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2020年7月9日木曜日

財政状況悪化を訴える談話で…隠されていた“不都合な数字” 国債はほぼ日銀が買い取る事実— 【私の論評】財務省を満足させて、顧客を蔑ろにすれば、大企業もマスコミも、いずれ存続不能となる!(◎_◎;)

財政状況悪化を訴える談話で…隠されていた“不都合な数字” 国債はほぼ日銀が買い取る事実
高橋洋一 日本の解き方


日本経団連名誉会長でもある榊原定征氏

    財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会で、榊原定征会長の談話が発表された。今後の財政運営について「悪化した財政から目をそらしてはならない」とするなど、財政再建の必要性を訴えたという。

 一般的にこうした談話は財務省官僚が用意することが多い。財務省官僚が財政制度等審議会会長に意見を振り付け、その審議会が財務相に諮問する形となっているので、結局、審議会が官僚の隠れみのとなり、大臣を誘導することになりがちだ。つまり、会長談話には財務省官僚からの最初の意見が凝縮されているとみていいだろう。

 財務省の見解はいつも同じで、「今の財政状況は悪い」と決めつけている。財政状況を正確に分析するには、ストックとフローからアプローチする。もちろん財政状況という以上、ストックの情報が基本になる。

 政府の財政状況といっても、企業と見方は同じであり、ストックは貸借対照表(バランスシート)、フローは損益計算書である。ただし、企業会計とまったく同じではなく、公会計によるストックのバランスシートとフローの毎年度予算になる。

 会長談話では、ストックとして公債残高964兆円、フローとして基礎的財政収支赤字66・1兆円が挙げられているが、重要な数字を隠している。

 ストックのバランスシートは、企業会計なら本体だけではなく、連結ベースのグループ会社全体のもので考える。政府も同じであり、中央銀行など子会社を含めた「統合政府」ベースだ。本コラムの読者はご存じだろうが、無償還・無利子を除く実質的な資産負債でみれば、日本の統合政府ベースのバランスシートは、純債務がほぼゼロの状態だ。この意味から、負債だけを強調する会長談話は正しくない。

 では、フローの基礎的財政収支赤字はどうか。これも正しい数字とはいえない。今回の補正予算では、政府と日銀の連合軍、つまり5月22日の財務大臣と日銀総裁の共同声明を読めば分かるように、国債発行額はほぼ日銀が買い取る。その場合、国債の償還・利払い負担は実質的にない。どういうことかというと、国債負担は通貨発行益で賄われるのだ。

 しかし、基礎的財政収支の計算上、初年度の国債発行分が赤字としてカウントされる。しかし、高校レベルの数学であるが、翌年度以降の日銀納付金の現在価値を合算すれば通貨発行益となるので、その赤字分は意味がないのだ。

 これでお分かりであろう。会長談話は、あえて不適切な基礎的財政収支赤字の数字を使って、財政状況が悪いと言っているのだ。ここで狡猾(こうかつ)なのは、あくまで会長個人の発言として、責任を逃げていることだ。

 今回の補正予算では、政府と日銀の連合なので、財政状況を悪くしない。それにも関わらず、財政状況が悪化しているという間違った情報を垂れ流しているのは、いかがなものだろうか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財務省を満足させて、顧客を蔑ろにすれば、大企業もマスコミも、いずれ存続不能となる!(◎_◎;)

そもそも、高橋洋一氏は「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした。それどころか日本政府には、借金が無いとしています。

高橋洋一氏が主張する。「借金1000兆円のウソ」です。借金が1000兆円もあるので、増税しないと財政破綻になるという、ほとんどのマスコミが信じている財務省の言い分が正しくないと指摘したのです。

借金1000兆円、国民一人当たりに直すと800万円になる。みなさん、こんな借金を自分の子や孫に背負わせていいのか。借金を返すためには増税が必要だ。このようなセリフは誰でも聞いたことがあるでしょう。財務省が1980年代の頃から、何度も繰り返してきたものだからです。

政府と日銀の連結バランスシートを見ると、資産側は変化なし、負債側は国債減、日銀券(当座預金を含む)増となります。つまり、量的緩和は、政府と日銀を統合政府で見たとき、負債構成の変化であり、有利子の国債から無利子の日銀券への転換ということです。

オンラインで政府のバランスシートを説明する高橋洋一氏

このため、毎年転換分の利子相当の差益が発生する(これをシニョレッジ〔通貨発行益〕といいます。毎年の差益を現在価値で合算すると量的緩和額になります。

また、政府からの日銀への利払いはただちに納付金となるので、政府にとって日銀保有分の国債は債務ではありません。これで、連結ベースの国債額は減少するわけです。

量的緩和が、政府と日銀の連結バランスシートにおける負債構成の変化で、シニョレッジを稼げるメリットがあります。と同時にデメリットもあります。それはシニョレッジを大きくすればするほど、インフレになるということです。そのため、デフレの時にはシニョレッジを増やせるが、インフレの時には限界があります。

その限界を決めるのがインフレ目標です。インフレ目標の範囲内であればデメリットはないですが、超えるとデメリットになります。

幸いなことに、今のところ、デメリットはなく、実質的な国債が減少している状態です。

こう考えてみると、財務省が借金1000兆円と言い、「だから消費増税が必要」と国民に迫るのは、前提が間違っているので暴力的な脅しがありません。実質的に借金は150~200兆円程度、GDP比で30~40%程度でしょう。

ちなみに、米国、英国で、中央銀行と連結したネット国債をGDP比でみてみます。米国で80%、65%、イギリスは80%、60%程度である。これを見ると、日本の財政問題が大変ですぐにでも破綻するという意見の滑稽さがわかるだろう。

その限界を決めるのがインフレ目標である。インフレ目標の範囲内であればデメリットはないが、超えるとデメリットになる。


日銀のインフレ目標は未だ達成されていない

幸いなことに、今のところ、デメリットはなく、実質的な国債が減少している状態だ。

こう考えてみると、財務省が借金1000兆円と言い、「だから消費増税が必要」と国民に迫るのは、前提が間違っているので暴力的な脅しでしかない。実質的に借金は150~200兆円程度、GDP比で30~40%程度だろう。

ちなみに、アメリカ、イギリスで、中央銀行と連結したネット国債をGDP比でみよう。アメリカで80%、65%、英国は80%、60%程度です。これを見ると、日本の財政問題が大変ですぐにでも破綻するという意見の滑稽さがわかるでしょう。

何しろ市中に出回る国債がほとんどないので、「日本の財政が大変なので財政破綻、国債暴落」と言い続けてきた、デタラメな元ディーラー評論家(元というのは使い物にならなかった人たちということ)にはこれから厳しい年月が待ち受けているでしょう。

2016年度の国債発行計画(http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2016/gaiyou151224.pdf)を見ると、総発行額162.2兆円、その内訳は市中消化分152.2兆円、個人向け販売分2兆円、日銀乗換8兆円です。

余談ですが、この日銀乗換は、多くの似非識者と言われている人々が禁じ手としている「日銀引受」です。高橋洋一史は、役人時代、この国債発行計画を担当していたときにもあったそうですが、これは、日銀の保有長期国債の償還分40兆円程度(短国を含めれば80兆円程度)まで引受可能ですが、市中枠が減少するため、民間金融機関が国債を欲しいとして、日銀乗換分を少なめにしているはずです。

要するに、今の国債市場は、国債の品不足なのです。カレンダーベース市中発行額は147兆円ですが、短国25兆円を除くと、122兆円しかありません。ここで、日銀の買いオペは新規80兆円、償還分40兆円なので、合計で120兆円。となると、市中消化分は、最終的にはほぼ日銀が買い尽くすことになります。

民間金融機関は、国債投資から貸付に向かわざるを得なくなります。これは日本経済にとっては望ましいことです。と同時に、市中には実質的に国債が出回らないので、これは財政再建ができたのと同じ効果になります。日銀が国債を保有した場合、その利払いは直ちに政府の納付金となって財政負担なしになります。償還も乗換をすればいいので、償還負担もありません。それが、政府と日銀を連結してみれば、国債はないに等しいという理由なのです。

