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2017年2月16日木曜日

日米共同声明に仕込まれた対日要求―【私の論評】米は、南シナ海を支那原潜の聖域にさせない(゚д゚)!

日米共同声明に仕込まれた対日要求

日本は口先だけの日米同盟強化から脱却できるのか

南シナ海のスカボロー礁付近で中国軍機が米海軍のP-3C哨戒機と
「安全でない」距離まで接近していた。写真は
米軍のP3C。
   2月10日(米国時間)、安倍首相とトランプ大統領によって発せられた「日米共同声明」を、多くのアメリカ海軍関係戦略家たちが高く評価している。アメリカ大統領が公の文書で「公海での航行自由原則を守り抜く」ことを明言したからである。

 アメリカ側の軍事専門家にとって、共同声明での尖閣諸島や沖縄の基地問題に関する言及は、オバマ政権はじめこれまでの米首脳の方針を再確認しただけであったため、さしたる関心事ではなかった。しかし、南シナ海(そして東シナ海)での「航行自由原則」を共同声明で明言したことに関しては極めて高く評価している。

 なぜなら本コラムでも繰り返し指摘してきたように、米海軍対中強硬派が長年にわたって主張し続けてきた南シナ海における「航行自由原則維持のための作戦(FONOP)」の実施を後押しすることになるからだ。

 FONOPを強力に実施しなければならない段階に

 2月初頭に日本を訪問したマティス国防長官は、南シナ海での「航行自由原則維持のための作戦(FONOP)」の実施を強化すると明言した。

 すると、その言葉に対抗するように、マティス長官が日本を離れると中国はすぐに海警局巡視船を尖閣諸島周辺の日本領海内を航行させた。

それに引き続いて、南シナ海の公海上空(アメリカ側によると)において、中国空軍KJ-2000早期警戒機がアメリカ海軍P-3C哨戒機に対して危険なほど異常接近(300メートル)をする事案も発生している。さらに、中国がスカボロー礁の軍事基地化を開始するという情報も浮かび上がっている。

 オバマ政権下では、質・量共に制限をかけられたような形でしかFONOPは実施が許可されなかった。しかし、以上のような状況において、米国はマティス長官が明言したように、FONOPをより強力に実施しなければならない段階に至っている。

 ただしマティス長官と時を同じくして、ティラーソン国務長官は、公海航行自由原則を堅持する(させる)ための軍事的作戦を実施するといっても、中国艦艇船舶や航空機が人工島へ接近するのを阻止するような作戦(ブロケード)を展開することはない、とも語っている。

 これは、至極当然のステートメントである、というのは、このような軍事作戦を実施することは、実質的に対中戦争に突入することを意味するからだ。そのような事態はアメリカ政府も財界も望んでいないし、そもそもアメリカ軍自身も現時点における南シナ海での中国との軍事衝突だけは絶対に避けたい状況にある。

 自衛隊艦艇の参加は可能と考える米国側

 いずれにせよ、日米共同声明という公式文書で、アメリカが国是としてきている「公海航行自由原則の維持」が明示された。これは、日米両国が日米同盟強化を推し進めるにあたって、とりあえずはこの分野での役割分担を推し進めるべきであるという強いメッセージが発せられたことを意味している。

 そして、ここで重要なのは、アメリカが南シナ海で実施しようとしているFONOPへの協力として日本に期待されているのは、日本にとって憲法上も予算上(厳しいが)も不可能ではない“軍事作戦”であるということだ。このことは、アメリカ側も当然認識している。

 たとえば、独自の核武装によって日米同盟を強化することは、いくらトランプ大統領が大統領選中に日本核武装を口にしたとは言っても現実的には極めて困難であることは、アメリカ側は十二分に理解している。また、アメリカが実施しようとしている対IS掃討戦に、日本政府が大規模な戦闘部隊を派遣してアメリカ軍の戦闘力を補充することも、自衛隊の現状から判断すればまずあり得ない。

 しかしながら、海上自衛隊と密接な関係を維持しているアメリカ海軍は、海上自衛隊の予算・人員が決して潤沢ではないことは承知しつつも、海上自衛隊が艦艇や哨戒機を南シナ海のFONOPへ派遣する能力を十二分に保有していると考えている。

