ラベル 二階幹事長 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 二階幹事長 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2017年8月13日日曜日

自民・二階幹事長の「財政出動10兆円構想」は実現可能か?―【私の論評】自民党は「補正予算10兆円」で支持率上昇、再度安定政権を目指す(゚д゚)!

自民・二階幹事長の「財政出動10兆円構想」は実現可能か?

もちろん財務省は黙っていないが…

 財政拡張は悪手ではない
都議選の大敗や稲田朋美防衛相の辞任などでやや失速気味の自民党。そんななか、党内ではアベノミクス路線を改めて強調する動きが強まっている。

自民党の二階俊博幹事長は自身の派閥の研修会で、「現状の日本経済はいまだにデフレから脱却できていない」と強調。そのうえで「10兆円程度の大型補正予算を編成する必要がある」などと宣言し、今後もアベノミクスを続行していくべきだとの姿勢を崩さなかった。

二階幹事長
2ケタ規模の補正予算ともなると気が気でないのは財務省で、なんとか食い止めようと働きかけてくることは想像に難くない。はたして二階幹事長のプランの可能性はいかほどなのか。

実は、この時期に改めて財政拡張を行うのは決して悪手ではない。そのことを裏付ける指標がある。GDPギャップと呼ばれるものがそれだ。

GDPギャップとは、その国の経済が持っている供給力(潜在GDP)と現実の需要との間にある乖離のことだ。潜在GDPは完全雇用などの状況を前提にして推計されるもので、このギャップがプラスのときは好景気または景気過熱、マイナスのときは不況と判断される。

内閣府は、このGDPギャップについて、'17年1-3月期ではプラス0.1%としている。つまり、日本はいま好景気に差し掛かろうとしてはいるのだが、実は「もう安心」と判断するのは早合点で、経済政策の観点からはまだまだ「不十分」なのである。

 財務省はどう動くか

内閣府の過去のデータを遡ってみると、'07年あたりはGDPギャップがプラス2%と高水準にあったが、当時も物価の面からはデフレ状態にあった。実際にインフレ率が上昇したのはその後の'08年半ば過ぎのこと。

この過去データから言えることは、内閣府が発表するGDPギャップがプラス2%程度になって、ようやくインフレ率が上がり出す、つまりは本格的に景気が上向いてくるということなのである。

アベノミクスでは金融政策と財政出動を組み合わせ、インフレ率の「2%上昇」を目標にしているが、消費増税の影響などもあり数値はなかなか上向きにならず、日銀は'19年に達成時期を延期すると発表している。

つまり、現状のGDPギャップから見ても、財政出動はまだまだ実施の余地があり、二階幹事長の「10兆円程度」という財政出動は、デフレから脱却するためには妥当な規模であるといえる。

もっとも、この動きに財務省は黙っていられないはずだ。

「増税ではなく国債発行で補正予算を組むのは、支持率回復のためだ。このままでは財政再建は厳しくなる一方だ」

こうマスコミに語り、財務省の人々は自民党を牽制するだろう。

7月、安倍首相はこれまで導入に否定的だった「教育国債」について「可能性から排除しない」姿勢を示した。もちろん財務省はこれらのことを快く思っていない。彼らは、この際、安倍政権が退陣して、財政再建派で財務省の言いなりになる政権ができないかと願っている。

反安倍政権に財政再建派が多いことを考えると、秋の補正予算で二階構想が実現するかどうかは、安倍政権を倒閣する動きとも絡んでくるので見物だ。

【私の論評】自民党は「補正予算10兆円」で支持率上昇、再度安定政権を目指す(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事の、二階幹事長の「10兆円程度の大型補正予算を編成する必要がある」という発言が気になりました。

この数字には妥当性があるのかどうかというところが非常に気になりました。上の記事では、GDPギャップについても記載があり、そこから妥当な規模であるとの論評があります。

しかし、この指摘は間違いだと思います。下の図1は、2000年以降四半期ベースで見たGDPギャップとインフレ率の関係です。左軸にGDPギャップ率、右軸にインフレ率(消費者物価総合対前年比)をとっています。GDPギャップは半年後(2四半期後)のインフレ率とかなりの相関関係があります。

◆図表1:GDPギャップ率とインフレ率(半年後)
ここで、GDPギャップとインフレ率の関係から、「2%インフレ」にするために必要なGDPギャップ水準を算出してみると、+4.5%程度です。