こういう状態で国債金利はどうなるでしょうか。市中に出回れば瞬間蒸発状態で、国債暴落などあり得ません。なにしろ必ず日銀が買うのですから。

諸外国では減債基金は存在しません。借金するのに、その償還のために基金を設けてさらに借金するのは不合理だからです。なので、先進国では債務償還費は計上しません。この分は、国債発行額を膨らせるだけで無意味となり、償還分は借換債を発行すれば良いからです。

利払費9.9兆円で、その積算金利は1.6%といいます。市中分がほぼなく国債は品不足なのに、そんなに高い金利になるはずがありません。実は、この高い積算金利は、予算の空積(架空計上)であり、年度の後半になると、そんなに金利が高くならないので、不用が出ます。それを補正予算の財源にするのです。

このような空積は過去から行われていましたが、その分、国債発行額を膨らませるので、財政危機を煽りたい財務省にとって好都合なのです。債務償還費と利払費の空積で、国債発行額は15兆円程度過大になっています。

こうしたからくりは、予算資料をもらって、それを記事にするので手一杯のマスコミには決して理解できないかもしれません。

いずれにしても、上の記事で、高橋洋一氏が指摘しているように、政府と日銀を連結したバランスシートというストック面、来年度の国債発行計画から見たフロー面で、ともに日本の財政は、財務省やその走狗になっているマスコミ・学者が言うほどには悪くないことがわかるでしょう。

岡本財務次官

にもかかわらず、マスコミは、日本の財政は大変だ、財政再建が急務、それには増税というワンパターンの報道ばかりします。マスコミは、軽減税率のアメをもらったからといって、財務省のポチになるのはもうやめにしてほしいものです。さらには、財務省は、財界の大物を自分たちの省益を追求するために便利に使うこともやめるべきです。

財界の重鎮たちにも言いたいです。産業界も顧客を第一に考えるべきでしょう。顧客の支えがない限り、いかなる大企業でも一夜にして、存続不能になります。そのようなことになったとしても、財務省は絶対に助けてくれないことをお忘れなく。大事にしなくてはならないのは、財務省ではなく、顧客です。それを忘れることから、大企業の凋落が始まる
のです。

企業の目的は何でしょうか。売上や利益をあげることが企業の第一の目的でしょうか。経営学の大家ドラッカーは企業の目的の定義は一つしかない。それは「顧客を創造すること」だと言います。つまり、顧客の集合体としての市場を創り出すことが企業の目的だと言うのです。

企業にとって大切なのは「顧客第一主義」、つまり企業は「顧客満足」を追求すればよいと多くの人が思っています。しかし、ドラッカーに言わせれば「顧客満足」ではダメなのです。なぜダメなのか。それは社会が生き物だからです。

生き物の特徴は変化することです。そしてその変化の先行きはだれにもわかりません。変化しつづけその変化の先行きのわからない社会において生き残っていくには顧客満足では遅すぎます。企業自らが市場を創造し、未来を創り出していかなければならないのです。ドラッカーは、市場は神や自然や経済の力で生み出されるものではなく、ビジネスに関わる人達が作り出していくものだと言います。

そのことを忘れて、財務省を満足させて、顧客を蔑ろにすれば、大企業とて、いずれ存続不能となります。

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2019年3月11日月曜日

「国民を見捨てない」陛下の覚悟さえも貶めた裏切り者の日本人―【私の論評】天皇大権を蔑ろにする「元号の事前公表」黒幕 は誰か?

「国民を見捨てない」陛下の覚悟さえも貶めた裏切り者の日本人
倉山満

 今年元旦から、皇室史学者を名乗ることとした。わが国の皇室のあり方を自分なりに勉強して、陛下が何をなされてきたのか、そして何をなされようとしているのかを、考えるべきではないかと強く思ったからだ。

 現在の象徴天皇制は、古来の伝統法に文明国の通義に合わせて出来上がった明治の立憲君主制が、敗戦による外国勢力の介入に耐えて出来上がっている。そもそも、わが国の伝統法とは何か。戦前は国体と呼んだ。わが国の国体の根源は、君臣の絆(きずな)である。そして、わが国において天皇が民を見捨てることはなかった。

 天災や飢饉が起きたときでさえ、歴代天皇は己の不徳を天に詫びるのが常だった。かの後醍醐天皇ですら、そうだった。古くは元寇に際し、時の治天の君である亀山上皇は「自分の身はどうなろうとも、国と民を守り給え」と皇室の御先祖である神々に祈られた。

 はっきり言えば、亀山上皇や後醍醐天皇はわが国史において暗君ではあるが、外国の君主に両帝のような態度を示した君主が何人いるか。わが国の暗君も、外国では聖主なのである。

 敗戦に際し、昭和天皇が自らの命を懸け、連合国軍最高司令官のダグラス・マッカーサーを説得したのは近代史の出来事である。1990年、どこぞの国の君主は、自国が外国に占領されたとき、国民を見捨てて真っ先に亡命した。わが国の皇室の歴史は、外国とはまったく違うのである。

 戦前憲法学の泰斗であった、佐々木惣一京都帝国大教授の門下生に語り継がれている教えがある。佐々木先生は、憲法改正無限界説を唱え、「アカ」呼ばわりされた。当時の通説である憲法改正限界説が「いかなる憲法改正であっても、皇室を廃止することは許されない」と主張した。通説であり、政府の有権解釈だった。

 これに対し、佐々木先生は「いくら法律の条文や解釈で縛ろうとも、国民が皇室を廃止しようとした場合、止められるものではない。よって、法学者としては限界説を採ることはできない」と反論した。法律論として、不可能は要求できないとする、法実証主義の立場だ。

 ただし、これには続きがある。もし、国民が皇室を見捨てたときのことだ。佐々木先生は、「その時、日本は日本ではなくなる」とおっしゃられたと聞く。「である」論としての法律論と、「べき」論としての政治論は分けておられたのだ。

昭和天皇とマッカーサー元帥=昭和20年5月

 事態は佐々木先生が想像されたよりも早く訪れた。もちろん敗戦である。天皇は「象徴」とされた。ただ、マッカーサーにとって「象徴」とは決して軽い意味ではなかった。日本国憲法の草案はマッカーサーノートと呼ばれるが、そこには「Symbol=Head of state」と走り書きがなされている。象徴とは国家元首の言い換えなのだ。

だが、これを「ロボット」にしたのは裏切り者の日本人だ。東京大法学部教授の宮澤俊義と、当時の内閣法制局長官、吉國一郎だ。

 宮澤は教科書で「天皇はめくら判を捺すロボット」と断言した(『コンメンタール 全訂日本国憲法』74頁)。吉國は、「天皇の行動があらゆる行動を通じて国政に影響を及ぼすことがあってはならない」と言い切った(昭和50年11月20日参議院内閣委員会答弁)。

 しかし、これらの解釈は世界の立憲君主国の標準、すなわち文明国の通義からかけ離れている。

 世界の憲政の模範はイギリスだ。そのイギリスで「権威書」として憲政運用の解釈書として尊重されている、ウォルター・バジョットの『英国憲政論』は、立憲君主とは独裁者ではないと説く。同時に、単なる傀儡(かいらい、ロボット)でもないとも説く。

 バジョットは、『英国憲政論』(『世界の名著』124頁)で「イギリスのような立憲君主制の下では、君主は三つの権利―諮問に対し意見を述べる権利、奨励する権利、警告する権利―をもっている。そして君主がすぐれた感覚や英知をもっているならば、このほかに必要とするものはなにもない。このような君主は、他に何も持っていないので、この三つの権利を非常に効果的に行使できることを知っている」と述べ、以下延々と君主が国政に対し影響を及ぼす方法について述べている。

 君主が国政に影響力を行使してはならない、などとは言っておらず、逆なのだ。その証拠に日本国憲法第4条第1項を見よ。「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」とある。

 権限(権能)がないとは書いているが、影響力を行使してはならないとは、どこにも書いていない。マッカーサーですら象徴天皇とは国家元首だと理解していたが、日本人自らの手で天皇をロボットに叩き落したのだ。そして、戦後教育においては、皇室と国民の絆を断ち切らんとする教育が行われ続けた。

