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2019年4月30日火曜日

「脱原発」は世界の流れに逆行する―【私の論評】「脱原発の先進国ドイツを見習え」という考えの大間違い(゚д゚)!

「脱原発」は世界の流れに逆行する

メディアが報じない欧米・アジアの大半が「原発推進」という現実

フランス中部のサン・ローラン・ヌーアンにある、サンローラン・デ・ゾー原子力発電所
  (2015年4月20日撮影、資料写真)

2018年9月12日の日本経済新聞電子版は「世界の原発発電、30年に10%以上減少 IAEA報告」という見出しの記事を報じた。

 この見出しだけを見ると、IAEA(国際原子力機関)でさえ「脱原発」を予測しており、まさに脱原発は世界の流れなのだ、と多くの読者は思い込んでしまうだろう。

メディアリテラシーとはメデイアを安易に信用しないこと

 だが、記事本文を読むと、前段で「17年に392ギガワットだった発電容量は、最も低く見積もった場合で30年に352ギガワットまで減少すると予測」と書いているものの、後段では「最も大きく見積もった場合、原子力発電の発電容量は30年に511ギガワットに拡大するとみている」と書いている。

 要するに、IAEAの予測は、「30年までに、最低だと10%以上減少、最高だと30%以上増加」なのである。

 記事本文の全体ではバランスは取れているようだが、見出しには読者を脱原発へと誘導する恣意性を感じる。多くのマスコミ報道にはそうした傾向がある。

 バイアスのかかったマスコミ報道に踊らされないためには、個人が「メディアリテラシー」を高める必要がある。筆者は今年3月、東京・八重洲ブックセンターで開かれた西澤真理子氏の出版講演会を聴きに行ってきた。リスクコミュニケ―ションの専門コンサルタントである西澤氏は、福島第一原発(1F)事故後の2011年9月から福島県の浜通りに入り、現地で放射能に関する様々な誤解の除去に努めた人物だ。

「メディアリテラシーとはメデイアを安易に信用しないことである」

 西澤氏は講演会で歯切れよくこう語った。「メデイアリテラシー」とは、一般的には「メディアが報じる情報を主体的に読み解き、理解する能力」とされるが、さらに踏み込んで「メディアを安易に信用するな」というのである。

 というのも、「日本人はメディアに接すると、なんと7割の人が信じてしまう。ドイツは4割、米国は2割しか信じない」(西澤氏)という日本人固有の性向があるからだろう。偏向報道であっても、メディアでいったん報じられれば、それをそのまま信用しやすい性向が私たち日本人にはある。

 確かに、フィンランドの原子力施設をほんのちょっと見学してきただけで、「まだ原発を進めていかなきゃいかんという勢力がいて、これに任せてはならない」と叫び始めた小泉純一郎元首相の思い付きの言説が報じられると、その後の世論調査で約6割が原発反対(=潜在的な原発ゼロ支持)といったレポートが出てくるのが日本だ。これもその性向のせいなのかもしれない。

 原子力との付き合い方を考える上でも、まずは事実を正確に把握することは何よりも大切だ。以下では、小泉元首相も誤解ないし曲解している「脱原発は世界の流れ」であるはずの海外諸国の現況を紹介しておきたい。これらは、国内メディアで報じられることがほとんどない。

脱原発は世界の流れではない

 現在も原発を利用しており、将来的にも利用しようとしている国は、米国・フランス・中国・ロシア・インド・カナダ・英国など19カ国ある。

 現在は原発を利用していないが、将来は利用しようという国は、イスラエル・インドネシア・エジプト・サウジアラビア・タイ・トルコ・ポーランド・ヨルダン・UAEなど14カ国に上る。

 そして、現在は原発を利用しようとしているが、将来は利用を止めようとしている国は、韓国(2080年閉鎖見込み)、ドイツ(2022年閉鎖予定)、ベルギー(2025年閉鎖予定)、台湾(2025年閉鎖予定)、スイス(閉鎖時期未定)の4カ国・1地域。韓国の駐日大使館員は、米朝首脳会談の行方を勝手に楽観視しているのか、ロシアの天然ガスを北朝鮮経由パイプラインの敷設を通じて韓国に導入する予定だと公言している。

 さらに現在も将来も原発を利用しない国はイタリア(1990年閉鎖済み)、オーストリア、オーストラリアの3カ国。

 この他に、スタンスを明らかにしていない国が多数ある。

 下記に掲載した資料を見れば、原発ゼロの国や、原発ゼロを目指している国がいかに少ないか、よく分かるだろう。脱原発は「世界の流れ」にはなっていないのだ。


原発輸出に熱心なロシア

 少し長くなるが、主な諸外国の実情に触れておきたい。これは筆者が駐日の各国外交官・大使館員から聴取した話などをまとめたものだ。

<米国>
 米国のエネルギー自給率は約9割(2017年)。コスト合理性あるシェールガスや石炭を保有する一方で、原子力や再エネも進めている。トランプ大統領自身の原子力に対する関心の度合いは不明だが、側近である安全保障の専門家たち原子力推進の牽引役を担っているのは間違いない。

 近年、新型原子炉である小型モジュール原子炉(SMR)に注力し始めている。現行の大型原子炉は、1基当たりのコストが高く、建設期間が6~7年と長いので資金調達面でリスクがあるからだ。

 GE日立が進める小型モジュール炉「BWRX」(30万kW)については、低コストを理由として英国が関心を寄せている。

 また、NRCは「NEXIP」(Nuclear Energy × Innovation Promotion)と称して、次世代の原子力技術開発の検討を進めている。ビル・ゲイツ氏が出資する原子力企業テラパワー社も前向きで、日本にも秋波を送っているようだ。

<ロシア>
 ロシアは、ロシア型加圧水型原子炉「VVER」(110万kW級)を携えた「原発輸出ビジネス」を展開している。その技術水準は相当高く、国際的な評価も高い。フィンランド・オルキルオト原発4号機に係る受注を受けたという情報もある。

 ロシアは、原発を導入した当初から、核燃料サイクルの完結と高速炉の開発を積極的に進めてきており、世界的にも突出して高い技術を有している。現在、BN-600(60万kW)とBN-800(88万kW)の2基の高速炉が稼働実績を重ねてきており、大型商用炉BN-1200(120万kW)の建設も計画されている。

<中国>
 中国では18年に、AP1000(三門1号)とEPR(台山1号)の最新2タイプの原発が竣工しており、国産第3世代炉である華龍1号が建設中である。中国は、今や原子力技術も先進的であり、日本としても学ぶべき国となっている。中国国務院は、原発に関して、2020年の運転中設備容量を5800万kW、建設中設備容量を3000万kW以上とする目標を掲げている。

 フランス・オラノ社が、フランス国内のラ・アーグ再処理工場とメロックスMOX燃料加工工場をモデルとして、年間処理能力800トンという再処理・リサイクル工場を中国に建設するプロジェクトを進めている。このように、中国は核燃料サイクルにも本腰を入れ始めている一方で、天然ガスを豪州やカタールから輸入し、今後は米国からも輸入していく予定であるなど、エネルギー多様化にも注力している。

<インド>
 インドでは22基の原発(大半が国産の22万kWの小型重水炉PHWR)が稼働しているが、電源比率は3%程度に過ぎない。そして、慢性的な電力不足を補うために、大規模な原発拡大を計画中で、2024年までに発電能力を3倍に増やすとしている。しかしその実現はかなり厳しいと言える。

 現時点では新たに7基が建設中。内訳は国産の重水炉4基(カルクラパー原発、ラジャスタン原発に各2基。1基当たり70万kW以上)、ロシア製の軽水炉VVERをクダンクラム原発に2基(1基は完成済み)、国産の高速増殖炉原型炉をカルパッカム原発に1基となっている。

 それでも計画の達成には程遠いのだが、原発による発電比率が低いのは、インドが原子力供給国グループ(NSG)に加盟できていないことが大きな原因になっている。NSGとは、核兵器開発への技術転用が可能な原子力関連資機材の流通規制を目的とする国際的枠組みで、現在48カ国が加盟しているが、インドは含まれていない。そのためインドは、長らく原発に関する資材や機材の輸入が出来ない状況にあったが、2008年になってNSGのガイドラインが修正され、インドに対する関連品目の供給がようやく認められるようになったという経緯がある。