 FONOPの表向きの目的は、公海航行自由原則を一方的に拒否する国家に対して、「国際海洋法秩序に従い公海航行自由原則を踏みにじるな」という強固な意思を示すことである。

 あくまでFONOPは「公海航行自由原則」をアピールすることが目的の、戦闘を想定しない軍事作戦である。結果として「中国が一方的に表明している“中国の海”なる曖昧な概念は認めない」「中国によるそれらの島嶼環礁に関する一方的な領有権の主張も認めない」ということにはなるが、島嶼の領有や領海の主権を巡る紛争に直接的に介入することはない。そのため、アメリカが実施するFONOPへの自衛隊艦艇の参加は戦闘恐怖症の日本社会にも十二分に受け入れられるものとアメリカ海軍戦略家たちは考えているのだ。

【私の論評】米は、南シナ海を支那原潜の聖域にさせない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、アメリカ海軍は"海上自衛隊の予算・人員が決して潤沢ではないことは承知しつつも、海上自衛隊が艦艇や哨戒機を南シナ海のFONOPへ派遣する能力を十二分に保有していると考えている"とあります。

これは事実です。実際、海上自衛隊は艦艇を南シナ海に派遣しています。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日米比越4カ国で中国を威嚇 海自護衛艦の“歴史的”寄港で南シナ海「対中包囲網」―【私の論評】マスコミが絶対に国民に知られたくない安全保障のダイヤモンドの完成(゚д゚)!
フィリピンのスービック港に寄港した海上自衛隊の潜水艦「おやしお」(左)、護衛艦「ありあけ」と「せとぎり」
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に一部引用します。この記事は昨年の4月のものです。
日米両国が、フィリピンやベトナムとともに、南シナ海で軍事的覇権を強める中国を封じ込める動きを見せている。米原子力空母「ジョン・C・ステニス」が同海に展開するなか、海上自衛隊の護衛艦や潜水艦がフィリピンに寄港したのだ。護衛艦はベトナムにも向かう。護衛艦はベトナムにも向かう。海自最大級のヘリコプター搭載型護衛艦「いせ」も近く、フィリピンに寄港予定で、南シナ海の「航海の自由」を断固守る覚悟といえそうだ。
海自の護衛艦「ありあけ」「せとぎり」と、練習用潜水艦「おやしお」は3日(ブログ管理人注:昨年4月)、南シナ海に面したフィリピン・ルソン島のスービック港に入港した。日本の潜水艦のフィリピン寄港は15年ぶりという。
上の記事にもある、海上自衛隊のヘリコプター搭載の大型護衛艦「いせ」は昨年4月26日、フィリピン北部ルソン島のスービック港に入港しました。航行訓練を含む4日間の親善訪問でした。

南シナ海のほぼ全域で領有権の主張を強める中国に対抗し、軍の装備が乏しいフィリピンは、同じ米国の同盟国である日本との連携強化を求めています。海自の艦船がスービック港を訪れたのは、この3週間あまりで2度目、この1年間では3度目となりました。

日本政府は昨年2月、防衛装備品および技術の移転に関するフィリピン政府との協定に署名した。対象とされる中には、対潜哨戒機やレーダー技術が含まれる可能性があると高官らは述べていました。

フィリピン北部ルソン島のスービック港に入港した海上自衛隊の
ヘリコプター搭載型護衛艦「いせ」(2016年4月26日撮影)
さらに、以下のような事実もあります。この記事は昨年1月のものです。
海自哨戒機、南シナ海飛行拡大へ…中国をけん制―【私の論評】これは中国にとってはかなりの脅威、南シナ海の中国の艦船と潜水艦の動きが丸裸に(゚д゚)!