 さて、このような状況で陛下は平成の三十有余年を天皇としてのお務めを全うされた。国事はもちろん、祭祀にも熱心で、さらに国民との絆を保つ活動を、二度の大病を乗り越えて行ってこられた。

 平成23年3月11日の東日本大震災に際し、社会の指導者たるべき人間たちが、原発事故の放射能が怖くて逃げた。あまつさえ、「陛下も京都へ逃げた」とデマを流しながら。

 だが、事実は違った。3月16日、突如として「ビデオメッセージ」が流れてきた。横文字で何のことか分からないが、要するに玉音放送である。ただただ、国民を励まされるだけだった。激励権の行使である。ただし、国民に向けて語りかけられるという異例の形式だが、現行憲法下でも違憲ではない。

仮設住宅を訪れ、出迎えの人たちに手を振って応えられる
天皇、皇后両陛下=2012年5月、宮城県仙台市

 何も言い訳もしないし、ましてや自分を悪(あ)しざまに罵(のの)しった者どもに言い返しもしない。しかし、「決して国民を見捨てて逃げはしない」と明確に訴えられていた。

 幾多の風雪に耐えた平成の御世が終わりかけている、今思う。国体は健在なり。(文中一部敬称略)

【私の論評】天皇大権を蔑ろにする「元号の事前公表」黒幕 は誰か?

天皇をロボットにしてしまった裏切りもの内閣法制局長官、吉國一郎のことが上の記事に掲載されていました。

内閣法制局が入る中央合同庁舎第4号館

では、内閣法制局とは、どんな官庁なのでしょう。これは、憲法を頂点とする日本国の法体系のすべてに責任を持ちます。当然、憲法解釈の全権を一手に握ります。

財務省主計局が予算をつけ、国民の代表である国会が承認した法律であっても、法制局が「憲法違反の疑義がある」と述べれば、執行できないのです。政治家も財務官僚も、法制局の意向に沿うように法律や予算を修正しなければならないのです。財務省の「他は並びの山」の例外が法制局なのです。

ついでに言いますと、安倍晋三が「一強」とよく言われています。いくら腰が引けているとはいえ、安倍総理は確かに財務省相手にはファイティングポーズだけはとっています。

ところが、最初から降参しているようです。これは揶揄ではありません。安倍自民党改憲案を見ると、そのなかで、一文字でも法制局の意向に沿わない文字はありません。

一文字と言うのは大げさでも何でもありません。法制局は、日本国のあらゆる法令の「てにをは」まで監視しているのです。その一文字の誤りで、霞が関の官僚のすべてが畏怖するのです。

財務省も例外ではありません。グーグルマップでも見ると、財務省と法制局の建物は、直通の廊下でつながっています。財務省は法制局に因縁をつけられないよう、日常的に行き来できるようにしているのです。

特に財務省の本流である主計局の官僚にとって、法制局を敵に回さないことは出世の条件です。法制局の承認を得ていることこそ、他の官庁に威張り散らす権力の源泉なのです。

安倍総理も財務省主計局の権力も、法制局の権威の下での話ということになります。これはローマ教皇の下の皇帝や国王のようなものです。その法制局の権威の源が東大憲法学です。

宮沢の「天皇ロボット説」は単なる学説と片付けても良かったはずなのですが、第四代法制局長官の吉国一郎が政府解釈にしました(昭和50年11月20日参議院内閣委員会答弁)。

これは国会図書館の検索システムで簡単に議事録を確認できるので、皆さんご自身で調べていただきたいです。要するに「天皇は社会に向かってモノを言ってはならない」としたのです。宮沢説を、法制局が─有権解釈─法律的に効力がある政府の解釈にしたのです。

こう考えると、消費増税をめぐる安倍首相と財務省の駆け引きすら「ザコの喧嘩」にすぎないのです。ところが、これが日本の権力構造の真の実態なのです。

このようなことがまともであるといえるのでしょうかか? 
天皇や皇室は本来ならば敗戦の時に全員ギロチンにかけたいが、それも叶わなかったので仕方がないから象徴として残るのは認めてやるが、盲判を捺すロボットでいろ。
これが吉国長官以来約45年間、今の安倍内閣に至るまでの政府見解なのです。一般の日本国民がそういうことを知らなかったのを責める気はないです。しかし、有識者、いやしくも保守を自任する言論人ならばどうでしようか。
4月1日の改元にも大きな問題があります。改元は本来、天皇の大権です。しかし、実態は時の権力者の思惑に左右され続けてきました。最も蔑ろにされてきた天皇大権であると評しても過言ではないです。

だから、改元に際して多少のさざ波が立とうとも、それだけで天皇の権威に瑕がつく訳ではありません。その程度で皇室はビクともしないのです。

しかし改元を利用して、意図的に天皇や皇室の権威を貶めようとする者がいたら、国民はその者の名を心に刻まなければならないです。

明治以降、改元の規定は皇室典範で定められていました。それが敗戦に伴い旧典範は廃止され、元号は成文法上の根拠を喪失、慣習法として存立してきました。

こうしたことから、元号廃止運動が学界や言論界を中心に盛り上がり、逆に元号法制化運動も自民党を中心に進められました。結果、元号法が定められ、成文法としての根拠を回復することとなりました。この法律はたった2条だけです。
第1条 元号は、政令で定める。 
第2条 元号は、皇位の継承があった場合に限り改める。
読めばわかるように、一世一元の制の成文化です。天皇の代替わりの時にしか改元できないのです。そして現行法では、新元号の発表は代替わりの後にしか行えないのです。

昭和から平成への改元も、そうでした。昭和最後の1年間、先帝陛下は重病に苦しまれ、いつ「その日」が来るかと日本中が心配しました。そして昭和64年1月7日に崩御。同日、今上陛下が践祚(せんそ。天皇の位を受け継ぐこと)され、同日に政府が発表、翌日から施行されました。

もちろん政府は事前に新元号を用意していたのですが、公表は新帝践祚(せんそ)の後でした。時の竹下登内閣は、人としての道理を知っていたからです。

一世一元の制の現代において、元号はそのまま天皇の贈り名となります。お亡くなりになられた後に贈られるから、贈り名です。天皇陛下は存命中、「今上天皇」としか呼ばれなません。

昭和天皇、大正天皇と名前で呼ばれるのは崩御の後です。世の中には日本人としての素養がない人がいて、公共の場で「平成天皇」を連呼する御仁がいますが、「勝手に殺すな!」と言う他ありません。

改元大権を持ち出すまでもなく、新しい元号は新帝の元号なのである。だから、新帝が位に就かれた後にしか、公表してはならないのです。

どうしても事前公表したいのなら、現行法を改正するなり、いっそ一世一元の制を廃止してからにすれば良いのです。時間などいくらでもありました。それをあえて選挙で選ばれた国会議員による立法ではなく、政府の官僚による解釈で行おうとしているのです。

その意図は明々白々です。一つ、真の立法権は国会議員ではなく官僚にあると知らしめること。一つ、天皇の元号ではなく、政府の元号であると見せつけること。要するに、法の解釈を握るものは、政治家よりも、そして天皇よりも偉いのだと、権威を見せつけようとしているのです。

では、解釈を握る政府の官僚とは誰なのでしょうか。天皇ロボット説の総本山、内閣法制局です。その長官は横畠裕介。この男、自分は天皇を超える「法王」とでも思っているのでしょうか。

だが、国民は皇室を蔑ろにするものを見逃しはしません。賢明な国民は、黒幕が誰かを知っています。「国民を見捨てない」陛下の覚悟さえも貶めた裏切り者の日本人は、内閣法制局長官 横畠裕介です。

内閣法制局長官 横畠裕介

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2018年7月30日月曜日

元官僚の筆者も驚いた「霞ヶ関ブローカー」の暗躍と文科省の腐敗―【私の論評】雇用・外交を蔑ろにすれば、安倍政権は評価されなくなる(゚д゚)!