 そのため原発拡大計画を目指すインドに対して、ロシア、フランス、米国は大型軽水炉の建設を目論んでいる。今年3月には、米国からインドに向けて原発6基を輸出することで合意したと、両国政府が発表している。

原子力技術が空洞化した英国

<英国>
 英国は、北海油田の枯渇を見据えて、エネルギーの安全確保・安定供給・コスト低減による経済成長・低炭素を目指している。以前、石炭の電源比率は20%を占めていたが、今は7%にまで低減、将来的に全廃する予定になっている。原発は、2030年までに既設プラントは全て閉鎖するが、その代替として新設プラントにより電源比率30%を確保していく方針だ。

 こうした努力もあって2050年までにCO2などの温室効果ガス(GHG)を80%削減するための法律が制定されているが、すでに37%削減を達成している。電力業界では温室効果ガスの62%削減を推進し、輸送部門でEV(電気自動車)化を進める方針だ。「クリーン成長戦略」を掲げて、低炭素産業での雇用を拡大し、再エネのコスト低減も進めている。エネルギー関係の投資の半分は、安定供給・低コスト・低炭素に資する原子力に振り向けるという。

 英国はかつて原子力技術先進国だったが、長きにわたって原発新設を行ってこなかった結果、国内の原子力技術が空洞化してしまった。新設するヒンクリーポイントC原発は、フランスEDF(電力公社)によって進められることになったが、工事は順調に進んでいるようだ。

 現在、原発は15基が稼働し、電源比率は2割強。原発新設だけでなく、廃炉や放射性廃棄物・バックエンド対策も年20億ポンドを投じて進めている。特に、セラフィールドではクリーンアップ(汚染除去)に取り組んでおり、地層処分も進めている。

 日立製作所が取り組んでいたホライズン社の原発計画は延期になったが、中国がアプローチを始めているとの情報がある。また、英国のロールスロイスが小型モジュール原子炉(SMR)に関心を寄せており、小型炉で英国の原発技術の再興を目指している。カナダもSMRには前向きである。

<フランス>
 フランスは資源小国であり、エネルギー輸入量を減らすために原発を積極的に利用している。原発比率は7割に上っており、周辺諸国に原発電気の輸出も行っている。それでも、エネルギー自給率は50~55%程度というのが現状だ。

 原発は安価かつ安定な電源で、安全保障水準の向上や低炭素化にも資する。EU(欧州連合)内ではもちろんのこと、世界的にも電力コスト負担は最も低い国の一つである。特に、再エネを推進する隣国ドイツと比べても、それは一目瞭然だ。

 フランスでは、使用済み核燃料は、放射性廃棄物ではなく、「再利用率95%のリサイクル資源」と考えられている。日本と同様に、使用済み核燃料をMOX燃料に転換して利用する方向で進んでいる。

 フランス国内の原発は、19カ所・58基が稼働している。最新のものは第四世代の欧州加圧水型炉(EPR)で、フラマンビル3号(156万kW)として建設中だ。

 原発の運営主体には、EDF(電力公社)、日本からの投資も受けているオラノ社やフラマトム社、CEA(原子力庁)、ASN(原子力安全機関)、IRSN(放射線防護原子力安全研究所)、ANDRA(放射性廃棄物管理機関)などがある。福島第一原発事故後の対応として、32の追加安全基準を導入し、避難基準も新設した。

 直近の電源構成は、原子力7割、水力1割、再エネ1割、化石燃料1割となっており、今後さらに低炭素化を進めようとしている。原発に関しては投資額の大きさがネックになっているが、再エネはコストが低下しつつある。石炭・石油は今後数十年でゼロ化する予定だ。

 2025年までに原発比率50%・再エネ比率30~40%とする方針を2015年に宣言したが、2018年11月になって原発比率50%とする目標年を2025年から2035年に後ろ倒しした。原発比率が低下するのは古い原発を閉鎖するからで、新設も行うので全体の設備容量は変わらない見通し。

 フランス国内世論は、原発を受け入れることを極めて重要視している。原発の地元住民への情報公開を目的としたCLI(地方情報委員会)というものがある。様々な社会の構成員で組織され、対話や討論を促す。フランス国民は原発推進を評価しており、その便益・利益も広く理解を得られている。

2022年までの「脱原発」を決めたドイツだが・・・

<ドイツ>
 ドイツでは、再生可能エネルギーの導入を進めてきた。だが、不安定な再エネ(風力・太陽光)を補完する電源として火力発電の稼働が必要であるため、温室効果ガス排出量がなかなか減少しない。またドイツ北部に大量に導入された風力発電施設から、電力大消費地であるドイツ南部を結ぶ送電線の整備が、住民の反対があって捗っていないという問題に直面も直面している。

 2020年までに温室効果ガスを40%削減し、CO2フリー電源を50%にする計画だが、2050年までに温室効果ガスを80%削減するのは困難な見通しだ。また現在の電源構成で再エネ14%、原子力12%となっているところを、2022年までに「脱原発」を実現する予定。

ドイツ南部オブリハイムで、廃炉作業が進められる原子力発電所、2014年7月1日

 ただ、この突然の政治的決定により、電子力発電を行ってきたエネルギー会社は莫大な経済的損失を被ることになる。その損失に対する補償の規定を整備しようとしてはいるが、実際にそれが実現するか予断を許さない状況になっている。脱原発に大きく舵を切り注目を集めたドイツだが、実現の見通しはかなり険しくなっていると言えるだろう。

<東欧4カ国(チェコ・スロバキア・ポーランド・ハンガリー)>
 この4カ国は、どの原子炉が最適か、どのような資金調達方法が適切かについて、IEAに検討を依頼するなど、原発導入に向けて取り組んでいる。

 こうした動きの背景には、この4カ国がロシアの天然ガス依存に危機感を強めている一方、CO2排出量増大に繋がる石炭火力を削減するようEUから圧力を受けているという事情がある。ポーランドは、高温ガス炉についても関心を寄せている。

世界の大半は「脱原発」ではなく「原発推進」

<サウジアラビア>
 サウジアラビアでは、8基の原発新設が予定されている。米国・中国・ロシア・フランス・韓国の5カ国が受注を目指している。米国はウェスチングハウス社の受注を目指しているが、「カショギ事件」の影響がどう出るか。ロシアの原発輸出も相当進展している模様。

<アセアン>
 フィリピンでは、ロシアの原発新設が進んでいる。インドネシア・タイ・カンボジアでは、中国が原発ビジネスを進めている。

――ここまで見てきたように、世界の大半の国々は「脱原発」どころか、「原発推進」だ。上記の国々の中で唯一、脱原発に取り組んでいるドイツもかなり混乱している。

 そうした中で日本の姿は、福島第一原発の事故以来、原発についてまるで「思考停止状態」に陥っているかのように見える。

 世界の潮流に逆行しながら、未来のエネルギー戦略を正しく描けるのだろうか。次回は日本の現状と、今後取るべき方策について詳しく述べてみたい。

【私の論評】「脱原発の先進国ドイツを見習え」という考えの大間違い(゚д゚)!

冒頭の記事では、「脱原発に取り組んでいるドイツもかなり混乱」としていますが、ではどのような混乱ぶりなのか、より詳細に以下に掲載します。

『FOCUS』誌の最新号によると、INSA研究所が3月19日と20日に行ったアンケート調査の結果、回答者の44.6%が、原発の稼働年数延長に賛成を表明したといいいます。一方、3分の1の人は反対。22%が「わからない」だそうです。

あれほど自分たちの脱原発計画を礼賛していたドイツ人が、今になって「稼働延長」だの、「わからない」だのと言っているとすれば、ひどい様変わりです。

ドイツは、福島第1の原発事故の後、2022年ですべての原発を停止すると決めました。多くの日本人が手放しで賞賛したメルケル首相の「脱原発」政策です。脱原発政策自体はシュレーダー前首相の時からありましたが、それをメルケル首相が急激に早めました。

さらに彼らは今、空気を汚す褐炭による火力発電もやめ、その上、2038年には石炭火力まで全部廃止するという急進的な計画に向かって突き進んでいます。

ドイツは石炭をベースとして成り立ってきた産業国なので、石炭と褐炭の火力発電がなくなれば、炭田、発電所、そして、その関連事業の林立する地域で膨大な失業者が発生して、ドイツ全体を不景気の奈落に落とすことは目に見えています。だから、石炭・褐炭火力の廃止を決めたは良いのですが、いったい、それをどうやって実行するかは検討中のままで、なかなか結論が出ません。

