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2020年8月30日日曜日

チェコ上院議長が台湾到着 90人の代表団、中国の反発必至―【私の論評】チェコは国をあげて「全体主義の防波堤」を目指すべき(゚д゚)!


    台湾北部の桃園国際空港に到着したチェコのビストルチル上院議長(中央)と
    出迎えた呉●(=刊の干を金に)燮外交部長(右)=30日
東欧チェコのビストルチル上院議長を団長とし、地方首長や企業家、メディア関係者ら約90人で構成される訪問団が30日、政府専用機で台湾に到着した。台湾と外交関係を持たないチェコが中国の反対を押し切り、準国家元首級の要人が率いる代表団を台湾に派遣したのは初めて。国際社会での存在感を高めたい台湾にとっては大きな外交上の勝利といえるが、中国が反発するのは必至だ。

 30日午前、北部の桃園国際空港に到着したマスク姿の議長一行は、出迎えた台湾の呉●(=刊の干を金に)燮外交部長(外相に相当)らと握手でなく腕を合わせてあいさつを交わした。台湾メディアによれば、訪問団は9月4日まで滞在。ビストルチル氏は1日に立法院(国会)で講演し、3日に蔡英文総統と会談する。4日には米国の対台湾窓口機関である米国在台湾協会(AIT)とのフォーラムにも出席する。

 チェコ上院議長の訪台をめぐっては、ビストルチル氏の前任のクベラ氏が昨年に訪台を約束したが、中国大使館から脅迫され1月に急死した。ビストルチル氏は上院議長就任後、何度も「クベラ氏の遺志を引き継ぐ」と表明していた。

【私の論評】チェコは国をあげて「全体主義の防波堤」を目指すべき(゚д゚)!

チェコの憲法で大統領に次ぐ地位とされる上院議長のビストルチル氏、このほか訪問団は首都プラハのズデニェク・フジブ市長や上院議員ら約90人からなり、民主化を実現させた1989年の「ビロード革命」(1989年11月17日にチェコスロバキア社会主義共和国で勃発した、当時の共産党支配を倒した民主化革命。スロバキアでは静かな革命と呼ぶ)以降、最高レベルの訪問団とされます。9月3日には蔡総統と総統府(台北市)で会談する予定。ビストルチル氏は出発前のあいさつで訪台の目的について、民主主義を守る台湾への支持を示すためと語りました。

チェコのビストルチル上院議長(左、本人のツイッターから)とプラハのフジブ市長

新型コロナ対策のため、訪問団の参加者には搭乗前3日以内の陰性証明の提出を求めたほか、9月1日にはさらに検査を実施。滞在中は専用車を使用するなどして市民との接触を避けます。一行は同5日に帰国の途につきます。

欧州との外交をめぐっては、中国の王毅外交部長が25日~9月1日の日程でフランスなど5カ国を歴訪中です。台湾が外交関係を結ぶ国はバチカンのみとなる一方、中国は近年、巨大経済圏構想「一帯一路」を足掛かりに欧州で影響力を増しています。台湾側は外交関係のないチェコ代表団の受け入れをきっかけに、欧州諸国との連携を強化したい考えです。

今回の訪台には、今年1月に急死したチェコのヤロスラフ・クベラ前上院議長の夫人も加わっています。

クベラ氏は、中国の反対を押し切って今年2月に訪台する予定でしたが、1月に急死しました。生前、台湾行きを強行するならチェコ企業に報復するなどと中国大使館から脅迫されていた事実が地元メディアによって暴露されました。

中国はチェコを中・東欧諸国の玄関口として重視しています。加えて、チェコは欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)双方に加盟しているため、中国としてはチェコを足掛かりに西欧諸国に対する影響力を高めたいとの狙いもあるようです。

チェコ大統領 ゼマン氏

一方、チェコ側も2013年に親露的でもある、ゼマン氏が大統領に就任して以後、対中関係の強化を図ってきました。ゼマン氏は訪中を繰り返し、2015年に中国が戦争勝利70周年記念の軍事パレードを実施した際も、欧米諸国のほとんどが国家元首出席を見送る中、北京に赴いて、中国との親密ぶりをアピールしました。

翌年3月に中国の習近平国家主席がチェコを訪問した際には、首都プラハでデモ隊の動きを封じ込めて迎え入れるなど、最大限の配慮を見せました。

また、中国政府が「中国からの独立を狙う分裂主義者」と敵視するチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世が同年10月にチェコを訪れ、副首相らと面会した際、ゼマン氏は直ちに、当時のソボトカ首相とともに「一つの中国」原則を支持する声明を出すほど神経を使っていました。

ゼマン政権による中国接近に警戒を強めたのがプラハのフジプ市長です。

プラハと北京は2016年に姉妹都市協定が締結されていました。フジプ氏が2018年11月に市長に就任すると、協定の中に「一つの中国」原則の順守を記す条項が含まれていたことに違和感を抱き、北京側にこの条項のみを削除するよう求めたのですが、北京側が受け入れなかったため、昨年10月、協定解消に踏み切りました。

一方、フジプ氏は昨年3月に訪台し、蔡英文総統らと会談するなど台湾に接近、今年1月13日には、今度はプラハ―台北間で姉妹都市協定を結びました。AFPによると、フジプ氏はその直後に、中国を「信頼できないパートナー」と非難したといいます。