やっぱり解体的出直しが必要だ

髙橋 洋一

久々に現れた霞ヶ関ブローカー

また、文科省の局長クラスが逮捕された。息子の「裏口入学」で話題となった佐野太・前科学技術学術政策局長は収賄罪で逮捕され起訴されたが、今度逮捕されたのは、川端和明・前国際統括官。容疑は収賄である。

佐野氏の起訴とともに、佐野氏へ接待をしていたコンサルタント会社元役員の谷口浩司氏も起訴されていたが、同氏は川端氏への接待も行っていたと報道されている。

チャート・写真はブログ管理人挿入 以下同じ

佐野氏と川端氏は、旧科学技術庁に1年違いで入省した先輩後輩の関係であった。両氏を接待していた谷口氏は、いわゆる「霞ヶ関ブローカー」といわれる人で、両氏以外にも、経産省や総務省官僚らとの繋がりもあったと噂されている。

まだ残っていたのか…

2000年以降、国家公務員になった人からみれば、今回の文科省の2局長の接待事件は、まるで違う世界のような出来事であろう。筆者ですら、旧時代の悪いものを見せられた気がする。

筆者は、海外勤務が終わって帰国した後、小泉政権の中で、郵政民営化や政策金融改革を行いながら、公務員制度改革も準備を進めていた。小泉政権では政治リソースを郵政民営化に使ってしまったので、公務員改革ができなかったが、その後を継いだ第一安倍政権では、その一部である天下り規制を、国家公務員法の改正として行うことが出来た。国家公務員改革委基本法は、その後の自公政権や民主党政権でもできなかったが、第二次安倍政権になってようやく成就した。

こうした歴史を見てきた人からみれば、まだこんな古典的な接待が、そして霞ヶ関ブローカーが残っていたのか、と驚くしかない

この文科省2局長は、筆者と同世代であるので、当然「国家公務員倫理規定」は知っていたはずだ。もっとも文科省では、昨年初めに組織的天下り問題が発覚したから、そうした規定に鈍感なのかもしれない。文科省の報告書(http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/04/19/1382987_04.pdf)によれば、前川喜平前文科事務次官らが中心となって天下りが行われたということになっている。天下りもまた、かなり古典的な手法である。文科省は、接待、天下りという、他省では絶滅した旧来の官僚の得意技が今でも横行しているのだろうか。

前川喜兵衛

ちなみに、前川氏の天下り斡旋も今回の二局長の接待も、それぞれ国家公務員法違反、国家公務員倫理規定違反である。収賄となれば、二局長は刑法違反にもなる。

それにしても、報道によれば、二局長は霞ヶ関ブローカーと家族ぐるみの付き合いを行っていたという。これは、さすがに驚いた。この家族は、そんな接待攻勢を何とも思わなかったのか。家族の弱いところを聞き出して、そこをじわじわと突いていくのは、霞ヶ関ブローカーの手口であるが、その手に易々と乗ってしまったのだろうか。

そういえば、佐野氏の息子は東京医科大学の試験直前に、セブ島に旅行していたというSNSが出回っている。このセブ島旅行にも、霞ヶ関ブローカーが関与しているという噂もある。佐野氏関係では、佐野氏、東京医大の前理事長臼井正彦氏、谷口氏が密談している音声も報道された(http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3430300.htm?1532866636353)。

佐野氏が収賄を否定しているので、贈賄側からの情報がリークされたのだろう。佐野氏が職務権限なしで争っても、文科省職員が「官房長がこわかった」と法廷証言すれば有罪になりうるだろう。

こうした「霞ヶ関ブローカー」は、政治家との繋がりもあり、谷口氏は野党議員2名との関係もあるとされている。はたして野党は「モリカケ」のようにこの問題を追及することができるのだろうか。

谷口氏との関係を指摘されている吉田統彦(左)衆議院議員 
立憲民主党  羽田雄一郎(右) 参議院議 国民民主党

筆者はこの関係者の構図を見て、かなり以前にあった話を思い出した。それは20年前の「大蔵省スキャンダル事件」のことだ。あのときも、今回のような「霞ヶ関ブローカー」が存在し、大蔵省幹部に食い込んで、次々と交友関係を拡大していた。

当時は、金融機関の大蔵省担当者、いわゆる「MOF担」が接待のキーパーソンであったが、それ以外にも外資系情報機器メーカーの得体の知れない人物などが、大蔵省内を闊歩して、幹部室に入り浸っていた。筆者も、ある幹部から急に幹部室に呼ばれ、その「霞ヶ関ブローカー」を紹介されたこともある。そうした人たちは、大蔵省の過剰接待が問題になった時、自分たちの持っている情報を捜査当局に提出して捜査に協力したので、誰も起訴されなかった。

今回、谷口氏は起訴されているが、多くの情報を捜査当局に提供しただろうから、これからはその情報の一部がリークされ、霞ヶ関や政界(今のところ、経産省、総務省、野党)にもスキャンダルが波及する可能性がある。

また、今回谷口氏が接待という手法を採っていたというのも、驚かされる。かなり古典的な手法だからだ。20年前の大蔵省スキャンダル事件が起こったことで、国家公務員倫理法が1999年に作られ、2000年4月から施行された。同法に基づき国家公務員倫理規定(http://www.jinji.go.jp/rinri/new/kitei170401.htm)が制定され、利害関係者との接待は禁止され、利害関係者との飲食は届け出ることされている。

筆者は、その当時海外勤務であったが、この倫理規定をしっかりと頭にいれたことを思い出す。同時に省庁再編が行われたので、つくづく新しい時代になったと実感したものだ。

なにをすればいいのか

筆者は、予算と権限をもっている官僚が利益を受けるという意味では、天下りと賄賂は同じであると考える。組織的な天下りを行っていたのと、個人で賄賂をもらうのはまったく同じ構造である、ということだ。

組織的な天下りと接待・賄賂が可能であるのは、文科省が大学などの教育機関に対して、文科省が絶大な予算と権限を持っていることを示している。

これは、大学関係者であれば、誰でも知っている。国立大学なら運営交付金、私立大学なら私学助成金なしでは経営は覚束ない。学校運営のすべてについて、箸の上げ下ろしまで、微に入り細に入り、規制でがんじがらめである。文科省は教育関係者からみれば、紛れもなく「お上」であり、意見できる相手ではなく、従わざるを得ない。

本コラムでも、加計学園問題について、学部新設の許認可制度は別として、大学の認可申請すら、文科省が拒否するのは、行政不服審査でも行われたら文科省が負けるのは確実であると指摘した。他省庁では滅多に見れない強権行政である。

なお、特区で行ったのは、認可申請アシストにすぎず、文科省が学部新設の許認可を一切手放さなかったのは、権限に対する並々ならぬ執着のあらわれであろう。

文科省に関する話題は、筆者のような大学教員だと、正直に言えば指摘しにくい。国立大の場合、大学事務局には文科省からの出向者が多いし、教授の中にも天下りが多い。私立大学でも、そこまではないが、程度の差である。それと、大学に対して、文科省は絶対的な権力者である。大学を生かすも殺すも、文科官僚のさじ加減で決まっていると言っても過言でない。

そのため、「大学は文科省の一部局」になっているというのは、決して大げさな表現ではなく、実態そのものである。

2004年までは、国立大学は文科省に置かれている「施設等機関」であり、まさしく「文科省の一部局」だった。そのときには、文科官僚は普通の人事異動によって国立大事務局にいた。その後、国立大学は「独立行政法人」になったが、文科省との関係は従来と同じで、今では文科省から国立大学法人へ「出向」という形にかわっているだけだ。

今後の対応として「官僚の中抜きシステム」も必要ではないか。

日本の財政が危機であるという煽り文句と文科行政の悪弊が組み合わされると大変なことになる。なぜなら「財政が厳しいので、文科行政の資金は選択と集中を行う」という議論が起こり、ますます文科省の権限が強化されることになりかねないからだ。しかも、選択と集中を行うのが文科官僚なので、さらに酷いことになる。

