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2020年6月11日木曜日

消費の落ち込みは当面は続く…安倍政権は消費増税一時停止を! いまこそドイツを見習うとき— 【私の論評】日本では緊縮命のぶったるみドイツのように期間限定の減税ではなく、物価目標を達成するまで減税せよ!(◎_◎;)

消費の落ち込みは当面は続く…安倍政権は消費増税一時停止を! いまこそドイツを見習うときだ

安倍首相と麻生財務大臣

 総務省は5日、4月の家計調査を発表した。それによると、2人以上世帯当たりの消費支出は26万7922円、物価変動を除いた実質では前年同月比11・1%減だった。これは統計が比較可能な2001年以降最大の落ち込みだ。食料などが堅調な一方、外食や飲酒代が大きく落ち込んでいる。こうした消費の落ち込みはいつごろ回復基調となるのか、落ち込みをカバーするための施策はないのか。

 大きく落ち込んだのは、パック旅行費97・1%減、交通73・0%減、外食67・0%減、洋服58・9%減、理美容サービス41・9%減、保健医療サービス14・8%減など。それぞれ3月も減少していたが、4月になってその減少幅が拡大した。これらの多くは外出する人数の減少に伴うものである。

 逆に伸びたものもある。光熱・水道が7・4%増、麺類34・2%増、パソコン72・3%増、保健用消耗品123・9%増など。逆に、これらは外出が減り、家の中にいることで増えた需要だ。

 例えば、外食するかわりに、家で飲食をするので、麺類、生鮮肉、「宅飲み」用アルコール飲料が増えた。もっとも、人はどこかで3食するが、外食の代わりに内食だと、経済活動全体についてはマイナスである。

 新型コロナウイルスは生活様式も変化させてしまった。「3密」回避やソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保により、消費の基本構造も一部は変わった。これまで外食は会話をする意味も大きかったが、これからは食事中の会話そのものを控えるというのであれば、機会は減少してしまうだろう。

 テレワークも意外に使えることが分かったので、これまでのような出張が絶対に必要かというと、そうでもなくなり、出張による人の移動も確実に少なくなるだろう。

 政府の緊急事態宣言を受け全国で外出自粛が広がったが、宣言が解除され外出自粛がなくなった後も、元には戻らない部分が残るだろう。あと半年か1年くらいは、新しい行動様式への調整過程であるので、消費は今一歩の状態が続くのではないか。これが、構造変化に伴う消費減退だ。

 さらに、これから雇用環境が悪化するとともに、可処分所得が落ち込むので、それに伴う消費減退もあるはずだ。こうした雇用・所得環境の変化に伴う消費減退も半年か1年くらいは出てくるだろう。

 消費は国内総生産(GDP)の過半を占めるので、このような消費減退は、GDP成長率にも悪影響である。もともと昨年10月からの消費増税により消費が弱含んでいたのが根本原因であるので、少なくとも昨年の増税分は一時的に止めるべきだ。さらには安倍晋三政権によって引き上げられた14年4月の消費増税分も含めて一時的に停止したらいい。

 財務省周辺は「緊縮財政のドイツを見習うべきだ」と言ってきたが、そのドイツでさえ、今年7月から12月までの期間限定で、付加価値税の税率を19%から16%へ引き下げる消費減税を行う。今こそ、これを見習うべきだ。定額給付金と異なり、すぐに実施でき効果が出る政策だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本では緊縮命のぶったるみドイツのように期間限定の減税ではなく、物価目標を達成するまで減税せよ!(◎_◎;)

高橋洋一氏は、ドイツを見習えと言っていますが、ドイツはもともとは緊縮財政の権化のような国で本来は見習えるような国ではありませんでした。これについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
メルケル独首相、与党党首再選を断念 首相は継続…後継選び議論加速―【私の論評】「ぶったるみドイツ」の原因をつくったメルケルの敗退は当然(゚д゚)!