それを埋め合わせるためには、有効需要25兆円程度が必要になります。1単位の財政出動による需要創出効果を示す財政乗数が、内閣府のいう1.2程度としても、この有効需要を作るための財政出動は20兆円程度です。

財政乗数とは、財政支出乗数のことです。これは、「財政支出を1単位増加させたとき、国民所得がどれだけ増加するか」の値す。

政府支出乗数( government expenditure multiplier)とは、限界消費性向をc,限界租税性向をtとすると,政府支出が1だけ増加するとき,総需要の増加分は,政府支出の増加分だけでなく、それに加えて政府支出の増加分が生み出す家計消費支出の増加を含むので、均衡国民所得は 1/(1-c(1-t))だけ増加します。この比率1/(1-c(1-t))が政府支出乗数、あるいは財政支出乗数といいます。

いずれにせよ、現状の日本がデフレから完璧に脱却するために必要な財政出動は、20兆円程度ということです。

10兆円は、この半分ですから、とてもじゃないですが、デフレから完璧に脱却できるような規模ではないです。

では、二階幹事長の言う「10兆円」と一体どこから出てきた数字なのか、いろいろ調べて見ましたが、いずれを調べてみても、その根拠らしいものは見つかりませんでした。

そこで、ここから私の憶測ですが、本来は20兆円であることは、二階氏も誰から経済に明るい人に聴いて十分理解しているのかもしれませんが、いきなり20兆というと、財務省はかなり難色を示すので、まずは10兆としたのだと思います。

そうして、本予算も大きめにして、実際に走ってみてみれば、10兆円規模であれば、数兆円の補正予算よりははるかにましで、デフレから完全脱却はできないものの、それなりに効果があり、その効果によってある程度税収が増えることが期待できます。

デフレ・ギャップが20兆円もあるにもかかわらず、過去には、5兆円規模の補正予算が組まれ実行されたこともありましたが、これでは焼け石に水でほとんど効果がありませんでした。

しかし、デフレ脱却には不十分といいながら、さすがに10兆円規模ともなれば、それなりに効果はあり、少なくと統計値上には何らかの効果が現れてくるはずです。

その時に統計数値を根拠にして、また追加補正をするなどのことが考えられます。

本来は8%増税をして、個人消費が低迷してしまい、未だデフレから脱却できないのですから、最も良い手は、減税して消費税を5%にすることです。

しかし、ここ日本ではそれをしたくても、財務省の力が強くなかなかできないというのが実情なのです。本来財務省など政府の下部機関であり、政府の財政目標は政府が決めて、財務省はそれに従うべきです。

なぜなら、政府は国民の選挙により信託を受けた人々によって運営され、経済運営に失敗すれば、次の選挙では、有権者が気にいらなければ当選しないかもしれません。

しかし、財務省などの官僚はそうではありません。だから、本来は財政政策の目標は政府が定めて、財務省は専門家的な立場から、それを実行するというのが正しいあり方です。

ところが、現実には日本の財務省はまるで、これが一つの政治グループであるかのように、振る舞い、様々な同調圧力を用いて、結果としてこの国を支配しています。

テレビ番組で財務省の悪事を説明する高橋洋一氏
多くの人は財務省の言いなりで、まともな経済理論からするとおかしくて噴飯物の議論が、平気で公共の電波を通じて撒き散らされています。無知な政治家ならともかく、いわゆる主流派といわれる経済学者や評論家、アナリストまでそうなのですから、財務省の「同調圧力」は凄まじいものがあります。この日本という国はどこまで「財務省支配」がいきわたっているのか、本当に末恐ろしいです。

このような財務省支配がいきわたっている日本においては、政府ですら財務省に一定の配慮をしなければならないのです。

そのため、自民党は次善の策として、10兆円の財政出動を念頭に置いているのではないかと思います。

ブログ冒頭の記事では、「反安倍政権に財政再建派が多いことを考えると、秋の補正予算で二階構想が実現するかどうかは、安倍政権を倒閣する動きとも絡んでくるので見物だ」としています。