やっぱり解体的出直しが必要だ
今回のような文科省の不祥事が起こると、教育無償化のような資金を要する新たな政策が非難される。

しかし、資金の配分は官僚を経由しなければならないとは限らない。例えば、バウチャー制度なら、事実上官僚抜きで、学生に直接バウチャー(クーポンのようなものだと思ってくれればいい)を配れる。文科省官僚にすべてを任せる今の仕組みがおかしいだけだ。官僚に不要な仲介をさせずに、国民が直接行政の対象になるような制度作りが求められている。

その具体例として、筆者が第一安倍政権にいたときの体験を話そう。私立大学を含めて大学は外部資金が必要なので、寄付金を税控除する仕組み(当時の菅総務大臣が発案した「ふるさと納税」と同様に、寄付先を地方自治体から大学に変えて、税控除するもの)を税制改正要求した。残念ながら、このときは文科省が望んでいないとされたため、日の目を見なかった。

その一方で文科省は、こうした外部資金を拒否しつつ、国立大学法人に対する運営交付金を毎年絞っていった。私学への助成金でも同じだった。と同時に、大学への助成金について、選択と集中という名のもとで、官製競争化を進めていった。

これらによって、文科省は大学への有利な立場をますます高めていった。当然であるが、少なくなった資金を大学は競うように得ようとするから、文科省と大学の関係において、文科省がますます強くなったわけだ。

これではますます文科省に頭が上がらなくなる。そうした構図をなくすためにも、教育機関には文科省に頼らない外部資金が必要である。それとともに、前日のようなバウチャー制度も必要である。これらが導入されれば、文科省はかなりスリムになるだろう。その上で、官僚経由の補助金では、選択と集中をやめて機械的に割り振る、などを実現すればいい。そもそも官僚に「選択と集中」ができるはずなく、せいぜい官僚の裁量を増やすだけで、いい結果はみえないからだ。

教育制度は国の根幹なので、文科省は不要というわけではない。しかし、大学などの教育機関を文科省の一部局と思うような体質であってはならなず、解体的な出直しが必要だ。

最後に、学者として少し愚痴を言っておこう。筆者は、今年度科研費として「天下りの実証分析」をテーマにした研究を申請したが、あまりに「挑戦的」すぎたのか、やはりというか、落選だった。

申請内容は、研究者2名、研究期間3年、研究費490万円。仮に採択されても申請額×0.6が実際の交付額なので、2名、3年、300万円で、一人あたり50万円/年というもの。内容は筆者が役人時代に公務員改革制度の中で、ほとんど利用していないデータがあるので、それらを活用して、公共選択論アプローチで実証分析を行う、というものである。とはいえ、あきらめてはいない。来年度は、「天下リと接待の実証分析」をテーマにして、再提出するつもりである。

【私の論評】雇用・外交を蔑ろにすれば、安倍政権は評価されなくなる(゚д゚)!

ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事にもあるとおり、第一次安倍政権においては、バウチャー制度が検討されていました。しかし、これは上の記事もあるとおり、日の目をみずに安倍第一次政権は崩壊しました。

これは具体的にどのようなものだったのか以下に掲載します。

安倍第一次政権は「抜本的な教育改革」の実現を発足前から重視して生まれた内閣でした。

安倍首相が首相になる前に書いたあの『美しい国へ』(文春文庫)では、首相は1章を割いて「教育の再生」を論じていますし、政権発足後は教育担当の首相補佐官を任命(山谷えり子参院議員)、 10月には「教育再生会議」を発足させています。

その安倍政権が目指す「安倍教育改革」はどのようなものだったのでしょうか。

それは学校と学校のあいだの競争、教師と教師のあいだの競争。

この競争によって学校はよくなり、教師の向上心も上昇する……これが、安倍政権が考える教育改革の根幹です。そして、学校間競争を生むためにバウチャー制度や学校選択制などが、教師間競争を生むために免許更新制や成果報酬制度を導入しようとしていました。

このような大胆かつ壮大な教育制度改革の基礎となるのが、「新・教育基本法」というわけです。ご存知のように、この基本法にはバウチャー制度などは取り入れられませんでしたて。
安倍首相はアメリカの教育制度にも関心があり、特にアメリカの一部で行われている「教育バウチャー制度」を高く評価していました。

以下に安倍総理の著書『美しい国へ』からバウチャー制度に関する部分を引用します。
……期待されるのが教育バウチャー制度である。バウチャーとは、英語でクーポン券みたいなもののことをいう。アメリカでは、私立学校の学費を公費で補助する政策をスクール・バウチャーという。それによって、保護者はお金のあるなしにかかわらず、子どもを公立にも私立にも行かせることができる。
いったい、安倍総理はどうのような教育を目指していたのでしょうか。

ノーベル経済学賞を受賞した有名な経済学者フリードマンが教育バウチャ-制度の提唱者といわれています。

彼もまた、アメリカにおける教育の競争原理の導入を考えていました。そこで彼が提案したのが、親にバウチャーという券を配るというものでした。

子どもの通わせる学校を選んだ親は、配られたバウチャーをその学校に渡して通学します。学校は集めたバウチャーを当局に換金してもらい、学校の予算にする。これが、フリードマンの考えでした。

この制度は、公立・私立問わず、競争原理によって評判のいい学校だけが残り、教育の質が向上するものだということで評価が高まり、アメリカの一部の地方で実施されるに至りました。

お金がない家庭でも私立学校に通えること、そしてその動きに対抗し生徒の流出を防ごうと公立学校は努力をするため、結果的に教育の質が高まる、というところに安倍首相が評価する点があったようです。

当時の第一次安倍政権が考えていた、バウチャー制度の概要を以下に掲載します。

アメリカの場合は高校などを想定していますから、親にバウチャーを発行するというものですが、こちらの場合は大学を想定しているので、バウチャーは親ではなく大学生本人に発行します。

こうなると確かに、競争原理が働くことになります。大学側も少しでも多く学生を集めようということで、真剣になるてじょうし、官僚に不要な仲介をさせずに、国民が直接行政の対象になるような制度となったに違いありません。

さらに安倍政権・自民党独自の案として、「教員免許の更新制導入」というものがありました。これは、平成19年6月の改正教育職員免許法の成立により、平成21年4月1日から教員免許更新制が導入されました。

教員免許は、一度とったら死ぬまで更新されません。そのため、一度公立学校の教師になったら、よほどな不祥事を犯さない限りは教師を辞めさせられることはないのが現在の制度です。

しかし、それでは教師には緊張感をもたせることができず、自らの質の向上を図ることができない……こうしたことから、安倍首相や自民党は教員免許を更新制にし、「ダメ教師にはやめていただく」(『美しい国へ』から)ことにしよう、というわけです。

これができてからは、従来は能力の極端に低い教員であっても、どうすることもできなかったのですが、今では、現場から異動させることができるようになりました。

安倍晋三氏は、この内閣を「美しい国づくり内閣」と命名し、小泉純一郎の構造改革を加速させ、補強していく方針を表明しました。しかし、この内閣は結局崩壊しました。

崩壊の原因としては、やはり経済政策にみるべきものがなく、「教育」「構造改革」だけでは、多くの国民に納得が得られることはなかったためと考えられます。私自身は、「教育」などに興味はあったものの、第一次安倍政権に関してはあまり関心がありませんでした。

ただし、第一次安倍内閣は短期間であったにもかかわらず、かなりのことをやり遂げたということは評価に値します。

以下に第一次安倍政権で成立した主な法案を掲載します。
2006年(平成18年)12月15日成立 - 教育基本法改正
2006年(平成18年)12月15日成立 - 防衛庁設置法等改正(防衛庁・省昇格法)
2007年(平成19年)4月19日成立 ‐ 海洋基本法
2007年(平成19年)5月14日成立 - 日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法)
2007年(平成19年)5月15日成立 - イラク復興支援特別措置法改正
2007年(平成19年)5月25日成立 - 児童虐待防止法改正
2007年(平成19年)5月25日成立 - パートタイム労働法改正
2007年(平成19年)6月27日成立 - 学校教育法・教育職員免許法及び教育公務員法・地方教育行政の組織及び運営に関する法律改正(教育改革関連三法)
2007年(平成19年)6月30日成立 - 日本年金機構法、国民年金法改正(社会保険庁改革関連法)
2007年(平成19年)6月30日成立 - 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律(年金時効撤廃特例法)
2007年(平成19年)6月30日成立 - 国家公務員法改正(公務員制度改革関連法)
第二次安倍内閣に関しては、最初に金融緩和、積極財政などを打出したため、私は、特に経済政策を支持するようになり、結果として安倍政権を支持し今日に至っています。