この記事は、2018年10月のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。この記事ではドイツの緊縮財政についてまとめて記した部分があるので、まずはその部分を引用します。
ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の主力戦闘機「ユーロ・ファイター」のほぼ全機に“深刻な問題”が発生し、戦闘任務に投入できない事態となっています。現地メディアによれば全128機のうち戦闘行動が可能なのはわずか4機とも。原因は絶望的な予算不足にあり、独メルケル政権は防衛費の増額を約束したが、その有効性は疑問視されるばかりです。 
ドイツは“緊縮予算”を続けており、その煽りを受けてドイツの防衛費不足は切迫しています。空軍だけではなくドイツ陸軍においても244輌あるレオパルト2戦車のうち、戦闘行動可能なのは95輌などといった実態も報告されています。 
こうした状況に追い込まれた原因の一つとして、ドイツを含む欧州連合(EU)には、財政赤字が対GDP比で3%、債務残高が対GDPで60%を超えないこととする「マーストリヒト基準」があり、財政健全化を重視しすぎるとの声が経済専門家の間にはあります。
ドイツの主力戦車「レオパルド2」
昨年(ブログ管理人注:2017年)10月15日、ドイツ潜水艦U-35がノルウェー沖で潜航しようとしたところ、x字形の潜航舵が岩礁とぶつかり、損傷が甚大で単独帰港できなくなったのです。 
ドイツ国防軍広報官ヨハネス・ドゥムレセ大佐 Capt. Johannes Dumrese はドイツ国内誌でU-35事故で異例の結果が生まれたと語っています。
ドイツ海軍の通常動力型潜水艦212型。ドイツが設計 建造しドイツの優れた造艦技術と
最先端科学の集大成であり、世界で初めて燃料電池を採用したAIP搭載潜水艦である。
紙の上ではドイツ海軍に高性能大気非依存型推進式212A型潜水艦6隻が在籍し、各艦は二週間以上超静粛潜航を継続できることになっています。ところがドイツ海軍には、この事故で作戦投入可能な潜水艦が一隻もなくなってしまったというのです。 
Uボートの大量投入による潜水艦作戦を初めて実用化したのがドイツ海軍で、連合国を二回の大戦で苦しめました。今日のUボート部隊はバルト海の防衛任務が主で規模的にもに小さいです。 
212A型は水素燃料電池で二週間潜航でき、ディーゼル艦の数日間から飛躍的に伸びました。理論上はドイツ潜水艦はステルス短距離制海任務や情報収集に最適な装備で、コストは米原子力潜水艦の四分の一程度です。 
ただし、同型初号艦U-31は2014年から稼働不能のままで修理は2017年12月に完了予定ですが再配備に公試数か月が必要だとされています。
日本でも財務省の緊縮財政により、一方ではF35などの装備品を新規購入されているなどのこともありながら、その他の自衛隊の予算が減らされており、トイレットペーパーの節約が励行されたり、陸自では実弾を用いた訓練が減らされ、米国の軍楽隊よりも、実弾訓練がなされていないということを聞いたことがありますが、それにしてもドイツのように酷い状態ではありせん。

ドイツの軍事的脅威といえば、まずはロシアでしょうが、ロシアのGDPは東京都並みであり、しかも現状では、最大の財源である原油価格はコロナ以前から低迷して世界的な需要減になっています。だから、軍事的脅威はあまり感じていないのかもしれません。日本は、中国や北朝鮮に隣接しているという特殊事情がありますから、ドイツのようなわけにはいかないのかもしれません。それにしても、ドイツでは、なぜこのように緊縮財政がまかり通るのか、不思議というほかありません。

08年の世界金融危機はアングロ・サクソン型の資本主義が作り出したものだとドイツ人は考えているようです。しかし、自分たちは別の道を歩んでいると考えているようです。確かにドイツは英米とは同じではありません。例えば、ドイツは労働規制が厳しく、労働時間は世界最短です。

しかし、こうした考え方は欺瞞です。実際、ドイツ銀行は強欲さにおいてウォール街に決して引けを取りません。市場の自由と規律を重んじるドイツ政府は、計画経済とケインズ主義に反対し、他国に緊縮財政を押しつけています。ドイツ連邦銀行を模範として作られた欧州中央銀行は物価安定に固執しています。

ギリシャなど危機に陥った国は外部からの助けを必要とし、ドイツに大きな期待が寄せられていました。ところが、ドイツは覇権国として弱小国を助ける力と意思を持っていないようです。逆に準覇権国として、弱小国に緊縮と構造改革を押しつけたのです。これが危機を悪化させ、ヨーロッパを分裂させました。

しかし、ドイツ人から見れば、こうした行動は防衛的なものなのでしょう。その意味で、現在の「ドイツ帝国」は覇権を強化し、他国に侵略し続けたナチス時代の第三帝国とは異なるようです。

破壊はたやすく、建設は難しいです。現在のドイツは、中東、世界環境、貿易などの問題で、秩序を建設する力も意思もないようですが、破壊するための力と意思は有り余っているようです。

