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2020年2月13日木曜日

新型肺炎が中国経済を崩壊させる…中小企業の3分の1が1カ月以内に倒産の危機に―【私の論評】新型肺炎が中国経済を滅ぼすのではない、自ら滅びる運命だったのだ(゚д゚)!

新型肺炎が中国経済を崩壊させる…中小企業の3分の1が1カ月以内に倒産の危機に
文=渡邉哲也/経済評論

新型コロナウイルスによる肺炎の感染が拡大しており、中国本土の死者数は1000人を超えたことがわかった。また、感染者数は累計4万2638人にまで増えたという。



中国では、春節明けの2月10日から一部の企業が操業を再開しているが、国際的なサプライチェーン停止の影響は各地に波及している。また、操業再開に伴い感染者が拡大するリスクも高まることになり、今後も予断を許さない状況が続くだろう。

今回の新型肺炎は当初の想定よりも感染力が強く、しばらくは自覚症状がない感染者も多い。そのため、潜伏期間中に他者に感染させるリスクもはらんでおり、ひとつの工場が操業を再開したことで工場全体に感染が拡大する事態も考えられる。つまり、工場や学校などが新たに大規模な感染源になる可能性も高いわけだ。

また、サプライチェーンの麻痺は物流の麻痺へと拡大している。たとえば、工場が止まれば工場に入るはずの資材の搬入も止まり、倉庫に荷物があふれていく。結果的に、上流の物流が止まり、モノは身動きが取れなくなってしまう。中国近海には、そのような貨物船が多数停泊中で、輸出のための荷物も動かなくなっている状況だ。一部の税関も機能が停止したままであるため、モノの出入国ができなくなっている。

そして、モノが止まれば金も止まる。中国では感染拡大を防ぐために人が集まったり会食したりすることを制限する動きが出ており、その影響が飲食業やサービス業を直撃しているのだ。すでに、北京市の有名カラオケ店が破産手続きに入ることが報じられているほどである。

清華大学と北京大学が中小企業995社を対象に行った調査によると、手持ちの現金で会社を維持できる時間について「1カ月以内」とした企業が34%で、85%が「3カ月以下」と回答したという。また、新型肺炎の2020年の営業収入に対する影響は「50%以上の低下」が30%、「20~50%の低下」は28%となっている。これらの結果に鑑みるに、今後の企業活動は壊滅的な状況が続き、資金ショートによる倒産や解雇が頻発するものと思われる。

中国の場合、給料日が日本ほどは統一されておらず、企業によってさまざまだ。そのため、今後は各社の給料日ごとに破綻の動きが出てくると思われる。そして、従業員に給料が支払われなくなれば各自のローンなども払えるはずがなく、企業への打撃は個人の住宅ローンなどのデフォルトも誘発させることになる。新型肺炎による経済停滞は、膨れ上がった中国の不動産バブル崩壊を加速させることになるかもしれない。

中国を襲う消費急落と金融不安

中国政府は、非常処置として国有銀行に緊急融資を行い、国有銀行を通じた緊急資金支援を行っているが、その対象は都市部を中心とした銀行のみであり、今後は地方銀行や農業貯蓄銀行などの破綻が相次ぐ可能性もある。この問題がいつ収束するか、影響がいつまで残るかもわからない状況であり、これは単なる延命処置にすぎないのが現実だ。原因こそ違うが、いわばかつての日本と同じように、消費の急激な落ち込みと金融不安が一気にバブルを崩壊させることになるのだろう。

一方で、株式市場は比較的好調に推移している。これは、現時点では新型肺炎は中国の問題であり、アメリカの市場への影響は限定的とみられているからであろう。

中国の人民元は国際化されたものの、いまだ国際決済に使用される割合は低く、米中貿易戦争の影響もあり、中国国内の生産は中国向けが中心というふうに変化している。スマートフォンなど中国への依存度が高い製品も一部あるが、それも関税の問題でサプライチェーンを変更する過程であった。また、アメリカは華為技術(ファーウェイ)をはじめとする中国製通信機器の排除に向けて動いているが、今回の問題は、この動きに対しては追い風となるだろう。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】新型肺炎が中国経済を滅ぼすのではない、自ら滅びる運命だったのだ(゚д゚)!

中国の経済が近いうちに、崩壊するであろうことは、新型肺炎が明るみに出る前から、いわれていました。新型肺炎の前の中国経済を振り返ってみます。

米中貿易戦争に臨む米国は、「経済繁栄よりも国家安全保障を最優先させる」と不退転の決意です。その一端は、2回にわたるマイク・ペンス副大統領の演説で露呈しました。

演説するペンス副大統領

米国の対中冷戦は、貿易戦争の次元を超えて、国防権限法、並びに付随した諸法律、さらには非常事態宣言により、中国の経済、金融、そして軍事力の拡大阻止という「総合戦」に移行しました。

特に枢要部品の輸出禁止は効果的でした。インテルがZTE(中興通訊)への半導体供給をやめた途端、同社は倒産しかけました。米国が中枢部品の供給をやめれば次に何が起きるかは、目に見えています。

米商務省が発表したエンティティ・リスト(EL:米国にとって貿易を行うには好ましくない相手と判断された、米国外の個人・団体などが登録されたリスト)には、以下の中国企業が掲載されました。

ハイクビジョン(杭州海康威視数字技術)は監視カメラ企業。ダーファテクノロジー(浙江大華技術)は同じく監視カメラで世界シェア2位。センスタイム(商湯科技)はAI、特に自動運転の画像と認識技術の企業。メグビー(曠視科技)は顔認識技術。そして、アイフライテック(科大訊飛)はAIと音声認識と自動翻訳の最大手です。これら中国のハイテク企業を封じ込めることは、米中関係が後戻りのできない冷戦に入ったことを意味します。

また、中国の国内経済を見ても、不動産バブルが崩壊しかけていることがわかります。中国でいうところの「鬼城」である、人の住まないマンション群、ゴーストタウン、ゴーストシティは、いずれ「ゴースト・チャイナ」になることでしょう。

鬼城化した中国の高層アパート群、中国には全国各地にこのような施設が散在する

習近平外交の目玉「シルクロード経済圏構想」(一帯一路)は、鄭和艦隊の二の舞になりそうです。皇帝・習近平を悩ます難題は幾重にも複合してきました。日本から見て最悪の問題と思われる米中貿易戦争は習近平にとってそれほど深刻なことではなく、日夜頭が痛いのは国内の権力闘争、そして「香港問題」そうして「台湾問題」の決着です。

そのため、4中全会(第19期中央委員会第4回全体会議)を2019年10月末まで2年近く開催できなかったのです。

習近平は経済に明るくないため、実質的に最悪かつ解決不能の景気悪化、人民元激安、株価暴落、不動産市場の崩壊という、目の前にある危機への認識が低いようです。たとえば、銀行倒産が中国経済に死活的な凶器となることを習近平は重視していません。

側近や中央銀行(中国人民銀行)は嘘の数字で過大な報告をしているに違いなく、また人民銀行が近く予定している「デジタル人民元」の発行で問題はクリアできると、イエスマンと茶坊主しかいない側近らに吹き込まれているようです。

真実の数字は驚くべきもので、「ジニ係数は0.62、GDP成長率は1.67%、負債総額は6500兆円前後ある」とエコノミストの向松祚が警告したのですが、習近平の耳には届いていないようです。

米国企業の経理を監査する米国の監査法人が中国に進出し、企業税務を担当したのですが、あまりのずさんな報告に悲鳴を上げて、そのまま沈黙しています。情報の透明性などまったくないため、米国は「中国企業のニューヨーク(NY)市場上場を拒絶するべきだ」と言うのです。

昨年10月初旬に発表されたゴールドマンサックスの推計では、香港から「外貨預金」かなり流出して、シンガポールの外貨預金口座に40億ドルが流れ込みました。19年6~8月の速報だけの金額です。

過去1年分を見ると、163億米ドルがシンガポールの非居住者の外貨預金口座となっていました。米中貿易戦争に嫌気した外貨流出で、香港住民だけではなく香港に預金してきた中国共産党幹部らのカネも移動しました。香港の騒擾により将来へ不安を抱き、とりあえず余裕資金を外国に、それも香港と同じ国際金融都市であるシンガポールに移管したり、マレーシアやタイの不動産購入に走っています。

日本の論議では、香港がダメになると国際金融都市は深センに移行すると推定する軽率なエコノミストがいます。しかし、情報に透明性のない市場に世界の投資資金は流れることはありません。

中国経済が抱える債務膨張は天文学的数字で、企業破産は18年上半期だけで504万社でした。国有企業は別名「ゾンビ」です。巨大債務のなかでも中国企業がドル建てで外国銀行、投資家から調達した借金の年内償還は350億ドル。20年末までが320億ドル。償還が危ぶまれ、欧米金融機関は貸し出しに極めて慎重な姿勢に転じました。


19年8月段階で、希望した中国国有企業の起債は20%に達しませんでした。すでに2年前からドル建ての中国企業の社債にはNY、ロンドン、そして香港で2%以上の「チャイナ・プレミアム」が付いていることは周知の事実で、不動産関連企業の中には14%の高利でもドルを調達してきたところがあります。

デフォルト(債務不履行)の金額もすごいです。18年だけでも1200億元(170億ドル)。19年は9月までの速報でも900億元(128億ドル)。とりわけ注目されたのは、最大最強の投資集団といわれた「民投」(中国民生投資)が債権者を緊急に集めて1年間の償還延期を承諾してもらったことです。

日の出の勢いだったスマートフォン、自動車の販売にも陰りが見え、5Gの先行商品発売にもブームは起こらず、製造業はすでにベトナム、カンボジアなどに移転しています。産業別ではすでに空洞化が起こっています。

19年5月24日、中国は内蒙古省が拠点で倒産寸前だった「包商銀行」を国家管理にするため89%の株式を取得、国有化しました。金融パニック誘発前の予防措置です。中国銀行保険監督管理委員会(CBIRC)が「公的管理」し、債務は元本の30%削減という措置をとりました。心理恐慌の拡大を懸念した中央銀行は6月2日になって「これは単独の案件であり、金融不安は何もない」と発表しました。

投資家の不安はかえって広がりました。包商銀行の実体は不動産バブル、株投機の裏金処理、インサイダー取引の“ATM”でした。当該銀行を倒産させないで救済したのは、リーマン・ショックの前兆に酷似してきたと金融界が認識することを怖れたからです。

しかし、信用組合レベルの金融機関は倒産が続き、7月には遼寧省の錦州銀行が管理下に置かれました。ほか420の金融機関が不良債権のリスクを抱えていました。こうした矛盾は、全体主義システムの欠陥から来る宿命なのです。

例年、中国は3月の全人代(全国人民代表大会)で、その年のGDP成長率の目標を発表します。行政単位の市、県、村、鎮は、その数字(ちなみに19年は6~6.5%)を守るばかりか、それ以上の数字をはじき出すために無理を重ねます。

でたらめな計画の元に借金を増やし、何がなんでも目標達成がノルマになり、誰も乗らない地下鉄、クルマが通らない橋、人より熊の交通が多いハイウェイや事故が頻発するトンネル、テナントが入らないショッピングモール、そしてムジナとタヌキの住み家となった高層マンションが集合して、ゴーストタウンの乱立となっていたのです。

砂上の楼閣、蜃気楼の繁栄は、やがて泡沫のように消滅するでしょう。残るのは史上空前の借金です。成長率が落ちて、ゴーストタウン化が進み、工場が閉鎖され、潜在的失業は数百万人にのぼります。窮余の一策としての「一帯一路」は、余剰在庫と余剰労働力の処理のためのプロジェクトでした。それも、世界中から「借金の罠」と非難を浴びて世界各地で頓挫しています。

毎年チベットで開催される除霊祭。その願いは近いうちかなうかもしれない・・・・
近未来の姿は「ゴースト・チャイナ」です。これが、昨年の新型肺炎が起こる前の、中国の姿です。

まさに、中国経済は元々、自ら破綻するのは決まっていたのです。新型肺炎騒動は、それを若干はやめるだけのことです。

中国人民銀行(中銀)は今月3日、公開市場操作(オペ)で銀行など金融市場に1兆2000億元(約18兆6000億円)を供給しました。新型コロナウイルスによる肺炎の拡大が経済に与える影響を緩和する狙いがあるようです。しかし、この程度の規模では焼け石に水でしょう。結局何もしない、できないと言っているに等しいです。

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2019年7月3日水曜日

中国との競争に欠かせない米欧日協力―【私の論評】米国ができるのは、日欧と協力して中国経済の弱体化を早めること(゚д゚)!