結局のところ、まずは国民生活基本である経済を良くしなければ、国民の支持は得られないということです。

現状の安倍政権は、アベノミクスで経済を良くしつつ、憲法改正などにも取り組んでいます。

そうして、第一次安倍内閣のときには、成立した法案などみていると確かにかなり仕事をしていたのは間違いありません。にもかかわらず、当時は現在のようには支持率はあまり高くはありませんでした。特に若者からの支持は今日ほどはありませんでした。

現状の若い世代の内閣支持率の高さに応えるためにも、現在の安倍政権は安易な財政再建路線はとるべきではありません。それは、財務官僚をはじめとする官僚を喜ばすだけです。国民が喜ぶことはありません。現在の安倍政権の真価は雇用の回復と外交にありました。特に若者からの絶大な支持は、雇用の劇的な回復でした。今後よりそれを強化すべきです。次は雇用の質を改善していくべきです。

バウチャー制度などの教育改革や公務員の汚職撲滅も、雇用が良いのは当たり前という水準で、今度はさらに雇用の質(さらなる失業率の低下、実質賃金上昇、働き方改革など)を改善したうえで実行すれば、実行しやすいし、さらに評価も高まることになります。

雇用を蔑ろにして、教育改革や、公務員の汚職撲滅等に積極的に取り組んだとしても、第一次安倍内閣のときのようにあまり評価されることはないでしょう。

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2018年7月19日木曜日

なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのか F-35を買わないドイツと、気前よく買う日本の違い―【私の論評】国防を蔑ろにする「ぶったるみドイツ」に活を入れているトランプ大統領(゚д゚)!

なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのか
F-35を買わないドイツと、気前よく買う日本の違い

NATO首脳会議開始前の編隊飛行を見上げるNATO加盟国首脳

 トランプ大統領はNATO(北大西洋条約機構)加盟諸国(とりわけドイツやフランスなどEUを牽引する西ヨーロッパ諸国)に対して国防費増額を執拗に要求している。先週のNATO総会でも「NATO諸国が国防費の目標最低値として設定しているGDP比2%はアメリカの半分であり、アメリカ並みに4%に引き上げるべきである」と主張した。

 特にドイツへの姿勢は厳しい。ドイツはNATO加盟国の中でも経済力も技術力もともに高く、実際にアメリカの一般の人々も「メルセデスやBMWのような各種高級機械をアメリカに輸出している先進国」と認識している。そんなドイツの国防費がGDP比1%にすぎないことに対して、トランプ大統領は極めて強い不満を露骨に表明した。

 一方、日本に対する姿勢は異なる。日本はNATO加盟国ではないものの、ドイツ同様に経済力も技術力も高く、アメリカの一般の人々も「自動車や電子機器などをアメリカに輸出している先進国」と認識しており、やはりドイツ同様に第2次世界大戦敗戦国である。このようにドイツと日本は共通点が多いが、これまでのところ(トランプ政権が発足してから1年半経過した段階では)、日本に対しては、「日本の国防費はGDPのたった1%と異常に低い。少なくとも2%、そして日本周辺の軍事的脅威に目を向けるならば常識的にはアメリカ並みの4%程度に引き上げなければ、日米同盟の継続を見直さねばなるまい」といった脅しは避けてきている。

 なぜドイツに対しては強硬に国防費の倍増どころか4倍増を迫り、日本に対しては(これまでのところ)そのような強硬姿勢を示さないのであろうか?

 その原因の1つ(あくまで、多くの要因のうちの1つにすぎないが)として考えられるのが、大統領選挙期間中以来トランプ大統領が関心を持ち続けてきているステルス戦闘機「F-35」の調達問題である。

F-35への関心が高いトランプ大統領

 トランプ大統領は2016年の大統領選挙期間中から、将来アメリカ各軍(空軍、海軍、海兵隊)の主力戦闘機となるF-35の調達価格が高すぎるとロッキード・マーチン社を非難していた。2017年に政権が発足した後は、さらに強い圧力をかけ始めたため、結局、F-35の価格は大幅に値引きされることとなった。

 F-35最大のユーザーとなるアメリカ軍は、合わせて2500機近く(空軍1763機、海兵隊420機、海軍260機)を調達する予定である。トランプ大統領がその調達価格を値下げさせたことにより、国防費を実質的に増額させたことになったわけである。

 このほかにも、トランプ大統領はこれまで数度行われた安倍首相との首脳会談後の記者会見などで、必ずといってよいほど「日本がF-35を購入する」ということを述べている。

 米朝首脳会談直前のワシントンDCでの日米首脳会談後の共同記者会見においても、「日本は(アメリカから)莫大な金額にのぼる、軍用ジェット(すなわちF-35のこと)やボーイングの旅客機、それに様々な農産物など、あらゆる種類のさらなる製品を購入する、と先ほど(首脳会談の席上で)安倍首相が述べた」とトランプ大統領は強調していた。

 要するに、F-35という戦闘機はトランプ大統領にとって大きな関心事の1つなのだ。

F-35の共同開発参加国が機体を調達

 F-35統合打撃戦闘機は、アメリカのロッキード・マーチン社が開発し、アメリカのノースロップ・グラマン社とイギリスのBAE社が主たる製造パートナーとしてロッキード・マーチン社とともに製造している。

 F-35のシステム開発実証段階では、アメリカ政府が幅広く国際パートナーの参画を呼びかけたため、イギリス、イタリア、オランダ、オーストラリア、カナダ、デンマーク、ノルウェイ、トルコが参加した。後に、イスラエルとシンガポールもシステム開発実証に参画したため、F-35は11カ国共同開発の体裁をとって、生み出されたことになる。

 パートナーとして開発に参加した国々は、それぞれ巨額の開発費を分担することになるため、当然のことながらF-35を調達することが大前提となる。要するに、共同開発として多数の同盟国を巻き込むことにより、アメリカ軍以外の販売先も確保する狙いがあったわけである。

 開発参加国は、分担金の額や、調達する予定のF-35の機数などによって、4段階に分類された。最高レベルの「レベル1」パートナーはイギリスであり、F-35Bを138機調達することになっている。

(F-35には3つのバリエーションがあるため、正式にはF-35統合打撃戦闘機と呼称されている。3つのバリエーションとは、主としてアメリカ空軍の要求に基づいて開発された地上航空基地発着用のF-35A、アメリカ海兵隊の要求に基づいて短距離垂直離発着能力を持ち強襲揚陸艦での運用が可能なF-35B、アメリカ海軍の要求に基づき設計された航空母艦での発着が前提となるF-35Cである。このほかにもカナダ軍用にはCF-35、イスラエル軍用にはF-35Iが製造される予定となっているが、基本的にはA型、B型、C型ということになる。)

「レベル2」パートナーはイタリアとオランダであり、それぞれ90機(F-35Aを60機、F35Bを30機)85機調達することになっていた。その後、オランダは調達数を37機へと大きく削減した。

「レベル3」パートナーは、オーストラリア(F-35Aを72機)、カナダ(F-35AベースのCF-35を65機、F-35の大量調達に疑義を呈していたトルドー政権が発足したため、選挙公約どおりにF-35の調達はキャンセルされ、現在再検討中である。)、デンマーク(F-35Aを27機)、ノルウェイ(F-35Aを52機)、トルコ(F-35Aを100機)である。遅れてシステム開発に参加したイスラエル(F-35AベースのF-35Iを50機)とシンガポール(調達内容検討中)は「SCPパートナー」と呼ばれている。

F-35を買わないドイツ、気前よく買う日本

 以上のように、現時点でパートナーである同盟諸国は合わせて600機前後のF-35ステルス戦闘機を購入する予定になっている。

 しかしながらNATOとEUのリーダー的存在であるドイツもフランスも、ともにF-35を購入する予定はない。ドイツ空軍ではF-35に関心を示したことがあったが、F-35推進派の空軍首脳は更迭されてしまった。

