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2020年8月7日金曜日

EUのファーウェイ排除団結のカギを握るドイツの選択―【私の論評】中共は世界中を監視し、世界秩序をつくりかえようとしている。ドイツはそれに目覚めよ(゚д゚)!

EUのファーウェイ排除団結のカギを握るドイツの選択

岡崎研究所

 7月17日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、米ブルッキングス研究所のシニア・フェローであるシュテルツェンミュラーが、欧州、とりわけドイツはファーウェイをめぐり大事な選択を迫られているとして、EUが対中国政策で団結することの重要性を説いている。


 シュテルツェンミュラーの論説は、ファーウェイについてEUは団結して中国に対すべきであると言っているが、それは、現在EUが団結していないことを意味する。

 実際、EUの足並みはそろっていない。論説で見る限り、ポーランドはファーウェイ排除を決めており、イタリアが発表したガイドラインは事実上ファーウェイを排除することになりそうである。フランスは、ファーウェイの機器を使用する通信企業に新たな事業許可を与えない方針で、実質2028年までに排除することを決めた。

 EUの団結のカギを握るのはドイツである。メルケル首相自身は、ファーウェイを注意深く扱うべきであるとの立場である。しかし、メルケル首相の属するキリスト教民主同盟(CDU)の多くの議員をはじめ、連立のパートナーの社民党、緑の党などは、メルケルの立場に批判的である。一方、閣内のアルトマイヤー経済大臣、ドイツテレコム、自動車産業などがファーウェイの受け入れに賛成である。これは、中国がドイツの最大の貿易相手国であることを考えれば、いわば当然とも言える。

 しかし、ファーウェイを取り巻く状況が変わってきている。それは、中国が香港の例にみられるように、最近、権威主義的な行動を強めており、論説によれば欧州に対してポピュリスト支持の情報操作や高位外交官による脅迫など、欧州の弱みを利用する強圧的な行動が目立つという。他方で、COVID-19が情報ネットワークの重要性をクローズアップした。つまり、5Gといった重要なデジタルエコシステムで中国に依存することの安全保障上のリスクが再認識されたのである。

 論説は、欧州は団結すれば真の梃子を持てると言っている。どのような団結が可能なのか。これまでのEU内の議論、そしてカギを握るドイツ内の状況を考えると、EU27か国がファーウェイの全面排除で団結することは考えられない。例えば、EU諸国のテレコム組織が新たにファーウェイを採用することは認めないといったラインで合意がなされるのではないか。これは米国のファーウェイ全面排除に比べれば弱いが、中国にとっては大きな痛手だろう。

 EUが強い姿勢でファーウェイに対処するようになるとすれば、その引き金を引いたのは中国の権威主義的行動である。中国は自らの政治、外交姿勢が経済にも影響を与えることを知らされることになる。しかし今の習近平体制は、経済的にマイナスだからと言って権威主義的、強権的姿勢を変えそうにない。その間、米中の対決の様相は一層深まっていくだろう。欧州諸国も、そして日本も、その影響を免れることはできない。情報社会の重要性を認識して、的確な政策を講じていくことが求められる。

【私の論評】中共は世界中を監視し、世界秩序をつくりかえようとしている。ドイツはそれに目覚めよ(゚д゚)!

ファーウェイは何年も前から移動通信インフラ市場を支配。安価な製品を投入して、競合する北欧のノキアやエリクソンの売り上げを切り崩してました。しかしファーウェイ製品が中国政府による情報窃取に使われ得るとの米政府の懸念が力を増しています。

英国政府とフランス政府はいずれも、自国の通信網から同社製品を排除しようとしています。他のあちこちでも同様の対応が広がれば、ファーウェイの通信機器事業には深刻な打撃になるでしょう。同事業は昨年、430億ドル(約4兆5000億円)近い売り上げを稼ぎ、会社全体の売上高の約3分の1を占めました。

しかし、アンテナや鉄塔を他社製に建て替えるというのは、問題のごく一面にすぎません。英国のボーダフォンやBTのような通信業者がたとえ既存のファーウェイ機器を全撤去した場合、控えめに見積もって20億ポンド(約2700億円)の費用がかかるとしています。

世界の通信業者は引き続き、次世代通信網を本格展開する上ではファーウェイの技術に依存することになります。ドイツの知財調査会社によると、ファーウェイは最も5G関連の特許を所有しており、そのうち15%が欠かせない特許だという。

簡単に言うとそうした特許は、世界の通信業者が異なる通信網間で相互に機能できるようにするためのいくつもの技術的仕様だ。そこで一つの統一的な基準を打ち立てることは、5Gの要になります。つまり、世界中あちこちの何十億もの機械や自動車やちょっとした機器を継ぎ目なくつなぐことを意味するからです。

ファーウェイの特許の利益の大半は移動通信基地局関連です。ノキアやエリクソンが欧州全域でファーウェイの基地局などのインフラを自社製に置き換えたとしても、両社はなおもファーウェイの特許を使い続ける必要があるのです。

今のところ知財関連の収益はファーウェイ全体にはそれほど貢献していません。同社はむしろ、ライバル社との特許のクロスライセンス契約を好んでいます。

ファーウェイは、自分が締め出された市場でクロスライセンス契約を停止することもできます。そうなれば移動通信各社は特許使用料や手数料を払う羽目になります。これはファーウェイにうまみのあるビジネスになるかもしれないです。例えば米クアルコムは重要な移動通信用半導体技術を多く所有しており、2017年以来のライセンス収入は170億ドルを超えています。

ファーウェイは既に今年、米通信ベライゾンを特許侵害で提訴し、10億ドル超の支払いを求めている。ファーウェイが持つ技術的優位も、中国政府の手によって政治的な駆け引きの材料にされるリスクがあるのです。

ただ、米司法省は2月13日、中国の通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ)が企業秘密を盗み当局に虚偽の説明したとして、同社を追起訴しています。

ファーウェイと孟晩舟最高財務責任者(CFO)は既に詐欺や米国の対イラン制裁法違反の罪で起訴されていました。司法省は追起訴で、従来マフィア訴追に用いられてきた「威力脅迫および腐敗組織に関する連邦法(RICO)」を基に、ファーフェイが数十年にわたり知的財産権の窃盗に関与したと主張。不当利得行為を共謀した罪も含めたことで、有罪となれば刑罰はさらに重くなる可能性があります。

司法省は声明で、ファーウェイの違法行為は「研究開発費を大幅削減し、遅れを減らすことが目的で、それにより同社は著しく不当な競争上の優位性を得た」と指摘。競争相手の機密情報を入手した従業員を報償するボーナスプログラムまで導入していたと論じました。

追起訴でファーフェイは、企業秘密を盗み米国の制裁を回避し、当局に虚偽の説明をして国際的な地位を獲得した企業として描写されました。ファーウェイが知的財産を盗んだとする相手企業名は明記されていないですが、司法省の主張の詳細には、シスコシステムズやモトローラなどの企業に合致する説明がりました。

米中の5Gに関する争いは、単なる米中の技術派遣争いとか、知的財産権の保護に関する問題などと考える人も多いようです。

中国では、米国の約10倍に当たる35万以上の5G基地局がすでに設置されています。精度が増したジオロケーション(地理位置情報)と顔認証技術を搭載した広大な監視カメラ網を組み合わせたことによって、国内に1,100万人いるイスラム教徒のウイグル族を当局は追跡管理できるようになりました。

SF映画さながらの中国の監視カメラの画像

こうした取り組みによって、中国は次世代技術を人々の監視に適用することにおいて世界の最先端の位置にいます。将来的には『人種差別の自動化』という新たな時代の到来を体現するかもしれない」と『ニューヨーク・タイムズ』は伝えています

米国はこうした段階まではまだ到達しておらず、そうなることはないのかもしれないです。しかし、5Gの商用展開は始まっています。新たなデータ通信を手に入れて利用したいという声は、個人をはじめ企業や政府のなかから大きくなる一方です。システムに安全策を組み込むことを目指すのは、当然であり必要なことでしょう。

中国のような、全体主義体制の政府に限らずどんな政府であっても、市民のなすことすべてを常時知ることができるというのは、民主主義の根幹にかかわる問題です。なぜなら、市民がどう考えてどんなふうに行動し、何をするのか、政府は必ずや規制したいと考えるようになるからです。問題なのはそのような世界がどういうものなのか、ほとんどの人が真剣に考えていないところにあります。

私自身は、5Gの問題の本質は、技術ではなく、それこそウィグル問題と密接に絡んだものだと思います。全体主義国家がかつてない高度な監視技術を持つことへの脅威こそがその本質だと思います。

ポンペオ長官の先月23日の演説には以下のようなくだりがありました。
志を同じくする国々の新たな集団、民主主義諸国の新たな同盟を構築するときだろう。自由世界が共産主義の中国を変えなければ、中国が我々を変えるだろう。
私自身は、現在の中国はすでに共産主義ではなく、経済的には国家資本主義体制でであり、統治の観点からは、完璧な全体主義だと思います。それは、それとして自由社会が中共を変えなければ、中共が我々を変えることになるのは間違いないでしょう。

この怪物中共が、高度な監視技術を持って、自国内のみならず、世界中を監視できるようしたいというのが、中共の本音であり、その後には世界中を監視し、世界の現在の秩序をすべて自分の都合の良いよいにつくりかえてしまうというのが、彼らの究極の目的です。

確かにファーウェイの5Gが世界を席巻した場合、そうなる可能性が高いです。監視社会には、犯罪を削減するという効果もありますが、どの程度の監視にするのか、人々のプライバシーをどう守るかということについては、全体主義国家が独善的に決めることではありません。

世界の多くの国々よって、社会を發展させていくという方向性で、新たな秩序を形成していくべきです。

日本では、COCAという感染確認アプリが開発され、感染者も非感染者も互いにわからない形で、接触した可能性を通知するという方式で、感染の可能性を通知しながらも、人々のプライバシーを守っています。

COCOAの説明画面

このアプリそのものについては、不具合があったり普及率が低いということで、効果が疑問視されているところもありますが、それはそれにして、人々のプライバシーを守ったうえでの監視方法ということでは、発想としては素晴らしいものだと思います。

中国にも似たようなアプリがありますが、発想は日本のものとは全く発想が異なります。利用者がスマホのアプリに身分証番号などの個人情報を登録すると、その人が感染しているリスクが緑、黄、赤の3段階で示されます。判断の基準は明確に説明されていませんが、家族関係や移動履歴などのデータから、感染者との濃厚接触の可能性や感染地域への出入などをはじき出す仕組みとみられています。


利用は強制ではないですが、登録しないと職場に復帰できなかったり、店舗に入れなかったりすることがあります。北京市でも従業員の証明を店頭に貼り出す飲食店や、客に提示を求める店舗などが増え始めています。このシステムはすでに全国の200以上の都市が採用しています。

中国と日本の感染確認アプリでは、設計思想に雲泥の差があります。中国の感染確認アプリでは、個人の意思とは関係なく、政府が感染の有無や程度まで決定します。それに対して、日本では、あくまで感染者との接触した可能性が高いことを知らせるのみです。

それを知らせて後は個人の自由意志に任せています。日本では、中国のようなアプリは絶対に許容されないでしょう。ここが、全体主義のと自由主義の差です。

これは、感染アプリの事例ですが、世界の秩序が中共の都合の良いようにつくりかえられてしまえば、自由主義の国々の社会は根底から崩れることになります。

そのようなことは、自由主義の国々の人々は到底容認できないでしょう。このようなことに気づいたからこそ米国は、中国に対峙しているのです。

社会が根底からくつがえされる可能性を考えれば、技術的な問題や、経費の問題など、とるに足りないものだと思います。自由主義諸国は、ファーウェイの5Gが使えないなら、しばらくは4Gを使用して、5Gはるかに凌駕し、4Gや5Gなどとは、一線を画した6Gを開発して、それを使えば良いのです。

英国は香港問題などで、それに目覚めたようです。ドイツもはやく目覚めてほしいものです。

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2020年6月11日木曜日

消費の落ち込みは当面は続く…安倍政権は消費増税一時停止を! いまこそドイツを見習うとき— 【私の論評】日本では緊縮命のぶったるみドイツのように期間限定の減税ではなく、物価目標を達成するまで減税せよ!(◎_◎;)