このようなドイツの財政政策が日本の参考になるはずもありません。見習うべきは、米英の財政・金融政策だと思います。金融政策にいては、ドイツはEUに属しており、EUの中央銀行がこれを定めるので、これも日本には参考になりません。

しかし、そのドイツの財政政策を高橋洋一氏が見習うべきと言うには、それなりの理由があります。それは緊縮大好きのドイツでさえ、今年7月から12月までの期間限定で、付加価値税の税率を19%から16%へ引き下げる消費減税を行うからです。

何しろ定額給付金と異なり、すぐに実施でき効果が出る政策です。実施しない手はありません。

ドイツではさらに、大きな動きがあります。

ドイツのメルケル首相(右)とショルツ財務相( 左)

ドイツのショルツ財務相は大規模な景気刺激策の資金調達のために追加で最大500億ユーロ(568億ドル)の借り入れを検討しているそうです。協議に詳しい政府高官がロイターに話したそうです。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による景気への打撃に対処するため、これまで緊縮財政派だったドイツが域内で最も支出が大きい国の一つに政策を転換する動きとなりそうです。

高官によると、メルケル政権は1300億ユーロの景気刺激策を賄うため第2次補正予算案を17日に承認させる計画。別の高官も、政権が17日に補正予算を可決させたい意向だと話したそうです。ドイツ財務省は借り入れ規模が当初想定の250億ー300億ユーロを上回るとみているといます。

高官2人によると、財務省は下半期に起き得る予想外の状況に対し、財政的な余裕を広げたい意向だそうです。

ドイツでは3月、国債発行による1560億ユーロの補正予算が成立。追加で最大500億ユーロを発行した場合、今年の新規発行額はドイツの国内総生産(GDP)の約6%に当たる2000億ユーロを超える可能性があります。

財務省の報道官は追加の国債発行について明確な数字を明らかにしませんでした。 政府は今年の債務残高がGDP比で75%を超えるとみています。大規模な景気刺激策を導入した10年以上前の世界金融危機以来の高水準です。2019年は60%をやや下回る水準でした。

緊縮大好きドイツが、このように域内で最も支出が大きい国の一つに政策を転換しそうな状況になってきました。

一方日本はどうなのでしょうか。日本では、昨年の消費税を10%に引き上げたことによって、日本経済はかなり低迷していました。そこにさらに今回のコロナ禍が追い打ちをかけました。

安倍首相は増税前に「リーマン級の経済悪化がない限り増税」と言っていました。今回のコロナ禍は、間違いなくリーマン級の経済悪化を超えるものになります。さらに、あの緊縮大好きのドイツでさえ、減税と、支出を大幅に増やすと言っているのですから、これ以上の減税の口実はないかもしれません。

これで、財務省を説得して、減税に踏み切るか、財務省を説得できないなら、解散総選挙の公約にしてでも、減税を実施すべきです。

その動きは、もうあります。例えば、安倍晋三首相は10日午後、麻生太郎副総理兼財務相と官邸で約1時間会談しました。麻生氏は安倍首相の「相談相手」として知られますが、平日の日中に、これほど長時間話し合うのは異例です。

新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を受けて国内外に難題が山積するなか、今後の政権運営について協議したとみられ、さまざまな臆測を呼んでいます。

国会会期末(17日)を前に、第2次補正予算を成立させた後、第3次補正予算を編成すべきかなどを話し合った可能性があります。第2次補正の財源では、かなりの国債を充てているものの、それでも国債の金利が上がることもなく、まだまだ国債を刷り増し、日銀による買取で、第3次補正にも十分に資金が割り当てられる余地があることも確認したかもしれません。

経済政策では、「消費税減税」を求める声があります。「消費税減税」と「衆院解散」は検討課題になった可能性があります。

私も減税は賛成です。ただし、緊縮大好きのドイツを見習うべきでない点もあります。それは、ドイツが今年7月から12月までの期間限定で、減税を行う点です。さすがドイツです。どこまでも、緊縮が大好きなようです。

本来は、期間限定ではなく、物価目標や雇用目標を定めて、その目標が達成されるまで、財政政策や、金融政策を継続すべきなのです。

日本では、ドイツ方式ではなく、物価目標2%を実現してもすぐに消費税を元に戻すのではなく、明らかにインフレになった時に元に戻すべきです。物価目標が達成できないなら、最初は8%への減税から、それで物価目標が達成できないのなら5%に、それでもまだ駄目なら0%にして、物価目標が達成できるまで、続けるべきです。

それで令和時代は、平成時代の負の遺産であるデフレときっぱりと決別できます。

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