 このようにF-35ステルス戦闘機を購入する予定がないドイツに対して、トランプ政権は強烈に国防費増額を迫っている(65機が予定されているF-35の購入をキャンセルしたカナダのトルドー首相とも、トランプ大統領は対立を深めている。)

 一方、NATO加盟国ではないもののやはりアメリカの同盟国である日本は、ドイツ同様にF-35の開発には協力しなかった。しかし、ドイツのメルケル政権と異なり、安倍政権はF-35の購入に積極的であり、すでに42機のF-35Aの調達が決定し、すでに引き渡しも開始されている。F-35開発パートナー諸国以外でF-35の購入、すなわち純然たる輸入を決定した国は日本と韓国(F-35Aを40機調達予定)だけである。

 そして、日本は調達する42機のうち最初の4機を除く38機は日本国内で組み立てる方式を採用した(ただ組み立てるだけであるが)。その組み立て工場(三菱重工業小牧南工場)は、今後世界各国で運用が開始されるF-35戦闘機の国際整備拠点となることが、アメリカ国防総省によって決定されている。

 上記のように「安倍総理が日米首脳会談の席上でF-35の追加購入を口にした」とトランプ大統領が述べているということは、すでに調達が開始されている42機のF-35Aに加えて、かなりの数に上るF-35を調達する約束をしたものとトランプ大統領は理解しているに違いない。首脳会談で一国の首相が述べた事柄は、一般的に公約とみなされる。さらに米軍内では、日本国内で流布している海兵隊使用のF-35Bを調達する可能性も噂として広まっており、アメリカ側では期待している。

 日本はドイツと違って、トランプ大統領が関心を持っているアメリカにとっての主力輸出商品の1つであるF-35を気前よく購入している。したがって、安倍政権がトランプ大統領に対してF-35を積極的に調達する姿勢をアピールしている限りは、トランプ政権も「日本に対して国防費を4倍増しなければ日本防衛から手を退く」といった脅しはかけてこないだろうとも考えられるのだ。

【私の論評】国防を蔑ろにする「ぶったるみドイツ」に活を入れているトランプ大統領(゚д゚)!

なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのかその原因の1つ(あくまで、多くの要因のうちの1つにすぎないが)として考えられるのが、大統領選挙期間中以来トランプ大統領が関心を持ち続けてきているステルス戦闘機「F-35」の調達問題であり、日本は気前よく購入するがドイツは購入しないからだとしています。

では他には、どのような原因があるのでしょうか。本日はそれについて掲載したいと思います。

まず第一にあげられるのが、ドイツと中国との蜜月関係でしょう。メルケル・ドイツは中国との蜜月関係を持ち、それがお互いに大きな利益をもたらしてきました。10年余りの就任期間でメルケル首相が中国を訪問したのは実に9回です。

ドイツと中国との距離を考えると異常な回数です。ちなみにメルケル首相の日本訪問はわずかに3回です。しかもそのうち2回は洞爺湖サミットと伊勢志摩サミットのサミット参加で、残りの1回はエルマウ・サミットに向けた事前調整のためというから、サミット絡みだけといって良いです。メルケル首相の親中のスタンスは明らかです。

ドイツと中国の貿易は拡大し、ドイツ経済の成長の柱となりました。中国は生産拠点としても、大市場としても魅力のある国でした。経済の発展が素晴らしい時には様々な不平等的な問題も隠されてきました。

ドイツと中国は密接なパートナーとして活動し、中国はEU、つまりヨーロッパへの参入権を得た形になりました。しかし、中国経済の成長が鈍ると、問題が噴出してきました。

中国との貿易が停滞しながらも、ドイツ企業は撤退しようにも撤退できにくい状況に置かれています。しかし、中国の企業はドイツの優良企業を買収していきました。中国家電大手の美的集団は、ドイツの産業用ロボット大手クーカを買収しました。

中国との貿易は好調な時には問題が隠されますが、不調になると問題が噴出してきました。中国との貿易拡大で成長してきたメルケル・ドイツは方向転換を迫られています。


そうして、メルケル首相が出した結論は、結局中国寄りのものでした。ドイツのメルケル首相と同国を訪問した中国の李克強首相が9日、会談を開き、200億ユーロ(235億1000万ドル)規模の取引で合意しました。両首脳は米国との貿易戦争が本格化する中、多国間の貿易秩序に関与していく姿勢を強調しました。

これは、11日のブリュッセルでのNATO首脳会談の直前のことです。米国が、対中国貿易戦争をはじめたばかりのこの時期に、ドイツがこのようなことをしたわけですから、トランプ大統領としては、ドイツに対して恨み節の一つも言いたくなるのは、当然といえば当然です。

今回中国側との契約に合意したドイツ企業は、総合エンジニアリングのシーメンス(SIEGn.DE)、自動車のフォルクスワーゲン(VOWG_p.DE)、化学のBASF(BASFn.DE)などです。

メルケル氏は李克強氏との共同会見で、両国が世界貿易機関(WTO)の規則に基づくシステム維持を求めているとし、「すべての国がそのルールに従えば、さまざまな国がウィン・ウィンの状況となるのが多国間の相互に依存するシステムだ」と述べました。 

李氏は、保護主義に立ち向かう必要性を強調し、自国が一段と発展するために安定的で平和的な枠組みが必要で、自由貿易でのみ実現可能と説明。「一国主義に反対する」と述べました。 

ドイツのショルツ財務相は、中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁と、ドイツの銀行に中国金融部門への市場アクセスを速やかに認めることで一致しました。経済紙ハンデルスブラットが、関係筋の話として伝えました。
 
同紙によると、中国政府は、同国内でドイツ企業・団体が近く人民元建て債券を発行できるようになるとも表明したといいます。
 
欧州連合(EU)と中国は今月16、17日に北京で首脳会議を開催しました。メルケル氏は首脳会議について、投資の保護のほか、世界的な貿易紛争の拡大防止につながるよう求めると述べました。

メルケル氏は、中国について「実にタフで非常に野心を持った競争相手」と指摘しました。
李氏は、中国が海外からの投資にさらなる門戸を開くと表明。保険や債券市場を海外投資家に開放する用意があるとし、ドイツ企業が中国で事業を行うに当たり自社技術を失うと懸念する必要がないよう、知的財産権の保護を保証するとしました。 メルケル氏は、中国金融市場の開放を歓迎しましたが、一段の取り組みも求めました。

しかし、現状はG7は中国の横暴に対して、結束すべき状況にあります。それについては、以前のこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国の横暴に甘い対応しかとらなかった日米欧 G7は保護主義中国に対して結束せよ―【私の論評】最大の顧客を怒らせてしまった中国は、その報いを受けることに!虚勢を張れるのもいまのうちだけ?
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の元記事から一部を引用します。
 今月8日から2日間、カナダで先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)が開かれる。鉄鋼・アルミなどの輸入制限を発動した米国に対して欧州が強く反発し、トランプ米大統領が孤立する情勢だが、仲間割れする場合ではない。 
 正論は麻生太郎財務相の発言だ。麻生氏は先に開かれたG7財務相会議後の会見で、中国を名指しに「ルールを無視していろいろやっている」と批判、G7は協調して中国に対し国際ルールを守るよう促す必要があると指摘した上で、世界貿易機関(WTO)に違反するような米輸入制限はG7の団結を損ない、ルールを軽視する中国に有利に働くと説明した。
G7財務相・中央銀行総裁会議の閉幕後、記者会見する
麻生財務相(左)と日銀黒田総裁=2日

