2024年8月13日火曜日

米国、イランによるイスラエル攻撃の可能性一段と高まったと認識―【私の論評】イランの攻撃準備が引き起こす第5次中東戦争の脅威:日本経済と日銀政策の岐路

米国、イランによるイスラエル攻撃の可能性一段と高まったと認識

まとめ
  • 米と同盟国は攻撃の可能性に備える必要-米NSCのカービー氏
  • 同盟国は全面戦争回避に努める、米は中東への軍展開を強化
米カービー戦略広報調整官

イランによるイスラエル攻撃の可能性が高まっており、米国を中心とした国際社会が緊張を強めている。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は12日、イランやその支援を受ける組織が早ければ今週中にも報復攻撃を行う可能性があると警告した。この懸念は、先月イランの首都テヘランでハマスの前最高幹部ハニーヤ氏が殺害されたことに端を発している。
米国は事態の深刻さを認識し、オースティン国防長官が中東地域に追加の空母打撃群の派遣を指示するなど、軍事態勢の強化を進めている。同時に、バイデン大統領はイギリス、フランス、ドイツ、イタリアの首脳と電話会談を行い、共同声明を発表してイランに自制を求めた。

一方で、イスラエルのガラント国防相は米国防長官との電話会談で、イランが大規模な攻撃を準備している兆候があると伝えている。イスラエルの情報機関は、イランが数日以内に直接攻撃を実行する可能性があると分析しているとされている。

この緊張状態は、今月15日に予定されているガザ地区での停戦交渉にも影響を与える可能性がある。国際社会は、全面的な戦争への発展を懸念しており、外交努力と軍事的抑止の両面から事態の沈静化を図ろうとしている。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】イランの攻撃準備が引き起こす第5次中東戦争の脅威:日本経済と日銀政策の岐路

まとめ
  •  イランがイスラエルに対する大規模な攻撃を準備している兆候があり、複数の組織による同時多発的な攻撃の可能性がある。
  • 現在、第5次中東戦争の可能性が高まっている。イスラエルによるハマス指導者の殺害が背景にある。
  • 中東戦争が勃発した場合、日本のエネルギー安全保障が脅かされ、原油価格の高騰や経済への打撃、金融市場への影響が懸念される。
  • 円高が進行する可能性が高く、世界的な危機時には「質への逃避」が観察される。これにより、日本経済や金融市場に大きな影響が及ぶ可能性がある。
  • 日銀の金融政策: 日銀は2024年に利上げを実施したが、戦争が勃発した場合、これらの措置を見直し、再び金融緩和策に転じるべきである。
イランによるイスラエル攻撃の可能性

イランによるイスラエル攻撃の可能性が高まっています。イスラエルのガラント国防相は、米国防長官との会談で、イランが大規模な攻撃を準備している兆候があると伝えました。イスラエルの情報機関は、イランが数日以内に直接攻撃を実行する可能性があると分析しており、この見方は米国の警告とも一致しています。

カービー大統領補佐官は、イランだけでなく「イランの支援を受ける組織」も攻撃に関与する可能性があると述べており、これはレバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派など、イランの影響下にある武装組織を指すと考えられます。米当局者は「一連の重大な攻撃」に備える必要があると強調しており、複数の組織による同時多発的な攻撃の可能性も示唆しています。このような状況は、イスラエルとイランの直接対決にとどまらず、中東地域全体の安定に影響を与える可能性があります。

第5次中東戦争の可能性と歴史的背景

現在、第5次中東戦争の可能性が高まっています。過去の中東戦争を振り返ると、第一次中東戦争(1948-1949年)はイスラエル建国直後にアラブ諸国がイスラエルを攻撃したことで始まりました。第二次中東戦争(1956年)はエジプトによるスエズ運河国有化を契機に勃発し、第三次中東戦争(1967年)は六日間戦争とも呼ばれ、イスラエルが周辺アラブ諸国を急襲して勝利しました。第四次中東戦争(1973年)はヨム・キプール戦争として知られ、エジプトとシリアがイスラエルを奇襲攻撃しましたが、最終的にイスラエルが勝利しています。

イスマイル・ハニャ氏

今回の危機の背景には、イスラエルによるハマス政治指導者イスマイル・ハニヤ氏の殺害があります。イランはこれをイスラエルの「重大な失敗」とし、報復を公言しています。これらの状況は、国際社会にとっても深刻な懸念材料であり、さらなる緊張を引き起こす要因となっています。