実際、この10兆円が実現すれば、先にあげたように次の展開も考えられますが、実現しなければ、安倍政権は終焉を迎える可能性がかなり高いです。

財務省の期待される役割は調整役だか、実体は調整でなくて同調圧力になっている
しかし、総理は改憲も長期政権も諦めていません。内閣支持率の低下を受け、安倍政権があたかも「崩壊前夜」のような印象を振りまくメディアもありますが、これは政治の根本を見ない希望的観測にすぎません。

細田派、麻生派、額賀派、岸田派、二階派の主要5派閥は安倍政権を支え続けると明言しています。実際、次の総裁選で安倍総理が負けて誰であれ他の人が総理になった場合、まだ安倍総理のように安定した政権を維持できるかはかなり疑問符がつきます。

それくらいであれば、ここしばらくは安倍政権を支え、再度支持率をあげ安定政権を目指すほうが得策です。

いずれにせよ、今般の内閣改造ではっきりしたのは、当分の間、日本政治の主役は安倍総理であり続けるということです。このあたりは、三浦瑠麗氏の以下の記事を読んでいただくと、良くご理解いただけるものと思います。
内閣改造 総理は改憲も長期政権も諦めていない 三浦瑠麗氏
そうなると、たとえ財務省が自民党を内部分裂させようとして、様々な同調圧力を加えてきたにしても、それに与する派閥は存在しないでしょう。さらに、野党に対して同調圧力をかけて何かしようとしても、民進党も支持率を落とし、蓮舫代表も退いている状況であり、自民党の派閥に何か働きかけるなどいうことはできません。

日本ファーストの会も未だ実体はなく、当面国政に影響を及ぼすことなどあり得ません。

そうなると、自民党は挙党一致で、内閣支持率をあげて再度安定政権を目指し「10兆円補正予算」に突っ走ることになります。

これには、さすがに財務省も「同調圧力」だけでは、対処できないでしょう。かといって、財務省は実力行使はできません。もしそれをすれば、法律違反になります。さすがに、財務省もここまではしないでしょう。

だとすれば、「10兆円補正予算」の実行と、その後の対処もうまくいくのではないでしょうか。しかし、これはあくまで自民党が挙党一致でこれに邁進した場合の想定です。そうでなければ、安倍政権終焉という結果を招くでしょう。

自民党が派閥抗争に傾けば、そうなります。これからどうなっていくか、動静を見守り、またレポートさせていただきます。

【関連記事】

安倍内閣内閣が問われる「20兆円財政出動」で物価目標2%達成―【私の論評】今国債を刷らずして、一体いつ刷るというのか?

2016年8月5日金曜日

【スクープ最前線】首相、二階幹事長&稲田防衛相で中国封じ込め 習政権は不穏な対日工作―【私の論評】習近平は国内政治力学のため尖閣を奪取する(゚д゚)!


二階幹事長と稲田防衛相 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
安倍晋三首相が、軍事的覇権を強める中国を封じ込める、新たな陣容を敷いた。内閣改造・自民党役員人事(3日)で、歴史問題などで中国に毅然と対峙してきた稲田朋美氏(57)を防衛相に抜擢し、中国に独自のパイプを持つ二階俊博氏(77)を幹事長に起用したのだ。硬軟織り交ぜた対中戦略だが、習近平国家主席率いる隣国の暴走は止まらない。南シナ海をめぐる中国の主張を「完全否定」したオランダ・ハーグの仲裁裁判所の裁定を「日本の陰謀だ」と批判し、挑発を続けている。ジャーナリストの加賀孝英氏が緊急リポートする。

中国が危ない。7月に仲裁裁判所の裁定を「紙クズだ」「従わない」と、国際法無視を宣言して以来、孤立を深めて常軌を逸している。外務省関係者がいう。

「ニューヨークのタイムズスクエアにある中国系広告スクリーンに、『仲裁裁判所の裁定はデタラメだ』というビデオを、1日100回以上も流している。米国人は『クレイジーだ』とあきれている」

「中国と南シナ海で対立するベトナムでも先月末、首都ハノイと南部ホーチミンの国際空港が中国のハッカー攻撃を受け電光掲示板に『南シナ海は中国領』というメッセージが流された。ベトナム人は激怒している」