 WTOについて自由貿易ルールの総本山と期待するのはかなり無理がある。麻生氏に限らず、経済産業省も外務省もWTO重視で、世耕弘成経済産業相も、米鉄鋼輸入制限をめぐるWTOへの提訴について「あらゆる可能性に備えて事務的作業を進めている」と述べているが、WTOに訴えると自由貿易体制が守られるとは甘すぎる。 
 グラフは、WTOの貿易紛争処理パネルに提訴された国・地域別件数である。圧倒的に多いのは米国で、中国は米国の3分の1以下に過ぎない。提訴がルール違反容疑の目安とすれば、米国が「保護貿易国」であり、中国は「自由貿易国」だという、とんでもないレッテルが貼られかねない。事実、習近平国家主席はスイスの国際経済フォーラム(ダボス会議)や20カ国・地域(G20)首脳会議などの国際会議で臆面もなく自由貿易の旗手のごとく振る舞っている。


 実際には中国は「自由貿易ルール違反のデパート」である。知的財産権侵害は商品や商標の海賊版、不法コピーからハイテクの盗用まで数えればきりがない。おまけに、中国に進出する外国企業には技術移転を強要し、ハイテク製品の機密をこじ開ける。共産党が支配する政府組織、金融機関総ぐるみでWTOで禁じている補助金を国有企業などに配分し、半導体、情報技術(IT)などを開発する。 
 習政権が2049年までに「世界の製造大国」としての地位を築くことを目標に掲げている「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」は半導体などへの巨額の補助金プログラムだらけだ。 
 一連の中国の横暴に対し、日米欧はとにかく甘い対応しかとらなかった。理由は、中国市場でのシェア欲しさによる。「中国製造2025」にしても、中国による半導体の国産化プロジェクトは巨大な半導体製造設備需要が生じると期待し、商機をつかもうと対中協力する西側企業が多い。 
 ハイテク覇権をめざす習政権の野望を強く警戒するトランプ政権の強硬策は中国の脅威にさらされる日本にとっても大いに意味がある。G7サミットでは、日米が足並みをそろえて、欧州を説得し対中国で結束を図るべきだ。米国と対立して、保護主義中国に漁夫の利を提供するのはばかげている。(産経新聞特別記者・田村秀男)
中国の現在の体制では、そもそも民主化、政治と経済の分離、法治国家が十分なされておらず、これらがある程度整備されている日米やドイツをはじめとする先進国との間で、貿易をすると仮に中国にはそのつもりがなかったにしても、構造的に自由貿易にはなりません。

中国は、必ず「自由貿易ルール違反のデパート」にならざるをえないです。であれは、中国も、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を推進すればよいのですが、それを推進すれば、中国の一党独裁もとより、最近の習近平の独裁政権は成り立たなくなってしまいます。

それは、ドイツとても同じです。いくら、李克強が口約束をしても、中国はドイツに対しても「自由貿易ルール違反のデパート」にならざるを得ません。中国との関係を維持すれば、ドイツも国益を失います。

こうした中国に対して、米国としては、対中国戦略として、貿易戦争を発動したのです。そうして、この貿易戦争は、中国が現体制をある程度変更してまで、度民主化、政治と経済の分離、法治国家化を推進するか、現体制のままかなり弱体化するかのいずれかが達成できるまで継続されることでしょう。

7月6日、米中貿易戦争が開戦しました。中国内外の多くのメディアが「開戦」の文字を使いました。つまり、これはもはや貿易摩擦とか不均衡是正といったレベルのものではなく、どちらかが勝って、どちらかが負けるまでの決着をつける「戦争」という認識です。

この戦いは、たとえば中国が貿易黒字をこれだけ減らせば終わり、だとか、米大統領選中間選挙までといった期限付きのものではなく、中国が貿易戦争に屈しなければ、米国は次の段階に進み、厳しい金融制裁を課すことになり、どちらかが音を上げるまで長引くでしょう。

この貿易戦争がどういう決着にいたるかによっては、独裁者習近平が率いる中国の特色ある現代社会主義強国なる戦後世界秩序とは全く異なる世界が世界の半分を支配する世の中になるかもしれないですし、世界最大の社会主義国家の終焉の引き金になるかもしれないです。

まさに、米国を頂点とする、日本やEUも含めた戦後の秩序を維持できるか、それとも半分を中国に乗っ取られるかを決める争いであり、軍事力は伴わないものの、世界大戦に匹敵する大戦なのです。だからこそ、トランプ大統領は米国の国防予算を拡大したのです。


オバマ政権で削られた国防予算をトランプ大統領は拡大した

それをドイツが理解しておらず、NATOの首脳もあまり理解していないようです。だかこそ、トランプ大統領は、NATO(北大西洋条約機構)加盟諸国(とりわけドイツやフランスなどEUを牽引する西ヨーロッパ諸国)に対して国防費増額を執拗に要求しているのです。

彼らに対して、現状は彼らが考えているような甘い状況ではなく、世界の半分が中国という闇に覆われるかどうかの天下分け目の大戦に突入したことを理解されるために、あのような発言をしたのです。

その中でもドイツに対して、F-35への関心が高いトランプ大統領がさらに苛立つ実態があります。

何と、ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の主力戦闘機「ユーロ・ファイター」のほぼ全機に“深刻な問題”が発生し、戦闘任務に投入できない事態となっています。現地メディアによれば全128機のうち戦闘行動が可能なのはわずか4機とも。原因は絶望的な予算不足にあり、独メルケル政権は防衛費の増額を約束したのですが、その有効性は疑問視されるばかりです。

ドイツは“緊縮予算”を続けており、その煽りを受けてドイツの防衛費不足は切迫しています。空軍だけではなくドイツ陸軍においても244輌あるレオパルト2戦車のうち、戦闘行動可能なのは95輌などといった実態も報告されています。

こうした状況に追い込まれた原因の一つとして、ドイツを含む欧州連合(EU)には、財政赤字が対GDP比で3%、債務残高が対GDPで60%を超えないこととする「マーストリヒト基準」があり、財政健全化を重視しすぎるとの声が経済専門家の間にはあります。

ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の主力戦闘機「ユーロ・ファイター」

一方、ショルツ財務相は、昨年の総選挙で第2党となった中道左派のドイツ社会民主党(SPD)の臨時党首を務めるなど、選挙後の大連立において存在感を示してきたましたが、そもそもSPDは総選挙で戦後最低の得票率となり、野党に転じる予定でした。財務相という重要ポストをSPDが得たのも、大連立をなんとしてもまとめたいメルケル氏率いるCDU・CSUの譲歩と見られています。

自国どころかユーロ圏全域に緊縮財政を突きつけてきたメルケル首相と、じり貧の中道左派の財務相による予算編成に国防予算「2%」はハードルが高すぎたのかもしれません。19年度予算を本格的に議論するのは7月で、国防省はそれまでに防衛費の“改善”を求めていくとしています。

一方日本は、いくら自衛隊の予算が低いといわれつつも、これほど酷い状態にはありません。もともと、日本の経済の規模はドイツより大きいですから、GDP1%であっても、ドイツよりはまともな国防予算なのでしょう。

それに、若干ながら、最近は防衛費を上げています。自衛隊の航空機の稼働率は、米軍よりも高い状態にあります。日本としては、低予算ながら、何とか工夫して、最新鋭の潜水艦を配備したり、準空母ともいえる護衛艦を配備したりしています。

日本の防衛関係費の推移

さらに、日本の安倍政権は、中国に対抗するため「インド太平洋戦略」と称して東南アジア諸国連合(ASEAN)や台湾などと経済、安全保障、外交の3つの分野で関係を強化しています。そもそも、安倍総理は安倍政権成立直前にはやくも、「安全保障のダイヤモンド」という対中国封じ込め戦略を発表しています。これは、米国のドラゴンスレイヤー達も高く評価しています。

いくら中国から地理的に離れているとはいえ、ドイツも含まれる戦後秩序を崩し世界の半分を支配しようとする中国に経済的に接近するとともに、緊縮財政で戦闘機の運用もままならないという、独立国家の根幹の安全保障を蔑ろにするドイツは、まさにぶったるみ状態にあります。ドイツの長い歴史の中でも、これほど国防が蔑ろにされた時期はなかったでしょう。

このような状況のドイツにトランプ大統領は活をいれているのです。ドイツにはこのぶったるみ状態からはやく目覚めてほしいものです。そうでないと、中国に良いように利用されるだけです。

そうして、ドイツを含めたEUも、保護主義中国に対して結束すべき時であることを強く認識すべきです。

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