中国との競争に欠かせない米欧日協力

米中2国間取引には限界がある

岡崎研究所

米中貿易戦争は、米中両国の報復関税のかけ合いとなっている。その影響は、米中両国のみならず、少なからず国際情勢に影響を及ぼしている。


 トランプ大統領は、貿易に関しては、中国のみならず、同盟国を含む他諸国にも関税をかけているか、かけようと脅している。鉄鋼・アルミニウムに関しては、日欧も例外ではなかったし、移民問題では、メキシコからの輸入に関税をかけるとした。

 そんな中、米国でも、トランプ政権は、中国と対峙して勝ちたいならば、欧州を味方に付けなければならないという論調が出て来た。例えば、6月12日付のニューヨーク・タイムズ紙に掲載された、バイデン元米国副大統領の補佐官を務めたジュリアンヌ・スミスの論説がそうである。筆者は、中国との競争に当たって、米国は同盟国と協調して対処すべきで、米欧の足並みを揃え、日本等に連携を拡大すべきだ等と主張している。米欧が結束して中国に当たるべきとの指摘は正にその通りだ。

 トランプ大統領は、中国と二国間で貿易取引しようとしているが、それには限界がある。欧州や日本などを含め有志連合を作って中国と交渉するほうが余程効果的だと思う。中国には頼るべき友好関係は余りない。圧力も集団の方が大きくなる。但し、今のような関税乱用のアプローチでは、なかなか連合も容易でないかもしれない。

 最近、欧州が経済、政治など中国のリスクに覚醒してきたことは、やや遅い感はあるが、歓迎すべきことである。2015年3月、英国が突如アジア・インフラ投資銀行(AIIB)の構想にG7で初めて参加を決定し、直ちに、ドイツ、フランス及びイタリアがこれに追随したことは大きな驚きだった。英国のオズボーン財務相の決定は理解に苦しんだし、英国など欧州諸国の説得をしていた米国は当然不満を露わにした。すなわち、トランプ政権以前から、欧米の対中政策ギャップは存在していた。米国からの働きかけにもかかわらず、欧州は聴く耳を持たなかったと言うことである。日米両国とカナダは不参加を貫き、AIIBの外から、透明性の確保やプロジェクトの審査基準などについて、種々中国へ働きかけた。

 「一帯一路」構想についても、日米両国は慎重に対処し、受け入れ国の債務負担や環境の重視などを指摘した。その後、中国は若干変化したようにも見える。今年4月に開催された北京の会議で、習近平は、財政の持続性などを確保する、国際基準に則って進める、入札や資材調達の手法を見直すなどと言及した。

 米欧などの連携による対中政策について問題となるのは、依然として欧州である。欧州は英国のEU離脱問題やポピュリズムの台頭などで結束を欠いている。独仏などの中国観は現実的になってきたが、南欧や東欧のEU加盟国の対中姿勢は未だ問題である。例えば、イタリアは、今年、G7諸国の中で、初めて「一帯一路」プロジェクトの受け入れに署名した国となった。また、EU加盟国以外も含んだ東欧諸国と中国が「17+1会議」を開催している。今の欧州の状況は、依然注意を要する。

 中国に対する政策に関しては、日米欧の継続的な対話が重要である。中国に限らず、共通の関心事項について、議論する三極の首脳会議を考えても良いかもしれない。幸い日米関係は旨く運営されているが、日欧関係の強化にも努めていくことが重要である。

【私の論評】米国ができるのは、日欧と協力して中国経済を弱体化を早めること(゚д゚)!

トランプ政権は、覇権国として中国が米国を抜くことを甘受するつもりはありません。あらゆる手立てを講じて中国の台頭を遅らせ、中国に抜かれないようにし、中国に対抗し、中国を抑え込む意思を固めています。そうして、これはもうトランプ政権の姿勢ではなく、米国の意思になっています。

トランプ政権はもとより、議会も超党派で中国に対抗しようとしています。なぜここまで、対抗心を顕にするかといえば、まずは中国の台頭はかつてのソ連がそうだったように、技術の窃盗によるものだからです。ファーウエイの技術は確かに進んでいますが、5Gを含めて、通信技術などは元々米国が主導で開発されてきました。

そもそも、インターネットは米国が開発し、自由の象徴のようなインフラでした。ところが、中国は「サイバー主権」なる主張をして、インターネットを国家が人民を監視するものとしてつくりかえようとしています。そうして、ファーウェイは5Gを道具として、その尖兵の役割を果たそうとしていたのです。

河南省鄭州市で容疑者を顔認識で見分けられるサングラスをかけ、行き交う人々を見つめる警察官。
雲南省昆明市では同じ機能を持つ透明な眼鏡が採用されている

5G等の技術は、米国等が基礎を開発し、まさに時間と金をかけて、実用段階にもっていく直前に中国はこれを盗み、膨大な政府の補助金を投下して、世界に先駆けて実用化させようとしていたのです。中国のいわゆる最新テクノロジーとはほとんどがこのようなものです。これは米国としてはとても許容できないわけです。

さらに、中国と米国などの先進国の社会は全く異なるものです。一般には、全体主義と民主主義などということがいわれていますが、もつと詳しくいえば、中国は先進国とは異なり、民主化されておらず、政治と経済が分離されていないどころか、政府と経済はまさに表裏一体です。さらには、法治国家化もされていません。

中国と日米欧の価値観は全く異なるのです。もともと、人権などは欧米では白人だけのものとされてきましたが、日本が第二次世界大戦を戦ったことにより、世界中で植民地が独立して、人権などの観念は、白人だけのものではなくなりました。



現在の先進国と、中国とでは全く価値観が異なるのです。その中国が台頭すれれば、その価値観は世界に敷衍されていくことになります。新たな邪悪な世界秩序が出来上がりかねません。これも、米国とはじめとする先進国には耐え難いことです。

一方、中国は2050年に米国を抜いて世界一になる目論見を抱き、そのため技術大国を目指し、軍事力の増強しています。今のところ、この方向性に修正を加えている気配はありません。つまり米中関係の基本構図は、対立と緊張にあります。

しかし米中ともに世論ないし国内の雰囲気に強い影響を受けます。トランプ大統領にとり、次の大統領選挙への影響が最大の関心事であるように、習近平国家主席にとっても国内の安定が政権維持の前提条件です。特に、共産党内の覇権・派閥争いには、常に勝利をおさめ続けなければなりません。

中国には、選挙という民主的手続きがないため、中国共産党も、幹部自身も常に統治の正当性を主張し、それを確かなものにしなければなりません。そうでないと、正当性を失いすぐに滅びることになります。

米国政治には景気動向が世論に大きな影響を及ぼしますが、中国政治では経済動向に加え統治の正当性が影響力を持ちます。一方で、統治の正当性に気を遣いながら米国に毅然とした姿勢をとる必要があり、他方で経済にマイナスの影響が出ないように米国との妥協を考えなければならないのです。

統治の正当性を無視すれば政権基盤はすぐに弱体化し、経済がうまくいかなければ社会はすぐに不安定化します。

米中は、いやおうなしの現在の世界経済に完全に組み込まれてしまっており、しかも第1位と第2位の経済大国といわれています。簡単にぶつかり合って、それで終わりということにはなりません。現状では、貿易戦争の形をとっていますが、これは将来確実にかつての米ソ冷戦と同じように、米中冷戦の次元にまで高まります。

しかし、力関係は米国に有利です。交渉が米国優位に進むことも不可避です。現在の米中交渉は、中国がこれまでやってきた発展パターンの不可逆的修正を米国が求め、それに中国が抵抗する構図となっています。

しかし、昨年7月以来の制裁関税合戦は状況の変化を生み始めています。つまり当初、米国の制裁発動がどの程度の影響を及ぼすか確信が持てなかった中国当局は、その影響が現状では許容範囲にあることを見定めつつあるようです。

今回も民営企業の投資心理の冷え込みに気を配りつつ、政府の刺激策で乗り切ろうとするでしょう。そして農業、半導体、車といった分野で米国がさらに嫌がる対抗措置をとるでしょう。

トランプ大統領は、最後は中国からの輸入全てに関税をかけると脅しています。中国もそれに屈するわけにはいきません。いわゆるチキンゲームが続くということです。結局、それぞれの経済が受ける打撃の程度を判断しながら、どこかで落としどころを見つけることになるでしょう。

それには中国も譲歩するでしょうが、米国も譲歩せざるを得ないです。米国に不満が残ることになります。米国は再び新たな材料を見つけ出して中国たたきを続けることでしょう。次の段階では、金融制裁も発動するでしょう。米国は基軸通貨国であり、さらに世界の金融を支配しています。これには中国も対抗するのは不可能でしょう。

この米中の対立は経済・金融だけでは済まないでしょう。軍事安全保障面での対立はさらに強まり、グローバルガバナンス、つまり国際秩序の遵守、運営管理の問題にも及ぶでしょう。米中対立の構図は長期間続きます。ただし、この対立の構図は、米国が対中認識に修正を加え、中国が方向性を変えることによって、かなり穏やかなものになる可能性があります。

米国はそれを狙っているのかもしれません。米国は、中国がグローバルガバナンスの問題で、本当に実行するかどうかは別にして、現行の国際秩序を護持すると明言し、すでに修正し始めている点を正確に認識すべきなのかもしれません。米国が日欧と共同戦線を張ることさえできれば、基本はわれわれの望む国際秩序となると目論んでいるかもしれません。

米国側からみて、中国が方向性を修正すべきは、1つは経済であり、中国市場をより自由で公正なものとする方向で軌道修正することです。2つ目は、中国軍の問題です。今のままで軍拡を続ければ米国だけではなく近隣諸国とも衝突します。中国の安全保障戦略の方向性の修正が必要です。

ただし、これは言うは易し、行うは難しの典型のようなものです。おそらく、米国はこれを単独で中国に実行させることは不可能でしょうし、中国共産党もこれを受け入れるのは困難でしょう。