日本への影響と対応

第五次中東戦争が勃発した場合、日本はさまざまな重大な影響を受ける可能性があります。中東は世界有数の石油産出地域であり、戦争によって原油の供給が不安定になる恐れがあります。

これにより、日本のエネルギー安全保障が脅かされ、原油価格の高騰が懸念されます。原油価格の上昇は、日本の製造業やサービス業に打撃を与え、物価上昇や景気後退のリスクが高まります。過去の中東戦争時に起きた石油ショックのような事態が再現される可能性があります。

このような状況下では、日本のエネルギー政策の見直しが求められ、再生可能エネルギーへの転換や原子力発電の再評価が必要になるかもしれません。地政学的リスクの高まりにより、金融市場にも影響が及ぶでしょう。株式市場が大きく下落する可能性があり、円高ドル安の進行や、安全資産とされる円や金への逃避が予想されます。

この現象は「質への逃避」と呼ばれ、経済不安や市場の混乱時に投資家がリスクの低い、安全性の高い資産を求める行動を指します。具体的には、株式や高リスクの債券から、国債や金、そして日本円のような安全とされる通貨へと資金が流れる傾向があります。

新一万円札

さらに、中東地域との貿易が滞る可能性があり、特にエネルギー関連の輸入に支障が出る恐れがあります。スエズ運河などの重要な海上交通路が影響を受けることも考えられます。外交的な観点からも影響が出るでしょう。日本は中東諸国との関係を重視しており、戦争の勃発によって外交的な立場が難しくなる可能性があります。

また、国際社会での平和維持活動への参加要請が高まることが予想されます。日本政府は、国連安全保障理事会での議論に積極的に参加したり、中東地域の安定化に向けた外交努力を強化うべきです。

日本の中東における権益や在留邦人の安全確保も課題となります。難民問題など、間接的な影響も考慮しなければなりません。これらの影響を最小限に抑えるために、日本政府は状況を注視し、エネルギー安全保障の強化や経済対策の準備、外交努力の継続など、多面的な対応を迫られるでしょう。また、企業や投資家も、リスク管理や投資戦略の見直しが必要になります。

日銀の金融政策対応

日本銀行は2024年3月に0.1%のプラス金利を導入し、7月には0.25%に引き上げました。しかし、第五次中東戦争が勃発した場合、これらの利上げ措置を取り消し、再び大規模な金融緩和策に転じる必要性が出てくる可能性があります。

具体的には、政策金利の再引き下げや国債買い入れの増額、株式ETFの買い入れ再開などが検討されるでしょう。これらの措置は、急激な円高による輸出企業への打撃を緩和し、経済の下支えを図るためです。急激な円高は日本の輸出企業の競争力を低下させ、経済成長を鈍化させる可能性があります。また、デフレ圧力を強め、日銀の物価目標達成を困難にする恐れもあります。

為替市場と「質への逃避」

世界的な危機時には「有事の円買い」や「質への逃避」と呼ばれる現象が観察されます。過去の事例(2008年の世界金融危機、2011年の東日本大震災後など)では、円が急激に買われ、大幅な円高が進行しました。円は長年にわたり、安定した経済と政治システム、そして大規模な対外純資産を持つ日本の通貨として、安全資産の地位を維持してきました。


このような円高の背景と世界的危機時の円買い現象は、為替市場の動向を理解し予測する上で重要な要素となります。第五次中東戦争が勃発した場合、これらの要因が複合的に作用し、日本経済や金融市場に大きな影響を与える可能性があります。

結論

第五次中東戦争のような危機的状況下では、日本の金融政策は複雑な課題に直面します。政府や日銀は、国内経済の安定と国際金融市場の動向のバランスを取りながら、適切な政策対応を行う必要があります。エネルギー安全保障、為替市場の安定、経済成長の維持など、多面的な課題に対して迅速かつ柔軟な対応が求められるでしょう。これにより、日本は国際的な不安定要因に対処し、持続可能な経済成長を確保することが可能となります。

結局は、第五次中東戦争が起こらないことにこしたことはないですし、そうなる可能性もかなりあります。それでもその不安が、円買を加速可能性は十分にあり得ることです。これに日本は、備えるべきでしょう。さらに、南海トラフ地震のような大きな地震がっても、円買いが進む可能性があります。以上のような不安要素が複数あるときに、わざわざ利上げをして、それを維持する必要性など全くありません。

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