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2018年2月28日水曜日

中国の対外投資が急ブレーキ、3割減で初の前年割れ 米欧が警戒、中国自身の資本流出規制も追い打ち―【私の論評】中国経済はやがて身の丈にあったところまで落ち込むことになる(゚д゚)!



 中国の対外投資に急ブレーキがかかっている。中国商務省のまとめで、中国企業が2017年に海外で行った直接投資(金融分野を除く)は総額1200億8000万ドル(約13兆円)と、前年を29.4%下回った。中国の対外投資額で前年割れは03年の統計公表開始後、初めて。安全保障上の理由などから、米欧で中国からの投資や買収に拒否反応を示すケースが増えていることに加え、海外への不正な資金流出を警戒する中国政府の規制強化も追い打ちをかけている。(香港 河崎真澄)

 習近平指導部が進めている現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に関連し、スリランカやパキスタン、ジブチなどのプロジェクトで、中国による軍事転用の懸念が強まり、米欧が対中警戒をこれまで以上に強めた点が急ブレーキの背景にある。


 中国の電子商取引大手アリババ集団の関連会社による米国の国際送金大手マネーグラム社の買収計画が昨年末までに事実上、拒否されたのが典型例だ。総額12億ドルに上るTOB(株式公開買い付け)計画だったが、対米外国投資委員会(CFIUS)が計画の申請を承認しなかったという。

米国の国際送金大手マネーグラム社のサイト

CFIUSは米財務省が主導する審査機関。マネーグラム社の買収計画をめぐり、具体的にどのような懸念があったかは明らかにしていない。ただ、CFIUSは通常、外国企業による米企業買収に関し安全保障上の懸念がある場合、買収拒否を大統領に勧告する機能がある。

 アリババ側は今年1月に買収を正式に断念。これに対し中国商務省は、「海外からの投資阻止手段に安全保障上の問題を利用する国に懸念を持っている」と表明し、米国を牽制した。

 ほかにも中国による買収計画で、米国の保険会社や証券取引所などの案件が相次ぎ拒否された。また、欧州連合(EU)欧州委員会は昨年9月、域外企業による欧州企業買収への審査強化策を打ち出した。インフラや軍事、宇宙などの分野で、ハイテクが海外の政府系企業に渡ることを防ぐ狙いがある。

 他方、中国政府による規制強化も影を落とした。中国企業が対外投資を隠れみのに、国内で蓄積した資金の海外逃避を試みるケースが相次いだためだ。このため16年末から、中国当局は不動産やスポーツ、ホテルなどの対外投資の審査を厳格化。結果的に対外投資の抑制につながっている。

【私の論評】中国経済はやがて身の丈にあったところまで落ち込むことになる(゚д゚)!

中国企業の対外直接投資に急ブレーキの要因について、着目すべきは、やはりブログ冒頭の記事の最後のほうにでている「中国政府による規制強化」でしょう。なぜこのようなことをしなければならないかといえば、中国政府自体の外貨準備高が激減しているからです。それについては、以前もこの記事に掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【田村秀男のお金は知っている】外貨準備増は中国自滅のシグナル 習近平氏の野望、外部からの借金なしに進められず―【私の論評】頼みの綱の一帯一路は幻影に過ぎない(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事にも掲載したグラフを引用します。

 

このグラフを見ると、対外負債の外貨準備費比率が右肩上がりにあがつていることを示しています。これは、何を意味しているかといえば、対外準備が国外からの借金でまかなわれており、その比率が年々拡大しているということです。

これには、中国当局もかなりの危機感を感じていることでしょう。中国政府が国外で何かをするときの資金のかなりの部分が国外からの借金で賄っているということです。

なぜこのようなことになってしまったかといえば、原因は中国国内での経済成長が鈍化した上に、貿易で稼いだ以上に外国で浪費してきたからで、世界中の原油採掘権や鉱山を買いあさったり、企業買収や一帯一路などで外国投資で使い切った上に、人民元買い支えでこのようなことになったと考えられます。

近年、中国企業による対外投資や海外企業買収が急拡大していました。その背後にあるは、中国政府の「走出去」戦略(中国企業が積極的に海外進出する政策)ではなく、経済の急減速によるリスク回避を目的として資金を海外に移転することでした。