今月1日東シナ海で大規模な軍事演習を行った中国海軍 
艦艇100隻、潜水艦一隻、航空機十数機を動員した。
だが、中国が総力をあげて攻撃しているのは、実は日本だ。ふざけたことにメディアを総動員して、仲裁裁判所の裁定は「日本の謀略だ」などと、嘘八百を国内外に吹聴し、すべての罪を日本にかぶせようとしている。

東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相会議が先月26日、ラオスで開かれた。これに合わせて行われた日中外相会談で、王毅外相は「これ以上(日本が各国と南シナ海問題で)介入を続ければ、別の意図があると証明することになる」と、岸田文雄外相を恫喝(どうかつ)した。

この2日後、中国国際放送のウェブサイト国際在線は「(日本は)誰の目にも明らかな陰謀を企てている」「尖閣諸島問題において中国に勝利するためだ」と報道した。要は、日本が尖閣諸島を中国から奪うために、陰謀を働いて裁定をクロにさせたというのだ。

笑止千万。尖閣諸島は沖縄県に属する日本固有の領土だ。卑劣な手段で奪おうとしているのは中国の方ではないか。

外務省関係者がいう。

「中国は必死だ。国内報道は『日本悪玉論』一色で、人民と軍を洗脳している。仲裁裁判所の裁定は致命傷で、習氏は追い詰められた。日本を悪玉にしなければ、人民と軍の不満が爆発して政権は持たない。だが、このまま反日感情をあおれば、人民と軍が暴走する。極めて危険だ」

追い詰められた習近平
私(加賀)は、夕刊フジ7月20日発行号で《習氏が追い詰められ、8月に尖閣で軍事衝突を画策している》という衝撃情報を報告した。中国が国内外で「日本悪玉論」「日本陰謀論」を吹聴するのは、衝突時の中国の暴走を正当化する世論作りと思える。

こうしたなか、中国海軍は1日、軍創立記念日を名目に、東シナ海で艦艇100隻、潜水艦1隻、戦闘機十数機を出動させた大規模な実弾軍事演習を行った。

さらに、とんでもない情報が飛び込んできた。

日中交流団体幹部の日本人男性が先月、「国家安全危害の疑いがある」として中国当局に拘束された件についてだ。習政権が発足した2012年以降、これで日本人10人がスパイ容疑などで逮捕・拘束された。実は、大変な動きがある。以下、複数の情報当局関係者から得た情報だ。

「中国は数十人の『日本人スパイ容疑逮捕者リスト』を作成している。だが、今回の団体幹部はリストに入っていない。今回の拘束は『中国に逆らうなら、今後は誰でも捕まえる』という、日本に対する脅しだ。今後、中国がスパイ容疑を名目に、日本人狩りを行う危険がある」

「日本国内でも危険な兆候がある。中国は『逮捕者リスト』に載った(親中派の)マスコミ関係者や学者を『(中国に来れば)逮捕するぞ』と脅して利用してきた。裁定以降、彼らに、南シナ海問題や尖閣問題などで『安倍政権批判をもっとやれ、と命令している』という情報がある」

中国は最近、南シナ海でロシアとの合同軍事演習を9月に実施すると発表した。これも、「南シナ海に手を出すな」という中国の脅しだ。米韓両国が配備を決定した、最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」に反対する意思表示でもある。

再度言う。日本の危機が高まっている。中国の卑劣な工作に断固屈してはならない。日本は、米国とオーストラリア、インド、そして世界各国と連携を強め、「法と自由と民主主義」を守り抜く積極外交を行うべきだ。日本は正々堂々、真正面から立ち向かえばいい。

加賀孝英(かが・こうえい)

【私の論評】習近平は国内政治力学のため尖閣を奪取する(゚д゚)!

