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2019年7月25日木曜日

韓国「WTOの支持取り付け失敗」 ロイター通信報道―【私の論評】韓国への貿易管理強化は、日本版「国家経済会議」設立の前触れか?設立されれば、中露も対象になり得る(゚д゚)!


日本の輸出規制強化について記者会見する成允模・韓国産業通商資源相=24日、ソウル

 韓国産業通商資源省は24日、日本政府が安全保障上の友好国として輸出上の手続きを簡素化する「ホワイト国」から韓国を除外する方針を示していることについて、不当な措置であり、即時撤回を求めるとする意見書を日本政府に提出した。

 ジュネーブで24日に開かれた世界貿易機関(WTO)一般理事会では、韓国を支持する動きがなく、ロイター通信は「韓国は支持を取り付けることに失敗した」と報じた。

 24日は「ホワイト国」除外に関して日本政府が実施しているパブリックコメント(意見公募)の締め切り日に当たる。除外措置が実施されれば、半導体材料3品目について4日から行われている輸出管理の厳格化に比べ、自動車産業など広範囲に影響が及ぶと予想され、韓国は強く警戒している。

 成(ソン)允(ユン)模(モ)産業通商資源相は、記者会見で「韓国の輸出統制制度の未熟さや両国間の信頼関係の毀(き)損(そん)など、日本側が挙げる措置理由には全て根拠がない」と批判。日韓の経済協力の「根幹を揺さぶる重大事案」を事前協議なく通告したとして遺憾の意を表明した。「韓国政府は未来志向的な関係発展のため、いつどこでも対話する準備ができている」とも述べ、日本側に協議に応じるよう促した。

 韓国の主要経済5団体も23日に「世界経済に相当なマイナス影響を及ぼす」として措置の撤回を求める意見書を日本側に提出した。

 一方、訪韓したボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は24日、康(カン)京(ギョン)和(ファ)外相と会談し、日韓関係のさらなる悪化を防ぎ、対話を通じた外交的解決を模索する上で、意思疎通を密にすることで一致した。韓国外務省が発表した。

 ボルトン氏は、韓国大統領府の鄭(チョン)義(ウィ)溶(ヨン)国家安保室長や鄭(チョン)景(ギョン)斗(ドゥ)国防相とも会談、北朝鮮核問題などでの日米韓協力の重要性を再確認した。韓国は、深刻化する日韓対立の仲裁を米国に期待しているが、米側は、まずは日韓で解決すべきだとの立場を維持している。

【私の論評】韓国への貿易管理強化は、日本版「国家経済会議」設立の前触れか?設立されれば、中露も対象になり得る(゚д゚)!

韓国を包括輸出対象国(ホワイト国)から除外する日本政府の手続きが完了した場合、年間6200億円を超す半導体製造装置の輸出に大きな影響が出そうです。輸出側の日本企業と輸入側の韓国企業双方の事業に短期的打撃が発生する事は避けられないですが、この問題に詳しい自民党議員からは短期的な損失は予想しており、中長期的なメリットを勘案しながら、最終的な決断を行うとの方針が示されています。

財務省が発表している貿易統計によると、2018年の対韓国向け輸出総額は5兆7925億円で輸出全体の約7%。その中で輸出額が多いのは半導体等製造装置の6297億円、鉄鋼の4551億円、半導体等電子部品の2565億円。

半導体等製造装置の対韓輸出は、全世界向け輸出の2割強を占めます。この分野での日本企業の世界シェアは高く、輸入している韓国企業にとってもメンテナンスなどのアフターサービスが充実し、日本企業らしいきめ細かなサービスが魅力となっているといいます。

このような状況の中で、包括的な輸出許可が出なくなり、個別審査による輸出許可を待つシステムへのシフトは、商品の受注から実際の出荷までの期間が大幅に長期化し、短期的に韓国企業のニーズに応えることが難しくなることが予想されます。

複数の関係者によると、日本メーカー側は売上高、営業利益を短期的に押し下げる可能性があり、韓国企業にとっては稼働率の低下による売上高、営業利益などの下押し要因になります。

業界筋によると、日本から大規模に半導体製造装置を輸入している企業として、サムスン電子、SKハイニックスなどが知られているといいます。

こうした展開が予想される中で、甘利明・自民党選挙対策委員長とともに、「国家経済会議」の創設を提言しているグループに属する同党の中山展宏・衆議院議員は、ホワイト国除外措置の検討について「日本の国益が損なわれる安全保障上の問題を重視しているため」と説明しています。

中山展宏・衆議院議員

そのうえで「短期的に韓国、日本企業に打撃があることは承知している」との見解を示しました。

中山氏が強調するのは、今回の除外措置が実施されれば、長期的にアジアの安全保障の確保を支援し、日本企業がアジアで安全にビジネスを継続することが可能になるとの論点です。

