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2018年9月11日火曜日

【永田町・霞が関インサイド】試練の日米首脳会談、安倍首相はトランプ氏を「説得」できるか―【私の論評】この心配は杞憂に終わらさなければならない(゚д゚)!

【永田町・霞が関インサイド】試練の日米首脳会談、安倍首相はトランプ氏を「説得」できるか

安倍首相(左)と相性のいいトランプ氏だが、貿易対決を視野に入れているのか
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 安倍晋三首相は23日午前、国連総会出席のため政府専用機で羽田空港をニューヨークに向けて発つ。そして、日米首脳会談前日の24日、ニュージャージー州にある「トランプ・ナショナル・ゴルフクラブ」(ベッドミンスター)で、ドナルド・トランプ大統領と一緒にラウンドする。

 同ゴルフ場は、全米女子オープンが開催される名門コースである。

 昨年11月のアジア歴訪初日、東京都の米空軍横田基地に降り立ったトランプ氏は大統領専用ヘリコプター「マリーンワン」で、埼玉県川越市の「霞ヶ関カンツリー倶楽部」に向かった。

 安倍首相が東コース8番ホールで素晴らしいティーショットを打ち、トランプ氏は自らの拳を突き出して、安倍首相の拳にタッチした。

 日本では「グータッチ」と言うが、米国では「Fist Bump」と呼ぶ。アスリートや若者によく見られるあいさつである。

 両首脳が互いに「シンゾー」「ドナルド」とファーストネームで呼び合う親しい間柄の象徴とされてきた。では、肝心の安倍・トランプ会談でも、その親しさが継続するのだろうか。

 筆者の関心事は、その一点に尽きる。なぜか。日本の経済界が今、固唾をのんで注視しているのはトランプ氏が対米輸出自動車に追加関税25%を課すのかどうかである。仮に、25%関税が発動されれば、メルセデス・ベンツなど100%完成車を輸出しているドイツはもとより、対米輸出依存度が高い日本も壊滅的なダメージを受ける。

 自動車業界は何とか阻止してほしいというのが本音だ。だからこそ、安倍・トランプ会談に多大な期待をしている。

 日米首脳会談に先立つ21、22両日、ワシントンで第2回日米貿易協議(FFR)が開かれる。茂木敏充経済再生相は6月初旬に続いて、ロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表とタフな交渉を行う。

ライトハイザー代表

 超ワンマンのトランプ氏に逆らえないライトハイザー氏は、改めて自動車関税を持ち出すだけでなく、日米2国間貿易協定(FTA)を求めるなかで円安規制の「為替条項」にも言及するのではないかと指摘されている。

 日本にとって悪夢と言っていい「ワースト・シナリオ」である。

 そうした中で、米紙ウォールストリート・ジャーナルは、トランプ氏が日本との貿易交渉が不首尾に終われば、安倍首相との友情関係にピリオドを打つと述べたと報じた。

 すべては安倍首相のトランプ氏説得に懸かっているのだ。(ジャーナリスト・歳川隆雄)

【私の論評】この心配は杞憂に終わらさなければならない(゚д゚)!

結論からいうと、私自身はこの心配は杞憂に終わるのではないかと思っています。自動車関税に関しては、このブログでも以前述べたように、すでに日本は産業構造をかなり変えて、米国向けの自動車の多くを米国で製造しています。

「為替条項」に関しては、物価目標2%に未だ全く届かない状況なので、日本が円安誘導しているなどということは全くありえないです。

まずは自動車のほうから解説します。これについては、以前もこのブログに掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
【瀕死の習中国】中国国有企業の「負債はケタ違い」 衝撃の欧米リポート―【私の論評】米中貿易戦争にほとんど悪影響を受けない現在の日本の構造上の強み(゚д゚)!
 