なぜなら、中国市場をより自由で公正なものとするのは、かなり困難だからです。これを実行するには、公共工事のように中国政府が人民に掛け声をかけ、大量の投資をすればできるというような生易しいことではないです。

かつての先進国が、長い時間をかけてときには流血もともなった革命や改革によってなしとげてきた、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を成し遂げなければならないからです。これができなければ、中国の市場だけが、米国などの他の先進国の都合の良いようにある日突然、自由で公正なものになるわけではありません。

実際これが非常に困難であることから、多くの国が中所得国の罠から逃れることができないのです。中所得国の罠には、無論例外もあることはありません。それは、日本とアルゼンチンです。


日本は、現在開発途上国から先進国になった唯一の国です。アルゼンチンは、現在先進国から開発途上国になった唯一の国です。日本は中所得国の罠から逃れ先進国になりました。アルゼンチンは、高所得の先進国から、中所得以下の発展途上国になりました。

他の発展途上の国々や、新興市場の国々はどうかというと、経済が従来よりも急速に発展しても、中所得国の罠から逃れられず、そこから一歩もあげれないか、元に戻ってしまっているのです。なぜ、そのようなことになるかといえば、やはり先進国を先進国にならしめている、民主化、政治と経済の分離、法治国家が困難だからです。

このような社会になっていなければ、中間層が自由に社会経済活動を行い、結果として富をを築くということはできないのです。

これを考えると、米国も中国に対して、中国市場を自由で公正なものにさせることは困難でしょう。そもそも、中国共産党自体がそれを実行しないでしょう。そのようなことをすれば、中国共産党自体が統治の正当性を失い崩壊することになります。中共として何が何でも、現在の体制を崩すことはないでしょう。

そうなると、トランプ政権ができるのは、中国経済を弱体化させて、経済的にも軍事的にも、無意味な存在にすることです。それは、米国単体でもできるかもしれませんが、やはり米欧日が協力したほうが、はやく実現することでしよう。

それにこの体制を築いておけば、他の先進国が中国にすり寄ることでもあれば、米国が厳しく制裁する措置をとることなどで、抜け道を塞ぐことができます。先進国のすり寄りがなければ、中共の体制崩壊もはやまります。中共崩壊後には、新生民主中国があらたに歩みだすときに、良いスタートを切ることができます。日本としては、米国等が過去に日本に対して実施したような一方的な軍事裁判や占領政策など明らかな国際法違反を未然に防ぐことができます。

目標としては、現在のロシアの次元にまで経済力を弱体化させることで良いでしょう。現在のロシアのGDPは韓国を若干下回る程度(韓国は東京都と同程度)です。無論ロシアは、ソ連の核と軍事技術を継承しており、侮ることはできませんが、それにしても世界に対する影響力には限界があります。米国に対抗して何かを実行するなどということはできません。ましてや、世界秩序をつくりかえることなどできません。これを本気実行すれば、米国に潰されるだけです。

ただし、経済の弱体化により、中共が崩壊した場合には、米欧日は新生民主中国の建国に協力すべきです。

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2019年1月16日水曜日

中国経済が大失速! 専門家「いままで取り繕ってきた嘘が全部バレつつある」 ほくそ笑むトランプ大統領―【私の論評】すでに冷戦に敗北濃厚!中国家計債務が急拡大、金融危機前の米国水準に(゚д゚)!

中国経済が大失速! 専門家「いままで取り繕ってきた嘘が全部バレつつある」 ほくそ笑むトランプ大統領

トランプ氏(左)の攻勢を受ける習主席

  中国経済が明らかにおかしい。昨年の新車販売台数が実に28年ぶりに前年割れとなり、昨年12月の輸出も輸入も予想外の減少を記録した。米トランプ政権との貿易戦争による打撃と同時に、景気減速も鮮明になってきた。米中協議で3月1日の期限までに合意がなければ、米国は2000億ドル(約21兆6000億円)分の中国製品に対する関税の税率を10%から25%に引き上げる構えだ。習近平政権は追い込まれた。

 中国自動車工業協会が14日発表した昨年の新車販売台数は、前年比2・8%減の2808万600台だった。中国メディアによると、前年割れは28年ぶり。

 販売台数は米国を上回り、10年連続で世界一となったが、乗用車が4・1%減と落ち込んだ。

 日系自動車大手4社の販売台数は、トヨタ自動車と日産自動車が過去最高を更新した一方、ホンダとマツダはマイナスだった。日系メーカー幹部は「販売台数を維持しようと、大幅な値引きに頼るメーカーも出始めている。市場の状況は見た目の台数以上に厳しい」との見方を示す。

 不振は自動車にとどまらない。中国税関総署が14日に発表した貿易統計によると、昨年12月の輸出は前年同月比4・4%減、輸入は7・6%減となり、米中貿易戦争による中国経済への影響が本格化していることを示した。

米国との貿易については、輸出が3・5%減の402億ドル(約4兆3500億円)で、9カ月ぶりにマイナスに転じた。米国の追加関税発動を見越した駆け込み取引が一段落し、今後はさらに落ち込む可能性がある。

 米国からの輸入にいたっては、35・8%の大幅減となる104億ドルだった。12月初めの米中首脳会談では中国が米国産の農産物やエネルギー資源の輸入を拡大することで合意し、すでに中国側が米国産大豆の購入を再開しているが、減少に歯止めがかかっていない。

 税関総署の報道官は記者会見で、2019年の見通しについて「環境は複雑かつ厳しい。一部の国の保護主義によって世界経済は減速する可能性がある」と述べ、米国を暗に批判しつつ困難な状況が続くとの考えを示した。

 習政権は急速な景気悪化を懸念し、減税措置など景気刺激策を積極化。今月4日には中国人民銀行(中央銀行)が預金準備率を引き下げる金融緩和措置を発表するなど対応に追われた。ただ、ブルームバーグは「最近の刺激策にも関わらず、(中国)経済が近いうちに底を見つけるという見方はほとんどない」と伝えた。

 こうした状況にほくそ笑んでいるのがトランプ大統領だ。14日、ホワイトハウスで記者団に対し、「われわれは中国とうまくやっている。妥結できると思う」と語った。貿易戦争の悪影響が日増しに大きくなるなかで、習政権側が何らかの妥協案を示してくると見越しているようだ。

 中国は18年の国内総生産(GDP)の成長率目標を「6・5%前後」としているが、ロイターは、19年の目標を「6~6・5%」へと引き下げることを決め、3月にも公表する見通しだと報じた。

 景気の減速に危機感を強める習政権は、近く自動車や家電の購入促進策を打ち出す方針だ。ただ、米アップルのiPhone(アイフォーン)よりも中国メーカーのスマートフォンを購入するよう奨励する動きがあるように、中国メーカーを優先した策となる可能性がある。中国に進出している外資系企業がどこまで恩恵を受けられるかは不透明だ。

 中国経済の失速について「米中貿易戦争が直接の契機になったのは事実だ」と話すのは中国情勢に詳しい評論家の宮崎正弘氏。

 自動車の販売台数に関しては「中国では自動車の場合、無理して売っていたが、各社の生産台数も落ち込んでいる。自動運転と電気自動車も伸びているように見えたが『本当にうまくいくのか』と懐疑の念が起こってきたのだろう。いままで取り繕ってきた嘘が全部バレつつあるという状況ではないか」と分析する。

中国リスクは高まる一方だ。

【私の論評】すでに冷戦に敗北濃厚!中国家計債務が急拡大、金融危機前の米国水準に(゚д゚)!

懸念される「家計部門」の債務

経済が債務膨張に依存するいわゆる高レバレッジは、2008年のグローバル金融危機発生以来、大きな金融リスクとして広く認識されています。中国でも近年この問題が深刻化しており、高レバレッジ経済からの脱却は主要政策課題の1つに位置付けられています。これまで主として国有企業や地方政府の債務が問題とされてきましたが、ここへ来て、家計部門にも懸念が出始めました。

中国最大のシンクタンクである社会科学院系列の国家金融発展実験室によると、金融を除く実体経済部門(政府、企業、家計)債務の対GDP比(レバレッジ比率)は2008〜16年、年平均12.3%ポイントずつ急上昇し16年239.7%に達した後、17年242.1%、18年上期242.7%となお上昇傾向は続いていますが、落ち着く兆しを見せています。ただ17年〜18年上期、企業のレバレッジ比率が157%から156.4%、政府が36.2%から35.3%へと低下する中で、家計は49%から51%へ上昇しています。同比率は1993年8.3%、08年17.9%で、長期的にも加速的に上昇しています。

実験室の李揚理事長(元社会科学院副院長)は18年4月、海南で開かれたボアオフォーラムで、「17年末、家計の貯蓄性預金伸び率が初めてマイナスに転じた。この傾向が続くと、家計は債務超過になるおそれがある。08年、米国で債務危機が発生した時も、家計の債務が発端だった」「企業・政府部門の赤字を家計部門の黒字で賄うのが一般的な構造だが、グローバル危機発生時の米国がそうであったように、3部門が何れも赤字になると、経済成長は通貨膨張、金融バブルに依存せざるを得なくなり、最終的に金融危機が発生する。中国もそうした状況に陥らないよう高度の注意を払うべき」と警鐘を鳴らしてます。

「債務リスクを誇張すべきでない」との声もあるが

実験室理事長の上記発言はあるが、他方で、実験室の担当部局は以下のような点を指摘し、債務リスクを誇張すべきでないとしています。

①元本返済と利払いを合計した年あたり債務負担額は、仮に金利4〜5%、償還期間15〜20年とすると4兆元強(家計債務42.3兆元×約10%)。これは対可処分所得比(債務負担率)8%で国際平均12%を大きく下回る。

②理財商品(高利回り資産運用商品)など元本保証のないリスク資産を除いても、リスクに対応できるだけの十分な現預金がある。18年6月末銀行預金残高は債務総額を大きく上回る68.7兆元で、現金も含めると債務の約1.8倍。日本よりは低いが、米英等先進諸国に比べはるかに高い。

③家計の貯蓄率は10年ピークで42.1%を記録した後、やや低下傾向にあるが、15年なお37.1%で米国の17年6.9%など、諸外国に比しはるかに高い。

これに対し、リスクの高まりに警戒すべきとの見方は、次のような点に着目して(2018年2月8日付財新網)。

①レバレッジ比率は全国平均50%だが、広東、浙江、上海は60%以上、北京、福建、甘粛が50〜60%と総じて都市部ほど高い。債務負担率も都市部は11.5%と国際平均並み。このように、債務の大半が都市部住民に集中している。

②中国では可処分所得の対GDP比が低い。仮にレバレッジ比率の分母を可処分所得にすると、17年末すでに93.5%と米国の16年末99.4%並み。

③家計負債の対資産比率は13〜15年5〜9%となお低いが、負債が「剛性」、つまり必ず一定額を償還しなければならないのに対し、資産価値は変動するという非対称性がある。また資産の大半は住居で流動性が低く、賃料収入も債務の金利を賄うほどの水準にない。