こうした観点から、自民党は短期的な打撃と長期的なメリットがどの程度になるのかシンクタンクに試算を依頼しており、近く公表する方針といいます。中山氏はその試算結果などを踏まえ、企業の理解を得たいと説明しました。

同氏らが創設を働きかけている国家経済会議は、安全保障と経済政策を一体とした政策として捉えることを前提としており、韓国をホワイト国から除外する政策対応は、同会議発足後の対応を先取りしたかたちとも言えます。

ただ、同氏は「ホワイト国除外といっても禁輸措置ではないため、企業に実害の少ない形で対応できる」と言及。韓国側の対応次第では、柔軟に対応する余地があることをうかがわせました。

国家経済会議とは、米国ではすでに設立されている機関であり、上の記事にもあるように、日本でも設立しょうとの動きがあります。

米国の、国家経済会議(英: National Economic Council, NEC)は、安全保障、社会保障なども含めた総合的な立場から経済政策の立案、調整および大統領に助言を行うアメリカ合衆国連邦政府の行政機関のことです。

国家経済会議は1993年にクリントン政権において、「軍事的安全保障」と並んで、「経済的安全保障」という考え方のもと、国家安全保障会議と同じ機能を果たすことを期待されて大統領令によりホワイトハウスに設立されました。

会議の役割は、ホワイトハウスにおいて経済政策の一貫性を維持する為、また、各経済官庁の調整を図って政策立案を行なうことです。

メンバーは、大統領、副大統領、国務長官、財務長官、農務長官、商務長官、労働長官、住宅都市開発長官、運輸長官、エネルギー長官、保健福祉長官です。他にも閣僚級のスタッフや各種大統領補佐官が拡大関係者(Additional Participants)として参加します。大統領が議長を務め、経済政策担当大統領補佐官が事務を統括する委員長を務めます。

オバマ政権では政権発足早々「経済が非常事態のさなかにある」との認識の下、委員長のサマーズが主導して、毎日、大統領に経済情勢の報告をしていく方針を決めました。

さて、この国家経済会議では"Economic Statecraft"に関しても国の政策として検討されることもあります。これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本の「安全保障環境」は大丈夫? ロシア“核魚雷”開発、中国膨らむ国防費、韓国は… 軍事ジャーナリスト「中朝だけに目を奪われていては危険」―【私の論評】日本は韓国をeconomic statecraft(経済的な国策)の練習台にせよ(゚д゚)!

中国の軍事予算は毎年増えるばかりで、日本はこれに対して無力と思われ
がちだったが、それは違う。Economic Statescraftという奥の手があった
この記事は、3月7日のものです。この頃から、日本が韓国に対して"Economic Statecraft"の一環として、制裁もしくは、何らかの管理強化をすることは十分可能でした。だからこそ、この記事を掲載したのです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
 日本が安全保障上改善する余地のある重要な点が存在します。その最たるものが、経済的な手段を用いて地政学的な国益を追求する「economic statecraft(経済的な国策)」です。欧米などでは認識され、政策に応用されていますが、現時点では日本にない概念であり、日本語に直訳するのは難しいです。
各国政府、特に中国やロシアなどは、このようなeconomic statecraftを多用し始めています。たとえば、他国が自国の意向に反する政策をとった場合に、見せしめとして輸入に制限をかけます。あるいは、経済的に脆弱な国に対して、ODAや国営企業の投資をテコに一方的な依存関係を作り出すことで援助受入国を「借金漬け」状態にし、自国の意向に沿わない政策を取らせにくくする、といった政策です。 
米国がこうした経済外交をeconomic statecraftと定義し、米国としてもこれに対抗するeconomic statecraft戦略を描くべきである、という議論がオバマ政権末期から安全保障政策専門家の間で高まっていることが、トランプ大統領のニュースに埋もれて日本では認識されてきませんでした。 
economic statecraftの道具と目的は以下の表で示す通りです。
日本語に翻訳すると、貿易制限、金融制裁、投資制限、金銭的制裁です。
年初には安全保障分野で著名な米国シンクタンクである戦略国際問題研究所(CSIS)が、米国は「中国の挑戦」に対抗するにはより洗練されたeconomic statecraftを用いる必要性があると提案したのに加え、ほかのシンクタンクもこのような政策の具体案を構想し始めています。
これらの分析において重要なポイントは、米国がeconomic statecraft戦略を展開するうえで同盟国や友好国との連携の重要性を強調していることで、世界の経済規模で第3位にある日本との連携が極めて重要になることは間違いないです。しかし、日本でeconomic statecraftの観点から米国と連携していかれる十分な構想と体制が整っているとは必ずしも言えません。 
さて、このような"Economic Statecraft"ですが、この記事では日本は韓国をその練習台とすべきことを主張しました。その部分を以下に引用します。
日本としては、韓国に単純に制裁を課すというのでなく、長期的な戦略を持ってeconomic statecraftを発動するのです。韓国は断交したとしても、日本にはあまり悪影響はないので、格好な練習台になります。さらには、米国などの同盟国も、これに対してはあまり反対したり批判したりすることはないでしょう。
無論、単純に断交するだけというのではなく、韓国がある程度変われば、TPPへの加入とか、ODAなども実行することも視野に入れた包括的なものにすべきと思います。変わらなければ、台湾に対して手厚い支援を行うなどのことも視野にいれるべきです。 
こうして、韓国などに実行してみて、失敗したところはきちんとフィードバックして日本独自のeconomic statecraftの実施方法を確立した後に、本格的に北朝鮮、中国、ロシアにも適用していくべきと思います。
日本にはすでに、甘利明・自民党選挙対策委員長とともに、「国家経済会議」の創設を提言しているグループがあることから、自民党内でも"Economic Statecraft(以下ESと略す)"を認識している議員も複数存在するのでしょう。