この記事は昨年1月のものです。以下に一部引用します。
防衛省・自衛隊は、アフリカ・ソマリア沖で海賊対処活動に参加したP3C哨戒機が日本に帰還する際の飛行ルートを見直し、フィリピンやベトナムなど南シナ海に面する国の基地を優先的に経由させる方針を固めた。 
高度な監視能力を持つP3Cの飛行範囲が、中国が「領海」と主張する南シナ海で拡大する見通しだ。「上空飛行の自由」の保護にもつながり、米軍が中国の人工島周辺で実施している巡視活動を日本が独自に支援する活動といえる。
海上自衛隊はP3C哨戒機2機を昨年2月18日までの3日間、ベトナム中部ダナンに派遣し、ベトナム海軍と合同で図上の洋上捜索訓練などを実施しました。日本とベトナムの防衛協力をアピールし、南シナ海における中国の実効支配強化をけん制するとともに、自衛隊の存在感を高める狙いがありました。

海自のP3C哨戒機
さらに、以下のような事実もあります。
【世界ミニナビ】中国ご自慢の空母「遼寧」は日米潜水艦隊がすでに“撃沈”?―【私の論評】中国の全艦艇は既に海上自衛隊により海の藻屑に(゚д゚)!
実戦ではほとんど役立たずといわれる空母「遼寧」
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から一部引用します。
米国にとって代わろうと覇権獲得に躍起となっている中国。その中国が海洋強国の象徴として心血を注いで建造したのが空母「遼寧」だ。歴史をひもとくと巨艦を持った軍事国家は「砲艦外交」に乗り出すことが多く、中国も周辺諸国威圧のため、遼寧を何度か出航させている。しかし、対する日米の潜水艦艦隊はピッタリとその動向をマークしており、すでに遼寧を何度か“撃沈”しているとみられる。もちろん、秘密裏に行われている演習の上でのことだが…。
日本の海上自衛隊と米国海軍の潜水艦艦隊が演習で遼寧を“撃沈”しているようだと明らかにしたのは、米誌「ナショナル・インタレスト」だ。同誌は6月18日のウェブサイトで、「撃沈している」との断定的な表現は微妙に避けながらも、日米の潜水艦艦隊は遼寧が出航するたびに追尾し、“撃沈”の演習を繰り返しているとしている。
潜水艦は、海底に深く沈めば動向を知られることなく、敵を偵察したり攻撃することができます。そのため、昔から潜水艦の動向はどの国ても明らかにすることはありません。そのため、日米ともにそれは明らかにされてはいません。

そのためか、この記事でもいずれの海域で遼寧の撃沈訓練が行われたのかは明記していません。しかし、当然のことながら、南シナ海での訓練も含まれるものと思います。

さらに、日米の潜水艦艦隊という表現から、日米共同演習もあったものと推察されます。実際に様々な条件でシミレーションし、遼寧側に気づかれることなく、撃沈可能であることを何度も確かめて、日米双方とも自信を深めているのでしょう。

このように、昨年の時点ですでに海自は、艦艇や哨戒機を南シナ海に派遣しているわけですから、アメリカが実施するFONOPへの自衛隊艦艇の参加は戦闘恐怖症の日本社会にも十二分に受け入れられるものとアメリカ海軍戦略家たちは考えるのは当然といえば当然です。

海自としては、これらの頻度を増やすということで十二分に米国の期待に応えることができることでしょう。

また、FONOPには英国、フランス、オーストラリアなどの艦艇も参加することになると思います。

南シナ海をめぐる中国の主張や行動は国連海洋法条約違反などとしてフィリピンが申し立てた仲裁手続きで、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は昨年7月12日、中国が「歴史的権利」として主張する「九段線」について国際法上の根拠は認められないとの裁定を公表した。南シナ海のほぼ全域の主権を主張して強引に進出する中国に対し、初めて国際法に基づく判断が下されました。

南シナ海は、日米の艦艇をはじめ、他国の艦艇も含めて多数の艦艇が自由に航行することとなり、支那による南シナ海を原潜の聖域にする目論見は完璧に失敗することでしょう。

米国にとっては、南シナ海が支那原潜の聖域にさせないことが、究極の目的でしょう。支那がどこまでも、これにこだわり、各国艦艇などに武力攻撃を仕掛けるなどことがなければ、米国もそれ以上深追いすることもないでしょう。しかし、支那による南シナ海の聖域化に関しては、全力でこれを阻止するでしょう。無論、場合によっては武力衝突も辞さないでしょう。

そうして、もし支那が戦略原潜を南シナ海に派遣するような動きをみせれば、それこそ、キューバ危機の再来という事態を招くことになるでしょう。

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