消費の落ち込みは当面は続く…安倍政権は消費増税一時停止を! いまこそドイツを見習うときだ

安倍首相と麻生財務大臣

 総務省は5日、4月の家計調査を発表した。それによると、2人以上世帯当たりの消費支出は26万7922円、物価変動を除いた実質では前年同月比11・1%減だった。これは統計が比較可能な2001年以降最大の落ち込みだ。食料などが堅調な一方、外食や飲酒代が大きく落ち込んでいる。こうした消費の落ち込みはいつごろ回復基調となるのか、落ち込みをカバーするための施策はないのか。

 大きく落ち込んだのは、パック旅行費97・1%減、交通73・0%減、外食67・0%減、洋服58・9%減、理美容サービス41・9%減、保健医療サービス14・8%減など。それぞれ3月も減少していたが、4月になってその減少幅が拡大した。これらの多くは外出する人数の減少に伴うものである。

 逆に伸びたものもある。光熱・水道が7・4%増、麺類34・2%増、パソコン72・3%増、保健用消耗品123・9%増など。逆に、これらは外出が減り、家の中にいることで増えた需要だ。

 例えば、外食するかわりに、家で飲食をするので、麺類、生鮮肉、「宅飲み」用アルコール飲料が増えた。もっとも、人はどこかで3食するが、外食の代わりに内食だと、経済活動全体についてはマイナスである。

 新型コロナウイルスは生活様式も変化させてしまった。「3密」回避やソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保により、消費の基本構造も一部は変わった。これまで外食は会話をする意味も大きかったが、これからは食事中の会話そのものを控えるというのであれば、機会は減少してしまうだろう。

 テレワークも意外に使えることが分かったので、これまでのような出張が絶対に必要かというと、そうでもなくなり、出張による人の移動も確実に少なくなるだろう。

 政府の緊急事態宣言を受け全国で外出自粛が広がったが、宣言が解除され外出自粛がなくなった後も、元には戻らない部分が残るだろう。あと半年か1年くらいは、新しい行動様式への調整過程であるので、消費は今一歩の状態が続くのではないか。これが、構造変化に伴う消費減退だ。

 さらに、これから雇用環境が悪化するとともに、可処分所得が落ち込むので、それに伴う消費減退もあるはずだ。こうした雇用・所得環境の変化に伴う消費減退も半年か1年くらいは出てくるだろう。

 消費は国内総生産(GDP)の過半を占めるので、このような消費減退は、GDP成長率にも悪影響である。もともと昨年10月からの消費増税により消費が弱含んでいたのが根本原因であるので、少なくとも昨年の増税分は一時的に止めるべきだ。さらには安倍晋三政権によって引き上げられた14年4月の消費増税分も含めて一時的に停止したらいい。

 財務省周辺は「緊縮財政のドイツを見習うべきだ」と言ってきたが、そのドイツでさえ、今年7月から12月までの期間限定で、付加価値税の税率を19%から16%へ引き下げる消費減税を行う。今こそ、これを見習うべきだ。定額給付金と異なり、すぐに実施でき効果が出る政策だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本では緊縮命のぶったるみドイツのように期間限定の減税ではなく、物価目標を達成するまで減税せよ!(◎_◎;)

高橋洋一氏は、ドイツを見習えと言っていますが、ドイツはもともとは緊縮財政の権化のような国で本来は見習えるような国ではありませんでした。これについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
メルケル独首相、与党党首再選を断念 首相は継続…後継選び議論加速―【私の論評】「ぶったるみドイツ」の原因をつくったメルケルの敗退は当然(゚д゚)!

この記事は、2018年10月のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。この記事ではドイツの緊縮財政についてまとめて記した部分があるので、まずはその部分を引用します。
ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の主力戦闘機「ユーロ・ファイター」のほぼ全機に“深刻な問題”が発生し、戦闘任務に投入できない事態となっています。現地メディアによれば全128機のうち戦闘行動が可能なのはわずか4機とも。原因は絶望的な予算不足にあり、独メルケル政権は防衛費の増額を約束したが、その有効性は疑問視されるばかりです。 
ドイツは“緊縮予算”を続けており、その煽りを受けてドイツの防衛費不足は切迫しています。空軍だけではなくドイツ陸軍においても244輌あるレオパルト2戦車のうち、戦闘行動可能なのは95輌などといった実態も報告されています。 
こうした状況に追い込まれた原因の一つとして、ドイツを含む欧州連合(EU)には、財政赤字が対GDP比で3%、債務残高が対GDPで60%を超えないこととする「マーストリヒト基準」があり、財政健全化を重視しすぎるとの声が経済専門家の間にはあります。
ドイツの主力戦車「レオパルド2」
昨年(ブログ管理人注:2017年)10月15日、ドイツ潜水艦U-35がノルウェー沖で潜航しようとしたところ、x字形の潜航舵が岩礁とぶつかり、損傷が甚大で単独帰港できなくなったのです。 
ドイツ国防軍広報官ヨハネス・ドゥムレセ大佐 Capt. Johannes Dumrese はドイツ国内誌でU-35事故で異例の結果が生まれたと語っています。
ドイツ海軍の通常動力型潜水艦212型。ドイツが設計 建造しドイツの優れた造艦技術と
最先端科学の集大成であり、世界で初めて燃料電池を採用したAIP搭載潜水艦である。
紙の上ではドイツ海軍に高性能大気非依存型推進式212A型潜水艦6隻が在籍し、各艦は二週間以上超静粛潜航を継続できることになっています。ところがドイツ海軍には、この事故で作戦投入可能な潜水艦が一隻もなくなってしまったというのです。 
Uボートの大量投入による潜水艦作戦を初めて実用化したのがドイツ海軍で、連合国を二回の大戦で苦しめました。今日のUボート部隊はバルト海の防衛任務が主で規模的にもに小さいです。 
212A型は水素燃料電池で二週間潜航でき、ディーゼル艦の数日間から飛躍的に伸びました。理論上はドイツ潜水艦はステルス短距離制海任務や情報収集に最適な装備で、コストは米原子力潜水艦の四分の一程度です。 
ただし、同型初号艦U-31は2014年から稼働不能のままで修理は2017年12月に完了予定ですが再配備に公試数か月が必要だとされています。
日本でも財務省の緊縮財政により、一方ではF35などの装備品を新規購入されているなどのこともありながら、その他の自衛隊の予算が減らされており、トイレットペーパーの節約が励行されたり、陸自では実弾を用いた訓練が減らされ、米国の軍楽隊よりも、実弾訓練がなされていないということを聞いたことがありますが、それにしてもドイツのように酷い状態ではありせん。

ドイツの軍事的脅威といえば、まずはロシアでしょうが、ロシアのGDPは東京都並みであり、しかも現状では、最大の財源である原油価格はコロナ以前から低迷して世界的な需要減になっています。だから、軍事的脅威はあまり感じていないのかもしれません。日本は、中国や北朝鮮に隣接しているという特殊事情がありますから、ドイツのようなわけにはいかないのかもしれません。それにしても、ドイツでは、なぜこのように緊縮財政がまかり通るのか、不思議というほかありません。

08年の世界金融危機はアングロ・サクソン型の資本主義が作り出したものだとドイツ人は考えているようです。しかし、自分たちは別の道を歩んでいると考えているようです。確かにドイツは英米とは同じではありません。例えば、ドイツは労働規制が厳しく、労働時間は世界最短です。

しかし、こうした考え方は欺瞞です。実際、ドイツ銀行は強欲さにおいてウォール街に決して引けを取りません。市場の自由と規律を重んじるドイツ政府は、計画経済とケインズ主義に反対し、他国に緊縮財政を押しつけています。ドイツ連邦銀行を模範として作られた欧州中央銀行は物価安定に固執しています。

ギリシャなど危機に陥った国は外部からの助けを必要とし、ドイツに大きな期待が寄せられていました。ところが、ドイツは覇権国として弱小国を助ける力と意思を持っていないようです。逆に準覇権国として、弱小国に緊縮と構造改革を押しつけたのです。これが危機を悪化させ、ヨーロッパを分裂させました。

しかし、ドイツ人から見れば、こうした行動は防衛的なものなのでしょう。その意味で、現在の「ドイツ帝国」は覇権を強化し、他国に侵略し続けたナチス時代の第三帝国とは異なるようです。

破壊はたやすく、建設は難しいです。現在のドイツは、中東、世界環境、貿易などの問題で、秩序を建設する力も意思もないようですが、破壊するための力と意思は有り余っているようです。

このようなドイツの財政政策が日本の参考になるはずもありません。見習うべきは、米英の財政・金融政策だと思います。金融政策にいては、ドイツはEUに属しており、EUの中央銀行がこれを定めるので、これも日本には参考になりません。

しかし、そのドイツの財政政策を高橋洋一氏が見習うべきと言うには、それなりの理由があります。それは緊縮大好きのドイツでさえ、今年7月から12月までの期間限定で、付加価値税の税率を19%から16%へ引き下げる消費減税を行うからです。

何しろ定額給付金と異なり、すぐに実施でき効果が出る政策です。実施しない手はありません。

ドイツではさらに、大きな動きがあります。

ドイツのメルケル首相(右)とショルツ財務相( 左)

ドイツのショルツ財務相は大規模な景気刺激策の資金調達のために追加で最大500億ユーロ(568億ドル)の借り入れを検討しているそうです。協議に詳しい政府高官がロイターに話したそうです。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による景気への打撃に対処するため、これまで緊縮財政派だったドイツが域内で最も支出が大きい国の一つに政策を転換する動きとなりそうです。

高官によると、メルケル政権は1300億ユーロの景気刺激策を賄うため第2次補正予算案を17日に承認させる計画。別の高官も、政権が17日に補正予算を可決させたい意向だと話したそうです。ドイツ財務省は借り入れ規模が当初想定の250億ー300億ユーロを上回るとみているといます。

高官2人によると、財務省は下半期に起き得る予想外の状況に対し、財政的な余裕を広げたい意向だそうです。

ドイツでは3月、国債発行による1560億ユーロの補正予算が成立。追加で最大500億ユーロを発行した場合、今年の新規発行額はドイツの国内総生産(GDP)の約6%に当たる2000億ユーロを超える可能性があります。

財務省の報道官は追加の国債発行について明確な数字を明らかにしませんでした。 政府は今年の債務残高がGDP比で75%を超えるとみています。大規模な景気刺激策を導入した10年以上前の世界金融危機以来の高水準です。2019年は60%をやや下回る水準でした。

緊縮大好きドイツが、このように域内で最も支出が大きい国の一つに政策を転換しそうな状況になってきました。

一方日本はどうなのでしょうか。日本では、昨年の消費税を10%に引き上げたことによって、日本経済はかなり低迷していました。そこにさらに今回のコロナ禍が追い打ちをかけました。

安倍首相は増税前に「リーマン級の経済悪化がない限り増税」と言っていました。今回のコロナ禍は、間違いなくリーマン級の経済悪化を超えるものになります。さらに、あの緊縮大好きのドイツでさえ、減税と、支出を大幅に増やすと言っているのですから、これ以上の減税の口実はないかもしれません。

これで、財務省を説得して、減税に踏み切るか、財務省を説得できないなら、解散総選挙の公約にしてでも、減税を実施すべきです。

その動きは、もうあります。例えば、安倍晋三首相は10日午後、麻生太郎副総理兼財務相と官邸で約1時間会談しました。麻生氏は安倍首相の「相談相手」として知られますが、平日の日中に、これほど長時間話し合うのは異例です。

新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を受けて国内外に難題が山積するなか、今後の政権運営について協議したとみられ、さまざまな臆測を呼んでいます。

国会会期末(17日)を前に、第2次補正予算を成立させた後、第3次補正予算を編成すべきかなどを話し合った可能性があります。第2次補正の財源では、かなりの国債を充てているものの、それでも国債の金利が上がることもなく、まだまだ国債を刷り増し、日銀による買取で、第3次補正にも十分に資金が割り当てられる余地があることも確認したかもしれません。

経済政策では、「消費税減税」を求める声があります。「消費税減税」と「衆院解散」は検討課題になった可能性があります。

私も減税は賛成です。ただし、緊縮大好きのドイツを見習うべきでない点もあります。それは、ドイツが今年7月から12月までの期間限定で、減税を行う点です。さすがドイツです。どこまでも、緊縮が大好きなようです。

本来は、期間限定ではなく、物価目標や雇用目標を定めて、その目標が達成されるまで、財政政策や、金融政策を継続すべきなのです。

日本では、ドイツ方式ではなく、物価目標2%を実現してもすぐに消費税を元に戻すのではなく、明らかにインフレになった時に元に戻すべきです。物価目標が達成できないなら、最初は8%への減税から、それで物価目標が達成できないのなら5%に、それでもまだ駄目なら0%にして、物価目標が達成できるまで、続けるべきです。

それで令和時代は、平成時代の負の遺産であるデフレときっぱりと決別できます。

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2020年4月21日火曜日

少なさ際立つ日本の「コロナ死」 病床数など関係も…「ドイツや韓国を見習え」論の不可解―【私の論評】数字に頼るだけではなく、数字を客観的に正しく読むべき(゚д゚)!