中国が、近々尖閣で軍事衝突を企んでいることは他のソースでも公表されています。その代表的なものを以下にあげておきます。
「中国軍はヘリで尖閣を急襲する」と米研究機関
中国海軍のヘリコプター「Z80」
 中国軍が尖閣諸島など日本の領海や領空への侵犯を重ねる中、中国の軍事動向を調査する米国の研究機関が「中国軍部はヘリコプター急襲や洋上基地の利用によって尖閣諸島を奪取する戦略を着実に進めている」とする分析を明らかにした。 
同研究機関は、中国は長期的には東シナ海での覇権を確立するとともに、沖縄を含む琉球諸島全体の制覇を目論んでいると明言している。 
■ 尖閣制覇の目的は?  
   ワシントンで中国の軍事動向を研究する民間機関「国際評価戦略研究センター」の主任研究員リチャード・フィッシャー氏は、中国人民解放軍の東シナ海戦略についての調査結果を報告書にまとめ、このほど公表した。 
   同報告書は、まず中国が南シナ海で人工島建設による軍事化を推進し、同時に東シナ海でも、2013年11月の防空識別圏(ADIZ)の一方的な設置宣言に象徴されるように、軍事能力を高めていることを指摘する。特に、尖閣を含む琉球諸島の南部を重点的な対象とした(1)レーダー網や電子諜報システムの近代化、(2)J-10やJ-11など第4世代戦闘機の配備、(3)新型の早期警戒管制機(AWACS)や電子諜報(ELINT)の配備や強化、(4)以上のような戦力の演習の頻度増加――などが最近、顕著にみられるという。

また同報告書は、中国は尖閣諸島の軍事奪取のための能力を特に強化しているとし、尖閣の制覇には二重の目的があると分析する。つまり、“台湾攻略のための戦略拠点を確保する”、および“2020年頃までに東シナ海全域で中国の戦略核潜水艦活動の自由を確保する”という目的である。 
■ 着々と進んでいる尖閣奪取の準備 
   同報告書はそのうえで、尖閣諸島の軍事奪取に向けた中国人民解放軍の最近の動きとして、以下の諸点を列記していた。 
  • 浙江省の南麂列島で、ヘリコプター発着を主な目的とする新軍事基地の建設を始めた。この基地は尖閣諸島から約300キロの地域にある。中国軍ヘリのZ-8やZ-18は約900キロの飛行距離能力があり、尖閣急襲用の新基地と目される。  
  • 2015年6月以降に、浙江省の温州市で、日本の海上保安庁にあたる「海警」の新しい基地の建設を始めることが明らかになった。温州市は尖閣諸島から約320キロの地点にある。温州市の海警基地はまず尖閣諸島方面での任務につくとみられる。  
  • 中国海軍は新型のホバークラフトをすでに東シナ海に配備した。さらに新鋭の重量級ヘリの開発にも着手し、尖閣諸島や宮古列島、八重山列島への敏速な軍事作戦の実施能力を高めている。  
  • 中国海軍はウクライナ・ロシア製の時速50ノット、運搬量500トンの大型ホバークラフト2~4隻を購入し、同様の国産艦も製造中である。その結果、中国軍は、ヘリコプターの急襲部隊を後方から敏速に支援することが可能になる。  
  • 中国軍は、搭載量15トン、飛行距離400キロの新型ヘリコプターも独自に開発している。完成して配備されれば、尖閣諸島の占拠にきわめて効果的な手段となる。 
  • 中国は、2015年7月に公開した巨大な「洋上基地」の東シナ海への配備を実際に進め、尖閣攻略の有力な武器にしようとしている。この洋上基地は軍用航空機と軍艦の洋上の拠点として機能するため、中国が占拠した尖閣諸島に曳航すれば、即時に新軍事基地となる。 
■ 沖縄や先島諸島も狙われている 
さらにフィッシャー氏は同報告書で、尖閣諸島だけでなく沖縄や先島諸島(宮古列島と八重山列島)をも日本から奪取しようとする中国の長期戦略の存在を指摘した。 
同報告書によると、中国人民解放軍の羅援少将(軍事科学研究院所属)らは、中国共産党機関紙「人民日報」などに2013年半ば以降一貫して「沖縄を含む琉球諸島は本来は中国の主権に帰属する」という主張を発表してきた。中国と沖縄や先島諸島との歴史的な関わりを強調するその主張は、中国政府の意向の反映とみられるという。フィッシャー氏は、中国の尖閣諸島への攻勢は、沖縄などを含む日本領諸島へのより広範な長期戦略の一環であるとしている。 
米国で明らかにされた、こうした中国の尖閣諸島、沖縄その他の琉球諸島、さらには東シナ海全体への軍事的野望の実態は、当然ながら日本でも深刻に受けとめなければならない動きである。
この一連の動きは、以前このブログに掲載した中国による南シナ海の中国の戦略原潜の聖域化と無関係ではありません。