その上、さらに困るのは、原発と石炭・褐炭火力のすべてが無くなれば、電力の安全供給が崩れることです。原発を止めると決めた段階でさえ、すでにそれを警告していた人や機関は多くあったにもかかわらず、主要メディアはその警告を無視し続けました。その代わりに、「自然エネルギーでドイツの電気は100%大丈夫!」という緑の党や、一部の学者や、環境保護団体の主張ばかりが報道されてきたのです。

しかし、いくら何でも、2022年というリミットが近づいてくると、そんな夢物語ばかりでは済ませられなくなってきました。

いうまでもなく、太陽光や風力といった再エネ電気は天候に左右されるので、供給が不安定です。再エネ派は、「余った電気を蓄電しておけば問題なし」というが、採算の面でも、技術の面でも、まだ、それができないから困っているのです。

大々的な蓄電方法が完成しない限り、石炭と風力以外にたいした資源を持たない産業大国ドイツが、再エネだけで電気需要を賄えないことは、少し考えれば中学生でもわかります。いくら送電線が繋がっているとはいえ、産業国の動脈である電気を、他国からの輸入に依存するわけにはいかないです。

つまり、原発と石炭・褐炭火力が本当になくなれば、頼りになるのはガスしかなく、その重要性は、将来ますます高まるわけですが、建設が遅々として進まないのです。なぜかというと、ガス火力発電所を建設しても、今の状態では、これまた採算が合わないからです。揚水発電所も同じです。

採算の合わない理由は要するに、再エネが増えすぎたせいです。再エネで発電した電気は、法律により、優先的に電力系統に入ることになっているので、太陽が照り、風が順調に吹くと、系統が満杯となります。系統が満杯になると、大停電の危険が高まるので、火力など他の発電施設が発電を絞って調整しなければならないのです。

それでも電気が余れば、捨て値で外国に流します。それを緑の党などは、「ドイツが再エネ電気の輸出国になった」と喧伝していますが、赤字分は国民の電気代に乗せられています。要するに、ドイツの電力供給の現実は、時々刻々と変化する需要に合わせて計画的に発電することが叶わず、火力の発電量も、結局、お天気任せという状態なのです。

しかも、再エネ電気の氾濫で、電気の市場値段は恒常的に押し下げられていますし、当然、火力発電の総量は減っています。だから、とくに、原価の高い天然ガスは、稼働しても絶対に赤字となるため動かせないのです。こんな状態で、新規の投資が進まないのは当然です。

稼働する石炭化学発電所。昨年9月ゲルゼンキルヒェン

4月1日に、BDEW(Bundesverband der Energie- und Wasserwirtschaft = エネルギーと水経済のドイツ連合)が、現在、建設予定の2万キロワット以上の発電施設のリストを公表しました。それによれば、進行中のプロジェクトは60以上あります。すべて、将来の電力の安定供給のためのものです。

その中で、実際に建設中のものが10ヵ所。そのうち4つが天然ガスで計57万2000kW、5ヵ所がウィンドパークで計152万8000kW、残りが、なんと、石炭火力発電所で105万2000kWもあります。石炭による発電を2038年に止めると決めたのは最近のこととはいえ、これはどうなるのでしょうか。

一方、まだ建設に取り掛かっていないプロジェクトはというと、ガス火力の19ヵ所が計画中で、8ヵ所が許可申請中、3ヵ所が認可済み。ウィンドパークは、認可済みが17プロジェクト。バイオマスは2プロジェクトが計画中。揚水発電プロジェクトは、計画中が1つで、申請中が2つ。そして、石炭とバイオマスと水素のコンビ型発電所が1カ所、申請中となっています。

しかし、BDEWのCEOシュテファン・カプフェラー氏によれば、「ドイツの市場は目下のところ、必要な発電所を建設するための条件を満たしていない」。送電線建設も、電力の安定供給も、電力系統を支えるための運営資金も、すべてがドイツのエネルギー政策の不手際の下で滞ったままなのです。

そして、「ドイツはそれを知りながら、何の対策を施すことなく、遅くとも2023年にやってくる安定供給の崩壊に向かって歩んでいる」そうです。

結局、国民が負担を強いられる

しかし、現実問題として、EUのCO2規制はどんどん厳しくなります。2018年12月のポーランドのCOP(気候変動会議)において、EUは2030年までに、1990年比でCO2を40%削減という意欲的な目標を掲げました。

ドイツは2020年までのCO2削減目標は、すでに達成できないことがわかっているのですが、この2030年の目標は絶対に守れると見栄を切っています。しかし、それが達成できるかどうかは、まさにCO2の排出の少ない発電所を十分な数、新設できるかどうかにかかっています。そうでなくては、カプフェラー氏のいう通り、安定供給が崩壊し、産業が大打撃を受けます。

BDEWの試算では、石炭火力を2030年に本当に止めるなら、その時点で再エネの発電量を全体の65%まで引き上げる必要があります。

再エネの中で頼りになるのは、太陽光ではなく、ドイツ北部、あるいはバルト海、北海などの洋上風力なので、それを南の工業地帯に運んでくる送電線も早急に建設しなければならないはずです。ところが、現在、主要な超高圧送電線は、各地で巻き起こっている住民の反対運動で、そのルートさえ定まっていない状況です。

ドイツ北海での風力発電

しかも、それと並行して、風の吹かない時や、太陽の吹かない時にすぐに立ち上げられる「お天気任せではない発電所」、つまり、ガス火力発電所の増設も必要です。

ただ、ガス火力は最終的に、お天気任せの再エネのバックアップという立場であり続けることから、待機時間が多く、儲からないです。そこで建設の費用にも、その後の待機費にも、莫大な補助金が注ぎ込まれることになるでしょう。それらは税金ではなく、すべて電気代に乗せられている「再エネ賦課金」で賄われることになるのです。

結局、国民は、再エネにもガスにも多額の負担を強いられることになるのです。

ちなみに「再エネ賦課金」は、日本の電気代にもきちんと乗せられています。再エネの買取費用もここから出ているので、将来、再エネ施設が増えれば増えるほど、「再エネ賦課金」も増えていくことになります。電力系統は、日照時間の多い日はすでに満杯になっています。ドイツの話は、対岸の火事ではありません。

かつて緑の党は、エネルギー転換による電気代の増加は、国民にとって月にアイスクリーム1個分の負担でしかないといいましたが、今やドイツの電気代は天井知らずで、EU国で1番高くなってしまいました。しかも、まだまだ上がる予定です。

ドイツ国民の間では、「脱原発」決定当時の感動はすでに雲散霧消しています。これからさらに真実が明らかになるにつれ、なぜ、あのような話を丸ごと信じてしまったのかと、夢から覚める国民はますます増えるでしょう。

欧米・アジアの大半が「原発推進」という現実と、2022年までの「脱原発」を決めたドイツが大混乱している現実を考え合わせると、脱原発などと大声で絶対善であかのように単純に主張するのはいかがなものなのかと思ってしまいます。脱原発はそのように軽々しく論じることができるものではないです。

人間は常にプラス=ベネフィット(利益)とマイナス=リスク(危険性)を考えあわせながら、現実的な判断をしてきました。原子力をやるリスクとやらないリスクがありますが、国家、社会レベルで考えたとき、ある程度のリスクがあっても、それを相殺するだけのプラスがあると思われるときには、それを実行する理性的な判断力が求められるのです。

私自身は、当面まともな代替エネルギーが出現するまでは、原発を維持するのが日本の進むべき道だと思います。それまでは、完璧な脱原発などとんでもありません。

怖いから、嫌いだから、ということだけで原発ゼロにしてしまったら、日本はどうなるでしょうか。信頼できる安定的な電気が失われると、日本は沈没してしまいます。そのようなことは、事故があるからといって、日本では自動車を使わないことにしてしまえば、どうなるかを考えあわせるとすぐにわかると思います。

ちなみに、日本国内で、事故を起こさないために、自動車の運用をすべて停止したとしたら、どうなることでしょう。日本が自動車の運用をやめても、他国はそのようなことは絶対にしません。

そうなれば、いくら通信インフラが整っていたとしても、それに物流が追いつかず我々は、江戸時代のような生活を強いられることになります。とても、まともに経済発展などできません。それだけならまだしも、現在助かるような疾病でも多くの人々が亡くなることになります。

明治維新になってはじめて、政府が日本人の平均寿命の統計をとったときの日本人の平均寿命は何歳だったかご存知ですか?実は、38歳だつたのです。新生児の死亡率の高さも平均寿命の短さに寄与していますが、それにしても信じられないような短さです。脱原発をしてしまえば、このようなことも起こり得るのです。

東日本大震災の、事故後、原発の安全性はどこまで向上したでしょうか。 世界で最も厳しい新規制基準を作ったのが、極めて高い独立性と権限を持つ原子力規制委員会と原子力規制庁です。津波防護壁の設置と建屋の防水化、電源車や可搬式ポンプ・移動式ポンプ車などの配備、過酷事故への備えも万全です。福島事故の再来があっても、必ず防ぐことができます。

その上で、現在のような不安定な再生エネルーギーではなく、新たなエネルギー源がでてくる時期を待つべきです。こんなことを言うと楽天的といわれるかもしれませんが、100年前の都市の最大の環境問題は何だったか皆さんご存知ですか?