少なさ際立つ日本の「コロナ死」 病床数など関係も…「ドイツや韓国を見習え」論の不可解


東北大学災害科学国際研究所の児玉栄一教授(災害感染症学)は、「大きな差になるかは微妙だが、SARS(重症急性呼吸器症候群)の際もホテルの掃除でカーペットのウイルスを吸入して感染したという報告がある。新型コロナウイルスも布や床、壁で2~3日生きているとされ、靴を脱ぐことで屋内のウイルスの濃度を下げることになり、感染確率は下がる」と指摘する。

厚生労働省の統計では、新型コロナウイルスによる死者は70~80代が多いが、感染者は20代と40~50代が多い。

児玉氏は「欧米では死亡リスクが高い60歳以上の感染者が多いのに対し、日本は50歳以上が少ないため、感染者数の増加の割に死亡者が少ないと考えられる。高齢者が欧米ほど出歩かないなど、文化の違いもあるかもしれない」とみる。

厚労省のクラスター対策班や現場の医療従事者の奮闘、多くの国民の自粛の努力もあって持ちこたえている日本だが、感染者も死者も増え続けていることは厳粛に受け止めるべき事態だ。前出の真野氏は地方での感染爆発に懸念を示す。

「沖縄県の石垣島で感染者が出たが、こうした例は危険だ。国内での医療資源は都市部に偏在しているため、地方で感染が広がれば、感染者数が横ばいのままでも死者数が急増する恐れがある。都市部から動かないことが重要だ」

東京都は死後にPCR検査の結果で感染が判明した場合でも、原則的に感染者の死亡として公表している。全国の警察が3月中旬から4月中旬までの約1カ月間に変死などとして扱った遺体のうち、埼玉、東京、神奈川、三重、兵庫5都県の計11人が感染していたことが分かっている。

医療リスクマネジメントに詳しい内科医で、中央大大学院戦略経営研究科教授の真野俊樹氏は、「死者数は嘘をつけない。新型コロナウイルス感染症は間質性肺炎なので普通の肺炎と異なるため、見落とすケースはほとんどないはずだ」と否定する。

真野氏は「私の専門は海外との客観的比較で、現場の医療関係者とで見解は異なるかもしれないが、日本の健闘には、転換可能な病床数の多さや患者の在院日数の長さが、医療の余裕になって関係しているのではないか」と指摘する。

経済協力開発機構(OECD)の2017年の統計では、1000人当たりの病床数はスペインが3・0、イタリアが3・2で、米国が2・8、英国が2・5とさらに低く、日本は13・1と加盟国中最も多い。

注目されているのが、米疾病予防管理センター(CDC)の機関誌電子版に掲載された論文だ。中国・武漢の集中治療室で働く医療従事者の靴底から新型コロナウイルスが確認されたという。室内で靴を脱ぐ日本の生活習慣が感染死の少なさにつながっているのか。

東北大学災害科学国際研究所の児玉栄一教授(災害感染症学)は、「大きな差になるかは微妙だが、SARS(重症急性呼吸器症候群)の際もホテルの掃除でカーペットのウイルスを吸入して感染したという報告がある。新型コロナウイルスも布や床、壁で2~3日生きているとされ、靴を脱ぐことで屋内のウイルスの濃度を下げることになり、感染確率は下がる」と指摘する。

厚生労働省の統計では、新型コロナウイルスによる死者は70~80代が多いが、感染者は20代と40~50代が多い。

児玉氏は「欧米では死亡リスクが高い60歳以上の感染者が多いのに対し、日本は50歳以上が少ないため、感染者数の増加の割に死亡者が少ないと考えられる。高齢者が欧米ほど出歩かないなど、文化の違いもあるかもしれない」とみる。

厚労省のクラスター対策班や現場の医療従事者の奮闘、多くの国民の自粛の努力もあって持ちこたえている日本だが、感染者も死者も増え続けていることは厳粛に受け止めるべき事態だ。前出の真野氏は地方での感染爆発に懸念を示す。

「沖縄県の石垣島で感染者が出たが、こうした例は危険だ。国内での医療資源は都市部に偏在しているため、地方で感染が広がれば、感染者数が横ばいのままでも死者数が急増する恐れがある。都市部から動かないことが重要だ」

【私の論評】数字に頼るだけではなく、数字を客観的に正しく読むべき(゚д゚)!

上の記事で、「中国・武漢の集中治療室で働く医療従事者の靴底から新型コロナウイルスが確認されたという。室内で靴を脱ぐ日本の生活習慣が感染死の少なさにつながっているのか」という部分が目を引きました。

なぜかというと、数日前イタリアでお年寄りたちが、互いの足を触れ合わせて、挨拶のかわりにしているという風景をみたからです。そこでYouTubeを閲覧してみると以下のような動画がみつかりました。


握手をしたり、ハグをしたり、キスをしたりでは、間違いなく中国ウイルスの感染を高める可能性が高いですが、もしかすると足と足で「こんにちわ」をする挨拶も、感染を誘発している可能性あると思います。これは、いずれの機関でも良いので是非調査していただきたいものです。

日本では、もともとこのようなことをしなくても、昔から挨拶はお辞儀と決まっています。そうして、このお辞儀、正しいお辞儀をするのは結構難しいものです。だから、新入社員などは、最初にお辞儀の練習をさせられたります。「挨拶がきちんとできれば、一人前」ともいわれます。

日本では、挨拶としてのお辞儀が根付いています。会社でも、お辞儀をするのは当たり前です。以前ある地方都市の市役所の年配の方が全く挨拶をしないということを聴いたことがあったので、驚いたものです。それも何十年もお辞儀をしないそうです。民間企業であれば、そのような人は無理やりにでもお辞儀をさせられるでしょう。

下の動画は、ドライブレコーダーの記録ですが、多くの人々が車を停車させたドライバーに挨拶をしています。


これは、海外では見られない風景です。私自身も、信号のある横断歩道で最初から信号を待っている場合などは、お辞儀はしないですが、信号がない横断歩道で車が自分のために止まってくれた場合には、ほとんど無意識にお辞儀をしています。

これは、日本人としては、ごく当たり前の仕草です。以前、このブログにはコミュニケーションについて述べたことがありますが、日本では企業内の厳密なコミュニケーション等に問題があるようですが、社会的にはコミュニケーションが成立した社会なのかもしれません。

ごく当たり前なので、子供たちもそれを見習いごく自然にお辞儀をするようになったのでしょう。これは、素晴らしいことです。この素晴らしいことが、もしかすると中国ウイルスの蔓延を防いでいるのかもしれないです。

神社に参拝する前には、手水の作法も様式化されています。この作法を正確にできる人は今日少ないかもしれませんが、とにかく神社にお参りするときには、まずは手を洗って清めなければならないということは、ほぼすべての日本人が知っていて、実行していると思います。


このような習慣も、普段の手洗いの励行を促し、中国ウイルスの感染を防いでいる要因になっているのかもしれません。暑さのせいもあるのか、一日2回以上も、シャワーを浴びる東南アジアなどは、例外として、日本人の多くは日々風呂に入るというのも、感染防止に役立っているのかもしれません。

このような習慣が日本でウイルスの蔓延を防止に寄与してきたのは、事実だと思いますが、私自身は、やはり日本のクラスター対策が功を奏して着たのだと思います。

世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏は10日にジュネーブで行った記者会見で、日本の新型コロナウイルス封じ込めについて、「非常に組織的にクラスター(感染者集団)を調査する手法を取ってきた」と評価しました。ただ、東京の現状には一定の懸念を示しました。

ライアン氏は、クラスター対策は「非常に専門的なチーム」が主導していると指摘。クラスター分析により、感染者のうち二次感染を起こしたのは5分の1にとどまるなど「とても有益な情報」が分かったと強調しました。

一方、東京など一部地域で感染経路を追えない例が増えているのは「良くない」と述べました。ただ、日本政府は状況の変化に応じ、クラスターより広範な感染状況を追う方針に修正してきていると分析。さらに、日本全体が東京のようになっているわけでもないとして、政府の対応を「うれしく思っている」と語りました。

実際、いままでのところ日本の感染者数は、10万人あたりでは、9.3人に過ぎません。台湾の感染対策は称賛を浴びていますが、台湾の人口は2000万人台であり、10万人あたりでは、数人ということで、これは大陸中国の数字に近いものになっています。このあたりからしても、中国のこの数値は信頼できません。台湾は、人口が1億2千万人日本よりは実数は少ないですが、10万人あたりでみれば、日本が台湾より格段に劣っているわけではありません。

ただし、初期段階で、中国からの渡航者などを制限しなかったことは、失敗でした。台湾なみに、すぐに渡航者を制限していた場合、台湾と同等の成果をあげることができたかもしれません。その点はかえすがえすも残念です。

なお、中国の感染者数は10万人あたりでは、5.8人、10万人あたり死者数では、0.3人と極端に少ないです。これは、無論中国政府当局が操作をしているのでしょうが、その操作が稚拙だったのかもしれません。中国の人口は約14億人であり、感染者数や死者の実数は、人口の少ない他国より多くなるのは当然です。

しかし、中国政府当局はそのことを忘れていたのかもしれません。10万人あたり感染者数をドイツくらいにしたものを元に、14億人あたりの実数を計算すれば良かったのだと思いますが、14億人という人口まで考慮に入れなかったので、このように、10万人あたりの感染者数が台湾なみというような、あり得ない明らかにおかしな数字になったのでしょう。

10万人あたりの、死者数も0.3人と、日本なみというのも異様です。ただ、中国では経済の統計数値も出鱈目ですから、最初から信じる方が馬鹿ということでしょう。

さて、以下に台湾と日本の感染者数等の推移を掲載します。




台湾に関しては、日本のマスコミは一時感染が終息したような扱いをしていましたが、19日には、22人の新たな感染者数が見つかっています。ただし、死者は累計でも6人です。いくら台湾が日本より人口が少ないとはいえ、これは特筆に値します。

日本は、東京は増えているようですが、日本全体でみると、減りつつあるようにみえます。

これから、どうなるか余談は許しませんが、私としては、台湾も日本も、ともに5月中には、少なくとも感染者数が横ばいになるのではと漠然とした期待を持っています。その後にゆっくりと終息するのではないでしょうか。

もし、そうなれば、日台がなぜ感染拡大を防ぎ得たのか本格的な調査をすべきです。特に、日本が海外からの渡航者の制限に他国に比較して大幅に遅れたにもかかわらず、海外のような感染拡大が起こらなかったのかを徹底究明すべきです。それが、究明され、日本で挨拶であるお辞儀が効果があるということが証明すれば、世界の挨拶はお辞儀にかわるかもれしれません。