南シナ海を中国の戦略原潜の聖域にするというのは、南シナ海に戦略原潜(SLBM(潜水艦発射型弾道弾)装備)を他国に気づかれぬよう潜ませておき、核による先制攻撃や、報復攻撃を可能にすることです。

中国はかねてより、中米の対等な二国間関係(G2)を追求してきました。そうして、この二国で世界の覇権を分け合うというのが、中国の最終目標です。そのためには、まずは軍事的に米国と対等にならなければなりません。

そのためには、核戦略が重要になります。米国と対等になるため、米国に対して先制核攻撃および報復核攻撃ができるようになってはじめて、対等な二国間系関係が構築できると、中国は考えています。

そのためには、南シナ海の環礁を埋め立てて、軍事基地化して、この一帯を中国の実行支配下におくことが必要不可欠です。

ここに戦略原潜を潜ませておくことにより、米国にさとられずに、原潜を西太平洋方面に定期的に航行させ、常時米国を戦略核(SLBM)の標的にすることができます。

なぜ、ここまで中国が南シナ海にこだわるかといえば、東シナ海を含む中国の近くの海域は、浅い海であり、中国の原潜の行動は監視衛星や、対潜哨戒機、音響測定艦などによって、完璧に把握され、丸裸にされるからです。そのため、比較的近くの南シナ海の深い海は、中国にとって垂涎の的なのです。

ただし、中国は核兵器を使って、米国と核戦争をしようという意図があるわけではありません。あくまで、米国と対等の核戦略を持ち、対等な二国関係を保ち、最初はアジア全域に、いずれは世界の半分を自らの覇権の及ぶ範疇にして、全世界を米国と中国で分け合おうというのが、中国の意図です。

経済的にも軍事的にも台頭してきた、中国に対して、いずれ米国も中国と対等の二国間関係を築くことを望むであろうと長年中国は考えてきました。そうして、これに対して日本も追随するだろうと考えていました。

しかし、現実は違いました。南シナ海で米国は「航行の自由作戦」敢行しました。これは、この一帯を中国の戦略原潜の「聖域」にはさせないことの意思表示でした。そうして、それは、米国が中国と対等の二国間関係など望んでいなことの表明でもありました。

そうして、さらには今回のオランダ・ハーグの仲裁裁判所による裁定です。これに関しては、中国側はもっと中国に配慮した穏健なものになることを予想していたようです。

しかし、その期待は見事に裏切られて、仲裁裁判所は中国が「歴史的権利」として主張する「九段線」について国際法上の根拠は認められないとの裁定を公表しました。


これによって、中国の南シナ海の戦略原潜の「聖域化」は、国際社会からはっきりと「ノー」をつきつけられたのです。

しかし、米中の対等な二国間関係を目論む中国にとっては、これは絶対に許容できないことでした。

南シナ海の聖域化を是が非でも、実行しようとする中国は、この裁定を完全無視し、国際社会から孤立しました。

しかし、それでも中国は諦めません。南シナ海の実行支配をさらに強化するためには、米国はもとより、日本の艦艇やなども南シナ海からシャットアウトしなければなりません。

そのためには、東シナ海と南シナ海にある台湾はいずれ、中国の傘下に完璧に収めて、台湾を中国の軍事基地化して、東シナ海方面から入ってくる日米の艦船を完璧シャットアウトする必要があるのです。

台湾は、東シナ海と南シナ海の境目にある 尖閣諸島は、その台湾に近い

そうして、習近平がこれを推進する理由が別にもあります。それは、中国の国内事情です。米国の「航行の自由作戦」や、仲裁裁判所の裁定など、中国にとってはどれも到底許容できないことばかりです。それどころか、これらによって、習近平の権威は、地に堕ちました。

中国では、習近平による腐敗撲滅運動が展開されているのは皆さんご存知だと思います。しかし、これの本当に意味するところは、習近平派と、反対派による壮絶な権力闘争です。

権力闘争とは、中国内の派閥が、いずれの派閥が統治の正当性があるかをあらゆる手段を用いて、争うことです。権力闘争の最終目的は、自らの派閥の統治の正当性を最高に高めることです。