潜在リスクを「増加傾向」と見るべき理由

以上、どのような指標に着目するかで見方は分かれているが、近年の家計の資産負債構造の変化を踏まえると、方向としては潜在リスクが増加していると見るべきだろう。まず、資産面では銀行預金伸び率が大きく鈍化している(図表1)。
[図表1]家計部門人民元預金残高推移 出処:中国人民銀行

18年4月には、家計の預金残高が単月で過去最大となる前月比1.32兆元の減少となり、大きな関心を呼びました。実は例年4月、家計の預金残高が減少する傾向がある(14〜17年の4月は各々前月比1.23兆元、1.05兆元、9296億元、1.22兆元の減少)。この背景には、多くの理財商品の満期が季末に設定され、満期が訪れると、理財商品に運用されていた資金がいったん当座預金に入った後、再び理財商品購入のため預金から流出していくという季節要因があります。

しかし中長期的に預金が伸び悩み傾向にあることも事実です。成長率鈍化が基本的背景にありますが、08〜11年、12〜14年の各期間、成長率の変動幅は小さいにもかかわらず(各々9〜10%、7%台)、預金増加率はこの間も大きく鈍化し(各々26%→13%、17%→9%)、15年以降ようやく下げ止まっています(概ね7〜9%台の伸び)。

預金が趨勢的に伸び悩んでいる大きな要因は、預金金利が低水準で推移する中で、元本保証はないがより高い利回りを提供する各種理財商品や「余額宝(ユーアバオ)」に代表されるMMF(マネー・マーケット・ファンド)に資金が流れたことです。

銀行が提供する理財商品も急増しており(うち元本保証のない商品が17年末22.17兆元と全体の75%以上)、うち個人向けは倍増です(図表2)。

[図表2]銀行理財商品の膨張

理財商品を提供する銀行は沿海部を中心とした都市部に集中している(図表3)。また、MMF残高は17年末7兆元強(5月18日付中国基金報)。

[図表3]理財商品提供銀行分布

もう一つの要因は、住宅市場が過熱するたびに各地で導入された住宅購入抑制策で、住宅購入の際に必要となる頭金の比率が上昇し、預金を積む余裕がなくなったことも影響している。15年以降預金伸び鈍化に歯止めがかかっているが、これにはいわゆる個人向け仕組預金の増加が寄与している(人民銀行統計で18年11月末残高前年同期比は大型銀行57%、中小銀行53%の大幅増)。

金融監督が強化される中で、銀行がオフバランスシートの理財商品を圧縮するための代替商品として、あるいはMMFに対抗するため、積極的に商品開発・販売したためと思われるが、伝統的な預金に比べると一定のリスクがあり、将来的に家計の債務返済能力に影響を及ぼす可能性がある。

家計債務に占める住宅関連債務は6〜7割

次に、負債面では住宅関連債務の増加が著しい。金融機関の家計向け住宅融資残高は18年上期末23.84兆元、前年同期比18.6%増(人民銀行統計)。その他、国や企業等の住宅公積(積立)金制度から受ける融資残高が17年末4.5兆元(前年同期比11.1%増)あり(全国住房公積金2017年年度報告)、これを含めると、家計債務に占める住宅関連債務は6〜7割。16年以降、銀行の新規融資の過半が家計向けで、融資残高に占める家計向けの割合は15年末28.9%から18年11月末35.2%へと上昇している(図表4)。

[図表4]人民元融資残高推移(注)総融資は国内向け融資の数値。(出所)中国人民銀行統計

このうち中長期融資が7割以上を占めており、その大半が住宅ローンです。消費者ローンや少額ローンの一部も住宅購入に充てられている可能性があり、そうすると、住宅関連債務はさらに高いことになります。2018年10月に発表された上海財経大学高等研究院調査は、17年以降、中長期債務増加率が鈍化する一方、短期債務の増加率が加速する傾向が出ていますが、個人消費はそれほど伸びておらず、短期融資が住宅購入の頭金や住宅ローンの代替として使われている可能性を指摘しています(2018年10月30日付第一財経)。

さらに11月、中国人民大学が発表した「中国宏観経済報告(2018-2019)」は、「去庫存」、すなわち過剰住宅在庫を解消する政策が採られる過程で、農民工の住宅購入が奨励された結果、住宅債務の罠(套牢)に陥る中所得層が増加、これが消費に悪影響を及ぼすことを懸念しています(11月26日付新浪財経)。

このように、家計の資産負債がいずれも住宅市場の動向や政府の住宅政策に大きく左右される構造になっています。

中国家計債務が急拡大、金融危機前の米国水準に

上海財経大学高等研究院が今月7日に公表した研究調査によると、2017年までの中国家計債務の対可処分所得比率は107.2%に達しました。米国の現在の水準を上回ったうえ、08年世界金融危機が起きた前の米家計債務水準に近い状況だといいます。

また、中国人民大学の研究チームが6月にまとめた調査報告では、中国家計債務の6割以上が住宅ローンだと指摘されました。一部の市民が、頭金の調達は自己資金からではなく、頭金ローンや消費者金融などを利用しているため、金融リスクを拡大させているといいます。

米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の経済学者、兪偉雄氏は、中国経済の減速による失業率の上昇と所得減少で、今後住宅ローンの返済が困難な人が急増する恐れがあると指摘しました。「これによって、金融リスクは住宅市場から金融市場全体まで広がる可能性が高い」と、兪氏は米中国語メディア「新唐人テレビ」に対して述べました。

一方、中国の蘇寧金融研究院は、家計債務の増加ペースが非常に速いとの見解を示しました。過去10年間において、部門別債務比率をみると、家計等の債務比率は20%から50%以上に膨張しました。一方、米国では、同20%から50%に拡大するまで40年かかりました。

兪氏は、家計債務の急拡大は、近年中国当局が経済成長を維持するために次々と打ち上げた景気刺激策と大きく関係するとしました。「当局は、いわゆるマクロ経済調整を実施して、経済の変動・衰退を先送りしてきた」

上海財経大学高等研究院は同研究報告を通じて、公にされていない民間の貸し借りを加えると、中国の家計債務規模はすでに「危険水準に達した」と警告しました。

家計債務の急増は個人消費に影響を及ぼしています。中国の個人消費の動向を示す社会消費品小売総額の伸び率は7年間連続で落ちています。2011年の社会消費品小売総額は前年比で20%増でしたがが、昨年1~6月までは、前年同期比で1桁の9.4%増に低迷しました。

個人消費の不振は企業収益の減少、銀行の不良債権の増加につながります。

兪偉雄氏は、今後中国経済がハードランディングする可能性が高いと推測しました。

「中国経済に多くの難題が山積みしている。中国当局が今まで、不合理な政策をたくさん実施してきたことが最大の原因だ」

米国から経済冷戦を挑まれている中国、もう八方塞がりの状況です。今のままでは、可処分所得が減るのは当たり前で、そもそも個人消費がかなり低迷することになるのは必定です。もう、中国は冷戦に負けたも同じです。

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2018年12月15日土曜日

中国、対米国サイバー攻撃の“実行部隊”ファーウェイCFO逮捕の屈辱…中国経済が瓦解―【私の論評】中国の異形の実体を知れば、全く信頼できないし、危険であるとみなすのが当然(゚д゚)!

中国、対米国サイバー攻撃の“実行部隊”ファーウェイCFO逮捕の屈辱…中国経済が瓦解

G20首脳会議 米中首脳会談

 中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)が米国の要請でカナダ当局に逮捕された事件は、米中両国の世界覇権をめぐる死闘の始まりを意味している。

 なぜなら、米国にとってファーウェイは、サイバー攻撃によって同国の最先端技術や最重要情報などを狙うハッカー集団の元締めであり、このままファーウェイの行為を許していれば、米国の軍事情報を含む安全保障上の重要情報はほとんど中国に筒抜けになるからである。

 一方の中国にとっては、ファーウェイは今後も中国の経済成長と生産性向上を推進するためになくてはならない中核企業であり、その最高幹部が逮捕されることによって、中国の最重要経済政策がなし崩し的に破綻に追い込まれる可能性がある。

 ポンぺオ米国務長官は12月12日、世界最大手ホテルチェーンのマリオット・インターナショナルで発覚した最大5億人分の顧客の個人情報流出に「中国が関与している」と語り、中国を名指しで非難。これを受けて、米上院司法委員会のグラスリー委員長は12日、「世界で行われるサイバー攻撃を通じた産業スパイ活動のうち、90%以上は中国と考えられている」と中国を糾弾した。

 これは、このまま中国に軍事情報などを盗まれ続ければ、世界のなかで「米国一強」の地位は中国に脅かされ、中国によって世界覇権を奪取されかねないとの強い危機意識が働いているからにほかならない。

 このため、米政府や議会は、中国政府がサイバー攻撃を仕掛けて技術を盗んだり、機密情報にアクセスできる要人のデータを集めたりしていると警戒しており、今年8月にはファーウェイや同じく中国の通信機器大手・中興通訊(ZTE)の製品を政府調達から排除することを決定した。なぜなら、ファーウェイやZTEの製品を通じてスパイウェアやマルウェアが政府の中枢システムに入り込み、サイバー攻撃の温床になっているとみられるからだ。

メンツを潰された習近平

 折しも、米中両国は今年7月から、トランプ米政権による対中関税発動を契機に貿易戦争に突入した。大幅な関税引き上げにより、とりわけ中国経済が悪化していることは一目瞭然だ。中国国家統計局によると、中国の今年7~9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比6.5%増で、4~6月期より0.2ポイント減速しており、リーマン・ショック直後の09年1~3月期以来、9年半ぶりの低水準にとどまっている。この原因は貿易戦争勃発後、外資企業や中国企業が次々と生産拠点を中国から他国に移転し、中国内の失業者が急増していることが挙げられる。

 11月28日付の経済ニュース専門サイト「財新網」は「国内雇用低迷のため、202万件の求人広告が消えた」と報じた。「網易」(10月22日付)も『今年上半期国内504万社が倒産、失業者数200万人超』との見出しを掲げた記事を配信。さらに、中国農業農村省は11月8日、740万人の農民工(出稼ぎ農民)が地元に戻ったと発表し、その実態を裏付けている。加えて、これまで右肩上がりで上昇していた都市部のホワイトカラー層の所得が伸び悩んでおり、習指導部の支持基盤である都市部住民の不満が高まっているのだ。

 このようなことから、習主席はトランプ氏に首脳会談を提案。習氏は12月1日、主要20カ国・地域首脳会議(G20)の場を利用し、訪問先のアルゼンチンで、わざわざ米側の宿舎となっているホテルに習指導部の主要幹部を引き連れて行き、トランプ氏と会談したほどだ。まさに、習氏はトランプ氏に三拝九拝して会ってもらったといってよい。中国の皇帝は相手を“かしずかせて会ってやる”という「朝貢外交」の伝統があるが、習氏は皇帝のプライドをかなぐり捨てて、トランプ氏との首脳会談に臨んだのである。

 この結果、米国が来年1月に予定していた中国への追加制裁を90日間猶予することが決まった。習氏は面目を保ったかに見えたのだが、実は、ファーウェイの孟氏は首脳会談当日の1日に逮捕されていたことが、のちに判明する。つまり、習氏は完全にメンツをつぶれされたのである。

