まとめ
- 旧宮家養子案は、新聞のアンケートで賛否を決めるような軽い問題ではない。皇統は、日本が日本であり続けるための根であり、一時の世論で左右してよいものではない。
- 女性天皇と女系天皇はまったく違う。歴史上の女性天皇はすべて男系であり、女系天皇は一人も存在しない。この区別を曖昧にしたまま皇統を論じることこそ危うい。
- 旧宮家は占領下で皇籍を離脱したのであり、当時は皇位継承に不安がないという前提があった。今その前提が崩れた以上、旧宮家養子案は皇統を守るための現実的な方策である。
毎日新聞の世論調査で、高市内閣の支持率は51%で横ばいとなった。一方、皇族数確保策として旧宮家出身の男系男子を養子として皇族に迎える案については、反対が賛成を上回ったという。
参考:毎日新聞「高市内閣支持率51%で横ばい 旧宮家養子案は反対が賛成上回る」
しかし、ここで問うべきことは、賛成が何%で反対が何%かという話ではない。
そもそも皇統の問題は、新聞社のアンケートで決めるような問題ではない。政権支持率、経済政策、外交方針であれば、世論の動向を調べる意味はある。しかし、皇統はそのような通常の政策課題とは次元が違う。
皇統とは、日本という国家の根である。
国民感情を無視してよいという意味ではない。だが、その時々の報道、その時々の雰囲気、その時々の理解不足によって、2000年近く受け継がれてきた皇統の原理を左右してよいはずがない。
むしろ、今回の世論調査が示しているのは、旧宮家養子案そのものの是非というよりも、皇統問題がいかに十分に理解されていないかという現実である。
1️⃣女性天皇と女系天皇はまったく違う
皇統問題を論じる前に、まず整理しなければならないことがある。
それは、「女性天皇」と「女系天皇」はまったく別物だということである。
女性天皇とは、女性が天皇に即位することである。歴史上、推古天皇、皇極天皇、斉明天皇、持統天皇、元明天皇、元正天皇、孝謙・称徳天皇、明正天皇、後桜町天皇など、女性天皇は存在した。
しかし、重要なのは、これらの女性天皇もすべて男系であったということである。
父方をたどれば、いずれも皇統に属していた。つまり、女性天皇が存在したことは、女系天皇を認める根拠にはならない。Nippon.comも、歴代の女性天皇について「過去の10代8人はいずれも父方に天皇の血筋を引く男系」と整理している。
参考:Nippon.com「歴代の女性天皇 : 過去の10代8人はいずれも 父方に天皇の血筋を引く“男系”」
女系天皇とは、母方を通じて皇統につながる天皇のことである。わかりやすく言えば、女性皇族が民間男性と結婚し、その子に皇位継承資格を与えるということである。さらに端的に言えば、小室圭氏のような民間男性の子にも、将来、皇位への道を開くことになりかねない。
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これは単なる「女性が天皇になるかどうか」の問題ではない。
皇統が、父方の血筋によって受け継がれてきたという原理を変えるかどうかの問題である。日本の皇統は、神武天皇以来、例外なく男系で守られてきた。女性天皇は存在したが、女系天皇は1人も存在しない。
現行制度でも、宮内庁は皇位継承について「皇位は、皇統に属する男系の男子たる皇族が、これを継承する」と説明している。
参考:宮内庁「皇位継承」
この区別を曖昧にしたまま、「女性天皇に賛成か」「旧宮家養子案に賛成か」と世論調査で尋ねれば、国民の回答が混乱するのは当然である。
旧宮家養子案とは、民間から誰でも皇族に入れる話ではない。皇統に属する男系男子を皇族に復帰させ、男系継承の備えを回復する案である。
一方、女系天皇容認論は、皇統の原理そのものを変える。ここを同列に並べて、「どちらが現代的か」「どちらが国民に人気か」と論じること自体が、すでに問題の本質を見誤っている。
皇統は人気投票ではない。まして、新聞社の設問で方向づけてよい問題ではない。
我々が考えるべきなのは、「いま国民がどう感じているか」だけではない。「先人が何を守ってきたのか」「我々は何を次世代へ引き渡す責任があるのか」である。
2️⃣旧宮家は自然に消えたのではない
旧宮家について考えるとき、まず確認すべきことがある。
旧宮家は、歴史の自然な流れで皇族を離れたのではない。1947年10月13日に開かれた戦後初の皇室会議で、11宮家51人の皇籍離脱が決定され、翌14日に離脱したのである。
この点について、明治神宮歴史データベースは、1947年10月13日に開かれた戦後初の皇室会議で、11宮家51名の皇籍離脱が決定され、14日に離脱したと説明している。さらに、その背景として、GHQの指令による皇室財産の凍結、各宮家における財産上の特権廃止などによる財政上の圧迫を挙げている。