円高下で実現した日本のグローバル・サプライチェーンにより、日本は海外で著しく雇用を生む国になっており、それが所得収支の大幅黒字に現れています。故に日本はもはや貿易摩擦の対象にはなりえない国といえます。日本が貿易摩擦フリー化、為替変動フリー化していることがうかがえます。 
・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・ 
では日本の企業は一体どこで生き延び収益を上げているのかといえば、それはハイテク分野の周辺と基盤の分野です。 
デジタルが機能するには半導体など中枢分野だけでなく、半導体が処理する情報の入力部分のセンサーそこで下された結論をアクションに繋げる部分のアクチュエーター(モーター)などのインターフェースが必要になります。 
また中枢分野の製造工程を支えるには、素材、部品、装置などの基盤が必要不可欠です。日本は一番市場が大きいエレクトロニクス本体、中枢では負けたものの、周辺と基盤で見事に生きのびています。 
要するに、日本産業は超円高下で実現したグローバル・サプライチェーンにより、海外で著しく雇用を生む国になったので、米国の経済制裁の対象にはなりにくいということです。

さらに、日本の産業構造は、ハイテクを支える、素材、部品、装置などの基盤や周辺部分で必要不可欠とされる部分に特化しているため、米国の経済制裁の対象とはなりにくい体質になっているのです。

わかりやすく言うと、たとえばアップルがこれから、奇抜でみたこともないような、ガジェットを生み出そうとした場合、日本の素材、部品、装置などが必要不可欠であるということです。

米国が「通商拡大法232条」に基づき日本製アルミ製品に対して10%の追加関税を導入してから6カ月が経過しましたが、アルミ圧延品の対米輸出量に大きな変化はみられていません。

同じく、鉄鋼は7月時点の統計では、米国(11.5万トン、同26.9%減)が3カ月連続の減少となっています。このうち特殊鋼については、米国向けの輸出がどうなっているのか、手元に資料がないのですが、特殊鋼全体の輸出量に目立った変化はみられません。おそらく米国向けもさほど影響がないものと考えられます。

鉄鋼でも、特殊鋼は単価が高いですから、鉄鋼業界というくくりでいうと、米国の追加関税が鉄鋼業界に甚大な影響を与えているということはなさそうです。

実際、もし日本の鉄鋼業界が、苦境におちいっていたとしたら、マスコミもそれを報道にしているでしょうが、未だにそのような報道はありません。

さらに、鉄鋼・アルミは日本で製造したものを輸出しているわけですが、自動車は米国向けは多くが米国内で製造されています。実に米国向け日本車の7割が米国で製造されています。

以下若干古いですが、2015年のデータを用いて説明します。多少古くても、十分エビデンスとして通用すると思います。

日本が国内需要を大幅に超過して400万台のも自動車を生産しているのは事実ですし、それと同じくらい米国が輸入に頼っているのも事実です。日本は160万台を米国に輸出しています。その一方で、およそ390万台を米国で生産しています。先にも述べたように、米国内での雇用も生み出しています。

日本の自動車輸出国別 2015年

台数割合
US1,604,46635%
EU524,77011%
オーストラリア339,8417%
UAE186,7704%
中国169,2894%
サウジアラビア169,0434%
ロシア145,0433%
カナダ144,7623%
メキシコ115,8592%
オマーン99,2272%
合計4,579,078

JAMA Report: Driving America's Automotive Future

JAMAによると、日本メーカーは390万台を北米で生産し北米で販売しています。その割合は北米で販売される日本車の75%になります。同会のデータでは約160万台が北米に輸出されているので、割合としては大体一致します。

また、同会は150万人の雇用を生み出していると報告しています。

The 2015 American-Made Index では主要な車種別の工場労働者数が紹介います。北米で人気の高いトヨタのカムリがChevroletのTraverseのトリプルスコアにもなる7000人も雇用しています。

トランプ大統領は就任前から一貫して、日本がアメリカ車を買わないと述べていました。確かに日本は北米、欧州に比較すると圧倒的に国内メーカーのシェアが高いです。

なぜ日本で「アメ車」が売れないのか。その理由についてBBCは「道路事情がアメリカと異なり、家の前の道路や駐車スペースが狭い」と説明しています。

レポーターが実際にアメリカ車を日本で運転。すると、走行や駐車に苦戦したようです。この点、日本の軽自動車はスムーズにこなすことができ、アメリカ車が日本に向いていないことを紹介しました。