100年前というと、一部の都市などでは、大気汚染などもで初めていましたが、最大の環境問題は馬糞の処理でした。なにせ、馬が最大の交通機関であった時代です。この問題など、もう随分前から、すべての都市で解消されています。

100年後には、原発など過去の遺物になっているかもしれません。ただし、100年後そうであるからといって、現状で単純に脱原発を推進するというのは無責任というものだと思います。

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2013年7月22日月曜日

山本太郎の当選は「終わりの始まり」か?―【私の論評】山本太郎は、確かに「終わりの始まり」だが、脱原発を目指すにしてもしなくても金融緩和は必須、増税は大敵!!この事実を見誤った政党が凋落した!


山本太郎

7月21日に投開票された第23回参議院選挙は、最も「参院選らしからぬ」選挙だったのではないか。

参議院を「良識の府」と呼んだのが誰なのかは定かではないらしい。しかし、言わんとしたかったことはよく分かる。参議院議員の任期は6年と長い。衆議院と違って解散もない。それゆえ政局に左右されず国政の場に留まれる。そんな参議院だからこそ党利党略から距離を取り、ポピュリズムに流されることなく、より長期的、巨視的な立場で国政に関われる。公共的な政策論争は参議院でこそ可能であると言えるかもしれない。

しかし今回の参院選はそうした参議院らしさからあまりにも掛け離れていた。主に争点になったのは経済政策であったが、アベノミクスと呼ばれる現与党政権の経済政策について、自民党がその成果を誇り、野党はそれに対する不信感を述べるだけに終始した印象がある。つまり長期的、巨視的な立場からの政策論争は不在であった。参議院選だからこそ今後の原発政策や憲法改正のように、この国の未来に関わる問題が争点になるべきだったのだが、それは叶わなかった。

そう書くと、確かに大勢はそうだったが、例外もあっただろうという意見も出るかもしれない。確かに東京選挙区では脱原発を訴えた山本太郎候補が議席を獲得し、話題となった。しかし山本は本当に「例外的」だったのだろうか。筆者は選挙戦が始まった初期の時点でこう書いた。「アベノミクスの景気対策の是非こそ争点になるが、原発なしに生き残ることができなかった地方の「貧しさ」の来歴を戦後日本の「豊かさ」と対照させて省みる動きは今のところ見られていない」(『原発が参院選の争点にならない理由』)。地方格差の問題が折り重なって事態を複雑化させているのが日本の原発問題のひとつの特徴だが、一貫して脱原発を主張して選挙を戦った山本太郎にこの種の複雑性に向き合い、解決しようとする姿勢は見られなかった。

山本にとって脱原発とは被曝リスクをゼロにするために必要なものと位置づけられている。その立場は同じように311の原発事故後にわかに被曝リスクゼロを強く願うようになった都市圏の脱原発指向と共振・共鳴し、投票行動を促した。低線量被曝による晩発性障害の発生が完全に否定できないと聞いて、できるだけ被曝を避けたいと願う心情を持つに至るプロセスは十分に理解できる。だが、そうした心情をそのまま現実の投票行動に結びつけられるのは、原発立地から遠く離れた都市圏の特権であることもまた事実だろう。過疎化に苛まれる原発立地地元では電源三法交付金や原発関係の雇用なしには立ち行かない構図が既に固定的になっており、被曝リスクどころか原発事故のリスクまでをも、それらが現実の被害に転じないことを祈りつつ、引き受けることなしに生き残る道が用意されない。

前回の衆院選に続いて今回も福島を含め、数多くの原発立地地元で自民が圧勝した。殆ど争点にならなかったが、自民党が再稼働を進め、311以前の原発状況に時計の針を戻そうとしていることを立地地元住民が知らずに投票したわけではない。自民を勝たせるしか選択肢がなかった立地地元の現実を踏まえ、彼らにそうではない選択が可能となる状況を提供することを目指さなければ、山本の脱原発論は被爆の不安に駆られて情緒的に盛り上がった都市部の脱原発運動の中でしか通用しない独りよがりのものに留まる。そして今回の彼の当選は全国的な脱原発への第一歩になるどころか、むしろその独善性が明らかになって都市部の脱原発運動自体が自壊してゆく「終わりの始まり」となろう。

繰り返しになるが、もし本当に脱原発を望むのであれば、原発なしに生き残ることができなかった地方の「貧しさ」の来歴を省み、その抜本的な解決を図る姿勢が必要だ。そのためには長期的、巨視的な視点に立った論議や丁寧な政治的調整の作業が求められ、それはまさに良識の府としての参議院で繰り広げられるのがふさわしいものだ。もしも今後の日本の未来に希望があるとすれば、山本太郎を含めて最も参議院らしからぬ選挙で国政入りした議員たちが、参議院本来の役割を取り戻すべく活動できるかにかかっているのかもしれない。

【私の論評】山本太郎は、確かに「終わりの始まり」だが、脱原発を目指すにしてもしなくても金融緩和は必須、増税は大敵!!この事実を見誤った政党が凋落した!

上の記事、山本太郎に対する見方としては、妥当だと思います。しかし、アベノミクスに対する見方は少し皮相であると感じました。

私は、脱原発を目指すにしても、原発をある程度使用し続けるにしても、アベノミクス、その中でも現在実施している金融緩和は必須だと思います。また、アベノミクス第二の矢である積極財政も必須だと思います。デフレから脱却できない状況下における緊縮財政の一環でもある、増税には大反対です。

そもそもデフレを退治しなければ、何もできない(゚д゚)!

上の記事を書いておられる方、まずは金融緩和、財政出動をして日本の経済を上向かせない限り、ほとんど何らの夢もみられないし、遠大な計画もたてられないし、長期的、巨視的視点にも全くたてないことを見過ごされていると思います。

私は、ここ最近、デフレを前提としてものごとを考えることの間違いを事あるごとにこのブログに掲載してきました。

それらの記事のいくつかを以下に掲載します。
日の丸家電、大復活! ソニー、パナ、シャープ軒並み増益―【私の論評】ちょっと待ってくれ!!20年もデフレが続いたことを忘れていないかい?デフレは家電メーカーの大敵であることを!!
大企業100社の内部留保99兆円に! “異次元の給与増額”は可能か―【私の論評】ちょっと待ってくれ!!20年もデフレが続いたことを忘れていないかい?デフレは、雇用・給与の最大の敵であることを!! 
かつての世代が持っていた向上心と自信を失った日本の若者=中国―【私の論評】ちょっと待ってくれ!!20年もデフレが続いたことを忘れていないかい?デフレは若者の向上心と自信の大敵であることらを!! 
従来の説はほとんどウソだった。日本でベンチャー企業が発達しない本当の理由。―【私の論評】ちょっと待ってくれ!!20年もデフレが続いたことを忘れていないかい?デフレは、ベンチャーの最大の敵であることを!! 
若者の雇用を奪うのは一体誰なのか?−【私の論評】根本原因は、デフレであってこれを解消しなければ何も解決されない!! 
若者雇用戦略のウソ―【私の論評】雇用と中央銀行の金融政策の間には密接な関係があることを知らない日本人?! 
大企業100社の内部留保99兆円に! “異次元の給与増額”は可能か―【私の論評】ちょっと待ってくれ!!20年もデフレが続いたことを忘れていないかい?デフレは、雇用・給与の最大の敵であることを!! 
厚労相「年金に大変な運用益」 アベノミクス効果―【私の論評】デフレを前提としてものごとを考えることはもうやめにしませんか?!!もうルールが変わっていますよ!!インフレルールで動かなければ、おいてきぼり喰いますよ!!
以上、このブログの過去の記事から、選んで7つほどデフレの影響について掲載されているものを再掲しました。企業業績から、雇用、賃金、ベンチャー企業の発展、年金問題、若者の向上心まで、デフレは私たちの生活にかなりの悪影響を及ぼしてきました。

そうして極めつけは、下の記事のように、日本経済が誰も否定しようもない、デフレに98年に入ってから、それまで自殺者が二万人台だったのに、三万人台に増えました。そうして、昨年15年ぶりに自殺者が二万人台に戻っています。これは、昨年度はあまり顕著ではなかったものの経済が上向いたことに関連性があります。

これに関しては、現岩田日銀副総裁も指摘されていたことです。これについては、以前もこのブログに何回か掲載したことがあります。その一つを以下に掲載します。
<年金>12年度の運用益11兆円超 株高・円安効果で―【私の論評】自殺者が減って、膨大な年金運用益が出ても、アベノミクスを否定する愚かな人々(゚д゚)!

