2024年7月23日火曜日

バイデン大統領はなぜ選挙から撤退したのか 高齢と認知の違い―【私の論評】日米の雇用慣行の違いが明らかに:バイデン大統領評価から見る高齢者雇用の未来

バイデン大統領はなぜ選挙から撤退したのか 高齢と認知の違い

【まとめ】
  • 7月21日、バイデン大統領が大統領選からの撤退を表明した。
  • アメリカでは年齢差別が法で禁じられ、高齢な政治家も現存するため、年齢が要因ではない
  • バイデン大統領の認知の衰えが原因だろう。

 ジョー・バイデン米大統領が2024年の大統領選挙から撤退を表明しました。この決定は、バイデン氏の認知機能の低下に対する懸念が高まったことが主な要因です。

 特に、6月27日のドナルド・トランプ前大統領との討論会でのバイデン氏のパフォーマンスが、この懸念を増大させました。民主党支持のCNNの記者までもが、バイデン氏の討論ぶりに「パニック」を感じたと述べたことが象徴的でした。

 アメリカと日本のメディアの反応には違いがあります。日本のメディアは主に「高齢不安」に焦点を当てていますが、アメリカのメディアは「認知不安」を強調しています。これは、アメリカでは年齢差別が厳しく禁止されているためです。

 バイデン氏の認知機能に関する懸念は新しいものではなく、2020年の大統領選の時点でも存在していました。事実と異なる発言や記憶の混乱が度々見られたことが指摘されています。

 この撤退表明は、アメリカの政治史上でも珍しい出来事であり、民主党は後任候補の選出を急ぐことになります。バイデン氏自身は、カマラ・ハリス副大統領を後任候補として支持しています。

 以上は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】日米の雇用慣行の違いが明らかに:バイデン大統領評価から見る高齢者雇用の未来

まとめ
  • 米国では年齢差別禁止法により定年制が禁止され、能力で評価される一方、日本では定年制が一般的。
  • 米国メディアはバイデン大統領の認知能力を問題視し、日本メディアは年齢そのものを問題視。
  • 日本人は米国の年齢差別禁止の考え方を意識し、能力で評価することの重要性を理解する必要がある。
  • 両国には互いに学べる点があり、それぞれの強みを活かした雇用システムの構築が重要。
  • 高齢者の雇用促進は経済成長にプラスの影響を与え、持続可能な経済発展につながる。
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日米の雇用慣行には顕著な違いがあり、これらの違いが両国のメディアの反応の違いを生み出しています。日本のメディアが主に「高齢不安」に焦点を当てる一方、米国のメディアが「認知不安」を強調する背景には、それぞれの国の雇用制度や法律が大きく影響しています。

米国では、1967年に制定された「雇用における年齢差別禁止法(ADEA)」により、ほとんどの州で定年制が禁止されています。この法律は、年齢に関係なく個人の能力や業績に基づいて雇用を継続し、年齢を理由とした差別を厳しく禁止しています。

また、米国には日本のような新人の定期採用制度がなく、企業は必要に応じて随時採用を行います。これにより、90歳のチャック・グラスリー上院議員や82歳のバーニー・サンダース上院議員のように、高齢であっても能力があれば現役で活躍できる環境が整っています。

チャック・グラスリー上院議員

一方、日本では多くの企業で60歳や65歳での定年制が一般的です。「高年齢者雇用安定法」により65歳までの雇用確保措置が義務付けられていますが、これは定年制を廃止するものではありません。また、日本の雇用慣行には年功序列の考え方が根強く残っており、新卒一括採用システムの影響で、年齢が高くなると中途採用が難しくなる「年齢の壁」が存在します。

これらの違いが、バイデン大統領の事例への反応にも表れています。米国では彼の具体的な言動や能力が問題視されましたが、日本では81歳という年齢そのものが注目されました。米国の「定年なし」の環境と随時採用システムでは、年齢よりも個人の能力が重視されるため、このような反応の違いが生じるのです。

日本人は、米国では年齢による差別が違法であることを意識する必要があります。これが理解できていないと、バイデン氏の認知能力の低下ではなく、年齢ばかりが問題にされ、正しい評価ができなくなります。

結論として、日米の雇用慣行の違いは、高齢者の社会参加や能力活用に大きな影響を与えています。両国の制度にはそれぞれ長所と短所があり、互いに学び合える点が多くあります。

米国の年齢差別禁止の考え方は、日本においても参考にすべき重要な視点です。実際、米国労働統計局のデータによると、2020年時点で65歳以上の労働力参加率は18.6%であり、これは1985年の10.8%から大幅に上昇しています。この数字は、年齢に関係なく働ける環境が整備されていることを示しています。

一方、日本の長期的な人材育成や雇用の安定性は、米国でも注目されています。日本の失業率は長年にわたり米国よりも低く、2021年の平均失業率は日本が2.8%、米国が5.4%でした(OECD統計)。これは日本の雇用安定策の効果を示唆しています。

しかし、これらの慣行を相互に導入する際には、それぞれの国の文化や法的環境に適合するよう慎重に検討する必要があります。例えば、日本の年功序列制度を米国に導入しようとすれば、年齢差別禁止法に抵触する可能性があります。


最終的に、両国がお互いの良い点を学び合い、より良い雇用環境を作り出していくことが重要です。高齢化が進む両国において、年齢に関係なく個人の能力を活かせる社会を構築することは、今後ますます重要になってくるでしょう。

実際、世界経済フォーラムの2020年の報告書によると、高齢者の雇用促進は経済成長にプラスの影響を与えるとされています。日米両国が、それぞれの強みを活かしつつ、高齢者の能力を最大限に活用できる雇用システムを構築することは、両国の持続可能な経済発展にとって不可欠な課題となっています。

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