日本の車と比べ、ハンドルの位置が反対だったり、燃費が悪かったりすることにも触れ、性能や様式の違いが売れない要因に挙げられると言及しました。

それに、日本人は外国車を買わないわけではありません。むしろ、ベンツやBMWなどのドイツのメーカーは好まれています。日本で売れる外国車の70%が、ドイツ車だといいます。

過去にはアメリカ車、現在はドイツ車を所有する日本人の女性は、BBCのインタビューに対し、「(アメリカ車は)形は好きだが、乗ると安っぽくて安全と感じない。ドイツ車と比べてサービスが悪い」と話しました。

BBCはさらに、日本はアメリカ車のような輸入自動車に関税をかけていないが、アメリカは日本車の輸入に対して最大25%の関税をかけていると説明。「文句を言うのはやめてドイツ車を見習うべきだ」と言い放ちました。

ニューヨークタイムズも同様に、日本人がアメリカの車を求めていないと指摘しています。

2016年の自動車販売台数の500万台のうち、アメリカ製は1万5000台で、わずか0.3%にとどまります。トヨタの大規模ディーラーがカルフォルニア州で販売する車の数よりも少ないといいます。

東京都町田市で、24年前からアメリカ車専門ディーラーを営む男性は、「当時はすぐ故障し、よく客に怒られた。同じ値段だったら、日本車の方がお得だ」と、ニューヨークタイムズの取材に対して答えています。

同紙は、アメリカの自動車が、信頼性が低く燃費が悪いというイメージがついてしまっているのは問題だと指摘しています。

また、アメリカの車を愛用する男性は「アメリカの自動車メーカーは貿易障壁について文句を言うのをやめ、魅力的な車をつくることに集中するべきだ」と話しました。

こうした報道に対して、Twitter上では「売れないように仕組んでいるわけでもなく、日本人受けするアメ車がない」と賛同する声が相次いでいます。

日本人が外車ではなく、日本車を嗜好するというのは変えようがないわけで、米国の自動車メーカは、日本に車をうりたければ、日本人が好むような車をつくるべきです。トランプ大統領が、もっと日本人はもっと米国車を買えと言ったとしたらこれは、もう内政干渉としかいえません。

以上のことからして、対米輸出自動車に追加関税25%はどう考えても無理があることでしょう。米国側がいえるとすれば、さらに米国内の製造を増やすように勧告できるくらいなものです。

2018 Fast &sexyなアメ車Girl壁カレンダー


円安規制の「為替条項」については、問題外です。先にも述べたように、物価目標はなかなか達成できそうにもありません。

量的な金融緩和を拡大すれば、相対的にドルより円が増えます。そうなれば、円が安くなります。円が安くなれば、日本から米国に輸出する場合、相対的に価格が安くなります。一方米国から日本に輸出する場合、相対的に価格が安くなります。

円安になれば、貿易では日本にとって有利、米国にとって不利になるわけです。しかし、日本の金融緩和は円高誘導のために実施しているわけではなく、物価目標を達成するために実施しています。

そうして、物価目標がどうなったかといえば、黒田総裁は3月の時点で、物価目標の2019年度達成を確信し、「その頃には出口策を検討しているはず」と述べていました。

確かに、この時点では、物価目標達成にはかなり自信のほどが伺えました。実際、消費者物価統計では、2月の「帰属家賃を除く総合」が1.8%の上昇と、2%一歩手前まで高まり、「コアコア」も直近半年では年率1%強まで上昇ペースを高めていました。

ところが、3月・4月(東京都区部)の物価統計が、この日銀の期待を打ち砕く結果となりました。実勢としての上昇率を見るために用いられる「季節調整後」の前月比が、3月・4月と続けてマイナスになったのです。

このため、一時半年前比年率で1%に達した「コアコア」は、3月までの半年では年率0.6%に、4月までの半年では年率0.2%に、直近3か月では年率マイナス0.8%に低下しました。

こうした状況を見る限り、2019年度中に2%に高まることは事実上不可能となりました。

これが、2%などとうに通り越して、4%でも超えていれば、米国から為替操作していると言われても仕方ないかもしれませんが、今の現状では、米国側が円安規制の「為替条項」を持ち出すことは到底不可能です。