フジプ氏は自身の信念として「市長として『民主主義と人権を尊重する道に戻る』という公約を果たすために取り組んでいます。それらはビロード革命(チェコスロバキアだった1989年12月に共産党体制崩壊をもたらした民主化革命)の価値観であり、現在、チェコ政府が無視しているものだ」と語っています。

加えてチェコでは今年1月、人気政治家だったクベラ氏が急死し、その妻が「夫の死は中国政府からの度重なる嫌がらせの結果だ」と主張した一件もありました。

チェコ企業団が19年10月、台湾を20年2月に訪問すると発表し、その団長を当時上院議長だったクベラ氏が務めることになりました。この訪台は結局コロナ禍により中止になりましたが、中国側は「一つの中国」原則に反するとして不快感を示し、再三にわたってチェコ側に取り消しを迫っていました。

現地報道によると、中国の張建敏・駐チェコ大使がゼマン大統領の秘書官に「訪台を阻止しなければ両国のビジネスに影響が出る」と圧力をかけたとされています。

夫人のヴェラ氏によると、クベラ氏が亡くなる3日前に中国大使から大晦日の夕食会に招待され、「非常に不快な非公開の会談」に参加しました。途中で、クベラ氏は別室に連れていかれ、戻ってきたときには夫人に中国大使館が用意した食事は絶対食べないように言ったといいます。

夫人は遺品整理の際に、チェコ大統領府と中国大使館が送りつけた2通の「脅迫状」を発見しました。内容は、台湾訪問をやめなければ、家族を危険に晒すというものでした。ヴェラ夫人は、娘と二人で恐怖に怯えたと述べ、これらの手紙がクベラ氏を死に至らせたと考えていると述べました。クベラ氏は亡くなる前の7日間、一言も発さず落ち込んでいたといいます。

ヴェラ夫人はまた、クベラ氏が台湾を訪問することに強いこだわりを持っていたと強調し、家族には「共産党の独裁時代にも、誰もクベラを止めることができなかった!今やチェコは民主主義国家だ。このような圧力に屈するものか!」と言っていたと明かしました。

ビストルチル現上院議議長氏は、「2通の脅迫状」という重大スキャンダルを受けて、ゼマン大統領に説明を求める書簡を3通送ったのですが、ゼマン大統領は議会からの質問と調査の要求を拒否していると述べました。


台湾メディアによると、ヴェラ氏は地元テレビに出演した際、「夫は中国政府に脅迫され、そのストレスが急死の引き金になった」との見方を示し、後任の上院議長となったビストシル氏やバビシュ首相は相次いで、張大使更迭を求める考えを示しました。

そのビストシル上院議長が6月9日、クベラ氏の計画を引き継いで今年8月30日~9月5日に企業団とともに訪台すると発表しました。ビストシル氏は右派野党・市民民主党所属で、「政府の外交方針が人権と自由を支持しないのなら、それを強調するのは議会の役目だ」と話しています。

中国は反中感情を和らげるため、新型コロナウイルスの感染防止を目指す「マスク外交」によって挽回を図っています。

チェコでは医療従事者のためのマスクや手袋などの個人用防護具が不足し、政権批判が高まっていたため、ゼマン政権は諸手を挙げて中国からの支援を歓迎しました。

中国から医療用品を運んできた航空機が今年3月、プラハの空港に到着すると、チェコの閣僚らが滑走路に並んだといいます。その後も中国からの物資が届けられ、ゼマン氏は「我々を助けてくれるのは中国だけだ」とリップサービスし、遠回しにEUを批判してみせたとされています。

クベラ氏の生前の願いをかなえるためとして夫人に同行を打診したのは団長のビストルチル氏。台湾訪問が民主主義、自由を守る決意の表れとして、チェコ上院で強く支持されている背景があったといいます。

メンバーは政治家や、学者、文化団体などで、40人余りの企業家も含まれます。いずれも民主主義の信奉者で、中国から言論の自由を制限されるなど、不条理な圧力をかけられた経験を持つ人もいるといいます。今回の交流を通じ、台湾の民主主義コミュニティーとの間に制度的な協力ネットワークが構築されることが期待されます。

訪台に当たっては、新型コロナウイルス対策として、往復ともチャーター便を利用し、ウイルス検査を出発前と台湾到着後の計2回受けることなどが求められました。これらの条件は、今月9日に訪台したアザー米厚生長官や、同日李登輝元総統の弔問のために台湾を日帰り訪問した日本の森喜朗元首相らと同じだといいます。

チェコ政府は、親中的ですが、チェコの憲法で大統領に次ぐ地位とされる上院議長のビストルチル氏をはじめ中国に対峙しようとする勢力が拡大しつつあるようです。

台湾は国をあげて中共の「全体主義の防波堤」になっていることは明らかです。米国は今後「全体主義への砦」としての台湾の存在の重要性を認識して軍事・経済的支援を強力に推進することになるでしょう。その幕開けが、先日のアザール長官の台湾訪問なのです。

チェコは地政学的にいって、東欧に属していおり、東欧は欧州では中国に最も近い位置に属しています。ロシアにも近いです。このチェコが「全体主義の防波堤」になれば、東西に全体主義に反対する勢力の橋頭堡が築けることになります。

今回のチェコの訪問団の訪台が、将来これに結びつく可能性は大きいと思います。

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