そうして、これは、日本でも大昔からあった疫病に対する有効な防御策であったことが、解明されるかもしれません。

それと、これも気になることなのですが、日本語は比較的抑揚が少なく、強いアクセントはあまりありません。これに比較して、北京語やハングルなどはかなりアクセントが強いです。西欧の言葉もアクセントは強いです。アクセントが強いと、かなり唾液なども飛びます。

日本人は、抑揚の少ない日本語を話し、しかも感染病予防のため、マスクをつけているということも関係しているかもしれません。この場合、世界中の人が日本語のように、抑揚のないアクセントのない語り口で語るということはできないでしょうが、マスクは有効です。

いずれにせよ、10万人あたりの感染者数などで比較するなどのことをしない、マスコミの報道などは、いたずらに恐怖を煽るものです。

それどころか、台湾を見習は理解できますが、ドイツや韓国を見習えなどの主張は全く的はずれです。特に以下のような記事は、明らかに安倍総理にリーダーシップが欠けているという主張にしかみえません。

新型コロナ対応の「優等生」は「台湾・韓国・ドイツ」  
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指導者の洞察力・リーダーシップが重要な要素に
  
しかも、その主張が間違ったエビデンスに基づき行われているとしかみえません。おそらく、この記事を書いた人は、いわゆる「ど文系」といわれる種類の人ではないかと思います。数字もまともに見ることができないようです。これでは、まともな批判もできません。本業のエコノミストもまともに勤まらないのではないかと思います。そのようなエコノミストと呼ばれる人は日本に大勢います。

私自身は、安倍総理を政策の是々非々で見ています。そもそも、安倍総理自身が良いとか、悪いとか等と考えたことはありません。ましてや、良い人、悪い人などは、判断基準には入れていません。安倍総理のどの政策が正しい、どの政策が間違いという見方をします。だから、批判することもあれば、評価することもあります。

このブログの読者の方には、是非そのことを知っていただきたく本日は以上のようなことを主張させていただきました。

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2019年9月2日月曜日

ナチスドイツのポーランド侵攻から80年 戦争賠償をポーランドがいまドイツに請求する理由―【私の論評】戦争責任をナチスに押し付け、自分たちもナチスの被害者とするドイツ(゚д゚)!


ポーランドに侵攻するドイツ軍、それを激励するヒトラー

「戦後補償」をめぐり日韓関係が再び袋小路に入っている。こうしたとき、ドイツの「戦後処理」の仕方が模範として引き合いに出されることが多い。

だがそのドイツがいま、ポーランドから「戦争賠償」を請求されている。ドイツ政府は1953年に解決済みとしているが、なぜポーランドは21世紀に入ってから賠償請求しているのか。米メディア「ブルームバーグ」がポーランドからレポートする。

ナチのポーランド侵攻から80年

ドイツは隣国ポーランドに対して、第二次世界対戦の開始から80年を経て、赦しを乞うた。一方、ポーランドの首相はドイツに対して改めて戦争補償金を求めた。

ドイツのフランク=ヴァルター・シュタインマイアー大統領は、1939年9月1日のナチスドイツ空襲で初めて大勢の一般市民犠牲者を出したポーランドのビエルンを訪れ、ドイツは過去を忘れず、あの戦争の恐怖と残虐行為の責任をとると語った。

演説するドイツのシュタインマイヤー大統領

ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領に招かれた式典で、シュタインマイアーは最初にドイツ語で、次にポーランド語で次のように述べた。

「ビエルン空襲の犠牲者の前に頭を垂れ、ドイツの残虐行為の犠牲者の前に頭を垂れ、赦しを乞います」

9月1日、ワルシャワで開かれた、世界史上最も血にまみれた戦争の開始を記念する80回目の式典には、米国のペンス副大統領、ドイツのアンゲラ・メルケル首相、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領ら約40名の首脳たちが列席した。

米国のトランプ大統領は欠席の理由を、ハリケーン「ドリアン」が南大西洋岸の州に大規模被害をもたらす可能性があるので、米国にいる必要があるからとした。

「ねじれたイデオロギー」

ワルシャワにある「無名戦士の墓」の近くで、ペンス米副大統領は、第二次大戦中「ポーランド人以上に、勇気と意志と義憤をもって戦った人々はいない」と述べた。

ポーランドのドゥダ大統領は、かつてのユーゴスラビアやルワンダでの民族虐殺、近年のロシアによるウクライナやジョージアへの侵攻に触れ、世界は第二次大戦から教訓を得ていないと述べた。

ペンス米副大統領は、20世紀の「ねじれたイデオロギー」に触れ、それらが「暗殺部隊、強制収容所、秘密警察、国家プロパガンダのしかけによる嘘の蔓延、教会の破壊、信仰を持つ人々への終わりなき敵意」につながったのだと非難した。

演説するマイク・ペンス米副大統領

ナチズム・共産主義の全体主義という悪によって、人類は歴史上で「神を忘れた」時期に至ったともペンス副大統領は述べた。

バルト海からのポーランド侵攻を記念するグダニスクで開かれたまた別の式典で、ポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相は、物議を醸している戦争賠償金の話題を再び持ち出した。ポーランドの西隣りにして最大の貿易相手であるドイツに、侵略と占領による経済的損害の責任をとるよう呼びかけたのだ。

2019年3月、ポーランドの特別国会議員委員会が公表した予備研究では、6年間の戦争でポーランド経済は8500億ドル(90兆円)以上の代償を払った可能性があることが示された──同国のほぼ2年分の生産高に近い額だ。

一方、ドイツ政府としては、すべての請求はずっと昔に解決済みだとしている。

補償要求

「犠牲者を覚え、そして補償を要求すべきだ」とモラヴィエツキ首相は述べた。

ポーランドは、第二次大戦の賠償請求を戦後数十年で解決した西欧諸国と異なり、共産主義時代の領主モスクワに賠償請求を事実上阻止されたと主張している。

ポーランドがドイツと戦後の国境条約に署名したのは、「鉄のカーテン」が開いた1年後の1990年になってからようやくのことだ。

約600万人──その半数がユダヤ人──が殺された1939~1945年の戦争に関する補償要求により、2017年以来、ワルシャワとベルリンの関係は悪化している。

共産党当局による1953年の宣言は、ソビエト連邦の傀儡政権によるものであって、独立した決定ではなかったとポーランドは主張している。一方的な宣言は、「当時の憲法秩序に添って、またソビエト連邦の圧力のおそれの渦中でなされたのであり、承認されえない」とポーランド政府は2004年に述べているのだ。

【私の論評】戦争責任をナチスに押し付け、自分たちもナチスの被害者とするドイツ(゚д゚)!

1970年12月7日ドイツ連邦共和国のブラント首相(当時)が黒衣に身を包み、ワルシャワのユダヤ人犠牲者記念碑前でひざまずき許しをこいました。

ワルシャワのユダヤ人犠牲者記念碑前でひざまづいたブラント首相

1985年5月8日、リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカーが議会で「終戦40周年演説」を行い、日本ではいわゆる左翼が狂喜乱舞しました。

この演説は、日本においては左翼によって歪められ、以下のような通説を生み出してしまいました。
ヴァイツゼッカーの「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります」との発言に耳を傾けよ。ドイツはナチスの犯罪を謝罪し、歴史問題を解決している。
そして、「日本もドイツを見習い謝罪と賠償をしろ」と左翼の連中は騒ぎ立てました。

しかし、ブランとやヴァイツゼッカーに限らず、多くのドイツ人はナチスの犯罪を謝罪などしていません。むしろ、責任をナチスに押し付けています。彼らにとっては、自分たちもナチスの被害者なのです。

ユダヤ人に対しても補償はしても賠償はしていません。保証と賠償は、お金を渡すことでは同じですが、その意味合いは全くことなります。補償は「お悔み申し上げます」、賠償は「私が悪うございました」ということですです。まったく意味が異なります。

それに対し、日本は多くの国々に対して、賠償をしています。非を認めているのです。残念ながら、日本では過去の政権が、そうした日本の態度を毅然と国際社会に発信したという話は聞いたことがありません。

日本の歴史学者や教育者のなかには「ヒトラーより悪いことをした国がある」と大日本帝国を批判する人がいますが、これがドイツをどれだけ喜ばせたことでしょうか。

同じ年の9月、G5はプラザ合意をしました。詳細は他の文献を参照していただくものとして、要するに米国が日本に円高不況を押し付けてきたが、当時の大蔵省に心ある人がいて日銀にバズーカを撃たせたら勢い余ってバブル好況になり、米国の連邦準備制度理事会(FRB)のほうがお家騒動になった、という話です。

冷戦期の日本など、国際関係を除けば、これが最大のできごとだったといっても過言ではありません。

これとて、米英仏がソ連をつぶそうと本気で軍拡をしているときに、西ドイツと日本に軍費を求めたというのが真相です。

西ドイツは核武装こそしていませんが、戦車を大量に所有する、ヨーロッパ最大の陸軍国です。それでも「経済大国として威張っていられるのは軍拡が足りないからだ」と“矢銭”を押し付けられるわけです。

二つの世界大戦の記憶を忘れない米英仏は、現実に西ドイツに軍拡を求めながらも、必要以上の軍事強国化を恐れているから、「ほどほどに軍事協力させ、金は巻き上げる」という方式をとってきたのです。

コールもそれをわかっていたからこそ、自国が不況になるのを覚悟でマルク高誘導に応じたのです。

さて、矢銭を押し付けられてきたということでは似ている日独ですが、第二次世界大戦に関する考え方は全く違います。

日本は、当時の軍部等の非を認めています。これは、当然といえば当然のことです。戦争自体は、悪いことですから、戦争した国は、どちらか一方だけが良いとか、どちらか一方だけが悪い等ということはありえず、どちらの国にも何らかの非があるはずです。

日本は非常に常識的だったので、大東亜戦争に関して日本の非を認めたわけです。しかし、ドイツはそうではありません。

ドイツはナチス・ドイツと自分たちを全く異なるものとして、ナチス・ドイツを悪魔化し、ナチス・ドイツとその直接の協力者については処断したものの、それ以外の人々は犠牲者であるとしたのです。

しかし、この見方は一方的に過ぎます。たしかに、日本の戦争とドイツの戦争は根本的に異なるものであり、当時の国の体制も異なります。特にドイツはナチスによる全体主義体制により、戦争を遂行しましたが、日本はそうではありませんでした。これを同一視するような人は、全体主義についてもう一度良く考えてみるべきです。ここでは、本論からそれるので、詳細は説明しません。

確かに、戦争中のドイツはナチスによる全体主義だったのですが、ドイツ国内でナチスを台頭させてしまった責任は、多かれ少なかれ、ナチス以外の人々にもあったはずです。実際ナチスを台頭させないためのチャンスは何度もありました。にもかかわらず結局ナチスは台頭してしまったのです。ドイツは未だにそれに関する過ちは、認めていません。

戦争直後も、現在に至るまで、ドイツの知識層が、それに関する反省の弁を語ったことはありません。しかし、日本は常識的に戦争責任を認めたので、そこを様々な戦勝国につけ込まれる隙を与えてしまったのです。

挙げ句の果に戦勝国でもない韓国にもつけ込まれ、すでに戦後賠償は終了したにもかかわらず、いつまでも金づるにしようとされてきたのです。

まさに、ヴァイツゼッカーの"「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります」との発言に耳を傾けよ。ドイツはナチスの犯罪を謝罪し、歴史問題を解決している"との通説が生まれる背景として存在していたのです。

さすがに韓国に対しては、いつまでも金づると考えられては困るということで、最近の日本は韓国に対しては一定の距離を保つようになりましたが、これはいずれ大東亜戦争の戦勝国に対してもそのようにして行くべきなのです。

そうでないといつまでたっても、日本では「戦後」は終わらないのです。

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2019年4月30日火曜日

「脱原発」は世界の流れに逆行する―【私の論評】「脱原発の先進国ドイツを見習え」という考えの大間違い(゚д゚)!