もし、そんなことを言えば、米国こそ為替操作国ということになってしまいます。なぜなら、米国はリーマン・ショック後にすぐに量的緩和を実施し、インフレ率2%などとうの昔に通り越しているからです。

これだけ、交渉に良い材料が整っているわけですから、安倍総理はトランプ大統領をかなり説得しやすいですし、第2回日米貿易協議(FFR)において、茂木敏充経済再生相はライトハイザー代表を説得しやすいでしょう。

茂木敏充経済再生相

このようなことをいうと、日本は何でも米国の言うとおり、という人もでてくるかもしれませんが、そういう人には言いたいです。TPPはどうなったかと?

それに、トランプ大統領の取り巻きにも日本通がいると思いますから、上記のような客観的データはすぐに提供できるはずです。

この心配は杞憂に終わるでしょうし、杞憂に終わらさなければならないです。そうでなければ、これからも米国に対してしなくても良い譲歩をすることになりかねません。

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2018年1月20日土曜日

【主張】トランプ政権1年 「孤立主義」と決別せよ―【私の論評】経済が上々のトランプ政権は「孤立主義」になる心配は全くない(゚д゚)!

【主張】トランプ政権1年 「孤立主義」と決別せよ

トランプ米大統領
 ■真のアジア回帰へ日本も動け

 トランプ大統領が就任演説で掲げた「米国第一主義」は、強いアメリカを取り戻すことに主眼があったはずである。

 本来その源泉は、米国が重視してきた自由と民主主義の普遍的価値、国際秩序を守ることにある。だが、トランプ氏は必ずしも重きを置いていない。

 その結果、南シナ海などで、中国にわが物顔の振る舞いを許してしまった。中国は軍事、経済の両面で、米国が主導し、国際社会が繁栄の基盤としてきた既成秩序の破壊を狙っている。

 《中国の台頭は秩序壊す》

 米国をも脅かそうとする、北朝鮮の核・ミサイル問題への対応という変数もあった。日米が足並みをそろえ、圧力路線を推し進めた点は評価できる。だがそれは、米国が中国を押さえ込み、アジア太平洋地域の安全保障に積極的に関与することを直ちに保証するものにはみえない。

 米政権の行方は同盟国日本の針路を左右する。安倍晋三首相が、緊密な関係をもつトランプ氏に対し、替え難い価値観や秩序の重要性を説き、共有を促し続けていくことは極めて重要だ。

 昨年1月20日に就任したトランプ氏が真っ先に表明したのは、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの離脱だった。

 TPPには、自由主義経済の大国である日米が連携し、中国の覇権主義を押さえ込む戦略性があった。アジア回帰を唱えたオバマ前政権は、実際には中国による南シナ海の人工島建設を看過した。ただ、TPP構想は辛うじて中国を牽制(けんせい)するものだった。

 米国の撤退は、中国の「国家資本主義」という独善性を解き放ってしまった。現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を起爆剤に、中国に都合の良い規制やシステムを各国に押しつける動きに拍車がかかっている。

アジア諸国には、インフラ投資や経済援助をエサに、中国に切り崩される例が出ている。

 中国は昨年1年間で、南シナ海で29万平方メートルの軍事関連施設を整備した。東シナ海では尖閣諸島への領土的野心を募らせている。

 安倍首相が提唱し、トランプ氏が受け入れた「インド太平洋戦略」は、軍事、経済の両面で中国に対抗する狙いがあるが、まだ緒についたばかりだ。

 トランプ政権は昨年12月、国家安全保障戦略報告で「力による平和の維持」を打ち出した。中国をロシアとともに、既存秩序の変更をたくらむ「現状変更国家」と位置づけたのは妥当だ。

 北朝鮮問題では、米国は軍事的手段の選択肢を残し、圧力を強める姿勢を貫いた。国連安全保障理事会では制裁決議採択を主導した。いずれも日本が支持してきた点である。政権内の人事が停滞する中でも、マティス国防長官やマクマスター大統領補佐官ら有能な外交安保チームが仕事をした。