多くの日本人は、デフレにあまりに長い間さらされてきたため、これが異常であるという認識に欠けていたと思います。多くの人々は、自殺までには追い込まれなかったものの、本当はデフレによる不都合が身の回りにもたくさんあるのに、その原因がデフレであることに気が付かなかったという側面は否めないと思います。

典型的なのは、若者雇用です。多くの人は、金融政策と雇用との間に有意な相関関係があることに気づかず、若者雇用に関して、日銀の金融引き締めが大きく関与しているという、日本以外の国では当たり前の事実に気づかず、見当違いの論議を繰り返してきました。

私は、地方の疲弊など、小泉構造改革などのせいにされることもありましたが、その側面を全く否定はしないもののその主原因は、デフレだったと思います。

上の記事で、「原発なしに生き残ることができなかった地方の「貧しさ」の来歴を省み、その抜本的な解決を図る姿勢が必要だ。そのためには長期的、巨視的な視点に立った論議や丁寧な政治的調整の作業が求められ、それはまさに良識の府としての参議院で繰り広げられるのがふさわしいものだ」と言われていますが、地方の「貧しさ」の主原因のうち、地方によって、いろいろ事情があるものの、まずは、デフレにあったということは、否定しようもない事実だと思います。

そうして、現在行なわれている金融緩和は、このデフレを終息させるための、対策でありこの対策がなければ、いくら、長期的・巨視的な視点にたって論議や丁寧な政治的調整の作業をしたとしても、結局何も変えられない、変わらないということに終始すると思います。実際、過去はそうだったわけです。

まずは、何をするにしても、金融緩和をして、経済を上向かせなけれは、何もできず、何もかえられず、結局八方塞がりのもくだ叩きに終わるだけと思います。

無論、デフレを解消したからといって、なにもかも薔薇色になるというわけではありません。しかし、デフレを解消した上で、様々な問題にとりくめば、解決の糸口はつかむことができますが、そうでなければ、糸口も何もないまま八方塞になるだけです。

デフレを解消しないうちに、山本太郎を含めて最も参議院らしからぬ選挙で国政入りした議員たちが、参議院本来の役割を取り戻すべく活動したとしても何も変わらないと思います。

山本太郎は、確かに「終わりの始まり」すぎないのですが、脱原発を目指すにしてもしなくてもあるいは、将来的に目指すにしても、それ以前に金融緩和は必須、増税は大敵だと思います。今回の選挙確かに、争点があまり明確ではなく、盛り上がりに欠けましたが、アベノミクスに75%の有権者が賛成ということで、意外と多くの有権者の方々が、この事実を見抜いてるのだと思います。そうして、この事実を見誤った政党が凋落したのだと思います。

しかし、自民党も安閑とはしておられないです。もし、来年の春に増税したとすれば、金融緩和による景気回復効果は、雲散霧消します。そうして、デフレスパイラルの深みに再度はまることになります。そうなると、上に掲載したように、デフレで様々な不都合が一気に再度噴出します。その結果、次の選挙では、安倍政権というより自民党政権そのものが成立しなくなると思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

【関連記事】

山本太郎の震災瓦礫焼却批判 東大・中川准教授が論拠を一蹴―【私の論評】いまだに山本太郎のようなツイートをする恥知らずで、惻隠の情もないニッポン人が存在することに対して忸怩たる思いがする!!



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2012年8月27日月曜日

脱原発に必須の天然ガス調達で中部電と大ガスがあけた風穴 - Close Up―【私の論評】東電・国グループは、中部電力・大阪ガスグループに太刀打ちできるか?

脱原発に必須の天然ガス調達で中部電と大ガスがあけた風穴 - Close Up:



原子力発電所の停止でフル稼働が続く火力発電所の主燃料となるLNG(液化天然ガス)。そのコストは電気料金の値上げ、電力各社の赤字の原因になっているが、中部電力と大阪ガスがLNGの調達で風穴をあけた。天然ガスの大量産出で、ガス価格が大幅に低下している米国での契約にこぎ着けたのだ。

中部電力
LNGは原子力発電所の停止でフル稼働している火力発電所の主燃料で、その価格は電気料金に直接跳ね返る。では、何がサプライズなのか──。

まず1点目は、天然ガス価格が現状、圧倒的に安い米国から調達するということだ。

大阪ガス本社
米国では近年、従来の天然ガスとは別の地層から産出される「シェールガス」が大量生産され、ガス価格が大幅に低下。これまで天然ガス価格は原油価格に連動するのが一般的だったが、米国だけ全く違う値動きをする「シェールガス革命」が起こっている。

一方、日本は原油価格連動で購入している上に、福島第1原発の事故以降、調達に走り回った結果、売り主に足元を見られて、LNGの高値掴みを余儀なくされた。日本の輸入価格は、米国の天然ガス価格の約6倍にも達し、「ジャパンプレミアム」と呼ばれるほどだ。

中部電力カーリング部
この構造を打ち破るべく動いたのが、中部電と大ガスだった。現在の価格で見ると、米国の天然ガスを輸入すると液化加工や輸送費を含めても通常の輸入価格より4割は安くなる計算。「既存の枠組みでの価格交渉には閉塞感もあり、突破口が欲しかった」と大ガス資源・海外事業部の揚鋼一郎ゼネラルマネジャーは動機を話す。

ただ、こうした動きは特に電力業界では珍しかった。「数年前まで米国のほうが価格は高かった」(電力会社幹部)と過去を振り返るだけで、中部電を除くと動きは皆無。資源エネルギー庁は「そもそも電力業界には1円でも安く調達しようという気合がない。中部電は異端だ」と指摘する。

2点目は、燃料調達の“プロ”である商社を頼らずに、新たな契約を実現したことだ。

国内ではガス権益だけでなく、LNGも商社を通して購入するケースが大半を占める。米国からの調達は三菱商事や三井物産などが交渉を主導している。だが、「商社は価格下落へのエンジンにはならない」(橘川武郎・一橋大学教授)のが実情だ。商社は、高く販売できたほうがよいからだ。関係者の1人は「もちろん商社は今も必要だが、今回は商社がいたら成功しなかっただろう」と指摘する。

3点目は、天然ガスの「生産者」としての権利を手にしたことだ。

これまでの調達契約は、生産基地から一定量のLNGを購入し、日本に運ぶだけというのが一般的だった。だが、今回の契約では米国内の好きな場所で天然ガスを購入した後、生産量を調整して転売などトレーディングの材料として活用することもできる。


今年初め、韓国のガス公社が米国で別の調達契約を決め、日本では「また韓国に先にやられた」との批判が上がったが、中部電燃料部の佐藤裕紀部長は「あの件はただの調達契約。最初から契約の幅が広いフリーポートに狙いを絞っていた」と打ち明ける。

今後は上流のガス田との関係構築やパイプライン輸送を直接手がけることもできる。佐藤部長は「これまで一部のメジャー企業だけがやっていた未知の領域が自分たちでできるようになり、日本にとっての調達のあり方が抜本的に変わる」とその意義を強調する。

最後のサプライズは、電力会社とガス会社が共同で動いたことだ。共同調達は「そう簡単にはできない」と敬遠する声ばかりだったが、条件がそろえば短期間で実現可能なことを、両社は証明した。

「市場を変えていくんだという意気込みのある人と巡り合えた」と成功の秘訣を語る佐藤部長。両社があけた風穴が業界全体に広がれば、今後日本のエネルギー価格は適正に低下していくかもしれない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 森川 潤)

【私の論評】東電・国グループは、中部電力・大阪ガスグループに太刀打ちできるか?