参考:明治神宮歴史データベース「皇籍離脱」
つまり、旧宮家の皇籍離脱は、平時の日本が自由に、落ち着いた環境で決めた制度設計ではない。占領下という特殊な状況で、日本の皇室は大きく縮小されたのである。
さらに重要なのは、当時の政府側の説明である。
Nippon.comの記事によれば、1947年10月の皇室会議で、片山哲首相は、旧宮家の方々が昭和天皇とは男系で40数世を隔てていること、戦後の国内外の情勢、新憲法による皇室財産の処理、皇族費などを理由として、11宮家の皇籍離脱を説明している。
そのうえで片山首相は、皇位継承資格者として、当時は昭和天皇の2親王、皇弟3親王、皇甥1親王がいるため、「皇位継承の点で不安が存しない」と述べたとされる。
参考:Nippon.com「皇位継承で注目される『旧宮家』とは 後編」
ここが決定的に重要である。
旧宮家の皇籍離脱は、「将来にわたって旧宮家は皇統維持に無関係でよい」という判断ではなかった。当時は、皇位継承に不安はないという前提があったからこそ、離脱が認められたのである。
しかし、今は違う。
皇族数は減少し、皇位継承の安定性は明らかに危機を迎えている。当時の判断を支えた前提は、すでに崩れている。
ならば、占領下で皇籍を離脱した旧宮家の男系男子を、皇統維持のために再び制度の中に位置づけることは、決して突飛な話ではない。
むしろ、旧宮家養子案は、戦後占領政策と当時の判断によって失われた皇統の備えを、現在の危機に応じて回復する試みと見るべきである。
旧宮家を「もう民間人だから関係ない」と切り捨てるのは簡単である。しかし、それは1947年の判断がどのような前提のもとで行われたのかを無視する態度である。
当時は、皇位継承に不安がないとされた。
しかし今は、皇位継承に不安がある。
ならば、制度を見直すのは当然である。
3️⃣皇統の危機は、血筋をたどって乗り越えてきた
日本の皇統は、常に平坦な道を歩んできたわけではない。
過去にも皇統の危機は何度もあった。直系の男子が途絶えかねない状況、皇位継承者が限られた状況、政治的な混乱の中で次の天皇を決めなければならない状況があった。
そのたびに、先人は何をしたのか。
世論調査をしたのではない。人気投票をしたのでもない。血筋をたどったのである。
継体天皇の即位、後花園天皇の即位、光格天皇の即位など、皇統の危機に際しては、傍系に皇位継承の道を求めることで皇統が守られてきた。とりわけ光格天皇は閑院宮家の出身であり、現在の皇室につながる重要な存在である。
これは、皇室の歴史が単なる直系継承だけで成り立ってきたわけではないことを示している。
皇統の本質は、血筋を守ることである。先人は、皇統の危機に際して、現代人のように「分かりやすさ」や「その時々の世論」だけで判断したのではない。時間を超えて受け継ぐべきものを守るために、制度と知恵を尽くしたのである。
旧宮家養子案も、この歴史の延長線上で考えるべきである。
それは、時代錯誤な復古ではない。皇統維持のために、かつて存在した備えを現代に合わせて回復する方策である。
ここで、もう1点確認すべきことがある。
日本は、安全保障面では普通の国になるべきである。自国を自国で守り、同盟国とともに抑止力を高め、必要な防衛力を持つ。これは独立国家として当然の姿である。
しかし、皇統に関しては逆である。
日本は、他の「普通の国」のように、王室や君主制を廃し、歴史の根を断ち切る国になってはならない。
他国にも王室や王統は存在する。英国には英国王室があり、欧州にも王家はある。しかし、それは日本の皇統ではない。天皇を中心として、神話、祭祀、歴史、国家形成、国民意識がまとまって続いてきた皇統は、日本にしか存在しない。
安全保障では、戦後の特殊国家から普通の独立国家へ戻るべきである。だが皇統においては、他国と同じ普通の国になってはならない。
ここを取り違えてはならない。
日本が皇統を失うということは、単に制度を失うことではない。日本が本来の日本である根を失うことである。皇統を失った日本は、日本とは言えない。それは、単なる日本という名称の一地域になるということである。
結論 私たちに皇統を途絶えさせる権利はない
皇統は、新聞のアンケートで決めるものではない。
女性天皇と女系天皇を混同し、その時々の世論で皇統の原理を変えることは、日本の根を断ち切ることに等しい。
先達は、皇統の危機に際して、浅知恵ではなく深い知恵で血筋を守ってきた。私たちは、その上に立っているにすぎない。
旧宮家養子案は、好みで賛否を決める問題ではない。日本が日本であり続けるための問題である。
私たちには、皇統を途絶えさせる権利などない。
あるのはただ、先人から受け継いだ日本を、次の世代へ引き渡す責任だけである。
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