 《自由貿易の価値重視を》

 それでも、北朝鮮包囲網の強化にあたり、中国への依存を強めざるを得なかった。中国が原油の全面禁輸を拒む限り、早急な核放棄の実現は至難である。対北政策の舵(かじ)取りは極めて難しい。

 金正恩政権は平昌五輪を「人質」に、韓国の文在寅政権の懐柔を図っている。それを許容した点で米国に油断はないか。南北融和ムードが醸し出され、米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)を完成させる時間を北朝鮮に与えかねない。トランプ氏が批判した「過去25年間の失敗」を繰り返してはならない。

 価値や秩序の重要性に目を向けず、北朝鮮やその庇護(ひご)者である中国と妥協する懸念も残る。日本はトランプ氏に真のアジア回帰を促すべきだが、それには日本自身の役割拡大を示す必要がある。

 昨年末に成立した大規模減税と好調な景気は政権に追い風となっている。ロシアによる大統領選介入疑惑は、政権中枢まで捜査の手が及ぶ気配だ。危うさが拭えない政権運営を立て直せるか。

 11月の米中間選挙で、共和党が上下両院の過半数を失えば、トランプ氏弾劾の動きが勢いづく。

 そうした事態を避けるため、白人労働者の支持層をつなぎ留めようと「内向き」政策に拍車がかかる懸念は残る。貿易赤字の是正に躍起となって、相手国を恫喝(どうかつ)する通商交渉を激化させれば、米国は孤立し、威信そのものが損なわれよう。

【私の論評】経済が上々のトランプ政権は「孤立主義」になる心配は全くない(゚д゚)!

トランプ政権もはやいもので、もう1年が過ぎました。その間、米国経済はどうなったのか、以下に掲載します。

株価は、下記の通り右肩上がりで上がりました。


以下に、主な経済指標のトランプ氏就任前と、直近の経済指標をあげておきます。


この中で、貿易赤字のみは少し大きくなっています。トランプ氏は貿易赤字を縮小することを公約に掲げたため、これを批判するむきもありますが、これは貿易赤字に対するトランプ氏の認識のほうが間違っているともいえます。

先日もこのブログで掲載したばかりですが、ユーロ圏では日本のように安易に国債発行やはできません。統一通貨の問題点です。特に為替レートにも関係ないので各国間の格差は拡大します。だからユーロ圏では特に「輸出額=輸入額」ということが必要になります。

米国、日本、中国のような国では、自国で自国通貨を擦り増しできるので、そのようなことはありません。本来、貿易黒字がどうの赤字がどうのと騒ぐ必要性など全くないです。

実際、経済が成長していると、輸入が増えて、貿易赤字は増える傾向にあります。この場合、貿易赤字が単純に悪いとはいえません。貿易赤字に関しては、あくまで中身を検討した上で良い悪いを判断すべきなのです。

トランプ政権の過去の1年では、経済成長をしつつ貿易赤字が減らなかったということですから、これはほとんど問題などありません。

むしろ、先程も言ったように、トランプ氏は大統領選挙中に語っていたような、あかも貿易赤字そのものが悪であるような考え方は改めるべきです。

その他、CPI(物価指数)、Civilian Unemployment Rate(失業率)、10-Yr.Treasury Rate(10年国債金利)、IP(鉱工業指数)、Payroll Employment(雇用者増加数)などの指標を以下に掲載します。


米国内でも日本でも、トランプ大統領を批判する人が多いですが、経済パフォーマンスに関しては上記の指標を見る限り文句のつけようがない程良いです。過去の米政権をみると、経済がよければ、他で批判されても結構長持ちすることが多いです。

アメリカのNAIRU(構造的失業率)は4%程度であり、インフレ目標2%はほぼクリアしています。その結果として経済成長率は3%超えています。これは、かなり良いです。これだと今後も、大減税しつつ金融引締めでこの良さを維持できる確率がかなりあります。

そうなれば、11月の米中間選挙で、共和党が上下両院の過半数を失うということもないでしょう。となると、元々ほとんど不可能(米国大統領で弾劾された人はいない)だったトランプ氏弾劾の動きはさらに下火になることでしょう。トランプ大統領弾劾の動きは、トランプ氏を貶めるための印象操作であると考えられます。