中国への信頼度低下

 しかも、孟氏の祖父は元四川省副省長という中国政府幹部であり、周恩来首相人脈につらなる古参幹部。また、孟氏の父は中国人民解放軍出身でファーウェイ会長。孟氏自身は父の跡を継いで来年にもファーウェイ会長に就任するといわれる大物幹部であり、中国政府にとっても最重要人物だ。

 習氏は高級幹部子弟の太子党閥の総帥だが、孟氏は典型的な太子党だけに、その孟氏が海外で逮捕されたのは、完全にトランプ政権に裏をかかれた格好で、中国の最重要人物を保護できなかった習指導部の失態としかいいようがない。

 さらに習氏が犯した失敗は、孟氏逮捕の報復として、中国在住の2人のカナダ人男性を「国家安全を害した容疑」で拘束したことだ。これについて、中国外務省スポークスマンは「法に基づいて行動した」と述べ、孟氏逮捕とは無関係と主張したものの、報道ではカナダへの報復との見方が強い。中国がいくら「ファーウェイの問題と無関係」と言っても、タイミング的に2人のカナダ人が拘束されれば、誰でも報復措置と考えるのは当然だ。

 この“違法”な身柄拘束によって、「中国はいまだに外国人を誘拐するような非人道的な真似をするのか。中国はまだ法治国家にはほど遠い」との印象を国際社会に与えることになり、習指導部への薄気味悪さは一段と増すことになる。これによって、西側社会の中国への信頼感は、限りなくゼロに近くなるといってもよいだろう。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

【私の論評】中国の異形の実体を知れば、全く信頼できないし、危険であるとみなすのが当然(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事には、"「中国はいまだに外国人を誘拐するような非人道的な真似をするのか。中国はまだ法治国家にはほど遠い」との印象を国際社会に与えることになり、習指導部への薄気味悪さは一段と増すことになる"などと結論を書いていますが、これこそが大きな間違いです。

結論からいえば、中国が民主化されていない、政治と経済が分離されていない、法治国家化されていないということを知っている人なら、最初から中国を全く信頼していません。私もそうです。

中国と比較すれば、米国のほうがはるかにましですし、まともです。それは、不十分なところもありながら、民主化、政治と経済の分離、法治国家化がされているからです。米国の為政者には縛りがあります。しかし、中国にはそれがないのです。

今のままの中国なら、中国内にとどまり、中国内のみで様々な活動をしている分には、良いかもしれないですが、一歩でも外に出て何かをやろうとすれば、周りの国々と衝突するのは当然です。

現在の中国共産党は結局、国内外で、最終的には何の縛りもなく、好き勝手、やりたい放題ができます。そもそも、国内でやりたい放題です。それは、国外にも適用されます。国際法など中国には無関係なのです。

このような国が覇権争いに勝って、世界中で好き勝手をしてしまうと世界は混乱の極みになることは目にみえています。

そもそも、日本を含めて世界の多くの国々の人々が、特に先進国の多くの人々が、中国を見る目は間違っているのではないかと思います。多くの人々は、何となく中国も自分たちが抱く国という概念に当てはまるのではないかと、無意識に考えてしまっているのではないかと思います。

まずは、中国が民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされていないということをよく理解していないのではないかと思います。

中国のこの問題については以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国は入れない日欧EPA 中国に“取り込まれる”ドイツを牽制した安倍外交 ―【私の論評】「ぶったるみドイツ」に二連発パンチを喰らわした日米(゚д゚)!
中国においては、そもそも民主化、政治と経済の分離、法治国家がなされていません。

わかりやすい事例をだすと、たとえば戸籍です。すべての中国人の戸籍は、農村戸籍(農業戸籍)と都市戸籍(非農業戸籍)に分けられています。農村戸籍が約6割、都市戸籍が約4割で、1950年代後半に、都市住民の食糧供給を安定させ、社会保障を充実させるために導入さました。 
以来、中国では農村から都市への移動は厳しく制限されていて、日本人のように自分の意思で勝手に引っ越ししたりはできないです。ちなみに都市で働く農民工、いわゆる出稼ぎ労働者がいるではないか、と思われるでしょうが、彼らは農村戸籍のまま都市で働くので、都市では都市住民と同じ社会保障は受けられません。これでは、民主的とはいえず、EPAには入れないのは当然です。
さらに、中国は国家資本主義ともいわれるように、政治と経済が不可分に結びついており、先進国にみられるような、政府による経済の規制という範疇など超えて、政府が経済に直接関与することができます。実際中国の株式市場で株価が下落したときに、政府が介入して株式を売買できないようにしたこともあります。


中国は30年にわたる「改革開放」政策により、著しい経済発展を成し遂げました。ところが、依然として法治国家ではなく「人治国家」であるとの批判が多いです。それに対して中国政府はこれまでの30年間の法整備を理由に、「法制建設」が著しく進んでいると主張しています。 
確かに30年前に比べると、中国の「法制」(法律の制定)は進んでおり、現在は憲法、民法、刑法などの基本法制に加え、物権法、担保法、独占禁止法などの専門法制も制定されています。それによって、人々が日常生活の中で依拠することのできる法的根拠ができてはいます。 
その一方で、それを効率的に施行するための施行細則は大幅に遅れています。何よりも、行政、立法、司法の三権分立が導入されていないため、法の執行が不十分と言わざるを得ないです。中国では、裁判所は全国人民代表会議の下に位置づけられているのです。つまり、共産党の指導の下にあるわけです。 
これは、結局何か大きな問題があっても、法律どころから憲法に照らしても、共産党の恣意でなんでも好き勝手にできるということです。

これが、中国国内だけで適用というのならまだ多少理解できなくはありませんが、現状ではそんな区別もありません。中国の今の制度では、中国共産党は世界中で自分たちの都合でなんでも好き勝手にできるのです。

ただし、相手国があり、相手国がその憲法や法律にもとづいて動いているため、相手国の範疇では中国といえども、それに従わなければならないので、かろうじて安定が保たれているだけです。

もし、中国が世界中で覇権を握れば、その覇権の及ぶ範囲の中では、中国共産党は何をしても許されるということです。

中国共産党が認めれば、人民解放軍などがどこで何をしても、何でも許されるのです。このように何の縛りもない中国共産党は、世界にとって危険極まりない存在です。

それに比較すれば、日米をはじめといする、いわゆる先進国はいずれの国でも、為政者(政権政党)にも当然のことながら、何らかの縛りがあります。

トランプ大統領、安倍総理などはもとより、先進国の為政者には当然のことながら縛りがあります。しかし、中国共産党、習近平主席にはそれがないのです。

中国共産党は異形の怪物? エイリアン・コベナントより

これを理解してはじめて、中国など全く信頼できないことが理解できると思います。人の良し悪しがどうとか、一般民衆がどうのこうのとは言っても、結局国の体制がそうなっているのですから、今の中国は危険極まりないし、信頼もできないのです。

このような体制を築いた、中国の先達は、中国共産党が手前勝手になんでもできる体制に脅威を抱かなかったのでしょうか。全く不思議です。

この体制は、放置しておけば、国内では大災厄をもたらし、多くの人民から反感を買うことになりますし、国外では他国から爪弾きにあうのは必定です。

まさに、中国の現状はそのような有様です。この体制は長くは続かないでしょう。短くて、10年長くて20年だと思います。

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2018年11月29日木曜日

【石平のChina Watch】中国経済の「10月ショック」 自動車販売台数も落ち込み、「半死半生」に―【私の論評】米国の対中国「冷戦Ⅱ」は確実にボディブローのように効きつつある(゚д゚)!


広州国際モーターショー2018  16日 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

今年10月の中国経済状況を示す、いくつかの重要数字が今月中旬から続々と発表された。そのいずれもが衝撃的なものである。

 1つは、自動車の販売台数に関する数字だ。中国自動車工業協会によると、10月の全国の自動車販売台数は238万台で、前年同月比で11・7%も減った。今年6月以来、自動車販売台数は5カ月連続の前年同月比減となったが、それは、1992年以来初めての異常事態である。

 大型商品である自動車販売台数の激減は当然、中国における消費の萎縮と消費心理の冷え込みを意味する。

 今月11日に行われた恒例の「独身の日セール」は、開始2分で売り上げが100億元(約1630億円)を突破したことで世界中を驚かせた。だが、それは単に、独身者などの消費者が普段買わなければならない生活必需品をセールに合わせてまとめ買いしただけのことであって、消費の拡大や消費意欲の堅調を意味するものではない。

 人々が以前のように自動車を買わなくなったこと、それこそが消費意欲の低減と、将来の経済状況に対する不安の拡大を確実に表しているのである。

 自動車が以前のように売れなくなると、産業全体が受ける悪影響は計りきれない。自動車産業の関連産業の裾野があまりにも広いからである。

 さらに、中国の産業全体の萎縮を表す、もう1つの重要数字も出てきた。

 中国の中央銀行である人民銀行が今月13日に公表した統計によると、10月中に各金融機関から貸し出された新規融資の総額は、6970億元で、9月の1兆3800億元と比べれば、半分程度に減った。

 一国の経済の中で、新規融資減少の理由が、国の行う金融引き締めであることは多いが、今回の場合はそうではない。アメリカとの貿易戦争開始以来、中国政府はむしろ経済刺激のための積極的な金融緩和政策を実施してきている。それにもかかわらず、10月の新規融資が半分以上も激減したことは、まさに異常事態である。

 さらに問題となっているのは、10月の新規融資の内訳である。貸し出された6970億元の新規融資のうち、80%以上は個人向けの融資であって、企業向けの融資は約2割でしかない。

 このことが意味するところは実に大きい。要するに中国国内企業の大半は、銀行からお金を借りて生産拡大や設備投資を行おうとは、まったくしていない、ということである。

 政府が金融緩和を断行しても、銀行が「お金はいくらでも貸すよ」と言っても、企業は興味を全然示さない。それでは中国の産業が停滞しているというよりも、もはや「半死半生」のような状態となっていることを示している。

 産業の停滞と関連して、中国の税収も大幅減となった。中国財務省(財政部)が15日に公表した数字によると、10月の全国一般公共予算収入は前年同月比で3・1%減り、そのうち、一般公共予算収入の大半を占める税収入は前年同月比で5・1%減ったという。

 税収の大幅減は中国政府にとっての深刻問題であると同時に、税収源となる企業活動と個人の消費活動の低迷を意味している。

 以上のように、今の中国で、個人消費と企業活動の両方が急速に冷え込んでいることは明らかだ。

 今後、消費の低迷はより一層の企業活動の萎縮を招き、企業活動の萎縮は失業の拡大や賃下げを生むことによって消費のさらなる低迷を招くという悪循環が生じてくるのであろう。中国経済のますますの沈み込みは、もはや避けられない。

【私の論評】米国の対中国「冷戦Ⅱ」は確実にボディブローのように効きつつある(゚д゚)!