日本の韓国に対する輸出管理も広義のESと言えるでしょう。ただし、ESといっても範囲は広く、輸出に関するものだけでも、輸出管理なし→輸出管理の検討(現在の日韓はこの時点)→輸出管理の強化→輸出禁止→軽い制裁→本格的制裁という順番を経てなされるものです。

ESなどとは関係なく、輸出管理検討や、強化は普通の国々では当たり前に行われていることです。

日本が韓国に対する輸出管理を強める背景には、元徴用工訴訟の判決だけではなく、昨年12月に起こった韓国海軍による海上自衛隊哨戒機に対するレーダー照射問題もあるでしょう。この問題は一歩間違えば、本当の戦争になっていたかもしれません。

韓国への輸出管理の検討により「日韓経済戦争」が開始直前になったといえます。憲法9条では交戦権が否定されていますが、これはあくまで「火を噴く戦争」に限定してのことです。ESは憲法9条の範疇外です。

日本国憲法は設立当初ESなど想定していなかったので、無論それに関する規定はなく、日本は平和憲法に呪縛されることなく、ESを発動できます。そういう意味でも、この輸出管理強化は、日本という国の在り方を問う試金石であり、政策の争点になっても良いものです。

米国でESの司令塔を務めるのが国家経済会議(NEC)です。このNECは、冷戦終結後の安全保障政策は軍事力に頼るだけではなく、経済統制も用いるべきとの発想の下、クリントン政権時代に創設されました。国家安全保障会議(NSC)と兼任しているメンバーもいます。

日本政府に近い関係者が今春、NECを訪れ、経済制裁担当ディイレクターと面談した際には、日本にもNECが創設され、日本による効果的なESの展開に必要な機密情報の共有が可能になることを期待されたといいます。

日本政府は、韓国への輸出管理の効果を見たうえで、日本版NEC創設の検討に入るのではないでしょうか。昨今の世界情勢を見ていれば、日本版NECが必要な時代が来ているのは確かです。

現在、日本が韓国に対する輸出管理の強化検討した時点で、これは日韓関係が悪化するので、習近平はほくそえんでいるなどとする人もいますが、果たしてそうでしょうか。

今までの日本は、何をしても平和憲法の壁があって反撃されることはないと高をくくっていた習近平は現在かなり脅威を感じていると思います。こういう観点からも、米国は日本の対韓国貿易管理強化を静観しているのでしょう。

日本は金融政策や財政政策が失敗続きで、GDPの伸びは、低く一歩間違えばデフレに舞い戻りという体たらくですが、世界一の政府資産大国(世界で一番資産を持っている国)です。また、民間レベルでも金余りであり、対外純金融純資産(外国に貸し付けている金のこと)は世界一です。その日本が、ESを本格的に戦略的に行使することになれば、外貨不足の中国の習近平は日本の金をあてにするどころか、経済的にかなりの打撃を被る可能性があります。

さて、米国のNECは省庁横断的にメンバーが構成されていますが、日本では経産省を嫌う外務省が主導権を握りたがるでしょう。しかし、果たして外務省に、部品や素材レベルでの日本への経済依存度を把握する必要があるESを仕切れるような知識やノウハウはあるのでしょうか。さらには、馬鹿の一つ覚えのように、何かと増税・緊縮ばかりする財務省にも、当然そのようなノウハウがあるはずもありません。議論が本格化すれば、改めて「省益主義」が問われることになるでしょう。

このようなことを防ぐためにも、米国のように日本のNECも省庁横断的にメンバーを構成し、さらに若手で各省の省益ならびにそれに起因する省毒におかされていない人物をメンバーにして、真に国益に寄与するNECを結成していただきたいものです。

私としては、NECには日本の様々な分野から英知を結集したシンクタンクを併設し、誰にも思いつかないような、とてつもないESで、中国・ロシア・北朝鮮などを引っ掻き回していただきたいと思います。その上で、世界に向かって日本が日本の国益を追求できる体制を一日もはやく築いてほしいです。

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