「脱原発」は世界の流れに逆行する

メディアが報じない欧米・アジアの大半が「原発推進」という現実

フランス中部のサン・ローラン・ヌーアンにある、サンローラン・デ・ゾー原子力発電所
  (2015年4月20日撮影、資料写真)

2018年9月12日の日本経済新聞電子版は「世界の原発発電、30年に10%以上減少 IAEA報告」という見出しの記事を報じた。

 この見出しだけを見ると、IAEA(国際原子力機関)でさえ「脱原発」を予測しており、まさに脱原発は世界の流れなのだ、と多くの読者は思い込んでしまうだろう。

メディアリテラシーとはメデイアを安易に信用しないこと

 だが、記事本文を読むと、前段で「17年に392ギガワットだった発電容量は、最も低く見積もった場合で30年に352ギガワットまで減少すると予測」と書いているものの、後段では「最も大きく見積もった場合、原子力発電の発電容量は30年に511ギガワットに拡大するとみている」と書いている。

 要するに、IAEAの予測は、「30年までに、最低だと10%以上減少、最高だと30%以上増加」なのである。

 記事本文の全体ではバランスは取れているようだが、見出しには読者を脱原発へと誘導する恣意性を感じる。多くのマスコミ報道にはそうした傾向がある。

 バイアスのかかったマスコミ報道に踊らされないためには、個人が「メディアリテラシー」を高める必要がある。筆者は今年3月、東京・八重洲ブックセンターで開かれた西澤真理子氏の出版講演会を聴きに行ってきた。リスクコミュニケ―ションの専門コンサルタントである西澤氏は、福島第一原発(1F)事故後の2011年9月から福島県の浜通りに入り、現地で放射能に関する様々な誤解の除去に努めた人物だ。

「メディアリテラシーとはメデイアを安易に信用しないことである」

 西澤氏は講演会で歯切れよくこう語った。「メデイアリテラシー」とは、一般的には「メディアが報じる情報を主体的に読み解き、理解する能力」とされるが、さらに踏み込んで「メディアを安易に信用するな」というのである。

 というのも、「日本人はメディアに接すると、なんと7割の人が信じてしまう。ドイツは4割、米国は2割しか信じない」(西澤氏)という日本人固有の性向があるからだろう。偏向報道であっても、メディアでいったん報じられれば、それをそのまま信用しやすい性向が私たち日本人にはある。

 確かに、フィンランドの原子力施設をほんのちょっと見学してきただけで、「まだ原発を進めていかなきゃいかんという勢力がいて、これに任せてはならない」と叫び始めた小泉純一郎元首相の思い付きの言説が報じられると、その後の世論調査で約6割が原発反対(=潜在的な原発ゼロ支持)といったレポートが出てくるのが日本だ。これもその性向のせいなのかもしれない。

 原子力との付き合い方を考える上でも、まずは事実を正確に把握することは何よりも大切だ。以下では、小泉元首相も誤解ないし曲解している「脱原発は世界の流れ」であるはずの海外諸国の現況を紹介しておきたい。これらは、国内メディアで報じられることがほとんどない。

脱原発は世界の流れではない

 現在も原発を利用しており、将来的にも利用しようとしている国は、米国・フランス・中国・ロシア・インド・カナダ・英国など19カ国ある。

 現在は原発を利用していないが、将来は利用しようという国は、イスラエル・インドネシア・エジプト・サウジアラビア・タイ・トルコ・ポーランド・ヨルダン・UAEなど14カ国に上る。

 そして、現在は原発を利用しようとしているが、将来は利用を止めようとしている国は、韓国(2080年閉鎖見込み)、ドイツ(2022年閉鎖予定)、ベルギー(2025年閉鎖予定)、台湾(2025年閉鎖予定)、スイス(閉鎖時期未定)の4カ国・1地域。韓国の駐日大使館員は、米朝首脳会談の行方を勝手に楽観視しているのか、ロシアの天然ガスを北朝鮮経由パイプラインの敷設を通じて韓国に導入する予定だと公言している。

 さらに現在も将来も原発を利用しない国はイタリア(1990年閉鎖済み)、オーストリア、オーストラリアの3カ国。

 この他に、スタンスを明らかにしていない国が多数ある。

 下記に掲載した資料を見れば、原発ゼロの国や、原発ゼロを目指している国がいかに少ないか、よく分かるだろう。脱原発は「世界の流れ」にはなっていないのだ。


原発輸出に熱心なロシア

 少し長くなるが、主な諸外国の実情に触れておきたい。これは筆者が駐日の各国外交官・大使館員から聴取した話などをまとめたものだ。

<米国>
 米国のエネルギー自給率は約9割(2017年)。コスト合理性あるシェールガスや石炭を保有する一方で、原子力や再エネも進めている。トランプ大統領自身の原子力に対する関心の度合いは不明だが、側近である安全保障の専門家たち原子力推進の牽引役を担っているのは間違いない。

 近年、新型原子炉である小型モジュール原子炉(SMR)に注力し始めている。現行の大型原子炉は、1基当たりのコストが高く、建設期間が6~7年と長いので資金調達面でリスクがあるからだ。

 GE日立が進める小型モジュール炉「BWRX」(30万kW)については、低コストを理由として英国が関心を寄せている。

 また、NRCは「NEXIP」(Nuclear Energy × Innovation Promotion)と称して、次世代の原子力技術開発の検討を進めている。ビル・ゲイツ氏が出資する原子力企業テラパワー社も前向きで、日本にも秋波を送っているようだ。

<ロシア>
 ロシアは、ロシア型加圧水型原子炉「VVER」(110万kW級)を携えた「原発輸出ビジネス」を展開している。その技術水準は相当高く、国際的な評価も高い。フィンランド・オルキルオト原発4号機に係る受注を受けたという情報もある。

 ロシアは、原発を導入した当初から、核燃料サイクルの完結と高速炉の開発を積極的に進めてきており、世界的にも突出して高い技術を有している。現在、BN-600(60万kW)とBN-800(88万kW)の2基の高速炉が稼働実績を重ねてきており、大型商用炉BN-1200(120万kW)の建設も計画されている。

<中国>
 中国では18年に、AP1000(三門1号)とEPR(台山1号)の最新2タイプの原発が竣工しており、国産第3世代炉である華龍1号が建設中である。中国は、今や原子力技術も先進的であり、日本としても学ぶべき国となっている。中国国務院は、原発に関して、2020年の運転中設備容量を5800万kW、建設中設備容量を3000万kW以上とする目標を掲げている。

 フランス・オラノ社が、フランス国内のラ・アーグ再処理工場とメロックスMOX燃料加工工場をモデルとして、年間処理能力800トンという再処理・リサイクル工場を中国に建設するプロジェクトを進めている。このように、中国は核燃料サイクルにも本腰を入れ始めている一方で、天然ガスを豪州やカタールから輸入し、今後は米国からも輸入していく予定であるなど、エネルギー多様化にも注力している。

<インド>
 インドでは22基の原発(大半が国産の22万kWの小型重水炉PHWR)が稼働しているが、電源比率は3%程度に過ぎない。そして、慢性的な電力不足を補うために、大規模な原発拡大を計画中で、2024年までに発電能力を3倍に増やすとしている。しかしその実現はかなり厳しいと言える。

 現時点では新たに7基が建設中。内訳は国産の重水炉4基(カルクラパー原発、ラジャスタン原発に各2基。1基当たり70万kW以上)、ロシア製の軽水炉VVERをクダンクラム原発に2基(1基は完成済み)、国産の高速増殖炉原型炉をカルパッカム原発に1基となっている。

 それでも計画の達成には程遠いのだが、原発による発電比率が低いのは、インドが原子力供給国グループ(NSG)に加盟できていないことが大きな原因になっている。NSGとは、核兵器開発への技術転用が可能な原子力関連資機材の流通規制を目的とする国際的枠組みで、現在48カ国が加盟しているが、インドは含まれていない。そのためインドは、長らく原発に関する資材や機材の輸入が出来ない状況にあったが、2008年になってNSGのガイドラインが修正され、インドに対する関連品目の供給がようやく認められるようになったという経緯がある。

 そのため原発拡大計画を目指すインドに対して、ロシア、フランス、米国は大型軽水炉の建設を目論んでいる。今年3月には、米国からインドに向けて原発6基を輸出することで合意したと、両国政府が発表している。

原子力技術が空洞化した英国

<英国>
 英国は、北海油田の枯渇を見据えて、エネルギーの安全確保・安定供給・コスト低減による経済成長・低炭素を目指している。以前、石炭の電源比率は20%を占めていたが、今は7%にまで低減、将来的に全廃する予定になっている。原発は、2030年までに既設プラントは全て閉鎖するが、その代替として新設プラントにより電源比率30%を確保していく方針だ。

 こうした努力もあって2050年までにCO2などの温室効果ガス(GHG)を80%削減するための法律が制定されているが、すでに37%削減を達成している。電力業界では温室効果ガスの62%削減を推進し、輸送部門でEV(電気自動車)化を進める方針だ。「クリーン成長戦略」を掲げて、低炭素産業での雇用を拡大し、再エネのコスト低減も進めている。エネルギー関係の投資の半分は、安定供給・低コスト・低炭素に資する原子力に振り向けるという。

 英国はかつて原子力技術先進国だったが、長きにわたって原発新設を行ってこなかった結果、国内の原子力技術が空洞化してしまった。新設するヒンクリーポイントC原発は、フランスEDF(電力公社)によって進められることになったが、工事は順調に進んでいるようだ。

 現在、原発は15基が稼働し、電源比率は2割強。原発新設だけでなく、廃炉や放射性廃棄物・バックエンド対策も年20億ポンドを投じて進めている。特に、セラフィールドではクリーンアップ(汚染除去)に取り組んでおり、地層処分も進めている。

 日立製作所が取り組んでいたホライズン社の原発計画は延期になったが、中国がアプローチを始めているとの情報がある。また、英国のロールスロイスが小型モジュール原子炉(SMR)に関心を寄せており、小型炉で英国の原発技術の再興を目指している。カナダもSMRには前向きである。

<フランス>
 フランスは資源小国であり、エネルギー輸入量を減らすために原発を積極的に利用している。原発比率は7割に上っており、周辺諸国に原発電気の輸出も行っている。それでも、エネルギー自給率は50~55%程度というのが現状だ。

 原発は安価かつ安定な電源で、安全保障水準の向上や低炭素化にも資する。EU(欧州連合)内ではもちろんのこと、世界的にも電力コスト負担は最も低い国の一つである。特に、再エネを推進する隣国ドイツと比べても、それは一目瞭然だ。

 フランスでは、使用済み核燃料は、放射性廃棄物ではなく、「再利用率95%のリサイクル資源」と考えられている。日本と同様に、使用済み核燃料をMOX燃料に転換して利用する方向で進んでいる。

 フランス国内の原発は、19カ所・58基が稼働している。最新のものは第四世代の欧州加圧水型炉(EPR)で、フラマンビル3号(156万kW)として建設中だ。

 原発の運営主体には、EDF(電力公社)、日本からの投資も受けているオラノ社やフラマトム社、CEA(原子力庁)、ASN(原子力安全機関)、IRSN(放射線防護原子力安全研究所)、ANDRA(放射性廃棄物管理機関)などがある。福島第一原発事故後の対応として、32の追加安全基準を導入し、避難基準も新設した。

 直近の電源構成は、原子力7割、水力1割、再エネ1割、化石燃料1割となっており、今後さらに低炭素化を進めようとしている。原発に関しては投資額の大きさがネックになっているが、再エネはコストが低下しつつある。石炭・石油は今後数十年でゼロ化する予定だ。

 2025年までに原発比率50%・再エネ比率30~40%とする方針を2015年に宣言したが、2018年11月になって原発比率50%とする目標年を2025年から2035年に後ろ倒しした。原発比率が低下するのは古い原発を閉鎖するからで、新設も行うので全体の設備容量は変わらない見通し。

 フランス国内世論は、原発を受け入れることを極めて重要視している。原発の地元住民への情報公開を目的としたCLI(地方情報委員会)というものがある。様々な社会の構成員で組織され、対話や討論を促す。フランス国民は原発推進を評価しており、その便益・利益も広く理解を得られている。