ブログ冒頭の石平氏の記事は、10月の統計数値をもとに分析を行っています。ここでは、上半期の数字から読み取れることを掲載しようと思います。

中国国家統計局のデータによると、2018年上半期の全国社会消費品小売総額は18兆18億元(約300兆円)、前年同期比9.4%のプラスでした。この数値はこれまで、ほとんど10%から12%の間におさまり、失業率と並び、最も動きの少ないデータでした。しかし昨年の12月以降は下落基調となり、2ケタに届かなくなってきました。消費は減速しているようです。項目別に動向を見てみます。
伸長率トップ5化粧品14.2%、日用品類12.6%、石油及び製品類11.9% 家用電器・音像器材類10.6%、通信機材類10.6% 
伸長率ワースト5自動車類2.7%、文化事務用品6.6%、金銀宝石類7.4%、建築及び内装材料8.1%、酒煙草類8.9%
どれをとっても大差なく、消費のダイナミズムは伝わってこないです。ただ実物商品ネット通販売上だけは、3兆1277億元、29.8%の大幅増です。ただしこれも、ここ数年30%台前半で推移し、ほとんど変わっていません。

このように、上半期からすでに、中国の個人消費は落ち込んでいました。中国国内の一部の専門家は、個人消費の低迷を示す「リップスティック効果」現象が、中国で現れているとの見解を示しました。

「リップスティック効果」とは、経済が厳しい時代になると女性は「安価な贅沢品」、とくに口紅に代表される化粧品を好んで消費する、という説のことです。

アメリカの学者たちは、進化心理学的な観点から「女性は厳しい環境におかれると、優秀な男性を手に入れるために自分の容姿を飾り、魅力をアップさせるようなアイテムを求める傾向がある」とこの現象を説明しています。



中国国家統計局の公表によると、18年上半期の社会消費財小売総額は18兆18億元で、前年同期比9.4%増となりました。2004年以来の低水準だ。また、物価上昇要因を除いた実質の上半期社会消費財小売総額の伸び率は7.7%にとどまりました。1995年以来の最低水準となった。

項目別の消費動向をみると、上半期において消費が最も拡大したのは化粧品です。同14.2%増となりました。伸び率の2位は日用品類で、同12.6%増。石油および石油製品類は同11.9%増と3位になりました。

一方、自動車の消費は不振となりました。伸び率はわずか同2.7%増です。

ここで、一つ注意しておきたいのは、日本の感覚では2.7%増は決して悪くないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、経済成長が著しかった中国では二桁成長も珍しくなく、2.7%の伸びは、伸びがあまりに少なく成長したとは捉えられないのです。

経済成長そのものも、従来は「保八」という言葉があり、これは政府が保証するGDPの伸び率でした。発展途上の中国においては、少なくともGDPの伸びが8%くらいないと、雇用を吸収しきれず、政府としては8%の経済成長を人民に約束するという意味合いで「保八」という言葉が生まれてたのです。

現在の中国は、ここ数年「保八」を守れていません。

過去の中国では経済成長8%を約束し、実際に守ってきたがここ数年は守れていない


中国金融情報サイト「金融界」は8月12日、証券会社「海通証券」チーフアナリストの姜超氏の評論記事を掲載しました。姜氏は、6月中国の選択的消費の縮小と必需的消費の拡大が、リップスティック効果の現象だと指摘しました。

自動車や家電、家具、外食など、生活上に必ずしも必要ではない選択的消費の6月の伸び率はマイナス0.3%で、2002年以来の低水準。一方、食品や日用品などの生活上で必要不可欠な商品、必需的消費の伸び率は11.9%で、14年以来の高水準となりました。

また、リップスティック効果の恩恵を受ける中国映画市場の興行収入額では、8月5日に400億元(約6500億円)の大台を突破しました。中国メディアは「過去最速だ」としました。

中国の映画興行収入の推移

専門家は、現在中国株式市場が低迷している一方で、漬物やインスタントラーメンの生産企業の業績は拡大していると指摘しました。

前述の姜氏は、現在元安・株安、当局の住宅価格抑制政策で個人資産が減少したことと、国内経済失速による所得減少の見通しが、消費低迷の主因との見解を示しました。

この記事の、冒頭の石平氏の記事では、「アメリカとの貿易戦争開始以来、中国政府はむしろ経済刺激のための積極的な金融緩和政策を実施してきている」と述べていますが、これはそうでもないところがあります。

中国人民銀行(中央銀行)は10月7日、金融機関から預金の一定割合を強制的にあずかる預金準備率を15日から1・0%引き下げると発表しました。大型商業銀行の預金準備率は15・5%から14・5%に下がる。引き下げは今年に入り3回目。人民銀は7500億元(約12兆4千億円)を市場に供給する効果があるとしています。

中国では米国との貿易摩擦が激化するなか、景気の先行き不透明感が強まり、上海の株式市場は年初から15%下落。人民元の対ドルレートも9%程度下がっています。人民銀は準備率引き下げで零細企業などへの貸し出しを強化し、実体経済を下支えする狙いです。

ただし準備率引き下げが金融緩和とみなされれば、人民元の売り圧力が強まり、資金流出が加速する恐れもあります。このため人民銀は「金融は穏健で中立的であり、通貨政策の方向性に変更はない」と説明。「今回の措置は流動性の不足を補うもので、金融緩和ではない」としています。

中国当局は7月の共産党政治局会議などで、「穏健で中立」としてきた金融政策について「中立」を削除するなど緩和方向に修正しましたが、過度な元安への警戒感も高めているといいます。

本当は、このような状況であれば、量的緩和をすれば良いのでしょうが、それを実行すると海外への資金流出が加速してしまう恐れがあるので、預金準備率を下げるという、あまり効果の期待できない方法しか実施できないというのが実体です。

今後も、大規模な金融緩和ができない状況が続くことが予想されます。そうなると、やはり個人消費の伸びは期待できないです。

さらに、財政政策に関しても、中国国内の公共投資によるインフラ整備は一巡して、国内の整備は終わったため、中国は一帯一路で海外に投資しようとしていますが、このブログでも掲載しているように、これはうまく行っていません。

そうなると、国内の消費低迷に関して、大規模なマクロ政策を打つことはできず、今後も個人消費が回復する見込みはありません。

上半期は、米国の貿易戦争による悪影響はまだ少なかったと考えられます。上の記事で石平氏が示すように、10月の数値も良くなかったということですから、今後ますます個人消費が低迷していくのは必至のようです。

やはり、米国の冷戦Ⅱは、じわりじりとボディーブローのように効き始めているようです。

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2018年2月28日水曜日

中国の対外投資が急ブレーキ、3割減で初の前年割れ 米欧が警戒、中国自身の資本流出規制も追い打ち―【私の論評】中国経済はやがて身の丈にあったところまで落ち込むことになる(゚д゚)!



 中国の対外投資に急ブレーキがかかっている。中国商務省のまとめで、中国企業が2017年に海外で行った直接投資(金融分野を除く)は総額1200億8000万ドル(約13兆円)と、前年を29.4%下回った。中国の対外投資額で前年割れは03年の統計公表開始後、初めて。安全保障上の理由などから、米欧で中国からの投資や買収に拒否反応を示すケースが増えていることに加え、海外への不正な資金流出を警戒する中国政府の規制強化も追い打ちをかけている。(香港 河崎真澄)

 習近平指導部が進めている現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に関連し、スリランカやパキスタン、ジブチなどのプロジェクトで、中国による軍事転用の懸念が強まり、米欧が対中警戒をこれまで以上に強めた点が急ブレーキの背景にある。


 中国の電子商取引大手アリババ集団の関連会社による米国の国際送金大手マネーグラム社の買収計画が昨年末までに事実上、拒否されたのが典型例だ。総額12億ドルに上るTOB(株式公開買い付け)計画だったが、対米外国投資委員会(CFIUS)が計画の申請を承認しなかったという。

米国の国際送金大手マネーグラム社のサイト

CFIUSは米財務省が主導する審査機関。マネーグラム社の買収計画をめぐり、具体的にどのような懸念があったかは明らかにしていない。ただ、CFIUSは通常、外国企業による米企業買収に関し安全保障上の懸念がある場合、買収拒否を大統領に勧告する機能がある。

 アリババ側は今年1月に買収を正式に断念。これに対し中国商務省は、「海外からの投資阻止手段に安全保障上の問題を利用する国に懸念を持っている」と表明し、米国を牽制した。

 ほかにも中国による買収計画で、米国の保険会社や証券取引所などの案件が相次ぎ拒否された。また、欧州連合(EU)欧州委員会は昨年9月、域外企業による欧州企業買収への審査強化策を打ち出した。インフラや軍事、宇宙などの分野で、ハイテクが海外の政府系企業に渡ることを防ぐ狙いがある。

 他方、中国政府による規制強化も影を落とした。中国企業が対外投資を隠れみのに、国内で蓄積した資金の海外逃避を試みるケースが相次いだためだ。このため16年末から、中国当局は不動産やスポーツ、ホテルなどの対外投資の審査を厳格化。結果的に対外投資の抑制につながっている。

【私の論評】中国経済はやがて身の丈にあったところまで落ち込むことになる(゚д゚)!

中国企業の対外直接投資に急ブレーキの要因について、着目すべきは、やはりブログ冒頭の記事の最後のほうにでている「中国政府による規制強化」でしょう。なぜこのようなことをしなければならないかといえば、中国政府自体の外貨準備高が激減しているからです。それについては、以前もこの記事に掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【田村秀男のお金は知っている】外貨準備増は中国自滅のシグナル 習近平氏の野望、外部からの借金なしに進められず―【私の論評】頼みの綱の一帯一路は幻影に過ぎない(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事にも掲載したグラフを引用します。

 

このグラフを見ると、対外負債の外貨準備費比率が右肩上がりにあがつていることを示しています。これは、何を意味しているかといえば、対外準備が国外からの借金でまかなわれており、その比率が年々拡大しているということです。

これには、中国当局もかなりの危機感を感じていることでしょう。中国政府が国外で何かをするときの資金のかなりの部分が国外からの借金で賄っているということです。

なぜこのようなことになってしまったかといえば、原因は中国国内での経済成長が鈍化した上に、貿易で稼いだ以上に外国で浪費してきたからで、世界中の原油採掘権や鉱山を買いあさったり、企業買収や一帯一路などで外国投資で使い切った上に、人民元買い支えでこのようなことになったと考えられます。

近年、中国企業による対外投資や海外企業買収が急拡大していました。その背後にあるは、中国政府の「走出去」戦略(中国企業が積極的に海外進出する政策)ではなく、経済の急減速によるリスク回避を目的として資金を海外に移転することでした。

走出去は一帯一路と結びつけて考えられていた

さらに、2009年以降、中国本土にある外資系企業の多くが人員削減、資本の引き揚げや経営中止を行ってきました。外資系企業が集中する広東省東莞市では、2008年~12年で約7万2000社の企業が倒産しました。14年には4000社が倒産し、また15年12月には2000社の台湾系企業が東莞から撤退しました。相次ぐ倒産と撤退で東莞市地区では約500万人の失業者が出ました。

外資系企業撤退のおもな理由は、人件費の急騰など中国本土での企業運営が赤字の連続であることが挙げられます。

また中国に駐在する米国や欧州の企業は、中国国内の投資環境が悪化していると指摘しています。中国政府は外資系企業に対して独占禁止法調査を頻繁に行っています。また2015年に成立した「国家安全法」では当局が外資系企業の技術などが中国の国家安全を脅かしていると判断すれば、企業に対して厳しい処罰をするなど、外資企業に引き続き中国でのビジネス展開をすることをためらわせています。