シェール・ガス・オイルに関しては、このブログにも過去に記事としてとりあげたこ とがあります。そうして、そのときには掲載しませんでしたが、当然日本でもこれを活用するところもあるのだろうと、思っていましたが、まさに、それを行ったのが、中部電力と大阪ガスということです。 本日は、中部電力カーリング部の画像とともに掲載させていただきます!!

この柔軟な動き、政府や他の役所よりも役所といわれている、電力会社やガス会社ではできなかったということです。特に東京電力には無理だったようです。

以下に、最近の東電の状況をまとめておきます。

政府は31日、原子力損害賠償支援機構を通じて東京電力に1兆円の公的資金を投入し、50.11%の議決権を取得して実質国有化を完了しました。東電の経営破綻を回避し、福島第1原発事故の賠償や、電力安定供給に支障がないようにすることが目的です。政府はリストラなどで黒字転換させた後、1兆円の公的資本を回収する方針ですが、再建が暗礁に乗り上げた場合、機構が立て替えている1兆円余りの賠償資金すら回収できず、2兆円規模の国民負担が生じる懸念もあります。
東京電力本社
「いずれは純粋な民間企業の形に戻ってもらう」。枝野幸男経済産業相は31日の会見で公的管理は「一時的」と強調。しかし、公的資本の回収は「相当長期にわたる」と述べ、具体的な言及を避けました。

『超整理手帳』でも有名な野口悠紀雄氏
経済学者の野口悠紀雄氏は、戦時経済が確立した「1940年体制」が日本経済を蝕んでいると主張してきましたが、競争を否定する思想が根強い電力業界こそその象徴だとみなしています。これに関して、このブログでも以前掲載したことがあります。

国有化を通じて東電に民間活力を取り戻させるという逆説的な取り組みは、日本経済が市場重視の体質への転換が進むかどうかの試金石になるのでしょうか?
老朽火力更新で改革へ布石
約100ページに及ぶ総合計画の中には今後の電力市場改革の起爆剤になる可能性がある項目が含まれています。原発の再稼働が容易に見込めない中で、東電が安定供給を果たすには火力発電の高効率化に注力する必要があります。ただ、1兆円の公的資本注入を受ける東電には、従来通り電力事業のための高水準の設備投資を続ける資金的な余力はありません。 
このため、総合計画では東電が老朽火力設備を他社に売却したり、設備更新を他企業と共同で取り組み、パートナー企業にその主導権を握らせるプランが盛り込まれました。東京湾岸だけで、更新投資が必要な古い火力設備は1000万キロワット程度と中国電力(9504.T: 株価, ニュース, レポート)全体の発電規模に迫ります。「都市ガス、商社、石油、鉄鋼などがパートナーとして参加することに関心を示してる」(関係者)といいます。 
これらの発電設備が最新鋭の高効率火力に生まれ変わるには7年程度の期間を要しますが、いずれ東電以外の資本に主導権が移り、 新電力(特定規模電気事業者)や卸電力取引所に供給することも想定されます。枝野幸男経済産業相は、総合計画の認定を表明した後の記者会見で、火力関連の項目について、「関東エリアにおける電力事業の改革が、(日本)全体のシステムに先行する行動として大きなインパクトを持つと期待している」と語りました。 
競争と統制の歴史
明治期に始まった日本の電力産業は、時代の変遷とともに大きく姿を変えてきました。大正(1912―1925年)末期には、東京電灯、関西地盤の宇治川電気、東海と九州北部が地盤だった東邦電力など「5大電力」が激しい顧客争奪戦を繰り広げました。
戦時色が深まった1939年(昭和14年)には電力国家管理体制のもと全国の発電から送電まで手掛ける日本発送電が設立され、1942年(同17年)には配電統制令に基づき全国に9配電会社が発足しました。9社の地域ブロックは「現在の電力9社の供給エリアと基本的には変わっていません。戦後から現在に至る電力体制は、戦前に東邦電力を率い、「電力の鬼」といわれた松永安左エ門が再編を主導し、1951年に確立しました。 

競争を否定する思想
戦後の9社体制への再編、70年代以降の国策民営による原子力の推進と、体制や業容を変化させながら、電力業界は民間セクター最大の設備投資の発注者として産業界と地域経済に絶大な影響力を行使してきました。地域独占に加え、事業コストに一定の利益率を加えた総原価に基づく電気料金の設定が許されてきた電力会社の経営は従来、赤字とはほぼ無縁で、市場競争を仕掛けるインセンティブもありませんでした。2000年の電力小売りの一部自由化の導入で電力会社が営業区域を越えて顧客に電気の供給が可能になっても実例はほとんどなく、競争を忌避する体質が染みついていました。 
戦時体制を確立した1940年体制を「市場経済を否定する考えが基本にある」と、長年にわたり問題視してきた野口悠紀雄氏(早稲田大学ファイナンス大学院総合研究所顧問)は、昨年10月、ロイターの取材に対し、「私がずっと言ってきたことだが、東電は1940年体制の権化だ。さらにいうと、経団連と経済産業省。この3つはワンセットで40年体制の権化だ」と語り、メスを入れる必要性を強調しました。 

中部電力の動向が電力改革のカギ握るか
これまでは原発推進で一枚岩だった電力業界ですが、福島第1原発の事故を契機に結束が弱まる可能性もあります。「国策民営の罠 原子力政策に秘められた戦い」(日本経済新聞出版社)を著した竹森俊平・慶応大学経済学部教授は、中部電力(9502.T: 株価, ニュース, レポート)の動向に注目しています。竹森教授はロイターの取材で、「浜岡原発の再開はどうみても無理だ。中部電は原発の依存度も低くて、経営の方向性がはっきりする」と話しました。 
中部電は昨年5月、大規模な東海地震の発生が予測される浜岡原発について、菅直人前首相の停止要請を受け入れました。現在、津波対策の強化工事を行い再稼働を目指しています。ただ、同原発が立地する静岡県の川勝平太知事は、ロイターのアンケート調査(2月下旬から3月上旬実施)に対し「当面、再稼働を認めない」と答えており、ハードルは高そうです。 
原子力発電のスタンスは「電力会社によって違う」(業界関係者)とされています。竹森氏は「原子力発電は事業として市場経済に合わない。国が原子力発電の運営をやるのでないと、東電だけではなく電力事業そのものが成り立たない」と指摘しています。同氏に限らず「原子力の国有化論」を唱える有識者は多いですが、ある政府関係者は「経済産業省も財務省もそこまで責任を取る気はない」とみています。
市川美余(カーリング)・中部電力主将として、日本カーリング選手権連覇
こうした最中にあっての、上記の風穴である、中部電力と大阪ガスグループによる、天然ガスの「生産者」としての権利の取得です。今回東電は、直接原発の大被害を受けさらに、地域に対する賠償もしなければならなてということで、中部電力などとは根本的に異なるところがありますが、このスタンスやはり、政府主導ではなかなか出てこないものと思います。

このブログでも、以前、政府主導で日本再生戦略を実行することなど不可能であることを掲載したことがあります。これに関しては、一見無関係に見える、NASAによる国際宇宙ステーションの無残な経済性追求の失敗についても事例をあげました。

政府や官僚が、経済性を追求するには、かなり無理があると思います。そもそも、自由経済においては、誰が成功を収めるのかなど、その時々では誰にもわからず、様々な民間企業が、その時々でいろいろなことをやっていて、その中で、うまく適応・適合した企業が次の市場を大きく開拓していくというのが普通です。これに関しては、民間企業も難しいというのに、政府や官僚がこれができると思いこむことに関しては、かなり無理があります。

これができるというのであれば、共産主義、社会主義下の計画経済もうまくいったはずです。私自身は、上の二つの事例をみていて、やはり、中部電力、大ガスグルーブのほうは、なんとかうまくいきそうですが、東電、政府の組み合せは、無理だと思います。

国有化することは、ある程度無理もないところもあると思いますが、やはり、東電・大ガスのようにより柔軟な発想も可能にするようにするため、NASAが、米国議会において、経済性追求の任を解かれ、NGOが担当するようになったように、国が直接関与するよりも、有力NGOや、民間企業などもいれて、新たな市場を開拓することと、ユーザーにとっても最も良い体制を模索すべきと思うのは私だけでしょうか?