2022年までの「脱原発」を決めたドイツだが・・・

<ドイツ>
 ドイツでは、再生可能エネルギーの導入を進めてきた。だが、不安定な再エネ(風力・太陽光)を補完する電源として火力発電の稼働が必要であるため、温室効果ガス排出量がなかなか減少しない。またドイツ北部に大量に導入された風力発電施設から、電力大消費地であるドイツ南部を結ぶ送電線の整備が、住民の反対があって捗っていないという問題に直面も直面している。

 2020年までに温室効果ガスを40%削減し、CO2フリー電源を50%にする計画だが、2050年までに温室効果ガスを80%削減するのは困難な見通しだ。また現在の電源構成で再エネ14%、原子力12%となっているところを、2022年までに「脱原発」を実現する予定。

ドイツ南部オブリハイムで、廃炉作業が進められる原子力発電所、2014年7月1日

 ただ、この突然の政治的決定により、電子力発電を行ってきたエネルギー会社は莫大な経済的損失を被ることになる。その損失に対する補償の規定を整備しようとしてはいるが、実際にそれが実現するか予断を許さない状況になっている。脱原発に大きく舵を切り注目を集めたドイツだが、実現の見通しはかなり険しくなっていると言えるだろう。

<東欧4カ国(チェコ・スロバキア・ポーランド・ハンガリー)>
 この4カ国は、どの原子炉が最適か、どのような資金調達方法が適切かについて、IEAに検討を依頼するなど、原発導入に向けて取り組んでいる。

 こうした動きの背景には、この4カ国がロシアの天然ガス依存に危機感を強めている一方、CO2排出量増大に繋がる石炭火力を削減するようEUから圧力を受けているという事情がある。ポーランドは、高温ガス炉についても関心を寄せている。

世界の大半は「脱原発」ではなく「原発推進」

<サウジアラビア>
 サウジアラビアでは、8基の原発新設が予定されている。米国・中国・ロシア・フランス・韓国の5カ国が受注を目指している。米国はウェスチングハウス社の受注を目指しているが、「カショギ事件」の影響がどう出るか。ロシアの原発輸出も相当進展している模様。

<アセアン>
 フィリピンでは、ロシアの原発新設が進んでいる。インドネシア・タイ・カンボジアでは、中国が原発ビジネスを進めている。

――ここまで見てきたように、世界の大半の国々は「脱原発」どころか、「原発推進」だ。上記の国々の中で唯一、脱原発に取り組んでいるドイツもかなり混乱している。

 そうした中で日本の姿は、福島第一原発の事故以来、原発についてまるで「思考停止状態」に陥っているかのように見える。

 世界の潮流に逆行しながら、未来のエネルギー戦略を正しく描けるのだろうか。次回は日本の現状と、今後取るべき方策について詳しく述べてみたい。

【私の論評】「脱原発の先進国ドイツを見習え」という考えの大間違い(゚д゚)!

冒頭の記事では、「脱原発に取り組んでいるドイツもかなり混乱」としていますが、ではどのような混乱ぶりなのか、より詳細に以下に掲載します。

『FOCUS』誌の最新号によると、INSA研究所が3月19日と20日に行ったアンケート調査の結果、回答者の44.6%が、原発の稼働年数延長に賛成を表明したといいいます。一方、3分の1の人は反対。22%が「わからない」だそうです。

あれほど自分たちの脱原発計画を礼賛していたドイツ人が、今になって「稼働延長」だの、「わからない」だのと言っているとすれば、ひどい様変わりです。

ドイツは、福島第1の原発事故の後、2022年ですべての原発を停止すると決めました。多くの日本人が手放しで賞賛したメルケル首相の「脱原発」政策です。脱原発政策自体はシュレーダー前首相の時からありましたが、それをメルケル首相が急激に早めました。

さらに彼らは今、空気を汚す褐炭による火力発電もやめ、その上、2038年には石炭火力まで全部廃止するという急進的な計画に向かって突き進んでいます。

ドイツは石炭をベースとして成り立ってきた産業国なので、石炭と褐炭の火力発電がなくなれば、炭田、発電所、そして、その関連事業の林立する地域で膨大な失業者が発生して、ドイツ全体を不景気の奈落に落とすことは目に見えています。だから、石炭・褐炭火力の廃止を決めたは良いのですが、いったい、それをどうやって実行するかは検討中のままで、なかなか結論が出ません。

その上、さらに困るのは、原発と石炭・褐炭火力のすべてが無くなれば、電力の安全供給が崩れることです。原発を止めると決めた段階でさえ、すでにそれを警告していた人や機関は多くあったにもかかわらず、主要メディアはその警告を無視し続けました。その代わりに、「自然エネルギーでドイツの電気は100%大丈夫!」という緑の党や、一部の学者や、環境保護団体の主張ばかりが報道されてきたのです。

しかし、いくら何でも、2022年というリミットが近づいてくると、そんな夢物語ばかりでは済ませられなくなってきました。

いうまでもなく、太陽光や風力といった再エネ電気は天候に左右されるので、供給が不安定です。再エネ派は、「余った電気を蓄電しておけば問題なし」というが、採算の面でも、技術の面でも、まだ、それができないから困っているのです。

大々的な蓄電方法が完成しない限り、石炭と風力以外にたいした資源を持たない産業大国ドイツが、再エネだけで電気需要を賄えないことは、少し考えれば中学生でもわかります。いくら送電線が繋がっているとはいえ、産業国の動脈である電気を、他国からの輸入に依存するわけにはいかないです。

つまり、原発と石炭・褐炭火力が本当になくなれば、頼りになるのはガスしかなく、その重要性は、将来ますます高まるわけですが、建設が遅々として進まないのです。なぜかというと、ガス火力発電所を建設しても、今の状態では、これまた採算が合わないからです。揚水発電所も同じです。

採算の合わない理由は要するに、再エネが増えすぎたせいです。再エネで発電した電気は、法律により、優先的に電力系統に入ることになっているので、太陽が照り、風が順調に吹くと、系統が満杯となります。系統が満杯になると、大停電の危険が高まるので、火力など他の発電施設が発電を絞って調整しなければならないのです。

それでも電気が余れば、捨て値で外国に流します。それを緑の党などは、「ドイツが再エネ電気の輸出国になった」と喧伝していますが、赤字分は国民の電気代に乗せられています。要するに、ドイツの電力供給の現実は、時々刻々と変化する需要に合わせて計画的に発電することが叶わず、火力の発電量も、結局、お天気任せという状態なのです。

しかも、再エネ電気の氾濫で、電気の市場値段は恒常的に押し下げられていますし、当然、火力発電の総量は減っています。だから、とくに、原価の高い天然ガスは、稼働しても絶対に赤字となるため動かせないのです。こんな状態で、新規の投資が進まないのは当然です。

稼働する石炭化学発電所。昨年9月ゲルゼンキルヒェン

4月1日に、BDEW(Bundesverband der Energie- und Wasserwirtschaft = エネルギーと水経済のドイツ連合)が、現在、建設予定の2万キロワット以上の発電施設のリストを公表しました。それによれば、進行中のプロジェクトは60以上あります。すべて、将来の電力の安定供給のためのものです。

その中で、実際に建設中のものが10ヵ所。そのうち4つが天然ガスで計57万2000kW、5ヵ所がウィンドパークで計152万8000kW、残りが、なんと、石炭火力発電所で105万2000kWもあります。石炭による発電を2038年に止めると決めたのは最近のこととはいえ、これはどうなるのでしょうか。

一方、まだ建設に取り掛かっていないプロジェクトはというと、ガス火力の19ヵ所が計画中で、8ヵ所が許可申請中、3ヵ所が認可済み。ウィンドパークは、認可済みが17プロジェクト。バイオマスは2プロジェクトが計画中。揚水発電プロジェクトは、計画中が1つで、申請中が2つ。そして、石炭とバイオマスと水素のコンビ型発電所が1カ所、申請中となっています。

しかし、BDEWのCEOシュテファン・カプフェラー氏によれば、「ドイツの市場は目下のところ、必要な発電所を建設するための条件を満たしていない」。送電線建設も、電力の安定供給も、電力系統を支えるための運営資金も、すべてがドイツのエネルギー政策の不手際の下で滞ったままなのです。

そして、「ドイツはそれを知りながら、何の対策を施すことなく、遅くとも2023年にやってくる安定供給の崩壊に向かって歩んでいる」そうです。

結局、国民が負担を強いられる

しかし、現実問題として、EUのCO2規制はどんどん厳しくなります。2018年12月のポーランドのCOP(気候変動会議)において、EUは2030年までに、1990年比でCO2を40%削減という意欲的な目標を掲げました。

ドイツは2020年までのCO2削減目標は、すでに達成できないことがわかっているのですが、この2030年の目標は絶対に守れると見栄を切っています。しかし、それが達成できるかどうかは、まさにCO2の排出の少ない発電所を十分な数、新設できるかどうかにかかっています。そうでなくては、カプフェラー氏のいう通り、安定供給が崩壊し、産業が大打撃を受けます。

BDEWの試算では、石炭火力を2030年に本当に止めるなら、その時点で再エネの発電量を全体の65%まで引き上げる必要があります。

再エネの中で頼りになるのは、太陽光ではなく、ドイツ北部、あるいはバルト海、北海などの洋上風力なので、それを南の工業地帯に運んでくる送電線も早急に建設しなければならないはずです。ところが、現在、主要な超高圧送電線は、各地で巻き起こっている住民の反対運動で、そのルートさえ定まっていない状況です。

ドイツ北海での風力発電

しかも、それと並行して、風の吹かない時や、太陽の吹かない時にすぐに立ち上げられる「お天気任せではない発電所」、つまり、ガス火力発電所の増設も必要です。

ただ、ガス火力は最終的に、お天気任せの再エネのバックアップという立場であり続けることから、待機時間が多く、儲からないです。そこで建設の費用にも、その後の待機費にも、莫大な補助金が注ぎ込まれることになるでしょう。それらは税金ではなく、すべて電気代に乗せられている「再エネ賦課金」で賄われることになるのです。

結局、国民は、再エネにもガスにも多額の負担を強いられることになるのです。

ちなみに「再エネ賦課金」は、日本の電気代にもきちんと乗せられています。再エネの買取費用もここから出ているので、将来、再エネ施設が増えれば増えるほど、「再エネ賦課金」も増えていくことになります。電力系統は、日照時間の多い日はすでに満杯になっています。ドイツの話は、対岸の火事ではありません。

かつて緑の党は、エネルギー転換による電気代の増加は、国民にとって月にアイスクリーム1個分の負担でしかないといいましたが、今やドイツの電気代は天井知らずで、EU国で1番高くなってしまいました。しかも、まだまだ上がる予定です。

ドイツ国民の間では、「脱原発」決定当時の感動はすでに雲散霧消しています。これからさらに真実が明らかになるにつれ、なぜ、あのような話を丸ごと信じてしまったのかと、夢から覚める国民はますます増えるでしょう。

欧米・アジアの大半が「原発推進」という現実と、2022年までの「脱原発」を決めたドイツが大混乱している現実を考え合わせると、脱原発などと大声で絶対善であかのように単純に主張するのはいかがなものなのかと思ってしまいます。脱原発はそのように軽々しく論じることができるものではないです。

人間は常にプラス=ベネフィット(利益)とマイナス=リスク(危険性)を考えあわせながら、現実的な判断をしてきました。原子力をやるリスクとやらないリスクがありますが、国家、社会レベルで考えたとき、ある程度のリスクがあっても、それを相殺するだけのプラスがあると思われるときには、それを実行する理性的な判断力が求められるのです。

私自身は、当面まともな代替エネルギーが出現するまでは、原発を維持するのが日本の進むべき道だと思います。それまでは、完璧な脱原発などとんでもありません。

怖いから、嫌いだから、ということだけで原発ゼロにしてしまったら、日本はどうなるでしょうか。信頼できる安定的な電気が失われると、日本は沈没してしまいます。そのようなことは、事故があるからといって、日本では自動車を使わないことにしてしまえば、どうなるかを考えあわせるとすぐにわかると思います。

ちなみに、日本国内で、事故を起こさないために、自動車の運用をすべて停止したとしたら、どうなることでしょう。日本が自動車の運用をやめても、他国はそのようなことは絶対にしません。

そうなれば、いくら通信インフラが整っていたとしても、それに物流が追いつかず我々は、江戸時代のような生活を強いられることになります。とても、まともに経済発展などできません。それだけならまだしも、現在助かるような疾病でも多くの人々が亡くなることになります。

明治維新になってはじめて、政府が日本人の平均寿命の統計をとったときの日本人の平均寿命は何歳だったかご存知ですか?実は、38歳だつたのです。新生児の死亡率の高さも平均寿命の短さに寄与していますが、それにしても信じられないような短さです。脱原発をしてしまえば、このようなことも起こり得るのです。

東日本大震災の、事故後、原発の安全性はどこまで向上したでしょうか。 世界で最も厳しい新規制基準を作ったのが、極めて高い独立性と権限を持つ原子力規制委員会と原子力規制庁です。津波防護壁の設置と建屋の防水化、電源車や可搬式ポンプ・移動式ポンプ車などの配備、過酷事故への備えも万全です。福島事故の再来があっても、必ず防ぐことができます。

その上で、現在のような不安定な再生エネルーギーではなく、新たなエネルギー源がでてくる時期を待つべきです。こんなことを言うと楽天的といわれるかもしれませんが、100年前の都市の最大の環境問題は何だったか皆さんご存知ですか?