外資企業の撤退と中国企業の大規模な海外進出によって、莫大な資金が海外に流出しました。これによって、外貨準備高が激減し、流動性のひっ迫で国内金融市場が混乱に陥り、国内経済に大きな打撃を与えつつあります。

通常の国であれば、国内の景気が停滞すれば金融緩和や積極財政を行い、まずは内需を高めることをします。内需がた高まったところで、多くの民間企業が競争して切磋琢磨して、新商品や新サービスを開発して、新たな需要を満たし産業が成長していきます。

一昔前の中国もそうでした。ただし、一昔の中国ではインフラ整備をするだけで、経済成長することができました。しかし、このインフラ整備は、中国国内では一巡してしまい、もう伸びる可能性が低いのでしょう。

だからといつて、新産業を育成するということもなく、中国は一昔前に国内で大成功した、インフラ整備を今度は中国主導で外国で行い、昔のように成長しようという安易な道を選んでしまいました。本来であれば、元々内需の少ない中国では、内需を1割から2割も底上げすれば、かなり景気は良くなるはずですが、なぜか今の中国政府はそれをしようとしません。

そのため、外資企業の徹底はますます多くなり、中国企業の大規模な海外進出もさらに多くなり、天文学的な資金が海外に流出してしまいました。

中国政府はこの莫大な流出をとめることに最初は、あまり熱心ではありませんでした。その原因としては二つあります。一つ目は、中国政府は依然として外資企業の中国での投資を誘致しており、厳しく資金流出を制限すると、外資企業の中国への投資意欲に影響するからでした。二つ目は、巨額な資金を海外に移転している人の大多数は共産党内の高層幹部とその親族だったからです。

しかし、16年末あたりからは、外貨準備高が本格的に激減したのと、外資企業の誘致もままならぬ状態となり、中国政府も本格的に規制に乗り出しています。

その流れは、今も続いており、とうとう16年から17年にかけては、中国企業の海外直接投資が激減するに至っているのです。

これが意味するところは、現在中国政府が海外で札びらを切って様々な事業の展開をはかっている金は大部分は海外からの借金で賄われているということです。

一昔前の中国なら、人口がとてつもなく多いし、これから発展していくことは明らかなので、中国には外国の資金がかなり集まりました。外国に在住してる中国人からもかなりの資金が集まりました。この豊富な資金を中国国内のインフラ整備にあてることで、中国は経済発展してきました。しかし、今ではそのようなこともなくなりました。

そもそも、中国政府自体が、国内の産業育成などに興味を持たず、成功するかしないかもはっきりしないような、一帯一路などにばかり精を出し、国外でのブロジェクトにばかり注目しているわけですから、中国国内に外国から資金が集まるはずもありません。

中国が国外でインフラ整備を実施するといっても、中国には地域住民のことまで考えたまともなインフラ整備をするノウハウはありません。国内の過去のインフラ整備でも、政府が主導で地域住民のことなど置き去りして、関係者の富のために実施してきたというのが実体です。

今のままであれば、中国には資金はますます集まらなくなり、いずれ枯渇することになります。かといって、金融緩和を強力に推し進めれば、国内がとんでもないインフレに襲われことになります。それに、元々中国の元は、中国がドルを大量に持っていることで信用がついたものですから、そのドルが中国から消えれば、元の信用はガタ落ちになります。

いずれ、中国経済は現在の中国の身の丈にあったところまで落ち込むことになります。その身の丈はどの程度になるかといえば、当然のことながら、かなり低いです。無論、日本人や日本経済よりもかなり低いものになるはずです。今まで、中国は身の丈を大幅に超えたところで、様々な事業を展開していたのです。それが本来の姿に戻るのは必然です。

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2016年10月19日水曜日

【日本の解き方】輸出も輸入も不振の中国経済 GDPが伸びるのは無理がある 習体制は持ちこたえられるか―【私の論評】長期の調整期に突入した中国でいずれ大規模な政変が(゚д゚)!

【日本の解き方】輸出も輸入も不振の中国経済 GDPが伸びるのは無理がある 習体制は持ちこたえられるか

中国の2016年9月の輸出入 輸出は6ヶ月連続で前年割れ、輸入も再度、前年割れに
中国の9月の貿易統計は、輸出が前年同月比10%減と、6カ月連続で前年割れし、輸入も同1・9%減と2カ月ぶりに前年割れとなった。これらの数字は、中国経済が内需、外需ともに不振であることを示している。

 共産党の一党独裁で社会主義国の中国では、統計はあてにならないと筆者はかねてより主張している。国営企業が経済の中心である社会主義国では、経済統計が産業を所管する役人の成績に関わるので、改竄(かいざん)がしばしば行われる。

 だが、貿易統計はその中でも信頼できる統計である。というのは、貿易は相手国があり、中国で貿易統計を改竄すると、相手国の統計からばれる確率が高まるからだ。

 輸出減の中身をみると、地域別では欧州や東南アジア向けが中心である、品目では衣料品や半導体、自動車部品などだ。輸出減の原因は、世界経済の低迷によって中国製品の需要が落ち込んだことであるが、従来型の輸出では競争力が弱まっているという見方もできる。

 ここで2008年のリーマン・ショック以降の人民元のレートを見よう。人民元は管理されており、基本的にはドルにペッグ(連動)している。リーマン・ショック以降2年間はほぼ完全にドルペッグしたが、その後3年間はやや人民元高に誘導、その後3年間逆に人民元安に誘導し、現在はほぼリーマン・ショック時と同じ水準に戻っている。

 円に対しては、リーマン・ショック後の円独歩高の結果、大幅な人民元安となったが、アベノミクスの金融緩和で円安になったため今度は人民元高になった。ここ1年では再び人民元安となって、ドルと同じようにリーマン・ショック時の水準に戻っている。

 対ユーロでは、ユーロ安なので、結果として人民元高傾向である。リーマン・ショック時と比べて、人民元はユーロに対し25%高くなっている。このため、中国のユーロ向け輸出は、欧州経済の低迷もあって減少した。

 輸入は、基本的には可処分所得の動向で決まるので、その動向は国内総生産(GDP)の動きと連動している。輸入が対前年同月比でマイナスというのは、中国のGDPが伸び悩んでいることをまさに示している。

 輸出が外需、輸入が内需の動きを示すので、輸出、輸入ともに減少しているのに、GDPが伸びているというのは、どこかに無理がある説明だ。

 外需が芳しくない要因は、短期的には改善しない。また内需も中国国内の過剰生産が解消されない限り解消しないだろう。こうした意味で、中国貿易は当分の間、低迷するだろう。

 中国の統計で貿易統計だけが信頼できるものである以上、貿易の低迷はまさに中国経済そのものの低迷を意味していると筆者は見ている。

 中国経済不振の中で、習近平体制がどこまで持ちこたえ得るか、不満のはけ口として日本たたきに走る恐れもあり、注意深く見守る必要がある。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】長期の調整期に突入した中国でいずれ大規模な政変が(゚д゚)!

上の記事で、高橋洋一氏が指摘するように、比較的信用に足る、貿易統計からみても中国の経済はかなり危険な状況にあるのは間違いないようです。

他のソースからも、中国経済の危険な兆候を読み取ることができます。

国際決済銀行(BIS)
国際決済銀行(BIS)は9月18日、GDP(国内総生産)の2.5倍に膨れあがった中国の債務総額が、「今後3年間で深刻な問題を引き起こす兆候である」との警告を発しいますた。

7月にもIMFが同様の警鐘を鳴らし、中国政府に企業債務に対処するよう要請しているものの、中国経済の崩壊への懸念はますます高まるばかりです。

中国社会科学院は歯止めがきかなくなった中国の負債総額が、2015年末にGDPの249%に値する25兆6000億ドル(約2602兆2400億円)に達したと発表しました。

BISの統計からも、発行債券額が2015年第4四半期から2016年第1四半期のわずか半年間で7兆8929億ドル(約802兆3132億円)と、1475億ドル(約14兆9933億円)増えていることが判明しています。

またゴールドマン・サックスを含む欧米の金融機関も、シャドーバンキング(正規の融資システムを通さない影の融資)の実態などを根拠に、実際の数字がさらに巨大化している可能性を指摘しています。

最近では中国人民銀行による景気刺激策が、結果的には企業負債と個人負債を押しあげるきっかけとなったという見方が強いのですが、その根本には他国の経済危機の影響を最小限にとどめる意図で、中国政府が与信を拡大しすぎたという背景があるようです。

総与信とGDPの差を算出した場合、一般的な経済危機レベルが10%であるのに対し、中国が30.1%に達している点にBISは強い懸念を示しているのです。

米国では総与信対GDP比率の差が10%を突破した後、サブプライム住宅ローン危機が訪れました。

サブプライム住宅ローン危機が起こり、住宅ローンが
払えなくなった住民の強制差し押さえを執行中の武装警官。
しかし中国自体は、周囲の懸念もまったく他人ごとといった様子という印象を受けます。

今年8月の銀行による融資は7月の2倍。その多くが住宅ローンの借り入れだったといいます。中国の銀行は2008年の金融危機以来最高の気前のよさで住宅ローンの申請に応じており、不良債権問題の影は微塵も感じられません。

またUBSも今年上旬、中国経済の行く末に関して、国内貯蓄率の高さや資本市場の成長の可能性を理由に、比較的楽観的な見解を示すレポートを発表しています。

ただし中国はあくまで「短期負債で長期負債資金を回転させている」との指摘もあり、経済市場自体が景気刺激策に依存しきっているリスクは打ち消せません。

銀行による不良債権比率が政府の発表している2%をはるかに上回っていた場合、中国には銀行システムの資本再編が必須と予想されているのですが、中国政府がどこまで現実を受けいれすみやかに対処するかにすべてがかかっています。

「借金で国を豊かにする」という発想はけっして中国にかぎったことではありません。経済成長が鈍化し、借金とともに国民の資産が増えるという悪循環は、多くの先進国が経験しています。

中国の統計は出鱈目なので、結局ところこのような当て推量をするしかないのですが、やはり高橋洋一氏がブログ冒頭の記事で指摘しているように、輸出入は相手があることから、あまりごまかしもしにくいし、たとえ中国が貿易統計をごまかしたにしても、中国の輸出入の相手国の統計から、現実にかなり近い数字を類推できます。

その輸出入からの数字でみても、特に輸入が著しく減っているということは、常識的に家は、中国はすでにデフレに陥っている可能性が高いということです。

この状態だと、雇用状況も悪くなっている可能性があります。中国では、ずい分前から大学の新卒の就職率などかなり落ちていましたから、若者の就職率の悪さだけでは特に悪くなったかどうかは推定することはできません。しかし、最近このブログでも掲載したように、退役軍人が中国国防省の前でデモをしたという珍事が発生しています。おそらく、退役軍人の雇用状況は最悪なのでしょう。

さらに、1-6月期の中国の投資において、民間投資はわずかに対前年同期比2・8%の増加に過ぎませんでした。代わりに、国有企業が対前年同期比23・5%と、投資全体を下支えしています。

要するに、現在の中国は民間が投資意欲を喪失し、政府の公共投資を国有企業が受注することで、何とかGDPが維持されている状況になっているのです。

投資ではなく、消費を見ても、やはり「政府」の影響力が強まっています。1-6月期の中国の個人消費は対前年同期比10・3%と、GDP成長に貢献しました。しかし、消費の主役が何かといえば、自動車購入でした。