【関連記事】

成果はわずか!? 国際宇宙ステーションの困難な将来―【私の論評】宇宙でも共産主義はうまくいかない?中国の宇宙開発も結局この二の舞になる!!




2012年8月3日金曜日

デモの参加者にも広がり始めた焦りと無力感「脱原発」意識の二極化現象に覚える違和感の正体 ―【私の論評】生存の危機を身近に感じることのなかったニッポン人!!絶対などということがあり得ないと悟っていた日本人?

デモの参加者にも広がり始めた焦りと無力感「脱原発」意識の二極化現象に覚える違和感の正体


大飯原発の再稼働を機に、「脱原発デモ」が再び盛り上がっている。だがその一方で、世間では「脱原発」への意識が二極化し、一部でトーンダウンの兆しも見える。昨年、生存の危機に晒された日本人の意識が変化している背景には、何があるのか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<中略>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

当然、既存の労働・政治団体には、しっかりした主張を展開している団体も多い。しかし、一般参加者については、「原発について専門的な知識があるわけではない。でも、わからないからこそ怖いし、もっと知りたいと思う」(前出のEさん)という人がほとんどだ。


だからこそ、今のデモが「運動のプロ」ではない幅広い層を集めることに繋がっている一方、素人であるがゆえに政策への反映プロセスがわからず、ジレンマに陥っている側面もある。

繰り返し述べるが、原発問題については様々な意見があり、まだまだ議論を深めなければならない。国民の不満や疑問と正面から向き合うことを政府が避け続けていれば、火に油を注ぐことになりかねないことだけは、理解しておく必要があるだろう。

この詳細はこちらから!!

【私の論評】生存の危機を身近に感じることのなかったニッポン人!!絶対などということがあり得ないと悟っていた日本人?


上の記事、生存の危機に晒された日本人の意識が変化しているということを述べていますが、どのように変化しているのかを述べてはいないと思います。この日本の変化は、いくつもありますが、上の記事の内容は不十分です。不十分であるがゆえに、無力感など十分に説明できないでいます。これだと、以前似たような記事をこのブログに掲載しましたが、そちらのほうが理解しやすいと思います。


ニッポン人の多くは、今回の震災が発生して、原発事故が発生して、はじめて、絶対安全などということは到底あり得ないということを悟ったと思います。震災が起こって間髪を入れず、各地を津波が襲う動画がテレビで多く映しだされました。津波に直接襲われた人は、もとよりそうではない人にもこのことを直感的に悟ったことでしょう。そうして、次の日は、炎に包まれる多くの地方都市が放映されました。


そうして、極めつけは、しばらくたって津波の水がひいた震災地の惨状です。現在の日本人は、ほとんどの人が爆撃の経験はないですが、それにしても、テレビなどでその映像を見たことのある人は大勢いることでしょう。そうです、多くの被災地がまるで爆撃を受けたかのように、建物などが、跡形もなく消え去っていました。


それから、少ししてから、あの原発事故です。原発の建屋が吹き飛んだり、原発を冷やすための放水作業などが映され、しばらくは考える暇がないほど、次々といろいろなことがありました。


そうして、まもなく、原発反対運動が盛り上がりを見せるようになりました。そうして、私自身はといえば、この時点では、情報が少ないことや、いわゆる理論武装のようなものもしようがなかったのですが、最初から原発全廃、原発反対という考えは頭をよぎりもしませんでした。ただし、すぐに全廃ということはなくても、時間が随分かかったとしても、危険な原発はいずれ廃止したほうが良いとか、そこまでいかなくとも、減らしたほうが良いとは思いました。


なぜなら、すぐに全廃などすれば、日本の社会の隅々まで入り込んで、いわゆるユビキタスの代表のようにいわれている、電気が、なくなれば、経済が停滞するし、それに社会が混乱することは目にみえていたからです。だから、全廃など叫んでデモをする人々を目にしたときは、なんて愚かなことをするのだろうと思いました。


それから、いろいろ、考えてみましたが、結局自分も原発の電気を使っていて、いわゆる安全神話は、心底信じてはいなかったものの、やはり、そんなに危険はないだろうと考えていたことに思いが至りました。そうして、安全神話を流布した、自民党政権や、民主党政権に対する怒りの感情が目覚めました。そうして、現在進行形で、原発事故への対応の悪さがはっきりしてきた民主党政権や、東電などにも怒りを感じました。そうとはいいながら、東電にばかり、非難の矛先が向かうことに疑問を感じました。


いずれにせよ、原発事故によって、完璧に安全神話が崩れたことは間違いありません。多くの人が、信じていたことが、そうではなかったこと、さらに、原発だけではなく、いくら、日本か戦争などのない安全な国であると思っていても、地震や津波などで、思ってもみないほどの甚大な被害にあい、それによって、多くの人々がなくなるということもあり得るのだということに思いいたったと思います。これは、誰もが認めると思います。


そうして、何事にも、絶対安全とか、確実とか、絶対正しいとか、絶対間違いであるなどということはあり得ないということを意識的か無意識であるか別にして、悟ったものと思います。これほどの惨事に見舞われて、そう悟ることができない人は、右、左とか、上、下などの思想の違いとか、立場を乗り越えてほとんどいないと思います。


そこにきて、反原発運動のうねりです。上の記事とは、裏腹に現実には、最高にデモ参加者が、増えたときでも、おそらく数万人であろうと言われています。この人達というか、少なくとも、このデモを主導する側の人たちは、原発を廃炉にすることが絶対の善である、疑問の余地がないほど何が何でも絶対正しい主張していると思います。とにかく放射能は、怖いし、原発は危険だし、何が何でも反原発は正しいと主張しています。


しかしながら、良く考えてみて下さい。少し前まで、日本は絶対安全、原発は絶対安全という神話を完璧ではないまでも、多くの人達が、かなり信じていたわけです。しかし、それが、現実に脆くも崩れたわけです。


だから、多くの人達が、原発全廃が絶対に正しいなどとは信じられなくなっていると思います。危険だから、危ないからといって、すぐにも廃止してしまえば、それが、絶対善であると単純に信じてしまう人など、意識している意識していないは別にして、潜在意識の中では、絶対ということは信用しなくなっています。


そうして、私は、およそ、いかなる社会現象においても、それが、社会現象である限り、どのようなことも絶対などということはあり得ないと思います。絶対安全、絶対安心などということは、永遠にないと思います。そうして、この平和日本に長く生きて、そのことを半分忘れかけていたことに気づきました。


一番典型的なのは、「家を出るときは、今生の別れ」ということを忘れてしまったということです。こんな当たり前のことを久しく忘れていたように思います。そうして、一度挨拶をしたら、後は、絶対に振返らないということも、。私は、子供の頃からそのように躾けられていましたので、社会人になってからも、それは、実行していました。しかし、最近は、少し曖昧になっていました。震災以来、このことに気付き愕然としたものです。


あの震災の時に、「家を出るときは、今生の別れ」になった人々が大勢いました。そのことを語っていた人が多く実際に、テレビで放映されていました。しかし、これは、震災、津波があろうがなかろうが、真実です。一旦家を出たからには、外で何が起こるかなどは、分かりません。あるいは、家にとどまっている家人にだって何が起こるかなどということはわかりません。だからこそ、普段から、思い残すことがないように、古の人々は、「家をでるときは、今生の別れ」と言ったのです。そうし、別れ際に、思いを残さないように、一歩家を出たら決して振り返らないようにと戒めたのです。


私たちは、好むと好まざるとにかかわらず、日々このような緊張の中で生きているのです。私を含めて、多くの人がその事実を忘れていたか、見ないようにしてきたに過ぎません。だから、政府が正しいとか、間違いとか、原発の安全を司る組織がどうのこうのという前に、原発を推進するにしても、廃止するにしても、この世で何が絶対に正しいのだなどということはあり得ないということです。


だからこそ、原発廃止絶対善などもあり得ないということに多くの人々が気づきつつあるのです。何事においても、絶対善を主張する人間がいたとしても、もう誰も簡単には信じないと思います。最初は、騙されても長い間には、騙されなくなってくると思います。社会現象は、何事も、相対的なのです。原発絶対廃止が絶対善などではあり得ないことは、以前このブログで掲載したことがありますので、それについては、当該ブログをご覧いただくこととして、ここには、詳細を記載しません。


私は、社会事象を考えるときは、いわゆる絶対正しいとか、絶対間違いという呪縛から逃れるべきであり、そこから、新たな良い社会が生まれていくものと確信しています。そう思うのは、私だけでしょうか?皆さんは、どうお考えになりますか?


