2026年6月11日木曜日

ホルムズ危機で目を覚ませ――再エネ主力化では日本の電力は守れない


まとめ

  • ホルムズ危機は、日本のエネルギー政策の優先順位を問い直す機会である。問われているのは脱炭素ではなく、危機時にも電力を止めない国家戦略である。
  • 再エネ主力化は、安定電源にはなり得ない。太陽光や風力は補助電源にとどめ、原発再稼働、火力維持、SMR、備蓄、シーレーン防衛を組み合わせるべきである。
  • 電力は国力である。エネルギーを利権や気候政策の道具にせず、長期・超長期国債で国家インフラとして整備することこそ、日本を守る道である。 

ホルムズ危機は、単なる中東情勢の問題ではない。我が国のエネルギー政策の弱点を、改めて白日の下にさらした出来事である。

日本は1973年の石油危機を経験し、石油一辺倒から、石炭、LNG、原子力へとエネルギー源を分散してきた。これは正しい方向だった。ところが近年は、いつの間にか政策の中心が「安価で安定した電力供給」から「脱炭素」へ移ってしまった。

これは根本的に誤りである。国家運営において最優先すべきは、気候問題ではない。国民生活、産業、医療、物流、通信、AI、そして国防を支える電力の安定供給である。

電力は環境政策の従属物ではない。国家を支える基盤そのものである。電力が不安定になれば、脱炭素以前に、我が国の国力そのものが痩せ細る。

1️⃣ホルムズ危機への答えは「再エネ主力化」ではない

この画像はAI生成画像です。以下同じ

ホルムズ危機で問われているのは、単に再エネを増やすかどうかではない。問題の本質は、危機時にも国民生活と産業を支える電力を、いかに安定して確保するかである。

もちろん、太陽光や風力には、燃料を海外から買わなくて済むという利点がある。しかし、それは「危機時の安定電源になる」という意味ではない。太陽光や風力は天候に左右され、発電量が読みにくく、蓄電池や送電網への追加投資も必要になる。

さらに、太陽光パネル、風力設備、蓄電池には、重要鉱物、鋼材、アルミ、セメントなど大量の資材が必要である。再エネは、燃料依存を減らす一方で、資材依存、鉱物依存、設備輸入依存を増やす側面がある。しかも、その多くは中国を含む海外供給網に左右される。

ホルムズ危機で原油や資材価格が上がれば、再エネ設備そのもののコストも上がる。インフレが進めば金利も上がり、投資額の大きい再エネ事業はさらに苦しくなる。

エネルギー安全保障を考えるなら、「化石燃料か再エネか」という単純な二分法では足りない。必要なのは、危機時にも電力を止めない安定電源の組み合わせである。

ホルムズ危機への答えは、再エネ主力化ではない。原発再稼働、当面の火力維持、燃料備蓄、シーレーン防衛、そして将来のSMRを含む、総合的なエネルギー安全保障である。

2️⃣気候問題と利権政治が電力政策を歪めた

ここ数年、日本のエネルギー政策は気候問題に引っ張られすぎた。だが、国家政策の中心に置くべきものは、気候問題ではない。政治が第一に守るべきものは、国民の生活であり、産業の基盤であり、国家の安全である。

電気料金が高騰し、企業の生産コストが上がり、家庭の負担が増えるなら、それは国力の低下そのものである。気候問題への配慮を名目に、国民生活を圧迫し、産業競争力を削ぎ、電力供給を不安定化させる政策は、本末転倒である。

再エネ導入には、すでに莫大な国民負担が投じられてきた。それにもかかわらず、太陽光発電だけで日本の電力を安定的に支えることはできていない。晴れた昼間には余り、夕方や夜には不足する。雪国や梅雨、台風、猛暑の需要急増にも弱い。自然条件に左右される電源を、国家の主力電源にするには限界がある。

再エネは補助電源として活用すればよい。しかし、主力電源として過大評価してはならない。まして、再エネ賦課金によって国民負担を増やし続けながら、安定電源である火力や原子力を敵視するような政策は、現実を見ない観念論である。

山を切り開いて設置されたメガソーラ AI生成画像

さらに重要なのは、エネルギー政策を利権の道具にしてはならないという点である。

再エネをめぐっては、補助金、固定価格買取制度、再エネ賦課金、太陽光パネル、送電網整備、メガソーラー開発など、さまざまな利害が絡んできた。脱炭素という美名の下で、国民負担が膨らみ、一部の事業者や団体だけが利益を得る構造が生まれるなら、それは環境政策ではない。単なる利権政治である。

もちろん、エネルギー分野に民間企業が参加すること自体は否定されるべきではない。問題は、安定供給や国益よりも、補助金獲得や制度依存のビジネスが優先されることである。電力は、国民生活、産業、医療、通信、AI、国防を支える基盤である。それを特定の政策利権のために歪めてはならない。

石炭火力についても、単純に悪魔化すべきではない。石炭火力というだけで、時代遅れだ、環境に悪い、と決めつける風潮がある。しかし、日本の石炭火力は、輸入炭と港湾インフラを前提に組み立てられてきた安定電源の一つであり、危機時の電力供給を支える役割を持つ。

もちろん、石炭火力だけでホルムズ危機を解決できるわけではない。原油、ナフサ、化学製品、物流など、問題は幅広い。だからこそ大事なのは、石炭かLNGか原子力か再エネかという単純な優劣ではない。それぞれの長所と短所を見極め、危機時にも電力を止めない組み合わせを持つことである。