長期の調整期に入った中国経済

実は、中国共産党政府は景気の急激な失速を受け、自動車販売を下支えすべく、小型車やエコカー向けの減税や補助金といった政策を打ったのです。結果的に、自動車販売が増え、消費総額が拡大したわけなのですが、投資同様に「政府の政策主導」になってしまっているのです。

このような状況のなかで、今回の貿易統計の結果です。これだけ輸入が激減したということはは、もう完璧にデフレに入ったとみなすべきでしょう。

デフレに入ったのであれば、金融緩和をすれば良いということになりそうですが、そのような常識的な判断は中国には当てはまらないです。中国経済のより本質的な問題は、設備投資が盛り上がらないことではなく、逆に設備が過剰であることにあるからです。

中国の場合、他国にない優れた技術力を保有しているという訳でもない訳ですし、それに賃金も上がり続けているので、安い労働力を武器とした輸出に頼るのも限界です。

ということで、中国の経済は調整期に突入したと言えるのです。そして、その調整のためには相当の時間を要すると考えるべきでしょう。

このような長期の調整期に入るのは、中国としては初めての経験です。そのため、習近平政権に対する風当たりもかつてないほど強くなります。おそらく、習近平体制は近いうちに崩れることでしょう。

しかし、ポスト習近平の後の体制も経済をすぐには好転させることはできないでしょう。しばらく、政権交代が比較的短期におこる可能性があります。そうして、それが繰り返されることになる可能性があります。かつての中国なら考えられないことですが、今後の中国では多いにあり得ることです。そうなると、中国共産党の統治の正当性は地に堕ちることになり、いずれ大規模な政変に結びついていく可能性が大きくなりそうです。

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2016年2月6日土曜日

【日本の解き方】中国経済もはや重篤なのか 食い止められない資本流失―【私の論評】日銀に振り回され続けるか、資本規制かを選択せざるをえなくなった中国(゚д゚)!


日銀の黒田東彦総裁
日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁が個人的見解としたうえで、中国の人民元について「国内金融政策に関して一貫性があり適切な方法として、資本規制が為替相場の管理に役立つ可能性がある」と述べたと報じられた。

 物やサービスの移転を伴わない対外的な金融取引のことを資本取引という。日本の外為法では、居住者と非居住者との間の預金契約、信託契約、金銭の貸借契約、債務の保証契約、対外支払手段・債権の売買契約、金融指標等先物契約に基づく債権の発生等に係る取引、および証券の取得または譲渡-などが定められている。

 このほかにも、居住者による外国にある不動産もしくはこれに関する賃借権、地上権、抵当権等の権利の取得、または非居住者による本邦にある不動産もしくはこれに関する権利の取得も、資本取引とされている。

 こうした取引は、金融機関を通じて行われるので、資本取引を規制しようとすれば、金融機関を規制することとなる。規制の方法としては、全面禁止、取引許可、取引届出、取引報告などがあり、前者から後者にいくにつれて規制が弱くなる。

 黒田総裁が指摘した、為替管理と資本取引の関係を理解するには、「国際金融のトリレンマ(三すくみ)」を知る必要がある。それは、「独立した金融政策」「固定為替相場制」「自由な資本移動」のうち、2つまでしか同時に達成することはできないというものだ。

 この法則に従うと、資本取引規制によって自由な資本移動をあきらめれば、独立した金融政策と固定為替相場制を達成できる。つまり、国内物価の安定のために金融政策を使うことが可能となり、為替相場も安定させられるというわけだ。

 中国の資本規制は原則として許可制で、先進国が原則として報告だけなのに比べて格段に規制が強い。それでも香港などを経由した資本流出の動きを食い止められないようだ。

 もっとも、中国が本気になれば規制強化は容易だろう。なにしろ、中国では、問題を起こしたとして摘発された場合、政治的失脚までありえるからだ。

 筆者はかつて中国でのコーポレート・ガバナンス(企業統治)に関する国際会議に出席した際、強烈な思い出があった。国有企業ばかりの国で、コーポレート・ガバナンスなんて所詮無理と思っていたところ、中国政府関係者が「中国では粉飾は死刑にもなります」と説明したのだ。さすがに、この発言には度肝を抜かれた。その延長線で、資本流出を勝手に行えば、重罰というのもあり得るだろう。

 先進国では、貿易自由化の後に資本を自由化するというのが一般的な流れだ。しかし、中国の場合、貿易の自由化を進めたが、ここに来て資本規制が必要となったことで、貿易も規制せざるを得なくなるかもしれない。

 すでに水面下では強烈な資本取引規制が行われているともいわれている。それでも資本流出が続いているのであれば、中国経済はかなり重篤だろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日銀に振り回され続けるか、資本規制かを選択せざるをえなくなった中国(゚д゚)!

中国のGDPなどの経済統計は、出鱈目であることをこのブログでも過去に何度か掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
やはり正常ではない中国経済 GDPと輸入統計に食い違い ―【私の論評】政治的メッセージである中国の統計や戦争犠牲者数は、人民の感情に比例する?
2015年は輸入がマイナスになっている。この状況で
GDPがプラスとはとても思えない・・・・・・・・
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、確かに中国の国内統計は出鱈目なのですが、それにしても貿易は相手があることですから、相手国の貿易統計などは正確なものも多いですから、それらを集計すれば、中国の輸出・輸入など正確に把握することができることを掲載しました。

そうして、中国のGDP統計など、所詮「政治的メッセージ」に過ぎないことを掲載しました。

そうして、輸入からみると、中国のGDPは、政府が発表しているのとは異なり、おそらくマイナス成長になっているであろうことも掲載しました。

このように、いくら中国の国内の経済統計などが出鱈目であったとしても、輸出・輸入は相手があることなので、相手国の統計を集計すれば、中国の輸出入もどの程度であったか、大体の数字はつかめます。

そうして、それは資本取引も同じです。資本取引も、貿易と同じように相手国があることですから、中国の統計が出鱈目であったとしても、相手国の統計を集計すれば、中国の資本取引もほぼ正確につかむことができます。

そうして、中国からの資本流出が莫大な量にのぼることは、すでに周知の事実です。もう、それは昨年の時点ではっきりしていました。

2013年末から15年3月末の間の中国の経常黒字は2952億ドル(約35兆円)でしたが、本来なら経常黒字で増えるはずの対外純資産残高は逆に5922億ドル(約71兆円)も激減しており、合計8874億ドル(約106兆円)の対外資産価値が消失した計算になっていました。消失した金額の巨額さを正しく説明できるのは資本逃避だけです。

昨年の、8月に突如人民元を切り下げた習政権でしたが、ところがその直後から人民元の売り規制に転じました。これは、景気対策のためには元安が必要なのですが、それは中国経済の命綱である資金流出を招くことになり、ジレンマに当局が追い込まれていたものです。

しかし、ジレンマどころか、本来はブログ冒頭の記事にあるように、深刻な「国際金融のトリレンマ(三すくみ)」状況に追い込まれていたということです。

景気回復を狙い「固定為替相場制」をあきらめて、人民元を切り下げたところ、資本流出が加速したため、今度は資本規制に乗り出したということです。

日本をはじめとするいわゆる先進国は、「固定為替相場制」を放棄して、変動為替相場制に移行しています。これによって、「独立した金融政策」「自由な資本移動」を同時に達成することができました。

しかし、中国の場合は「固定為替相場制」を維持していますから、これをこれからも維持し続けるというのなら、国際金融のトリレンマを克服するためには、「独立した金融政策
」もしくは、「自由な資本移動」のうちのいずれかを捨てなけれはならないということになります。

以下に国際金融のトリレンマの図と若干の説明を掲載します。

  • ある国はこの3つの「自由な資本移動」「固定相場制」「独立した金融政策」のうち2つだけを受容することができます。もしある国が a の位置を選択し、「自由な資本移動」と「固定相場制」を導入するのであれば、金融政策の独立性は失われます。
  • 実際の例としては欧州連合ユーロ圏が挙げられます。もしユーロを受容し自国通貨を放棄すれば、ユーロ圏内で為替を固定することになります。また、域内での自由な資本移動も認められています。しかし、金融政策はすべて欧州中央銀行に一任することになります。

「独立した金融政策」とは、特に現在の中国にとっては具体的に何を意味するのでしょうか。中国が、固定相場制を堅持し、自由な資本移動も堅持したとしたら、何がおこるかといえば、それは日本などをはじめとする、外国の金融政策に左右され「独立した金融政策」を実行できなくなるということです。

実際にそれはもうすでに発生していました。日本が2013年の4月から、金融緩和に転じてから、円安状況になり、それまで円高の状況とは異なり、中国経済にとっては、独立した金融政策が脅かされる事態となりました。

それまでの、中国の経済発展を支えていたのは為替操作によるキャッチアップ型の経済成長であり、円高とデフレを放置する日本銀行によるものでした。

慢性的な円高に苦しんでいた日本企業は、過度な「元安」政策をとる中国に生産拠点を移し、出来上がった製品の一部を逆輸入していました。日本国内で一貫生産するより、わざわざ中国を経由した方がもうかる構造になっていたのです。

日銀は、「デフレ政策で日本の産業空洞化を促進し、雇用と技術を中国に貢ぎ続けていた」のです。まさに、日本経済はこれによって、中国に振り回されていたのです。

しかし、2013年の4月から、日銀が金融緩和に転じたため、この構造は崩れ、今度は中国が日本の金融政策に振り回されるようになり、「独立した金融政策」を維持することが困難になってきたのです。

2013年に異次元の包括的金融緩和を発表した黒田総裁
この状況を本格的に脱するには、中国が構造転換をして、経済的な中間層を増やし、その結果個人消費を増やす必要があります。しかし、これは文字通りの構造転換であって、実行するには10年くらいはかかるものです。

短期的には、中国がこれからも「固定相場制」を捨てないというのなら、「独立した金融政策」を捨てるわけにはいかないので、黒田総裁がブログ冒頭の記事の中で述べていたように、結局「自由な資本移動」を捨てるしかないということです。結局「資本規制」しか選択肢はないということです。

それにしても、資本規制を強めるというのなら、中国国内の資本が海外に逃避することはなくなりますが、海外から中国内に資本が大量に入ってくるということはなくなります。

となると、今までの中国の経済発展の構造は維持できません。今後、中国が構造転換をしないかぎり、これは変わりません。

ということは、いずれにしても、中国の経済の回復は長期間望めないということです。この構造転換に失敗すれば、中国も中進国のジレンマから逃れることができず、図体がでかいだけの、ありふれたアジアの独裁国家に戻るということになります。

発展途上国などの経済が飛躍的に伸びて、新興国などともてはやされても、なぜかほとんどの場合、その後経済成長ができなくなり、所得が発展途上国と、先進国の中間あたりで、止まってしまうという現象がよく見られます。それを中進国のジレンマと呼びます。

中国は、おそらくこのジレンマから抜け出すことはできないでょう。できるとすれば、中国の体制が根本的に変わり、民主化、経済と政治の分離、法治国家化を推進する体制になった場合のみです。現状の体制のままでは、抜けだせません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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