100年前というと、一部の都市などでは、大気汚染などもで初めていましたが、最大の環境問題は馬糞の処理でした。なにせ、馬が最大の交通機関であった時代です。この問題など、もう随分前から、すべての都市で解消されています。

100年後には、原発など過去の遺物になっているかもしれません。ただし、100年後そうであるからといって、現状で単純に脱原発を推進するというのは無責任というものだと思います。

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2018年7月19日木曜日

なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのか F-35を買わないドイツと、気前よく買う日本の違い―【私の論評】国防を蔑ろにする「ぶったるみドイツ」に活を入れているトランプ大統領(゚д゚)!

なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのか
F-35を買わないドイツと、気前よく買う日本の違い

NATO首脳会議開始前の編隊飛行を見上げるNATO加盟国首脳

 トランプ大統領はNATO(北大西洋条約機構)加盟諸国(とりわけドイツやフランスなどEUを牽引する西ヨーロッパ諸国)に対して国防費増額を執拗に要求している。先週のNATO総会でも「NATO諸国が国防費の目標最低値として設定しているGDP比2%はアメリカの半分であり、アメリカ並みに4%に引き上げるべきである」と主張した。

 特にドイツへの姿勢は厳しい。ドイツはNATO加盟国の中でも経済力も技術力もともに高く、実際にアメリカの一般の人々も「メルセデスやBMWのような各種高級機械をアメリカに輸出している先進国」と認識している。そんなドイツの国防費がGDP比1%にすぎないことに対して、トランプ大統領は極めて強い不満を露骨に表明した。

 一方、日本に対する姿勢は異なる。日本はNATO加盟国ではないものの、ドイツ同様に経済力も技術力も高く、アメリカの一般の人々も「自動車や電子機器などをアメリカに輸出している先進国」と認識しており、やはりドイツ同様に第2次世界大戦敗戦国である。このようにドイツと日本は共通点が多いが、これまでのところ(トランプ政権が発足してから1年半経過した段階では)、日本に対しては、「日本の国防費はGDPのたった1%と異常に低い。少なくとも2%、そして日本周辺の軍事的脅威に目を向けるならば常識的にはアメリカ並みの4%程度に引き上げなければ、日米同盟の継続を見直さねばなるまい」といった脅しは避けてきている。

 なぜドイツに対しては強硬に国防費の倍増どころか4倍増を迫り、日本に対しては(これまでのところ)そのような強硬姿勢を示さないのであろうか?

 その原因の1つ(あくまで、多くの要因のうちの1つにすぎないが)として考えられるのが、大統領選挙期間中以来トランプ大統領が関心を持ち続けてきているステルス戦闘機「F-35」の調達問題である。

F-35への関心が高いトランプ大統領

 トランプ大統領は2016年の大統領選挙期間中から、将来アメリカ各軍(空軍、海軍、海兵隊)の主力戦闘機となるF-35の調達価格が高すぎるとロッキード・マーチン社を非難していた。2017年に政権が発足した後は、さらに強い圧力をかけ始めたため、結局、F-35の価格は大幅に値引きされることとなった。

 F-35最大のユーザーとなるアメリカ軍は、合わせて2500機近く(空軍1763機、海兵隊420機、海軍260機)を調達する予定である。トランプ大統領がその調達価格を値下げさせたことにより、国防費を実質的に増額させたことになったわけである。

 このほかにも、トランプ大統領はこれまで数度行われた安倍首相との首脳会談後の記者会見などで、必ずといってよいほど「日本がF-35を購入する」ということを述べている。

 米朝首脳会談直前のワシントンDCでの日米首脳会談後の共同記者会見においても、「日本は(アメリカから)莫大な金額にのぼる、軍用ジェット(すなわちF-35のこと)やボーイングの旅客機、それに様々な農産物など、あらゆる種類のさらなる製品を購入する、と先ほど(首脳会談の席上で)安倍首相が述べた」とトランプ大統領は強調していた。

 要するに、F-35という戦闘機はトランプ大統領にとって大きな関心事の1つなのだ。

F-35の共同開発参加国が機体を調達

 F-35統合打撃戦闘機は、アメリカのロッキード・マーチン社が開発し、アメリカのノースロップ・グラマン社とイギリスのBAE社が主たる製造パートナーとしてロッキード・マーチン社とともに製造している。

 F-35のシステム開発実証段階では、アメリカ政府が幅広く国際パートナーの参画を呼びかけたため、イギリス、イタリア、オランダ、オーストラリア、カナダ、デンマーク、ノルウェイ、トルコが参加した。後に、イスラエルとシンガポールもシステム開発実証に参画したため、F-35は11カ国共同開発の体裁をとって、生み出されたことになる。

 パートナーとして開発に参加した国々は、それぞれ巨額の開発費を分担することになるため、当然のことながらF-35を調達することが大前提となる。要するに、共同開発として多数の同盟国を巻き込むことにより、アメリカ軍以外の販売先も確保する狙いがあったわけである。

 開発参加国は、分担金の額や、調達する予定のF-35の機数などによって、4段階に分類された。最高レベルの「レベル1」パートナーはイギリスであり、F-35Bを138機調達することになっている。

(F-35には3つのバリエーションがあるため、正式にはF-35統合打撃戦闘機と呼称されている。3つのバリエーションとは、主としてアメリカ空軍の要求に基づいて開発された地上航空基地発着用のF-35A、アメリカ海兵隊の要求に基づいて短距離垂直離発着能力を持ち強襲揚陸艦での運用が可能なF-35B、アメリカ海軍の要求に基づき設計された航空母艦での発着が前提となるF-35Cである。このほかにもカナダ軍用にはCF-35、イスラエル軍用にはF-35Iが製造される予定となっているが、基本的にはA型、B型、C型ということになる。)

「レベル2」パートナーはイタリアとオランダであり、それぞれ90機(F-35Aを60機、F35Bを30機)85機調達することになっていた。その後、オランダは調達数を37機へと大きく削減した。

「レベル3」パートナーは、オーストラリア(F-35Aを72機)、カナダ(F-35AベースのCF-35を65機、F-35の大量調達に疑義を呈していたトルドー政権が発足したため、選挙公約どおりにF-35の調達はキャンセルされ、現在再検討中である。)、デンマーク(F-35Aを27機)、ノルウェイ(F-35Aを52機)、トルコ(F-35Aを100機)である。遅れてシステム開発に参加したイスラエル(F-35AベースのF-35Iを50機)とシンガポール(調達内容検討中)は「SCPパートナー」と呼ばれている。

F-35を買わないドイツ、気前よく買う日本

 以上のように、現時点でパートナーである同盟諸国は合わせて600機前後のF-35ステルス戦闘機を購入する予定になっている。

 しかしながらNATOとEUのリーダー的存在であるドイツもフランスも、ともにF-35を購入する予定はない。ドイツ空軍ではF-35に関心を示したことがあったが、F-35推進派の空軍首脳は更迭されてしまった。

 このようにF-35ステルス戦闘機を購入する予定がないドイツに対して、トランプ政権は強烈に国防費増額を迫っている(65機が予定されているF-35の購入をキャンセルしたカナダのトルドー首相とも、トランプ大統領は対立を深めている。)

 一方、NATO加盟国ではないもののやはりアメリカの同盟国である日本は、ドイツ同様にF-35の開発には協力しなかった。しかし、ドイツのメルケル政権と異なり、安倍政権はF-35の購入に積極的であり、すでに42機のF-35Aの調達が決定し、すでに引き渡しも開始されている。F-35開発パートナー諸国以外でF-35の購入、すなわち純然たる輸入を決定した国は日本と韓国(F-35Aを40機調達予定)だけである。

 そして、日本は調達する42機のうち最初の4機を除く38機は日本国内で組み立てる方式を採用した(ただ組み立てるだけであるが)。その組み立て工場(三菱重工業小牧南工場)は、今後世界各国で運用が開始されるF-35戦闘機の国際整備拠点となることが、アメリカ国防総省によって決定されている。

 上記のように「安倍総理が日米首脳会談の席上でF-35の追加購入を口にした」とトランプ大統領が述べているということは、すでに調達が開始されている42機のF-35Aに加えて、かなりの数に上るF-35を調達する約束をしたものとトランプ大統領は理解しているに違いない。首脳会談で一国の首相が述べた事柄は、一般的に公約とみなされる。さらに米軍内では、日本国内で流布している海兵隊使用のF-35Bを調達する可能性も噂として広まっており、アメリカ側では期待している。

 日本はドイツと違って、トランプ大統領が関心を持っているアメリカにとっての主力輸出商品の1つであるF-35を気前よく購入している。したがって、安倍政権がトランプ大統領に対してF-35を積極的に調達する姿勢をアピールしている限りは、トランプ政権も「日本に対して国防費を4倍増しなければ日本防衛から手を退く」といった脅しはかけてこないだろうとも考えられるのだ。

【私の論評】国防を蔑ろにする「ぶったるみドイツ」に活を入れているトランプ大統領(゚д゚)!

なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのかその原因の1つ(あくまで、多くの要因のうちの1つにすぎないが)として考えられるのが、大統領選挙期間中以来トランプ大統領が関心を持ち続けてきているステルス戦闘機「F-35」の調達問題であり、日本は気前よく購入するがドイツは購入しないからだとしています。

では他には、どのような原因があるのでしょうか。本日はそれについて掲載したいと思います。

まず第一にあげられるのが、ドイツと中国との蜜月関係でしょう。メルケル・ドイツは中国との蜜月関係を持ち、それがお互いに大きな利益をもたらしてきました。10年余りの就任期間でメルケル首相が中国を訪問したのは実に9回です。

ドイツと中国との距離を考えると異常な回数です。ちなみにメルケル首相の日本訪問はわずかに3回です。しかもそのうち2回は洞爺湖サミットと伊勢志摩サミットのサミット参加で、残りの1回はエルマウ・サミットに向けた事前調整のためというから、サミット絡みだけといって良いです。メルケル首相の親中のスタンスは明らかです。

ドイツと中国の貿易は拡大し、ドイツ経済の成長の柱となりました。中国は生産拠点としても、大市場としても魅力のある国でした。経済の発展が素晴らしい時には様々な不平等的な問題も隠されてきました。

ドイツと中国は密接なパートナーとして活動し、中国はEU、つまりヨーロッパへの参入権を得た形になりました。しかし、中国経済の成長が鈍ると、問題が噴出してきました。

中国との貿易が停滞しながらも、ドイツ企業は撤退しようにも撤退できにくい状況に置かれています。しかし、中国の企業はドイツの優良企業を買収していきました。中国家電大手の美的集団は、ドイツの産業用ロボット大手クーカを買収しました。

中国との貿易は好調な時には問題が隠されますが、不調になると問題が噴出してきました。中国との貿易拡大で成長してきたメルケル・ドイツは方向転換を迫られています。


そうして、メルケル首相が出した結論は、結局中国寄りのものでした。ドイツのメルケル首相と同国を訪問した中国の李克強首相が9日、会談を開き、200億ユーロ(235億1000万ドル)規模の取引で合意しました。両首脳は米国との貿易戦争が本格化する中、多国間の貿易秩序に関与していく姿勢を強調しました。

これは、11日のブリュッセルでのNATO首脳会談の直前のことです。米国が、対中国貿易戦争をはじめたばかりのこの時期に、ドイツがこのようなことをしたわけですから、トランプ大統領としては、ドイツに対して恨み節の一つも言いたくなるのは、当然といえば当然です。

今回中国側との契約に合意したドイツ企業は、総合エンジニアリングのシーメンス(SIEGn.DE)、自動車のフォルクスワーゲン(VOWG_p.DE)、化学のBASF(BASFn.DE)などです。

メルケル氏は李克強氏との共同会見で、両国が世界貿易機関(WTO)の規則に基づくシステム維持を求めているとし、「すべての国がそのルールに従えば、さまざまな国がウィン・ウィンの状況となるのが多国間の相互に依存するシステムだ」と述べました。 

李氏は、保護主義に立ち向かう必要性を強調し、自国が一段と発展するために安定的で平和的な枠組みが必要で、自由貿易でのみ実現可能と説明。「一国主義に反対する」と述べました。 

ドイツのショルツ財務相は、中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁と、ドイツの銀行に中国金融部門への市場アクセスを速やかに認めることで一致しました。経済紙ハンデルスブラットが、関係筋の話として伝えました。
 
同紙によると、中国政府は、同国内でドイツ企業・団体が近く人民元建て債券を発行できるようになるとも表明したといいます。
 
欧州連合(EU)と中国は今月16、17日に北京で首脳会議を開催しました。メルケル氏は首脳会議について、投資の保護のほか、世界的な貿易紛争の拡大防止につながるよう求めると述べました。

メルケル氏は、中国について「実にタフで非常に野心を持った競争相手」と指摘しました。
李氏は、中国が海外からの投資にさらなる門戸を開くと表明。保険や債券市場を海外投資家に開放する用意があるとし、ドイツ企業が中国で事業を行うに当たり自社技術を失うと懸念する必要がないよう、知的財産権の保護を保証するとしました。 メルケル氏は、中国金融市場の開放を歓迎しましたが、一段の取り組みも求めました。

しかし、現状はG7は中国の横暴に対して、結束すべき状況にあります。それについては、以前のこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国の横暴に甘い対応しかとらなかった日米欧 G7は保護主義中国に対して結束せよ―【私の論評】最大の顧客を怒らせてしまった中国は、その報いを受けることに!虚勢を張れるのもいまのうちだけ?
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の元記事から一部を引用します。
 今月8日から2日間、カナダで先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)が開かれる。鉄鋼・アルミなどの輸入制限を発動した米国に対して欧州が強く反発し、トランプ米大統領が孤立する情勢だが、仲間割れする場合ではない。 
 正論は麻生太郎財務相の発言だ。麻生氏は先に開かれたG7財務相会議後の会見で、中国を名指しに「ルールを無視していろいろやっている」と批判、G7は協調して中国に対し国際ルールを守るよう促す必要があると指摘した上で、世界貿易機関(WTO)に違反するような米輸入制限はG7の団結を損ない、ルールを軽視する中国に有利に働くと説明した。
G7財務相・中央銀行総裁会議の閉幕後、記者会見する
麻生財務相(左)と日銀黒田総裁=2日

 WTOについて自由貿易ルールの総本山と期待するのはかなり無理がある。麻生氏に限らず、経済産業省も外務省もWTO重視で、世耕弘成経済産業相も、米鉄鋼輸入制限をめぐるWTOへの提訴について「あらゆる可能性に備えて事務的作業を進めている」と述べているが、WTOに訴えると自由貿易体制が守られるとは甘すぎる。 
 グラフは、WTOの貿易紛争処理パネルに提訴された国・地域別件数である。圧倒的に多いのは米国で、中国は米国の3分の1以下に過ぎない。提訴がルール違反容疑の目安とすれば、米国が「保護貿易国」であり、中国は「自由貿易国」だという、とんでもないレッテルが貼られかねない。事実、習近平国家主席はスイスの国際経済フォーラム(ダボス会議)や20カ国・地域(G20)首脳会議などの国際会議で臆面もなく自由貿易の旗手のごとく振る舞っている。


 実際には中国は「自由貿易ルール違反のデパート」である。知的財産権侵害は商品や商標の海賊版、不法コピーからハイテクの盗用まで数えればきりがない。おまけに、中国に進出する外国企業には技術移転を強要し、ハイテク製品の機密をこじ開ける。共産党が支配する政府組織、金融機関総ぐるみでWTOで禁じている補助金を国有企業などに配分し、半導体、情報技術(IT)などを開発する。 
 習政権が2049年までに「世界の製造大国」としての地位を築くことを目標に掲げている「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」は半導体などへの巨額の補助金プログラムだらけだ。 
 一連の中国の横暴に対し、日米欧はとにかく甘い対応しかとらなかった。理由は、中国市場でのシェア欲しさによる。「中国製造2025」にしても、中国による半導体の国産化プロジェクトは巨大な半導体製造設備需要が生じると期待し、商機をつかもうと対中協力する西側企業が多い。 
 ハイテク覇権をめざす習政権の野望を強く警戒するトランプ政権の強硬策は中国の脅威にさらされる日本にとっても大いに意味がある。G7サミットでは、日米が足並みをそろえて、欧州を説得し対中国で結束を図るべきだ。米国と対立して、保護主義中国に漁夫の利を提供するのはばかげている。(産経新聞特別記者・田村秀男)
中国の現在の体制では、そもそも民主化、政治と経済の分離、法治国家が十分なされておらず、これらがある程度整備されている日米やドイツをはじめとする先進国との間で、貿易をすると仮に中国にはそのつもりがなかったにしても、構造的に自由貿易にはなりません。

中国は、必ず「自由貿易ルール違反のデパート」にならざるをえないです。であれは、中国も、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を推進すればよいのですが、それを推進すれば、中国の一党独裁もとより、最近の習近平の独裁政権は成り立たなくなってしまいます。

それは、ドイツとても同じです。いくら、李克強が口約束をしても、中国はドイツに対しても「自由貿易ルール違反のデパート」にならざるを得ません。中国との関係を維持すれば、ドイツも国益を失います。

こうした中国に対して、米国としては、対中国戦略として、貿易戦争を発動したのです。そうして、この貿易戦争は、中国が現体制をある程度変更してまで、度民主化、政治と経済の分離、法治国家化を推進するか、現体制のままかなり弱体化するかのいずれかが達成できるまで継続されることでしょう。

7月6日、米中貿易戦争が開戦しました。中国内外の多くのメディアが「開戦」の文字を使いました。つまり、これはもはや貿易摩擦とか不均衡是正といったレベルのものではなく、どちらかが勝って、どちらかが負けるまでの決着をつける「戦争」という認識です。

この戦いは、たとえば中国が貿易黒字をこれだけ減らせば終わり、だとか、米大統領選中間選挙までといった期限付きのものではなく、中国が貿易戦争に屈しなければ、米国は次の段階に進み、厳しい金融制裁を課すことになり、どちらかが音を上げるまで長引くでしょう。

この貿易戦争がどういう決着にいたるかによっては、独裁者習近平が率いる中国の特色ある現代社会主義強国なる戦後世界秩序とは全く異なる世界が世界の半分を支配する世の中になるかもしれないですし、世界最大の社会主義国家の終焉の引き金になるかもしれないです。

まさに、米国を頂点とする、日本やEUも含めた戦後の秩序を維持できるか、それとも半分を中国に乗っ取られるかを決める争いであり、軍事力は伴わないものの、世界大戦に匹敵する大戦なのです。だからこそ、トランプ大統領は米国の国防予算を拡大したのです。


オバマ政権で削られた国防予算をトランプ大統領は拡大した

それをドイツが理解しておらず、NATOの首脳もあまり理解していないようです。だかこそ、トランプ大統領は、NATO(北大西洋条約機構)加盟諸国(とりわけドイツやフランスなどEUを牽引する西ヨーロッパ諸国)に対して国防費増額を執拗に要求しているのです。

彼らに対して、現状は彼らが考えているような甘い状況ではなく、世界の半分が中国という闇に覆われるかどうかの天下分け目の大戦に突入したことを理解されるために、あのような発言をしたのです。

その中でもドイツに対して、F-35への関心が高いトランプ大統領がさらに苛立つ実態があります。

何と、ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の主力戦闘機「ユーロ・ファイター」のほぼ全機に“深刻な問題”が発生し、戦闘任務に投入できない事態となっています。現地メディアによれば全128機のうち戦闘行動が可能なのはわずか4機とも。原因は絶望的な予算不足にあり、独メルケル政権は防衛費の増額を約束したのですが、その有効性は疑問視されるばかりです。

ドイツは“緊縮予算”を続けており、その煽りを受けてドイツの防衛費不足は切迫しています。空軍だけではなくドイツ陸軍においても244輌あるレオパルト2戦車のうち、戦闘行動可能なのは95輌などといった実態も報告されています。

こうした状況に追い込まれた原因の一つとして、ドイツを含む欧州連合(EU)には、財政赤字が対GDP比で3%、債務残高が対GDPで60%を超えないこととする「マーストリヒト基準」があり、財政健全化を重視しすぎるとの声が経済専門家の間にはあります。

ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の主力戦闘機「ユーロ・ファイター」

一方、ショルツ財務相は、昨年の総選挙で第2党となった中道左派のドイツ社会民主党(SPD)の臨時党首を務めるなど、選挙後の大連立において存在感を示してきたましたが、そもそもSPDは総選挙で戦後最低の得票率となり、野党に転じる予定でした。財務相という重要ポストをSPDが得たのも、大連立をなんとしてもまとめたいメルケル氏率いるCDU・CSUの譲歩と見られています。

自国どころかユーロ圏全域に緊縮財政を突きつけてきたメルケル首相と、じり貧の中道左派の財務相による予算編成に国防予算「2%」はハードルが高すぎたのかもしれません。19年度予算を本格的に議論するのは7月で、国防省はそれまでに防衛費の“改善”を求めていくとしています。

一方日本は、いくら自衛隊の予算が低いといわれつつも、これほど酷い状態にはありません。もともと、日本の経済の規模はドイツより大きいですから、GDP1%であっても、ドイツよりはまともな国防予算なのでしょう。

それに、若干ながら、最近は防衛費を上げています。自衛隊の航空機の稼働率は、米軍よりも高い状態にあります。日本としては、低予算ながら、何とか工夫して、最新鋭の潜水艦を配備したり、準空母ともいえる護衛艦を配備したりしています。

日本の防衛関係費の推移

さらに、日本の安倍政権は、中国に対抗するため「インド太平洋戦略」と称して東南アジア諸国連合(ASEAN)や台湾などと経済、安全保障、外交の3つの分野で関係を強化しています。そもそも、安倍総理は安倍政権成立直前にはやくも、「安全保障のダイヤモンド」という対中国封じ込め戦略を発表しています。これは、米国のドラゴンスレイヤー達も高く評価しています。

いくら中国から地理的に離れているとはいえ、ドイツも含まれる戦後秩序を崩し世界の半分を支配しようとする中国に経済的に接近するとともに、緊縮財政で戦闘機の運用もままならないという、独立国家の根幹の安全保障を蔑ろにするドイツは、まさにぶったるみ状態にあります。ドイツの長い歴史の中でも、これほど国防が蔑ろにされた時期はなかったでしょう。

このような状況のドイツにトランプ大統領は活をいれているのです。ドイツにはこのぶったるみ状態からはやく目覚めてほしいものです。そうでないと、中国に良いように利用されるだけです。

そうして、ドイツを含めたEUも、保護主義中国に対して結束すべき時であることを強く認識すべきです。

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