3️⃣原発再稼働・火力維持・SMRでエネルギー安全保障を再構築せよ

我が国に必要なのは、再エネ主力化という幻想ではない。必要なのは、原発再稼働、当面の火力維持、燃料備蓄、シーレーン防衛、そして将来のSMR、すなわち小型モジュール炉を組み合わせた、総合的なエネルギー安全保障である。

大型原発は、当面の安定電源として重要である。すでにある安全確認済みの原発を動かさず、輸入燃料と再エネに過度に依存するのは、国家としてあまりに無責任である。

一方で、将来を見れば、大型原発だけに頼るのではなく、SMRを量産し、分散配置する発想が必要になる。AI時代には、データセンター、半導体工場、防衛産業、医療インフラが大量の電力を必要とする。電力需要は、むしろこれから増える。そこで必要なのは、天候任せの電源ではなく、安定して大量の電力を供給できる基盤である。

データセンター想像図 AI生成画像

SMRは、分散の経済に合う。大型発電所に集中するだけでなく、地域や産業拠点ごとに安定電源を配置できれば、災害や有事への耐性も高まる。これは単なるエネルギー政策ではない。国家防衛インフラの再構築である。

こうした国家危機の最中に、国会では高市首相の秘書動画をめぐる週刊誌ネタに時間が費やされている。報道の真偽をここで断定する必要はない。問題は、ホルムズ危機、物価高、エネルギー供給、AI時代の電力需要、国防という重大課題が目前にあるにもかかわらず、野党が政権攻撃の材料としてこの種の話題に飛びついていることである。

これは単に野党のレベルが低いという話ではない。国家的危機を前にして、何を優先すべきかを見失っている危機感の欠如そのものなのである。

こうした議論をすると、必ず「財源はどうするのか」という声が上がる。しかし、電力安定供給は、平時の予算のやりくりで済ませる話ではない。国の存立に関わる基盤である。

エネルギー安全保障のためには、長期国債、なかでも20年、30年、40年といった超長期国債の発行を当然の前提として、必要な投資を行うべきである。電力インフラは一年限りの消耗品ではない。原発再稼働の環境整備、SMR開発、送電網強化、備蓄拡充、港湾・輸送インフラ、防衛力との連携は、数十年にわたって国民生活と産業力を支える国家資産である。ならば、その財源も短期の税収ではなく、長期・超長期の国債で賄うのが筋である。

ここで整理すべきは、建設国債と超長期国債は別の分類だという点である。建設国債は、公共事業費、出資金、貸付金などの財源として発行される、使途による分類である。一方、超長期国債は、20年、30年、40年といった償還年限による分類である。したがって、エネルギー安全保障投資については、建設国債や政府出資・貸付の枠組みを活用しつつ、超長期国債で調達するという整理ができる。

現行制度で十分に対応できない分野があるなら、「エネルギー安全保障国債」あるいは「国力強化国債」とでも呼ぶべき新たな枠組みを設ければよい。SMR、燃料備蓄、送電網、重要鉱物備蓄、シーレーン防衛関連インフラなどに使途を限定した長期・超長期国債を発行すればよいのである。

電力安定供給は、将来世代にも便益をもたらす国家基盤である。だからこそ、長期・超長期国債で整備することには合理性がある。増税で賄えば、現世代の負担を増やすだけであり、消費や投資を冷やして国力を損なう。

緊縮財政の発想で、電力インフラを痩せ細らせてはならない。電力がなければ、工場も動かず、AIも動かず、病院も物流も防衛システムも機能しない。エネルギー投資を「コスト」としか見ない政治は、国力を理解していない。

結論――電力安定供給こそ国力である

ホルムズ危機が示したのは、我が国がいまだに海外情勢に大きく左右されるエネルギー構造を抱えているという現実である。そして同時に、気候政策を最上位に置いてきた日本のエネルギー政策が、国民生活と産業基盤を十分に守れていないという現実でもある。

気候問題を国家政策の中心に置く時代は、もう終わらせるべきである。少なくとも我が国にとって、優先すべきは脱炭素の理念ではなく、安価で安定した電力供給である。

そして、エネルギーを利権にしてはならない。再エネであれ、火力であれ、原子力であれ、政策判断の基準は特定業界の利益ではなく、国民生活、産業、国家安全保障に資するかどうかでなければならない。

再エネを全否定する必要はない。しかし、再エネを主力電源にすれば日本は救われるという考え方は、すでに限界を露呈している。

電力は国力である。安定した電力があってこそ、産業は成長し、AI時代にも勝ち残り、防衛力も維持できる。気候政策を理由に電力供給を不安定化させるなど、本末転倒である。

我が国が進むべき道は明らかである。再エネ主力化の幻想から脱し、原発再稼働、火力維持、SMR、備蓄、シーレーン防衛を組み合わせた、現実的なエネルギー安全保障へ舵を切ることだ。

その財源もまた、増税ではなく、長期・超長期国債を軸に考えるべきである。数十年にわたって国民生活と産業を支える電力インフラは、数十年単位で整備し、数十年単位で負担を平準化するのが当然である。

気候問題よりも、まず電力安定供給を。これこそが、ホルムズ危機から日本が学ぶべき最大の教訓である。

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