このような事態を避けるため、トランプ氏が、白人労働者の支持層をつなぎ留めようと「内向き」政策に拍車がかかる懸念も払拭されると思います。

さらに、国内経済が良いことから、トランプ氏が貿易赤字の是正に躍起となって、相手国を恫喝(どうかつ)する通商交渉を激化させることもないでしょうし、そのため米国は孤立し、威信そのものが損なわれることもないでしょう。

この状況は、たとえると安倍政権が成立してから、増税をする前までの1年間のように良い状況です。今後安倍政権が犯した唯一の誤りである、消費増税のような、マクロ経済的に明らかな間違いを犯さない限り、トランプ政権は安定するでしょう。

ブログ冒頭の記事のように、トランプ政権の政策的態度を「孤立主義」という言葉で描写しようとするコメンテーターが多いように感じます。

トランプはグローバル化に取り残された白人層を支持基盤としたグローバル化に抵抗している大統領だ、というイメージが、「孤立主義」とか「保護貿易」といった言葉のイメージに合致するのでしょう。

しかしこれらの言葉を使ってトランプ政権の政策的方向性を描写するのは、あまり妥当なこととは思えません。むしろこれらの概念は、かえってわれわれのトランプ政権の理解を阻害するように思われる。

「孤立主義」という日本の学校教科書などで19世紀アメリカ外交の描写として使われている概念は、20世紀になってから用いられるようになった概念であり、しかも極めて「ヨーロッパ中心主義的」な概念です。

第一次世界大戦の後、議会の反対で国際連盟に加入しなかったアメリカの外交政策を「孤立主義」と形容したのは、失望したヨーロッパ人たちでした。アメリカ人が「孤立」した状態を望んだということではありません。

そもそも19世紀の「モンロー・ドクトリン」の場合ですら、「孤立」はアメリカ人自身が目指した理念ではありません。19世紀前半にアメリカ合衆国は、ヨーロッパ列強が繰り広げていた「勢力均衡」の権力政治には加担しないことを宣言しました。

その「錯綜関係回避」の原則は、「新世界」に作り上げた「共和主義」の独立国を維持するためには、汚れた「旧世界」の権力闘争から隔絶させておくことが必要だという洞察にもとづいた政策でした。

しかしそれはアメリカ合衆国を国際社会から本当に「孤立」させることを目指した政策などではありませんでした。そもそも当時のアメリカ合衆国はすでに、いわゆる「明白な運命」論にしたがって、領土を拡大させ続けた「拡張主義」国家でした。

トランプ大統領が「孤立主義」的に見えるのは、「アメリカ第一」を唱え、TPP脱退などの政策によって国際協調を軽視しているというイメージがあるからでしょう。しかし、TPPから離脱しただけで「保護主義」者や「孤立主義」者になるかは、はなはだ疑問です。

そもそもTPPは太平洋地域の一部の諸国が加入するだけの地域的自由貿易協定にすぎず、全く「グローバル」なものではありません。中国包囲網としての性格も自明であったので、アメリカを中心とする太平洋地域自由主義諸国による関税同盟としての政治的性格が強かったと言えます。ただし、トランプ氏はこの「中国包囲網」としてTPPを理解して欲しいものとは思います。

トランプ政権は、TPP脱退やNAFTA再交渉の代替策として、カナダ、イギリス、日本などとの二国間貿易協定を結ぶことへの関心を表明しています。為替の自由化を求めてWTOを活用する方法も模索しているトランプ政権が、根本的に反自由貿易主義的だと言えるかは疑問です。

安全保障面では、トランプ政権は、NATO構成諸国にいっそうの防衛費拡大の努力を促しています。日本を含む他の同盟諸国にも同じような態度をとっています。

しかし、それは「テロとの戦争」などをふまえて同盟ネットワークのさらなる活性化を狙っているからであり、決して「孤立」したいからではないことは言うまでもないでしょう。

トランプ政権は「孤立主義」でもなかったし、これからも「孤立主義」に至ることはないでしょう。特に今年1年は現時点で経済が良いこと、さらに特に悪くなる要素もないことから、全くその心配をする必要はありません。

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