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デモや集会などの社会運動は本当に脱原発を後押しするか? 開沼 博「“燃料”がなくなったら、今の反原発運動はしぼんでいく」―【私の論評】車社会の是正を考えてみると理解できる脱原発運動の無謀さ!!





2012年7月20日金曜日

デモや集会などの社会運動は本当に脱原発を後押しするか? 開沼 博「“燃料”がなくなったら、今の反原発運動はしぼんでいく」―【私の論評】車社会の是正を考えてみると理解できる脱原発運動の無謀さ!!

デモや集会などの社会運動は本当に脱原発を後押しするか? 開沼 博「“燃料”がなくなったら、今の反原発運動はしぼんでいく」

週プレNEWS 7月19日(木)6時20分配信


デモや集会などの社会運動は本当に脱原発を後押しするか? 開沼 博「“燃料”がなくなったら、今の反原発運動はしぼんでいく」 週プレNEWS 7月19日(木)6時20分配信 昨年3月の東日本大震災よりずっと前、2006年から「原発を通した戦後日本社会論」をテーマとして福島原発周辺地域を研究対象に活動してきた、同県いわき市出身の社会学者・開沼(かいぬま)博氏。著書『「フクシマ」論』では、原発を通して、日・・・・・・・・

この記事の続きはこちらから!!

【私の論評】車社会の是正を考えてみると理解できる脱原発運動の無謀さ!!

製造業などの中小企業を就業されている方や経営者の方々、その他、日本の内需を支える多くの方々、そうなるとうちのようなところも含まれますが、今の脱原発論議どう思われますか?


今は、先がどうの安全性がどうのというより、計画停電の実施や電力料金の値上げに関心がいっているのではないかと思います。日本国内の電力に依存して、商売や事業を営んでいる方々、テレビで繰り広げられる脱原発運動、それも前後のみさかいもなく、すぐに全原発を止めよなどという社会運動に関して本当ににがにがしく思っていらっしゃるのではないでしょうか。


それに、電力が止まるともろに影響をかぶる医療関係者や、生死に影響が出る患者さんなども表には出さなくても、そう思っているに違いありません。それに、農家だって、農林水産業だって、影響を受けます。デモに参加している人だって必ず影響を受けます。今はまだ、目立たず理解されていないでしょうが、いずれ本格的に影響が出てきたときに、これらデモに参加していた人たちも、デモなど外での活動はできるかもしれませんが、職場や家庭でそのようなことを言い出せば、逆に攻撃されるようになると思います。もうすでに、多くの企業の経営者などは反原発を無邪気に唱える連中は、社会のことも、それに、もっと直接的な、会社の存続も考えない愚か者であると考えているに違いありません。


それは、当社だって同じです。当社のような会社だって、配達は自動車ですが、店では電気がないと商売になりません。店舗運営の責任者は、計画停電に神経を尖らせています。こんなときに、従業員が、原発反対と唱え出したら、どういうことになるでしょうか?そういう従業員に愛情を持てるでしょうか?

海外の原発反対運動
最近は、不倫騒動で話題を提供している(そんなこ とはどうでも良いのですが)あの橋下大阪市長だって、このことを十分理解しているからこそ、大飯原発の稼働を渋々ながら結局は認めたのです。もし、橋下市長がこれにどこもでも、反対し続けていて、稼働を認めなかったとしたら、十中八九政治生命を失ったことでしょう。将来的に国会議員くらいにはなれても、それだけでお終いになったことでしょう。政治家は政策立案能力がとか、法案を考える能力は無論のことですが、その時々の政局に関する政治屋としての臭覚が欠かせません。橋下さんは、こうした臭覚を持っているということでは、評価できると思います。

不倫騒動で記者会見する橋下市長
さて、脱原発運動の無謀さ、これとは一見関係のないようにみえる、脱自動車社会など思い浮かべると良く理解できると思います。自動車に関しては二つほどの論点があります。


まず最初の論点は、自動車の直接的な危険です。考えてみれば、自動車がかかわる交通事故は、毎年多くの死傷者がでます。これは、原発による直接間接の被害者をはるかに上回っています。これは、確かに危険です。そうして、事故撲滅などの運動が毎年繰り返されています。しかしながら、車社会は、あまりにも社会に浸透してしまっているため、車自体を否定してしまっては、社会が成り立たないということで、これを主張する社会運動などは聴いたことがありません。あくまで、事故撲滅をうたっています。



そうして、様々な取り組みがなされています。あのGoogleが自動運転する車を開発していることもこのブログで掲載したことがあります。いずれ、このような自動車も実用化され、今の車よりも、はるかに安全な車が走るようになり、より安全な車により、安全性の高い社会が実現されることと思います。

Google無人自動車ロボット
そうして、二つ目の論点は、電気自動車に関する無邪気ともいえる、期待です。電気自動車が、環境に負荷を与えないなどという単純な思い込みです。現在の電気自動車は、ガソリンスタンドのような充電所や、家庭のコンセントから電力を供給します。確かに、電気自動車自体は、電気を補給したあとは、二酸化炭素も、排ガスも放出さずに、一見クリーンなようにみえます。確かに運転している人には、良いかもしれません。


しかし、良く考えてみてください。これは、本当でしょうか?それは、この電力がもともとどこから供給されるのかを考えてみれば誰にでも理解できる話です。そうです。これらの電力は、すべて既存にある発電所から供給されているのです。既存の発電所が変わらない限り、何も変わらないという図式です。既存の発電所がたまたま、火力であったとすれば、電気自動車は化石燃料をつかわず、二酸化炭素も、排ガスも排出しないですが、火力発電所は、電気自動車を走らせるために、二酸化炭素や排ガスを放出することになります。それでは何も変わりはないのです。自分の手元で、排出されないだけであって、自分の目に見えないところで、間違いなく排出されているし、化石燃料が消費されているということです。


であれば、単純に、自然エネルギーで電気自動車に電気を提供するようにすれば良いなどという人もいるかもしれません。しかし、一体電気自動車を動かすためにどの程度の風力発電施設や太陽光発電施設を設置しなければならないことになるのでしょうか?さらに、これらを安定的に供給するために、いくつの蓄電池など設置すれば良いことになるのでしょうか。

ちなみに、すでに太陽光で走るソーラーカーなるものが存在しますが、あれは、実験段階にあるだけで、とても実用性はありません。帆船はあっても、風力自動車なるものは、みたこともありません。であれば、自然エネルギーによる、実用的な電気自動車を安定的に動かすことも机上の空論にすぎないことが理解できると思います。

ソーラーカーレース
いずれにしても、車の事故、排ガスの人体への影響、化石燃料の消費が、社会にとって危険だからといって、車の運用をすぐ廃止しろということにはなりません。それは、車が、あまりにも、社会に根をおろしているため、これをすぐに廃止すれば、社会に及ぼす悪影響は、誰にでも理解できるからです。原発即停止などと声高に主張する人など、ちょうど、電気自動車に乗って、自分はエコしているなどと自惚れているようなものです。社会のことなど何も考えていません。

上の記事では、「燃料”がなくなったら、今の反原発運動はしぼんでいく」としていますが、その通りだと思います。原発推進派であろとなかろうと、すぐに原発廃炉などと唱える輩は、何も考えていたいない、ただの愚か者だと思います。それに、原発反対派が見過ごしていること、このブログでも掲載したことがありますが、たとえば、原油価格の高等による、コストプッシュインフレによる弊害が十分考えられます。原油が値上がりしているので、それが、物価を押しあげるにもかかわらず、不況の状態であるスタグフレーションが考えられます。こうしたことが起これば、企業の海外移転はますます、進みます。そうなれば、日本の国力は弱まり、中国を利することになります。

私たちは社会全体を考えて、50年後のことまでは、技術革新などなかなか予測できない面がありますから、少なくとも今後30年以内のことを時系列て考え、社会全体に及ぼす影響を考慮して、日本国家のエネルギー政策を考えていくべきです。それは、何も、政治家官僚だけではなく、私たち国民も同じことです。私は、そう思います。皆さんはどう思われますか?



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