走出去は一帯一路と結びつけて考えられていた

さらに、2009年以降、中国本土にある外資系企業の多くが人員削減、資本の引き揚げや経営中止を行ってきました。外資系企業が集中する広東省東莞市では、2008年~12年で約7万2000社の企業が倒産しました。14年には4000社が倒産し、また15年12月には2000社の台湾系企業が東莞から撤退しました。相次ぐ倒産と撤退で東莞市地区では約500万人の失業者が出ました。

外資系企業撤退のおもな理由は、人件費の急騰など中国本土での企業運営が赤字の連続であることが挙げられます。

また中国に駐在する米国や欧州の企業は、中国国内の投資環境が悪化していると指摘しています。中国政府は外資系企業に対して独占禁止法調査を頻繁に行っています。また2015年に成立した「国家安全法」では当局が外資系企業の技術などが中国の国家安全を脅かしていると判断すれば、企業に対して厳しい処罰をするなど、外資企業に引き続き中国でのビジネス展開をすることをためらわせています。

外資企業の撤退と中国企業の大規模な海外進出によって、莫大な資金が海外に流出しました。これによって、外貨準備高が激減し、流動性のひっ迫で国内金融市場が混乱に陥り、国内経済に大きな打撃を与えつつあります。

通常の国であれば、国内の景気が停滞すれば金融緩和や積極財政を行い、まずは内需を高めることをします。内需がた高まったところで、多くの民間企業が競争して切磋琢磨して、新商品や新サービスを開発して、新たな需要を満たし産業が成長していきます。

一昔前の中国もそうでした。ただし、一昔の中国ではインフラ整備をするだけで、経済成長することができました。しかし、このインフラ整備は、中国国内では一巡してしまい、もう伸びる可能性が低いのでしょう。

だからといつて、新産業を育成するということもなく、中国は一昔前に国内で大成功した、インフラ整備を今度は中国主導で外国で行い、昔のように成長しようという安易な道を選んでしまいました。本来であれば、元々内需の少ない中国では、内需を1割から2割も底上げすれば、かなり景気は良くなるはずですが、なぜか今の中国政府はそれをしようとしません。

そのため、外資企業の徹底はますます多くなり、中国企業の大規模な海外進出もさらに多くなり、天文学的な資金が海外に流出してしまいました。

中国政府はこの莫大な流出をとめることに最初は、あまり熱心ではありませんでした。その原因としては二つあります。一つ目は、中国政府は依然として外資企業の中国での投資を誘致しており、厳しく資金流出を制限すると、外資企業の中国への投資意欲に影響するからでした。二つ目は、巨額な資金を海外に移転している人の大多数は共産党内の高層幹部とその親族だったからです。

しかし、16年末あたりからは、外貨準備高が本格的に激減したのと、外資企業の誘致もままならぬ状態となり、中国政府も本格的に規制に乗り出しています。

その流れは、今も続いており、とうとう16年から17年にかけては、中国企業の海外直接投資が激減するに至っているのです。

これが意味するところは、現在中国政府が海外で札びらを切って様々な事業の展開をはかっている金は大部分は海外からの借金で賄われているということです。

一昔前の中国なら、人口がとてつもなく多いし、これから発展していくことは明らかなので、中国には外国の資金がかなり集まりました。外国に在住してる中国人からもかなりの資金が集まりました。この豊富な資金を中国国内のインフラ整備にあてることで、中国は経済発展してきました。しかし、今ではそのようなこともなくなりました。

そもそも、中国政府自体が、国内の産業育成などに興味を持たず、成功するかしないかもはっきりしないような、一帯一路などにばかり精を出し、国外でのブロジェクトにばかり注目しているわけですから、中国国内に外国から資金が集まるはずもありません。

中国が国外でインフラ整備を実施するといっても、中国には地域住民のことまで考えたまともなインフラ整備をするノウハウはありません。国内の過去のインフラ整備でも、政府が主導で地域住民のことなど置き去りして、関係者の富のために実施してきたというのが実体です。

今のままであれば、中国には資金はますます集まらなくなり、いずれ枯渇することになります。かといって、金融緩和を強力に推し進めれば、国内がとんでもないインフレに襲われことになります。それに、元々中国の元は、中国がドルを大量に持っていることで信用がついたものですから、そのドルが中国から消えれば、元の信用はガタ落ちになります。

いずれ、中国経済は現在の中国の身の丈にあったところまで落ち込むことになります。その身の丈はどの程度になるかといえば、当然のことながら、かなり低いです。無論、日本人や日本経済よりもかなり低いものになるはずです。今まで、中国は身の丈を大幅に超えたところで、様々な事業を展開していたのです。それが本来の姿に戻るのは必然です。

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