最近国内で権威が失墜しっぱなしの習近平 失脚の恐れもでてきた

現在の状況は、先ほど述べたように、米国による「航行の自由作戦」や仲裁裁判所による裁定により、習近平の権威は地に堕ち、習近平にとっては最悪の状況にあります。

習近平は、国内で自らの権威を強め、統治の正当性を強める必要があります。そのためには、南シナ海以外でも、何らかの行動を起こさなければなりません。

その行動を起こす先としては、南シナ海の周辺諸国や、台湾、尖閣諸島などがあります。しかし、南シナ海周辺諸国に関しては、仲裁裁判所の裁定もあり、ここに手を出せば、国際社会が黙っていません。軍事的制裁もあり得ますし、大規模な経済制裁は当然予想されることです。

台湾に関しては、いずれ自分の傘下に収めるつもりではあっても、ここにはすでに、反中国的な新政権が誕生しています。ここを拙速に手中にすれば、これも国際世論をさらに激高させることになります。

そこで、浮上するのが、尖閣諸島です。日本は、軍事的にも、経済的にもかなり強い国ですが、最近集団的自衛権の行使を容認する安保法制が整備されたとはいえ、まだまだ戦争・紛争などに関する法整備がなされていません。そもそも、真の意味での軍隊すら存在しません。自衛隊は軍隊ではありませんし、自衛隊員は公務員です。

実際に戦争をするということになれば、他国にない縛りがかなりあります。そういう意味では、日本の尖閣諸島は習近平にとっては狙い目です。

このあたりに習近平はつけいって、尖閣諸島付近で軍事衝突をしたり、あるいは尖閣諸島を奪取することにより、中国内での自らの権威を高めることによって、統治の正当性を得るという冒険に出るかもしれません。

確かに、日本の自衛隊、特に海上自衛隊の力はこのブログでも掲載してきたように、侮ることはできません。それに、沖縄には米軍の海兵隊が駐留しています。それに、日本の他の地域にも米軍基地が存在し、日本に手を出せば、米国との戦争も覚悟しなければなりません。

しかし、習近平は、このまま権威を失墜し、統治の正当性を失い、失脚して座して死を待つくらいなら、これを避けるために、一気に大冒険に出るかもしれません。

中国の国内政治の力学によっては、習近平は尖閣で勝負に出る可能性は、大いにあります。

日本としては、これは絶対に避けるべきです。ブログ冒頭の記事では、"日本は、米国とオーストラリア、インド、そして世界各国と連携を強め、「法と自由と民主主義」を守り抜く積極外交を行うべきだ。日本は正々堂々、真正面から立ち向かえばいい"などとしていますが、私はそうは思いません。

もうすでにその時期は過ぎました。日本ももし中国が尖閣に攻め入ってきたときに、どのように軍事的に対処するのか、真剣に考えておくべきときがきたものと思います。

私は、法律の専門家ではないので、何ともいえませんが、自分の国の領土に中国の軍隊が攻め込んできたとしたらということを予め想定して、それに対処する方法を考えておくべきです。

憲法改正などすぐにはできないのはわかりきっているので、現行憲法のまま、現行の法律体型のままで、対処する方法を早急に考えておくべきです。場合によっては、超法規的措置も実行する勇気と胆力が必要になると思います。その面では、稲田防衛相には期待できそうではあります。

いずれにしても、私たちも、習近平が大冒険をする可能性があることだけは、忘れるべきではありません。そのときは、本当に尖閣は危ういです。

【関連記事】

【緊迫・南シナ海】中国の南シナ海支配を否定 仲裁裁判所「歴史的権利なし」と判断―【私の論評】南シナ海の本当の危機は、中国の核戦略による聖域化だ(゚д゚)!





【関連図書】

台湾と尖閣ナショナリズム――中華民族主義の実像
本田 善彦
岩波書店
売り上げランキング: 78,771


米中激突で中国は敗退する―南シナ海での習近平の誤算
長谷川 慶太郎 小原 凡司
東洋経済新報社
売り上げランキング: 149,970

南シナ海: アジアの覇権をめぐる闘争史
ビル ヘイトン
河出書房新社
売り上げランキング: 170,345

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣―【私の論評】岩屋外務大臣の賄賂疑惑が日本に与える影響と重要性が増した企業の自立したリスク管理

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣 渡邉哲也(作家・経済評論家) まとめ 米国司法省は500ドットコムと元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い司法取引を結んだ。 日本側では5名が資金を受け取ったが、立件されたのは秋本司被告のみで、他...