる。
カマラ・ハリス米副大統領

アメリカの民主党全国大会が8月19日から始まり、カマラ・ハリス副大統領が民主党の大統領候補として正式に指名を受けることになった。バイデン大統領が選挙戦から撤退した後、ハリス副大統領は最近の支持率調査で共和党候補のドナルド・トランプ前大統領に追いつき、追い越しかねない人気急上昇を見せている。

しかし、ハリス氏の外交や防衛についての考えがわからないという疑問が米側の大手メディアで提起された。特に注目すべきは、ウォールストリート・ジャーナルの8月9日付の社説だ。この新聞は、客観性が強いとされており、その主張は注目に値する。

社説は「謎の最高司令官」と題され、ハリス候補が国際問題についてどんな思考を持っているのかわからないと主張している。現在の国際情勢が第二次世界大戦以後かつてないほど危険となった中で、ハリス候補は民主党の大統領選への指名を確実にしてからも、記者会見やインタビューを一切していないことが指摘されている。

社説はまた、ハリス氏の過去の言明も懸念の対象としている。2020年に上院議員として大統領選への名乗りをあげた時期に「国防費は削減されねばならない」と明言していたことが挙げられ、中国の軍事力増強が続く中で、今もなおアメリカ側の軍事力の削減を求めるのかという疑問が提起されている。

これらの疑問が生じる背景には、ハリス氏がバイデン政権の副大統領として外交政策や軍事政策など対外的な課題にほとんど接してこなかったこと、また副大統領として対外課題についてまず語ることがなかった点が大きいと考えられる。今後の80日間のアメリカ大統領選挙では、ハリス候補は外交でも内政でも自分自身の政策を具体的に語ることを迫られるだろう。

この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】日米保守層の連携強化:ハリス氏の曖昧な外交・安保政策と日本のリーダーシップの変化に備えよ

まとめ

  • カマラ・ハリス副大統領の外交政策は曖昧で優柔不断と批判されており、これが米国の国際的リーダーシップを弱める懸念がある。
  • 日本では岸田首相の不出馬表明により、リベラル色の強い新首相が誕生する可能性があり、これが国際秩序に影響を与える恐れがある。
  • 日米両国のリベラル化により、従来の同盟関係や経済政策が見直される可能性があり、国際関係のバランスに変化をもたらす。
  • 日米の保守層は共通の価値観を基に協力し、伝統的価値観を守り、強固な同盟関係を築くことが重要である。
  • 経済政策や安全保障面での協力を通じて、より安定した国際社会の実現に向けた取り組みが求められる。
カマラ・ハリス副大統領の外交政策に対する姿勢が曖昧で優柔不断だと批判されているのは、当然の成り行きと言えるでしょう。信頼性の高いウォールストリート・ジャーナルが、彼女の重要な国際問題への対処能力について懸念を表明したのは、もっともなことです。

ハリス氏は重要な問題に関して本音を避け、曖昧な態度を取る傾向があります。これは米国と同盟国にとって大きな不安材料となっています。外交・防衛政策に関する彼女の不明確さは、単なる理解不足なのか、あるいは本当の意図を隠そうとしているのか、懸念が高まっています。

ハリス氏の外交・安全保障分野での経験不足は、複雑な国際情勢に適切に対処する能力に疑問を投げかけています。また、彼女のリベラル寄りの背景から、米国の伝統的な同盟関係や軍事力の維持に消極的な姿勢を取るのではないかという懸念も存在します。さらに、彼女の曖昧な態度が進歩派と穏健派の両方の支持を得るための政治的戦略である可能性も指摘されており、これは国民に対する誠実さを欠いているとの批判につながっています。

米保守派は、明確なビジョンと強い意志を示さないことが、国際社会における米国のリーダーシップを弱める可能性を危惧しています。また、外交・防衛政策の不明確さは、中国やロシアなどの敵対国に誤ったシグナルを送り、彼らの挑発的行動を助長する恐れがあるとも考えられています。

米国には、世界における自国の役割について明確なビジョンを示せる、強くて決断力のあるリーダーが必要です。同盟国には米国の立場を理解してもらい、敵国には米国の決意を知らしめなければなりません。ハリス氏が外交政策について率直に語らないことは、政治的立場に関係なく、すべての米国民にとって憂慮すべき事態です。

国を率いる立場の人物の見解や意図を知ることは、米国民の当然の権利です。ハリス氏がこれらの問題について正面から取り組もうとしない姿勢は、副大統領という職責と国民への義務を軽んじているように見えます。

ウォールストリート・ジャーナルの社説は、ハリス氏の統治アプローチに見られる懸念すべきパターンを指摘しており、さらなる検証と議論が必要です。権力者は自身の行動と、国際社会における米国の立場に影響を与える問題について、説明責任を果たすべきです。

米国民は、リーダーからの曖昧で回避的な答えに満足すべきではありません。世界における米国の役割について、明確なビジョンを示す意思のあるリーダーこそ、米国民にふさわしいのです。このような誠実さと透明性があってこそ、米国の未来について十分な情報に基づいた判断ができるはずです。

米保守派の視点からは、ハリス氏の不明確さは単なる経験不足ではなく、米国の国益と安全保障を脅かす可能性のある深刻な問題として捉えられています。彼らは、ハリス氏に対して明確な方針の提示と、米国の伝統的な価値観に基づいた強力な外交・防衛政策の実行を求めています。

日本では、岸田首相が次期総裁選に出馬しない意向を明らかにしたことにより、多くの候補者が名乗りをあげる可能性が高まっています。総裁選の結果によっては、岸田首相よりもはるかにリベラル色が強い、首相が誕生する可能性もあります。

岸田首相

日本でより強いリベラル色の首相が誕生し、同時に米国でカマラ・ハリスが大統領になった場合、世界秩序に大きな変化が生じる可能性があります。日本において岸田首相の不出馬表明により、自民党内での権力構造の変化が予想されます。より強いリベラル色の首相が誕生すれば、防衛政策や経済政策、さらには憲法改正などの重要課題に大きな影響を与えることが考えられます。

このような状況下では、国際秩序が不安定化する恐れがあります。米国のリーダーシップの後退と日本の政策変更により、既存の国際秩序が揺らぎ、中国やロシアなどの勢力拡大を招く可能性があります。さらに、日米両国のリベラル化により、従来の同盟関係が見直されることも懸念されます。特に、軍事面での協力が弱まることで地域の安全保障に影響を与える可能性があります。

また、両国でより分配重視の政策が採られることにより、自由市場経済の原則が弱まる可能性もあります。両国が従来の保守的な外交姿勢から転換し、環境保護や社会的公正を重視する政策を前面に押し出すことで、これまでの国際関係のバランスに変化をもたらす可能性があります。これは、経済成長を優先する国々や、異なる社会制度を持つ国々との間に新たな緊張関係を生み出すかもしれません。

気候変動や人権問題などのグローバルな課題に対して、より積極的なアプローチが取られる可能性がありますが、これは経済成長や国家主権との兼ね合いで新たな摩擦を生むことも考えられます。

このような変化は世界の安定と繁栄を脅かす可能性があると見なされ、伝統的な価値観や国家主権の尊重、強力な防衛力の維持、自由市場経済の推進などが後退することへの懸念が強まるでしょう。

結論として、日本と米国の両国でリベラル色の強い指導者が誕生した場合、世界は大きな転換期を迎える可能性があります。保守派の立場からは、このような変化を慎重に監視し、必要に応じて対抗措置を講じる必要があると考えられます。

その中でも、日本と米国の保守層が協力することの重要性は、今後の国際情勢において非常に意義深いものとなるでしょう。

日米は政治システムも、歴史も、文化も違うので、日米保守の協力はできないのではというむきもありますが、日米の保守派の主張は驚くほど重なり合っているところがあります。

戦後レジームから脱却を主張した安倍総理

例えば、米国の保守主義者たちは、政府や大学に潜む共産主義者の告発、言論の自由を抑圧しようとする法案への反対、愛国心と道徳的秩序、家族の価値を尊重した教育の再建を訴えてきました。これらの主張は、日本の保守派が掲げる「戦後レジームからの脱却」と多くの点で一致しています。

特に注目すべきは、歴史認識の問題です。ロバート・タフト上院議員は東京裁判を批判しており、このような立場の人が米国の保守派にも存在することを示しています。このような視点を共有することで、日米の保守派が協力して歴史観の見直しを進める可能性が開かれます。

また、「小さな政府」の概念についても、米国の保守主義者が掲げる「小さな政府」は、単に官僚組織を縮小することではなく、家族や地域共同体の強化、宗教的価値観の尊重と結びついています。日本の文脈では、これを「神社を中心とした共同体」や「敬神崇祖の家庭」といった理念と結びつけることができるでしょう。

このような共通点を基盤として、日米の保守層が協力することで、両国の伝統的価値観を守り、より強固な同盟関係を築くことができるでしょう。情報交換や意見交換を通じて、互いの立場や課題を理解し合い、国際的な視点から保守的価値観を再考し強化する機会が生まれます。

東京裁判を批判したロバート・タフト上院議員

経済政策や安全保障面でも、共通の価値観に基づいた協力が可能です。自由市場経済を支持しつつ、国内産業の保護と国際的な競争力の向上のバランスを取ることが期待されます。

結論として、日米の保守層の協力は、単なる政治的な連携にとどまらず、両国の文化的、精神的な絆を強化し、共通の価値観を守り育てていく取り組みとなるでしょう。これにより、より強固で安定した国際社会の実現に向けて大きな一歩を踏み出すことができると信じています。

日米は、不測の事態に備えて、政府同士だけではなく、保守層同士の交流も強めていくべきです。

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